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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127090
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/025 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G02F1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035970
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】大川 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓二
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA17
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA23
2K102DA05
2K102DB04
2K102DB08
2K102DD03
2K102EA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂体および配線を保護する保護膜における応力を低減する。
【解決手段】光半導体装置は、基板の主面上に設けられ、第1方向に沿って延在する素子部と、主面上に設けられ、第1方向に沿って並んでいる複数の第1凸部と、上面を有し、素子部および複数の第1凸部を埋め込む樹脂体と、上面上に設けられ、第1方向に沿って延在する配線と、上面および配線を覆う保護膜とを備える。素子部は、第1半導体層を含むメサ凸部と、メサ凸部上に設けられたメサ導波路とを含む。複数の第1凸部のそれぞれは、互いに離隔すると共に、第1半導体層を含む。配線は、第1方向と交差する第2方向において複数の第1凸部と素子部との間に設けられ、第1方向及び第2方向に交差する第3方向および第1方向に延在するとともに、複数の第1凸部に近接する側面を有する。保護膜の配線の側面を覆う第1部分と、上面を覆い第1部分と連結される第2部分との為す角は鋭角である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する基板と、
前記主面上に設けられ、第1方向に沿って延在する素子部と、
前記主面上に設けられ、前記第1方向に沿って並んでいる複数の第1凸部と、
上面を有し、前記上面と前記主面との間に前記素子部および前記複数の第1凸部を埋め込む樹脂体と、
前記上面上に設けられ、前記第1方向に沿って延在する配線と、
前記上面および前記配線を覆う保護膜と、を備え、
前記素子部は、前記主面上に設けられ、第1半導体層を含むメサ凸部と、前記メサ凸部上に設けられたメサ導波路と、を含み、
前記複数の第1凸部のそれぞれは、互いに離隔すると共に、前記第1半導体層を含み、
前記配線は、前記第1方向と交差する第2方向において前記複数の第1凸部と前記素子部との間に設けられ、
前記配線は、前記第1方向及び第2方向に交差する第3方向および前記第1方向に延在するとともに、前記複数の第1凸部に近接する側面を有し、
前記保護膜は、前記側面を覆う第1部分と、前記上面を覆い、前記第1部分と連結される第2部分と、を含み、
前記第1部分と前記第2部分との為す角は鋭角である、光半導体装置。
【請求項2】
前記主面の平面視において、前記配線は、前記複数の第1凸部から離隔している、
請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記主面の平面視において、前記側面が、前記複数の第1凸部と重なっている、
請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記樹脂体は、ベンゾシクロブテンを含んでいる、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記複数の第1凸部のそれぞれは、10μm以下の前記第1方向の長さと、10μm以下の前記第2方向の幅とを有する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記主面上に設けられ、前記第1方向に沿って並んでいる複数の第2凸部をさらに備え、
前記複数の第2凸部は、前記主面と前記上面との間に前記樹脂体に埋め込まれ、
前記複数の第2凸部のそれぞれは、互いに離隔すると共に、前記第1半導体層を含み、
前記主面の平面視において、前記複数の第2凸部は、前記配線の内側に位置している、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光変調器を開示する。この光変調器は、第1メサ導波路および第2メサ導波路を備える。この光変調器では、第1メサ導波路および第2メサ導波路のそれぞれが、基板上に設けられた第1半導体層と、第1半導体層上に設けられた第2半導体層と、第2半導体層上に設けられたコア層と、コア層上に設けられた第3半導体層と、を備える。この光変調器では、第1メサ導波路および第2メサ導波路が、配線により、基板上に設けられた電極パッドに接続されている。特許文献2は、半導体光変調器を開示する。この半導体光変調器は、n-InPクラッド層と、半導体コア層と、p-InPクラッド層と、を備える。この半導体光変調器では、半導体コア層へ電圧を印加するためにシグナル電極とグランド電極とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-37930号公報
【特許文献2】国際公開第2019/276665号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載された半導体光変調器等では、半導体層が樹脂体によって埋め込まれると共に、半導体層に信号を伝送するための配線が樹脂体の表面上に設けられる場合がある。さらに、樹脂体の表面上と配線の表面上とに保護膜を設けることにより、樹脂体および配線を保護する場合がある。この場合、保護膜の成膜時において、樹脂体および配線が高温に曝される。成膜後に室温まで温度が下がると、樹脂体の線膨張係数と金属によって構成される配線の線膨張係数との差に起因して、保護膜のうち樹脂体の表面上に設けられる部分と配線の表面上に設けられる部分との間において応力が生じる。信頼性向上のためには、そのような応力は緩和されることが好ましい。
【0005】
本開示は、樹脂体および配線を保護する保護膜における応力を低減できる光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一側面として、光半導体装置に関する。この光半導体装置は、主面を有する基板と、主面上に設けられ、第1方向に沿って延在する素子部と、主面上に設けられ、第1方向に沿って並んでいる複数の第1凸部と、上面を有し、上面と主面との間に素子部および複数の第1凸部を埋め込む樹脂体と、上面上に設けられ、第1方向に沿って延在する配線と、上面および配線を覆う保護膜と、を備える。この光半導体装置では、素子部は、主面上に設けられる第1半導体層と、第1半導体層上に設けられ、メサ導波路を構成するコア層と、コア層上に設けられ、メサ導波路を構成する第2半導体層と、を含む。複数の第1凸部のそれぞれは、互いに離れると共に、第1半導体層を含む。配線は、第2方向における複数の第1凸部の中心から素子部へ向かって離れている。この光半導体装置では、素子部は、主面上に設けられ、第1半導体層を含むメサ凸部と、メサ凸部上に設けられたメサ導波路と、を含み、複数の第1凸部のそれぞれは、互いに離隔すると共に、第1半導体層を含み、配線は、第1方向と交差する第2方向において複数の第1凸部と素子部との間に設けられ、配線は、第1方向及び第2方向に交差する第3方向および第1方向に延在するとともに、複数の第1凸部に近接する側面を有し、保護膜は、側面を覆う第1部分と、上面を覆い、第1部分と連結される第2部分と、を含み、第1部分と第2部分との為す角は鋭角である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、樹脂体および配線を保護する保護膜における応力を低減できる光半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る光半導体装置を示す平面図である。
図2図2は、図1に示す光半導体装置の一部を拡大して示す平面図である。
図3図3は、図2に示す光半導体装置のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、光半導体装置が備える第1素子部の周辺構造を示す断面図である。
図5図5の(a)部は、第1配線が複数の第1凸部の中心から第1素子部へ向かって離れている状態の断面図を模式的に示す図である。図5の(b)部は、第1配線が複数の第1凸部の中心から第1素子部とは逆側へ向かって離れている状態の断面図を模式的に示す図である。
図6図6は、第1変形例に係る光半導体装置の一部を拡大して示す平面図である。
図7図7は、第2変形例に係る光半導体装置の一部を拡大して示す平面図である。
図8図8は、第2変形例に係る光半導体装置の断面図を模式的に示す図である。
図9図9の(a)部は、実施例1および実施例2に係る光半導体装置のEO応答特性を示すグラフである。図9の(b)部は、比較例に係る光半導体装置のEO応答特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
[1]本開示の一実施形態に係る光半導体装置は、主面を有する基板と、主面上に設けられ、第1方向に沿って延在する素子部と、主面上に設けられ、第1方向に沿って並んでいる複数の第1凸部と、上面を有し、上面と主面との間に素子部および複数の第1凸部を埋め込む樹脂体と、上面上に設けられ、第1方向に沿って延在する配線と、上面および配線を覆う保護膜と、を備える。この光半導体装置では、素子部は、主面上に設けられ、第1半導体層を含むメサ凸部と、メサ凸部上に設けられたメサ導波路と、を含み、複数の第1凸部のそれぞれは、互いに離隔すると共に、第1半導体層を含み、配線は、第1方向と交差する第2方向において複数の第1凸部と素子部との間に設けられ、配線は、第1方向及び第2方向に交差する第3方向および第1方向に延在するとともに、複数の第1凸部に近接する側面を有し、保護膜は、側面を覆う第1部分と、上面を覆い、第1部分と連結される第2部分と、を含み、第1部分と第2部分との為す角は鋭角である。
【0010】
この光半導体装置では、複数の第1凸部が樹脂体によって埋め込まれ、配線が第2方向において複数の第1凸部と素子部との間に設けられることにより、第1凸部に近接する配線の側面と、樹脂体の上面の一部との為す角が、鋭角となる。よって、配線の側面を覆う保護膜の第1部分と、樹脂体の上面を覆い、第1部分と連結される保護膜の第2部分との為す角が、鋭角となっている。この場合、保護膜の成膜時において、樹脂体の線膨張係数と配線の線膨張係数との差に起因して生じる、第1部分と第2部分との間における応力は、保護膜の第1部分と保護膜の第2部分との為す角が90°以上である場合と比較して、小さくなる。したがって、この光半導体装置によれば、樹脂体および配線を保護する保護膜における応力を低減できる。さらに、この光半導体装置では、複数の第1凸部はそれぞれが互いに離れて第1方向に沿って配置されている。基板の平面視において、複数の第1凸部の総面積は、一つの第1凸部が連続して第1方向に延在する場合の面積と比較して、小さくなる。複数の第1凸部においては、電気信号が配線を伝搬する際の電磁誘導効果によって個々の第1凸部の第1半導体層に渦電流が流れて渦電流損が発生し得る。渦電流損は、個々の第1凸部の上面の面積が小さくなることにより、低減される。このため、複数の第1凸部のそれぞれを互いに離して構成することにより、一つの第1凸部をX方向に延在して構成した場合と比較して、渦電流損を低減できる。よって、光半導体装置のEO(Electro Optical)応答特性に対する渦電流損の影響を、複数の第1凸部のそれぞれを互いに離隔せずに構成した場合と比較して、低減できる。
【0011】
[2]上記[1]の光半導体装置では、主面の平面視において、配線は、複数の第1凸部から離隔していてもよい。この場合、第2方向における配線と複数の第1凸部との間の距離が長くなるため、複数の第1凸部における渦電流損を更に低減できる。よって、光半導体装置1のEO応答特性に対する渦電流損の影響を更に低減できる。
【0012】
[3]上記[1]の光半導体装置では、主面の平面視において、側面が、複数の第1凸部と重なっていてもよい。この場合、複数の第1凸部を配線に近づけることができるので、第2方向に沿った光半導体装置の幅が広くなることを抑制できる。
【0013】
[4]上記[1]から[3]のいずれかの光半導体装置において、樹脂体は、ベンゾシクロブテンを含んでいてもよい。この場合、樹脂体が熱硬化性を有するため、樹脂体を容易に形成することができる。
【0014】
[5]上記[1]から[4]のいずれかの光半導体装置において、複数の第1凸部のそれぞれは、10μm以下の第1方向の長さと、10μm以下の第2方向の幅とを有していてもよい。この場合、主面の平面視において複数の第1凸部のそれぞれの面積がより小さくなるので、電気信号を配線で伝送するときの複数の第1凸部における渦電流損を顕著に低減できる。よって、光半導体装置のEO応答特性に対する渦電流損の影響を顕著に低減できる。
【0015】
[6]上記[1]から[5]のいずれかの光半導体装置は、主面上に設けられ、第1方向に沿って並んでいる複数の第2凸部をさらに備え、複数の第2凸部は、基板の主面と樹脂体の上面との間に樹脂体に埋め込まれ、複数の第2凸部のそれぞれは、互いに離隔すると共に、第1半導体層を含み、主面の平面視において、複数の第2凸部は、配線の内側に位置していてもよい。この場合、複数の第2凸部が配線の内側に位置しているため、樹脂体の上面のうち配線の側面が設けられている部分が平坦に近づく。よって、配線の側面における応力を緩和できる。
[本開示の実施形態の詳細]
【0016】
本実施形態に係る光半導体装置の具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る光半導体装置1を示す平面図である。光半導体装置1は、例えばマッハツェンダ変調器である。光半導体装置1は、例えば光通信において光の強度または位相を変調し、変調された光信号を生成することができる。図1に示されるように、光半導体装置1は、基板2と、素子部3と、第1信号線6と、第2信号線7と、基準電位線8と、を備える。基板2は、例えば、InP基板といったIII-V族半導体基板である。基板2は、主面2aを有する。素子部3は、後述する第3素子部13を除いて一方向に延在しており、以下では、第3素子部13を除いて素子部3が延在する方向をX方向(第1方向)と称する。また、X方向に対して交差する方向をY方向(第2方向)、X方向およびY方向に交差する方向をZ方向(第3方向)と称する。主面2aは、X方向およびY方向に延在する平面である。ただし、主面2aは、Z方向において凹凸を有し、底面2dを有する。底面2dについては後述する。主面2aの法線は、Z方向に沿って延伸する。X方向と、Y方向と、Z方向とは、例えば、互いに直交している。光半導体装置1では、例えば、第1信号線6と第2信号線7とによって、差動伝送線路が構成されている。
【0018】
素子部3は、メサ導波路を有する半導体層積層体である。素子部3は、第1素子部11と、第2素子部12と、第3素子部13と、を備える。素子部をメサとも称する。
【0019】
第1素子部11は、主面2a上に設けられ、X方向に沿って延在する。第1素子部11は、第1メサ導波路14と第2メサ導波路15とを有する。第1メサ導波路14の一端14aと第2メサ導波路15の一端15aとは、光分波器C1と光学的に結合されている。光分波器C1は、例えばマルチモード干渉器である。光分波器C1は、入力導波路S1の出力端と光学的に結合されている。入力導波路S1の入力端は入力ポートP1である。入力ポートP1は、基板2のX方向における一方の縁2bに位置している。これにより、光分波器C1は、入力ポートP1から入力光を受けることができる。
【0020】
第1メサ導波路14および第2メサ導波路15は、X方向に沿って延在する。第1メサ導波路14と第2メサ導波路15とは、Y方向において互いに並んでいる。
【0021】
第2素子部12は、主面2a上に設けられ、X方向に沿って延在する。第2素子部12は、第1メサ導波路16と第2メサ導波路17とを有する。第1メサ導波路16の一端16aと第2メサ導波路17の一端17aとは、光合波器C2と光学的に結合されている。光合波器C2は、例えばマルチモード干渉器である。光合波器C2は、出力導波路S2の入力端と光学的に結合されている。出力導波路S2の出力端は出力ポートP2である。出力ポートP2は、基板2の縁2bに位置している。これにより、光合波器C2は、出力ポートP2に対して出力光を提供する。
【0022】
第1メサ導波路16および第2メサ導波路17は、X方向に沿って延在する。第1メサ導波路16と第2メサ導波路17とは、Y方向において互いに並んでいる。
【0023】
第3素子部13は、主面2a上に設けられている。第3素子部13は、基板2のX方向における他方の縁2c寄りの部分に設けられている。基板2の縁2cは、X方向において縁2bとは逆側に位置している。第3素子部13は、第1メサ導波路18と第2メサ導波路19とを有する。第1メサ導波路18の一端18aは、第1メサ導波路14と結合されており、第1メサ導波路18の他端18bは、第1メサ導波路16と結合されている。第2メサ導波路19の一端19aは、第2メサ導波路15と結合されており、第2メサ導波路19の他端19bは、第2メサ導波路17と結合されている。
【0024】
第1素子部11および第2素子部12は、X方向に沿って延伸する中心線A1に対して互いに線対称となるように構成されている。それと共に、第1信号線6、第2信号線7および基準電位線8は、それぞれが中心線A1に対して線対称な構成を有している。したがって、以下では、第1素子部11について説明し、第2素子部12についての説明は省略する。第2素子部は、第1素子部11の構成と中心線A1に関して線対称な構成を有する。例えば、第1信号線6は、第1メサ導波路14および第1メサ導波路16へ信号を伝送するための配線であるが、第1メサ導波路16との関係は第1メサ導波路14との関係と同じになるので、第2素子部12の詳細な説明を省略する。また、第1信号線6は、中心線A1に関して互いに線対称な2つの部分を有するので、一方の部分についてのみ説明し、それと線対称な他方の部分については説明を省略する。
【0025】
第1信号線6は、第1メサ導波路14と第1メサ導波路16とへ電気信号を伝送するための配線である。第1信号線6は、例えば、第1メサ導波路14と第1メサ導波路16とへ数十Gbaudの電気信号を伝送する。第1信号線6は、第1配線61と、複数の第1接触部62と、複数の第1接続部63と、第2配線64と、複数の第2接触部65と、複数の第2接続部66と、第3配線67とを備える。
【0026】
第1配線61は、第1メサ導波路14へ電気信号を伝送するための配線である。第1配線61は、主面2a上に設けられ、X方向に沿って延在している。第1配線61と第1メサ導波路14とは、Y方向に沿って並んでいる。第1配線61は、Y方向に沿って第1素子部11から離れている。Y方向に沿った第1配線61の幅は、例えば、30μm以上70μm以下である。
【0027】
複数の第1接触部62のそれぞれは、第1メサ導波路14上に設けられ、X方向に沿って延在している。複数の第1接触部62のそれぞれは、X方向に沿って互いに離れている。第1接触部62は、導電性部材である。複数の第1接続部63のそれぞれは、第1配線61と複数の第1接触部62のそれぞれとを互いに接続させるための導電性部材である。複数の第1接続部63のそれぞれは、主面2a上に設けられ、Y方向に沿って延在している。第2配線64、複数の第2接触部65および複数の第2接続部66は、第1配線61、複数の第1接触部62および複数の第1接続部63とそれぞれ中心線A1に関して線対称となるように構成されている。
【0028】
第3配線67は、主面2a上に設けられ、Y方向に沿って延在する配線である。第3配線67の一端は、第1配線61と電気的に接続され、第3配線67の他端は、第2配線64と電気的に接続されている。
【0029】
第2信号線7は、第2メサ導波路15と第2メサ導波路17とへ電気信号を伝送するための配線である。第2信号線7は、例えば、第2メサ導波路15と第2メサ導波路17とへ数十Gbaudの電気信号を伝送する。第2信号線7は、第1配線71と、複数の第1接触部72と、複数の第1接続部73と、第2配線74と、複数の第2接触部75と、複数の第2接続部76と、第3配線77とを備える。
【0030】
第1配線71は、第2メサ導波路15へ電気信号を伝送するための配線である。第1配線71は、主面2a上に設けられ、X方向に沿って延在している。第1配線71と第2メサ導波路15と第1メサ導波路14と第1配線61とは、Y方向に沿ってこの順に並んでいる。第1配線71は、Y方向に沿って第1素子部11から離れている。第1メサ導波路14および第2メサ導波路15は、Y方向において第1配線61と第1配線71との間に配置されている。Y方向に沿った第1配線71の幅は、例えば、30μm以上70μm以下である。
【0031】
複数の第1接触部72のそれぞれは、第2メサ導波路15上に設けられ、X方向に沿って延在している。複数の第1接触部72のそれぞれは、X方向に沿って互いに離れている。第1接触部72は、導電性部材である。複数の第1接続部73のそれぞれは、第1配線71と複数の第1接触部72のそれぞれとを互いに接続させるための導電性部材である。複数の第1接続部73のそれぞれは、主面2a上に設けられ、Y方向に沿って延在している。第2配線74は、複数の第2接触部75および複数の第2接続部76は、第1配線71、複数の第1接触部72および複数の第1接続部73とそれぞれ中心線A1に関して線対称となるように構成されている。
【0032】
ところで、第1配線61は、Z方向において複数の第1接続部63よりも上方に設けられている。また、第1配線71は、Z方向において複数の第1接続部73よりも上方に設けられている。このように、光半導体装置1では、絶縁膜M2(図3参照)上に形成した電気配線(1層目配線)とそれよりも上方に形成した電気配線(2層目配線)との2つを電気的な接続に使用することができる。すなわち、電気配線として互いに上下関係にある2つの層を使用することができる。
【0033】
第3配線77は、絶縁膜M1(図3参照)上に設けられる。第3配線77の一端は、第1配線71と電気的に接続され、第3配線77の他端は、第2配線74と電気的に接続されている。それぞれの接続は、第2樹脂体52をZ方向に貫通するビアを介して行われる。第3配線77は、1層目配線として形成され、第1配線61と第2配線64とは、2層目配線として形成される。第3配線77を1層目配線で形成し、第3配線67を2層目配線で形成することにより、相互に電気的に接続されることなく基板2の平面視において交差することができる。
【0034】
基準電位線8は電気信号の基準電位に設定される配線である。第1配線61および第1配線71は、例えば、差動信号を伝送する。例えば、第1配線61は、当該差動信号の正相成分(正相信号)を伝送し、第1配線71は、当該差動信号の逆相成分(逆相信号)を伝送する。正相信号および逆相信号は、一対の相補信号であり、逆相信号は、正相信号の位相と反対の位相を有する。例えば、正相信号の電圧が増加するとき、逆相信号の電圧は減少し、正相信号の電圧が減少するとき、逆相信号の電圧は増加する。第1配線61および第1配線71は、差動信号を伝送する差動伝送線路を構成する。差動伝送線路は、特定の特性インピーダンスを(差動インピーダンス)を有するように構成される。差動特性インピーダンスは、例えば、第1配線61および第1配線71のそれぞれの幅を大きくすることにより、小さくすることができる。なお、差動伝送線路は、基準電位線8を使用せずに構成してもよい。
【0035】
光半導体装置1では、入力ポートP1からの入力光が、光分波器C1において2つに分波される。分波された入力光の一方は、第1メサ導波路14,18,16を伝搬し、分波された入力光の他方は、第2メサ導波路15,19,17を伝搬する。第1メサ導波路14,16を伝搬する光の位相は、第1信号線6からの電気信号(正相信号)により変化する。第2メサ導波路15,17を伝搬する光の位相は、第2信号線7からの電気信号(逆相信号)により変化する。第1メサ導波路14,18,16を伝搬した光と第2メサ導波路15,19,17を伝搬した光とは、光合波器C2において合波される。これにより、差動信号により変調された出力光が生成される。変調された出力光は、出力ポートP2から光半導体装置1の外部へ出射される。
【0036】
図2は、図1に示す光半導体装置1の一部を拡大して示す平面図である。図3は、図2に示す光半導体装置1のIII-III線に沿った断面図である。図2および図3に示されるように、光半導体装置1は、複数の凸部4と、樹脂体5と、保護膜9と、絶縁膜M1,M2とをさらに備える。複数の凸部4のことをテラスとも称する。
【0037】
図2に示されるように、複数の凸部4は、複数の第1凸部41と、複数の第1凸部42とを含む。複数の第1凸部41および複数の第1凸部42は、Z方向から視た場合(基板2の平面視ともいう)、複数の第1凸部41と複数の第1凸部42との間に第1素子部11を挟み込むように、主面2a上に設けられる。複数の第1凸部41は、X方向に沿って並んでいる。Z方向から視た場合、複数の第1凸部41と、第1配線61と、第1素子部11とは、Y方向に沿ってこの順に並んでいる。すなわち、第1配線61は、Y方向において複数の第1凸部41と第1素子部11との間に配置されている。本明細書において、「第1配線61は、Y方向において複数の第1凸部41と第1素子部11との間に配置されている」とは、第1配線61がY方向において複数の第1凸部41と重なる場合も含んでいる。第1配線61が複数の第1凸部41と重なる場合も含めて、第1配線61の側面61bは、第1凸部41のY方向の中心と第1素子部11との間に位置する。なお、本実施形態では、第1配線61がY方向において複数の第1凸部41と重なっていない。複数の第1凸部41のそれぞれは、互いに離れている。
【0038】
複数の第1凸部41のそれぞれは、Z方向から視た場合、例えば、矩形形状を呈している。複数の第1凸部41のそれぞれのX方向の長さL1は、例えば、5μm以上30μm以下である。複数の第1凸部41のそれぞれのY方向の長さ(幅)W1は、例えば、5μm以上30μm以下である。長さL1は、10μm以下であってもよい。幅W1は、10μm以下であってもよい。幅W1は、長さL1と同じ値であってもよい。互いに隣り合う複数の第1凸部41同士の間の距離L2は、例えば、長さL1の半分以上長さL1の2倍以下である。距離L2は、互いに隣接する第1凸部41同士が接触しない限りできるだけ小さく設定されてもよい。
【0039】
複数の第1凸部42は、X方向に沿って並んでいる。Z方向から視た場合、複数の第1凸部42と、第1配線71と、第1素子部11とは、Y方向に沿って順に並んでいる。すなわち、第1配線71は、Y方向において複数の第1凸部42と第1素子部11との間に配置されている。本明細書において、「第1配線71は、Y方向において複数の第1凸部42と第1素子部11との間に配置されている」とは、第1配線71がY方向において複数の第1凸部42と重なる場合も含んでいる。第1配線71が複数の第1凸部42と重なる場合も含めて、第1配線71の側面71bは、第1凸部42のY方向の中心と第1素子部11との間に位置する。なお、本実施形態では、第1配線71がY方向において複数の第1凸部42と重なっていない。複数の第1凸部42のそれぞれは、互いに離れている。
【0040】
複数の第1凸部42のそれぞれは、Z方向から視た場合、矩形形状を呈している。X方向に沿った複数の第1凸部42のそれぞれの長さの範囲は、例えば、長さL1に関する上記範囲と同様である。Y方向に沿った複数の第1凸部42のそれぞれの幅の範囲は、例えば、幅W1に関する上記範囲と同様である。互いに隣り合う複数の第1凸部42同士の間の距離は、例えば、距離L2に関する上記範囲と同様である。複数の第1凸部41および複数の第1凸部42は、第1素子部11のX方向に延伸する中心線A11に対して線対称となるように形成されていてもよい。
【0041】
第1配線61は、表面61aを有する。表面61aは、Y方向に沿って互いに対向する一対の側面61b,61cと、XY平面において延在する上面61dとを有している。上面61dは、側面61b,61cのそれぞれの上辺と連結されている。一対の側面61b,61cのそれぞれは、Z方向およびX方向に延在する。側面61bは、複数の第1凸部41に近接する側面である。すなわち、Z方向から視た場合、側面61bは、側面61cと比較して、Y方向において複数の第1凸部41に寄っている。一対の側面61b,61cのそれぞれは、例えば、XY平面に沿った主面2aに対して垂直となるように形成されている。基板2の平面視において、側面61cは第1素子部11から離隔している。
【0042】
第1配線61は、Y方向における複数の第1凸部41の近端O1から第1素子部11へ向かって離れている。近端O1は、第1凸部41のY方向の2つの端のうち第1素子部11に近接する方の端(第1素子部11に寄っている方の端)を表す。図2では、複数の第1凸部41のそれぞれの近端O1がY方向において同じ位置に揃って配置されており、近端O1を一つの直線で示している。同様に、第1凸部42の近端O2を一つの直線で示している。本実施形態では、Y方向に沿った複数の第1凸部41と第1配線61との間の距離W2が、0μmより大きい。すなわち、Z方向から視た場合、第1配線61は、複数の第1凸部41のそれぞれから離れている。距離W2は、0μmであってもよい。距離W2は、例えば、幅W1の2倍以下である。
【0043】
第1配線71は、第1素子部11のX方向に延伸する中心線A11に関して第1配線61と互いに線対称となるように構成されている。第1配線71と複数の第1凸部42との関係は、第1配線61と複数の第1凸部41との関係と同じとなるように構成されている。第1配線71は、表面71aを有する。表面71aは、Y方向に沿って互いに対向する一対の側面71b,71cと、XY平面において延在する上面71dとを有している。
【0044】
図3に示されるように、複数の第1凸部41のそれぞれと、複数の第1凸部42のそれぞれとは、主面2a上に設けられる第1半導体層20を含んでいる。一実施例では、複数の第1凸部41のそれぞれと、複数の第1凸部42のそれぞれとは、第1半導体層20と、基板2の一部と、を含む。複数の第1凸部41および複数の第1凸部42は、後述する絶縁膜M1によって覆われていてもよい。第1半導体層20の詳細については後述する。
【0045】
複数の凸部4は、他の複数の第1凸部(不図示)を備えていてもよい。この場合、当該複数の第1凸部は、複数の第1凸部41,42が第1素子部11を挟み込むように主面2a上に設けられる態様と同様に、第2素子部12を挟み込むように、主面2a上に設けられていてもよい。当該複数の第1凸部は、上述した複数の第1凸部41,42の構成と同様の構成を有する。複数の第1凸部41は、他の複数の第1凸部とともにX方向およびY方向に個々の第1凸部41が二次元で配置されていてもよい(図7参照)。そのように凸部(テラス)が二次元に配置された構成をワッフル構造と称する。
【0046】
樹脂体5は、第1樹脂体51と第2樹脂体52とを備える。樹脂体5は、上面5aを有する。上面5aは、第2樹脂体52の上面52aでもある。上面5aは、Z方向に沿って主面2aと並んでいる。樹脂体5は、Z方向において上面5aと主面2aとの間に位置する。より詳細には、樹脂体5は、Z方向において上面5aと後述する底面2dとの間に位置する。第1樹脂体51と第2樹脂体52とのそれぞれは、例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)を含んでいる。一実施例では、第1樹脂体51と第2樹脂体52とのそれぞれは、主にベンゾシクロブテンからなる。
【0047】
第1樹脂体51は、後述する第1素子部11のメサ凸部11a(図4参照)の表面上と、第1メサ導波路14の側面上と、第2メサ導波路15の側面上と、複数の第1凸部41の表面上と、複数の第1凸部42の表面上と、基板2上のうち第1素子部11と複数の第1凸部41と複数の第1凸部42とのいずれも設けられていない部分(底面2d上)とに設けられている。これにより、第1樹脂体51は、第1素子部11と、複数の第1凸部41と、複数の第1凸部42とを埋め込んでいる。すなわち、樹脂体5が第1素子部11と、複数の第1凸部41と、複数の第1凸部42とを埋め込んでいる。第1樹脂体51は、上述した他の複数の第1凸部(不図示)が第2素子部12を挟み込むように主面2a上に設けられている場合、当該他の複数の第1凸部を埋め込んでいてもよい。
【0048】
底面2dは、主面2a上に第1半導体層20が形成された後に素子部3および複数の凸部4を互いに電気的に分離するために素子部3および複数の凸部4以外の第1半導体層20を除去して形成される。底面2dは、基板2の主面2aを含む上部が一部分除去されて形成されてもよい。その場合、Z方向において、底面2dの高さは、元の主面2aの高さより低くなる。
【0049】
第1樹脂体51は、第1素子部11と、第2素子部12と、第3素子部13と、それら素子部の外に設けられた複数の第1凸部と、それら素子部と複数の第1凸部とのいずれも設けられていない部分とに設けられていてもよい。言い換えると、第1樹脂体51は、基板2上に全面に設けられていてもよい、第1樹脂体51は、平坦化された表面を有する。この場合、第1樹脂体51は、素子部3と、複数の第1凸部とを埋め込んでいる。
【0050】
図3に示されるように、第2樹脂体52は、複数の第1接触部62、複数の第1接続部63、複数の第1接触部72および複数の第1接続部73を埋め込むように、第1樹脂体51の平坦化された表面上に設けられている。第2樹脂体52は、更に複数の第2接触部65、第2接続部66、第2接触部75および第2接続部76(図1参照)を埋め込むように、第1樹脂体51上に設けられていてもよい。第2樹脂体52は、上面52aを有する。第1樹脂体51の平坦化された表面上にさらに上述の第2樹脂体52による埋込みが行われることにより、上面52aは、平坦化されている。上面52aは、Z方向に沿って底面2dと並んでいる。Z方向に沿った底面2dから上面52a(上面5a)までの高さT1は、例えば、5μm以上である。高さT1は、樹脂体5の厚さ(膜厚)に相当する。
【0051】
絶縁膜M1は、底面2dと第1樹脂体51との間に設けられる。絶縁膜M2は、第1樹脂体51と第2樹脂体52との間に設けられる。絶縁膜M2は、後述する電極E1(図4参照)と電極E2(図4参照)とを避けるように、第1樹脂体51上に設けられている。絶縁膜M1と絶縁膜M2とのそれぞれは、例えば、シリコン系無機絶縁膜である。上述の樹脂体5の膜厚T1は、絶縁膜M1、M2のそれぞれの膜厚を含んでいてもよい。
【0052】
第1配線61は、第2樹脂体52の上面52a上に設けられている。すなわち、第1配線61は、樹脂体5の上面5a上に設けられている。第1接触部62は、第2樹脂体52によって埋め込まれている。第1接続部63は、第2樹脂体52内に形成されたスルーホール(不図示)内を通過している。スルーホールは、第2樹脂体52の上面52aから第1接触部62まで延在している。スルーホール内を通過した第1接続部63が、第2樹脂体52によって埋め込まれた第1接触部62まで到達している。
【0053】
第1配線71は、第2樹脂体52の上面52a上に設けられている。すなわち、第1配線71は、樹脂体5の上面5a上に設けられている。第1接触部72は、第2樹脂体52によって埋め込まれている。第1接続部73は、第2樹脂体52内に形成されたスルーホール(不図示)内を通過している。スルーホールは、第2樹脂体52の上面52aから第1接触部72まで延在している。スルーホール内を通過した第1接続部73が、第2樹脂体52に埋め込まれた第1接触部72まで到達している。
【0054】
樹脂体5の上面5aは、第1樹脂体51によって素子部3および複数の第1凸部41,42を埋込み、さらに第2樹脂体52によって第1接触部62,72および第1接続部63,73を埋込むことによって平坦化されている。
【0055】
保護膜9は、第1配線61の表面61a上と、第1配線71の表面71a上と、に設けられている。保護膜9は、樹脂体5の上面5a上の一部であって、第1配線61と第1配線71とのいずれも設けられていない部分にさらに設けられている。言い換えると、保護膜9は、上面5a上に全面に設けられている。保護膜9は、第1配線61,71の表面61a,71aおよび第1配線61,71の設けられていない上面5aを外部から保護する。保護膜9は、例えば、シリコン系無機絶縁膜である。
【0056】
保護膜9は、第1配線61の側面61b,61cのうちY方向において複数の第1凸部41に近い側面61b上に設けられる第1部分91と、樹脂体5の上面5a上に設けられ、第1部分91と連結される第2部分92と、を含んでいる。第2部分92は、Y方向に沿って側面61bから第1凸部41のY方向の中心まで延在している。保護膜9は、第1配線61と同様に第1配線71に関して第3部分93および第4部分94をさらに含んでいる。
【0057】
図4は、光半導体装置1が備える第1素子部11の周辺構造を示す断面図である。第1素子部11は、メサ凸部11aと、メサ凸部11a上に設けられる第1メサ導波路14と、メサ凸部11a上に設けられる第2メサ導波路15とを有する。メサ凸部11aの上面の底面2dからの高さT2は、例えば、複数の第1凸部41および複数の第1凸部42(図3参照)のそれぞれの底面2dからの高さと同じである。メサ凸部11aの主面2aからの高さと、複数の第1凸部41および複数の第1凸部42のそれぞれの底面2dからの高さとは、互いに異なっていてもよい。なお、それぞれの高さは、絶縁膜M1の膜厚を含んでいてもよい。
【0058】
メサ凸部11aは、主面2a上に設けられる第1半導体層20を含んでいる。一実施例では、メサ凸部11aは、第1半導体層20と、基板2の一部と、を含む。第1メサ導波路14と第2メサ導波路15とのそれぞれは、第1半導体層20の一部と、第1半導体層20の該一部上に設けられるコア層21と、コア層21上に設けられる第2半導体層22と、を含んでいる。第1半導体層20は、例えばp型InPといったIII-V族化合物半導体を含んでいる。コア層21は、i型の半導体層(アンドープ半導体層)である。コア層21は、多重量子井戸構造を有してもよい。コア層21は、例えばAlGaInAs系のIII-V族化合物半導体を含んでいる。第2半導体層22は、例えばn型InPといったIII-V族化合物半導体を含んでいる。図1に示される第2素子部12と第3素子部13とのそれぞれは、メサ凸部11aの態様と同様である凸部(不図示)を含んでいてもよい。第1メサ導波路16,18と第2メサ導波路17,19とのそれぞれは、第1半導体層20の一部と、コア層21と、第2半導体層22と、を含んでいてもよい。第1凸部41,42は、メサ凸部11aをエッチングにより形成する際に、同時に形成され得る。絶縁膜M1は、メサ凸部11aの側面上、メサ凸部11aの上面の第1メサ導波路14および第2メサ導波路15以外の部分と、に設けられていてもよい。絶縁膜M1は、第1メサ導波路14および第2メサ導波路15の側面上にさらに設けられていてもよい。
【0059】
図4に示されるZ方向に沿った底面2dからメサ凸部11aの上面までの高さT2は、例えば、2μm以上4μm以下である。高さT2が2μm以上であることにより、第1素子部11を素子部3以外の部分から電気的に分離することができる。例えば、基板2上に素子部3と同じ構造の別の素子部を形成する場合、それらの素子部以外の部分の第1半導体層20を除去することによって素子部3のメサ凸部と別の素子部のメサ凸部とを互いに電気的に分離することができる。高さT2が4μm以下であることにより、樹脂体5の膜厚T1が過度に厚くならずに済む。膜厚T1(図3参照)は、メサ凸部11aの高さT2より第1素子部11の上部の樹脂体5の膜厚T3(図3参照)の分だけ大きくなる。なお、第1半導体層20の厚さが4μm以上の場合、高さT2は4μmを超えてもよい。メサ凸部11aのT2が大きくなると、樹脂体5の膜厚T1も大きくなる。メサ凸部11aの上面と樹脂体5の上面5aとの間の距離を膜厚T3とすると、高さT2と膜厚T3との和は、膜厚T1に等しくなる。膜厚T3は、例えば、1μm以上である。膜厚T3が大きくなると、樹脂体5の上面5aの平坦度が悪くなる場合がある。
【0060】
電極E1は、第1メサ導波路14に含まれる第2半導体層22上に設けられている。第1接触部62は、電極E1と接触するように電極E1上に設けられる。電極E2は、第2メサ導波路15に含まれる第2半導体層22上に設けられている。第1接触部72は、電極E2と接触するように電極E2上に設けられる。第2素子部12についても、第1素子部11と同様に、第1メサ導波路16および第2メサ導波路17のそれぞれの上に電極が設けられる。
【0061】
以上に説明した本実施形態に係る光半導体装置1の作用効果について、図5を参照しつつ、説明する。図5の(a)部は、複数の第1凸部41の近端O1が第1配線61からY方向に沿って離れている状態の断面図を模式的に示す図である。近端O1は、第1凸部41がY方向において有する2つの端のうち、第1素子部11に近い方の端を表す。遠端U1は、近端O1よりも第1素子部11から遠い方の端を表す。Y方向において、近端O1は、第1素子部11および遠端U1の間に位置する。光半導体装置1では、複数の第1凸部41が樹脂体5によって埋め込まれていることにより、樹脂体5の近端O1におけるZ方向の上端TO1より接触点Rが低くなるように、樹脂体5の上面5aの一部V1が傾斜する。ここで、接触点Rは、側面61bのZ方向の下端が樹脂体5の上面5aに接する点を表す。上面5aの一部V1は、接触点Rおよび上端TO1と含む。Y方向において接触点Rが近端O1と第1素子部11との間に位置するように第1凸部41が設けられている。このため、第1配線61が有する一対の側面61b,61cのうち近端O1に近接する側面61bと、樹脂体5の上面5aの一部V1との為す夾角βが、鋭角となる。換言すると、接触点Rを通り、主面2aに平行な仮想面Kに対する、樹脂体5の上面5aの勾配角γが、0°より大きくなっている。保護膜9の第2部分92の膜厚が、保護膜9の第1部分91の膜厚と等しいとき、夾角αは、夾角βと等しくなる。よって、側面61b上に設けられる保護膜9の第1部分91と、樹脂体5の上面5a上に設けられ、Y方向に沿って側面61bから近端O1へ向かって延在する保護膜9の第2部分92との為す夾角αが、鋭角となっている。例えば、夾角αおよび夾角βの値は、例えば、88°以上90°未満である。なお、夾角αおよび夾角βは、88°以下であってもよい。図3に示される第3部分93と第4部分94とが為す夾角もまた、第1部分91と第2部分92との為す夾角αの態様と同様に、鋭角となっている。ここで、夾角α、βおよび勾配角γは、いずれもYZ平面に平行な断面における角度を表している。したがって、当該断面を顕微鏡で観察することによって夾角αまたは夾角βを確認することができる。
【0062】
図5の(b)部は、参考例として、複数の第1凸部41の近端O1が第1配線61の側面61bと第1素子部11(図3参照)との間に位置するように第1凸部41が設けられている状態の断面図を模式的に示す図である。図5の(b)部を参照しつつ、第1配線61の側面61bが第1凸部41の上方に設けられた場合における、第1部分91と第2部分92とが為す角αについて説明する。Y方向において、側面61bの接触点Rは近端O1における上端TO1および遠端U1における上端TU1よりも第1凸部41の中央に近くなっている。樹脂体5の厚さ(膜厚)は、第1凸部41の上において中央が最も大きく、中央から近端O1あるいは遠端U1に近づくほど小さくなる。したがって、Z方向において、樹脂体5の遠端U1におけるZ方向の上端TU1は、接触点Rよりも低くなる。このため、側面61bと、樹脂体5の上面5aの一部V2との為す角βが、90°以上となり、保護膜9の第1部分91と保護膜9の第2部分92との為す角αも90°以上となる。
【0063】
上述のように本実施形態に係る光半導体装置1では、複数の第1凸部41の近端O1および第1素子部11(図3参照)が第1配線61を挟むように構成されることにより、側面61bに設けられる保護膜9の第1部分91と、樹脂体5の上面5a上に設けられる保護膜9の第2部分92との為す角αが鋭角となっている。このため、保護膜9の成膜時において、樹脂体5の線膨張係数と第1配線61の線膨張係数との差に起因して生じる、第1部分91と第2部分92との間における応力は、保護膜9の第1部分91と保護膜9の第2部分92との為す角が90°以上である場合と比較して、小さくなる。したがって、光半導体装置1によれば、樹脂体5および第1配線61を保護する保護膜9における応力を低減できる。
【0064】
さらに、光半導体装置1では、複数の第1凸部41はそれぞれが互いに離れてX方向に沿って配置されている。基板2の平面視において、複数の第1凸部41の総面積は、一つの第1凸部41が連続してY方向に延在する場合の面積と比較して、小さくなる。複数の第1凸部41においては、電気信号が第1配線61を伝搬する際の電磁誘導効果によって個々の第1凸部41の第1半導体層20に渦電流が流れて渦電流損が発生し得る。渦電流損は、個々の第1凸部41の上面の面積が小さくなることにより、低減される。このため、複数の第1凸部41のそれぞれを互いに離して構成することにより、一つの第1凸部41をX方向に延在して構成した場合と比較して、渦電流損を低減できる。よって、光半導体装置1のEO(Electro Optical)応答特性に対する渦電流損の影響を、複数の第1凸部41のそれぞれを互いに離隔せずに構成した場合と比較して、低減できる。
【0065】
光半導体装置1では、互いに隣り合う複数の第1凸部41同士の間の距離L2が、例えば、5μm以上20μm以下である。距離L2が5μm以上であることにより、複数の第1凸部41の上面の総面積は、一つの第1凸部41をX方向に沿って複数の第1凸部41の全長と同じ全長となるように延在して形成した場合の上面の面積と比較して、より小さくなる。このため、複数の第1凸部41における渦電流損を、一つの第1凸部41をX方向に延在して構成した場合と比較して、より低減できる。よって、光半導体装置1のEO応答特性に対する渦電流損の影響をより低減できる。ところで、互いに隣接する第1凸部41の間では、第1凸部41が無いため、樹脂体5の上面5aの勾配角γは、第1凸部41がある部分の勾配角γ(図5の(a)部参照)より相対的に減少する。距離L2が20μm以下であることにより、そのような相対的な減少を低減して樹脂体5の上面5aの一部V1を、より確実に傾斜させることができる。
【0066】
光半導体装置1においては、第1信号線6および第2信号線7によって構成される差動伝送線路が有する特性インピーダンスを調整するために、Y方向に沿った第1配線61,71の幅を広げることがある。この場合、温度変化によって第1配線61が熱膨張・熱収縮する際に、保護膜9におけるY方向の応力が大きくなるので、第1部分91と第2部分92との間における応力が大きくなることがある。このような場合であっても、光半導体装置1では、第1部分91と第2部分92との為す角αが鋭角であることから、第1部分91と第2部分92との間における応力の影響を低減できる。したがって、光半導体装置1によれば、第1部分91と第2部分92との間における応力を低減しつつ、差動伝送線路の特性インピーダンスを調整できる。
【0067】
光半導体装置1では、Z方向から視た場合、第1配線61が、複数の第1凸部41のそれぞれから離れている。これにより、Y方向における第1配線61と複数の第1凸部41との間の距離が長くなるため、複数の第1凸部41における渦電流損を更に低減できる。よって、光半導体装置1のEO応答特性に対する渦電流損の影響を更に低減できる。
【0068】
光半導体装置1では、Y方向に沿った複数の第1凸部41と第1配線61との間の距離W2が、例えば、20μm以下である。距離W2が20μm以下であることにより、第1配線61の側面61bが、樹脂体5の上面5a上であってより傾斜する部分に位置する。これにより、側面61bと、樹脂体5の上面5aとの為す夾角βが90°より小さくなるため、保護膜9の第1部分91と保護膜9の第2部分92との為す夾角αを90°より小さくすることができる。したがって、光半導体装置1によれば、樹脂体5および第1配線61を保護する保護膜9における応力をより低減できる。なお、距離W2は、幅W1より小さくてもよい。例えば、距離W2が幅W1を超えて大きくなるにつれて夾角βおよび夾角αは90°に近づく。
【0069】
光半導体装置1では、樹脂体5が、ベンゾシクロブテン(BCB)を含んでいる。樹脂体5が熱硬化性を有するため、樹脂体5を容易に形成することができる。
【0070】
光半導体装置1では、X方向に沿った複数の第1凸部41のそれぞれの長さL1が、例えば、5μm以上30μm以下である。光半導体装置1では、Y方向に沿った複数の第1凸部41のそれぞれの幅W1が、例えば、5μm以上30μm以下である。長さL1が5μm以上、かつ、幅W1が5μm以上であることにより、複数の第1凸部41を容易に設けることができる。長さL1が30μm以下、かつ、幅W1が30μm以下であることにより、Z方向からの平面視において複数の第1凸部41のそれぞれの面積が小さくなるので、電気信号を第1配線61で伝送するときの複数の第1凸部41における渦電流損を更に低減できる。よって、光半導体装置1のEO応答特性に対する渦電流損の影響を更に低減できる。
【0071】
光半導体装置1では、X方向に沿った複数の第1凸部41のそれぞれの長さL1が、例えば、10μm以下である。光半導体装置1では、Y方向に沿った複数の第1凸部41のそれぞれの幅W1が、例えば、10μm以下である。長さL1が10μm以下、かつ、幅W1が10μm以下であることにより、Z方向からので平面視において複数の第1凸部41のそれぞれの面積がより小さくなるので、電気信号を第1配線61で伝送するときの複数の第1凸部41における渦電流損を顕著に低減できる。よって、光半導体装置1のEO応答特性に対する渦電流損の影響を顕著に低減できる。
【0072】
[変形例]
以下では、図6図7および図8を参照しながら、上記実施形態の変形例に係る光半導体装置1A,1Bを説明する。なお、変形例の説明において上記実施形態と重複する記載は省略し、上記実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、変形例に上記実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0073】
(第1変形例)
図6は、第1変形例に係る光半導体装置1Aの一部を拡大して示す平面図である。光半導体装置1Aは、複数の第1凸部41Aと複数の第1凸部42Aとを備える。光半導体装置1Aでは、Z方向からの平面視において、複数の第1凸部41A,42Aの位置が、光半導体装置1の複数の第1凸部41,42の位置と相違している。他の点において、複数の第1凸部41A,42Aの構成は、複数の第1凸部41,42の構成と同様である。
【0074】
Z方向から視た場合、第1配線61の一部は、複数の第1凸部41Aのそれぞれの一部と重なっている。Y方向に沿った複数の第1凸部41Aのそれぞれと第1配線61とが重なっている部分の幅(第1凸部41Aの近端O3と側面61bとの間の距離)をW3とした場合、幅W3は、0μmより大きく、かつ、Y方向に沿った複数の第1凸部41Aのそれぞれの幅W1の半分より小さい。
【0075】
Z方向から視た場合、第1配線71の一部は、複数の第1凸部42Aのそれぞれの一部と重なっている。Y方向に沿った複数の第1凸部42Aのそれぞれと第1配線71とが重なっている部分の幅の範囲は、幅W3に関する上記範囲と同様である。
【0076】
以上に説明した光半導体装置1Aの構成であっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。さらに、光半導体装置1Aでは、Z方向から視た場合、第1配線61の一部が、複数の第1凸部41Aのそれぞれの一部と重なっている。このため、複数の第1凸部41Aを第1配線61に近づけることができるので、Y方向に沿った光半導体装置1の幅が広くなることを抑制できる。加えて、第1配線61の一部が複数の第1凸部41Aのそれぞれの一部と重なっていることから、第1配線61の側面61bが、Y方向における複数の第1凸部41Aの中心と近端O3との間に設けられる。このため、第1配線61は、樹脂体5の上面5a上の一部であってより傾斜する部分に設けられる。これにより、接触点Rを通り主面2aに平行な仮想面KのY方向の高さは、第1凸部41AのY方向の中心での樹脂体5の高さより低くなる。よって、保護膜9の第1部分91と、保護膜9の第2部分92との為す夾角αが、90°より小さくなる。光半導体装置1Aによれば、第1部分91と第2部分92との間に生じる応力をより低減できる。
【0077】
(第2変形例)
図7は、第2変形例に係る光半導体装置1Bの一部を拡大して示す平面図である。図8は、第2変形例に係る光半導体装置1Bの断面図を模式的に示す図である。光半導体装置1Bは、光半導体装置1と同様の構成を備えると共に、複数の第2凸部43と、複数の第2凸部44とをさらに備える。
【0078】
図7に示されるように、複数の第2凸部43は、主面2a上に設けられ、X方向に沿って並んでいる。Z方向から視た場合、複数の第2凸部43は、第1配線61の内側に位置している。言い換えると、複数の第2凸部43は、複数の第1凸部41と第1素子部11との間に位置している。複数の第2凸部43のそれぞれは、第1半導体層20(図3参照)を含んでいる。一実施例では、複数の第2凸部43のそれぞれは、第1半導体層20と、基板2の一部と、を含む。複数の第2凸部43は、樹脂体5(図3参照)が複数の第1凸部41を埋め込む態様と同様に、樹脂体5に埋め込まれる。
【0079】
複数の第2凸部44は、主面2a上に設けられ、X方向に沿って並んでいる。複数の第2凸部44のそれぞれは、第1半導体層20を含んでいてもよい。一実施例では、複数の第2凸部44のそれぞれは、第1半導体層20と、基板2の一部と、を含む。複数の第2凸部44は、Z方向から視た場合、第1配線71の内側に位置している。言い換えると、複数の第2凸部44は、複数の第1凸部42と第1素子部11との間に位置している。複数の第2凸部44は、樹脂体5(図3参照)が複数の第1凸部41を埋め込む態様と同様に、樹脂体5に埋め込まれる。
【0080】
複数の第2凸部43のそれぞれ、および、複数の第2凸部44のそれぞれは、Z方向から視た場合、矩形形状を呈している。X方向に沿った複数の第2凸部43のそれぞれの長さの範囲、および、複数の第2凸部44のそれぞれの長さの範囲は、例えば、複数の第1凸部41のそれぞれの長さL1(図2参照)の範囲と同様である。Y方向に沿った複数の第2凸部43のそれぞれの幅の範囲、および、複数の第2凸部44のそれぞれの幅の範囲は、例えば、複数の第1凸部41のそれぞれの幅W1(図2参照)の範囲と同様である。複数の第2凸部43のそれぞれは、互いに離れている。複数の第2凸部44のそれぞれは、互いに離れている。互いに隣り合う複数の第2凸部43同士の間の距離の範囲、および、互いに隣り合う複数の第2凸部44同士の間の距離の範囲は、例えば、互いに隣り合う複数の第1凸部41同士の間の距離L2(図2参照)の範囲と同様である。
【0081】
複数の第2凸部43は、Y方向において複数の第1凸部41から離れている。Y方向に沿った複数の第1凸部41と複数の第2凸部43との間の距離W4は、例えば、距離W2以上幅W1の2倍以下である。
【0082】
複数の第2凸部44は、Y方向において複数の第1凸部42から離れている。Y方向に沿った複数の第1凸部42と複数の第2凸部44との間の距離の範囲は、例えば、Y方向に沿った複数の第1凸部41と複数の第2凸部43との間の距離W4の範囲と同様である。
【0083】
図8を参照しつつ、第1配線61の周辺における樹脂体5の上面5aの起伏について説明する。ここで、Y方向における複数の第2凸部43の遠端をU4、Y方向における近端O1と遠端U4との間の中心を中間Qとする。光半導体装置1Bでは、複数の第2凸部43を設けることにより、樹脂体5の上面5aの一部V3が、樹脂体5の遠端U4におけるZ方向の上端TU4が中間QにおけるZ方向の上端TQより高くなるように傾斜する。すなわち、光半導体装置1Bでは、樹脂体5の上面5aのうち第1配線61の側面61bが設けられている部分における底面2dへ向かう窪みが抑制されている。このため、樹脂体5の上面5aのうち第1配線61の側面61bが設けられている部分の周辺が平坦に近づいている。第1配線71の周辺における樹脂体5の上面5aの起伏は、第1配線61の周辺における樹脂体5の上面5aの起伏と同様である。
【0084】
光半導体装置1Bにおいて、第1配線61は、Y方向に沿って側面61bが近端O1と中間Qとの間に位置するように、樹脂体5の上面5a上に設けられる。このため、保護膜9の第1部分91と、保護膜9の第2部分92との為す夾角が鋭角である。第1配線71は、第1配線61が樹脂体5の上面5a上に設けられる態様と同様に、樹脂体5の上面5a上に設けられる。
【0085】
以上に説明した光半導体装置1Bの構成であっても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。さらに、光半導体装置1Bは、主面2a上に設けられ、X方向に沿って並んでいる複数の第2凸部43を備える。複数の第2凸部43は、樹脂体5に埋め込まれる。複数の第2凸部43のそれぞれは、互いに離れると共に、第1半導体層20を含み、Z方向から視た場合、複数の第2凸部43は、第1配線61の内側に位置している。複数の第2凸部43が第1配線61の内側に位置しているため、樹脂体5の上面5aのうち第1配線61の側面61bが設けられている部分が平坦に近づく。よって、第1配線61の側面61bにおける応力を緩和できる。
【0086】
光半導体装置1Bでは、Y方向に沿った複数の第1凸部41のそれぞれと複数の第2凸部43のそれぞれとの間の距離W4が、例えば、距離W2以上幅W1の2倍以下である。距離W4が距離W2以上である場合、第1配線61の側面61bの周囲を平坦化できる。距離W4が幅W1の2倍以下である場合、Y方向において中間Qを側面61bに近接して設定できる。それにより、第1配線61の側面61bの周囲を確実に平坦化できる。
【0087】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明してきたが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用することができる。例えば、第1素子部と、第2素子部と、第3素子部とでは、第1半導体層がn型InPといったIII-V族化合物半導体を含み、コア層がAlGaInAs系のIII-V族化合物半導体を含み、第2半導体層22がp型InPといったIII-V族化合物半導体を含んでいてもよい。第1素子部と、第2素子部と、第3素子部とは、第1半導体層中のドーパントの基板への拡散を防止する拡散防止層さらに備えてもよい。第1素子部と、第2素子部と、第3素子部とは、基板中のドーパントの第1半導体層への拡散を防止する拡散防止層さらに備えてもよい。例えば、そのような拡散防止層を備える場合、それによりメサ凸部11aの高さT2は増加し、それに伴って樹脂体5の膜厚T1も増加する。樹脂体5の膜厚T1が大きくなると、上面5aの平坦性が低下するが、上述のように凸部4を設けることによって配線の側面に生じる応力を緩和できる。
【0088】
第1信号線および第2信号線における信号の速度が遅い場合、光半導体装置のEO応答特性に対する渦電流損の影響を許容できることがある。この場合、X方向に沿った複数の第1凸部のそれぞれの長さを30μmより長くしてもよく、Y方向に沿った複数の第1凸部のそれぞれの幅を30μmより広くしてもよい。互いに隣り合う複数の第1凸部同士の間の距離は、互いに隣接する第1凸部41同士が接触しない限りできるだけ小さく設定されてもよい。
【0089】
X方向に沿って並ぶ複数の第2凸部からなる列は、Y方向に沿って複数並んでいてもよい。この場合、樹脂の表面のうち第1配線が設けられている部分が、平坦に更に近づく。このため、第1配線の側面における応力が更に緩和される。
【0090】
[実施例]
以下、上記実施形態に係る光半導体装置のEO応答特性をシミュレーションした結果について説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例1に係る光半導体装置1では、複数の第1凸部41のそれぞれのX方向の長さL1を10μm、複数の第1凸部41のそれぞれのY方向の幅W1を10μm、互いに隣り合う複数の第1凸部41同士の間の距離L2を10μm、Y方向に沿った複数の第1凸部41と第1配線61との間の距離W2を12.5μmとした。実施例1に係る光半導体装置1では、複数の第1凸部42のそれぞれのX方向の長さを10μm、複数の第1凸部42のそれぞれのY方向の幅を10μm、互いに隣り合う複数の第1凸部42同士の間の距離を10μm、Y方向に沿った複数の第1凸部42と第1配線71との間の距離を12.5μmとした。複数の第1凸部41および複数の第1凸部42は、第1素子部11のX方向に延伸する中心線A11に関して線対称となるように配置されている。
【0092】
実施例2に係る光半導体装置1では、複数の第1凸部41のそれぞれのX方向の長さL1を40μm、複数の第1凸部41のそれぞれのY方向の幅W1を40μm、互いに隣り合う複数の第1凸部41同士の間の距離L2を10μm、Y方向に沿った複数の第1凸部41と第1配線61との間の距離W2を12.5μmとした。実施例2に係る光半導体装置1では、複数の第1凸部42のそれぞれのX方向の長さを40μm、複数の第1凸部42のそれぞれのY方向の幅を40μm、互いに隣り合う複数の第1凸部42同士の間の距離を10μm、Y方向に沿った複数の第1凸部42と第1配線71との間の距離を12.5μmとした。比較例に係る光半導体装置では、複数の第1凸部41,42が設けられていない。
【0093】
上記実施例および比較例に対して、EO応答特性をシミュレーションした結果を図9に示す。図9の(a)部は、実施例1に係る光半導体装置1のEO応答特性を示すグラフG1と、実施例2に係る光半導体装置1のEO応答特性を示すグラフG2とを示すグラフであり、図9の(b)部は、比較例に係る光半導体装置のEO応答特性を示すグラフG3を示すグラフである。図9の(a)部および(b)部のそれぞれのグラフにおいて、横軸が周波数[GHz]を示し、縦軸がEO応答特性[dB]を示している。縦軸は、10GHzのときの光出力パワーを基準としており、いずれのグラフも10GHzで0dBとなっている。EO応答特性は、高い周波数まで値が大きいことが好ましい。実施例1に係る光半導体装置1のEO応答特性は、実施例2に係る光半導体装置1のEO応答特性と比較して優れている。実施例1に係る光半導体装置1では、複数の第1凸部41,42の大きさが、実施例2に係る光半導体装置1が備える複数の第1凸部41,42の大きさと比較して小さくなっている。このため、実施例1に係る光半導体装置1のEO応答特性に対する渦電流損の影響は、実施例2に係る光半導体装置1のEO応答特性に対する渦電流損の影響と比較して、小さくなる。実施例1に係る光半導体装置1のEO応答特性は、比較例に係る光半導体装置のEO応答特性と概ね同じである。実施例1に係る光半導体装置1の3dB帯域は、実施例2に係る光半導体装置1の3dB帯域より広く、比較例に係る光半導体装置の3dB帯域と概ね同じであった。以上の結果は、実施例1に係る光半導体装置1では、複数の第1凸部41,42の大きさが小さいため、複数の第1凸部41,42を設けた場合であっても、渦電流損によるEO応答特性の劣化がほとんど無いことを示している。したがって、本実施例によれば、EO特性への影響を低減しつつ樹脂体および配線を保護する保護膜における応力を低減できる。なお、実施例2に係る光半導体装置1において、EO応答特性の劣化は、許容できるレベルまで抑えられている。実施例1および実施例2の相互の比較により、EO応答特性をより高い周波数まで広帯域化するためには、第1配線61を伝達する電気信号の第1凸部41による渦電流損を低減するために複数の第1凸部41のそれぞれのX方向の長さL1およびそれぞれのY方向の幅W1は小さくすることが好ましいことが理解される。なお、その場合に、そのY方向の幅W1に応じて複数の第1凸部41と第1配線61との間の距離W2が設定されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1,1A,1B…光半導体装置
2…基板
2a…主面
2b…縁
2c…縁
3…素子部(メサ)
4…凸部(テラス)
5…樹脂体
5a…上面
6…第1信号線
7…第2信号線
8…基準電位線
9…保護膜
11…第1素子部
11a…メサ凸部
12…第2素子部
13…第3素子部
14…第1メサ導波路
14a…一端
15…第2メサ導波路
15a…一端
16…第1メサ導波路
16a…一端
17…第2メサ導波路
17a…一端
18…第1メサ導波路
18a…一端
18b…他端
19…第2メサ導波路
19a…一端
19b…他端
20…第1半導体層
21…コア層
22…第2半導体層
41,41A…第1凸部
42,42A…第1凸部
43…第2凸部
44…第2凸部
51…第1樹脂体
52…第2樹脂体
52a…上面
61…第1配線
61a…表面
61b…側面
61c…側面
61d…上面
62…第1接触部
63…第1接続部
64…第2配線
65…第2接触部
66…第2接続部
67…第3配線
71…第1配線
71a…表面
71b…側面
71c…側面
71d…上面
72…第1接触部
73…第1接続部
74…第2配線
75…第2接触部
76…第2接続部
77…第3配線
91…第1部分
92…第2部分
93…第3部分
94…第4部分
A1,A11…中心線
C1…光分波器
C2…光合波器
E1…電極
E2…電極
K…仮想面
M1…絶縁膜
M2…絶縁膜
O1,O2,O3…近端
P1…入力ポート
P2…出力ポート
Q…中間
R…接触点
S1…入力導波路
S2…出力導波路
TO1、TU1…上端
U1、U4…遠端
V1,V2,V3…一部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9