(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127097
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02P 31/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H02P31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035984
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501BB03
5H501BB08
5H501DD04
5H501HB07
5H501HB08
5H501KK04
5H501LL07
5H501LL35
5H501LL37
5H501LL47
(57)【要約】
【課題】モータに関連する外部装置への安定した電力供給を実現する。
【解決手段】外部のドライバから動力線を介して電力が供給されるモータであって、ドライバから動力線を介して、モータ内部の巻線部に電力が入力される電力入力部と、ドライバからモータに供給された電力の一部を、動力線又は巻線部で抽出する抽出部と、抽出部により抽出された電力を外部装置に供給する供給部と、を備え、抽出部は、動力線又は巻線部を流れるモータの駆動電流の周波数範囲のうち最大周波数を超える所定共振周波数を有する共振回路と、共振回路と接続され、動力線又は巻線部における電力の一部が入力されるように配置されたトランス構造と、を有する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のドライバから動力線を介して電力が供給されるモータであって、
前記ドライバから前記動力線を介して、モータ内部の巻線部に電力が入力される電力入力部と、
前記ドライバから前記モータに供給された電力の一部を、前記動力線又は前記巻線部で抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された電力を外部装置に供給する供給部と、
を備え、
前記抽出部は、
前記動力線又は前記巻線部を流れる前記モータの駆動電流の周波数範囲のうち最大周波数を超える所定共振周波数を有する共振回路と、
前記共振回路と接続され、前記動力線又は前記巻線部における電力の一部が入力されるように配置されたトランス構造と、
を有する、モータ。
【請求項2】
前記電力入力部には、前記ドライバから、前記モータの駆動電流に、前記所定共振周波数又は該所定共振周波数の近傍の周波数を有する電力供給用電流が重畳された電流が入力される、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記電力供給用電流は、前記モータの駆動電流におけるd軸電流又はq軸電流の少なくとも一方であって、該電力供給用電流は前記所定共振周波数で時間経過とともに変動する電流である、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記共振回路は、LC回路による直列共振回路であって、
前記直列共振回路は、前記トランス構造の一次側コイル又は二次側コイルに直列に接続され、又は、該直列共振回路のコンデンサ成分又はインダクタンス成分の何れかは、該一次側コイル又は該二次側コイルに対して並列に接続され、
前記抽出部は、前記動力線又は前記巻線部に対して並列に接続される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記共振回路は、LC回路による並列共振回路であって、
前記並列共振回路は、前記トランス構造の一次側コイル又は二次側コイルに対して並列に接続され、又は、該並列共振回路のコンデンサ成分又はインダクタンス成分の何れかは、該一次側コイル又は該二次側コイルに直列に接続され、
前記抽出部は、前記動力線又は前記巻線部に対して直列に接続される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な目的で負荷を駆動するためのモータにとって、その制御を正確に実行するためにはモータの状態を把握する必要であり、一般にはエンコーダ等の検出装置が利用されている。エンコーダを駆動するためには電力を供給しなければならないが、一般には、サーボシステム(例えば、ドライバ)等とエンコーダとをケーブルで結び、そのケーブルを介して電力供給を行う場合がある。別法として、特許文献1では、サーボシステム側と無線通信を行うエンコーダに対して、その電力を外部から無線で供給する構成が開示されている。
【0003】
また、エンコーダへの電力供給に関する他の形態として、特許文献2には、モータの巻線部に供給された電力の一部を抽出し、それをエンコーダに供給する構成が開示されている。当該構成により、エンコーダへの電力供給のためのケーブル配線を行うことなく、その電力供給が安定的に実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-297389号公報
【特許文献2】国際公開第2022/186199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータに取り付けられるエンコーダで消費される電力は、モータでの消費電力と比べると小さいものの、駆動するモータの状態を常にモニターする必要があるため、安定した電力供給が求められる。有線ケーブルでエンコーダとモータのドライバをつなぐことで電力供給を行うのが一般であるが、その場合、モータの動力線に加えて、エンコーダに関するケーブルを配線する必要があり、配線の作業負荷の増加やケーブルに起因するコスト増加等が生じ得る。
【0006】
また、モータ駆動のためにその巻線部に供給された電力の一部をエンコーダに供給する技術についても従来から提案はされているが、この場合、結果として、巻線部への供給電力の一部がモータ駆動に利用できなくなるため、その電力の抽出結果によっては、モータ駆動に好ましくない影響を及ぼすおそれがある。エンコーダで消費される電力は、モータでの消費電力と比べると小さいとはいえ、その消費タイミングが重複したり極めて近いタイミングとなったりすると、電力抽出の結果、モータに対して適切なタイミングで駆動電力を供給できなくなり得る。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、エンコーダ等のような、モータに関連する外部装置への安定した電力供給を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係るモータは、外部のドライバから動力線を介して電力が供給されるモータであって、前記ドライバから前記動力線を介して、モータ内部の巻線部に電力が入力される電力入力部と、前記ドライバから前記モータに供給された電力の一部を、前記動
力線又は前記巻線部で抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された電力を外部装置に供給する供給部と、を備える。上記モータは、単相の交流モータでもよく三相の交流モータでもよい。また、モータの巻線部でのコイルの結線態様は、いわゆるデルタ結線でもよくスター結線(もしくはY結線)でもよい。また、モータのステータに対する巻線部のコイルの巻き方については、分布巻きでも集中巻きでもよい。すなわち、本発明のモータにおいて、巻線部の具体的な形成については、特段に制限する意図は無い。
【0009】
そして、上記モータにおいて、前記抽出部は、前記動力線又は前記巻線部を流れる前記モータの駆動電流の周波数範囲のうち最大周波数を超える所定共振周波数を有する共振回路と、前記共振回路と接続され、前記動力線又は前記巻線部における電力の一部が入力されるように配置されたトランス構造と、を有する。ここで、トランス構造は、巻線部を流れる交流電流の一部がその一次コイル側に入力されるようにモータ内に形成される。トランス構造は、単巻型の変圧器、複巻型の変圧器のいずれでもよい。なお、単巻型の変圧器の場合、二次コイルは、一次コイルの一部を両者で共有する部分のコイルをいう。一般に、モータのステータコアにコイルが巻かれている場合、そのコイルエンドには、一定の高さのコイルがステータコアから飛び出した状態になるため、そのコイルエンドにある巻線部に対して、トランス構造を形成することもできる。別法としては、ステータコアにコイルが巻かれる空間に、トランス構造の二次コイルも一緒に巻くようにしてもよい。
【0010】
そして、トランス構造の二次コイルからは、一次コイルを流れる交流電流およびトランス構造による巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)に応じた交流電流が抽出される。そして、供給部が抽出された交流電流を整流して外部装置に供給する。なお、供給部は、必要に応じて、整流後の電圧を、外部装置の駆動に適した電圧に変圧しても構わない。また、供給部は、整流後の電力を二次電池に蓄電しておくことで、外部装置に、より安定した電力供給を行うことができる。
【0011】
このように共振回路とトランス構造の組合せにより抽出部を構成することで、外部装置への電力供給のためのケーブル配線を行う必要がないため、その作業負荷を大きく軽減することができる。更に、所定共振周波数での共振回路による共振作用を利用して、トランス構造による電力抽出を好適に設計することができる。上記モータにおいては、所定共振周波数は、モータの駆動電流の周波数範囲のうちその最大周波数を超える周波数に設定される。したがって、モータの駆動に実質的に影響を及ぼさない又は及ぼしにくい状態で、共振回路による共振作用を利用して電力を抽出することができる。このことは、モータの好適な駆動と、外部装置への安定した電力供給の両立に資するものである。
【0012】
なお、外部装置は、前記モータに取り付けられたエンコーダであってもよく、別法として、モータの内部や外部に配置された、温度センサや振動センサ等のセンサ装置であってもよい。
【0013】
また、上記のモータにおいて、前記電力入力部には、前記ドライバから、前記モータの駆動電流に、前記所定共振周波数又は該所定共振周波数の近傍の周波数を有する電力供給用電流が重畳された電流が入力されてもよい。このような電力供給用電流が駆動電流に重畳されることで、両者が重畳された電流が、抽出部における共振回路およびトランス構造に供されることになる。その結果、上述したように、共振回路の共振作用によって、所定共振周波数又は該所定共振周波数の近傍の周波数を有する電力供給用電流が好適に抽出され、トランス構造を介して外部装置への電力供給が好適に実現される。
【0014】
また、上記のモータにおいて、前記電力供給用電流は、前記モータの駆動電流におけるd軸電流又はq軸電流の少なくとも一方であって、該電力供給用電流は前記所定共振周波数で時間経過とともに変動する電流であってもよい。これは、上記の通り、共振回路とト
ランス構造とを含む抽出部の構成を採用することにより、モータの駆動に実質的に影響を及ぼさない又は及ぼしにくい状態で電力抽出が可能となることによる。
【0015】
ここで、一例として、前記共振回路は、LC回路による直列共振回路であってもよい。その場合、前記直列共振回路は、前記トランス構造の一次側コイル又は二次側コイルに直列に接続され、又は、該直列共振回路のコンデンサ成分又はインダクタンス成分の何れかは、該一次側コイル又は該二次側コイルに対して並列に接続され、そして、前記抽出部は、前記動力線又は前記巻線部に対して並列に接続されてもよい。また別法として、前記共振回路は、LC回路による並列共振回路であってもよい。その場合、前記並列共振回路は、前記トランス構造の一次側コイル又は二次側コイルに対して並列に接続され、又は、該並列共振回路のコンデンサ成分又はインダクタンス成分の何れかは、該一次側コイル又は該二次側コイルに直列に接続され、そして、前記抽出部は、前記動力線又は前記巻線部に対して直列に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
モータに関連する外部装置への安定した電力供給を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】モータを駆動制御する制御システムの概略構成を示す図である。
【
図3A】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられた電力抽出に関する構造の配置を模式的に示す第1の図である。
【
図3B】
図3Aに示す電力抽出のための構造に含まれる共振回路のインピーダンス特性を説明するための図である。
【
図4】電力供給のためのd軸電流値の増加形態を示す図である。
【
図5】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられた電力抽出に関する構造の配置を模式的に示す第2の図である。
【
図6A】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられた電力抽出に関する構造の配置を模式的に示す第3の図である。
【
図6B】
図6Aに示す電力抽出のための構造に含まれる共振回路のインピーダンス特性を説明するための図である。
【
図7】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられた電力抽出に関する構造の配置を模式的に示す第4の図である。
【
図8】変形例に係るモータの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、モータの駆動制御を行う制御システムの概略構成を示す図である。先ず、制御システムについて説明する。制御システムは、PLC(Programmable Logic Controller)
5が、上位コントローラとしてネットワーク1に接続されている。そして、そのネットワーク1には、複数台のサーボドライバ(以下、「ドライバ」という)4が接続され、PLC5との信号の授受が可能となるように構成されている。なお、
図1においては、1台のドライバ4について、代表的にその機能的な構成を詳細に記載しているが、他のドライバ4a、4bについてもドライバ4と同等の機能的構成を有している。また、モータ2は、ドライバ4と動力線11で接続され、駆動電力の供給を受けている。同じように、モータ2a、2bは、それぞれ動力線11a、11bを介してドライバ4a、4bから駆動電力の供給を受けている。以降、モータおよびドライバの構造については、代表的にモータ2およびドライバ4に基づいて説明する。
【0019】
ここで、モータ2は、所定の負荷装置を駆動するために、PLC5からの指令に従って
駆動制御される。一例として、負荷装置としては、各種の機械装置(例えば、産業用ロボットのアームや搬送装置)が例示でき、モータ2はその負荷装置を駆動するアクチュエータとして装置内に組み込まれている。また、モータ2は、ACサーボモータである。別法として、モータ2は誘導モータやDCモータであってもよい。モータ2は、コイルがステータコアに巻かれて形成された巻線部を含むステータと、永久磁石が組み込まれたロータとを有するモータ本体21と、当該ロータの回転に連動して回転する検出円盤を有し、ロータの回転状態を検出可能なエンコーダ22を備える。エンコーダ22による回転検出は、インクリメンタル方式であってもよく、アブソリュート方式であってもよい。
【0020】
エンコーダ22による検出信号は、後述するドライバ4が有する通信部42を介して、無線でドライバ4に送信される。送信された検出信号は、同じく後述するドライバ4が有する制御部41におけるサーボ制御に供される。エンコーダ22による検出信号は、例えば、モータ2の回転軸の回転位置(角度)についての位置情報、その回転軸の回転速度の情報等を含む。
【0021】
ここで、ドライバ4は、制御部41、通信部42、電力変換部43を有する。制御部41は、PLC5からの指令に基づいたモータ2のサーボ制御を司る機能部である。制御部41は、ネットワーク1を介してPLC5からモータ2の動作(モーション)に関する動作指令信号とエンコーダ22から出力された検出信号を受けとって、モータ2の駆動に関するサーボ制御、すなわち、モータ2の動作に関する指令値を算出する。制御部41は、位置制御器、速度制御器、電流制御器を利用したフィードバック制御等を実行する。また、制御部41は、ドライバ4で行われる、モータ2のサーボ制御以外の制御も司るように構成される。
【0022】
通信部42は、エンコーダ22とドライバ4との間の無線通信を司る機能部である。ドライバ4の通信部42は、無線通信を開始するに当たり、自己の通信対象となるエンコーダを識別する処理により、エンコーダ22が無線通信の対象であることを特定している。したがって、通信部42は、モータ2aのエンコーダやモータ2bのエンコーダと混線して無線通信を行うことはない。同様に、モータ2aのエンコーダ、モータ2bのエンコーダは、それぞれ、ドライバ4a、4bとのみ無線通信を行う。電力変換部43は、制御部41で算出されたモータ2の動作に関する指令値に基づいて、モータ2に駆動電力を、動力線11を介して供給する。なお、この供給電力の生成には、交流電源7からドライバ4に対して送られる交流電力が利用される。本実施例では、ドライバ4は三相交流を受けるタイプのものであるが、単相交流を受けるタイプのものでもよい。別法として、ドライバ4は直流を受けるタイプのものでもよい。
【0023】
次に、モータ2の概略構成について、
図2に基づいて説明する。モータ2は、三相(U相、V相、W相)の交流モータであり、モータ本体21とエンコーダ22を有する。モータ本体21には、ロータ212とステータ213が含まれる。ロータ212には永久磁石が組み込まれ、回転可能に支持されている。ステータ213には、電磁鋼板で形成されたステータコアにコイルが巻かれ、巻線部25が形成されている。本実施形態では、巻線部25における各相の結線態様はY結線であるが、それに代えてデルタ結線であっても構わない。また、ステータコアに対するコイルの巻き方は、本実施形態では分布巻き、集中巻きのどちらであっても構わない。
図2に示す構成はあくまでも概略的なものであり、本発明の技術思想は、モータの具体的な構成にかかわらず適用することが可能である。
【0024】
ドライバ4から駆動電力を供給するための動力線11は、コネクタ211に接続される。コネクタ211は、巻線部25の各相に接続されている。そして、モータ2においては、巻線部25の各相に対応するように、電力抽出のための構成である抽出部(
図3Aに示す2141、2142、2143を参照。詳細は後述する。)が配置され、当該抽出部の
構成を利用して、巻線部25のコイルに供給された駆動電力の一部をエンコーダの電力として抽出される。
図2においては、各相に対応する抽出部2141~2143を纏めて、抽出部214として表示している。抽出部214は、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流の中から、エンコーダ22等の外部装置のための電力を抽出するための構成である。したがって、モータ2の巻線部25には、モータ2を所望通りに駆動するための電流に対して、外部装置への供給電流が重畳された駆動電流がドライバ4から供給される。抽出部214には、一次コイルと二次コイルを有するトランス構造(
図3Aに示す82、85、88を参照。詳細は後述する。)が含まれており、モータ本体21の巻線部25に流れている交流電流をトランス構造の一次コイル側に流すことで、二次コイル側にエンコーダ22の駆動電流として利用できる電流を抽出する。
【0025】
抽出部214は、トランス構造の2次コイルから出力される交流電流による電力を、エンコーダ22のための電力として抽出する。そこで、供給部215によって整流され、必要に応じて供給部215が有するDC―DCコンバータによってエンコーダ22の駆動に適した直流電圧に昇降圧される。供給部215は、エンコーダ22がモータ本体21に取り付けられた状態で、直流電力をエンコーダ22側に、特に、ロータ212の回転の検出処理を行う処理部221に供給可能となるように、エンコーダ22に対して電気的に接続された状態が形成される。また、供給部215は、整流後の直流電力を蓄電できる二次電池を有していてもよい。その場合、巻線部25に駆動電流が流れない期間や、もしくは駆動電流が極めて低い期間においても、エンコーダ22に対して電力を供給することができる。
【0026】
また、本実施形態のモータ2では、抽出部214による抽出処理を利用して、モータ本体21の巻線部25とエンコーダ22の処理部221との間で所定信号の授受が可能となるように構成される。当該所定信号の授受は、信号交換部216により、上記のトランス構造を利用して実現される。巻線部25から処理部221に所定信号を送る場合には、巻線部25のコイルに所定信号を重畳させた電流を流すとともに当該電流がトランス構造の一次コイル側を流れることで、抽出部214がトランス構造の二次コイル側において所定信号に対応する電流を生成することができる。そして、信号交換部216により、この抽出された対応電流が処理部221に渡される。この場合、所定信号の持つ情報を正確に伝えるために、信号交換部216は、抽出部214によって抽出された対応電流に対して整流処理は行わない。一方で、抽出された対応電流が微弱な場合には、信号交換部216は所定の増幅処理を行ってもよい。
【0027】
また、処理部221から巻線部25に所定信号を送る場合には、信号交換部216を介してトランス構造の二次コイル側に所定信号を含む電流を流すことで、抽出部214がトランス構造の一次コイル側に所定信号に対応する電流を生成し、それを巻線部25のコイルに流すことができる。なお、この場合も、信号交換部216によって所定信号に対して所定の増幅処理を行ってもよい。巻線部25のコイルは、動力線11を介してドライバ4に電気的に接続されているため、処理部221から出された所定信号に対応する電流を介して、エンコーダ22からドライバ4に対して所定信号を送信することができる。上述したように、エンコーダ22とドライバ4との間には、通信部42を介した無線通信が可能となるように構成されているが、信号交換部216を介した所定信号の授受は、当該無線通信可能状態が形成される前に、一定の条件の下で有用な通信形態である。
【0028】
次に、モータ本体21の巻線部25、および巻線部25に対して設けられた、電力抽出のための抽出部214の構成及び配置について
図3Aに基づいて説明する。巻線部25には、U相、V相、W相の三相の巻線部分L5、L6、L7が含まれている。各相の巻線部分の結線態様はY結線であり、各巻線部分の接合箇所が中性点とされる。U相の巻線部分L5について、
図3Aにおいては、そのインダクタンス成分が51で示され、抵抗成分が
52で示される。同じように、V相の巻線部分L6について、そのインダクタンス成分が61で示され、抵抗成分が62で示され、更に、W相の巻線部分L7について、そのインダクタンス成分が71で示され、抵抗成分が72で示される。
【0029】
そして、各相に対応するように抽出部214として、抽出部2141、2142、2143が配置される。具体的には、抽出部2141はU相・V相に対応し、抽出部2142はV相・W相に対応し、抽出部2143はW相・U相に対応する。抽出部2141は、共振回路81とトランス構造82を有し、両者が直列に接続されて形成されるとともに、モータ2のU相とV相に跨るように巻線部25に対して並列に接続される。そして、共振回路81は、コンデンサ成分811とインダクタンス成分812を有する直列共振回路であり、そのインピーダンス特性を
図3Bに示している。
図3Bに示すインピーダンス特性は、横軸が周波数(Hz)であり、縦軸がインピーダンス(Ω)を示している。そして、
図3Bにおいて、モータ2の巻線部25のインピーダンス特性が線L1で示され、共振回路81のインピーダンス特性が線L2で示されている。
【0030】
そして、共振回路81のコンデンサ成分811とインダクタンス成分812で決定される共振周波数f2は、モータ2で設定されている駆動回転数に対応する駆動電流の周波数範囲のうち最大値である最大周波数f1を超えるように設定している。したがって、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流のうち、実質的にモータ2の駆動に供される周波数f1以下の駆動電流に対する共振回路81のインピーダンスの作用が、相対的に強まることになる。一方で、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流に、エンコーダ22への電力供給用として周波数f2近傍の電流が重畳されている場合、共振回路81の周波数f2近傍の電流に対する共振回路81のインピーダンスの作用が相対的に弱まることになる。このように共振回路81のインピーダンス特性を利用して、トランス構造82の一次コイル側に供される電流が調整される。
【0031】
なお、共振回路81のコンデンサ成分811とインダクタンス成分812は、共振周波数f2や、抽出部2141を流れる電流等を考慮して設計されればよい。
【0032】
ここで、トランス構造82においては、共振回路81に対してトランス構造82の一次コイル821が直列に接続され、二次コイル822は供給部215に接続されるとともに信号交換部216にも接続される。トランス構造82の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、トランス構造82に求められる変圧比を考慮して設計される。
【0033】
このように構成される抽出部2141が配置されることで、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流のうち、実質的にモータ2の駆動に作用する駆動電流(すなわち、周波数がf1以下の駆動電流)は共振回路81のインピーダンス特性によりトランス構造82の一次コイル821には供されにくくなる。一方で、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流のうち、周波数がf2近傍の電流は共振回路81のインピーダンス特性によりトランス構造82の一次コイル821には供されやすくなる。これにより、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなく、抽出部2141が、エンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0034】
また、V相・W相に対応する抽出部2142は、共振回路84とトランス構造85を有し、抽出部2141と同じように、両者が直列に接続されて形成されるとともに、モータ2のV相とW相に跨るように巻線部25に対して並列に接続される。そして、共振回路84は、コンデンサ成分841とインダクタンス成分842を有する直列共振回路であり、そのインピーダンス特性は共振回路81と同じである。すなわち、共振回路84のコンデンサ成分841とインダクタンス成分842で決定される共振周波数f2も、モータ2で
設定されている駆動回転数に対応する駆動電流の周波数範囲のうち最大値である最大周波数f1を超えるように設定している。また、トランス構造85においては、共振回路84に対してトランス構造85の一次コイル851が直列に接続され、二次コイル852は供給部215に接続されるとともに信号交換部216にも接続される。トランス構造85の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、トランス構造85に求められる変圧比を考慮して設計される。このように構成される抽出部2142が配置されることで、抽出部2141と同じように、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなくエンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0035】
更に、W相・U相に対応する抽出部2143は、共振回路87とトランス構造88を有し、抽出部2141と同じように、両者が直列に接続されて形成されるとともに、モータ2のW相とU相に跨るように巻線部25に対して並列に接続される。そして、共振回路87は、コンデンサ成分871とインダクタンス成分872を有する直列共振回路であり、そのインピーダンス特性は共振回路81と同じである。すなわち、共振回路87のコンデンサ成分871とインダクタンス成分872で決定される共振周波数f2も、モータ2で設定されている駆動回転数に対応する駆動電流の周波数範囲のうち最大値である最大周波数f1を超えるように設定している。また、トランス構造88においては、共振回路87に対してトランス構造88の一次コイル881が直列に接続され、二次コイル882は供給部215に接続されるとともに信号交換部216にも接続される。トランス構造88の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、トランス構造88に求められる変圧比を考慮して設計される。このように構成される抽出部2143が配置されることで、抽出部2141と同じように、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなくエンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0036】
なお、各トランス構造82、85、88の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、基本的には同じであるが、異なっていても構わない。また、
図3Aに示す形態では、U相・V相、V相・W相、W相・U相の全てに対応して、抽出部2141~2143を配置しているが、U相・V相、V相・W相、W相・U相のうち一部にのみ抽出部を配置しても構わない。
【0037】
以上より、
図2及び
図3Aに示す抽出部214によって、動力線11を介してモータ2に供給された電力の一部をエンコーダ22の駆動電力として抽出することができる。当該構成によれば、モータ2が駆動している場合は、常に安定してエンコーダ22の電力も供給されることになり、またそのためにエンコーダ22に対して配線するケーブルを必要としないため、ケーブルの配線作業が大きく軽減されそのコストも抑制できる。更に、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなく、エンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0038】
ここで、
図3Aに示す形態のモータ2においてトランス構造として単相変圧器を採用した場合の、モータ2の回路方程式について検討する。各相のトランス構造の特性は同一とする。なお、以下に示す数式において、電圧Vu、Vv、Vw、電流Iu、Iv、Iwは、ドライバ4の各相の出力電圧と電流を表し、Lu、Lv、Lwは、モータ2の各相の自己インダクタンスを表し、Muv、Mvw、Mwuは、モータ2の相間の相互インダクタンスを表している。また、ωeは電気角周波数を表し、Φuvwは電機子巻線最大鎖交磁束数を表し、Rは巻線抵抗を表し、Keは誘起電圧定数を表しており、sは微分演算子である。また、電圧Vux2、Vvx2、Vwx2、
電流Iux2、Ivx2、Iwx2は、トランス構造の二次側の出力電圧と電流を表し、Lx1、Lx2、Mxは、それぞれ、トランス構造の一次側インダクタンス、二次側インダクタンス、相互インダクタンスを表し、Rx1、Rx2は、トランス構造の一次側と二次側の巻線抵抗を表している。また、θeは電気角である。
【0039】
モータ2の回路方程式は、以下の式1及び式2で表される。
【数1】
・・・(式1)
【数2】
・・・(式2)
【0040】
更に、UVWの三相からdqの2相への変換処理、及び固定座標系から回転座標系への変換処理を施すことで、以下の式3及び式4で示される回路方程式が得られる。
【数3】
・・・(式3)
【数4】
・・・(式4)
【0041】
更に、トランス構造の二次側電力Pdqxは、以下の式5で表される。また、トランス構造
の二次側でのd軸電流idx2とq軸電流iqx2は、以下の式6で表される。なお、以下に示す数式において、RLは、抽出部214を形成するトランス構造を介して電力が供給される外部装置(エンコーダ22)の負荷抵抗を表している。
【数5】
・・・(式5)
【数6】
・・・(式6)
【0042】
そして、式5及び式6に基づき、トランス構造の二次側における定常特性の電力Pdqtは、以下の式7で表される。
【数7】
・・・(式7)
【0043】
式7から理解できるように、抽出部214に含まれるトランス構造82、85、88により抽出される電力は、ドライバ4から動力線11を介してモータ2に対して供給されたd軸電流idとq軸電流iq、及びモータの回転速度に関連する電気角周波数ωeで決定され
ることになる。そこで、エンコーダ22へ電力供給を行うために、本来モータ2の駆動に供される駆動電流に対して重畳される、エンコーダ22への電力供給用の電流について
図4に基づいて説明する。
【0044】
先ず、モータ2の駆動制御のためのd軸電流を、エンコーダ22への電力供給用の電流として利用する形態について言及する。
図4は、エンコーダ22への電力供給用の電流としてのd軸電流の推移を示す。
図4の上段(a)に示すd軸電流は、時間の経過とともに変化せず一定の値となっている。このようなd軸電流については、時間経過とともに変動する要素は含まず、時間経過とともに変動しない要素(図中のpdcで参照される要素)の
みを含む。一方で、
図4の下段(b)に示すd軸電流は、一定のバイアスが掛かった状態で時間の経過とともに変化している。このようなd軸電流については、時間経過とともに変動しない要素(図中のpdcで参照される要素)に加えて、時間経過とともに変動する要
素(図中のpacで参照される要素)が含まれることになる。
【0045】
上述したように、抽出部2141~2143が含む共振回路81、84、87の共振周波数f2は、モータ2の最高回転速度に対応する周波数f1よりも高く設定されるものである。仮に、
図4(a)に示す形態のd軸電流を重畳してしまうと、巻線部25に供給される駆動電流としては、モータの回転速度に対応する周波数を超えるものとはならない。そこで、本実施形態では、
図4(b)に示す形態のd軸電流を、本来モータ2の駆動に供される駆動電流に対して重畳するものとする。そして、時間経過とともに変動する要素pa
cの周波数を、共振回路81、84、87の共振周波数f2と一致する周波数、又は共振
周波数f2に近い周波数とする。
【0046】
また、モータ2の駆動制御のためのq軸電流を、エンコーダ22への電力供給用の電流として利用しても構わない。この場合も、エンコーダ22への電力供給用のために重畳されるq軸電流の時間経過とともに変動する要素については、その周波数を、共振回路81、84、87の共振周波数f2と一致する周波数、又は共振周波数f2に近い周波数とする。
【0047】
以上より、本実施形態のモータ2及びドライバ4によれば、モータ2の運転状態への影響を可及的に抑制しつつ、エンコーダ22への安定した電力供給を実現することができる。
【0048】
<変形例>
モータ本体21の巻線部25に対して設けられた、電力抽出のための抽出部214の構成及び配置に関する上記形態の変形例について、
図5に基づいて説明する。本変形例では、U相・V相に対応する抽出部2141、V相・W相に対応する抽出部2142、W相・U相に対応する抽出部2143のそれぞれにおいて、トランス構造82、85、88の一次コイル821、851、881が、直列共振回路である共振回路81、84、87に含まれるインダクタンス成分812、842、872に対して並列に接続されている。なお、本変形例での共振回路81、84、87の共振周波数f2は、上記の実施形態と同様に設計されている。
【0049】
このように構成される抽出部214を採用した場合、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流に、エンコーダ22への電力供給用として共振周波数f2近傍の電流が重畳されている場合、上述した共振回路81、84、87のインピーダンス特性によって、モータ2の駆動に供される周波数f1以下の周波数ではインダクタンス成分812、842、872の端子間電圧は極めて小さくなり、一方で、共振周波数f2ではインダクタンス成分812、842、872の端子間電圧が最大電圧となる。この結果、トランス構造82、85、88による、エンコーダ22への電力供給のための電圧抽出を好適に実現することができる。
【0050】
なお、
図5に示す形態に代えて、U相・V相に対応する抽出部2141、V相・W相に対応する抽出部2142、W相・U相に対応する抽出部2143のそれぞれにおいて、トランス構造82、85、88の一次コイル821、851、881が、共振回路81、84、87に含まれるコンデンサ成分811、841、871に対して並列に接続されてもよい。また、共振回路81、84、87のインダクタンス成分812又はコンデンサ成分811に対して、トランス構造82、85、88の二次コイル822、852、882を並列に接続してもよい。
【0051】
<第2の実施形態>
モータ本体21の巻線部25に対して設けられた、電力抽出のための抽出部214の構成及び配置について
図6Aに基づいて説明する。モータ2の巻線部25の構成は、
図3Aに示す構成と同じである。本実施形態では、各相に対応するように抽出部214として、抽出部2145、2146、2147が配置される。具体的には、抽出部2145はU相に対応し、抽出部2146はV相に対応し、抽出部2147はW相に対応する。抽出部2145は、共振回路91とトランス構造92を有し、共振回路91は、コンデンサ成分911とインダクタンス成分912を有する並列共振回路である。また、トランス構造92は、一次コイル921と二次コイル922を有し、当該一次コイル921は、共振回路91に対して並列に接続される。共振回路91のインピーダンス特性を
図6Bに示している
。
図6Bに示すインピーダンス特性は、横軸が周波数(Hz)であり、縦軸がインピーダンス(Ω)を示している。そして、
図6Bにおいて、モータ2の巻線部25のインピーダンス特性が線L1で示され、共振回路91のインピーダンス特性が線L3で示されている。
【0052】
そして、共振回路91のコンデンサ成分911とインダクタンス成分912で決定される共振周波数f3は、モータ2で設定されている駆動回転数に対応する駆動電流の周波数範囲のうち最大値である最大周波数f1を超えるように設定している。したがって、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流に、エンコーダ22への電力供給用として共振周波数f3近傍の電流が重畳されている場合、
図6Bに示す共振回路91、94、97のインピーダンス特性によって、モータ2の駆動に供される周波数f1以下の周波数では共振回路91、94、97の端子間電圧は極めて小さくなり、一方で、共振周波数f3では共振回路91、94、97の端子間電圧が最大電圧となる。この結果、トランス構造92、95、98による、エンコーダ22への電力供給のための電圧抽出を好適に実現することができる。
【0053】
なお、共振回路91のコンデンサ成分911とインダクタンス成分912は、共振周波数f3や、抽出部2145を流れる電流等を考慮して設計されればよい。
【0054】
ここで、トランス構造92においては、共振回路91に対してトランス構造92の一次コイル921が並列に接続され、二次コイル922は供給部215に接続されるとともに信号交換部216にも接続される。トランス構造92の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、トランス構造92に求められる変圧比を考慮して設計される。
【0055】
このように構成される抽出部2145が配置されることで、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流のうち、実質的にモータ2の駆動に作用する駆動電流(すなわち、周波数がf1以下の駆動電流)については、共振回路91のインピーダンス特性によりトランス構造92の一次コイル921への抽出効率は低下する。一方で、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流のうち、周波数がf3近傍の電流については、共振回路91のインピーダンス特性によりトランス構造92の一次コイル921への抽出効率は高くなる。これにより、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなく、抽出部2145が、エンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0056】
また、V相に対応する抽出部2146は、共振回路94とトランス構造95を有し、共振回路94は、コンデンサ成分941とインダクタンス成分942を有する並列共振回路である。また、トランス構造95は、一次コイル951と二次コイル952を有し、当該一次コイル951は、共振回路94に対して並列に接続される。共振回路94のインピーダンス特性は共振回路91と同じである。すなわち、共振回路94のコンデンサ成分941とインダクタンス成分942で決定される共振周波数f3も、モータ2で設定されている駆動回転数に対応する駆動電流の周波数範囲のうち最大値である最大周波数f1を超えるように設定している。また、トランス構造95においては、共振回路94に対してトランス構造95の一次コイル951が直列に接続され、二次コイル952は供給部215に接続されるとともに信号交換部216にも接続される。トランス構造95の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、トランス構造95に求められる変圧比を考慮して設計される。このように構成される抽出部2146が配置されることで、抽出部2145と同じように、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなくエンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0057】
更に、W相に対応する抽出部2147は、共振回路97とトランス構造98を有し、共
振回路97は、コンデンサ成分971とインダクタンス成分972を有する並列共振回路である。また、トランス構造98は、一次コイル981と二次コイル982を有し、当該一次コイル981は、共振回路97に対して並列に接続される。共振回路97のインピーダンス特性は共振回路91と同じである。すなわち、共振回路97のコンデンサ成分971とインダクタンス成分972で決定される共振周波数f3も、モータ2で設定されている駆動回転数に対応する駆動電流の周波数範囲のうち最大値である最大周波数f1を超えるように設定している。また、トランス構造98においては、共振回路97に対してトランス構造98の一次コイル981が並列に接続され、二次コイル982は供給部215に接続されるとともに信号交換部216にも接続される。トランス構造98の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、トランス構造98に求められる変圧比を考慮して設計される。このように構成される抽出部2147が配置されることで、抽出部2145と同じように、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなくエンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0058】
なお、各トランス構造92、95、98の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、基本的には同じであるが、異なっていても構わない。また、
図6Aに示す形態では、U相、V相、W相の全てに対応して、抽出部2145~2147を配置しているが、U相、V相、W相のうち一部にのみ抽出部を配置しても構わない。
【0059】
以上より、
図6Aに示す抽出部2145~2147によって、動力線11を介してモータ2に供給された電力の一部をエンコーダ22の駆動電力として抽出することができる。当該構成によれば、モータ2が駆動している場合は、常に安定してエンコーダ22の電力も供給されることになり、またそのためにエンコーダ22に対して配線するケーブルを必要としないため、ケーブルの配線作業が大きく軽減されそのコストも抑制できる。更に、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなく、エンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0060】
なお、
図6Aに示す形態に代えて、U相に対応する抽出部2145、V相に対応する抽出部2146、W相に対応する抽出部2147のそれぞれにおいて、共振回路91、94、97に対して、トランス構造92、95、98の二次コイル922、952、982を並列に接続してもよい。
【0061】
<変形例>
モータ本体21の巻線部25に対して設けられた、電力抽出のための抽出部214の構成及び配置に関する上記形態の変形例について、
図7に基づいて説明する。本変形例では、U相に対応する抽出部2145、V相に対応する抽出部2146、W相に対応する抽出部2147のそれぞれにおいて、トランス構造92、95、98の一次コイル921、951、981が、並列共振回路である共振回路91、94、97のインダクタンス成分912、942、972に対して直列に接続されている。なお、本変形例での共振回路91、94、97の共振周波数f3は、上記の実施形態と同様に設計されている。
【0062】
このように構成される抽出部214を採用した場合、モータ2の巻線部25に供給される駆動電流に、エンコーダ22への電力供給用として共振周波数f3近傍の電流が重畳されている場合、上述した共振回路91、94、97のインピーダンス特性によって、モータ2の駆動に供される周波数f1以下の周波数ではインダクタンス成分912、942、972を流れる電流が極めて小さくなり、一方で、共振周波数f3ではインダクタンス成分912、942、972を流れる電流が最大となる。このように共振回路91のインピーダンス特性を利用して、トランス構造92の一次コイル側に供される電流が調整される。
【0063】
なお、
図7に示す形態に代えて、U相に対応する抽出部2146、V相に対応する抽出部2147、W相に対応する抽出部2148のそれぞれにおいて、トランス構造92、95、98の一次コイル921、951、981が、共振回路91、94、97に含まれるコンデンサ成分911、941、971に対して直列に接続されてもよい。また、共振回路91、94、97のインダクタンス成分912又はコンデンサ成分911に対して、トランス構造92、95、98の二次コイル922、952、982を直列に接続してもよい。
【0064】
<電力抽出に関する変形例>
本変形例について、
図8に基づいて説明する。
図8は、本変形例に関する、モータ2の概略構成を示した図である。なお、本形態のモータ2は、
図2に示す形態と同じように、巻線部25に対してトランス構造を有する抽出部214が設けられている。抽出部214の構成は、
図3A、
図5、
図6A、
図7に示す構成と実質的に同じ構成を採用することができる。更に、本変形例では、コネクタ211に接続された動力線11に対しても、電力抽出が実現可能な抽出部214bが設けられている。抽出部214bによる電力抽出も、
図3Aに示す抽出部2141等や
図5Aに示す抽出部2145等と電気的に同一の構成が動力線11に組み込まれることで実現される。
【0065】
抽出部214bによって抽出された電力は、所定の整流処理等が施されて、モータ2の外部に配置されている温度センサや振動センサ等の装置の電力として供給することができる。また、当該抽出された電力は二次電池に蓄電されることで、温度センサ等に安定的な電力を供給することができる。なお、
図8に示すモータ2では抽出部214で抽出された電力がエンコーダ22に供給されているが、それに代えて抽出部214bで抽出された電力がエンコーダ22に供給されてもよく、もしくは、抽出部214、214bの両者で抽出された電力がエンコーダ22に供給されてもよい。また、モータ2において、抽出部214は設けられず、エンコーダ22は内蔵する電池から電力供給を受けたり、ドライバ4から電力供給を受けたりしてもよい。
【0066】
このように、本開示のモータ2においては、その巻線部25だけではなく動力線11からも電力を抽出し、エンコーダ22や外部のセンサ等に電力を供給することが可能となり、以て、モータ2の駆動に影響を及ぼすことなくエンコーダ22への電力抽出を好適に実現することができる。
【0067】
<その他の変形例>
上述までの実施形態では、抽出部214により抽出された電力はエンコーダ22に対して供給されているが、当該抽出された電力は、エンコーダ22以外の装置に対しても供給することができる。例えば、モータ2の内部やその外側に配置されているセンサ装置(例えば、温度センサや振動センサ等)に対して電力供給を行ってもよい。その場合、電力供給に適した、センサとのケーブルの接続口になるポートが、モータ本体21に設けられてもよい。
【0068】
<付記1>
外部のドライバ(4)から動力線(11)を介して電力が供給されるモータ(2)であって、
前記ドライバ(4)から前記動力線(11)を介して、モータ内部の巻線部(25)に電力が入力される電力入力部(211)と、
前記ドライバ(4)から前記モータ(2)に供給された電力の一部を、前記動力線(11)又は前記巻線部(25)で抽出する抽出部(214、2141、2145)と、
前記抽出部(214、2141、2145)により抽出された電力を外部装置(22)に供給する供給部(215)と、
を備え、
前記抽出部(214、2141、2145)は、
前記動力線(11)又は前記巻線部(25)を流れる前記モータ(2)の駆動電流の周波数範囲のうち最大周波数(f1)を超える所定共振周波数(f2、f3)を有する共振回路(81、91)と、
前記共振回路(81、91)と接続され、前記動力線(11)又は前記巻線部(25)における電力の一部が入力されるように配置されたトランス構造(82、92)と、
を有する、モータ。
<付記2>
前記電力入力部(211)には、前記ドライバ(4)から、前記モータ(2)の駆動電流に、前記所定共振周波数(f2、f3)又は該所定共振周波数(f2、f3)の近傍の周波数を有する電力供給用電流が重畳された電流が入力される、
付記1に記載のモータ。
<付記3>
前記電力供給用電流は、前記モータの駆動電流におけるd軸電流又はq軸電流の少なくとも一方であって、該電力供給用電流は前記所定共振周波数で時間経過とともに変動する電流である、
付記2に記載のモータ。
<付記4>
前記共振回路は、LC回路による直列共振回路(81)であって、
前記直列共振回路(81)は、前記トランス構造(82)の一次側コイル(821)又は二次側コイル(822)に直列に接続され、又は、該直列共振回路(81)のコンデンサ成分(811)又はインダクタンス成分(812)の何れかは、該一次側コイル(821)又は該二次側コイル(822)に対して並列に接続され、
前記抽出部(2141)は、前記動力線(11)又は前記巻線部(25)に対して並列に接続される、
付記1から付記3の何れかに記載のモータ。
<付記5>
前記共振回路は、LC回路による並列共振回路(91)であって、
前記並列共振回路(91)は、前記トランス構造(92)の一次側コイル(921)又は二次側コイル(922)に対して並列に接続され、又は、該並列共振回路(91)のコンデンサ成分(911)又はインダクタンス成分(912)の何れかは、該一次側コイル(921)又は該二次側コイル(922)に直列に接続され、
前記抽出部(2145)は、前記動力線(11)又は前記巻線部(25)に対して直列に接続される、
付記1から付記3の何れかに記載のモータ。
【符号の説明】
【0069】
2 モータ
4 サーボドライバ
22 エンコーダ
25 巻線部
81、84、87 共振回路
82、85、88 トランス構造
91、94、97 共振回路
92、95、98 トランス構造
214、2141、2142、2143、2145、2146、2147 抽出部
215 供給部