(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127072
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】前庭電気刺激装置、該前庭電気刺激装置を有する制御システム、および制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240912BHJP
A63F 13/25 20140101ALI20240912BHJP
A63F 13/803 20140101ALI20240912BHJP
A63G 31/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/01 510
A63F13/25
A63F13/803
A63G31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035936
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 和輝
(72)【発明者】
【氏名】ラン ケン
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA21
5E555BA20
5E555BA38
5E555BA87
5E555BB20
5E555BB38
5E555BC21
5E555BE17
5E555CA21
5E555DA08
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】実際の加速度感覚に近い感覚の疑似加速度をユーザに与えることが可能な前庭電気刺激装置を提供することである。
【解決手段】ユーザ(Ur1)の前庭に電流を印加する第1電極(E1)および第2電極(E2)と、第1電極(E1)と第2電極(E2)との間の電流の目標値を受け付ける入力部(140)と、入力部(140)が受け付けた目標値に応じた電流を第1電極(E1)および第2電極(E2)に印加する制御回路(110)とを備え、制御回路(110)は、目標値に応じた電流の印加を開始したときから第1期間(Dr1)に亘って電流値を変化させて、第1電極(E1)と第2電極(E2)との間の電流値を目標値に到達させ、第1電極(E1)と第2電極(E2)との間の電流値が目標値に到達した状態から第2期間(Dr2)に亘って電流値を変化させて、目標値に応じた電流の印加を停止し、第2期間(Dr2)は、第1期間(Dr1)よりも長い期間である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの前庭に電流を印加する第1電極および第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間の電流の目標値を受け付ける入力部と、
前記入力部が受け付けた前記目標値に応じた電流を前記第1電極および前記第2電極に印加する制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記目標値に応じた電流の印加を開始したときから第1期間に亘って電流値を変化させて、前記第1電極と前記第2電極との間の電流値を前記目標値に到達させ、
前記第1電極と前記第2電極との間の電流値が前記目標値に到達した状態から第2期間に亘って電流値を変化させて、前記目標値に応じた電流の印加を停止し、
前記第2期間は、前記第1期間よりも長い期間である、前庭電気刺激装置。
【請求項2】
前記制御回路は、予め設定される電流の変化率を用いて、前記入力部が受け付けた前記目標値から前記第1期間および前記第2期間を定める、請求項1に記載の前庭電気刺激装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第1電極と前記第2電極との間の電流値を予め定められた上限閾値以下となるように制御する、請求項1に記載の前庭電気刺激装置。
【請求項4】
前記第1期間は、0.1秒以上であって0.3秒未満の期間である、請求項1に記載の前庭電気刺激装置。
【請求項5】
前記第2期間は、0.3秒以上であって2.0秒以下の期間である、請求項1に記載の前庭電気刺激装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の前記前庭電気刺激装置と、
前記前庭電気刺激装置と接続される外部装置と、を備える制御システムであって、
前記入力部は、前記目標値に加えて、前記第1電極と前記第2電極との間の電流の極性を受け付け、
前記外部装置は、
ユーザの操作を受け付ける操作部と、
ユーザに対して画像を表示する表示装置と、
前記操作部で受け付けた操作入力値に応じて、仮想空間内におけるオブジェクトの動作する画像を前記表示装置に表示させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記仮想空間内での前記オブジェクトの動作に基づいて前記前庭電気刺激装置に出力する前記目標値および前記極性を定める、制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記仮想空間内における前記オブジェクトの速度に基づいて前記目標値を定める、請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記仮想空間内における前記オブジェクトの質量を予め設定し、前記オブジェクトの質量に応じて前記目標値を補正する、請求項6に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記仮想空間内での前記オブジェクトの動作に基づいて定めた前記目標値および前記極性を前記前庭電気刺激装置に出力する前に、逆極性の電流を前記前庭電気刺激装置に出力する、請求項6に記載の制御システム。
【請求項10】
前記表示装置は、ユーザの頭部に取り付けられるヘッドマウントディスプレイである、請求項6に記載の制御システム。
【請求項11】
前庭電気刺激装置に用いられるコンピュータで実行される制御方法であって、
前記前庭電気刺激装置は、
ユーザの前庭に電流を印加する第1電極および第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間の電流の目標値を受け付ける入力部と、
前記入力部が受け付けた前記目標値に応じた電流を前記第1電極および前記第2電極に印加する制御回路とを備え、
前記制御方法は、
前記目標値に応じた電流の印加を開始したときから第1期間に亘って電流値を変化させて、前記第1電極と前記第2電極との間の電流値を前記目標値に到達させるステップと、
前記第1電極と前記第2電極との間の電流値が前記目標値に到達した状態から第2期間に亘って電流値を変化させて、前記目標値に応じた電流の印加を停止させるステップとを備え、
前記第2期間は、前記第1期間よりも長い期間である、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前庭電気刺激装置、該前庭電気刺激装置を含む制御システム、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの前庭に電気刺激を与えることによって、ユーザに疑似的な加速度を体験させる前庭電気刺激装置が開発されている。このような前庭電気刺激(GVS:Galvanic Vestibular Stimulation)は、ゲームまたは映画などアミューズメント分野、自動車運転シミュレーション等の特定の状況下における感覚をユーザに体験させるシミュレーション分野、および動揺病等の治療、予防の医療分野など多種多様な分野への活用が期待されている。
【0003】
特開2017-60581号公報(特許文献1)には、左右方向と前後方向とに加えて、上下方向の加速度をユーザに与えることが可能な前庭電気刺激装置が記載されている。
【0004】
特許文献1には、一人称視点のVR(Virtual Reality)ゲームに適用される前庭電気刺激装置について記載されている。より具体的には特許文献1には、ハングライダーで飛行する主キャラクタを、VRゲームをプレイするユーザに操作させ、当該主キャラクタの加速度情報に対応したレベルの電流値を電極に印加することが記載されている。また、特許文献1には、前庭電気刺激装置によって略矩形波の電流が前庭に印加されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
VR等の一人称視点のゲームに対して前庭電気刺激装置を適用する場合、一人称視点の視覚情報に合わせた電気刺激がユーザに与えられる。しかしながら、一人称視点の視覚情報に合わせて、単純に略矩形波の電流を電極に印加してユーザに電気刺激を与えるだけでは電気刺激によって発生する疑似加速度と実際にユーザが感じる加速度とが異なり、ユーザの視覚による認識と加速度感覚とに差異が生じてしまう場合がある。ユーザの視覚による認識と加速度感覚とに差異が生じると、動揺病の発生が誘発され、ユーザの没入感も低減してしまう。そのため、ユーザが知覚する実際の加速度感覚に近い感覚の疑似加速度を与えることが可能な前庭電気刺激装置が望まれている。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、実際の加速度感覚に近い感覚の疑似加速度をユーザに与えることが可能な前庭電気刺激装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る前庭電気刺激装置は、ユーザの前庭に電流を印加する第1電極および第2電極と、第1電極と第2電極との間の電流の目標値を受け付ける入力部と、入力部が受け付けた目標値に応じた電流を第1電極および第2電極に印加する制御回路とを備える。制御回路は、目標値に応じた電流の印加を開始したときから第1期間に亘って電流値を変化させて、第1電極と第2電極との間の電流値を目標値に到達させ、第1電極と第2電極との間の電流値が目標値に到達した状態から第2期間に亘って電流値を変化させて、目標値に応じた電流の印加を停止し、第2期間は、第1期間よりも長い期間である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前庭に電流を印加する場合に、電流を目標値まで立ち上げる期間よりも、電流を目標値から立ち下げる期間を長くすることにより、実際の加速度感覚に近い感覚の疑似加速度をユーザに与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】前庭電気刺激装置を有する実施の形態1の制御システムを示す図である。
【
図2】電極に電流が印加される一例を示す図である。
【
図3】比較例の前庭電気刺激装置による電流印加の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における前庭電気刺激装置による電流印加の一例を示す図である。
【
図5】前庭電気刺激装置における制御回路によって実行されるフローチャートである。
【
図6】実施の形態2における制御システムを説明するための図である。
【
図7】x軸方向の加速度を定める例を説明するための表である。
【
図8】実施の形態2におけるゲーム装置によって実行されるフローチャートである。
【
図9】予備的な疑似加速度を与える条件を説明するための図である。
【
図10】変形例における前庭電気刺激装置による電流印加の一例を示す図である。
【
図11】ピッチ方向の加速度感覚が与えられる電極配置を示す図である。
【
図12】ヨー方向の加速度感覚が与えられる電極配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
<制御システムの概要>
図1は、前庭電気刺激装置100を有する実施の形態1の制御システム1000を示す図である。実施の形態1の制御システム1000は、ユーザUr1に映像を見せ、映像に合わせた電気刺激をユーザUr1の前庭に与えるシステムである。実施の形態1の制御システム1000は、たとえば、遊園地などのアトラクションまたは映画館などのアミューズメント施設で用いられ得る。制御システム1000では、映像の表示による視覚情報に加えて当該視覚情報に合わせた加速度感覚をユーザUr1に与えることにより、ユーザUr1の没入感の低減を抑制できる。
【0013】
図1に示されるように、制御システム1000は、前庭電気刺激装置100と、映像装置200と、表示装置S1と、電極E1,E2とを備える。
図1には、電極E1,E2が装着されたユーザUr1が示されている。より具体的には、
図1には、ユーザUr1を上部から見下ろしたときのユーザUr1の頭部H1、右耳Er1、左耳Er2、および鼻N1が示されている。すなわち、
図1には、ユーザUr1の頭頂部が示されている。
【0014】
図1において頭部H1の左下近傍に、実空間における3軸方向を表すXYZ軸が示されている。実空間とは、ユーザUr1が存在する現実世界における空間である。この実空間のXYZ軸において「Z軸方向」は、ユーザが配置されている床面の鉛直方向である。
図1に示されるように、Z軸方向に垂直な方向を「Y軸方向」とし、さらにY軸方向およびZ軸方向に垂直な方向を「X軸方向」とする。以下では、Z軸の正方向を上側、Z軸の負方向を下側と称し、Y軸の正方向を前側、Y軸の負方向を後側、X軸の正方向を右側、X軸の負方向を左側と称する場合がある。
図1の例では、ユーザUr1の視線は、Y軸の正方向に向いている。
【0015】
図1に示されている表示装置S1は、ユーザUr1に対して映像を表示する装置である。表示装置S1は、たとえば、映画鑑賞用のスクリーン、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイなどである。
図1の例では、図示の便宜上、表示装置S1が実空間のZ軸の正方向側に向けて映像を表示しているが、実際はユーザUr1の視線に合わせて映像を表示するため、実空間のY軸の負方向側に向かって映像を表示する。
【0016】
表示装置S1には、走行する車Cr1の後部が表示されている。
図1に示されるように表示装置S1内においてもxyz軸が示されている。表示装置S1内に表示されているxyz軸は、映像内における3軸方向を表す。表示装置S1内のxyz軸は、車Cr1が存在する空間の3軸方向を表す。車Cr1は、y軸の正方向側に向かって直進している。
【0017】
以下では、映像内の3軸方向においても、実空間と同様にz軸の正方向を上側、z軸の負方向を下側と称し、y軸の正方向を前側、y軸の負方向を後側、x軸の正方向を右側、x軸の負方向を左側と称する場合がある。
【0018】
映像装置200は、制御部210と、記憶部220と、出力インターフェース230とを備える。制御部210は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサおよびRAM(Random Access Memory)などのメモリを含んで構成される。なお、制御部210は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードワイヤード回路であってもよい。
【0019】
記憶部220は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリ、磁気ディスク等によって実現される。記憶部220には、
図1に示されている車Cr1を含む映像データが記憶されている。制御部210は、当該映像データに基づいて、表示装置S1に車Cr1を含む映像を表示させる。具体的には、制御部210は、出力インターフェース230を介して表示装置S1に映像データを送信する。
【0020】
記憶部220に記憶されている映像データには、映像内のいずれのタイミングでユーザの前庭に電気刺激を与えるかという情報が紐付けられている。たとえば、映像データには、映像内において車Cr1が停止する期間には電気刺激を与えない、という情報が紐付けられている。また、映像データには、映像内において車Cr1が急旋回する期間には電気刺激を与える、という情報が紐付けられている。さらに、映像データには、ユーザに与えられる電気刺激ごとに、電流の極性と電流値の目標値との情報が紐付けられている。極性は、電流の流れる方向を意味する。実施の形態1における映像装置200は、映像データを流す期間において、電気刺激を与えるべきタイミングに達したとき、当該電気刺激の電流の極性と電流値の目標値との情報を、電気刺激データとして前庭電気刺激装置100に送信する。すなわち、電気刺激データは、電流の極性と電流値の目標値とを示す情報である。制御部210は、表示装置S1に映像を表示させつつ、電気刺激データを前庭電気刺激装置100に送信する。
【0021】
<前庭電気刺激装置100の構成>
以下では、前庭電気刺激装置100について説明する。前庭電気刺激装置100は、電気刺激をユーザUr1の前庭に与えることによって、ユーザUr1に疑似的な加速度感覚を与える装置である。前庭は、三半規管および耳石器内にある卵形嚢、球形嚢中の有毛細胞によって構成されている。三半規管は3軸の回転角加速度を受容し、卵形嚢および球形嚢は直線加速度を受容する。前庭に流れる電流値が大きいとユーザUr1が知覚する加速度感覚の大きさは大きくなり、前庭に流れる電流値が小さいとユーザUr1が知覚する加速度感覚の大きさは小さくなる。
【0022】
前庭電気刺激装置100は、制御回路110、出力インターフェース130、入力インターフェース140、および電極E1,E2を備える。制御回路110は、たとえば、ASIC、FPGAなどのハードワイヤード回路である。なお、制御回路110は、たとえば、CPU等のまたはMPUなどのプロセッサ、およびRAM等のメモリを含んで構成されてもよい。
【0023】
前庭電気刺激装置100には、入力インターフェース140を介して電気刺激データが入力される。制御回路110は、入力された電気刺激データを用いて、電極E1,E2に電流を印加する。上述したように、電気刺激データには、電流の極性と、電気値の目標値を示す情報が含まれている。前庭電気刺激装置100は、出力インターフェース130を介して、電極E1,E2に対して電気刺激データに基づく電流を印加する。
【0024】
図1に示されるように、電極E1,E2は、ユーザUr1の右耳Er1の後ろ側、左耳Er2の後ろ側にそれぞれ装着されている。より具体的には、電極E1,E2は、右側の乳様突起および左側の乳様突起とそれぞれ接するように配置されている。電極E1,E2は、ユーザの皮膚に直接触れるように配置される。たとえば、電極E1,E2はゲルなどの粘着力を有する接着部材によってユーザUr1の皮膚に接着されてもよいし、粘着テープ等によってユーザUr1の皮膚に貼り付けられてもよい。また、電極E1,E2は、図示されないイヤーマフに対して、乳様突起と接する位置で固定されてもよい。なお、電極E1,E2は、頭部H1において乳様突起ではない箇所と接するように配置されていてもよい。電極E1,E2の配置は、髪の毛、髭などの有毛部ではない箇所に配置されることが望ましい。
【0025】
前庭電気刺激装置100から電流が印加されることによって、電極E1と電極E2との間に電流が流れる。
図2は、電極E1,E2に電流が印加される一例を示す図である。
図2では、y軸の正方向側に直進する車Cr1が右方向D1(x軸の正方向)に急旋回する映像をユーザUr1に表示することに合わせて、疑似的なロール方向の加速度Ac1の感覚をユーザに与える例を説明する。
【0026】
図2の例において、前庭電気刺激装置100は、受信した電気刺激データに含まれる極性に基づき、電極E1が陽極となり、電極E2が陰極となるように電流を印加する。すなわち、電流は、電極E1から電極E2へと流れる。このとき、電流は、ユーザUr1の外耳道を通過して電極E1から電極E2へと流れることにより、前庭を刺激する。安全上の観点から、前庭電気刺激装置100は、電極E1と電極E2との間に印加される電流値の最大値が予め定められた上限閾値以下となるように構成されている。予め定められた上限閾値は、たとえば、4.0mAであって、前庭電気刺激装置100の製造時に決定され得る。
【0027】
これにより、前庭電気刺激装置100は、疑似的なロール方向の加速度Ac1が生じたような感覚をユーザUr1に与えることができる。これにより、ユーザUr1は、車Cr1が右方向D1に急旋回するという視覚情報に合わせた加速度Ac1を知覚することができる。制御システム1000では、映像に合わせた疑似的な加速度感覚をユーザUr1に与えることで、映像だけを視聴させる場合と比較して、ユーザUr1の映像への没入感の低減を抑制できる。
【0028】
このように、実施の形態1の前庭電気刺激装置100では、電極E1,E2を左右の乳様突起に配置することによって、ユーザUr1にロール方向の疑似加速度を与える。
【0029】
<前庭電気刺激装置による電気の印加手法>
図3は、比較例の前庭電気刺激装置による電流印加の一例を示す図である。
図3には、縦軸と横軸とを有するグラフが示されている。縦軸は、電極E1,E2間に印加される電流の電流値を表す。横軸は、時間を表す。
図3の線Ln1Zは、比較例における前庭電気刺激装置によって印加される電流値を示す線である。線Ln1Zは、いわゆる矩形波である。すなわち、比較例の前庭電気刺激装置100は、電気刺激データを受け付けたことに応じて、
図3に示される矩形波の電流を印加する。
【0030】
図3に示されるように、電流が印加されていないタイミングTm1Zから目標値の電流が印加されるまでのタイミングTm2Zまでの期間は、期間Dr1Zである。目標値の電流が印加されるタイミングTm3Zから電流の印加が停止するタイミングTm4Zまでの期間は、同様に、期間Dr1Zである。すなわち、比較例では、電流の目標値までの立ち上がり期間と、目標値からの立ち上がり期間とが同一の期間Dr1Zである。
【0031】
加速度感覚は、三半規管内のリンパ液が回転し、感覚受容体が発火することによってが生じると考えられている。リンパ液の回転運動には慣性が生じることから、電気刺激ではない実際にユーザに生じる加速度が消失した後、加速度感覚はユーザに知覚され続ける。そのため、加速度感覚は、視覚および聴覚よりも残効が生じやすい感覚である。
【0032】
比較例に示すような矩形波の電流をユーザの前庭に印加した場合、当該矩形波の電流の印加が停止した際に、ユーザは前庭電気刺激による疑似的な加速度が突然、消失したように感じてしまう。すなわち、矩形波による疑似的な加速度は、自然界で体験する加速度と異なるように知覚されてしまう。
図3に示される比較例の前庭電気刺激装置の電流印加では、残効を表現できていないことから、視覚による認識と加速度感覚との間に差異が生じてユーザUr1に違和感を与えてしまう場合がある。このため、比較例では、動揺病の発生が誘発され、没入感も低減してしまう。
【0033】
図4は、実施の形態1における前庭電気刺激装置100による電流印加の一例を示す図である。
図4の線Ln1は、実施の形態1の前庭電気刺激装置100によって印加される電流値を示す。上述したように、前庭電気刺激装置100は、目標値と極性とを含む電気刺激データに基づいて電流を印加する。
【0034】
図4の例では、線Ln1のピーク値が目標値となる。極性は、電気刺激データによって印加される電流の向きを意味する。すなわち、極性は、電極E1,E2のうちのいずれが陽極となり陰極となるかを示す。制御回路110は、どのような態様の電流を印加するかを電気刺激データに基づいて定める。前庭電気刺激装置100は、電気刺激データを受信したときに電流の印加を開始する。ある局面では、前庭電気刺激装置100は、電流の印加を開始するタイミングも電気刺激データに含まれており、当該タイミングを示す情報に基づいて電流の印加を開始してもよい。
【0035】
図4に示されるように、前庭電気刺激装置100は、電気刺激データを受信したことに基づき、タイミングTm1にて電流の印加を開始する。前庭電気刺激装置100は、タイミングTm1から印加する電流値を上昇させ、印加する電流値を目標値に到達させる。
図4に示されるように、タイミングTm2において、電極E1,E2間に印加される電流値は、目標値に到達する。タイミングTm1からタイミングTm2までに経過した期間は、期間Dr1である。言い換えれば、前庭電気刺激装置100は、電気刺激データに含まれる目標値に応じた電流の印加を開始したタイミングTm1から期間Dr1に亘って電流値を上昇させ続けることによって、電極E1,E2との間の電流値を当該目標値に到達させる。
【0036】
続いて、前庭電気刺激装置100は、電極E1,E2との間の電流値を当該目標値に到達したことに基づいて、電流の印加を停止するためにタイミングTm2から徐々に印加する電流値を低下させる。
図4に示されるように、タイミングTm3において、電極E1,E2間に印加される電流値は、ゼロとなる。すなわち、タイミングTm3において、電極E1,E2間には電流が印加されていない。
【0037】
タイミングTm2からタイミングTm3までに経過した期間は、期間Dr2である。言い換えれば、前庭電気刺激装置100は、電極E1,E2との間の電流値が目標値に到達した状態から期間Dr2に亘って電流値を低下させ続け、電気刺激データに応じた電流の印加を停止する。
【0038】
期間Dr1は、たとえば、0.05秒である。期間Dr2は、たとえば、0.15秒である。期間Dr2は、期間Dr1よりも長い期間である。このように、実施の形態1において、前庭電気刺激装置100は、電極E1,E2間の電流値を目標値から立ち下げる期間Dr2が、目標値まで立ち上げる期間Dr1よりも長くなるように電流を印加する。
【0039】
実施の形態1の前庭電気刺激装置100では、期間Dr2を期間Dr1よりも長くすることで、実際にユーザUr1が自然界で体験する加速度感覚に近い残効を表現することができる。すなわち、実施の形態1の前庭電気刺激装置100では、実際の加速度感覚に近い疑似的な加速度感覚を与えることができる。これにより、実施の形態1の前庭電気刺激装置100では、視覚による認識と加速度感覚との間の差異による違和感を抑え、没入感の低減を抑制できる。なお、期間Dr1は、本開示における「第1期間」に対応し得る。期間Dr2は、本開示における「第2期間」に対応し得る。
【0040】
実施の形態1における期間Dr1は、0.1秒以上であって0.3秒未満の期間であることが望ましい。期間Dr1は、0.1秒未満であると、電流印加が急峻に行われてしまう。そのため、ユーザUr1は、電極E1,E2と接する皮膚に痛みを感じてしまう場合がある。前庭電気刺激装置100では、期間Dr1が0.1秒以上であることにより、ユーザに痛みを与えてしまうことを抑制できる。期間Dr1は、1.0秒を越えると実際に加速度が生じる場合と比較して、立ち上がり期間が長くなることから、ユーザUr1に違和感を与えてしまう場合がある。
【0041】
期間Dr2は、0.3秒以上であって2.0秒以下の期間であることが望ましい。期間Dr2が0.3秒未満である場合は実際の加速度感覚で残効が生じる期間よりも短くなる。なお、ユーザUr1に加速度感覚を長い期間連続して与えることを示す情報が電気刺激データに含まれる場合、期間Dr2は2.0秒以上であってもよい。前庭電気刺激装置100では、期間Dr2が0.3秒以上であり2.0秒以下の期間であることにより、ユーザに違和感を与えることを抑制できる。
【0042】
なお、
図4の例では、前庭電気刺激装置100は、電流値が目標値に到達したことに基づいて、タイミングTm2にて電流値を低下させ始めた。しかしながら、前庭電気刺激装置100は、印加される電流値が目標値となった状態を所定の期間、維持してもよい。この場合、電気刺激データ内には、目標値の状態を維持する期間を示す期間情報がさらに含まれる。前庭電気刺激装置100は、当該期間情報に基づいて、目標値となった状態の電流の印加を維持する期間を決定する。
【0043】
また、
図4の例では、電流を上昇させる期間が期間Dr1である例を説明している。しかしながら期間Dr1は、比較例の矩形波の期間Dr1Zであってもよい。すなわち、前庭電気刺激装置100は、立ち上がり期間については比較例の矩形波と同様に電流を上昇させてもよい。
【0044】
さらに、実施の形態1では、前庭電気刺激装置100には、入力インターフェース140を介して電気刺激データが入力されることを説明した。しかしながら、前庭電気刺激装置100に入力されるデータは、電気刺激データに限られず、たとえば映像データ自体が入力されてもよい。この場合、前庭電気刺激装置100は、映像データを解析することにより、映像データ内におけるユーザUr1に感じさせるべき加速度の大きさとタイミングとを取得する。たとえば、前庭電気刺激装置100は、映像解析により、映像の中心となるオブジェクトと背景とを分離し、背景に対して変化したオブジェクトの距離、方向等を用いて、ユーザUr1に感じさせるべき加速度の大きさとタイミングとを算出し得る。
【0045】
なお、
図1~
図4の例では、電気刺激データには、電流値の目標値および極性の両方が含まれる構成について説明した。しかしながら、電気刺激データには、極性が含まれておらず、電流値の目標値だけが含まれていてもよい。この場合、前庭電気刺激装置100には、電流を印加する極性が予め定められる。たとえば、電極E1,E2の間に電流を印加するとき、前庭電気刺激装置100は、常に電極E1から電極E2へと電流が流れる極性で電流を印加するように構成され得る。これにより、前庭電気刺激装置100では、電気刺激データに含まれる情報容量を削減しつつ、映像に合わせた加速度の大きさの加速度感覚をユーザに与えることができる。このように、入力インターフェース140は、映像装置200から電流値の目標値だけを受け付けてもよい。
【0046】
<前庭電気刺激装置100において実行されるフローチャート>
図5は、前庭電気刺激装置100における制御回路110によって実行されるフローチャートである。制御回路110は、目標値を含む電気刺激データを受け付けたか否かを判断する(ステップS100)。電気刺激データを受け付けていない場合(ステップS100でNO)、制御回路110は、ステップS100の処理を繰り返す。
【0047】
電気刺激データを受け付けた場合(ステップS100でYES)、制御回路110は、電気刺激データに含まれる目標値から期間Dr1,Dr2を決定する(ステップS110)。たとえば、制御回路110は、図示されないROMに記憶されている電流の変化率を用いて、期間Dr1,Dr2を決定する(ステップS110)。電流の変化率とは、期間Dr1,Dr2をにおける電流の傾きである。
【0048】
図示されないROMには、電流上昇時の変化率と、電流低下時の変化率との各々を記憶する。電流上昇時の変化率の絶対値は、電流低下時の変化率の絶対値よりも大きい。換言すれば、電流上昇時の傾きの大きさは、電流低下時の傾きの大きさよりも、大きい。電流上昇時の傾きおよび電流低下時の傾きは、ユーザが実際に感じる加速度の知覚を模した傾きである。このように前庭電気刺激装置100には、ユーザが実際に感じる加速度に合わせた電流上昇時の変化率と電流低下時の変化率とが記憶されている。
【0049】
なお、制御回路110は、予め定められた変化率ではなく、他の方法で期間Dr1と期間Dr2とを定めてもよい。たとえば、予め目標値ごとに期間Dr1,Dr2が対応付けていてもよい。制御回路110は、目標値から直接、期間Dr1,Dr2を決定し得る。この場合、目標値ごとに対応づけられた期間Dr1,Dr2は、たとえば実験に基づいて定められ得る。
【0050】
制御回路110は、目標値に向けて電流を上昇させる(ステップS120)。すなわち、ステップS120にて制御回路110は、予め定められた電流上昇の変化率で電流の上昇を開始し、期間Dr1が経過したか否かを判断するためのタイマをスタートする。制御回路110は、期間Dr1が経過したか否かを判断する(ステップS130)。期間Dr1が経過していない場合(ステップS130でNO)、制御回路110は、処理をステップS120に戻す。
【0051】
期間Dr1が経過した場合(ステップS130でYES)、制御回路110は電流を低下させる(ステップS140)。すなわち、ステップS140にて制御回路110は、予め定められた電流低下の変化率で電流の低下を開始し、期間Dr2が経過したか否かを判断するためのタイマをスタートする。制御回路110は、期間Dr2が経過したか否かを判断する(ステップS150)。期間Dr2が経過していない場合(ステップS150でNO)、制御回路110は、処理をステップS140に戻す。期間Dr2が経過した場合(ステップS150でYES)、制御回路110は、電流の低下を停止する(ステップS160)。すなわち、制御回路110は、電流の印加を停止する。
【0052】
このように、実施の形態1の制御回路110は、予め定められた電流上昇の変化率を用いて、電気刺激データに応じた電流の印加を開始し、開始したときから期間Dr1に亘って電流値を上昇させて、電極E1,E2間の電流値を目標値に到達させる。その後、制御回路110は、予め定められた電流低下の変化率を用いて、電極E1,E2間の電流値が目標値に到達した状態から期間Dr1よりも長い期間Dr2に亘って電流値を低下させる。
【0053】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、映像装置200により映像が一方的に表示され、当該映像に合わせた電気刺激がユーザに与えられる構成について説明した。実施の形態2では、ユーザUr1が操作可能な操作部をさらに備え、ユーザUr1の操作に合わせて電気刺激が与えられる構成について説明する。なお、
図6において、
図1の前庭電気刺激装置100と重複する構成の説明は繰り返さない。
【0054】
図6は、実施の形態2における制御システム1000Aを説明するための図である。実施の形態2の制御システム1000Aは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)を用いてユーザUr1に仮想空間を見せ、仮想空間内のオブジェクトをユーザUr1に操作させ、当該オブジェクトの状況、動作に合わせた電気刺激をユーザUr1の前庭に与えるシステムである。制御システム1000Aは、たとえば、家庭用ゲーム装置、自動車等の移動体の運転シミュレーションに対して適用され得る。
【0055】
図6における制御システム1000Aは、実施の形態1における映像装置200に代えて、ゲーム装置200Aを備える。また、実施の形態1において表示装置S1は、映画鑑賞用のスクリーン等であるとして説明したが、実施の形態2において表示装置S1は、ヘッドマウントディスプレイである。
【0056】
なお、制御システム1000Aにおける前庭電気刺激装置100および電極E1,E2は、制御システム1000における前庭電気刺激装置100および電極E1,E2と同様の構成を有する。実施の形態2の制御システム1000Aは、ゲーム装置200A、表示装置S1、前庭電気刺激装置100、および電極E1,E2に加えてゲーム用のコントローラCt1を備える。実施の形態2で実行されるゲームは、車を運転するレースゲームである。
【0057】
コントローラCt1は、十字キーCs1と、ボタンAb1,Ab2とを少なくとも含む。十字キーCs1は、ユーザUr1によって操作されるオブジェクトの位置を操作するためのキーであって、スティック形式の入力装置など他の態様のキーもしくはボタンであってもよい。なお、コントローラCt1は、実際のハンドルを模した形状を有し、加速度センサ、ジャイロセンサなどによって検出されたハンドルの傾き具合を用いてハンドルの操作量が検出されるように構成されてもよい。また、コントローラCt1は、カメラ、深度センサ等によって検出されたユーザUr1の身体の一部の動きに応じて、ハンドルの操作量が検出されるように構成されてもよい。
【0058】
実施の形態2のゲーム装置200Aは、制御部210、記憶部220、出力インターフェース230に加えて、入力インターフェース240を備える。ゲーム装置200Aは、入力インターフェース240を介して、コントローラCt1に入力された操作入力値をコントローラCt1から受け付ける。操作入力値は、十字キーCs1およびボタンAb1,Ab2が押下されているか否かを示す情報である。
【0059】
図6に示されているように、ヘッドマウントディスプレイである表示装置S1は、ユーザUr1の視界の中心に車Cr1の後部が存在するようにVR用映像データを表示する。ユーザUr1は、コントローラCt1を操作することによって、目の前に映し出されている車Cr1を前進させたり、進行方向を変更したりすることができる。以下では、直進状態から進行方向が左右に変更されることを、「進行方向が左右に傾く」と称する場合がある。なお、
図6の例では車がユーザUr1の視界の中心に配置される例が示されているが、ユーザUr1は、車を運転する運転手の視界であってもよい。すなわち、VR用映像データは、車を俯瞰する第三者目線ではなく、運転手の一人称視点(POV:Point of view)であってもよい。
【0060】
より具体的には、ユーザUr1は、ボタンAb1を押下することによって、車Cr1を前進させる。また、ユーザUr1は、ボタンAb2を押下することによって、車Cr1の速度を減少させる。さらに、ユーザUr1は、十字キーCs1の右ボタンを押下することによって進行方向を右に傾け、十字キーCs1の左ボタンを押下することによって進行方向を左に傾けることができる。十字キーCs1の左右ボタンは、実空間の車におけるハンドルに対応し、ボタンAb1は、実空間の車におけるアクセルに対応し、ボタンAb2は、実空間の車におけるブレーキに対応する。
【0061】
図6の車Cr1の左側には、車Cr1が配置される仮想空間における3軸方向を表すxyz軸が示されている。仮想空間とは、ゲーム装置200A内に構成された仮想上の空間であって、ゲームに用いられる空間である。なお、仮想空間は、ゲーム装置200Aがインターネットを介して接続された図示されないサーバに構築されていてもよい。
【0062】
ゲーム装置200Aは、受け付けた操作入力値に基づいて、VR用映像データを表示装置S1に送信し、電気刺激データを前庭電気刺激装置100へ送信する。VR用映像データは、仮想空間内の車Cr1をユーザUr1に表示するためのデータである。
【0063】
<実施の形態2における電気刺激データの決定手法>
以下では、電気刺激データにおける極性および目標値を定める手法について説明する。実施の形態2の例では、ユーザUr1に対して、実空間のロール方向における疑似的な加速度のみを与えることができる。ゲーム装置200Aは、仮想空間内の車Cr1に生じたx軸方向における加速度に応じて、電気刺激データの目標値を定める。
【0064】
実施の形態2の例では、仮想空間の車Cr1のx軸方向における加速度は、車Cr1のハンドルの操作量と、y軸方向に直進する速度とから定められる。車Cr1のハンドルの操作量とは、十字キーCs1の左右ボタンの操作量であって、たとえば、十字キーCs1の押下が継続される時間である。ゲーム装置200Aは、十字キーCs1の押下時間が長い場合、ハンドルの操作量を大きくし、十字キーCs1の押下時間が短い場合、ハンドルの操作量を小さくする。
【0065】
また、ゲーム装置200Aは、ボタンAb1の押下時間が長い場合、車Cr1のy軸方向の速度を大きく上昇させ、ボタンAb1の押下時間が短い場合、車Cr1のy軸方向の速度を小さく上昇させる。なお、十字キーCs1の左右ボタンの操作量およびボタンAb1の操作量は、押下時間の長さではなく、キーまたはボタンを押圧する圧力の高さで定められてもよい。
【0066】
車Cr1が直進している状態から進行方向が傾くことにより、仮想空間内における車Cr1にはx軸方向の加速度が生じる。制御システム1000Aでは、進行方向が傾いている方向に対応する電極を陽極とすることによって、ユーザUr1に車Cr1と一体的に移動しているような感覚を与えることができる。すなわち、制御システム1000Aでは、仮想空間内の車Cr1に生じたx軸方向の加速度に応じて、ユーザUr1に対してロール方向の疑似的な加速度を与える。
【0067】
より具体的には、ゲーム装置200Aは、進行方向が傾く方向に応じて電気刺激データに含ませる極性を変化させる。たとえば、ゲーム装置200Aは、x軸の正方向側に進行方向が傾く方向で加速度が発生する場合、電極E1が陽極となる極性で電気刺激データを送信する。ゲーム装置200Aは、x軸の負方向側に進行方向が傾く方向で加速度が発生する場合、電極E1が陰極となる極性で電気刺激データを送信する。これにより、制御システム1000Aは、仮想空間内における車Cr1の進行方向の傾きに合わせた方向の疑似的な加速度をユーザUr1に与えることができる。
【0068】
続いて、電気刺激データに含まれる目標値の決定手法について、
図7を用いて説明する。目標値は、x軸方向の加速度の大きさに基づいて定められる。
図7は、x軸方向の加速度を定める例を説明するための表である。上述したゲーム装置200Aでは、車Cr1のx軸方向への操作量と、仮想空間内での車Cr1のy軸方向の速度(km/h)とに基づいて、車Cr1のx軸方向に加わる加速度を定めている。言い換えれば、ゲーム装置200Aは、十字キーCs1の操作量と、ボタンAb1の操作量とに基づいて車Cr1に生じるx軸方向の加速度を定める。
【0069】
図7には、車Cr1のy軸方向の速度、および車Cr1のハンドルの操作量ごとに生じる加速度の大きさが示されている。
図7に示される表の上欄には、車Cr1が止まっている状態(速度がゼロ)と、車Cr1が速度V1で走行している状態と、車Cr1が速度V2で走行している状態とが示されている。速度V2は、速度V1よりも速い速度である。
【0070】
図7に示される表の左欄には、ユーザUr1によって十字キーCs1の操作がされていない状態の傾き量(直進状態)と、十字キーCs1が0.5秒間押下されたときの傾き量Am1と、十字キーCs1が1秒間押下されたときの傾き量Am2とが示されている。傾き量Am2は、傾き量Am1よりも大きい。
【0071】
車Cr1が止まっている状態において、ユーザUr1によって十字キーCs1が操作されたとき、ハンドルの操作量にかかわらず、車Cr1にx軸方向の加速度は発生しない。また、ユーザUr1の十字キーCs1に操作されていない状態で、車Cr1が直進を続ける場合、車Cr1の直進の速度にかかわらず、車Cr1にx軸方向の加速度は発生しない。
【0072】
車Cr1が速度V1で直進中に、傾き量Am1で車Cr1を傾ける操作のがされた場合、ゲーム装置200Aは、車Cr1にx軸方向の加速度G1が発生したと判断する。車Cr1が速度V2で直進中に、傾き量Am1で車Cr1を傾ける操作がされた場合、ゲーム装置200Aは、車Cr1にx軸方向の加速度G2が発生したと判断する。また、車Cr1が速度V1で直進中に、傾き量Am2で車Cr1を傾ける操作がされた場合、ゲーム装置200Aは、車Cr1にx軸方向の加速度G2が発生したと判断する。車Cr1が速度V2で直進中に、傾き量Am2で車Cr1を傾ける操作がされた場合、ゲーム装置200Aは、車Cr1にx軸方向の加速度G3が発生したと判断する。
【0073】
加速度G1は、加速度G1,G2,G3のうち、最も小さい。加速度G3は、加速度G1,G2,G3のうち、最も大きい。加速度G2は、加速度G1よりも大きく、加速度G3よりも小さい。
【0074】
ゲーム装置200Aは、車Cr1に生じるx軸方向の加速度の大きさが大きければ目標値を高くし、x軸方向の加速度の大きさが小さければ目標値を低くする。すなわち、
図7の例においてゲーム装置200Aは、x軸方向の加速度の大きさに基づいて目標値を定める。
【0075】
また、ゲーム装置200Aは、仮想空間内における車Cr1の質量に応じて、目標値を補正してもよい。車Cr1の質量が大きいと、車Cr1の進行方向が傾きにくくなることから、ゲーム装置200Aは、車Cr1の質量が大きい場合は、x軸方向に生じる加速度を小さくし、車Cr1の質量が小さい場合は、x軸方向に生じる加速度を大きく補正してもよい。
【0076】
<ゲーム装置200Aにおいて実行されるフローチャート>
図8は、実施の形態2におけるゲーム装置200Aによって実行されるフローチャートである。ゲーム装置200Aは、ゲーム起動命令を受け付けたか否かを判断する(ステップS210)。ゲーム装置200Aは、ゲーム起動命令を受け付けていない場合(ステップS210でNO)、ステップS210の処理を繰り返す。
【0077】
ゲーム装置200Aは、ゲーム起動命令を受け付けた場合(ステップS210でYES)、レースゲームを開始し、ユーザの操作を検出したか否かを判断する(ステップS220)。ゲーム装置200Aは、ユーザの操作を検出した場合(ステップS220でYES)、操作量に応じて、オブジェクト(車Cr1)の加速度を更新する(ステップS230)。すなわち、ゲーム装置200Aは、十字キーCs1が押下された場合は傾き量を更新し、ボタンAb1が押下された場合は速度を更新する(ステップS230)。その後、ゲーム装置200Aは、オブジェクトに発生しているx軸方向の加速度を取得する(ステップS240)。
【0078】
ゲーム装置200Aは、ユーザの操作が検出されなかった場合(ステップS220でNO)、オブジェクトに発生しているx軸方向の加速度を取得する(ステップS240)。ゲーム装置200Aは、オブジェクトに生じるx軸方向の加速度に基づいて目標値を決定し、電気刺激データとして前庭電気刺激装置100に出力する(ステップS250)。ゲーム装置200Aは、ゲーム終了命令を受け付けた否かを判断する(ステップS260)。ゲーム終了命令を受け付けていない場合(ステップS260でNO)、ゲーム装置200Aは、処理をステップS220へと戻す。ゲーム終了命令を受け付けた場合(ステップS260でYES)、ゲーム装置200Aは、処理を終了する。
【0079】
このように、実施の形態2のゲーム装置200Aは、車Cr1の速度、車Cr1の進行方向の傾き、および車Cr1の質量に応じて、電気刺激データを定めることができる。これにより、実施の形態2のゲーム装置200Aでは、仮想空間内の車Cr1の動作に合わせた疑似的な加速度をユーザUr1に与えることができる。また、ゲーム装置200Aは、ユーザUr1の操作に基づいて、車Cr1の速度と、車Cr1のハンドルの操作量をリアルタイムで変化させる。これにより、実施の形態2のゲーム装置200Aでは、ゲームの進行内容に合わせてインタラクティブにユーザUr1の前庭に電気刺激を与えることができる。
【0080】
<変形例>
実施の形態2では、仮想空間内において仮想空間内において、車Cr1に生じたx軸方向の加速度に基づいて電気刺激データが出力される例について説明した。変形例では、疑似加速度を与える前に予備的に逆極性の疑似加速度を与え、ユーザが知覚する疑似加速度の大きさを、実際の大きさよりも大きいものとして知覚させるす例を説明する。
【0081】
図9は、予備的な疑似加速度を与える条件を説明するための図である。
図9には、レースゲームのコースK1上を走行する車Cr1を俯瞰したときの図が示されている。コースK1は、右カーブCu1を有する。チェックポイントCp1は、コースK1上において、右カーブCu1の前に配置されている。すなわち、チェックポイントCp1は、チェックポイントCp1を越えた先に右カーブCu1が存在することを示している。右カーブCu1では、車Cr1は、右に曲がる必要がある。そのため、車Cr1が右カーブCu1の走行中に、ユーザUr1には、X軸の正方向に対して傾くロール方向の疑似加速度が与えられる。
【0082】
仮想空間内において、車Cr1は、疑似加速度がユーザに与えられる前にチェックポイントCp1に到達する。ゲーム装置200Aは、チェックポイントCp1に車Cr1が到達したことに基づいて、X軸の負方向(左方向)に対して傾くロール方向の予備的な疑似加速度をユーザに与えるように電気刺激データを出力する。チェックポイントCp1におけるX軸の負方向に対して傾くロール方向の予備的な疑似加速度の大きさは、右カーブCu1におけるX軸の正方向に対して傾くロール方向の疑似加速度の大きさよりも小さい。
【0083】
図10は、変形例における前庭電気刺激装置100による電流印加の一例を示す図である。前庭電気刺激装置100は、X軸の負方に対して傾けるロール方向の予備的な疑似加速度に対応する電気刺激データを受信したことに基づいて、タイミングTm21から電流の印加を開始する。予備的な疑似加速度に対応する電気刺激データによる電流値は、タイミングTm22で目標値I2に到達する。その後、前庭電気刺激装置100は、タイミングTm23で電流の印加が終了する。
【0084】
車Cr1がチェックポイントCp1を通過して、右カーブCu1に進入することによってX軸の正方向(右方向)に対して傾くロール方向の疑似加速度がタイミングTm23にて発生する。すなわち、前庭電気刺激装置100は、車Cr1が右カーブCu1に到達したことにより、タイミングTm23から電流の印加を開始する。右カーブCu1への進入による疑似加速度に対応する電気刺激データによる電流値は、タイミングTm24で目標値I1に到達する。その後、前庭電気刺激装置100は、タイミングTm25で電流の印加を終了する。
図10においても、期間Dr22は、期間Dr21よりも長く、期間Dr24は、期間Dr23よりも長い。
【0085】
このように、ゲーム装置200Aは、仮想空間内におけるチェックポイントCp1に車Cr1が到達したときにX軸の負方向の加速度に対応する極性で、
図10に示される目標値I2を含む電気刺激データを出力する。ゲーム装置200Aは、目標値I2を含む電気刺激データを出力した後に、X軸の正方向の加速度に対応する極性で、
図10に示される目標値I1を含む電気刺激データを出力する。
【0086】
これにより、変形例1の制御システム1000Aでは、逆極性の予備的な疑似加速度を与えることで、その後に発生する疑似加速度の大きさを、より大きくユーザに知覚させることができる。すなわち、変形例1では、ユーザが知覚する疑似加速度の大きさを、実際の大きさよりも大きいものであるように知覚させることができる。なお、チェックポイントCp1は、本開示における「所定領域」に対応し得る。X軸の負方向は、本開示における「第1方向」に対応し得る。X軸の正方向は、本開示における「第2方向」に対応し得る。
【0087】
なお、実施の形態2では、ゲーム装置200Aと、前庭電気刺激装置100と、表示装置S1とが別体として設けられる例について説明した。しかしながら、ゲーム装置200Aと、前庭電気刺激装置100と、表示装置S1とは、一体として1つの筐体内に格納されていてもよい。すなわち、ヘッドマウントディスプレイである表示装置S1内部に、ゲーム装置200Aと、前庭電気刺激装置100とが格納されてもよい。
【0088】
また、ゲーム装置200Aと、前庭電気刺激装置100とが一体として1つの筐体内に格納され、表示装置S1が別体であってもよい。また、表示装置S1は、ヘッドマウントディスプレイに限られず、たとえば、スマートグラスであってもよいし、タブレット端末、ホログラムを用いた表示装置であってもよい。
【0089】
また、
図7では、y軸方向の速度と、傾き量とからx軸方向の加速度とを算出する例を説明した。しかしながら、制御回路110は、仮想空間内におけるオブジェクトの角速度に応じて目標値を定めてもよい。すなわち、ゲーム装置200Aは、大きい角速度で右回転していると判断する場合、ユーザUr1を右に傾ける極性で目標値が大きくなるように定める。一方で、ゲーム装置200Aは、小さい角速度で右回転していると判断する場合、ユーザUr1を右に傾ける極性で目標値が小さいなるように定める。さらに、ゲーム装置200Aは、角速度に加えて、y軸方向への速度を考慮して、目標値を補正してもよい。たとえば、ゲーム装置200Aは、角速度が小さい場合であっても、y軸方向への速度が大きい場合は目標値が大きくなるように補正してもよい。
【0090】
<疑似的な加速度感覚の方向>
上述では、ユーザUr1の両耳の後ろ側に各電極が配置されることによって、ロール方向の加速度感覚がユーザUr1に与えられる例について説明した。しかしながら、ユーザUr1に与えられる加速度感覚の方向は、ロール方向に限られず、ピッチ方向またはヨー方向であってもよい。以下では、電極の配置、個数を実施の形態1の例から変更して、ピッチ方向、ヨー方向の加速度感覚を与える例を説明する。
【0091】
図11は、ピッチ方向の加速度感覚が与えられる例を説明するための図である。
図11では、右耳から右眼窩を通過することで右の前庭を刺激する電流と、左耳から左眼窩を通過することで左の前庭を刺激する電流との2つの電流を流す例を説明する。
図11の例では、前庭電気刺激装置100は、電極E1,E2に加えて、電極E3,E4を有する。
【0092】
図11に示されているように、電極E1は、左耳Er2の後方に装着されている。電極E3は、右耳Er1の後方に装着されている。すなわち、電極E1,E3は、ユーザUr1の頭部H1における両側の側頭部にそれぞれ配置されている。電極E2は、左眼窩部の上部に装着されている。電極E4は、右眼窩部の上部に装着されている。すなわち、電極E2,E4は、ユーザUr1の頭部H1における前頭部に配置されている。
【0093】
前庭電気刺激装置100は、電極E1と電極E2との間に電流を印加し、電極E3と電極E4との間に電流を印加する。すなわち、電極E1と電極E2との間に電流が流れ、電極E3と電極E4との間に電流が流れる。
図11の例では、前庭電気刺激装置100は、電極E1および電極E3が陽極となる極性で電流を印加する。
【0094】
このような方向で電流を印加することで、
図11に示されるように、ユーザUr1は、疑似的なピッチ方向の加速度Ac2が生じたような感覚を有する。前庭電気刺激装置100は、電極E2,E4が陽極となるように電流を印加することにより、加速度Ac2と逆向きのピッチ方向における疑似的な加速度をユーザUr1に与えることができる。
【0095】
図12は、ヨー方向の加速度感覚が与えられる例を説明するための図である。
図12における各電極の配置は、
図11の各電極の配置と同様である。
図12の例では、前庭電気刺激装置100は、
図11と異なり、電極E1,E4が陽極となる極性で電流を印加している。これにより、前庭電気刺激装置100は、
図12に示されるような疑似的なヨー方向の加速度Ac3が生じたような感覚をユーザUr1に与えることができる。
【0096】
具体的には、ユーザUr1は、頭部H1がZ軸回りに左回転するような感覚を有する。前庭電気刺激装置100は、電極E2,E3が陽極となる極性で電流を印加することにより、加速度Ac3と逆向きのヨー方向における疑似的な加速度感覚をユーザUr1に与えることができる。この場合、ユーザUr1は、頭部H1がZ軸回りに右回転するような感覚を有する。
【0097】
このように、前庭電気刺激装置100は、電極の個数、配置、極性を変更することによって、ユーザUr1にロール方向、ピッチ方向、ヨー方向の加速度を与えることができる。なお、実施の形態2のゲーム装置では、仮想空間内の車Cr1に生じる加速度の方向に応じて、ユーザUr1に加速度感覚が与えられる事説明したが、仮想空間内の車Cr1に生じる加速度の方向と、ユーザUr1に与えられる加速度感覚の方向は対応しなくともよい。
【0098】
具体的には、制御システム1000Aでは、仮想空間内の車Cr1に生じたx軸方向の加速度に応じて、ユーザUr1に対して、ロール方向ではなくピッチ方向またヨー方向の疑似的な加速度感覚を与えてもよい。また、制御システム1000Aでは、仮想空間内の車Cr1に生じたz軸方向またはy軸方向の加速度に応じて、ユーザUr1に対してロール方向の疑似的な加速度感覚を与えてもよい。
【0099】
<付記1>
ユーザの前庭に電流を印加する第1電極および第2電極と、
第1電極と第2電極との間の電流の目標値を受け付ける入力部と、
入力部が受け付けた目標値に応じた電流を第1電極および第2電極に印加する制御回路とを備え、
制御回路は、
目標値に応じた電流の印加を開始したときから第1期間に亘って電流値を変化させて、第1電極と第2電極との間の電流値を目標値に到達させ、
第1電極と第2電極との間の電流値が目標値に到達した状態から第2期間に亘って電流値を変化させて、目標値に応じた電流の印加を停止し、
第2期間は、第1期間よりも長い期間である、前庭電気刺激装置。
【0100】
<付記2>
制御回路は、予め設定される電流の変化率を用いて、入力部が受け付けた目標値から第1期間および第2期間を定める、付記1に記載の前庭電気刺激装置。
【0101】
<付記3>
制御回路は、第1電極と第2電極との間の電流値を予め定められた上限閾値以下となるように制御する、付記1または付記2に記載の前庭電気刺激装置。
【0102】
<付記4>
第1期間は、0.1秒以上であって0.3秒未満の期間である、付記1から付記3のいずれか1つに記載の前庭電気刺激装置。
【0103】
<付記5>
第2期間は、0.3秒以上であって2.0秒以下の期間である、付記1から付記4のいずれか1つに記載の前庭電気刺激装置。
【0104】
<付記6>
付記1から付記5のいずれか1つに記載の前庭電気刺激装置と、
前庭電気刺激装置と接続される外部装置と、を備える制御システムであって、
入力部は、目標値に加えて、第1電極と第2電極との間の電流の極性を受け付け、
外部装置は、
ユーザの操作を受け付ける操作部と、
ユーザに対して画像を表示する表示装置と、
操作部で受け付けた操作入力値に応じて、仮想空間内におけるオブジェクトの動作する画像を表示装置に表示させる制御部とを備え、
制御部は、
仮想空間内でのオブジェクトの動作に基づいて前庭電気刺激装置に出力する目標値および極性を定める、制御システム。
【0105】
<付記7>
制御部は、仮想空間内におけるオブジェクトの速度に基づいて目標値を定める、付記6に記載の制御システム。
【0106】
<付記8>
制御部は、仮想空間内におけるオブジェクトの質量を予め設定し、オブジェクトの質量に応じて目標値を補正する、付記6または付記7に記載の制御システム。
【0107】
<付記9>
制御部は、仮想空間内でのオブジェクトの動作に基づいて定めた目標値および極性を前庭電気刺激装置に出力する前に、逆極性の電流を前庭電気刺激装置に出力する、付記6から付記8のいずれか1つに記載の制御システム。
【0108】
<付記10>
表示装置は、ユーザの頭部に取り付けられるヘッドマウントディスプレイである、付記6~付記9のいずれか1つに記載の制御システム。
【0109】
<付記11>
前庭電気刺激装置に用いられるコンピュータで実行される制御方法であって、
前庭電気刺激装置は、
ユーザの前庭に電流を印加する第1電極および第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間の電流の目標値を受け付ける入力部と、
入力部が受け付けた目標値に応じた電流を第1電極および第2電極に印加する制御回路とを備え、
制御方法は、
目標値に応じた電流の印加を開始したときから第1期間に亘って電流値を変化させて、第1電極と第2電極との間の電流値を目標値に到達させるステップと、
第1電極と第2電極との間の電流値が目標値に到達した状態から第2期間に亘って電流値を変化させて、目標値に応じた電流の印加を停止させるステップとを備え、
第2期間は、第1期間よりも長い期間である、制御方法。
【0110】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
100 前庭電気刺激装置、110 制御回路、130,230 出力インターフェース、140,240 入力インターフェース、200 映像装置、200A ゲーム装置、210 制御部、220 記憶部、1000,1000A 制御システム、Ab1 ボタン、Ac1,G1~G3 加速度、Am1,Am2 傾き量、Cp1 チェックポイント、Cr1 車、Cs1 十字キー、Ct1 コントローラ、Cu1 右カーブ、D1 右方向、Dr1,Dr2,Dr1Z,Dr21~Dr24 期間、E1,E2 電極、Er1 右耳Er1 左耳、H1 頭部、I1,I2 目標値、K1 コース、Ln1,Ln1Z 線、N1 鼻、S1 表示装置。