(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012709
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ジアホラーゼの阻害剤を検出するための分析物センサおよびセンシング方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20240123BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20240123BHJP
G01N 27/31 20060101ALI20240123BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240123BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61B5/1473
G01N27/327 353T
G01N27/31
G01N27/416 336G
A61B5/1486
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202923
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2022573369の分割
【原出願日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】63/031,809
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ティエンメイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ゼンホァ
(72)【発明者】
【氏名】オージャ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ワリ、アフメド ヒシャーム
(72)【発明者】
【氏名】フォックス、ケイド ブライリー
(57)【要約】
【課題】ジアホラーゼおよびNAD依存性脱水素酵素を含む酵素システムを特徴とする分析物センサを提供する。
【解決手段】ジアホラーゼおよびNAD依存性脱水素酵素を含む酵素システムを特徴とする分析物センサは、作用電極への電子の移動がジアホラーゼに関して律速であるという条件で、ジアホラーゼの阻害剤を検出するために利用され得る。そのような分析物センサは、少なくとも第1の作用電極と、第1の作用電極の表面上に配置された第1の活性領域と、少なくとも第1の活性領域を覆う分析物透過性膜とを含むセンサ尾部を備え得る。酵素システムは、NAD、還元型NAD、またはそれらの任意の組合せ;NAD依存性グルコース脱水素酵素などのNAD依存性脱水素酵素;およびジアホラーゼを含む。検出され得るジアホラーゼの阻害剤としては、例えば、ワルファリン、ジクマロール、および類似の化合物が含まれ得る。第2の活性領域は、ジアホラーゼの阻害剤とは異なる分析物の検出を促すために存在してもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物センサにおいて:
少なくとも第1の作用電極を備えるセンサ尾部;および
前記第1の作用電極の表面上に配置された第1の活性領域を含み、
前記第1の活性領域は電子移動剤と、
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、還元型NAD、またはそれらの任意の組み合わせ、
NAD依存性脱水素酵素、および
ジアホラーゼを含む酵素システムとを含み、
前記第1の活性領域から前記第1の作用電極への電子の移動は、前記第1の活性領域がジアホラーゼの阻害剤に応答するように、前記ジアホラーゼに対して律速である、前記分析物センサ。
【請求項2】
前記NAD依存性脱水素酵素が、NAD依存性グルコース脱水素酵素である、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項3】
前記第1の活性領域が、前記第1の作用電極への電子の移動に関して律速量の前記ジアホラーゼを含むか、前記ジアホラーゼが、前記第1の作用電極への電子の移動に関して律速になるように修飾されているか、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項4】
前記ジアホラーゼの阻害剤が、ワルファリン、ジクマロール、N-メチルマレイミド、ジフェニレンヨードニウム、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、フラボン-8-酢酸、塩化ジメチルベンジル(alk)アンモニウム、7,8-ジヒドロキシフラボン、クリシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項5】
少なくとも前記第1の活性領域を覆う分析物透過性膜をさらに含み、
前記分析物透過性膜は、前記阻害剤に対して透過性である、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項6】
前記阻害剤とは異なる分析物に応答する第2の活性領域をさらに含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項7】
前記第2の活性領域が、前記センサ尾部上に配置されたグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域である、請求項6に記載の分析物センサ。
【請求項8】
第2の作用電極であって、前記第2の作用電極の表面上に配置されている前記第2の活性領域と、
前記第2の活性領域を覆う分析物透過性膜とをさらに含む、請求項6に記載の分析物センサ。
【請求項9】
前記センサ尾部は、組織内に挿入されるように構成される、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項10】
少なくとも前記電子移動剤、前記ジアホラーゼ、および前記NAD依存性脱水素酵素が、前記第1の活性領域を含むポリマーに共有結合されている、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項11】
前記第1の活性領域がアルブミンをさらに含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項12】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性脱水素酵素の基質およびジアホラーゼの阻害剤を含む流体に分析物センサを曝露することであって;
前記分析物センサが、少なくとも第1の作用電極と、前記第1の作用電極の表面上に配置された第1の活性領域とを含むセンサ尾部を備え、前記第1の活性領域が、電子移動剤と、NAD、還元型NAD、またはそれらの任意の組み合わせ;前記NAD依存性脱水素酵素を含む酵素システムとを含み、
前記第1の活性領域から前記第1の作用電極への電子の移動は、前記第1の活性領域が前記阻害剤に応答するように、前記ジアホラーゼに対して律速である、前記分析物センサを前記暴露することと、
前記第1の作用電極へ電位を印加することと、
前記第1の活性領域の酸化還元電位以上の第1のシグナルであって、前記流体中の前記阻害剤の濃度に比例する前記第1のシグナルを取得することと、
前記第1のシグナルを前記流体中の前記阻害剤の濃度に相関させることとを含む、方法。
【請求項13】
前記NAD依存性脱水素酵素がNAD依存性グルコース脱水素酵素であり、前記基質がグルコースである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の活性領域が、前記第1の作用電極への電子の移動に関して律速量の前記ジアホラーゼを含むか、前記ジアホラーゼが、前記第1の作用電極への電子の移動に関して律速になるように改変されているか、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記阻害剤が、ワルファリン、ジクマロール、N-メチルマレイミド、ジフェニレンヨードニウム、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、フラボン-8-酢酸、塩化ジメチルベンジル(alk)アンモニウム、7,8-ジヒドロキシフラボン、クリシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
分析物透過性膜が少なくとも前記第1の活性領域を覆い、前記分析物透過性膜が前記阻害剤に対して透過性である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記センサ尾部が、前記阻害剤とは異なる分析物に応答する第2の活性領域をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の活性領域は、前記センサ尾部上に配置されたグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域であり、前記方法は、
前記グルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上の第2のシグナルであって、前記流体中のグルコース濃度に比例する前記第2のシグナルを取得することと、
前記第2のシグナルを前記流体中のグルコース濃度に相関させることと、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の活性領域が第2の作用電極の表面上に配置され、前記第2の活性領域の酸化還元電位以上の第2のシグナルを得るために前記第2の作用電極に第2の電位が印加される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
分析物透過性膜が前記第2の活性領域を覆う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のシグナルおよび前記第2のシグナルは、異なる時刻に取得される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のシグナルおよび前記第2のシグナルは、第1チャネルおよび第2チャネルを介して同時に取得される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも前記電子移動剤、前記ジアホラーゼ、および前記NAD依存性脱水素酵素が、前記第1の活性領域を含むポリマーに共有結合している、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の活性領域がアルブミンをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記流体が生体液であり、前記分析物センサがin vivoで前記生体液に曝露される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
個体内の種々の分析物を検出することは、時として、ヒトの健康および幸福の状態をモニタリングするために不可欠となることがある。一部の分析物は、体内で産生される生体分子であり、それらの濃度は、根底にある生理学的条件または特定の環境因子への曝露に起因して変動し得る。薬物または薬物代謝産物の濃度は、同様に、個体の健康の尺度として分析され得、投薬および処置の決定を行う際に医療従事者を補助し得る。正常な分析物レベルからの逸脱は、しばしば、代謝状態の悪化、疾病、特定の環境条件への曝露、または無効な処置レジメンを示し得る。ある特定の病理源は、単独で単一の分析物を調節不全にし得るが、同じ病理源または併存(関連)状態のいずれかに起因して、複数の分析物が同時に調節不全になる場合が一般的である。複数の分析物が調節不全である場合、調節不全の程度は、分析物ごとに異なり得る。個人の健康の完全な評価を達成するために、各分析物をモニタリングする必要があり得る。
【0002】
ワルファリンおよびジクマロールなどのクマリン系薬物は、心血管疾患を有する患者において一般的に使用される抗凝固薬である。それらの作用機序は、ビタミンKエポキシド還元酵素の競合的阻害に関与し、これにより血中のビタミンKが枯渇し、結果として血液凝固が減少する。それらの有用性にもかかわらず、治療有効量のクマリン系薬物をin vivoで維持することは非常に困難な場合がある。クマリン系薬物を摂取している患者は、血液凝固サイクルの再活性化および酵素結合クマリンの置換を避けるべく、ビタミンKが豊富な食物、例えば、緑色の葉物野菜を避けるよう、食事を注意深く調節しなければならない。さらに、患者は、クマリン系薬物に対して異なる応答を示したり、クマリン系薬物を広範に異なる速度で代謝することがある。クマリン系薬物の投与が過剰または高頻度であった結果として、血漿レベルが高すぎる場合、危険な出血現象が生じ得る。同様に、血液凝固を阻害するための治療有効ウィンドウを下回ることも容易である。別の難点として、ワルファリンなどのクマリン系薬物は、一部の糖尿病薬剤の効果を増強し、極度の低血糖を引き起こすことがある。したがって、クマリン系薬物を処方する医療従事者は、通常、特定の患者について治療有効量まで注意深く漸増し、そしてその後、特に糖尿病患者については、処方後の有害な副作用についてモニタリングしなければならない。
【0003】
採取した体液を用いた定期的なex vivo分析物モニタリングは、多くの個人の健康をモニタリングするために十分であることが多い。実際、クマリン系薬物を治療有効用量まで漸増する場合、その後に行われる処方後の維持モニタリング中に、複数回の採血が必要とされ得る。クマリン系薬物の投与量は頻繁に変更し得るので、患者に対してかなりの数の採血が、経時的に必要とされ得る。複数回の採血は痛みを伴う可能性があるだけでなく、設定された採取時間に医師のオフィスで頻繁に実施され、これは患者の仕事または個人的なスケジュールにとって不便である場合がある。さらに、採血の周期的性質は、クマリン系薬物および他の分析物のin vivoプロファイルの限られた見解のみを医療従事者に提供し得る。
【0004】
in vivo分析物センサ、特に、検出特異性を提供するために酵素ベースの検出を使用するものは、特定の分析物についての前述の問題に部分的に対処しており、その使用は増え続けている。実際に、血糖値をモニタリングするためにグルコース応答性酵素を利用するin vivo分析物センサは、現在、糖尿病患者の間で一般的に使用されている。他のタイプの分析物は、他の酵素または協調して作用する複数の酵素を含む酵素システムを使用してモニタリングすることができる。しかしながら、現在、クマリン系薬物などの薬剤または薬物代謝産物を満足いくように分析することができる酵素ベースの検出を特徴とする、in vivo分析物センサは比較的少ない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれるものであり、排他的な実施形態と見なすべきではない。開示される主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態および機能においてかなりの修正、変更、組み合せ、および均等物が可能である。
【
図1】
図1は、本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な感知システムの図を示す。
【
図3A】
図3Aは、
図2Aの酵素システムがグルコースを検出するためにどのように改変され得るかを示す。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aの酵素システムが、ジアホラーゼの阻害剤を検出するためにどのようにさらに改変され得るかを示す。したがって、
図3Bは、ジアホラーゼの阻害剤を検出するために構成された酵素システムを示す。
【
図4A】
図4A~
図4Cは、ジアホラーゼの阻害剤を検出するのに適した活性領域を有する例示的な分析物センサの断面図を示す。
【
図5A】
図5A~
図5Cは、ジアホラーゼの阻害剤および別の分析物を検出するのに適した、単一の作用電極および複数の活性領域を有する例示的な分析物センサの断面図を示す。
【
図6】
図6は、ジアホラーゼの阻害剤および別の分析物を検出するのに適した、2つの作用電極および複数の活性領域を有する例示的な分析物センサの断面図を示す。
【
図7A】
図7A~
図7Cは、互いに対して同心円状に配置された電極を特徴としかつジアホラーゼの阻害剤と別の分析物を検出するのに適した活性領域を含む例示的分析物センサの透視図である。
【
図9】
図9は、クレアチニンを検出するために構成された酵素システムを示す。
【
図10】
図10は、実施例1の分析物センサ(センサ1~4)に曝露されたPBS溶液へのNADHおよびジクマロール(DCM)の漸増の結果を示すグラフである。
【
図11A】
図11Aおよび
図11Bは、分析物センサの活性領域に可変量の電子移動剤を有する分析物センサに曝露されたPBS溶液へのNADHおよびジクマロール(DCM)の漸増の結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、分析物センサの活性領域に可変量の電子移動剤を有する分析物センサについての、NADH濃度の関数としてのセンサ応答のグラフである。
【
図13】
図13は、分析物センサの活性領域に可変量の電子移動剤を有する分析物センサについてのジクマロール濃度の関数としての正規化されたセンサ応答のグラフである。
【
図14A】
図14Aおよび
図14Bは、実施例2の分析物センサ(センサ5~8)に曝露されたPBS溶液中へのグルコースおよびジクマロール(DCM)の漸増の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、概して、1つ以上の分析物の検出のために複数の酵素を使用する分析物センサ、より具体的には、クマリン系薬物等のジアホラーゼの阻害剤を検出するために協調して作用する複数の酵素を採用する分析物センサ、およびその使用のための対応する方法を説明する。同じ分析物センサ上に配置された別の酵素または酵素システムを使用して、さらなる分析物を同時に検出し得る。
【0007】
上述のように、特定の基質または基質のクラスに対する酵素によく見られる特異性のために、酵素ベースの検出を使用する分析物センサは、グルコースまたは関連する分析物などの単一の分析物をアッセイするために通常使用される。この目的のために、協調して作用する、単一の酵素と、複数の酵素を含む酵素システムとを併用する分析物センサを用いることができる。本明細書で使用される「協調して(in concert)」という用語は、第1の酵素反応の生成物が第2の酵素反応の基質になり、第2の酵素反応または後続の酵素反応が分析物の濃度を測定するための基礎として機能する、共役酵素反応を指す。検出を促進するために、分析物は、酵素システムにおける酵素反応のうちの少なくとも1反応の間に反応し得るか、またはそうでなければ当該少なくとも1反応に影響を与え得る。検出を促進するための酵素または酵素システムを特徴とするin vivo分析物センサを使用することは、分析物モニタリングをおこなうために必要とされ得る体液の頻繁な抜き取りを回避するために特に有利である可能性がある。in vivo分析物センサを使用した薬物および薬物代謝産物のモニタリングは、特定の薬物または薬物代謝産物の特異的検出を促進するための適切な酵素システムを同定することが稀であるため、特に問題となる場合がある。
【0008】
ワルファリンおよびジクマロールなどのクマリン系薬物は、これらの薬物を治療有効レベルに漸増しかつ維持することが困難であるため、in vivoでのモニタリングが非常に望まれる薬物の1つのクラスである。現在、クマリン系薬物またはそれらの代謝産物をin vivoで検出および定量するための有効な方法、特に検出を促進するために酵素または酵素システムを使用する方法は存在しないと考えられている。一部のクマリン系薬物の標的酵素であるビタミンKエポキシド還元酵素は、クマリン系薬物についての実行可能な酵素ベースの検出スキームのためには未だ利用されていない。
【0009】
クマリン系薬物、ならびに一部の他のタイプの化合物も、酵素ジアホラーゼの非常に効果的な阻害剤である。本開示は、ジアホラーゼを含む酵素システムを特徴とする分析物センサが、クマリン系薬物、ならびにジアホラーゼ酵素の他の阻害剤を効果的に検出するように構成され得ることを実証する。酵素システムは、作用電極に電気的に結合されることにより電気化学的分析物検出を促進し得る。クマリン系薬物および類似の阻害剤を検出するように構成された酵素システムは、作用電極において電気化学シグナルを発生させるように協調して作用するジアホラーゼと少なくとも1つの追加の酵素によって特徴付けられる。クマリン系薬物および他のジアホラーゼの阻害剤の検出を促進するために、酵素システムは、作用電極において受け取られる電気化学的シグナル(例えば、電流)が、存在するクマリン系薬物または他のジアホラーゼ阻害剤の量と相関し得るように、ジアホラーゼに関して律速的に作製される。ジアホラーゼを含み、そのジアホラーゼに関して律速的である適切な酵素システムは、以下にさらに詳細に記載される。有利なことに、このような酵素システムは、生体液中のグルコースまたは他の化学種の高い天然濃度を利用して、酵素カスケードを開始し、最終的に、以下にも説明するように、作用電極への電子移動をもたらすことができる。そのため、分析物センサ自体の中に収容された試薬以外の追加の試薬は、検出を促進するために必要とされない。
【0010】
クマリン系薬物および他のジアホラーゼの阻害剤を検出することに加えて、本明細書に開示される分析物センサは、1つ以上の追加の分析物も検出するようさらに構成され得る。同じ分析物センサ内に収容されたさらなる検出化学を使用して分析され得る他の分析物の例示としては、例えば、グルコース、ケトン、クレアチニン、乳酸塩、A1c、pHなどが挙げられる。上述のように、グルコースの酵素ベースの検出を特徴とするin vivo分析物センサは、現在、糖尿病患者の間で広く使用されている。他の分析物であってその1つ以上が糖尿病患者において同時に調節不全であり得る他の分析物の検出システムも公知である。グルコースまたは他の前述の分析物のうちのいずれか1つ以上のための検出システムが、ジアホラーゼの阻害剤を検出するために構成される酵素システムと組み合わせて、本明細書に開示される分析物センサ内に組み込まれてもよい。本開示の分析物センサ内に追加の感知化学物質がどのように組み込まれ得るかについてのさらなる詳細は、以下に提供される。
【0011】
クマリン系薬物をin vivoでモニタリングする能力は、本開示によって提供される顕著かつ有利な臨床的進歩を表す。さらに、クマリン系薬物は糖尿病薬の効果を強化する傾向があり、これはクマリン系薬物のさらなる投薬調節不全をもたらし得るため、クマリン系薬物の分析と組み合わせてin vivoでグルコースレベルをモニタリングすることがさらに有利であり得る。両方の分析物を検出するように構成された分析物センサを使用して、グルコースおよびクマリン系薬物の濃度を同時にモニタリングすることは、医療関係者に豊富な情報を提供し得、潜在的に、改善された患者の予後を提供し得る。同様に、クマリン系薬物および他のジアホラーゼの阻害剤の濃度をモニタリングすることと組み合わせて、他の一般的に調節不全の分析物をモニタリングすることが所望され得る。
【0012】
本開示の分析物センサをさらに詳細に説明する前に、本開示の実施形態がより良く理解され得るように、好適なin vivo分析物センサ構成および分析物センサを使用するセンサシステムの概要を最初に提供する。
図1は、本開示の分析物センサ、具体的にはジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域を含む分析物センサを組み込むことができる例示的な感知システムの図を示す。示されるように、感知システム100は、有線または無線、単方向または双方向、および暗号化または非暗号化であり得る、ローカル通信経路またはリンク140を介して互いに通信するように構成される、センサ制御デバイス102およびリーダデバイス120を含む。いくつかの実施形態によれば、リーダデバイス120は、センサ104またはそれに関連付けられたプロセッサによって決定された分析物濃度およびアラートまたは通知を見るため、ならびに1つ以上のユーザ入力を可能にするための出力媒体を構成することができる。リーダデバイス120は、多目的スマートフォンまたは専用電子リーダ機器であってもよい。1つのリーダデバイス120のみが示されているが、複数のリーダデバイス120が特定の例において存在してもよい。リーダデバイス120は、それぞれ通信経路/リンク141および/または142を介してリモート端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180と通信することができ、これら通信経路/リンクも有線または無線、単方向または双方向、および暗号化または非暗号化であり得る。それに加えてまたは代替的に、リーダデバイス120は、通信経路/リンク151を介してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、またはクラウドサーバ)と通信していてもよい。ネットワーク150はさらに、通信経路/リンク152を介してリモート端末170に、および/または通信経路/リンク153を介して信頼できるコンピュータシステム180に通信可能に連結され得る。代替的に、センサ104は、介在リーダデバイス120が存在することなく、リモート端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180と直接通信してもよい。例えば、センサ104は、米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれるように、いくつかの実施形態によれば、ネットワーク150への直接通信リンクを介してリモート端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180と通信することができる。近距離通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、BLUETOOTH(登録商標)またはBLUETOOTH(登録商標)Low Energyプロトコル、WiFiなど、任意の適切な電子通信プロトコルが、通信経路またはリンクの各々に使用され得る。遠隔端末170および/または信頼できるコンピュータシステム180は、いくつかの実施形態によれば、ユーザの分析物レベルに関心を有する一次ユーザ以外の個人によってアクセス可能であってもよい。リーダデバイス120は、ディスプレイ122および任意の入力構成要素121を含み得る。ディスプレイ122は、いくつかの実施形態によると、タッチスクリーンインターフェースを備えてもよい。
【0013】
センサ制御装置102は、センサ104を動作させるための回路および電源を収容し得るセンサハウジング103を含む。任意に、電源および/または能動回路は省略されてもよい。プロセッサ(図示せず)は、センサ104に通信可能に連結されてもよく、プロセッサは、センサハウジング103またはリーダデバイス120内に物理的に位置する。センサ104は、センサハウジング103の下側から突出し、接着層105を通って伸長し、いくつかの実施形態によれば、センサハウジング103を皮膚などの組織表面に接着するように適合される。
【0014】
センサ104は、皮膚の真皮層または皮下層内などの対象組織に少なくとも部分的に挿入されるように適合される。センサ104は、所与の組織における所望の深さへの挿入のために十分な長さのセンサ尾部を備えてもよい。センサ尾部は、少なくとも1つの作用電極と、クマリン系薬物およびジアホラーゼのほかの阻害剤の検出を促進するようジアホラーゼの阻害剤に応答する、酵素システムを含む活性領域とを含む。本明細書中でさらに詳細に特定されるように、1つ以上の追加の分析物の検出を促進するための追加の活性領域も存在し得る。対電極は、少なくとも1つの作用電極と組み合わせて、任意選択で参照電極とさらに組み合わせて存在してもよい。センサ尾部上の特定の電極構成は、
図3A~
図7Cを参照し、以下により詳細に説明される。
【0015】
追加の分析物に応答する活性領域は、同様に、当該追加の分析物の検出を促進するための適切な酵素または酵素システムを特徴とし得る。別の分析物に応答する活性領域がグルコース応答性活性領域である場合、例えば、グルコース応答性活性領域はグルコース応答性酵素を含んでもよい。他の分析物に応答する活性領域は、例えば、ケトン、乳酸塩、クレアチニン、pHなどに応答する領域を含むことができ、これらの分析物をアッセイするのに適した別の酵素または酵素システムが特徴となり得る。これらの分析物を検出するための適切な酵素システムは、特に
図2A~
図2C、
図8A、
図8Bおよび
図9を参照して以下にさらに記載される。種々の実施形態によれば、活性領域内の1つ以上の酵素は、活性領域を含むポリマーに共有結合され得る。ジアホラーゼの阻害剤および任意の追加の分析物は、目的の任意の生体液、例えば、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄、羊水などにおいてモニタリングされ得る。特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、ジアホラーゼの阻害剤および/または追加の分析物の濃度をin vivoで測定するために、真皮液または間質液をアッセイするように適合され得る。
【0016】
1つ以上の物質移動制限膜は、ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域、および存在するのであれば別の分析物に応答する活性領域を覆うことができる。分析物センサは、多くの場合、物質移動を制限したり生体適合性を改善するために、活性領域を覆う膜を使用する。物質移動制限膜はまた、本明細書において分析物透過性膜と称され得る。物質移動制限膜を用いて活性領域への分析物のアクセスを制限することは、センサの過負荷(飽和)を回避するのに役立ち、それによって検出性能および精度を改善することができる。単一の分析物センサを使用して複数の分析物をアッセイする際、所与の物質移動制限膜を横切る種々の分析物によって異なる透過性値が示され得、潜在的に、分析物毎に異なる感度をもたらす。有利なことに、センサ構造は、複数の分析物の検出を促進するために必要に応じて、各活性領域上に異なる物質移動制限膜を組み込むことに使用可能である。単一の物質移動制限膜が両方の分析物に対して十分な透過性を提供する場合、より単純なセンサ構造が使用され得る。
【0017】
再び
図1を参照すると、センサ104は、リーダデバイス120へデータを自動的に転送することができる。例えば、分析物濃度データ(すなわち、クマリン系薬物濃度および/またはグルコース濃度、ケトン濃度、乳酸塩濃度、またはクレアチニン濃度、またはpH値)は、データが取得されたときに特定の頻度で、または特定の期間が経過した後などに自動的かつ周期的に通信されてもよく、データは、送信まで(例えば、1分ごと、5分ごと、または他の所定の時間期間ごとに)メモリに記憶される。他の実施形態では、センサ104は、設定されたスケジュールに従わずに、非自動方式でリーダデバイス120と通信することができる。例えば、センサ電子機器がリーダデバイス120の通信範囲内に持ち込まれると、RFID技術を使用してセンサ104からデータが通信されてもよい。リーダデバイス120に通信されるまで、データはセンサ104のメモリに記憶されたままであってもよい。したがって、ユーザは、リーダデバイス120に常に近接した状態を維持する必要はなく、代わりに都合のよい時間にデータをアップロードすることができる。さらに他の実施形態では、自動および非自動のデータ転送の組合せを実装することができる。例えば、データ転送は、リーダデバイス120がセンサ104の通信範囲内に存在しなくなるまで、自動的に継続し得る。
【0018】
センサ104の組織内への導入を促進するために、導入器が一時的に存在してもよい。例示的実施形態では、導入器は、針または類似の鋭利物を備えてもよい。シースまたはブレードなどの他のタイプの導入器が、代替的な実施形態において存在してもよいことを認識されたい。より具体的には、針または他の導入器は、組織挿入の前にセンサ104に近接して一時的に存在し、その後引き抜かれてもよい。存在する間、針または他の導入器は、センサ104がたどるためのアクセス経路を開放することによって、組織の中へのセンサ104の挿入を促進し得る。例えば、針は、1つ以上の実施形態によれば、センサ104の埋め込みが行われることを可能にするために、真皮へのアクセス経路として表皮の貫通を促進し得る。アクセス経路を開いた後、針または他の導入器は、それが鋭利な危険性を示さないように引き抜かれてもよい。例示的実施形態では、適切な針は、中実もしくは中空、ベベル針もしくはノンベベル針、および/または断面が円形もしくは非円形であってもよい。より特定の実施形態では、適切な針は、断面直径および/または先端設計において、約250ミクロンの断面直径を有し得る鍼灸針と同等であり得る。しかしながら、その適切な針は、特定の用途のために必要とされる場合、より大きいまたはより小さい断面直径を有し得ることが認識されるべきである。
【0019】
いくつかの実施形態では、針の先端(存在する間)は、針が最初に組織を貫通し、センサ104のためのアクセス経路を開くように、センサ104の終端を超えて角度を付けられてもよい。他の例示的実施形態では、センサ104は、針の内腔または溝内に存在してもよく、針は、同様に、センサ104のためのアクセス経路を開放する。いずれの場合においても、針は、センサ挿入を促進した後に続いて引き抜かれてもよい。
【0020】
図2Aは、ケトンを検出するために構成された酵素システムを示す。ケトンを検出するのに適した追加の酵素システムは、
図2Bおよび
図2Cに示され、これらは以下にさらに記載される。
図2Aに示される酵素システムにおいて、β-ヒドロキシ酪酸は、in vivoで形成されるケトンの代用物として機能し、これは、β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBDH)およびジアホラーゼを含む酵素システムとの反応を受けて、本明細書においてさらに記載されるように、少なくとも1つの作用電極の表面上に配置されたケトン応答性活性領域内でのケトン検出を促進する。ケトン応答性活性領域内で、β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素は、β-ヒドロキシ酪酸および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を、それぞれアセト酢酸および還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に変換することができる。用語「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)」に、前述の酵素補因子のリン酸結合形態が含まれることは理解されるべきである。すなわち、本明細書における「NAD」という用語の使用は、NAD+リン酸およびNADHリン酸の両方、具体的には、一方がアデニン核酸塩基を含有し、他方がニコチンアミド核酸塩基を含有する2つのヌクレオチドを連結する二リン酸を指す。NAD+およびNADH酵素補因子は、本明細書に開示される協調的な酵素反応の促進の助けとなる。いったん形成されると、NADHは、ジアホラーゼ媒介下で酸化を受け得、このプロセスの間に移動した電子が、作用電極におけるケトン検出のための基礎を提供する。したがって、作用電極に移動した電子の量と変換されたβ-ヒドロキシ酪酸の量との間には1:1のモル対応があり、それによって、作用電極で測定された電流量に基づくケトン検出および定量化の基礎が提供される。作用電極への電子の移動は、以下にさらに詳細に記載されるように、オスミウム(Os)化合物または類似の遷移金属錯体などの電子移動剤のさらなる媒介下で生じ得る。アルブミンは、活性領域内に安定剤としてさらに存在してもよい。β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素およびジアホラーゼは、ケトン応答性活性領域を含むポリマーに共有結合され得る。NAD+は、ポリマーに共有結合していてもしていなくてもよいが、NAD+が共有結合していない場合、NAD+は、ケトン応答性活性領域内に物理的に保持されていてもよく、例えば、ケトン応答性活性領域を覆う物質移動制限膜であって、ケトンに対しても透過性である物質移動制限膜を有してもよい。
【0021】
本開示は、
図2Aに示される酵素システムが、どのように他の分析物に応答するように改変され得るかを実証する。
図3Aおよび
図3Bは、
図2Aの酵素システムが、それぞれグルコースおよびジアホラーゼの阻害剤に対して応答性となるように、どのように逐次修飾され得るかを示す。
図3Aに示されるように、活性領域においてβ-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素をNAD依存性グルコース脱水素酵素で置き換えることによって、分析物センサはグルコースに応答するようになり、この場合、グルコノラクトンがグルコース酸化の生成物として形成される。ジアホラーゼは、NADおよび電子移動剤の間の電子の移動を促進し得る。グルコースについてのさらに単純な酵素ベースの検出スキームが、以下の
図8Aおよび
図8Bに示され、ここで、グルコースオキシダーゼまたはFAD依存性グルコース脱水素酵素は、追加の酵素が存在することなく、電子を電子移動剤に移動させ得る。
【0022】
図3Aに示される酵素システムは、下流の酵素および補因子(それぞれ、ジアホラーゼおよびNAD+/NADH)の十分なターンオーバーが存在し、グルコース酸化の間に生成される全ての電子の作用電極への移動を促進するという条件で、グルコースに対して線形応答をすることができる。本開示において、
図3Aの酵素システムは、作用電極への電子移動に関してジアホラーゼを律速にするようにさらに改変され得る。ジアホラーゼを律速にすることによって、ジアホラーゼは、作用電極への電子の流れを制御するための「弁」として働く。ジアホラーゼが律速である場合、ジアホラーゼの上流のグルコース濃度にかかわらず、一定のシグナルが生じる。しかしながら、ジアホラーゼが律速である場合、ジアホラーゼの阻害剤、例えば、クマリン系薬物および他のジアホラーゼの阻害剤などは、作用電極への電子の流れを変更させ得、阻害剤の検出の基礎として役立ち得る。より具体的には、作用電極への電子の流れの減少は、存在する阻害剤の量と相関し得る。さらに、グルコースは生体液中に遍在的に存在するので、グルコースは、律速的なジアホラーゼ酵素への電子の定常流を提供するための「燃料」として役立ち得る。したがって、
図3Bは、ジアホラーゼの阻害剤を検出するために構成された酵素システムを示し、これはこれらの考慮事項を念頭に置いている。他のNAD依存性脱水素酵素は、分析される生体液中に当該他のNAD依存性脱水素酵素の基質の即時供給元が存在するという条件で、
図3BにおけるNAD依存性グルコース脱水素酵素の代替として使用され得る。
【0023】
したがって、本開示の分析物センサは、少なくとも第1の作用電極と、第1の作用電極の表面上に配置された第1の活性領域と、少なくとも第1の活性領域を覆う分析物透過性膜とを備えるセンサ尾部を含んでもよい。酵素システムは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)か、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)か、またはそれらの任意の組合せ;NAD依存性脱水素酵素;およびジアホラーゼを含み;第1の活性領域から第1の作用電極への電子の移動は、上で説明したように、第1の活性領域がジアホラーゼの阻害剤に応答するように、ジアホラーゼに対して律速的である。NADまたはNADHが、例えば、第1の活性領域を含むポリマーへの物理的引き込みまたは共有結合を介して、第1の活性領域内に適切に保持され得る場合、任意選択で、第1の活性領域を覆う分析物透過性膜は、省略され得る。
【0024】
特定の実施例において、NAD依存性脱水素酵素は、NAD依存性グルコース脱水素酵素であってもよく、分析を受ける流体中に存在するグルコースが、作用電極への電子源を提供してもよい。他のNAD依存性脱水素酵素は、分析を受けている流体、特に生体液中に当該他のNAD依存性脱水素酵素の基質の即時供給元が存在するという条件で、同様に利用され得る。
【0025】
分析物センサをジアホラーゼの阻害剤に応答させるために、第1の活性領域は、電子を第1の作用電極に移動させることに関して律速量のジアホラーゼを含んでもよく、ジアホラーゼは、電子を第1の作用電極に移動させることに関して律速になるように修飾されてもよく、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。例えば、野生型ジアホラーゼを活性が低下した改変ジアホラーゼに改変してもよい。
【0026】
上述のように、本明細書に開示される分析物センサを使用してモニタリングされ得るジアホラーゼの阻害剤は、ワルファリンおよびジクマロールを含む。他のジアホラーゼ阻害剤は、例えば、N-メチルマレイミド、ジフェニレンヨードニウム、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、フラボン-8-酢酸、塩化ジメチルベンジル(alk)アンモニウム(dimethylbenzylalkammonium chloride)、7,8ージヒドロキシフラボン、クリシン、およびそれらの任意の組み合わせを含む、本明細書に開示される分析物センサを使用してアッセイされ得る。
【0027】
本明細書に開示される分析物センサは、対電極、参照電極、および/または対/参照電極であり得る少なくとも1つの追加の電極と組み合わせて、作用電極上のジアホラーゼの阻害剤に応答する少なくとも1つの活性領域を特徴とする。場合によっては、追加の作用電極が存在してもよい。グルコースなどの別の分析物に応答する活性領域と組み合わせて、ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域を特徴とする分析物センサも、本開示によって検討され、本明細書でさらに論じられる。1つまたは複数の分析物をアッセイするように適合された例示的な分析物センサの構成は、以下でさらに論じられる。
【0028】
ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域を特徴とするが、別の分析物に応答する活性領域を特徴としないセンサ構成は、
図4A~
図4Cを参照して本明細書でさらに説明されるように、2電極または3電極検出モチーフを使用してもよい。別の作用電極上または同じ作用電極上のいずれかにおいて、ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域および別の分析物に応答する活性領域の両方を特徴とするセンサ構成は、
図5A~
図7Cを参照して後に別途説明される。複数の作用電極を有するセンサ構成は、各活性領域からのシグナル寄与がより容易に決定され得るため、同じセンサ尾部内の2つ以上の異なる分析物をモニタリングするように構成された活性領域を含む分析物センサにとって、特に有利であり得る。
【0029】
単一の作用電極が分析物センサ内に存在する場合、3電極センサ構成は、作用電極、対電極、および参照電極を備えてもよい。関連する2電極センサ構成は、作用電極および第2の電極を備えてもよく、第2の電極は、対電極および参照電極の両方(すなわち、対/参照電極)として機能することができる。種々の電極は、少なくとも部分的に互いに積み重ねられ(層状にされ)てもよく、および/またはセンサ尾部上で互いに横方向に離間されてもよい。適切なセンサ構成は、実質的に平坦な形状または実質的に円筒形の形状であってもよい。本明細書に開示されるセンサ構成のいずれかにおいて、種々の電極は、誘電材料または同様の絶縁体によって互いに電気的に絶縁され得る。ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域と、グルコースなどの別の分析物に応答する活性領域とを含む分析物センサは、作用電極上で横方向に離間された活性領域を特徴としてもよい。
【0030】
複数の作用電極を特徴とする分析物センサは、同様に、少なくとも1つの追加の電極を備えてもよい。1つの追加の電極が存在する場合、その1つの追加の電極は、複数の作用電極のそれぞれに対する対/参照電極として機能してもよい。2つの追加の電極が存在する場合、追加の電極の一方は、複数の作用電極のそれぞれの対電極として機能してもよく、追加の電極の他方は、複数の作用電極のそれぞれの参照電極として機能してもよい。
【0031】
図4Aは、本明細書の開示における使用に適合する、例示的な2電極分析物センサ構成の図を示す。示されるように、分析物センサ200は、作用電極214と対/参照電極216との間に配置された基板212を備える。あるいは、作用電極214および対/参照電極216は、誘電材料を間に挟んで基板212の同じ側に配置されてもよい(構成は図示せず)。ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域218は、作用電極214の少なくとも一部の上に少なくとも1つの層として配置される。活性領域218は、本明細書でさらに論じられるように、ジアホラーゼの阻害剤の検出のために構成された複数のスポットまたは単一のスポットを含んでもよい。
【0032】
さらに
図4Aを参照すると、いくつかの実施形態によれば、膜220は、少なくとも活性領域218を覆うことができ、任意選択で、作用電極214および/または対/参照電極216の一部または全部、あるいは分析物センサ200の全体を覆うことができる。分析物センサ200の片面または両面は、膜220で覆われてもよい。膜220は、活性領域218への分析物フラックスを制限する能力を有する1つ以上のポリマー膜材料を含み得る(すなわち、膜220は、ジアホラーゼの阻害剤に対していくらかの透過性を有する物質移動制限膜である)。膜220の組成および厚さは、活性領域218への所望のジアホラーゼ阻害剤フラックスを促進するように変動し得る。非限定的な実施例では、膜220は、スプレーコーティング、ディップコーティング、プリントおよび/または同様の堆積技法のうちの1つ以上によって活性領域218上にコーティングされ得る。膜の厚さは、作用電極214で生成される電流が、存在するジアホラーゼ阻害剤の量に相関可能なままであるように選択され得る。分析物センサ200は、電量、電流、電解電量、または電位差の電気化学検出技術のいずれかによってジアホラーゼの阻害剤をアッセイするように動作可能であってもよい。
【0033】
図4Bおよび
図4Cは、例示的な3電極分析物センサ構成の図を示しており、これらも本明細書の開示における使用に適合する。3電極分析物センサ構成は、分析物センサ201および202(
図4Bおよび4C)内に追加の電極217を含むことを除いて、
図4Aの分析物センサ200に対して示されるものと同様であり得る。追加の電極217を用いて、対/参照電極216は、次いで、対電極または参照電極のいずれかとして機能してもよく、追加の電極217は、他に考慮されない他の電極機能を果たす。作用電極214は、その本来の機能を果たし続ける。追加の電極217は、誘電材料の分離層を間に挟んで、作用電極214または電極216のいずれかの上に配置することができる。例えば、
図4Bに示されるように、誘電体層219a、219bおよび219cは、電極214、216および217を互いに分離し、電気的絶縁を提供する。あるいは、電極214、216および217のうちの少なくとも1つは、
図4Cに示されるように、基板212の反対面上に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、電極214(作用電極)および電極216(対電極)は、基板212の対向面上に位置してもよく、電極217(参照電極)は、電極214または216のうちの1つの上に位置し、誘電材料を用いてそこから離間される。参照材料層230(例えば、Ag/AgCl)は、電極217上に存在してもよく、参照材料層230の場所は、
図4Bおよび
図4Cに描写される場所に限定されない。
図4Aに示されるセンサ200と同様に、分析物センサ201および202における活性領域218は、複数のスポットまたは単一のスポットを含んでもよい。分析物センサ201および202は、同様に、電量、電流、電解電量、または電位差の電気化学検出技術のいずれかによってジアホラーゼの阻害剤をアッセイするために動作可能であってもよい。
【0034】
分析物センサ200と同様に、膜220はまた、分析物センサ201および202において、活性領域218ならびに他のセンサ構成要素を覆ってもよく、それによって物質移動制限膜として機能する。追加の電極217は、いくつかの実施形態において、膜220で覆われてもよい。
図4Bおよび
図4Cは、電極214、216および217のすべてが膜220で覆われているように示しているが、いくつかの実施形態では、作用電極214のみが覆われてもよいことを認識されたい。さらに、電極214、216および217の各々における膜220の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。非限定的な実施例では、膜220は、スプレーコーティング、ディップコーティング、プリントおよび/または同様の堆積技法のうちの1つ以上によって活性領域218上にコーティングされ得る。2電極分析物センサ構成(
図4A)におけるように、分析物センサ201および202の一方または両方の面は、
図4Bおよび
図4Cのセンサ構成において膜220で覆われてもよく、または分析物センサ201および202の全体が覆われてもよい。したがって、
図4Bおよび
図4Cに示される3電極センサ構成は、本明細書に開示される実施形態の非限定的なものとして理解されるべきであり、代替の電極および/または層構成は、本開示の範囲内に留まる。
【0035】
ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域および別の分析物に応答する活性領域の両方を有し、それぞれが単一の作用電極上または複数の作用電極上に位置する分析物センサを、
図5A~
図7Cを参照してさらに詳細に説明する。
【0036】
図5Aは、単一の作用電極の上に配置されたジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域および別の分析物に応答する活性領域の両方を有する単一の作用電極を備えるセンサ203の例示的な構成を示す。
図5Aは、作用電極214上の2つの活性領域、すなわち、作用電極214の表面上で互いに横方向に間隔を空けて配置される活性領域218a(ジアホラーゼの阻害剤に応答する)および活性領域218b(別の分析物に応答する)の存在を除いて、
図4Aと同様である。活性領域218aおよび218bは、各分析物の検出のために構成された複数のスポットまたは単一のスポットを含み得る。膜220の組成は、活性領域218aおよび218bで異なっていてもよく、または組成的に同じであってもよい。例えば、膜220が活性領域218aと218bとで組成的に異なる場合、単一の膜ポリマーが活性領域の一方(例えば、活性領域218b)に存在してもよく、膜ポリマーの二重層または膜ポリマーの混合物が活性領域の他方(例えば、活性領域218a)に存在してもよい。スプレーコーティング、ディップコーティング、プリントおよび/または同様の堆積技法のうちの1つ以上を使用することで、活性領域218aおよび218bにおいて組成的に均質なまたは組成的に異なる膜220を堆積させてもよい。第1の活性領域218aおよび第2の活性領域218bは、以下でさらに議論するように、互いに異なる作用電極電位でそれらの対応する分析物を検出するように構成され得る。
【0037】
図5Bおよび
図5Cは、それぞれ、センサ204および205のための例示的な3電極センサ構成の断面図を示し、各々は、その上に配置された活性領域218a(ジアホラーゼの阻害剤に応答する)および活性領域218b(別の分析物に応答する)の両方を備える単一の作用電極を特徴とする。
図5Bおよび
図5Cは、その他の点ではそれぞれ
図4Bおよび
図4Cに類似しており、それらを参照することによってよりよく理解することができる。
図5Aと同様に、膜220の組成は、活性領域218aおよび218bにおいて組成的に同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0038】
複数の作用電極、具体的には2つの作用電極を備える例示的なセンサ構成を、
図6~
図7Cを参照してさらに詳細に説明する。以下の説明は、主に、2つの作用電極を備えるセンサ構成を対象とするが、本明細書の開示の拡張を通して、2つより多い作用電極が組み込まれてもよいことを理解されたい。分析物センサに、ジアホラーゼの阻害剤および1つの追加の分析物を感知するだけの能力を超える追加の感知能力を付与するのに追加の作用電極を使用することができる。すなわち、2つより多くの作用電極を含む分析物センサは、相応の数の追加の分析物を検出するのに適し得る。
【0039】
図6は、本明細書の開示における使用に適合し得る、2つの作用電極、参照電極、および対電極を備える、例示的分析物センサ構成の断面図を示す。示されるように、分析物センサ300は、基板302の対向面上に配置された作用電極304および306を含む。活性領域310a(ジアホラーゼの阻害剤に応答する)は、作用電極304の表面上に配置され、活性領域310b(別の分析物に応答する)は、作用電極306の表面上に配置される。対電極320は、誘電体層322によって作用電極304から電気的に絶縁されており、参照電極321は、誘電体層323によって作用電極306から電気的に絶縁されている。外側誘電体層330および332は、それぞれ参照電極321および対向電極320上に配置される。膜340は、種々の実施形態によれば、少なくとも活性領域310aおよび310bを覆うことができ、分析物センサ300の他の構成要素または分析物センサ300の全体も同様に、任意選択で膜340で覆われる。この場合も、各位置における分析物フラックスを調節するために、膜340は、必要に応じて、活性領域310aおよび310bにおいて組成的に同じ、または組成的に異なっていてもよい。組成の差異は、例えば、複数の膜ポリマーまたは複数の膜ポリマーの二重層の混合物を含み得る。
【0040】
複数の作用電極を有し、
図6に示される構成とは異なる代替センサ構成は、別個の対電極および参照電極320、321の代わりに対/参照電極を特徴としてもよく、および/または明示的に描写されるものとは異なる層および/または膜配列を特徴としてもよい。例えば、対電極320および参照電極321の位置決めは、
図6に示されるものと逆であってもよい。さらに、作用電極304および306は、必ずしも
図6に示される様式で基板302の対向する面上に存在する必要はない。
【0041】
好適なセンサ構成は、性質が実質的に平面である電極を特徴としてもよいが、非平面電極を特徴とするセンサ構成が有利であり、本明細書の開示における使用に特に好適であり得ることを理解されたい。特に、互いに対して同心円状に配置された実質的に円筒形電極は、以下に説明するように、2つの異なる活性領域において組成が異なる物質移動制限膜の堆積を促進し得る。
図7A~
図7Cは、互いに対して同心円状に配置された2つの作用電極を特徴とする分析物センサの透視図を示す。同心電極配置を備えるが、第2の作用電極を欠くセンサ構成も本開示において可能であることを理解されたい。
【0042】
図7Aは、複数の電極が実質的に円筒形であり、中心基板の周りに互いに対して同心円状に配置されている例示的なセンサ構成の透視図を示す。図に示されるように、分析物センサ400は、中心基板402を含み、その周囲に、全ての電極および誘電体層が、互いに対して同心円状に配置される。特に、作用電極410は、中央基板402の表面上に配置され、誘電体層412は、センサ先端404から遠位の作用電極410の一部分上に配置される。作用電極420は、誘電体層412上に配置され、誘電体層422は、センサ先端404に対して遠位の作用電極420の一部分上に配置される。対電極430は、誘電体層422上に配置され、誘電体層432は、センサ先端404から遠位の対電極430の一部分上に配置される。参照電極440は、誘電体層432上に配置され、誘電体層442は、センサ先端404に対して遠位の参照電極440の一部分上に配置される。したがって、作用電極410、作用電極420、対電極430、および参照電極440の露出面は、分析物センサ400の長手方向軸Bに沿って互いに離間している。作用電極410、作用電極420、対電極430、および参照電極440の表面積は、センサ先端404から離れるにつれてサイズが徐々に増加する。
【0043】
さらに
図7Aを参照すると、活性領域414a(ジアホラーゼの阻害剤に応答する)および活性領域414b(別の分析物に応答する)は、それぞれ作用電極410および420の露出表面上に配置され、それによって、両分析物が感知されるための流体との接触が生じ得る。活性領域414aおよび414bは、
図7Aでは3つの個別のスポットとして示されているが、代替センサ構成では、3つよりも少ないまたは多いスポットが存在してもよいことを理解されたい。さらに、活性領域414aおよび活性領域414bの位置決めは、
図7Aに示されるものと逆であってもよい。
【0044】
図7Aにおいて、センサ400は、作用電極410および420ならびにその上に配置された活性領域414aおよび414bの上に膜450で部分的にコーティングされる。
図7Bは、センサ401の実質的全体が膜450で覆われている代替センサ構成を示す。膜450は、活性領域414aおよび414bにおいて組成的に同じ、または異なっていてもよい。ディップコーティング技術は、実質的に円筒形のセンサ構成で膜を適用するのに特に望ましい場合がある。
【0045】
図7Aおよび
図7Bにおける種々の電極の配置は、明示的に示されたものと異なってもよいことがさらに理解されるべきである。例えば、対電極430および参照電極440の位置は、
図7Aおよび
図7Bに示された構成と逆であってもよい。同様に、作用電極410および420の位置は、
図7Aおよび
図7Bで明示的に描写されるものに限定されない。
図7Cは、
図7Bに示されるものに対する代替センサ構成を示し、センサ405は、センサ先端404のより近位に位置する対電極430および参照電極440と、センサ先端404のより遠位に位置する作用電極410および420とを含む。作用電極410および420がセンサ先端404に対してより遠位に位置するセンサ構成は、活性領域414aおよび414b(
図7Cにおいてそれぞれに対して例示的に示される5つの別個の感知スポット)の堆積のためにより大きい表面積を提供し、それによって、場合によっては、シグナル強度の増加を促進することによって、有利であり得る。
【0046】
図7A~
図7Cは、それぞれが中央基板402上に支持されたセンサ構成を示しているが、代替のセンサ構成は、代わりに電極支持型であってもよく、中央基板402がなくてもよい(構成は図示せず)ことを理解されたい。特に、最も内側の同心電極を利用することで他の電極および誘電体層を支持することができる。例えば、対電極430は、最も内側の同心電極であってもよく、その上に参照電極440、作用電極410および420、ならびに誘電体層432、442、412および422を配置するために使用されてもよい。本明細書の開示を考慮して、他の電極および誘電体層構成が、中央基板402を欠くセンサ構成において採用され得ることが再び理解されるべきである。
【0047】
したがって、本開示の分析物センサは、ジアホラーゼの阻害剤とは異なる分析物に応答する活性領域をさらに備えてもよく、これもセンサ尾部上に配置される。したがって、本開示の分析物センサは、特定の実施形態において複数の分析物を分析するように構成されてもよい。ジアホラーゼの阻害剤に加えてモニタリングされ得る他の分析物としては、例えば、グルコース、ケトン、乳酸塩、クレアチニン、pH、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。分析物センサにおいてこれらの追加の分析物をアッセイするための適切な酵素、酵素システムまたは同様の検出プロトコルは、以下でさらに議論される。
【0048】
いくつかの実施形態では、分析物センサは、センサ尾部上に配置されたグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域をさらに含んでもよい。適切なグルコース応答性酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼまたはグルコース脱水素酵素(例えば、ピロロキノリンキノン(PQQ)または補助因子依存性グルコース脱水素酵素、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性グルコース脱水素酵素またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性グルコース脱水素酵素)が含まれる。グルコースオキシダーゼおよびグルコース脱水素酵素は、グルコースを酸化する際に電子受容体として酸素を利用するそれらの機能によって区別される;グルコースオキシダーゼは、電子受容体として酸素を利用し得るが、グルコース脱水素酵素は、酵素補因子などの天然または人工の電子受容体に電子を移動させる。グルコースを分析するための例示的な酵素ベースの検出スキームは、
図3A、
図8A、および
図8Bにさらに示され、これらは検出を促進するためにグルコースオキシダーゼまたはグルコース脱水素酵素を利用する。グルコースオキシダーゼおよびグルコース脱水素酵素の両方は、グルコース応答性活性領域を含むポリマーに共有結合され得、電子移動剤(例えば、オスミウム(Os)錯体または類似の遷移金属錯体)と電子を交換し得、電子移動剤もまた、ポリマーに共有結合され得る。適切な電子移動剤は、以下にさらに詳細に記載される
ジクマロールおよび他のクマリン系薬物が特定の糖尿病薬物の活性に影響を与える傾向があるため、ジアホラーゼの阻害剤およびグルコースの同時検出が特に望ましい場合がある。したがって、ジアホラーゼ阻害剤およびグルコースの両方を分析することが可能な分析物センサは、治療法の決定を促し、患者の予後を潜在的に改善し得る。阻害剤またはジアホラーゼと組み合わせて、グルコースなどの第2の分析物を検出するための考慮事項を以下に提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、分析物センサは、ケトンの検出を促進するように協調して動作する酵素システムを含むケトン応答性活性領域をさらに備えることができる。ケトンの検出を促進するための適切な酵素システムは、
図2Aを参照して前述したとおりである。ケトンの検出を促進するために協調して動作し得る追加の酵素システムを、
図2Bおよび
図2Cに示す。
図2Bおよび
図2Cにおいても、作用電極に移動した電子の量と変換されたβ-ヒドロキシ酪酸の量との間に1:1のモル対応があり、それによってケトン検出の基礎が提供される。ケトンに応答する酵素システムに関するさらなる詳細は、2020年1月28日に出願され、米国特許出願公開第2020/0237275号明細書として公開された「Analyte Sensors and Sensing Methods Features Dual Detection of Glucose and Ketones」と題する共同所有の米国特許出願第16/774835号に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
図2Bに示すように、β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBDH)は、再びβ-ヒドロキシ酪酸およびNAD+をそれぞれアセト酢酸およびNADHに変換することができる。ジアホラーゼ(
図2A参照)および遷移金属電子移動剤によって完了される作用電極への電子移動の代わりに、NADHオキシダーゼの還元型(NADHOx(Red))は、対応する酸化型(NADHOx(Ox))を形成する反応を受ける。次いで、NADHOx(Red)は、分子状酸素との反応を通して再形成され、スーパーオキシドを産生し得、これは、活性酸素分解酵素(SOD)媒介下で、過酸化水素へのその後の変換を受け得る。次いで、その過酸化水素は、作用電極において酸化を受け、最初に存在したケトンの量に相関され得るシグナルを提供し得る。SODは、種々の実施形態に従って、ケトン応答性活性領域中のポリマーに共有結合され得る。
図2Aに示される酵素システムと同様に、β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素およびNADHオキシダーゼは、ケトン応答性活性領域中のポリマーに共有結合されてもよく、NAD+/NADHは、ケトン応答性活性領域中のポリマーに共有結合されてもされなくてもよい。NAD+が共有結合されていない場合、NAD+は、例えば、ケトン応答性活性領域を覆う膜ポリマーを用いて、ケトン応答性活性領域内に物理的に保持され得る。
【0051】
図2Cに示すように、ケトンのための別の酵素検出化学は、β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBDH)を利用して、β-ヒドロキシ酪酸およびNAD+をそれぞれアセト酢酸およびNADHに変換することができる。この場合の電子移動サイクルは、NAD+を再形成するための1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンによるNADHの酸化によって完了し、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンは、その後、電子を作用電極に移動させる。1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンは、ケトン応答性活性領域内のポリマーに共有結合していてもよいし、していなくてもよい。
図2Aに示される酵素システムと同様に、β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素は、ケトン応答性活性領域内のポリマーに共有結合されてもよく、NAD+/NADHは、ポリマーに共有結合されてもされなくてもよい。ケトン応答性活性領域へのアルブミンの包含は、応答安定性における驚くべき改善を提供し得る。適切な膜ポリマーは、ケトン応答性活性領域内でのNAD+の保持を促進し得る。
【0052】
ジアホラーゼの阻害剤およびケトンの同時検出は、ケトアシドーシスを経験する糖尿病患者の蔓延のために特に望ましい場合がある。したがって、ジアホラーゼ阻害剤およびケトンの両方の分析が可能な分析物センサは、治療法の決定を促し、そのような個人の治療結果を潜在的に改善することができる。糖尿病患者に健康上の利益を提供することに加えて、例えばケトン食を実践している個人など、ケトンレベルをモニタリングすることを望むその他の個人にとって、ジアホラーゼの阻害剤およびケトンの両方に対する検出能力を特徴とする分析物センサは有益であり得る。ケトン食は、体重減少を促進するため、ならびにてんかん患者が彼らの状態を管理するのを助けるために有益であり得る。クマリン系薬物は、心臓の健康への懸念に応じて、このような個人によって時々使用され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、分析物センサは、クレアチニンの検出を促進するように協調して動作する酵素システムを含むクレアチニン応答性活性領域をさらに含むことができる。本明細書に開示される分析物センサにおいてクレアチニンを検出するために使用され得る好適な酵素システムは、
図9に示され、以下でさらに詳細に説明される。クレアチニンに応答する酵素システムに関する追加の詳細は、2019年9月25日に出願され、米国特許出願公開第2020/0241015号明細書として公開された「Analyte Sensors and Sensing Methods for Detecting Creatine」と題する共同所有の米国特許出願第16/582583号に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
図9に示されるように、クレアチニンは、クレアチニンアミドヒドロラーゼ(CNH)の存在下で可逆的かつ加水分解的に反応することで、クレアチンを形成し得る。クレアチンは、次に、クレアチンアミドヒドロラーゼ(CRH)の存在下で触媒的加水分解を受けることで、サルコシンを形成し得る。これらの反応のいずれも、クレアチニンの電気化学的検出の基礎を提供する電子の流れ(例えば、酸化または還元)を作り出さない。
【0055】
さらに
図9を参照すると、クレアチンの加水分解を介して生成されたサルコシンは、酸化型のサルコシンオキシダーゼ(SOX(Ox))の存在下で酸化を受けることでグリシンおよびホルムアルデヒドを形成し、それによってプロセス中に還元型のサルコシンオキシダーゼ(SOX(Red))を生成し得る。過酸化水素はまた、酸素の存在下で生成され得る。次に、サルコシンオキシダーゼの還元型は、電子移動剤(例えば、Os(III)錯体)の酸化型の存在下で再酸化を受け、それによって、電子移動剤の対応する還元型(例えば、Os(II)錯体)を生成し、電子の流れを作用電極に送達することができる。
【0056】
酸素は、上記の開示に従ってクレアチニンを検出するために使用される協調的な一連の反応を阻害し得る。具体的には、サルコシンオキシダーゼの還元型は、酸素との反応を受けて、この酵素の対応する酸化型を再形成することができるが、電子移動剤と電子を交換することはない。酸素との反応が起きる際、酵素は全て活性化したままであるが、電子は作用電極に流れない。理論またはメカニズムによって拘束されずに、酸素との競合反応は、反応速度論的効果から生じると考えられる。すなわち、酸素によるサルコシンオキシダーゼの還元型の酸化は、電子移動剤によって促進される酸化よりも速く起こると考えられている。過酸化水素もまた、酸素の存在下で形成される。
【0057】
図9に示されるクレアチニンの検出を容易にするための所望の反応経路は、酵素システムに近接して脱酸素剤を含むことによって促進され得る。グルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼ酵素を含む、種々の脱酸素剤およびその配置が適切であり得る。低分子脱酸素剤も適切であり得るが、それらはセンサ寿命が完全に尽きる前に完全に消費し尽くしてしまう可能性がある。対照的に、酵素は、可逆的な酸化および還元を受けることができ、それによって、より長いセンサ寿命をもたらす。酸素によるサルコシンオキシダーゼの還元型の酸化を阻害することによって、電子移動剤とのより遅い電子交換反応が起こり得、それによって作用電極での電流の生成が可能となる。生成される電流の大きさは、最初に反応したクレアチニンの量に比例する。
【0058】
図9において所望の反応経路を促すために使用される脱酸素剤は、本開示の任意の実施形態においてオキシダーゼ酵素であり得る。酵素に適した基質も存在するという条件で、任意のオキシダーゼ酵素を使用することで酵素システムに近接した酸素除去を促すことができ、それによってオキシダーゼ酵素の存在下で酸素と反応するための試薬を提供し得る。本開示における酸素除去に好適であり得るオキシダーゼ酵素としては、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼなどが含まれるが、これらに限定されない。グルコースオキシダーゼは、種々の生体液中のグルコースが容易に利用可能であるため、酸素除去を促すために特に望ましいオキシダーゼ酵素であり得る。以下の反応1は、酵素反応がグルコースオキシダーゼによって促されることで酸素除去をもたらすことを示す。
【0059】
【0060】
in vivoで利用可能な乳酸塩の濃度はグルコースの濃度よりも低いが、それでも酸素除去を促すためには十分である。
グルコースオキシダーゼなどのオキシダーゼ酵素は、本明細書に開示される分析物センサにおける酸素除去を促すために適した任意の位置に配置されてもよい。例えば、グルコースオキシダーゼは、グルコース検出を促すためにグルコースオキシダーゼが機能的および/または非機能的であるように、センサ尾部上に配置されてもよい。グルコース検出を促すためには非機能的である場合、グルコースオキシダーゼは、グルコース酸化の間に生成される電子が、作用電極からグルコースオキシダーゼを電気的に絶縁することを介するなど、作用電極に到達することを不可能とするように、センサ尾部上に配置されてもよい。
【0061】
ジアホラーゼおよびクレアチニンの阻害剤の同時検出は、糖尿病性神経障害を経験する糖尿病患者の有病率のために特に望ましい場合がある。例として、糖尿病性神経障害は、高い血中グルコースレベルから生じ得、末期の腎不全をもたらし得る。糖尿病性神経障害は、米国における腎不全の主因であり、その疾患の発症後10~20年以内にかなりの数の糖尿病患者によって経験される。クレアチニンレベルは、特に糖尿病性神経障害に起因する腎不全に対する個人の感受性をモニタリングするために、特に興味深い分析物であり得る。したがって、ジアホラーゼ阻害剤およびクレアチニンの両方の分析が可能な分析物センサは、治療法の決定を促し、そのような個人の治療結果を潜在的に改善することができる。クマリン系薬物は、潜在的な腎不全の懸念も有する個人によって時々使用され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、分析物センサは、センサ尾部上に配置された乳酸応答性酵素を含む乳酸応答性活性領域をさらに備えてもよい。適切な乳酸応答性酵素としては、例えば、乳酸オキシダーゼが含まれ得る。乳酸オキシダーゼまたは他の乳酸応答性酵素は、乳酸応答性活性領域を含むポリマーに共有結合され得、電子移動剤(例えば、オスミウム(Os)錯体または類似の遷移金属錯体)と電子を交換し得、電子移動剤もまた、ポリマーに共有結合され得る。適切な電子移動剤は、以下にさらに詳細に記載される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共同所有の米国特許出願公開第2019/0320947号明細書にさらに詳細に記載されているように、センサ応答を安定化させるために、ヒト血清アルブミンなどのアルブミンが乳酸応答性活性領域に存在してもよい。乳酸レベルは、例えば、摂食、ストレス、運動、敗血症または敗血症性ショック、感染、低酸素症、癌性組織の存在などを含む多数の環境的または生理学的な要因に応答して変化し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、分析物センサは、pHに応答する活性領域をさらに備えてもよい。pHを決定するように構成された適切な分析物センサは、同一出願人による米国特許出願公開第2020/0060592号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。そのような分析物センサは、第1の作用電極および第2の作用電極を備えるセンサ尾部を備えてもよく、第1の作用電極上に位置する第1の活性領域は、pH依存性酸化還元化学を有する物質を備え、第2の作用電極上に位置する第2の活性領域は、pHに対して実質的に不変である酸化還元化学を有する物質を備える。第1のシグナルと第2のシグナルとの間の差を得ることによって、この差は分析物センサが曝露される流体のpHに相関し得る。
【0064】
したがって、本明細書に開示される分析物センサのいくつかの実施形態は、少なくとも第1の作用電極と、ジアホラーゼの阻害剤に応答する、酵素システムを含む第1の活性領域と、グルコース応答活性領域、乳酸応答活性領域、ケトン応答活性領域、クレアチニン応答活性領域、またはpH応答活性領域などの別の分析物に応答する第2の活性領域とを含むセンサ尾部を備えることができる。ジアホラーゼの阻害剤に応答する第1の活性領域および他の活性領域は、第1の作用電極の表面上に配置され、互いに離間されてもよい。各活性領域は酸化還元電位を有してもよく、ジアホラーゼの阻害剤に応答する第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に分離され、活性領域のうちの1つからのシグナルの独立した生成を可能とする。非限定的な例として、酸化還元電位は、少なくとも約100mV、または少なくとも約150mV、または少なくとも約200mVの差があり得る。酸化還元電位間の分離の上限は、in vivoでの作動電気化学ウィンドウによって決定される。2つの活性領域の酸化還元電位の大きさが互いに十分に分離することによって、他の活性領域内の電気化学反応を実質的に誘発することなく、2つの活性領域のうちの1つの領域(すなわち、第1の活性領域または第2の活性領域)内で、電気化学反応が起こり得る。したがって、第1の活性領域または第2の活性領域のうちの1つからのシグナルは、その対応する酸化還元電位(より低い酸化還元電位)以上であるが、他方の活性領域の酸化還元電位未満で、独立して生成され得る。差シグナルは、各分析物からのシグナル寄与が分解されることを可能にし得る。
【0065】
本明細書に開示される分析物センサのいくつかまたは他の実施形態は、ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域と、異なる作用電極の表面上に位置する別の分析物に応答する活性領域とを特徴としてもよい。このような分析物センサは、少なくとも第1の作用電極および第2の作用電極と、第1の作用電極の表面上に配置されたジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域と、第2の作用電極の表面上に配置された異なる分析物に応答する第2の活性領域とを備えるセンサ尾部を備え得る。膜は、第1の活性領域および第2の活性領域のうちの少なくとも1つを覆ってもよい。膜は、物質移動制限膜であってもよく、膜が活性領域の少なくとも1つを覆う多成分膜を含んでもよい。多成分膜は、2つの異なる膜ポリマーの二重層、または2つの異なる膜ポリマーの混合物を含むことができ、膜ポリマーの一方が他方の活性領域を覆う。
【0066】
電子移動剤は、本明細書に開示される活性領域のいずれか、特にジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域、および存在する場合には、別の分析物に応答する活性領域に存在し得る。適切な電子移動剤は、1つ以上の分析物が対応する活性領域内で酵素的酸化還元反応を受けた後に、隣接する作用電極への電子の輸送を促すことができ、それによって、その特定の分析物の存在を示す電子流を生成する。生成される電流の量は、存在する分析物の量に比例する。使用されるセンサ構成に依存して、ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域および別の分析物に応答する活性領域における電子移動剤は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、2つの異なる活性領域が同じ作用電極上に配置される場合、各活性領域内の電子移動剤は異なっていてもよい(例えば、電子移動剤が異なる酸化還元電位を示すように化学的に異なっていてもよい)。複数の作用電極が存在する場合、各作用電極を別々に調べることができるため、各活性領域内の電子移動剤は同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
好適な電子移動剤としては、標準カロメル電極(SCE)の酸化還元電位より数百ミリボルト高いまたは低い酸化還元電位を有する電気還元性および電気酸化性のイオン、錯体または分子(例えば、キノン)が含まれ得る。いくつかの実施形態によれば、好適な電子移動剤としては、米国特許第6134461号明細書および米国特許第6605220号明細書に記載されているものなど、低電位オスミウム錯体が含まれ得、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。好適な電子移動剤の別の実施例としては、米国特許第6736957号明細書、米国特許第7501053号明細書、および米国特許第7754093号明細書に記載されているものを挙げることができ、各開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の好適な電子移動剤としては、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセンまたはヘキサシアノ鉄酸塩)、またはコバルトの金属化合物または錯体を含み、例えば、それらのメタロセン化合物を含んでもよい。金属錯体に好適な配位子としては、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、またはピリジル(イミダゾール)などの二座またはより高座数の配位子も含まれ得る。他の好適な二座配位子としては、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、またはo-ジアミノアレーンを含み得る。単座配位子、二座配位子、三座配位子、四座配位子、またはより高座数の配位子の任意の組合せが、金属錯体中に存在し、完全な配位圏を実現することができる。
【0068】
本明細書中に開示される分析物のいずれかを検出するために適切な活性領域は、電子移動剤が共有結合されるポリマーを含み得る。本明細書に開示される電子移動剤のいずれも、活性領域内のポリマーへの共有結合を促進するために好適な官能基を含んでもよい。ポリマー結合電子移動剤の好適な実施例としては、米国特許第8444834号明細書、米国特許第8268143号明細書および米国特許第6605201号明細書に記載されているものを挙げることができ、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。活性領域に包含される好適なポリマーとしては、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4ービニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、またはこれらの任意のコポリマーを挙げることができるが、これらに限定されない。活性領域に包含される好適であり得る例示的なコポリマーとしては、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはアクリロニトリルなどのモノマー単位を含有するものが挙げられる。各活性領域内のポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。
【0069】
本開示の特定の実施形態では、活性領域のうち少なくとも1つを覆う物質移動制限膜には、架橋ポリビニルピリジンホモポリマーまたはコポリマーが含まれ得る。物質移動制限膜が各活性領域を覆う場合、物質移動制限膜の組成は同じであっても異なっていてもよい。膜組成が異なる場合、膜は、二層膜または2つの異なる膜ポリマーの均質混合物を含んでもよく、そのうちの1つは、架橋ポリビニルピリジンホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。活性領域上に物質移動制限膜を堆積させるための適切な技術としては、例えば、スプレーコーティング、塗装、インクジェットプリント、ステンシル、ローラーコーティング、ディップコーティング等、およびそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0070】
活性領域を含むポリマーへの電子移動剤の共有結合は、共有結合された電子移動剤を有するモノマー単位を重合することによって生じ得るか、または電子移動剤は、ポリマーがすでに合成された後に、分けてポリマーと反応され得る。二官能性スペーサーは、電子移動剤を活性領域内のポリマーに共有結合させることができ、第1の官能基はポリマーと反応性であり(例えば、ピリジン窒素原子またはイミダゾール窒素原子を四級化することが可能な官能基)、第2の官能基は電子移動剤と反応性である(例えば、金属イオンに配位する配位子と反応性である官能基)。
【0071】
同様に、活性領域内の1つ以上の酵素は、活性領域を含むポリマーに共有結合されてもよい。複数の酵素を含む酵素システムが所与の活性領域に存在する場合、いくつかの実施形態では、複数の酵素の全てがポリマーに共有結合していてもよく、他の実施形態では、複数の酵素の一部のみがポリマーに共有結合していてもよい。例えば、非共有結合酵素がポリマー内に物理的に取り込まれるように、酵素システムを構成する1つ以上の酵素をポリマーに共有結合させてもよく、少なくとも1つの酵素をポリマーに非共有結合させてもよい。所与の活性領域におけるポリマーへの酵素の共有結合は、適切な架橋剤と共に導入されたクロスリンカーを介して起こり得る。酵素中の遊離アミノ基(例えば、リジン中の遊離側鎖アミン)との反応に適した架橋剤としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEFDGE)または他のポリエポキシド、塩化シアヌル、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、またはそれらの誘導体化変異体などの架橋剤が含まれ得る。酵素中の遊離カルボン酸基との反応に好適な架橋剤としては、例えば、カルボジイミドを含み得る。ポリマーへの酵素の架橋は、通常分子間であるが、いくつかの実施形態では分子内であり得る。特定の実施形態では、所与の活性領域内の酵素の全てが、ポリマーに共有結合され得る。
【0072】
電子移動剤および/または酵素は、同様に共有結合以外の手段を介して活性領域においてポリマーと会合されてもよい。いくつかの実施形態では、電子移動剤および/または酵素は、ポリマーとイオン結合または配位結合していてもよい。例えば、荷電ポリマーは、反対に荷電した電子移動剤または酵素とイオン的に会合し得る。さらに他の実施形態において、電子移動剤および/または酵素は、ポリマーに結合されることなく、ポリマー内に物理的に取り込まれてもよい。物理的に取り込まれた電子移動剤および/または酵素は、依然として流体と適切に相互作用して、活性領域から実質的に浸出することなく分析物検出を促すことができる。
【0073】
活性領域内のポリマーは、ポリマーに共有結合されていないNAD+または別の補因子の外向き拡散が制限されるように選択され得る。補因子の限定された外向き拡散は、合理的なセンサ寿命(数日から数週間)を促し得る一方で、依然として、検出を促すための十分な内向きの分析物拡散を可能にする。
【0074】
本明細書に開示される分析物センサ内の活性領域は、1つ以上の離散スポット(例えば、1~約10個のスポット、またはさらに多くの離散スポット)を備えてもよく、これは、約0.01mm2~約1mm2のサイズの範囲であってもよいが、活性領域内のより大きいまたはより小さい個々のスポットもまた、本明細書で検討される。円筒形電極の周りの連続バンドとして定義される活性領域も、本明細書の開示において可能である。ジアホラーゼの阻害剤に応答する活性領域および異なる分析物に応答する活性領域が存在する場合、個々のスポットの数および/またはサイズは同じであっても異なっていてもよい。
【0075】
活性領域の被覆範囲(面積またはサイズ)、活性領域間の面積比、活性領域を覆う物質移動制限膜の同一性、厚さおよび/または組成を変えることによって、各分析物に対する分析物センサの感度(出力電流)は、変更し得ることも理解されたい。いったん本明細書の開示の利益を与えられると、これらのパラメータの変更は、当業者によって容易に行われ得る。
【0076】
より具体的な実施形態では、本開示の分析物センサは、組織内への挿入のために構成されるセンサ尾部を備えてもよい。適切な組織は、特に限定されるとは考えられず、上記でより詳細に述べられている。同様に、皮膚の真皮層などの所与の組織内の特定の位置にセンサ尾部を展開するための考慮事項は、上記で対処される。
【0077】
ジアホラーゼの阻害剤をアッセイするための検出方法は、NAD依存性脱水素酵素の基質およびジアホラーゼの阻害剤を含む流体に分析物センサを曝露することであって、分析物センサが少なくとも第1の作用電極と第1の作用電極の表面上に配置された第1の活性領域であって、電子移動剤と、NAD+、NADHまたはそれらの任意の組合せ;NAD依存性デヒドロゲナーゼ;およびジアホラーゼを含む酵素システムとを含む第1の活性領域と、少なくとも第1の活性領域を覆う分析物透過性膜とを含むセンサ尾部を含み、第1の活性領域が阻害剤に応答するように、第1の活性領域から第1の作用電極への電子の移動がジアホラーゼに対して律速である、前記曝露することと、第1の作用電極に電位を印加することと、第1の活性領域の酸化還元電位以上で、流体中の阻害剤の濃度に比例する第1のシグナルを得ることと、第1のシグナルを流体中の阻害剤の濃度に相関させることとを含み得る。必要に応じて、第1の活性領域を覆う分析物透過性膜は、NADまたはNADHが、例えば、第1の活性領域を含むポリマーへの物理的引き込みまたは共有結合を介して、第1の活性領域内に適切に保持され得る場合、省略され得る。ジアホラーゼの任意の阻害剤は、上記で特定されたものを含む、本明細書に開示される分析物センサを用いてアッセイされ得る。第1の作用電極への電子の移動は、上述した任意の適切な方法でジアホラーゼに対して律速とすることができる。
【0078】
特定の例において、NAD依存性脱水素酵素はNAD依存性グルコース脱水素酵素であってもよく、基質はグルコースである。グルコースは生体液中で容易に存在するため、この基質/脱水素酵素の組み合わせは、ジアホラーゼの阻害剤の検出を促すための電子の供給を提供するために特に有利であり得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、第1のシグナルは、ルックアップテーブルまたは較正曲線を参照することによって、ジアホラーゼの阻害剤の対応する濃度に相関し得る。特定の阻害剤のルックアップテーブルは、既知の阻害剤濃度を有する複数の試料をアッセイし、各濃度におけるセンサ応答を記録することによって入力され得る。同様に、阻害剤の較正曲線は、分析物センサ応答を阻害剤濃度の関数としてプロットし、較正範囲にわたって好適な較正関数を決定することによって(例えば、回帰、特に線形回帰によって)決定されてもよい。
【0080】
プロセッサは、ルックアップテーブル内のどのセンサ応答値が、未知の分析物濃度を有する試料について測定されたものに最も近いかを決定し、次いで、それに応じて分析物濃度を報告することができる。いくつかのまたは他の実施形態では、未知の分析物濃度を有する試料に対するセンサ応答値が、ルックアップテーブル内の記録された値の間にある場合、プロセッサは、2つのルックアップテーブル値の間を内挿することで分析物濃度を推定し得る。内挿は、ルックアップテーブルに報告された2つの値の間の線形濃度変動を仮定することができる。センサ応答が、約10%以上の変動など、ルックアップテーブル内の所与の値から十分な量で異なる場合、内挿を使用することができる。
【0081】
同様に、いくつかのまたは他の種々の実施形態によれば、プロセッサは、未知の分析物濃度を有する試料についてのセンサ応答値を対応する較正関数に入力することができる。次いで、プロセッサは、それに応じて分析物濃度を報告することができる。
【0082】
センサ尾部は、グルコース応答性活性領域など、その上に配置された阻害剤とは異なる分析物に応答する活性領域を有する第2の作用電極をさらに備えることができる。したがって、本方法は、流体中のグルコース濃度に比例するグルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上の第2のシグナルを得ることと、第2のシグナルを流体中のグルコース濃度に相関させることとをさらに含むことができる。他の分析物は、適切な活性領域および印加電位を使用することによって、同様に分析され得る。
【0083】
より具体的な実施形態によると、第1のシグナルおよび第2のシグナルは、異なる時間に測定されてもよい。したがって、そのような実施形態では、電位は、第1の作用電極および第2の作用電極に交互に印加されてもよい。他の特定の実施形態では、第1のチャネルおよび第2のチャネルを介して第1のシグナルおよび第2のシグナルを同時に測定することができ、この場合、両方の作用電極に同時に電位を印加することができる。いずれの場合も、各活性領域に関連するシグナルは、次いで、上述したものと同様の方法でルックアップテーブルまたは較正関数を使用して、ジアホラーゼの阻害剤およびグルコースまたは類似の分析物などの別の分析物の濃度と相関させることができる。
【0084】
本明細書に開示される実施形態は、以下を含む:
A.ジアホラーゼの阻害剤に応答する分析物センサ。分析物センサは、少なくとも第1の作用電極を含むセンサ尾部と、第1の作用電極の表面上に配置された第1の活性領域とを含み、前記第1の活性領域は、電子移動剤と、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、還元型NAD、またはそれらの任意の組合せ、NAD依存性脱水素酵素、およびジアホラーゼを含む酵素システムとを含み、第1の活性領域から第1の作用電極への電子の移動は、第1の活性領域がジアホラーゼの阻害剤に応答するように、ジアホラーゼに対して律速である。
【0085】
B.ジアホラーゼの阻害剤をアッセイするための方法。本方法は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性脱水素酵素の基質およびジアホラーゼの阻害剤を含む流体に分析物センサを曝露することであって、分析物センサが、少なくとも第1の作用電極と、第1の作用電極の表面上に配置された第1の活性領域とを含むセンサ尾部を含み、第1の活性領域が、電子移動剤と、NAD、還元型NAD、またはそれらの任意の組合せ、NAD依存性脱水素酵素を含む酵素システムとを含み、第1の活性領域から第1の作用電極への電子の移動は、第1の活性領域が阻害剤に応答するように、ジアホラーゼに対して律速である、前記曝露することと、第1の作用電極に電位を印加することと、第1の活性領域の酸化還元電位以上で、流体中の阻害剤の濃度に比例する第1のシグナルを得ることと、第1のシグナルを流体中の阻害剤の濃度に相関させることとを含む。
【0086】
実施形態Aは、以下の追加要素の1つ以上を任意の組み合わせで有してもよい。
要素1:NAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼである、前記NAD依存性脱水素酵素。
【0087】
要素2:第1の作用電極への電子の移動に関して律速量のジアホラーゼを含み、ジアホラーゼは、第1の作用電極への電子の移動に関して律速になるように修飾されているか、またはそれらの任意の組み合わせである、前記第1の活性領域。
【0088】
要素3:ワルファリン、ジクマロール、N-メチルマレイミド、ジフェニレンヨードニウム、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、フラボン-8-酢酸、塩化ジメチルベンジル(alk)アンモニウム、7,8-ジヒドロキシフラボン、クリシン、およびそれらの任意の組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、前記ジアホラーゼの阻害剤。
【0089】
要素4:少なくとも第1の活性領域を覆う分析物透過性膜をさらに備え、分析物透過性膜は阻害剤に対して透過性である、前記分析物センサ。
要素5:阻害剤とは異なる分析物に応答する第2の活性領域をさらに備える前記分析物センサ。
【0090】
要素6:センサ尾部上に配置されたグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域である、前記第2の活性領域。
要素6A:第2の活性領域を覆う、グルコースに対して透過性である、分析物透過性膜。
【0091】
要素7:第2の作用電極であって、第2の活性領域が第2の作用電極の表面上に配置されている、第2の作用電極と、第2の活性領域を覆う分析物透過性膜とをさらに備える、前記分析物センサ。
【0092】
要素8:組織内に挿入されるように構成される、前記センサ尾部。
要素9:第1の活性領域を含むポリマーに共有結合している、少なくとも前記電子移動剤、前記ジアホラーゼ、および前記NAD依存性脱水素酵素。
【0093】
要素10:アルブミンをさらに含む、前記第1の活性領域。
非限定的な例として、Aに適用可能な例示的な組み合わせとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1と2;1と3;1と4;1と5;1と6;1、6と6A;1、6、6Aと7;1と7;1と8;1と9;1と10;1、2と3;1、2と4;1、2、4と5;1、4、5と7;1、2と9;1、2と10;2と3;2~4;2と4;2と5;2、4と5;2と6;2、6と6A;2、6、と7;2、6、6Aと7;2と7;2と8;2と9;2と10、2、4、5および7;2、3と4;2、3、5と6;2、4、5、6と6A;2、4,5と7;3と4;3と5;と3、4と5;3、4、5と6;3、4、5、6と6A;3と7;3と8;3と9;3と10;4と5;4、5と6;4、5、6と6A;4と7;4と8;4と9;4と10;8と9;8と10;および9と10。
【0094】
実施形態Bは、以下の追加要素の1つ以上を任意の組み合わせで有してもよい。
要素11:前記NAD依存性グルコース脱水素酵素であり、前記基質がグルコースである、前記NAD依存性脱水素酵素。
【0095】
要素12:第1の作用電極への電子の移動に関して律速量のジアホラーゼを含み、ジアホラーゼは、第1の作用電極への電子の移動に関して律速になるように修飾されるか、またはそれらの任意の組み合わせである、前記第1の活性領域。
【0096】
要素13:ワルファリン、ジクマロール、N-メチルマレイミド、ジフェニレンヨードニウム、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、フラボン-8-酢酸、塩化ジメチルベンジル(alk)アンモニウム、7,8-ジヒドロキシフラボン、クリシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、前記阻害剤。
【0097】
要素14:少なくとも前記第1の活性領域を覆い、前記分析物透過性膜が阻害剤に対して透過性である、前記分析物透過性膜。
要素15:前記阻害剤とは異なる分析物に応答する第2の活性領域をさらに含む、前記センサ尾部。
【0098】
要素16:センサ尾部上に配置されたグルコース応答性酵素を含むグルコース応答性活性領域であり、前記方法はグルコース応答性活性領域の酸化還元電位以上の第2のシグナルを得ることを含み、流体中のグルコース濃度に比例する前記第2のシグナルであって、前記第2のシグナルを流体中のグルコース濃度に相関させることをさらに含む、前記第2の活性領域。
【0099】
要素16A:グルコースである、前記基質。
要素16B:グルコースに対して透過性であり、前記第2の活性領域を覆う、分析物透過性膜。
【0100】
要素17:第2の作用電極の表面上に配置され、第2の電位が前記第2の作用電極に印加され、前記第2の活性領域の酸化還元電位以上の第2のシグナルが取得される、前記第2の活性領域。
【0101】
要素18:前記第2の活性領域を覆う、検体透過性膜。
要素19:異なる時点で取得される、前記第1のシグナルおよび前記第2のシグナル。
要素20:第1のチャネルおよび第2のチャネルを介して同時に取得される、前記第1のシグナルおよび前記第2のシグナル。
【0102】
要素21:前記第1の活性領域を含むポリマーに共有結合している、少なくとも前記電子移動剤、前記ジアホラーゼ、および前記NAD依存性脱水素酵素。
要素22:アルブミンをさらに含む、前記第1の活性領域。
【0103】
要素23:流体は生体液であり、前記分析物センサはin vivoで前記生体液に曝露される、前記流体。
非限定的な実施例として、Bに適用可能な例示的な組み合わせとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:11と12;11と13;11~13;11と14;11、12と14;11、13と14;11~14;11と15、11、15と16;11、15、16と16A;11、15、16、16B;11、15と17;11、15、17と18;11、15、17、18と19;11、15、17、18と20;11と21;11と22;11と23;11、12と21;11、12、13と21;11、12と23;11、12、13と23;12と13;12と14;12~14;12と15;12、15と16;12、15、16と16A;12、15、16と16B;12、15と17;12、15、17と18;12、13、14 15と17;12、13、14、15、17と18;12、15、17と19;12、15、17と20;12と21;12と22;12と23;13と14;13と15;13、15と16;13、15、16と16A;13、15、16と16B;13と17;13、17と18;13、17と19;13、17と20;13と21;13、17と18;13、17と19;13、17と20;13と21;13と22;13と23;14と15;14~16;14、15、16と16A;14、15、16と16B;14、15と17;14、15、17と18;14、15、17と19;14、15、17と20;14と21;14と22;14と23;15と16;15、16と16A;15、16と16B;15と17;15と18;15、17と18;15、17と19;15、17と20;15と21;15と22;15と23;21と22;21と23;および22と23。
【0104】
本明細書に記載される実施形態のより良い理解を促すために、種々の代表的な実施形態の実施例を以下に示す。以下の実施例を読んで、本発明の範囲を限定または定義してはならない。
【0105】
実施例
化学式1に示される構造を有するポリ(ビニルピリジン)結合遷移金属錯体を調製した。この遷移金属錯体およびそれを用いた電子移動に関するさらなる詳細は、上記参照により組み込まれた共同所有の米国特許第6605200号明細書に提供されている。各モノマーの下付き文字は、例示的な原子比を表し、特定のモノマーの順序を示すものではない。
【0106】
【0107】
実施例1
ジクマロールによるジアホラーゼの阻害。この実施例のために、以下の表1に示されるスポッティング製剤を別々の炭素作用電極上にコーティングした。マイクロシリンジを使用し、35nLの各製剤を、別々の炭素作用電極上に約0.2mm2の面積を有する単一スポットとして堆積させた。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。
【0108】
【0109】
電極を新鮮なリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液に曝露し、次いで、種々の量のNADHおよびジクマロールを緩衝化溶液中に漸増した。センサに「電力を供給(power)」し、上記で特定した酵素システム(
図3B)を完成するために、グルコースまたはGDHを添加しなかった。NADHを30μMまで漸増した。次いで、30μMのNADHを含有する緩衝化溶液に、ジクマロールを100μMの濃度まで漸増した。ジクマロールの濃度を100μMまで漸増した後、NADHの濃度を最終的に40μMまで漸増した。
図10は、実施例1の分析物センサ(センサ1~4)に曝露されたPBS溶液へのNADHおよびジクマロール(DCM)の漸増の結果を示すグラフである。示されるように、すべてのセンサは、NADH濃度の増加に対して応答性であったが、それぞれが低濃度の電子移動剤を含有するセンサ2およびセンサ4についてのみ、ジクマロールの濃度が増加するにつれてシグナルの急激かつ敏感な減少があった。センサ2の方がジアホラーゼの濃度がより高いため、結果としてセンサ2の方で高いシグナルが得られた。センサ応答をジアホラーゼ制限されたものにするという目標を考慮すると、さらなる最適化作業は、ジアホラーゼの低濃度負荷でのセンサ応答を最適化することを中心とした。
【0110】
次に、0.2mg/mLのジアホラーゼ、4mg/mLのPEGDGE400、および様々な量の電子移動剤(0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1、2、4、および8mg/mL)を含有する10mM MES緩衝液を使用して、上記のようにいくつかの電極を製造した。次いで、NADHおよびジクマロールを、分析物センサに曝露されたPBS溶液中に漸増した。この場合、NADHは160μMまで漸増し、ジクマロールは80μMまで漸増した。
図11Aおよび
図11Bは、電極の上の活性領域に可変量の電子移動剤を有する電極に曝露されたPBS溶液中にNADHおよびジクマロール(DCM)を漸増した結果を示すグラフである。
図11Aは未加工の電流応答を示し、
図11Bは正規化された電流応答を示す。
図12は、電極の上の活性領域に可変量の電子移動剤を有する電極についてのNADH濃度の関数としてのセンサ応答のグラフであり、
図13は、電極の上の活性領域に可変量の電子移動剤を有する電極についてのジクマロール濃度の関数としての正規化センサ応答のグラフである。示されるように、0.4mg/mLの濃度の電子移動剤は、ジアホラーゼ阻害剤の検出のための強い阻害および良好な感度の最適な組み合わせを提供した。
【0111】
実施例2
グルコース脱水素酵素および作用電極への律速電子移動を伴う活性領域を有する分析物センサを使用したジクマロールの検出。この実施例のために、以下の表2に示されるスポッティング製剤を別々の炭素作用電極上にコーティングした。マイクロシリンジを使用し、35nLの各製剤を、別々の炭素作用電極上に約0.2mm2の面積を有する単一スポットとして堆積させた。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。
【0112】
【0113】
次いで、グルコースおよびジクマロールを、センサが浸漬されたPBS溶液に漸増した。最初に500μM量のNADを緩衝液に添加し、続いてグルコースを50μMまで3回添加した。その後、ジクマロール(DCM)を160μMまで漸増した。
図14Aおよび14Bは、電極上の活性領域に可変量のNAD依存性グルコース脱水素酵素を有する電極に曝露されたPBS溶液中にグルコースおよびジクマロール(DCM)を漸増した結果を示すグラフである。
図14Aは未加工の電流応答を示し、
図14Bは正規化された電流応答を示す。示されるように、グルコース脱水素酵素の量を増加させると、グルコース添加中およびDCM添加中のシグナル応答が増加した。全体として、DCM応答は、添加されるDCMの量が増加するにつれて減少した。
【0114】
特に指示のない限り、本明細書および関連する特許請求の範囲における量などを表すすべての数は、すべての場合において「約(about)」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特に指示のない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって取得しようとする所望の特性に応じて異なり得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0115】
種々の特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態が本明細書で提示される。本出願では、わかりやすくするために、物理的実装のすべての特徴が説明または図示されているわけではない。本発明の実施形態を組み込んだ物理的な実施形態の開発において、開発者の目標を達成するために、システム関連の制約、ビジネス関連の制約、政府関連の制約、およびその他の制約の遵守など、実施によって、そしてその時々で変動する、多数の実施に固有の決定がなされなければならないことを理解されたい。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、それでも、そのような努力は、当業者にとって日常的な仕事であり、本開示の利益を有するであろう。
【0116】
種々のシステム、ツール、および方法が、種々の構成要素またはステップを「備える(comprising)」という観点から本明細書に説明されるが、システム、ツール、および方法はまた、種々の構成要素およびステップ「から本質的に成る(consist essentially of)」または「から成る(consist of)」こともできる。
【0117】
本明細書で使用される場合、先行する一連の項目「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という句は、項目のいずれかを分離するための用語「および(and)」または「または(or)」とともに、リストの各メンバー(すなわち、各項目)ではなく、全体としてリストを修飾する。「のうちの少なくとも1つ」という句は、項目のうちのいずれか1つのうちの少なくとも1つ、および/または項目の任意の組合せのうちの少なくとも1つ、および/または項目の各々のうちの少なくとも1つを含む意味を可能にする。例として、句「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」または「A、B、もしくはCのうちの少なくとも1つ」は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、またはCのみ;A、B、およびCの任意の組み合わせ;ならびに/もしくはA、B、およびCのそれぞれのうちの少なくとも1つを指す。
【0118】
したがって、開示されたシステム、ツールおよび方法は、言及された目的および利点ならびにそれらに固有ものを達成するように十分に適合される。本開示の教示は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかに異なるが同様の方法で修正および実施され得るので、上記に開示された特定の実施形態は、例示的なものにすぎない。さらに、以下の特許請求の範囲に記載される以外に、本明細書に示される構成または設計の詳細に限定することは意図されていない。したがって、上記で開示された特定の例示的実施形態は、変更、組み合わせ、または修正されてもよく、すべてのそのような変形形態が本開示の範囲内であると考えられることは明らかである。本明細書に例示的に開示されるシステム、ツール、および方法は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素および/または本明細書に開示される任意選択の要素の不在下で適切に実施され得る。システム、ツール、および方法は、種々の構成要素またはステップを「備える(comprising)」、「含有する(containing)」、または「含む(including)」という観点から説明されるが、システム、ツール、および方法はまた、種々の構成要素およびステップ「から本質的に成る(consist essentially of)」または「から成る(consist of)」こともできる。上記に開示されたすべての数および範囲は、ある程度異なる場合がある。下限および上限を有する数値範囲が開示される場合は、その範囲内に入る任意の数および任意の含まれる範囲が具体的に開示される。特に、本明細書に開示される(「約(about)aから約(about)bまで」、または同等に「およそ(approximately)aからbまで」、または同等に「およそ(approximately)a~b」の形態の値のあらゆる範囲は、値のより広い範囲内に包含されるあらゆる数および範囲を示すと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、それらの明白な通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」または「an」は、それが導入する要素の1つ以上を意味するように本明細書で定義される。本明細書および参照により本明細書に組み込まれ得る1つ以上の特許または他の文書における単語または用語の使用において、何らかの矛盾がある場合、本明細書と一致する定義が採用されるべきである。