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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127062
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】D/Aコンバータ、半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/68 20060101AFI20240912BHJP
   H03M 1/80 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H03M1/68
H03M1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035925
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 大地
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AB04
5J022AB09
(57)【要約】
【課題】非線形な入出力特性を有するD/Aコンバータを提供する。
【解決手段】上側基準抵抗RrHおよび複数の上側シフト抵抗RsH_1~RsH_nは、上側基準電圧ノード102と出力ノード106の間に直列に接続される。下側基準抵抗RrLおよび複数の下側シフト抵抗RsL_1~RsL_nは、下側基準電圧ノード104と出力ノード106の間に直列に接続される。i番目の上側シフト抵抗RsH_iの抵抗値は2i-1であり、i番目の下側シフト抵抗RsL_iの抵抗値が2i-1である。R≠Rである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側基準電圧ノードと、
下側基準電圧ノードと、
出力電圧が発生する出力ノードと、
前記上側基準電圧ノードと前記出力ノードの間に直列に接続された、上側基準抵抗およびバイナリで重み付けされた抵抗値を有する複数の上側シフト抵抗と、
前記下側基準電圧ノードと前記出力ノードの間に直列に接続された、下側基準抵抗およびバイナリで重み付けされた抵抗値を有する複数の下側シフト抵抗と、
前記複数の上側シフト抵抗と並列に接続された複数の上側スイッチと、
前記複数の下側シフト抵抗と並列に接続された複数の下側スイッチと、
入力コードに応じて、前記複数の上側スイッチと前記複数の下側スイッチを相補的に制御するロジック回路と、
を備え、
,Rを所定抵抗値とするとき、i番目の上側シフト抵抗の抵抗値が、2i-1であり、i番目(i=1,2…)の下側シフト抵抗の抵抗値が2i-1であり、R≠Rである、D/Aコンバータ。
【請求項2】
とRは、20%以上異なる、請求項1に記載のD/Aコンバータ。
【請求項3】
前記下側基準電圧ノードと前記出力ノードの間に、前記下側基準抵抗および前記複数の下側シフト抵抗と直列に接続された抵抗値がRである補正抵抗をさらに備える、請求項1または2に記載のD/Aコンバータ。
【請求項4】
前記入力コードの中央値に対応する前記出力電圧をV、前記出力電圧の最大値をVMAX、前記出力電圧の最小値をVMINとするとき、
MAX=V×A
MIN=V×1/A
の関係が成り立つ、請求項1または2に記載のD/Aコンバータ。
【請求項5】
A>1.2である、請求項4に記載のD/Aコンバータ。
【請求項6】
請求項1または2に記載のD/Aコンバータを備える、半導体集積回路。
【請求項7】
オシレータをさらに備え、前記オシレータの発振周波数が、前記D/Aコンバータの出力電圧に応じて調節可能である、請求項6に記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、D/Aコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路において、デジタル信号(入力コード)をアナログ信号に変換するD/Aコンバータが利用される。D/Aコンバータの用途はさまざまであるが、そのひとつとして、半導体集積回路のばらつきを抑制するトリミングが例示される。
【0003】
たとえば半導体集積回路に、キャパシタの一定電流による充電と、キャパシタの瞬時的な放電(リセット)を繰り返し、周期的な三角波信号を発生する弛張型のオシレータが集積化されるとする。キャパシタの充電電流をIc、キャパシタの容量をC、三角波信号の振幅をΔVとするとき、三角波信号の周期Tpは、式(1)で表される。
Tp=2・C・ΔV/Ic …(1)
このオシレータの発振周波数fは、式(2)で表される。
f≒1/Tp=Ic/(2・C・ΔV) …(2)
したがって、Ic,Cがばらつくと、発振周波数fがばらつくこととなる。
【0004】
電流Icを、式(3)の入出力特性を有するV/I変換回路で生成する場合を考える。
Ic=Va/R …(3)
Rは、V/I変換回路の基準抵抗の抵抗値を表す。VaはD/Aコンバータの出力電圧である。
【0005】
式(3)を式(2)に代入すると、式(4)を得る。
f=Va/(2・C・R・ΔV) …(4)
【0006】
ΔVは、バンドギャップリファレンス回路などを利用して生成することで、ばらつきを小さくすることができる。一方、容量Cや抵抗Rは、製造ばらつきを有する。C,Rのばらつきを相殺するように、D/Aコンバータの入力コードを調節することにより、安定した周波数fを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-165736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的なD/Aコンバータは、入力コードに対して出力電圧が線形に変化するように設計される。ところがこのようなD/Aコンバータは、上述のトリミングのような用途には適さない場合がある。
【0009】
いま、C,Rがそれぞれ、定格値の±20%の範囲でばらつくとする。その場合、周波数fは、定格値(目標値)から、最大で+56.3%、最小で-30.5%の範囲でばらつく。
【0010】
このような周波数のばらつきをトリミングするために、入力コードに対して出力電圧が線形に等間隔で変化する従来のD/Aコンバータを用いると、以下の問題が発生する。
1. 周波数が低い領域では、周波数が高い領域に比べて、トリミングの精度が低くなる。
2. 周波数が低い領域で十分なトリミング精度を得ようとすると、D/Aコンバータのビット数を大きくする必要があり、回路規模が大きくなる。
【0011】
このように、従来のD/Aコンバータには、用途によっては適さない場合がある。
【0012】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、非線形な入出力特性を有するD/Aコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示のある態様のD/Aコンバータは、上側基準電圧ノードと、下側基準電圧ノードと、出力電圧が発生する出力ノードと、上側基準電圧ノードと出力ノードの間に直列に接続された、上側基準抵抗およびバイナリで重み付けされた抵抗値を有する複数の上側シフト抵抗と、下側基準電圧ノードと出力ノードの間に直列に接続された、下側基準抵抗およびバイナリで重み付けされた抵抗値を有する複数の下側シフト抵抗と、複数の上側シフト抵抗と並列に接続された複数の上側スイッチと、複数の下側シフト抵抗と並列に接続された複数の下側スイッチと、入力コードに応じて、複数の上側スイッチと複数の下側スイッチを相補的に制御するロジック回路と、を備える。R,Rを所定抵抗値とするとき、i番目(i=1,2…)の上側シフト抵抗の抵抗値が2i-1であり、i番目の下側シフト抵抗の抵抗値が2i-1であり、R≠Rである。
【0014】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本開示のある態様によれば、非線形な入出力特性を有するD/Aコンバータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係るD/Aコンバータの回路図である。
図2図2は、図1のD/Aコンバータの入出力特性を示す図である。
図3図1は、D/Aコンバータの抵抗値の補正を説明する図である。
図4図4は、図1のD/Aコンバータの第1の設計例に係る入出力特性を示す図である。
図5図5は、図1のD/Aコンバータの第2の設計例に係る入出力特性を示す図である。
図6図6は、図1のD/Aコンバータの第3の設計例に係る入出力特性を示す図である。
図7図7は、D/Aコンバータを備える半導体集積回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0018】
一実施形態に係るD/Aコンバータは、上側基準電圧ノードと、下側基準電圧ノードと、出力電圧が発生する出力ノードと、上側基準電圧ノードと出力ノードの間に直列に接続された、上側基準抵抗およびバイナリで重み付けされた抵抗値を有する複数の上側シフト抵抗と、下側基準電圧ノードと出力ノードの間に直列に接続された、下側基準抵抗およびバイナリで重み付けされた抵抗値を有する複数の下側シフト抵抗と、複数の上側シフト抵抗と並列に接続された複数の上側スイッチと、複数の下側シフト抵抗と並列に接続された複数の下側スイッチと、入力コードに応じて、複数の上側スイッチと複数の下側スイッチを相補的に制御するロジック回路と、を備える。R,Rを所定抵抗値とするとき、i番目(i=1,2…)の上側シフト抵抗の抵抗値が2i-1であり、i番目の下側シフト抵抗の抵抗値が2i-1であり、R≠Rである。
【0019】
この態様によると、R≠Rとすることにより、非線形な入出力特性を実現できる。また、入力コードの中心値に対応する出力電圧をV、出力電圧の最大値をVMAX、出力電圧の最小値をVMINとするとき、VMAX/Vと、VMIM/Vを、R,R、上側基準抵抗の抵抗値、下側基準抵抗の抵抗値にもとづいて設計できる。
【0020】
一実施形態において、RとRは、20%以上異なってもよい。
【0021】
一実施形態において、入力コードの中央値に対応する出力電圧をV、出力電圧の最大値をVMAX、出力電圧の最小値をVMINとするとき、
MAX=V×A
MIN=V×1/A
の関係が成り立ってもよい。
【0022】
一実施形態において、A>1.2であってもよい。
【0023】
(実施の形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図1は、実施形態に係るD/Aコンバータ100の回路図である。D/Aコンバータ100は、nビットのデジタルの入力コードDINを受け、入力コードDINをアナログの出力電圧VOUTに変換する。
【0027】
D/Aコンバータ100は、上側基準電圧ノード102、下側基準電圧ノード104、出力ノード106を有する。上側基準電圧ノード102および下側基準電圧ノード104にはそれぞれ、基準電圧が印加される。ここでは理解の容易化と説明の簡潔化のために上側基準電圧ノード102の基準電圧をVREF、下側基準電圧ノード104の基準電圧を0Vとする。
【0028】
D/Aコンバータ100は、複数n個の上側シフト抵抗RsH、複数n個の下側シフト抵抗RsL、上側基準抵抗RrH、下側基準抵抗RrL、ロジック回路110を備える。
【0029】
上側基準抵抗RrHおよび複数の上側シフト抵抗RsH_1~RsH_nは、上側基準電圧ノード102と出力ノード106の間に直列に接続される。複数の上側シフト抵抗RsH_1~RsH_nの抵抗値はバイナリで重み付けされている。i番目(1≦i≦n)の上側シフト抵抗RsH_iは、単位抵抗をRとするとき、
RsH_i=2i-1
と表すことができる。
【0030】
下側基準抵抗RrLおよび複数の下側シフト抵抗RsL_1~RsL_nは、下側基準電圧ノード104と出力ノード106の間に直列に接続される。複数の下側シフト抵抗RsL_1~RsL_nの抵抗値はバイナリで重み付けされている。i番目(1≦i≦n)の下側シフト抵抗RsL_iは、単位抵抗をRとするとき、
RsL_i=2i-1
と表すことができる。
【0031】
本実施形態では、上側シフト抵抗の単位抵抗Rと下側シフト抵抗の単位抵抗Rとの間には、R≠Rの関係が成り立っている。たとえば、RとRは、20%以上異なるように定めることができる。
【0032】
入力コードDINの中央値に対応する出力電圧をV、出力電圧の最大値をVMAX、出力電圧の最小値をVMINとするとき。
MAX=V×A …(5A)
MIN=V×1/A … (5B)
の関係が成り立つように、各抵抗RH,RL,RrH,RrLの抵抗値を定めてもよい。この場合において、A>1.2としてもよい。
【0033】
複数の上側スイッチSWH_1~SWH_nは、複数の上側シフト抵抗RsH_1~RsH_nと並列に接続される。複数の下側スイッチSWL_1~SWL_nは、複数の下側シフト抵抗RsL_1~RsL_nと並列に接続される。
【0034】
ロジック回路110は、入力コードDINに応じて、複数の上側スイッチSWH_1~SWH_nと複数の下側スイッチSWL_1~SWL_nの対応するペア同士を相補的に制御するデコーダである。具体的にはj番目の上側スイッチSWH_jがオンであるとき、j番目の下側スイッチSWL_jはオフである。
【0035】
以上がD/Aコンバータ100の構成である。
【0036】
図2は、図1のD/Aコンバータ100の入出力特性を示す図である。横軸は入力コードDINを、縦軸は出力電圧VOUTを表す。このD/Aコンバータ100によれば、非線形な入出力特性を実現できる。この入出力特性は、指数関数に近い特性を有している。入力コードDIN=0に対応する出力電圧をVMAXとするとき、任意のコードの値k(10進表記)における出力電圧VOUTは、
OUT=VMAX×r-k
で表され、公比1/rの等比数列で近似できる。
【0037】
このD/Aコンバータ100は、RrH、RrL、R、Rに応じて、入出力特性のカーブを設計することができる。以下、設計手法の一例を説明する。
【0038】
D/Aコンバータ100の出力電圧VOUTは、式(6)で表される。
OUT=VREF×RL_TOTAL/(RL_TOTAL+RH_TOTAL) …(6)
L_TOTALは、出力ノード106と下側基準電圧ノード104の間の合成抵抗であり、RH_TOTALは、出力ノード106と上側基準電圧ノード102の間の合成抵抗である。
【0039】
入力コードDINが0のとき、すべての上側スイッチSWH_1~SWH_nがオンであり、すべての下側スイッチSWL_1~SWL_nがオフである。このとき、
L_TOTAL=RrL+2×R
H_TOTAL=RrH
となる。これらを式(6)に代入すると、式(7)を得る。
MAX=VREF×(RrL+2×R)/(RrL+2×R+RrH) …(7)
【0040】
反対に入力コードDINが最大値のとき、すべての上側スイッチSWH_1~SWH_nがオフであり、すべての下側スイッチSWL_1~SWL_nがオンである。このとき、
L_TOTAL=RrL
H_TOTAL=RrH+2×R
となる。これらを式(6)に代入すると、式(8)を得る。
MIN=VREF×(RrL)/(RrL+RrH+2×R) …(8)
なお、ここでは、nビットのバイナリコードの最大値は、10進数で2-1であるが、ここでは計算の都合上、2であるものとする。
【0041】
入力コードDINが中央値のとき、複数の上側シフト抵抗の合成抵抗はその最大値(2×R)の1/2倍であり、複数の下側シフト抵抗の合成抵抗はその最大値(2×R)の1/2倍となる。このとき、
L_TOTAL=RrL+2n-1×R
H_TOTAL=RrH+2n-1×R
となる。これらを式(6)に代入すると、式(9)を得る。
=VREF×(RrL+2n-1×R)/(RrL+2n-1×R+RrH+2n-1×R) …(9)
【0042】
式(7)~(9)と、式(5A)、(5B)の連立方程式を解くことにより、R,R,RrH,RrLを定めることができる。ただし、上述のように入力コードDINの最大値(十進数)を2としているため、実際には存在しない入力値2において、VMIN=V×1/Aが成り立つこととなる。入力コードDINが実際の最大値2-1であるときにVMIN=V×1/Aが成り立つようにするには、補正が必要であり、具体的には、出力ノード106と下側基準電圧ノード104の間の合成抵抗RL_TOTALを、1LSB相当の単位抵抗Rだけ大きくすればよい。
【0043】
図3は、抵抗値の補正を説明する図である。連立方程式を解いて得られた下側基準抵抗RrLの値を仮の値RrLとして、仮の値RrLに、単位抵抗RLを加算すればよく、真の下側基準抵抗の抵抗値RrLは、
RrL=RrL+RL …(10)
となる。
【0044】
あるいは、仮の値RrLを有する下側基準抵抗RrLとは別に、単位抵抗RLを抵抗値とする範囲補正抵抗Rcompを追加してもよい。この場合、下側基準抵抗RrL、範囲補正抵抗Rcomp、複数の下側シフト抵抗の順序は任意に入れ替えることができる。
【0045】
図4は、図1のD/Aコンバータ100の第1の設計例に係る入出力特性を示す図である。ここでは、n=5ビット、V=0.4V、A=2としている。VREF=1.8V、RrH=2500kΩ、RrL=1031.25kΩ、RrL=1000kΩ、R=171.875kΩ、R=31.25kΩである。破線は、指数関数に対応する近似曲線であり、実線が、実際のD/Aコンバータの出力電圧VOUTである。誤差の最大値は入力コードDINが25のときで、1.05%である。
【0046】
図5は、図1のD/Aコンバータ100の第2の設計例に係る入出力特性を示す図である。ここでは、n=5ビット、V=0.4V、A=3としている。VREF=1.8V、RrH=1500kΩ、RrL=1062.5kΩ、RrL=1000kΩ、R=343.75kΩ、R=62.50kΩである。誤差の最大値は、入力コードDINが26のときで、4.08%である。
【0047】
図6は、図1のD/Aコンバータ100の第3の設計例に係る入出力特性を示す図である。ここでは、n=5ビット、V=0.4V、A=4としている。VREF=1.8V、RrH=500kΩ、RrL=1093.75kΩ、RrL=1000kΩ、R=515.63kΩ、R=93.75kΩである。誤差の最大値は、入力コードDINが26のときで、8.11%である。
【0048】
このように、Aを大きくするほど、誤差の最大値は大きくなるが、実際の入出力特性は計算によって理論的に計算でき、あるいは測定で知ることができるから、誤差の大きさは実用上は問題とならない。
【0049】
続いてD/Aコンバータ100の用途を説明する。
【0050】
図7は、D/Aコンバータ100を備える半導体集積回路200の回路図である。半導体集積回路200は、オシレータ210、ROM(Read Only Memory)220、D/Aコンバータ230を備える。
【0051】
ROM220には、デジタルのコードが格納される。D/Aコンバータ230は、デジタルの入力コードDINをアナログの出力電圧VOUTに変換する。
【0052】
オシレータ210は、キャパシタC1、V/I変換回路212、カレントミラー回路214、基準電圧源216、スイッチSW1~SW3、コンパレータCOMP1、インバータINV1,INV2を含む。
【0053】
V/I変換回路212は、抵抗R1、トランジスタM1、オペアンプOA1を含む。V/I変換回路212は、D/Aコンバータ100の出力電圧VOUTを、電流Iに変換する。電流Iは、
=VOUT/R1
で表される。
【0054】
カレントミラー回路214は、電流Iにもとづいて、充電電流Iと、放電電流I=2×Iを生成する。カレントミラー回路214の放電電流Iの経路上には、スイッチSW1が設けられており、スイッチSW1がオフすると、放電電流Iは0となる。
【0055】
基準電圧源216は、たとえば抵抗分圧回路であり、基準電圧VREFを分圧して、しきい値電圧V,Vを生成する
【0056】
コンパレータCOMP1、インバータINV1,INV2およびスイッチSW2,SW3はヒステリシスコンパレータと把握することができる。スイッチSW2,SW3の制御端子には、インバータINV1,INV2の出力が入力され、コンパレータCOMP1の出力に応じて相補的にオンとなる。スイッチSW2がオンの状態では、コンパレータCOMP1は、キャパシタC1の電圧VC1をしきい値電圧Vと比較し、スイッチSW3がオンの状態では、コンパレータCOMP1は、キャパシタC1の電圧VC1をしきい値電圧Vと比較する。オシレータ210は、コンパレータCOMP1の出力に応じたクロック信号CKを出力する。
【0057】
D/Aコンバータ230として、上述の非線形な入出力特性を有するD/Aコンバータ100を用いることができる。この場合、D/Aコンバータ100のセンターコードに対応する出力電圧Vを、キャパシタC1と抵抗R1が定格値であるときに、所望の周波数が得られるように定めればよい。そして、C1とR1のばらつきの範囲に応じて、定数Aを定めることができる。これにより、C1とR1が増加する方向にばらついた場合、C1とR1が低下する方向にばらついた場合の両方において、高い精度でトリミングが可能となる。
【0058】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0059】
(項目1)
上側基準電圧ノードと、
下側基準電圧ノードと、
出力電圧が発生する出力ノードと、
前記上側基準電圧ノードと前記出力ノードの間に直列に接続された、上側基準抵抗およびバイナリで重み付けされた抵抗値を有する複数の上側シフト抵抗と、
前記下側基準電圧ノードと前記出力ノードの間に直列に接続された、下側基準抵抗およびバイナリで重み付けされた抵抗値を有する複数の下側シフト抵抗と、
前記複数の上側シフト抵抗と並列に接続された複数の上側スイッチと、
前記複数の下側シフト抵抗と並列に接続された複数の下側スイッチと、
入力コードに応じて、前記複数の上側スイッチと前記複数の下側スイッチを相補的に制御するロジック回路と、
を備え、
,Rを所定抵抗値とするとき、i番目の上側シフト抵抗の抵抗値が2i-1であり、i番目の下側シフト抵抗の抵抗値が2i-1であり、R≠Rである、D/Aコンバータ。
【0060】
(項目2)
とRは、20%以上異なる、項目1に記載のD/Aコンバータ。
【0061】
(項目3)
前記下側基準電圧ノードと前記出力ノードの間に、前記下側基準抵抗および前記複数の下側シフト抵抗と直列に接続された抵抗値がRである補正抵抗をさらに備える、項目1または2に記載のD/Aコンバータ。
【0062】
(項目4)
前記入力コードの中央値に対応する前記出力電圧をVC、前記出力電圧の最大値をVMAX、前記出力電圧の最小値をVMINとするとき、
MAX=V×A
MIN=V×1/A
の関係が成り立つ、項目1から3のいずれかに記載のD/Aコンバータ。
【0063】
(項目5)
A>1.2である、項目4に記載のD/Aコンバータ。
【0064】
(項目6)
項目1から5のいずれかに記載のD/Aコンバータを備える、半導体集積回路。
【0065】
(項目7)
オシレータをさらに備え、前記オシレータの発振周波数が、前記D/Aコンバータの出力電圧に応じて調節可能である、項目6に記載の半導体集積回路。
【0066】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
100 D/Aコンバータ
102 上側基準電圧ノード
104 下側基準電圧ノード
106 出力ノード
RrH 上側基準抵抗
RsH 上側シフト抵抗
RrL 下側基準抵抗
RsL 下側シフト抵抗
Rcomp 範囲補正抵抗
SWH 上側スイッチ
SWL 下側スイッチ
110 ロジック回路
200 半導体集積回路
210 オシレータ
212 V/I変換回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7