(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127073
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電極パッド、および電極パッドを備える電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20240912BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61N1/04
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035937
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラン ケン
(72)【発明者】
【氏名】松井 和輝
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB04
4C053BB13
4C053BB31
4C053BB36
4C053JJ21
(57)【要約】
【課題】本開示は、対象物との密着性を確保しつつ、人に与える刺激痛を軽減し、効果的に電気刺激を行うことができる電極パッド、および電極パッドを備える電気刺激装置を提供する。
【解決手段】電極パッドEは、ユーザUr1の皮膚に密着させ、電気刺激を行うための電極パッドである。電極パッドEは、導電性のベース基板1と、ベース基板1表面に設けられ、導電性を有する複数のマイクロニードル2と、複数のマイクロニードル2が設けられていないベース基板1の表面を覆うコーティング層3と、を備える。コーティング層3の電気抵抗は、複数のマイクロニードル2の電気抵抗よりも高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に密着させ、電気刺激を行うための電極パッドであって、
導電性のベース基板と、
前記ベース基板の第1面に設けられ、導電性を有する複数のマイクロニードルと、
前記複数のマイクロニードルが設けられていない前記ベース基板の前記第1面を覆うコーティング層と、を備え、
前記コーティング層の電気抵抗は、前記複数のマイクロニードルの電気抵抗よりも高い、電極パッド。
【請求項2】
前記ベース基板の前記第1面の裏面である第2面に配置され、前記ベース基板と電気的に接続される配線と、
前記ベース基板の前記第2面および、前記配線の一部を覆う絶縁カバーと、をさらに備える、請求項1に記載の電極パッド。
【請求項3】
前記電極パッドの外側に配置した前記複数のマイクロニードルの各々の高さは、前記電極パッドの内側に配置した前記複数のマイクロニードルに各々の高さより高い、請求項1に記載の電極パッド。
【請求項4】
前記複数のマイクロニードルの各々は、前記ベース基板の前記第1面の法線方向に対して突起部が傾いて前記第1面に設けられている、請求項1に記載の電極パッド。
【請求項5】
前記複数のマイクロニードルの各々は、突起部の太さが10μm以下で、高さが50μm~200μm以下である、請求項1に記載の電極パッド。
【請求項6】
前記ベース基板は、導電性シリコンで形成され、
前記複数のマイクロニードルは、高分子ゲルで形成されている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電極パッド。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の前記電極パッドと、
前記電極パッドと電気的に接続され、前記電極パッドで前記対象物に対して電気刺激を行うためで信号を前記電極パッドに供給する制御回路と、を備える電気刺激装置。
【請求項8】
前記対象物は人体であり、
前記電極パッドで前記人体に電気刺激を与える、請求項7に記載の電気刺激装置。
【請求項9】
前記対象物は内耳の前庭であり、
前記電極パッドで前記前庭に電気刺激を与える、請求項7に記載の電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極パッド、および電極パッドを備える電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内耳の前庭器官(単に、前庭ともいう)に対し、電気刺激を与えることにより、疑似的に加速度感覚を励起させる研究や開発が行われている。特開2017-060581号公報(特許文献1)では、左右の乳様突起上の皮膚や首の皮膚に電極パッドを設置し、当該電極パッドに、両極性の往復電流信号を印加することで疑似的に加速度感覚を励起させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1などの電気刺激装置に使用される電極パッドには、電極材料として板状の高分子ゲルが用いられる。板状の高分子ゲルを電極パッドに用いた場合、汗、汚れなどが付着することで電極パッドと皮膚(対象物)との密着(粘着)度が低下してゆく。電極パッドと皮膚との密着度が低下すると、電極パッドにおいて電荷が局在化して皮膚表面で放電現象が生じやすくなり、予想外の刺激痛を人に与える虞があった。また、電極パッドにおいて電荷が局在化して皮膚表面で放電現象が生じると、前庭器官に対して与える電気刺激の効果が低下することになる。
【0005】
そこで、本開示の目的は、対象物との密着性を確保しつつ、人に与える刺激痛を軽減し、効果的に電気刺激を行うことができる電極パッド、および電極パッドを備える電気刺激装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る電極パッドは、対象物に密着させ、電気刺激を行うための電極パッドである。電極パッドは、導電性のベース基板と、ベース基板の第1面に設けられ、導電性を有する複数のマイクロニードルと、複数のマイクロニードルが設けられていないベース基板の第1面を覆うコーティング層と、を備える。コーティング層の電気抵抗は、複数のマイクロニードルの電気抵抗よりも高い。
【0007】
本開示の一形態に係る電気刺激装置は、上記に記載の電極パッドと、電極パッドと電気的に接続され、電極パッドで対象物に対して電気刺激を行うためで信号を電極パッドに供給する制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、対象物との密着性を確保しつつ、人に与える刺激痛を軽減し、効果的に電気刺激を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電気刺激装置の概略図である。
【
図2】実施の形態に係る電極パッドの概略図である。
【
図3】実施の形態に係る電極パッドの断面図である。
【
図4】電極パッドによる電気刺激の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る電極パッド、および電極パッドを備える電気刺激装置について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。以下に説明する電極パッドは、例えば、疑似的に加速度感覚を励起させるための前庭電気刺激装置(GVS:Galvanic Vestibular Stimulation)に適用され、人体(対象物)の乳様突起上の皮膚表面に密着させて電流を印加して前庭器官に電気刺激を与えることができる。しかし、電極パッドは、前庭電気刺激装置の用途に限定されない。例えば、電極パッドは、経頭脳電流刺激装置(tDCS:transcranial direct current stimulation)、低周波治療器等にも適用することができる。なお、電極パッドは、単に電極とも称される。
【0011】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る電気刺激装置10の概略図である。
図2は、実施の形態に係る電極パッドEの概略図である。
図3は、実施の形態に係る電極パッドEの断面図である。電気刺激装置10は、電極パッドE(E1,E2)、制御回路100を含む。電気刺激装置10では、
図1に示すように、ユーザUr1に電極パッドEを装着する。なお、
図1には、上部から見下ろしたユーザUr1が図示されており、ユーザUr1の頭部H1、右耳Er1、左耳Er2、および鼻N1が図示されている。
【0012】
図1には、ユーザUr1が存在する実空間の3軸方向を表すXYZ軸が示されている。このXYZ軸において、ユーザUr1が立っている床面の鉛直方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に垂直な方向であってユーザUr1が向く方向を「Y軸」とし、さらにY軸方向およびZ軸方向に垂直な方向を「X軸方向」とする。なお、Z軸の正方向を上側、Z軸の負方向を下側と称し、Y軸の正方向を前側、Y軸の負方向を後側、X軸の正方向を右側、X軸の負方向を右側と称する場合がある。
【0013】
電気刺激装置10は、ユーザUr1の前庭器官に電気刺激を与えることによって、ユーザUr1に疑似的な加速度感覚を与える装置である。前庭器官は、三半規管および耳石器内にある卵形嚢,球形嚢中の有毛細胞によって構成されている。三半規管は3軸の回転角加速度を受容し、卵形嚢および球形嚢は直線加速度を受容する。電気刺激装置10では、制御回路100がユーザUr1に装着した電極パッドEに電流を印加することにより、電流値に応じた加速度感覚をユーザUr1に与えることができる。
【0014】
制御回路100は、CPU110、入力インターフェース120、および出力インターフェース130を含む。制御回路100は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードワイヤード回路である。CPU(Central Processing Unit)110は、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成されてもよい。
【0015】
入力インターフェース120は、ゲーム機器、遊園地などのアトラクション装置などに接続される。そのため、電気刺激装置10は、入力インターフェース120を介してゲーム機器などから電気刺激データが入力される。CPU110は、入力された電気刺激データに基づいて、電極パッドE1,E2に印加する電流値を演算する。出力インターフェース130は、電極パッドE1,E2と配線を介して接続され、CPU110で演算した電流値を電極パッドE1,E2に印加する。
【0016】
電極パッドE1は、ユーザUr1の右耳Er1の後ろ側に、電極パッドE2は、左耳Er2の後ろ側にそれぞれ装着される。より具体的に、電極パッドE1は、右耳Er1側の乳様突起に、電極パッドE2は、左耳Er2側の乳様突起にそれぞれ装着される。電極パッドE(E1,E2)は、後述するようにマイクロニードル2が表面に形成されているので乳様突起に貼り付けることができる。もちろん、電極パッドE(E1,E2)が乳様突起から剥がれないように、イヤーマフ等で電極パッドE(E1,E2)を押さえる構成であってもよい。なお、電極パッドE(E1,E2)を貼り付ける位置には、髪の毛、髭などの有毛部分でない位置が好ましい。
【0017】
次に、電気刺激装置10の動作について説明する。電気刺激装置10は、たとえばゲームにおいて車を右方向(X軸の正方向)に旋回させた場合、実際の車で感じる右方向の加速度をユーザUr1が感じられるように電極パッドE(E1,E2)に電流を印加する。具体的に、電気刺激装置10は、ユーザUr1が右方向への旋回を感じられるように擬似的な加速度感覚をユーザUr1に励起させるため、電極パッドE2を陰極、電極パッドE1を陽極とするように電流を印加する。電極パッドE1から電極パッドE2へと電流が流れると、ユーザUr1の耳穴内部を通過して電流が流れて前庭器官に電気刺激を与えることができる。なお、安全上の観点から、電極パッドE1と電極パッドE2との間に流す電流値は、4.0mA以下にすることが好ましい。
【0018】
これにより、電気刺激装置10は、ゲームにおいて車を右方向に旋回させる画像に合わせて、ユーザUr1に擬似的な加速度感覚として右方向への旋回を感じさせることができる。そのため、ユーザUr1は、ゲームにおいて車を右方向に旋回させる画像を単に見せられるだけの場合と比べて、電気刺激装置10で擬似的な加速度感覚を与えて車を右方向に旋回させる画像を見せられる方がゲームへの没入感が高まる。
【0019】
次に、電極パッドEについて、詳しく説明する。一般的に、電流を印加して内耳の前庭器官に電気刺激を与える電気刺激装置では、板状のヒドロゲル(高分子ゲル)を電極パッドに用いている。当該電極パッドは、乾燥したり、汗、汚れなどが付着したりすることで、皮膚との密着(粘着)度が低下してゆく。電極パッドと皮膚との密着度が低下すると、電極パッドにおいて電荷が局在化して皮膚表面で放電現象が生じやすくなり、予想外の刺激痛を人に与える虞があった。特に、直流電流を電極パッドに印加したとき、予想外の刺激痛を人に与える虞があった。また、電極パッドにおいて電荷が局在化して皮膚表面で放電現象が生じると、痛みの感覚により意識が分散され、疑似的な加速度感覚に邪魔が入るので、前庭器官に対して与える電気刺激の効果を低下させることにもなる。
【0020】
また、板状のヒドロゲルを採用した電極パッドを皮膚に貼り付けた場合、ヒドロゲルの感触を皮膚で直接感じることになるので、当該電極パッドを使用した人はベタベタ感を感じ、使い心地が悪かった。
【0021】
そこで、本実施の形態に係る電極パッドEでは、
図2に示すように、導電性のベース基板1の表面(第1面)にヒドロゲルのマイクロニードル2を複数設けた構成である。さらに、電極パッドEでは、マイクロニードル2が設けられていないベース基板1の表面を、絶縁性のコーティング層3で覆っている。なお、電極パッドEでは、ベース基板1の表面を皮膚に接触する面とする。また、マイクロニードル2は、ヒドロゲルに限られず、導電性の高分子ゲルで形成されていればよい。
【0022】
ベース基板1の表面に複数のマイクロニードル2を設けることで、皮膚と電極パッドEとの密着度が増し、電極パッドにおける電荷の局在化を減らして放電現象による刺激痛を低減することができる。特に、直流電流を電極パッドに印加したときの刺激痛を低減することができる。また、電極パッドEは、複数のマイクロニードル2が皮膚に刺さることで皮膚に密着しているため、板状のヒドロゲルのように汗、汚れなどが付着して密着度が極端に低下することがなく繰り返して使用する回数を飛躍的に改善することができる。
【0023】
図4は、電極パッドによる電気刺激の様子を示す模式図である。
図4では、ユーザUr1の皮膚(対象物)に電極パッドEを貼り付け、電極パッドEによる電気刺激を行っている様子が図示されている。電極パッドEは、ユーザUr1の皮膚に貼り付けることで、マイクロニードル2が皮膚表面11を貫通し、角層12まで至っている。個々のマイクロニードル2は、導電性のベース基板1に設けられているので、制御回路100から印加された電流Iaが導電性のベース基板1を介して、均一に届く。制御回路100から印加された電流Iaは、個々のマイクロニードル2を介してユーザUr1の角層12、果粒層13へと均一な電流Ibとして印加される。
【0024】
電極パッドEをユーザUr1の皮膚に貼り付けた場合、マイクロニードル2を設けていないベース基板1の表面が、ユーザUr1の皮膚と接触することになる。しかし、マイクロニードル2を設けていないベース基板1の表面は、絶縁性のコーティング層3で覆っているので、制御回路100から印加された電流Iaが直接、ユーザUr1の皮膚に印加されることはない。そのため、電極パッドEは、ユーザUr1の皮膚に貼り付けた場合、電荷が局在化して皮膚表面で放電現象を生じることがなく、予想外の刺激痛をユーザUr1に与えることがない。なお、コーティング層3は、絶縁材料でなくても、マイクロニードル2より電気抵抗が高い材料にすれば、マイクロニードル2を介さずユーザUr1の皮膚に電流を印加する経路を遮断できる。
【0025】
また、マイクロニードル2の材質は、たとえばヒドロゲルのような水分を70%以上含む導電性の高分子ゲルである。70%以上の水分を含むヒドロゲルは、直流の電気抵抗値が約10kΩと低い。そのため、マイクロニードル2を介して皮膚に電流を印加することができ前庭器官に電気刺激を与えることができる。しかし、ヒドロゲルに含まれる水分が低下し、ヒドロゲルの直流の電気抵抗値が約100kΩ程度となると、マイクロニードル2を絶縁体と見なすことができ、前庭器官に電気刺激を与えることができない。ヒドロゲルの直流の電気抵抗値が約100kΩより小さい場合でも、70%以上の水分を含むヒドロゲルのように直流の電気抵抗値が約10kΩ程度に低くならなければ、マイクロニードル2が電気刺激の緩衝となれず直接電気刺激を受けることになり、刺激痛を感じることになる。
【0026】
なお、ユーザUr1の皮膚に電極パッドEを貼り付ける場合、マイクロニードル2は、皮膚表面11を貫通し角層12まで至るので、長時間使用しても、皮下の水分をマイクロニードル2が吸収して70%以上の水分を確保できる。また、マイクロニードル2を設けるベース基板1も水分を通さない材質であるため、マイクロニードル2の乾燥を防ぐことができる。
【0027】
ベース基板1は、たとえば柔軟性の備えた導電性シリコンであって、マイクロニードル2より電気抵抗が低い。そのため、ベース基板1は、前述したように、制御回路100から印加された電流Iaを均一に個々のマイクロニードル2に届けることができる。ベース基板1は、制御回路100から印加された電流Iaを個々のマイクロニードル2に分散させることで、電荷の均等化を図り、局部的な電気刺激を与えないようにしている。
【0028】
ベース基板1の表面は、ユーザUr1の皮膚と接触するので、マイクロニードル2が設けられていない部分を柔軟性のあるコーティング層3で覆っている。コーティング層3は、マイクロニードルより電気抵抗が高い、たとえば絶縁性シリコン、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)などを用いる。コーティング層3に絶縁性シリコンを用いることで、生体適合性が向上し、電極パッドEを使用したユーザUr1がベタベタ感を感じにくい。
【0029】
次に、マイクロニードル2の形状、大きさについて説明する。
図5は、マイクロニードルの斜視図である。マイクロニードル2は、ユーザUr1の皮膚に刺さる突起部21と、ベース基板1に埋め込まれるベース部22とを有している。突起部21とベース基板1とは、ヒドロゲルで一体として形成されている。もちろん、突起部21とベース基板1とを別々に形成して、後から接合してもよい。
【0030】
図5に示す突起部21の形状は、四角錘である。しかし、突起部21の形状は、四角錘に限定されず、ユーザUr1の皮膚に刺さりやすい形状であれば、円錐、三角錐、多角錘などであってもよい。また、突起部21の太さが10μm以下で、高さが50μm~200μm以下であってもよい。突起部21は、太さが太すぎたり、高さが高すぎたりすると、電極パッドEをユーザUr1の皮膚に貼り付けた場合にユーザUr1が痛みを感じる。また、突起部21は、高さが低すぎたりすると、電極パッドEをユーザUr1の皮膚に貼り付けた場合の密着度が低下する。
【0031】
前述のように、電極パッドEは、導電性シリコンのベース基板1と、100Ω~100kΩの範囲のヒドロゲルで形成したマイクロニードル2とを備えている。そのため、電極パッドEは、ベース基板1でマイクロニードル2ごとに電流を分散して均一化し、局部的な電気刺激をユーザUr1に与えることがない。また、電極パッドEは、100Ω~100kΩの範囲のマイクロニードル2を用いることで、有効な電気刺激をユーザUr1に与えつつ、過度の刺激痛を感じさせない。さらに、電極パッドEは、ベース基板1の表面に、マイクロニードル2より高い電気抵抗のコーティング層3を設けている。このコーティング層3を設けることで、ベース基板1からユーザUr1の皮膚に電流を直接印加されることを防いでいる。
【0032】
なお、電極パッドEは、
図3に示すように、ベース基板1と制御回路100とを電気的に接続するための配線4を、ベース基板1の裏面(第2面)に接続している。さらに、電極パッドEは、ベース基板1の裏面、および、配線4の一部を覆う絶縁カバー5を有している。絶縁カバー5を設けることで、ユーザUr1がベース基板1の裏面側を触っても電流が流れることはない。また、ベース基板1と配線4との接続する部分を絶縁カバー5で保護することができる。
【0033】
(変形例1)
電極パッドEでは、
図3に示すように、個々のマイクロニードル2の高さが同じである。しかし、ベース基板1にマイクロニードル2を設ける位置によりマイクロニードル2の高さを異ならせてもよい。
図6は、変形例1に係る電極パッドEaの断面図である。電極パッドEaにおいて、
図1~
図5に示す電極パッドEと同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0034】
電極パッドEaは、導電性のベース基板1の表面にヒドロゲルのマイクロニードル2a,2bを複数設けた構成である。電極パッドEaの内側に設けたマイクロニードル2aの高さは、電極パッドEaの外側に設けたマイクロニードル2bの高さより低い。つまり、マイクロニードル2a,2bの高さは、電極パッドEaの内側に比べて外側の方が高い。そのため、人の皮膚の曲面に電極パッドEaを貼り付ける際に、電極パッドEaの外側でマイクロニードル2bが人の皮膚に深く刺さるので電極パッドEaが人の皮膚から剥がれ難くできる。
【0035】
電極パッドEaで示した高さが異なるマイクロニードル2a,2bの配置は一例である。電極パッドEaの外側に比べて内側の方が高くなるマイクロニードル2a,2bの配置であってもよい。また、電極パッドEaでは、マイクロニードル2a,2bの高さが2種類であったが、これに限られず、複数の種類の高さがあってもよい。
【0036】
(変形例2)
電極パッドEでは、
図3に示すように、個々のマイクロニードル2がベース基板1の表面の法線方向を向いている。しかし、個々のマイクロニードル2の向きをベース基板1の表面の法線方向以外に向けてもよい。
図7は、変形例2に係る電極パッドEbの断面図である。電極パッドEbにおいて、
図1~
図5に示す電極パッドEと同様の構成については同じ符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0037】
電極パッドEbは、導電性のベース基板1の表面にヒドロゲルのマイクロニードル2cを複数設けた構成である。電極パッドEbに設けたマイクロニードル2cは、ベース基板1の表面の法線方向に対して突起部21が傾いて設けられている。複数のマイクロニードル2cは、同じ方向に傾いてベース基板1の表面に設けられているので、人の皮膚に電極パッドEbを貼り付ける際に、マイクロニードル2cが皮膚表面に対して斜め方向に刺さり電極パッドEbが人の皮膚から剥がれ難くできる。
【0038】
電極パッドEbで示したマイクロニードル2cの傾きは一例であり、ベース基板1の表面の設ける位置によりマイクロニードル2cの傾きを異ならせてもよい。また、電極パッドEbでは、マイクロニードル2cの高さがすべて同じであったが、これに限られず、異なる高さのマイクロニードル2cを設けてもよい。
【0039】
(態様)
(1) 本開示に係る電極パッドは、
対象物に密着させ、電気刺激を行うための電極パッドであって、
導電性のベース基板と、
ベース基板の第1面に設けられ、導電性を有する複数のマイクロニードルと、
複数のマイクロニードルが設けられていないベース基板の第1面を覆うコーティング層と、を備え、
コーティング層の電気抵抗は、複数のマイクロニードルの電気抵抗よりも高い。
【0040】
これにより、本開示に係る電極パッドは、対象物との密着性を確保しつつ、人に与える刺激痛を軽減し、効果的に電気刺激を行うことができる。
【0041】
(2)(1)に記載の電極パッドにおいて、ベース基板の第1面の裏面である第2面に配置され、ベース基板と電気的に接続される配線と、
ベース基板の第2面および、配線の一部を覆う絶縁カバーと、をさらに備える。
【0042】
(3)(1)または(2)に記載の電極パッドにおいて、電極パッドの外側に配置した複数のマイクロニードルの各々の高さは、電極パッドの内側に配置した複数のマイクロニードルに各々の高さより高い。
【0043】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載の電極パッドにおいて、複数のマイクロニードルの各々は、ベース基板の第1面の法線方向に対して突起部が傾いて第1面に設けられている。
【0044】
(5)(1)~(4)のいずれか1項に記載の電極パッドにおいて、複数のマイクロニードルの各々は、突起部の太さが10μm以下で、高さが50μm~200μm以下である。
【0045】
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載の電極パッドにおいて、ベース基板は、導電性シリコンで形成され、
複数のマイクロニードルは、高分子ゲルで形成されている。
【0046】
(7)本開示に係る電気刺激装置は、(1)~(6)のいずれか1項に記載の電極パッドと、
電極パッドと電気的に接続され、電極パッドで対象物に対して電気刺激を行うためで信号を電極パッドに供給する制御回路と、を備える。
【0047】
(8)(7)に記載の電気刺激装置において、対象物は人体であり、
電極パッドで人体に電気刺激を与える。
【0048】
(9)(7)に記載の電気刺激装置において、対象物は内耳の前庭であり、
電極パッドで前庭に電気刺激を与える。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 ベース基板、2,2a~2c マイクロニードル、3 コーティング層、4 配線、5 絶縁カバー、10 電気刺激装置、11 皮膚表面、12 角層、13 果粒層、21 突起部、22 ベース部、100 制御回路、120 入力インターフェース、130 出力インターフェース。