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特開2024-127063免疫細胞活性化剤、抗老化剤、免疫細胞の活性化方法、及び老化を防止又は予防する方法
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  • 特開-免疫細胞活性化剤、抗老化剤、免疫細胞の活性化方法、及び老化を防止又は予防する方法 図1
  • 特開-免疫細胞活性化剤、抗老化剤、免疫細胞の活性化方法、及び老化を防止又は予防する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127063
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】免疫細胞活性化剤、抗老化剤、免疫細胞の活性化方法、及び老化を防止又は予防する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/45 20060101AFI20240912BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240912BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K36/45
A61P3/02 101
A61P43/00 107
A61P37/04
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035926
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】白井 優美
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD48
4B018MD52
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB44
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC11
4C088NA14
4C088ZB09
4C088ZB22
4C088ZC22
(57)【要約】
【課題】免疫細胞活性化剤、抗老化剤、免疫細胞の活性化方法、及び老化を防止又は予防する方法の提供。
【解決手段】本発明は、クロマメノキを有効成分として含む、免疫細胞活性化剤を提供する。また、本発明は、クロマメノキを有効成分として含み、免疫細胞を活性化することによって老化細胞を排除することを特徴とする、抗老化剤を提供する。また、本発明は、必要とする対象における免疫細胞の活性化方法であって、前記対象にクロマメノキを適用し、前記免疫細胞を活性化させること、を含む、方法を提供する。また、本発明は、必要とする対象における老化を防止又は予防する方法であって、前記対象にクロマメノキを適用し、免疫細胞を活性化することによって老化細胞を排除すること、を含む、方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマメノキを有効成分として含む、免疫細胞活性化剤。
【請求項2】
免疫細胞が、NK細胞である、請求項1に記載の免疫細胞活性化剤。
【請求項3】
免疫細胞の活性化によって、老化細胞を排除することを特徴とする、請求項1又は2に記載の免疫細胞活性化剤。
【請求項4】
前記クロマメノキが、クロマメノキ果実の搾汁により得られるものである、請求項1又は2に記載の免疫細胞活性化剤。
【請求項5】
クロマメノキを有効成分として含み、免疫細胞を活性化することによって老化細胞を排除することを特徴とする、抗老化剤。
【請求項6】
前記免疫細胞が、NK細胞である、請求項5に記載の抗老化剤。
【請求項7】
前記クロマメノキが、クロマメノキ果実の搾汁により得られるものである、請求項5又は6に記載の抗老化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫細胞活性化剤、抗老化剤、免疫細胞の活性化方法、及び老化を防止又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢に伴い、体内において老化細胞が増加することが知られている(非特許文献1)。老化細胞は、免疫細胞(例えば、NK細胞、単球/マクロファージ、T細胞等)によって排除されることが知られており(例えば、非特許文献2)、また、加齢により、老化細胞を排除する免疫細胞が減少することも報告されていることから(非特許文献3)、加齢による老化細胞の除去には、免疫細胞の活性化が重要であると考えられる。
【0003】
老化細胞を除去する免疫細胞の1つである、NK細胞の活性化マーカーのNKp30及びNKp46は、加齢によりその発現量が減少することが知られている(非特許文献3)。NKp46は、NK細胞と標的細胞との間の免疫シナプスの形成に関与していることが知られており(非特許文献4)、NKp46の発現が、NK細胞の活性化にとって非常に重要であることが示唆されている。
【0004】
現在までに、ハイビスカス又はその抽出物の発酵物がNK細胞等の免疫細胞を活性化することが知られている(特許文献1)。ハイビスカス又はその抽出物の発酵物に匹敵するような高い免疫細胞活性化効果を有する更なる物質の探索が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/176174号
【特許文献2】特開2008-526956号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】van Deursen JM., Nature., 2014, 509:439-446
【非特許文献2】Sagiv A., and Krizhanovsky V., Biogerontology. 2013 Dec;14(6):617-628.
【非特許文献3】Almeida-Oliveira A., et al., Hum Immunol. 2011 Apr;72(4):319-329.
【非特許文献4】Hadad U., et al., J Immunol May 1, 2014, 192 (1 Supplement) 121.13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、免疫細胞を活性化する新規の免疫細胞活性化剤及びそれを用いた免疫細胞の活性化方法を提供することを目的とする。また、本発明は、免疫細胞を活性化することによって老化細胞を排除する新規の抗老化剤、及びそれを用いた老化を防止又は予防する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意研究を行った結果、クロマメノキが、免疫細胞を活性化させる作用を有することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
【0009】
[1]クロマメノキを有効成分として含む、免疫細胞活性化剤。
[2]免疫細胞が、NK細胞である、請求項1に記載の免疫細胞活性化剤。
[3]免疫細胞の活性化によって、老化細胞を排除することを特徴とする、請求項1又は2に記載の免疫細胞活性化剤。
[4]前記クロマメノキが、クロマメノキ果実の搾汁により得られるものである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の免疫細胞活性化剤。
[5]クロマメノキを有効成分として含み、免疫細胞を活性化することによって老化細胞を排除することを特徴とする、抗老化剤。
[6]前記免疫細胞が、NK細胞である、[5]に記載の抗老化剤。
[7]前記クロマメノキが、クロマメノキ果実の搾汁により得られるものである、[5]又は[6]に記載の抗老化剤。
[8]必要とする対象における免疫細胞の活性化方法であって、
前記対象にクロマメノキを適用し、前記免疫細胞を活性化させること
を含む、方法。
[9]前記免疫細胞が、NK細胞である、[8]に記載の方法。
[10]前記免疫細胞の活性化によって、老化細胞を排除する、[8]又は[9]に記載の方法。
[11]前記クロマメノキが、クロマメノキ果実の搾汁により得られるものである、[8]~[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12]必要とする対象における老化を防止又は予防する方法であって、
前記対象にクロマメノキを適用し、免疫細胞を活性化することによって老化細胞を排除すること
を含む、方法。
[13]前記免疫細胞が、NK細胞である、[12]に記載の方法。
[14]前記クロマメノキが、クロマメノキ果実の搾汁により得られるものである、[12]又は[13]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、免疫細胞を活性化することが可能となり、これにより、老化細胞を排除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、クロマメノキ果実の搾汁およびハイビスカス花発酵エキスを添加した場合のNK細胞におけるNKp46のmRNAの発現量を陰性対照の滅菌水の発現量を100とした相対値として示している。
図2図2は、各濃度のクロマメノキ果実の搾汁およびハイビスカス花発酵エキスを添加した場合のNK細胞におけるNKp46のmRNAの発現量を陰性対照の滅菌水の発現量を100とした相対値として示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに限定されない。また、以下の本発明を実施するための形態について説明された内容は、特に限定されない限り、免疫細胞活性化剤、抗老化剤、免疫細胞の活性化方法、及び老化を防止又は予防する方法の説明において、相互に適用され得る。なお、本明細書において引用されている先行技術文献は、本明細書においても援用され、その全体が本明細書において取り込まれる。
【0013】
クロマメノキは、紫外線に起因する活性酸素種を消去/抑制することが知られており、これを含み、皮膚美白及びシワを改善するための皮膚状態改善用組成物が知られている(特許文献2)。しかしながら、クロマメノキが、免疫細胞を活性化する効果についてはこれまで報告されていない。本発明は、クロマメノキが免疫細胞を活性化するという本発明者らの発見に基づく。
【0014】
一実施態様において、本発明は、クロマメノキを有効成分として含む、免疫細胞活性化剤を提供する。また、他の態様において、本発明は、クロマメノキを有効成分として含み、免疫細胞を活性化することによって老化細胞を排除することを特徴とする、抗老化剤を提供する。以下、本発明の免疫細胞活性化剤及び抗老化剤をまとめて本発明の剤と総称することがある、
【0015】
本明細書において、「クロマメノキ」とは、ヒメクロマメノキ(Vaccinium uliginosum var. alpinum)、狭義のクロマメノキ(Vaccinium uliginosum var. japonicum)を含む広義のクロマメノキとして知られるツツジ科スノキ属クロマメノキ種(Vaccinium uliginosum)の植物を指す。本発明におけるクロマメノキ果汁は、例えば、英語ではWild blueberry juice concentrate(Vaccinium uliginosum)と表記されることもあり、また、中国語では下記のようにと表記されることもある。
【化1】
【0016】
本発明において用いられる「クロマメノキ」は、使用部位として、全草、葉、花部、茎、根、果実等を用いることができる。果実を使用する場合は果皮を含むものが使用され得る。果実に加え、花、根、等の他の部位、又は植物体全体を含んでもよい。
【0017】
本発明において用いられ得る「クロマメノキ」は、乾燥植物、生の植物、粉末状、小断片状、ペースト状、抽出物等任意の形態であり得る。例えば、公知の方法を用いて調製することができる。例えば、採取した植物そのもの、植物の乾燥物、生の植物又は乾燥物を破砕、切断、圧砕、擦り潰し、ホモジナイズ、ミキシングなどの方法で、植物を細分化したもの、任意の方法で抽出した抽出物といった任意の形態であり得る。
【0018】
本発明において用いられ得る「クロマメノキ」は、クロマメノキの果実の搾汁によって得られるものであってもよい。クロマメノキの果実の搾汁は更に濃縮を行ってもよい。例えば、クロマメノキの果実を、必要ならば予め水洗して異物を除いた後、押し潰し、搾り取ることにより得られた搾汁を加熱、真空、凍結、乾燥などの処理により濃縮させる。濃縮物の場合、例えば、1~20倍、2~15倍、5~10倍、6~8倍、例えば、7倍等任意の濃縮率を採用できる。
【0019】
クロマメノキ果汁が市販されている場合、それを使用してもよく、例えば、下記実施例に記載のような企業の製品を用いることができる。あるいは、特許文献1に記載のように、抽出物を使用してもよい。
【0020】
本発明を適用することにより、免疫細胞が活性化され得る。本明細書において、免疫細胞とは、生体内において「免疫システム」の役割を担う細胞であり、例えば、NK細胞、T細胞、B細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞等が挙げられる。本発明が適用されて、活性化され得る免疫細胞は、好ましくはNK細胞である。
【0021】
NK細胞とは、ナチュラルキラー細胞の略称であり、自然免疫の主要因子として働く細胞傷害性リンパ球の1種である。NK細胞は、T細胞抗原受容体(TCR)も、CD3も、表面免疫グロブリン(Ig)B細胞受容体も発現していない一方で、通常ヒトではCD16(FcγRIII)陽性及びCD56陽性の細胞である。NK細胞は細胞傷害性であり、その細胞質中の小顆粒は、パーフォリン、及びグランザイムとして知られるプロテアーゼなどの特殊なタンパク質を含有している。死滅させる標的となった細胞のすぐ近くに放出されると、パーフォリンは、標的細胞の細胞膜に孔を形成し、そこからグランザイム及び関連分子が進入可能になり、アポトーシスが誘導される。
【0022】
NK細胞は、通常、インターフェロン又はマクロファージ由来サイトカインに応答して活性化される。NK細胞は、「活性化受容体」及び「抑制性受容体」と呼ばれる2種類の表面受容体によって細胞傷害活性が高度に調節されている。NK細胞は、腫瘍の宿主拒絶において重要な役割を果たし、また、ウイルス感染細胞を死滅させる役割も担うことが知られている。
【0023】
活性化された免疫細胞、例えばNK細胞やT細胞は、老化細胞を排除する役割を担っていることも知られている(Sagiv A., and Krizhanovsky V., Biogerontology. 2013 Dec;14(6):617-628.)。その中でも、NK細胞の活性化マーカーとして知られるNKp30及びNKp46は、加齢によりその発現量が減少することが知られている(Almeida-Oliveira A., et al., Hum Immunol. 2011 Apr;72(4):319-329.)。以上のような知見を基に、本発明者らは、NK細胞の活性化マーカーの発現量を増加させる物質を探索したところ、上述のクロマメノキがその効果を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0024】
本明細書において、「老化細胞」とは、正常な細胞に比べて老化マーカーの発現量の上昇を示す細胞を意味する。老化マーカーとしては、老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ、P53、P16INK4a、P21CIP1などが挙げられる。老化細胞は、G1期の不可逆的な増殖停止によって特徴付けられ、細胞周期の進行を促す遺伝子の抑制と、細胞周期を阻害するp53、p16INK4a、p21CIP1の発現上昇が関与して形成されることが知られている。
【0025】
老化細胞は、複製性の細胞老化、早熟性の細胞老化、又は治療により誘発される細胞老化などに起因するものであり得る。複製性の細胞老化に起因する老化細胞は、複数回の細胞分裂、例えば、40回以上、50回以上、60回以上、70回以上、80回以上の細胞分裂を経たものであり得る。早熟性の細胞老化に起因する老化細胞は、限定されるものではないが、紫外線、活性酸素種、環境毒素、喫煙、電離放射線、クロマチン構造の歪み、過剰なマイトジェンシグナリング、発がん性突然変異などにより誘発され得るものである。また、他の実施態様において、早熟性の細胞老化は、電離放射線によって誘導され得るものである。別の特定の実施態様において、早熟性の細胞老化は、Rasタンパク質を用いた異所性トランスフェクションによって誘導され得る。治療により誘発される細胞老化に起因する老化細胞は、放射線療法、化学療法、DNA損傷療法などにより誘導され得るものである。
【0026】
本発明を用いることにより排除し得る老化細胞は、一般には、真核細胞であり得る。老化細胞の例としては、例えば、乳腺上皮細胞、ケラチノサイト、心筋細胞、軟骨細胞、内皮細胞(大血管)、内皮細胞(微小血管)、上皮細胞、線維芽細胞、毛乳頭細胞、肝細胞、メラニン細胞、骨芽細胞、脂肪前駆細胞、免疫系の細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、ニューロン、グリア細胞、収縮性細胞、外分泌性上皮細胞、細胞外マトリックス細胞、ホルモン分泌細胞、角化上皮細胞、膵島細胞、水晶体細胞、間葉幹細胞、膵臓の腺がん細胞、小腸のパネト細胞、造血系の細胞、神経系の細胞、感知器官及び末梢神経細胞を支持する細胞、並びに、湿性重層バリア上皮細胞、等が挙げられるが、これに限定されない。
【0027】
様々な器官や組織における老化細胞の数は、通常、年齢と共に増加する。老化細胞の蓄積は、老化及び老化関連疾患下の劣化をより進め得る。例えば、老化した組織における老化細胞の蓄積は、年齢関連組織機能障害、再生能力の減少、及び疾患に寄与し得る。一実施態様において、老化細胞が蓄積した老化組織は、増殖が必要とされるストレスに応答する能力を欠いており、それにより、老化とともに見られる健康性の低減が生じる。従って、一実施態様において、本発明を適用することにより、老化細胞が免疫細胞によって排除され、老化が防止又は予防され得る。
【0028】
一実施態様において、本発明は、クロマメノキあるいは上述の免疫細胞活性化剤又は抗老化剤を含む組成物として提供されてもよい。組成物の形態は任意であり、成分や用途等の条件に応じて適切に選択すればよく、例えば、化粧品、医薬品、医薬部外品、飲食品等の組成物が挙げられる。また、本発明の組成物は、粉末状、液状、固形状、タブレット状、カプセル状、顆粒状、ペースト状、ゲル状、乳液状、クリーム状、シート状、スプレー状、泡状等の様々な形態であり得る。本発明の組成物におけるクロマメノキあるいは免疫細胞活性化剤又は抗老化剤の含有量は、免疫細胞が活性化するのに有効な量を含んでいれば良く、特に限定されない。
【0029】
本発明の剤又は組成物は、クロマメノキを本発明の効果が十分発揮されるような量で含むことが好ましく、その配合量は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができる。例えば、有効成分としてクロマメノキを、総重量当たり0.0001~100mg/ml、0.0001~90mg/ml、0.001~50mg/ml、0.01~5mg/ml、0.01~1mg/ml、0.05~0.5mg/ml、0.1~0.2mg/ml(w/v)等とすることができるが、本発明の効果が発揮されれば限定されない。ある実施形態では、本発明の剤は、クロマメノキからなる。
【0030】
更に、本発明の剤又は組成物は、必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。添加剤としては賦形剤等を含ませることができる。
【0031】
賦形剤としては、所望の形態としたときに通常用いられるものであれば何でも良く、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類が挙げられる。これら賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
また、本発明の剤又は組成物は、必要に応じて、その他の成分、例えば、着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、油分、粉末、色材、水、アルコール類、増粘剤、キレート剤、シリコーン類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤等、公知のものを適宜選択して使用できる。
【0033】
一実施態様において、本発明は、
必要とする対象における免疫細胞の活性化方法であって、
前記対象にクロマメノキを適用し、前記免疫細胞を活性化させること、を含む方法を提供する。
【0034】
また、他の実施態様において、本発明は、
必要とする対象における老化を防止又は予防する方法であって、
前記対象にクロマメノキを適用し、免疫細胞を活性化することによって老化細胞を排除すること、を含む方法を提供する。
【0035】
本明細書において、「対象」とは、ヒトを含む哺乳動物であり、好ましくはヒト対象である。クロマメノキを適用する方法については、例えば、局所投与(皮膚上、吸入、注腸、点眼、点耳、経鼻、膣内等)、経腸投与(経口、経管、経注等)、非経口投与(経静脈、経動脈、経皮、筋肉注等)が挙げられる。また、飲食品として摂取してもよい。
【0036】
本発明の方法は、美容を目的とする方法であり、医師や医療従事者による治療ではないことがある。
【0037】
他の実施態様において、本発明は、免疫細胞活性化のための医薬の製造、あるいは、免疫細胞の活性化を介し老化細胞を排除することによる老化防止又は予防のための医薬の製造におけるクロマメノキの使用も提供する。
【0038】
他の実施態様において、本発明は、免疫細胞活性化における使用、あるいは、免疫細胞の活性化を介し老化細胞を排除することによる老化の防止又は予防における使用のためクロマメノキも提供する。
【実施例0039】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0040】
材料
以下の材料を本実施例では使用した。
・初代培養ヒトCD56+ NK細胞(ATTC社、PCS-800-019(TM))
・培地:20%の牛胎児血清RPMI(1X)+GlutaMAX-l RPMI Medium 1640[+]25mM HEPES(gibco社、Ref;72400-047、Lot:2193150)
・7倍濃縮クロマメノキ果汁(Lot;210209-1、下記に記載の有限責任公司社(中国)):200mgを秤量し、800μLのdHOに溶解した。
【化2】
・ハイビスカス花発酵エキス(ハイビゼル(登録商標)、カタログ番号:05694、株式会社テクノーブル(日本))
【0041】
実験1
市販(ATCC社)の初代培養ヒトNK細胞を20%の牛胎児血清RPMI(1X)+GlutaMAX-l RPMI Medium 1640[+]25mM HEPES培地(gibco社)で培養した(37℃、湿度100%、5%CO2)。
【0042】
1mlの培地に2×10個/wellの濃度でNK細胞を24穴のプレートに播種した。培地に対しクロマメノキ濃縮果汁は0.2mg/ml(w/v)、ハイビスカス花発酵エキスは0.1%(v/v)となるように添加し培養した。陰性対照として同量のdHOを使用した。48時間培養後、回収した細胞からRNeasy(登録商標) Mini Kit(Qiagen社)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを用い、TaqMan RNA-to CT 1-step Kit(Thermo Fisher SCIENTIFIC社)により、NKp46遺伝子とハウスキーピング因子としてリボソーマルS9遺伝子の半定量PCRを行った(Light Cycler 480;Roche社)。用いたプライマーは、ハウスキーピング因子としてのリボソーマルS9遺伝子(Hs00183118_m1;Thermo Fisher SCIENTIFIC社、Lot: 2038445)及びNKp46遺伝子(Hs02339424_g1;Thermo Fisher SCIENTIFIC社、Lot: 2079026)であり、NKp46遺伝子の発現量をリボソーマルS9遺伝子の発現量で除して標準化した。得られた結果は、統計ソフトエクセル統計上の多重比較検定(Dunnett)で有意性を検定した。
【0043】
結果を図1に示す。クロマメノキは初代培養ヒトNK細胞の活性化マーカー(NKp46)の発現を有意に促進した(N=4、p<0.05、**P<0.001)。また、その発現量は免疫細胞活性化効果が知られているハイビスカス花発酵エキス(特許文献2)に匹敵する。
【0044】
実験2
実験1で効果が見られなかったA、B、Cを除き、効果が見られたクロマメノキについて濃度依存性を確認すべく培地に対し終濃度が0.1mg/ml(w/v)又は0.2mg/ml(w/v)となるように添加したこと以外は実験1と同じ方法により培養し、リボソーマルS9遺伝子とNKp46遺伝子の発現量を測定し、標準化及び有意差検定を行った。
【0045】
結果を図2に示す(N=4、P<0.05、**P<0.001)。クロマメノキによるNKp46遺伝子の発現促進効果には濃度依存性が見られることがわかる。
図1
図2