(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127068
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20240912BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20240912BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240912BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F04D15/00 A
F04D15/00 D
F04D15/00 J
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035931
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉川 充
(72)【発明者】
【氏名】濱田 憲
(72)【発明者】
【氏名】疋田 開士
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
5H770
【Fターム(参考)】
3H020AA05
3H020BA02
3H020BA03
3H020BA18
3H020CA08
3H020DA02
3H020EA07
3H020EA14
3H145AA02
3H145AA06
3H145AA16
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA41
3H145CA21
3H145DA01
3H145DA31
3H145EA20
3H145FA16
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA21
5H770DA41
5H770GA19
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770JA11W
5H770LA01W
5H770LA02Y
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】ハードウェア機器を追加設置せずに、逆止弁の故障を検知すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ポンプ装置は、ポンプと、モータと、インバータと、電流測定部と、制御部と、を備えている。前記ポンプは、逆止弁が二次側に接続されている。前記インバータは、前記ポンプに接続されたモータを駆動する。前記電流測定部は、前記インバータの二次側電流を測定する。前記制御部は、前記ポンプの運転中に、前記電流測定部の出力に基づいて前記インバータを制御する。ここで、前記制御部は、前記ポンプの停止中に、前記電流測定部の出力に基づいて回生電流を検出し、前記回生電流の相順検出により前記モータの回転が逆転か否かを判定し、前記逆転を判定した場合に前記逆止弁の故障を検知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆止弁が二次側に接続されたポンプと、
前記ポンプに接続されたモータと、
前記モータを駆動するインバータと、
前記インバータの二次側電流を測定する電流測定部と、
前記ポンプの運転中に、前記電流測定部の出力に基づいて前記インバータを制御する制御部と、
を備えるポンプ装置であって、
前記制御部は、前記ポンプの停止中に、前記電流測定部の出力に基づいて回生電流を検出し、前記回生電流の相順検出により前記モータの回転が逆転か否かを判定し、前記逆転を判定した場合に前記逆止弁の故障を検知する、
ポンプ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ポンプの停止中に前記逆止弁の故障を検知した後、前記モータを通常よりも緩やかに始動または停止させるように前記インバータを制御する、
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ポンプの停止中に逆流を起こさないように、前記故障が検知された逆止弁に接続されたポンプを所定の低回転速度で待機運転させるように前記インバータを制御する、
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記逆止弁、前記ポンプ、前記モータ、前記インバータ及び前記電流測定部を有するユニットを並列に備えており、
前記制御部は、各々の前記ユニットの前記ポンプのうち、前記故障が検知された逆止弁に接続されたポンプを優先的に運転させるように前記インバータを制御する、
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記停止中に前記逆止弁の故障を検知した後、前記故障した逆止弁に接続されたポンプにおける目標圧力一定制御の少水量側目標圧力の設定値を下げるように更新する、
請求項1に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、建造物等に用いるポンプ装置として、複数のポンプを有するものが知られている。また、ポンプ装置は、各ポンプの二次側に逆止弁をそれぞれ有し、各ポンプの吐出側から吸込側へ水が逆流することを防止している。
【0003】
このポンプ装置は、例えば、停止中に圧力センサで検出されたポンプの二次側の圧力が起動圧力以下になった場合に、一台のポンプを起動して単独運転を行い、給水量の減少を流量センサにより検出したときに、駆動中のポンプを停止する。
【0004】
このようなポンプ装置は、長期間の使用によって逆止弁のシール性能が低下したり、水質等により逆止弁が引っ掛かったりすると、逆止弁に漏れが生じてしまう虞がある。逆止弁に漏れが生じると、全ポンプが停止している場合には、アキュムレータ内の水が逆流し、故障していない逆止弁側のポンプが駆動している場合には、駆動するポンプから吐出された水が故障した逆止弁側のポンプから逆流することになる。
【0005】
これに対し、ポンプのモータを駆動するモータ駆動装置において、電流検出器と、監視回路とが追加設置されたポンプ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、追加設置された電流検出器は、モータの一次巻線電流(インバータの出力電流)を検出し、検出信号を監視回路に出力する。また、追加設置された監視回路は、モータの一次巻線の端子電圧を読込んだ後、当該読込んだ端子電圧に基づいてモータの逆転を検知する。あるいは監視回路は、電流検出器の出力と、当該読込んだ端子電圧とに基づいてモータの逆転を検知する。これにより、従来のポンプ装置は、逆止弁の故障を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のようなポンプ装置は、特に問題ないが、本発明者の検討によれば、電流検出器及び監視回路といった2種類のハードウェア機器を追加設置することから、ポンプ装置の製造コストにハードウェア機器の追加費用が発生してしまう点で改善の余地がある。
【0008】
本発明は、ハードウェア機器を追加設置せずに、逆止弁の故障を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、ポンプ装置は、ポンプと、モータと、インバータと、電流測定部と、制御部と、を備えている。前記ポンプは、逆止弁が二次側に接続されている。前記インバータは、前記ポンプに接続されたモータを駆動する。前記電流測定部は、前記インバータの二次側電流を測定する。前記制御部は、前記ポンプの運転中に、前記電流測定部の出力に基づいて前記インバータを制御する。ここで、前記制御部は、前記ポンプの停止中に、前記電流測定部の出力に基づいて回生電流を検出し、前記回生電流の相順検出により前記モータの回転が逆転か否かを判定し、前記逆転を判定した場合に前記逆止弁の故障を検知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハードウェア面での追加費用を発生させずに、逆止弁の故障を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るポンプ装置の構成の一例を示す模式図。
【
図2】一実施形態に係るインバータの構成の一例を示す模式図。
【
図3】一実施形態における動作を説明するためのフローチャート。
【
図4】一実施形態における動作を説明するためのグラフ。
【
図5】一実施形態の変形例におけるインバータの構成の一例を示す模式図。
【
図6】一実施形態の他の変形例における動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るポンプ装置について説明する。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号を用いることもある。
【0013】
図1は、一実施形態に係るポンプ装置の構成の一例を示す模式図であり、
図2は、
図1のインバータ31の構成の一例を示す模式図である。
図1中、ポンプ装置1は、複数のポンプ11と、複数のモータ12と、複数のポンプ11にそれぞれ接続された吸込管13と、複数のポンプ11にそれぞれ接続された吐出管14と、複数の吐出管14を合流させる合流管15と、吐出管14に設けられた逆止弁16と、ポンプ11の二次側に直列に配置された複数の圧力センサ17と、ポンプ11の二次側にそれぞれ設けられた流量センサ18と、合流管15に設けられたアキュムレータ19と、制御盤20と、を備えている。
【0014】
このようなポンプ装置1は、各構成が一体に組み合わされたポンプユニットである。ポンプ装置1は、例えば、マンション等の建造物に、各戸の給水先へ給水する自動給水装置である。例えば、ポンプ装置1は、各ポンプ11がそれぞれ吸込管13から全開の仕切弁101を介して、水源としての受水槽100に接続される。
【0015】
ポンプ11としては、例えば、渦巻ポンプ(タービンポンプ)、斜流ポンプ、軸流ポンプ及び摩擦ポンプ(粘性ポンプ)(カスケードポンプ)といった非容積ポンプが適宜、使用可能となっている。本実施形態に係るポンプ11は、例えば、多段タービンポンプである。複数のポンプ11は、並列に配置される。一実施形態のポンプ装置1においては、ポンプ11が2台用いられる例を用いて説明する。また、一実施形態のポンプ装置1においては、ポンプ11の設置位置が、受水槽100の水位よりも低い例を用いて述べる。
【0016】
モータ12は、各ポンプ11にそれぞれ接続される。モータ12は、電気的に制御盤20のインバータ31に接続される。モータ12は、ポンプ11を駆動する。また、モータ12は、ポンプ11の二次側に接続された逆止弁16の故障時には、ポンプ11に逆流した水に応じて逆回転することにより、インバータ31の二次側に回生電流を発生させる。
【0017】
吸込管13は、一端がポンプ11に接続され、他端が受水槽100に配置される。
【0018】
吐出管14は、複数のポンプ11のそれぞれに設けられる。吐出管14は、一端がポンプ11に接続され、他端が合流管15に接続される。
【0019】
合流管15は、各ポンプ11に接続された複数の吐出管14を合流させる。合流管15の二次側は、建造物等に設けられた配管に接続される。吐出管14及び合流管15は、ポンプ装置1の吐出配管を構成する。
【0020】
逆止弁16は、吐出管14に設けられる。逆止弁16は、合流管15側からポンプ11内へ水が逆流することを防止する。
【0021】
圧力センサ17は、リニア出力で圧力検出が可能に形成される。ここで、リニア出力とは、圧力センサ17が圧力に比例した関係の電圧または電流またはパルスを信号として出力することを意味する。例えば、圧力センサ17は、歪みゲージを有し、歪みゲージの歪み量によって圧力に対応した信号を出力する。
【0022】
流量センサ18は、少水量を検出可能に構成される。ここで、少水量とは、例えば、ポンプ装置1の停止流量である。流量センサ18は、例えば、パドル式の流量センサである。
【0023】
アキュムレータ19は、合流管15に設けられる。アキュムレータ19は、蓄圧可能に構成される。
【0024】
制御盤20は、複数のモータ12にそれぞれ接続された複数のインバータ31と、記憶部32と、制御部33と、を備える。
【0025】
インバータ31は、信号線を介してモータ12及び制御部33に電気的に接続され、制御部33の制御により、モータ12を駆動する。インバータ31は、モータ12と同数の、本実施形態においては2つ設けられる。インバータ31は、出力周波数、即ちモータ12の運転周波数を可変可能に構成される。
【0026】
ここで、
図2に示すように、インバータ31は、整流回路311、コンデンサ312、インバータ回路313、正側出力ライン314、負側出力ライン315、過電圧検出回路316及び電流検出回路317を備えている。
【0027】
整流回路311は、インバータ入力端子(R,S,T)を介して、図示しない交流電源に電気的に接続可能な回路であり、例えば、三相ブリッジ接続されたダイオードからなる。整流回路311は、交流電源から供給された三相交流電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧を正側出力ライン314と負側出力ライン315との間からコンデンサ312を介してインバータ回路313に供給する。
【0028】
コンデンサ312は、整流回路311における正側出力ライン314と負側出力ライン315との間に接続され、且つインバータ回路313に並列に接続されている。コンデンサ312は、正側出力ライン314と負側出力ライン315との間の直流電圧を蓄電して平滑化する。
【0029】
インバータ回路313は、スイッチング素子にダイオードが逆並列接続された複数のアームa1~a3、b1~b3がブリッジ接続されてなる。詳しくは、インバータ回路313は、正側出力ライン314に一端が接続されたアームa1、a2、a3と、当該アームa1、a2、a3と負側出力ライン315との間に接続されたアームb1、b2、b3とがブリッジ接続されてなる。アームa1~a3、b1~b3の各々は、スイッチング素子にダイオードが逆並列接続されてなる。このダイオードは、フリーホイールダイオード又は還流ダイオードともいう。スイッチング素子としては、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)やIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の半導体スイッチング素子が適宜、使用可能となっている。また、正側のアームと負側のアームとの組は、交流の相数だけ配置される。
図2に示す三相交流(例、三相200V)の例では、正側のアームと負側のアームとの組は、アームa1、b1の組と、アームa2、b2の組と、アームa3、b3の組との3つが配置される。このようなインバータ回路313は、コンデンサ312によって得られた直流電圧を制御部33からのゲート駆動信号(回転数制御信号に相当)に応じた所定周波数の交流電圧へと変換してモータ12に供給する。補足すると、インバータ回路313は、ゲート駆動信号による可変速制御により、例えば、目標圧力一定制御運転を行うためのパルス状の電圧をモータ12に供給する。なお、インバータ回路313は、逆止弁16の故障によりモータ12が逆回転された時には、モータ12の逆回転により発電された交流電圧をダイオードにより直流電圧に変換する。
【0030】
過電圧検出回路316は、正側出力ライン314と負側出力ライン315との間の平滑化された直流電圧と閾値とに基づいて当該直流電圧の過電圧を検出し、過電圧検出信号を制御部33に出力する。
【0031】
電流検出回路317は、負側のアームb1、b2、b3と、負側出力ライン315との間にそれぞれ接続されたシャント抵抗Rを流れるU相、V相、W相の二次側電流を検出し、検出した3相分の二次側電流の電流値をそれぞれ測定し、測定結果を制御部33に出力する。なお、電流検出回路317は、3相分の二次側電流のうち、少なくとも2相分の2次側電流の電流値を測定すればよい。特に、相順によりモータが正回転で回転しているのか逆回転で回転しているのかは二次側電流により容易に判断できる。シャント抵抗R及び電流検出回路317は、インバータの二次側電流を測定する電流測定部の一例である。
【0032】
記憶部32は、例えば、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)である。記憶部32は、ポンプ装置1を起動する起動圧力、給水時における目標圧力及び定格流量を記憶する。また、記憶部32は、給水運転時に通常運転として制御部33によりインバータ31を制御する制御プログラム、逆止弁16の故障を判断する判断プログラム、及び、逆止弁16の故障時に故障時運転として制御部33によりインバータ31を制御する制御プログラム等の各種プログラムが記憶されている。
【0033】
制御部33は、例えばマイコンである。制御部33は、複数の圧力センサ17、流量センサ18、インバータ31、記憶部32等に電気的に接続される。制御部33は、各センサ17、18で検出された検出値に基づいてインバータ31の出力周波数を制御する。例えば、制御部33は、各センサ17、18で検出した圧力や流量と、目標圧力の設定値と、停止流量の設定値とに基づいて、インバータ回路313の出力周波数を制御する目標圧力一定制御を行ってもよい。なお、目標圧力一定制御としては、推定末端圧力一定制御や吐出圧一定制御などが適宜、使用可能となっている。また、制御部33は、ポンプ11の運転中に、インバータ31の過電圧検出回路316の出力に基づいてインバータ31の過電圧保護動作を実行する。同様に、制御部33は、ポンプ11の運転中に、インバータ31の電流測定部の出力に基づいてインバータ31を制御する。例えば、制御部33は、電流測定部の出力からモータ12のロータの回転位置を検出し、その検出位置に基づいてインバータ回路313のスイッチングを制御することにより、インバータ回路313から任意の周波数(および電圧レベル)の交流電圧を出力させてモータ12の回転数を制御してもよい。また例えば、制御部33は、電流測定部に測定された二次側電流がモータ12の許容最大電流値を超えない範囲でモータ12ができるだけ高い回転数で動作するようインバータ回路313の出力周波数を制御する電流値一定制御を行ってもよい。また、制御部33は、流量に応じて、ポンプ停止、目標圧力一定制御、電流値一定制御及び運転周波数一定制御といった制御モードを切り替えてもよい。例えば、制御部33は、停止流量近傍において予め定めた最高周波数にて運転した場合の二次側電流より低い許容電流値を設定し、停止流量近傍にて許容電流値となる運転周波数で運転した場合の吐出圧力より低い値の目標圧力を設定し、停止流量から二次側電流が許容電流値まで上昇する第1流量まで、目標圧力での吐出圧力一定制御を行い、第1流量から許容電流値でモータ12を運転したときの運転周波数が最高周波数まで上昇する第2流量まで、許容電流値での電流一定制御を行い、第2流量以上では、最高周波数での運転周波数一定制御を行うようにしてもよい。また、制御部33は、ポンプ11の運転中に、インバータ31の電流測定部の出力に基づいて、インバータ31の過電流保護動作を実行する。また、制御部33は、ポンプ11の停止中に、インバータ31の電流測定部の出力に基づいて逆止弁16の故障を検知することで、故障時運転動作を実行する。
【0034】
故障時運転動作として、例えば、制御部33は、ポンプ11の停止中に、シャント抵抗R及び電流検出回路317からなる電流測定部の出力に基づいて回生電流を検出することにより、逆止弁16の故障を検知する機能を実行する。この機能に限らず、制御部33は、逆止弁16の故障時運転動作について、以下の機能(1)乃至(5)の各々を適宜、実行してもよい。言い換えると、機能(1)乃至(5)の各々は、必須の機能ではなく、適宜、省略可能となっている。なお、制御部33の各機能は、ポンプ装置1の駆動状況や記憶部32に記憶された各閾値やプログラムに基づいて生じる。すなわち、制御部33は、ハードウェア機器を追加設置せずに、閾値やプログラム等のソフトウェアの追加のみで、逆止弁故障時の各機能が実現されている。
【0035】
(1)ポンプ11の停止中に、検出した回生電流に基づき、当該回生電流の相順を検出してモータ12の回転が逆転か否かを判定し、逆転を判定した場合に逆止弁16の故障を検知する機能。
【0036】
(2)逆止弁16の故障を検知した後、モータ12を通常よりも緩やかに始動、または、停止させるようにインバータ31を制御する機能。
【0037】
(3)故障が検知された逆止弁16に接続されたポンプ11を、ポンプ11の停止中に逆止弁16からの逆流が起きないように、所定の低回転速度で待機運転させるようにインバータ31を制御する機能。
【0038】
(4)逆止弁16、ポンプ11、モータ12、インバータ31及び電流測定部を有するユニットをポンプ装置1が並列に備えている場合の機能である。すなわち、各々のユニットのポンプ11のうち、故障が検知された逆止弁16に接続されたポンプ11を優先的に運転させるようにインバータ31を制御する機能。
【0039】
(5)停止中に逆止弁16の故障を検知した後、故障した逆止弁16に接続されたポンプ11における目標圧力一定制御の少水量側目標圧力の設定値を下げるように更新する機能。
【0040】
次に、以上のように構成されたポンプ装置における逆止弁故障時の動作について
図3のフローチャート及び
図4のグラフを参照して説明する。
【0041】
始めに、ポンプ装置1は、ポンプ11の運転を停止した停止状態であるとする。
【0042】
ステップST1では、ポンプ装置1の電流検出回路317は、インバータ回路313のアームb1~b3に接続されたシャント抵抗Rを流れる二次側電流を検出し、検出した二次側電流の電流値を時系列に沿って測定し、測定結果を制御部33に出力する。
【0043】
ステップST2では、制御部33が、電流検出回路317の出力に基づいて、回生電流を検出したか否かを判定する。例えば、ポンプ11の停止時はモータ12が回転しないためインバータの二次側電流検出は行われない。しかし、何等かの理由によりモータ12が正転又は逆転により回転した場合、制御部33は、時系列に沿って測定した電流値が示す電流波形から、回生電流を検出したと判定する。ステップST2の判定の結果、否の場合にはステップST3に進み、回生電流を検出した場合にはステップST4に進む。
【0044】
ステップST3では、制御部33は、回生電流を検出しないことからポンプ11の停止を判定し、ステップST5に進む。
【0045】
一方、ステップST4では、制御部33は、ポンプ11が停止中に、検出した回生電流に基づいてモータ12の回転が逆転か否かを判定する。例えば、制御部33は、3相のうちの少なくとも2相分の回生電流波形の位相差に基づいて相順検出を行い、モータ12の回転が逆転か否かを判定し、否(正転)の場合にはステップST5に進む。補足すると、正転の場合は逆止弁故障ではないので、ポンプ11の停止が判定された場合と同様にステップST5に進む。
【0046】
ステップST5では、制御部33は、運転指令の有無に応じて、ポンプ始動条件が成立するか否かを判定し、否の場合にはステップST1に戻り、ステップST1~ST5の処理を繰り返し実行する。ステップST5の判定の結果、ポンプ始動条件が成立する場合、ステップST6に進む。
【0047】
ステップST6では、通常の主機入替を行い、通常のポンプ運転開始(始動)動作を行い、ステップST6Aに進む。
【0048】
ステップST6Aでは、制御部33は、インバータ31を制御してモータ12を駆動し、ポンプ11を回転させる。これにより、ポンプ装置1は、ポンプ11を運転中である運転状態となる。
【0049】
ステップST7では、制御部33は、停止指令の有無に応じて、ポンプ11の停止条件が成立するか否かを判定し、否の場合にはステップST6Aに戻り、ステップST7の処理を繰り返し実行する。ステップST7の判定の結果、停止条件が成立する場合、制御部33は、通常の停止動作を実行し(ステップST7A)、ポンプ11を停止させた後(ステップST7B)、ステップST1に戻る。
【0050】
一方、ステップST4の判定の結果、モータ12の回転が逆転である場合にはステップST8に進む。
【0051】
ステップST8では、制御部33は、モータ12の回転の逆転を判定したことから、逆止弁16の故障を検知する。
【0052】
このとき、ステップST9では、制御部33は、故障した逆止弁16に接続されたポンプ11における目標圧力一定制御の少水量側目標圧力の設定値を下げるように更新する。例えば、
図4は、ポンプのH-Q特性(全揚程-吐出量特性)において、通常時と逆止弁故障時とにおける目標圧力の設定値を表している。
図4中、縦軸に示す揚程[m]は、ポンプ11が発生する圧力で、通常は水頭で表し、単位は[m]が一般的に使用される。例えば、水圧力0.098MPaは、水柱の高さ10mに相当する。
図4中、横軸に示す水量[L/min]は、ポンプ11が吐き出す吐出量を示す。ここで、制御部33は、
図4に示すように、水量200[L/min]以下の少水量側において、通常時の目標圧力の設定値に比べ、逆止弁故障時の目標圧力の設定値を下げるように更新する。
【0053】
ステップST10では、制御部33は、運転指令の有無に応じて、ポンプ始動条件が成立するか否かを判定し、否の場合にはステップST9の後に戻って、ステップST10の処理を繰り返し実行する。ステップST10の判定の結果、ポンプ始動条件が成立する場合、ステップST11に進む。
【0054】
ステップST11では、制御部33は、各々のポンプ11のうち、故障が検知された逆止弁16に接続されたポンプ11を優先的に運転させるようにインバータ31を制御する。
【0055】
ステップST12では、制御部33は、逆止弁16の故障によってモータ12に逆回転方向の回転力が加わることから、通常より緩やかな保護始動動作を実行する。すなわち、制御部33は、モータ12が停止中から通常運転に至る際の時間(加速時間)に比べ、長い時間でモータ12を逆回転から正回転に至るようにインバータ31を制御する。これにより、モータ12の回転速度を急激に増加させず、始動時における瞬時過電流の発生を回避することができる。ステップST12の後、ポンプ装置1は、ポンプ11を運転中である運転状態となる(ステップST12A)。
【0056】
ステップST13では、制御部33は、停止指令の有無に応じて、ポンプ11の停止条件が成立するか否かを判定し、否の場合にはステップST12Aに戻り、ステップST13の処理を繰り返し実行する。ステップST13の判定の結果、停止条件が成立する場合、制御部33は、ポンプ11を緩やかに停止させるため、ステップST14に進む。
【0057】
ステップST14では、制御部33は、逆止弁16の故障によってモータ12に逆回転方向の回転力が加わることから、通常より緩やかな保護停止動作を実行する。すなわち、制御部33は、モータ12が正転方向に回転する通常運転から停止に至る際の時間(減速時間)に比べ、長い時間でモータ12を正回転から停止状態に至るようにインバータ31を制御する。これにより、モータ12の回転を急激に停止させず、停止時過電圧の発生を回避することができる。ステップST14の後、ポンプ装置1は、ポンプ11を停止させた停止状態となる(ステップST14A)。ステップST14Aの後、制御部33は、ステップST10に戻る。
【0058】
上述したように一実施形態によれば、ポンプ装置1は、ポンプ11と、モータ12と、インバータ31と、電流測定部と、制御部33と、を備える。ポンプ11は、逆止弁16が二次側に接続されている。インバータ31は、ポンプ11に接続されたモータ12を駆動する。電流測定部は、インバータ31の二次側電流を測定する。制御部33は、ポンプ11の運転中に、電流測定部の出力に基づいてインバータ31を制御する。ここで、制御部33は、ポンプ11の停止中に、電流測定部の出力に基づいて回生電流を検出することにより、逆止弁16の故障を検知する。従って、インバータ制御や過電流保護のための既存の電流測定部を逆止弁の故障検知にも共用する構成により、電流検出器及び監視回路といったハードウェア機器を追加設置せずに、逆止弁の故障を検知することができる。また、ハードウェア機器を追加設置しないことから、ハードウェア面での追加費用の発生を阻止することができる。
【0059】
また、一実施形態によれば、制御部33は、ポンプ11の停止中に、検出した回生電流に基づき、回生電流の相順検出によってモータ12の回転が逆転か否かを判定し、逆転を判定した場合に逆止弁16の故障を検知することができる。従って、前述した効果に加え、停止中にモータ12が正転した場合を除外できるので、逆止弁故障の検知精度を向上させることができる。
【0060】
また、一実施形態によれば、制御部33は、ポンプ11の停止中に逆止弁16の故障を検知した後のポンプ11の始動時に、モータ12を通常よりも緩やかに始動させるようにインバータ31を制御する。これにより、前述した効果に加え、始動時過電流の発生を回避することができる。更に,制御部33は、ポンプ11の運転後のポンプ11の停止時に、モータ12を通常よりも緩やかに停止させるようにインバータ31を制御する。これにより、前述した効果に加え、停止時過電圧の発生を回避することができる。また、逆止弁故障時からメンテナンス時までの間において、始動時過電流や停止時過電圧の発生に起因した新たな故障による断水を回避することができる。
【0061】
また、一実施形態によれば、ポンプ装置1は、逆止弁16、ポンプ11、モータ12、インバータ31及び電流測定部を有するユニットを並列に備えている。また、制御部33は、各々の当該ユニットのポンプ11のうち、故障が検知された逆止弁16に接続されたポンプ11を優先的に運転させるようにインバータ31を制御する。従って、前述した効果に加え、正常な逆止弁16に接続されたポンプ11が高負荷で連続運転されてしまう状況を避けることができる。また、逆止弁故障時からメンテナンス時までの間において、ポンプ11の高負荷連続運転に起因した新たな故障による断水を回避することができる。
【0062】
また、一実施形態によれば、制御部33は、停止中に逆止弁16の故障を検知した後、故障した逆止弁16に接続されたポンプ11における目標圧力一定制御の少水量側目標圧力の設定値を下げるように更新する。従って、前述した効果に加え、締め切り運転に相当する待機運転において、ポンプ11の発熱を抑制すると共に、省エネ運転を行うことができる。すなわち、逆止弁故障時からメンテナンス時までの間において、ポンプ11の発熱に起因した新たな故障による断水を回避できると共に、電気料金を抑制することができる。これに加え、特に少水量側では自動的に目標圧力が下がるため、ユーザ(住民)がポンプ装置1に何らかの不具合が生じたことを把握できる。また、大水量側では目標圧力の設定値を下げずに給水可能なため、ユーザの日常生活における給水不足の問題を回避することができる。
【0063】
(変形例)
各々の変形例は、矛楯しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。以下の説明は、各々の変形例について順に述べる。
【0064】
一実施形態では、過電流保護用の電流検出回路317がインバータ回路313内のシャント抵抗Rを流れる電流を検出したが、これに限定されない。例えば、ポンプ装置1は、インバータ回路313内の電流検出回路317に代えて、
図5に示すように、過電流保護用の電流検出回路317aを、インバータ回路313とモータ12との間に流れるU相、V相、W相の二次側電流を測定するように設けてもよい。この場合、インバータ回路313とモータ12との間に変流器CTが配置され、電流検出回路317aは、当該変流器CTを介して3相分の二次側電流を検出し、各相の電流値を測定する。なお、電流検出回路317aは、前述同様に、3相分の二次側電流のうち、少なくとも2相分の2次側電流を測定すればよい。変流器CT及び電流検出回路317aは、インバータの二次側電流を測定する電流測定部の他の一例である。このような変形例としても、既存の電流検出回路を逆止弁16の故障の検知に共用することに代わりはないので、一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、一実施形態では、インバータ31を制御盤20が備えた構成としたが、これに限らず、インバータ31を制御盤20の外部のモータ12に搭載し、インバータ31及びモータ12を一体化した構成としてもよい。このような変形例としても、一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、一実施形態では、ポンプ11の停止中に逆止弁の故障を検知した後、制御部33は、通常ステップST10でのポンプ始動条件成立まで、ポンプ11は,モータ停止状態で運転開始まで待機したが、これに限定されない。例えば、
図6に破線で示すように、ステップST9とステップST10との間に、ステップST9A,9Bを実行してもよい。この場合、ステップST9の後、ステップST9Aにおいて、制御部33は、通常よりも緩やかな保護始動動作を行う。具体的には、制御部33は、モータ12の停止状態において、当該モータ12を通常よりも緩やかに始動させるようにインバータ31を制御する。次に、ステップST9Aの後、ステップST9Bにおいて、制御部33は、故障が検知された逆止弁16に接続されたポンプ11を所定の低回転速度で待機運転させるようにインバータ31を制御する。このような変形例によれば、一実施形態の効果に加え、異常過熱しない低回転速度で待機運転する構成により、逆止弁故障時にポンプ11が停止すると発生する逆流を無くすことができる。また、この変形例は、少水量停止の場合も同様であり、少水量停止時にも低回転速度で待機運転を続けることにより、同様の効果を得ることができる。また、この変形例は、保護停止動作の後、通常よりも緩やかな保護始動動作を行う構成により、前述した効果に加え、始動時過電流の発生を回避することができる。また、逆止弁故障時からメンテナンス時までの間において、始動時過電流の発生に起因した新たな故障による断水を回避することができる。
【0067】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えば汎用のコンピュータに搭載されたプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0069】
1…ポンプ装置、11…ポンプ、12…モータ、13…吸込管、14…吐出管、15…合流管、16…逆止弁、17…圧力センサ、18…流量センサ、19…アキュムレータ、20…制御盤、31…インバータ、32…記憶部、33…制御部、100…受水槽、101…仕切弁。