(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127098
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電磁波吸収材及び電磁波吸収用シート
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H05K9/00 M
H05K9/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035985
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】末松 諒一
【テーマコード(参考)】
5E321
【Fターム(参考)】
5E321AA23
5E321AA44
5E321AA46
5E321BB32
5E321BB51
5E321BB60
(57)【要約】
【課題】電磁波吸収性能と断熱性能の両立を可能にする電磁波吸収材及び電磁波吸収用シートを提供する。
【解決方法】シリカ質多孔体と電磁波吸収性を有する微粒子とを含み、粉体状である電磁波吸収材である。また、その電磁波吸収材を含み、シート状に成形されてなる電磁波吸収用シートである。シリカ質多孔体としては、熱伝導率0.15[W/(m・K)]以下のものを用いることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ質多孔体と電磁波吸収性を有する微粒子とを含み、粉体状である電磁波吸収材。
【請求項2】
前記シリカ質多孔体は、熱伝導率0.15[W/(m・K)]以下のものである、請求項1記載の電磁波吸収材。
【請求項3】
前記電磁波吸収性を有する微粒子は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、非晶質球状カーボン、カーボンナノファイバー、及びフェライトからなる群から選ばれた1種又は2種以上からなるものである、請求項1記載の電磁波吸収材。
【請求項4】
前記電磁波吸収性を有する微粒子は、平均粒径0.1μm以上1.5μm以下のものである、請求項1記載の電磁波吸収材。
【請求項5】
平均粒径10μm以上20μm以下である、請求項1記載の電磁波吸収材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁波吸収材を含み、シート状に成形されてなる電磁波吸収用シート。
【請求項7】
前記電磁波吸収性を有する微粒子を0.3質量%以上5質量%以下含有する、請求項6記載の電磁波吸収用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収材及び電磁波吸収用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、デジタル家電など、インターネットに接続可能とされた電子機器は多く、無線通信ネットワークが頻繁に利用されている。よって、通信仕様の高度化などに伴い、システム間の電磁波の相互干渉や遅延分散などによる混信、誤作動の問題が生じるおそれはますます増大している。
【0003】
従来、電磁波対策としては電磁波シールド材が利用されている。電磁波シールド材の基本的な構造としては、シリコンその他の樹脂でできた基材の中に誘電損失材料であるカーボン系材料やフェライトなどの磁性損失材料を練り込み、シート状に成形している。このシートに入射した電波は、練り込んだ材料による誘電損失や磁性損失により、入射した電波のエネルギーが失われることで電磁波シールドとして機能する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁波シールド材の利用については、多くは電子機器内部に貼付するなどである一方、住宅の窓ガラスや壁面へ貼り付けて使用する場合がある。しかしながら、電磁波シールド材に含まれる誘電損失材料や磁性損失材料は比較的に熱伝導率の高い材料であることから、窓ガラスを介する熱のやり取りが多く、住宅の断熱性が低いままであるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題にかんがみ、電磁波吸収性能と断熱性能の両立を可能にする電磁波吸収材及び電磁波吸収用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行い、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、その第1の観点においては、シリカ質多孔体と電磁波吸収性を有する微粒子とを含み、粉体状である電磁波吸収材を提供するものである。
【0009】
上記の電磁波吸収材においては、前記シリカ質多孔体は、熱伝導率0.15[W/(m・K)]以下のものであることが好ましい。
【0010】
上記の電磁波吸収材においては、前記電磁波吸収性を有する微粒子は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、非晶質球状カーボン、カーボンナノファイバー、及びフェライトからなる群から選ばれた1種又は2種以上からなるものであることが好ましい。
【0011】
上記の電磁波吸収材においては、前記電磁波吸収性を有する微粒子は、平均粒径0.1μm以上1.5μm以下のものであることが好ましい。
【0012】
上記の電磁波吸収材においては、平均粒径10μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明は、その第2の観点においては、上記電磁波吸収材を含み、シート状に成形されてなる電磁波吸収用シートを提供するものである。
【0014】
上記の電磁波吸収用シートにおいては、前記電磁波吸収性を有する微粒子を0.3質量%以上5質量%以下含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シリカ質多孔体を利用して、電磁波吸収性能と断熱性能の両立を可能にする電磁波吸収材及び電磁波吸収用シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に用いるシリカ質多孔体としては、例えば、シリカエアロゲル、メソポーラスシリカ、シリカゲル、ゼオライトなどが挙げられる。これらは、自身の特性により所定の熱伝導率を有することから、他材に付与することで、その他材に断熱性能を付与することができる。上記の例示はこれらに限る趣旨ではなく、粉末状に調製することが可能なシリカ質多孔体であればよい。熱伝導率としては、限定されないが、例えば、典型的に0.15[W/(m・K)]以下であってよく、0.01[W/(m・K)]以上0.12[W/(m・K)]以下であってよく、0.02[W/(m・K)]以上0.10[W/(m・K)]以下であってよい。また、シリカ質多孔体の空隙率は、限定されないが、例えば、典型的に80%以上であってよく、90%以上99.5%以下であってよく、95%以上99%以下であってよい。
【0017】
本発明に用いる電磁波吸収性を有する微粒子としては、例えば、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、非晶質球状カーボン、カーボンナノファイバー、フェライトなどが挙げられる。これらは、自身の特性により、カーボン系材料であれば誘電損失の特性を有することにより、フェライト等の磁性材料であれば磁性損失の特性を有することにより、他材に付与することで、その他材に電磁波吸収性能を付与することができる。ただし、上記の例示はこれらに限る趣旨ではなく、他材に電磁波吸収性能を付与することが可能な微粒子であればよい。微粒子の粒度としては、限定されないが、例えば、典型的に平均粒径0.1μm以上1.5μm以下のものであってよく、平均粒径0.2μm以上1.2μm以下のものであってよく、平均粒径0.3μm以上1.0μm以下のものであってよい。
【0018】
なお、上述した電磁波吸収性を有する微粒子には、以下のような特徴もある。
【0019】
(グラファイト)
グラファイト(黒鉛)は大きく分けて天然黒鉛、人造黒鉛に分類され、そして天然黒鉛は土状黒鉛、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、半鱗状黒鉛に分類される。電磁波吸収の観点からは、いずれを使用しても構わない。
【0020】
(グラフェン)
グラフェンの種類として、純粋なグラフェン、酸化グラフェンが存在し、電磁波吸収の観点からは、いずれを使用しても構わない。
【0021】
(カーボンブラック)
オイルファーネス法やアセチレン法で製造されたものなど、いずれを使用しても構わない。
【0022】
(非晶質球状カーボン)
非晶質炭素粒子は、ソフトカーボン、ハードカーボンなど、いずれを使用しても構わない。
【0023】
(カーボンナノファイバー)、
サブミクロンオーダーの炭素繊維であり、製法はとくに問わない。
【0024】
(フェライト)
フェライトとしては、スピネル型フェライト、マグネトプランバイト型(六方晶型)フェライト、ガーネット型フェライト、ペロブスカイト型フェライトがあるが、電磁波吸収性の観点では、スピネル型フェライトが好ましい。
【0025】
本発明により提供される電磁波吸収材は、シリカ質多孔体と電磁波吸収性を有する微粒子とを含み、粉体状に調製されてなるものである。その粒度としては、限定されないが、例えば、典型的に平均粒径10μm以上20μm以下であってよく、平均粒径11μm以上18μm以下であってよく、平均粒径12μm以上16μm以下であってよい。上記粒度の範囲であれば、樹脂等の他材に含有せしめる場合に、混合させやすく、また、均一に分散させやすい。
【0026】
本発明により提供される電磁波吸収材は、例えば、粉末状に調製したシリカ質多孔体と電磁吸収性を有する微粒子とを所定の配合比で混合することにより調製することができる。混合後には、更に、粉砕の処理を施してもよい。電磁吸収性を有する微粒子の配合比としては、限定されないが、例えば、シリカ質多孔体の100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であってよく、0.7質量部以上8質量部以下であってよく、1質量部以上5質量部以下であってよい。
【0027】
本発明により提供される電磁波吸収材は、例えば、ブロック状や破砕状など、粉末状でなく調製されたシリカ質多孔体と電磁吸収性を有する微粒子とを所定の配合比で混合したうえ、これを粉砕することにより調製してもよい。その場合、電磁吸収性を有する微粒子の配合比としては上記と同様であってよい。
【0028】
本発明により提供される電磁波吸収材は、例えば、シリカ材料を使用してシリカ質多孔体を形成させるとき、その原料に電磁波吸収性を有する微粒子を含有せしめて多孔体を形成させたうえ、これを粉砕することにより調製してもよい。その場合、電磁波吸収性を有する微粒子の配合比としては、そのようにして得られた調製物の重量から、添加した電磁波吸収性を有する微粒子の量を差し引いて換算した、その100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であってよく、0.7質量部以上8質量部以下であってよく、1質量部以上5質量部以下であってよい。
【0029】
一方、本発明により提供される電磁波吸収用シートは、上記のようにして得られた電磁波吸収材を含み、シート状に成形されてなるものである。そのシートは、例えば、用途に応じて常用される樹脂などを用いて、その樹脂の原料配合の際に、所定の配合割合で上記した電磁波吸収材を含有せしめて、その原料調製物には必要に応じて加熱混練等の処理を加えたうえ、それをプレス加工やカレンダ加工にかけてシート状に成形する、などの方法により調製することができる。樹脂として、限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。なお、本発明による作用効果を損なわない範囲であれば、樹脂には、加工等の便宜のため、硬化促進剤、可塑剤、乳化剤、界面活性剤、難燃剤などを、更に用いてもよい。
【0030】
電磁波吸収用シートに含有せしめる、上記電磁波吸収材の含有量としては、限定されないが、例えば、0.1質量%以上90質量%以下であってよく、0.5質量%以上50質量%以下であってよく、1質量%以上5質量%以下であってよい。この場合、上記電磁波吸収性を有する微粒子の含有量としては、0.3質量%以上5質量%以下であってよく、0.5質量%以上4質量%以下であってよく、0.8質量%以上3質量%以下であってよい。上記範囲であれば、上記電磁波吸収材による電磁波吸収性能及び断熱性能をシートに効果的に付与することができる。
【0031】
シートの形状に特に制限はないが、例えば、シート厚さとしては0.1mm以上5mm以下であってよく、0.2mm以上3mm以下であってよく、0.5mm以上2mm以下であってよい。上記範囲であれば、住宅の窓ガラスや壁に貼付して使用するのに便宜である。
【0032】
なお、本明細書において平均粒径とは、例えば粒子径分布測定装置(MT3000II、マイクロトラックベル製)などを用いて、JIS R 1629に準拠した体積基準の粒度分布を作成しとき、その積算分布曲線の50%に相当する粒子径(D50)をいうものとする。
【実施例0033】
以下、試験例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ただし、これらの試験例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0034】
<調製例1>
〔1.カーボン添加シリカ質多孔体の調製〕
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)(多摩化学工業株式会社製)、蒸留水、0.1M 塩酸水(富士フィルム和光純薬株式会社製)、プロピレングリコール(富士フィルム和光純薬社製)、及びカーボンブラック(東海カーボン株式会社製、シーストTA、平均粒子径 0.12μm)を、TEOS:蒸留水:塩酸水:プロピレングリコール:カーボンブラック=13:8:1:3:0.019~0.160の重量比で混合し、スターラーで攪拌した後、0.1M アンモニア水(富士フィルム和光純薬社製)を、前記の重量比に対しておよそ1.3添加し、pH4.5~5.0に調整し、シリカゾルを得た。このとき多孔体の全体重量に対する添加したカーボンブラックの重量比はおよそ0.5~4.1wt%となる(下記表1参照)。
【0035】
得られたシリカゾルを室温で8hr放置してゲル化させ、電気炉(株式会社モトヤマ製)を用いて600℃で2時間熱処理し、得られた焼成物を乳鉢にて粉砕した。
【0036】
〔2.電磁波吸収用シートの作製〕
ポリイミド樹脂、無機充填材(株式会社アドマテックス製「YA050C-MJE」)、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000」)、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA230S75」、不揮発分75質量%のMEK溶液)、硬化促進剤(コバルト(III)アセチルアセトン「(Co(acac)3-1M」、)、上述のカーボン添加シリカ質多孔体を、ポリイミド樹脂:無機充填剤:エポキシ樹脂:プレポリマー:硬化促進剤:カーボン添加シリカ質多孔体=30:20:5:20:0.5:0.21~2.31の重量比で混合し、150℃に加熱下、ミキサーを用いて均一に分散させ、樹脂ワニスを得た。このとき樹脂ワニスの全体重量に対する添加したカーボンブラックの重量比は0.5~3.2wt%となる(下記表2参照)。つづいてドクターブレード式シート成形機(株式会社井元製作所社製)を用いて、100mm幅×1.0mmの電磁波吸収用シートを得た。
【0037】
〔3.多孔体の特性の評価〕
得られた多孔体の粉砕物の密度は、乾式自動密度計(アキュピックII-1345、島津製作所製)により求めた。
【0038】
また、空隙率は、以下の数式より求めた。
空隙率[%]=多孔体の密度/多孔体を構成する材料の密度×100
【0039】
また、平均粒径については、粒子径分布測定装置(MT3000II、マイクロトラックベル製)を用い、JIS R 1629に準拠して体積基準の粒度分布を作成し、積算分布曲線の50%に相当する粒子径(D50)を求めた。
【0040】
〔4.電磁波吸収性能の評価〕
得られた電磁波吸収用シートについて、その電磁波吸収性能を、IEC-62333-2に準拠したマイクロストリップライン法により測定した。具体的には、反射係数S11及び透過係数S21を測定し、伝送減衰率Rtpを算出した。なお、使用した測定機器及び測定周波数は以下の通りである。
・ネットワークアナライザー:アンリツ社製「ベクトルネットワークアナライザー37 169A」
・測定器:キーコム社製「TF-3B」(0.1~3GHz)、キーコム社製「TF-18C」(3~18GHz)
【0041】
〔5.熱伝導率の評価〕
得られた電磁波吸収用シートについて、その熱伝導率を、キセノンフラッシュアナライザー(NETZSCH製「LFA447 Nanoflash」)を使用して、レーザーフラッシュ法により測定した。
【0042】
表1には、試験に使用したカーボンブラックの平均粒径、得られた多孔体あたりの添加量、得られた多孔体の特性をまとめて示す。
【0043】
【0044】
表2には、試験に使用したカーボンブラックの平均粒径、樹脂ワニスあたりの添加量、得られたシートの特性をまとめて示す。
【0045】
【0046】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0047】
(試験例1)
カーボンブラックとして平均粒径0.12μmのものを使用し、その添加量を樹脂ワニス当たり0.5wt%として作製した試験例1のシートでは、周波数2.5GHz、5.0GHz、7.5GHzにおける伝送減衰量がいずれも20dB以上であって、良好な電磁吸収性能を示した。また、熱伝導率は一般的な窓ガラスの熱伝導率の値よりも小さい0.49[W/(m・K)]であった。
【0048】
(試験例2)
カーボンブラックの平均粒径を0.51μm、添加量を1.8wt%としたこと以外は試験例1と同様の方法で作製した、試験例2のシートでは、調製例1のシート同様、電磁波吸収性能、熱伝導率ともに良好であった。
【0049】
(試験例3)
カーボンブラックの平均粒径を0.98μm、添加量を3.0wt%としたこと以外は、試験例1と同様の方法で作製した、試験例3のシートでは、調製例1のシート同様、電磁波吸収性能、熱伝導率ともに良好であった。
【0050】
(試験例4)
カーボンブラックの平均粒径を1.24μm、添加量を1.1wt%としたこと以外は、試験例1と同様の方法で作製した、試験例4のシートでは、電磁波吸収性能に問題はないものの、熱伝導率が0.83[W/(m・K)]と比較的大きな値となる傾向があった。これは、使用したカーボンブラックの粒度を大きくしたためと考えられた。
【0051】
(試験例5)
カーボンブラックの平均粒径を0.07μm、添加量を1.5wt%としたこと以外は試験例1と同様の方法で作製した、試験例5のシートでは、断熱性能に問題はないものの、周波数7.5GHzでの伝送減衰量が20dBの基準を下回った。これは、使用したカーボンブラックの粒度を小さくしたためと考えられた。
【0052】
(試験例6)
カーボンブラックの平均粒径を0.55μm、添加量を0.3wt%としたこと以外は試験例1と同様の方法で作製した、試験例6のシートでは、断熱性能に問題はないものの、周波数2.5GHz、7.5GHzでの伝送減衰量が20dBの基準を下回った。これは、電磁波吸収性能は基準を下回った。これは、カーボンブラックの使用量を少なくしためと考えられた。
【0053】
(試験例7)
カーボンブラックの平均粒径を0.49μm、添加量を3.2wt%としたこと以外は試験例1と同様の方法で作製した、試験例7のシートでは、電磁波吸収性能に問題はないものの、熱伝導率熱伝導率が1.07[W/(m・K)]と比較的大きな値となる傾向があった。これは、カーボンブラックの使用量を多くしためと考えられた。
【0054】
<調製例2>
・メソポーラスシリカ
塩化N,N,N-トリメチル-1-ヘキサデシルアンモニウム29wt%溶液を水酸化物-ハロゲン化物交換樹脂に接触させて調製した水酸化セチルトリメチルアンモニウム溶液100gを、テトラメチルアンモニウムシリケート(シリカ10%)水溶液100gに攪拌しながら混合した。遊離水約6wt%と水和結合水約4.5wt%を含み、極限粒子径が約0.02μmの沈降水和シリカであるハイシル(HiSil)25gを添加した。得られた混合物をポリプロピレンの瓶に入れ、95℃の蒸気箱内に一晩置いた。得られた固体生成物を濾過して回収し、室温の空気中で乾燥した。次に生成物を540℃にて窒素中で1時間、続いて空気中で6時間焼成し、メソポーラスシリカを得た。
【0055】
<調製例3>
・シリカゲル
テトラメトキシシラン3.80gに、硝酸0.0003gを含む水0.41gを添加して酸性下で5℃で30分間攪拌し部分加水分解させ、均一透明な反応溶液を得た。さらに、弱酸の塩として酢酸アンモニウム0.0385gを溶解させた水4.10gを添加して1分間攪拌し反応溶液を中和した後、密封して5℃で保持したところ約10分間で白濁しながら固化した固化した試料を密封したまま60℃で12時間熟成させた。開封してヒドロゲルから浸み出た溶媒を捨てた後、容器をアルミ箔で覆い、80℃で2日間乾燥させ、シリカゲルを得た。
【0056】
<調製例4>
・ゼオライト
カオリン焼成物10.0g、水酸化ナトリウム9.1gそして水75.6gを混合した。この反応体混合物の組成は酸化物のモル比で表わすとおよそ次のような割合となる。
Na2O/SiO2=1.2
SiO2/Al2O3=2.0
H2O/Na2O=40.0
【0057】
次に、フラスコに入れたこの混合物を30分間よく撹拌した後、50℃の反応槽内に入れ、超音波を与えながら48時間水熱合成した。超音波発振子は反応槽内の底部に設置した。反応生成物は固形物を濾過することで分離し、これを50℃24時間温風乾燥機内で乾燥することでゼオライトを得た。
【0058】
表3には、上記した調製例1~4のようにして調製し得るシリカアロゲル、メソポーラスシリカ、シリカゲル、及びゼオライトについて、それらの一般的に知られる物性を示す。
【0059】
【0060】
表3に示すように、これらシリカ質多孔体の粉末状組成物は、熱伝導率がいずれも0.15[W/(m・K)]以下であることから、本発明に好適に用いられると考えられた。