(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127123
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】循環式ブラスト装置における研磨材循環方法及び循環式ブラスト装置
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20240912BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20240912BHJP
B24C 7/00 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
B24C9/00 B
B24C9/00 E
B24C9/00 G
B24C9/00 L
B24C5/02 B
B24C7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036039
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000154129
【氏名又は名称】株式会社不二製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 恵二
(72)【発明者】
【氏名】山田 庸介
(57)【要約】
【課題】♯1000よりも小粒径の超微粉研磨材を使用した場合であっても高回収率で研磨材を回収できる循環式ブラスト装置を提供する。
【解決手段】研磨材回収手段として,集塵機40を採用する。キャビネット20内で噴射された研磨材をキャビネット20内の空気と共に集塵機40内に吸引して,集塵機40のフィルタ42の表面に研磨材を吸引付着させて凝集させると共に,このフィルタ42に捕集された研磨材を払い落として回収して再循環させることにより,サイクロンでは殆ど回収できない超微粉研磨材であっても高回収率で回収することができると共に,個々の粒子単位では一旦空気中で浮遊すると沈降,堆積させることが困難であった超微粉研磨材を凝集させて簡単に沈降,堆積させて回収可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラストガンが収容されたキャビネットと,前記キャビネット内で前記ブラストガンより噴射された研磨材を前記キャビネット内の空気と共に導入して回収する研磨材回収手段と,前記研磨材回収手段によって回収された研磨材を前記ブラストガンに再度供給する研磨材供給手段から成る研磨材の循環系を備えた循環式ブラスト装置において,
吸入口を前記キャビネット内の空間に連通させた集塵機を前記研磨材回収手段として前記研磨材の循環系内に配置し,
該集塵機のフィルタ表面に吸引付着させることにより前記研磨材を凝集状態で捕集し,
前記フィルタの表面に捕集された凝集状態の前記研磨材を,前記フィルタの表面より払い落すことにより,前記集塵機内の底部空間内に堆積させ,
該堆積させた状態の前記研磨材を前記研磨材供給手段に導入して,前記ブラストガンに再度供給することを特徴とする循環式ブラスト装置における研磨材循環方法。
【請求項2】
前記フィルタの表面からの前記研磨材の払い落としを,前記フィルタに対する振動の付加,又は,パルスジェットの噴射のいずれかにより行うことを特徴とする請求項1記載の循環式ブラスト装置における研磨材循環方法。
【請求項3】
前記研磨材の循環系内を循環している研磨材の粒度分布を測定し,
測定された粒度分布が予め設定された目標の粒度分布に近付くよう,前記研磨材の循環系内に新たな研磨材を補充する,粒度分布維持処理を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の循環式ブラスト装置における研磨材循環方法。
【請求項4】
前記集塵機の排気を,前記研磨材の循環系外に設けたエアフィルタに設けたHEPAフィルタで濾過した後に大気放出することを特徴とする請求項1又は2記載の循環式ブラスト装置における研磨材循環方法。
【請求項5】
ブラストガンが収容されたキャビネットと,前記キャビネット内で前記ブラストガンより噴射された研磨材を前記キャビネット内の空気と共に導入して回収する研磨材回収手段と,前記研磨材回収手段によって回収された研磨材を前記ブラストガンに再度供給する研磨材供給手段から成る研磨材の循環系を備えた循環式ブラスト装置において,
吸入口を前記キャビネット内の空間に連通させた集塵機を前記研磨材回収手段として前記研磨材の循環系内に配置し,
前記集塵機に,
表面に前記研磨材を吸引付着させて凝集状態で捕集するフィルタと,
前記フィルタの表面に凝集状態で捕集された前記研磨材を払い落とす,研磨材払い落とし手段と,
前記フィルタより払い落とされた前記研磨材を堆積させる底部空間を設け,
前記底部空間に堆積された前記研磨材を,前記研磨材供給手段を介して前記ブラストガンに供給することを特徴とする循環式ブラスト装置。
【請求項6】
前記集塵機の前記研磨材払い落とし手段が,前記フィルタに対して付加される振動を発生させる振動発生手段,又は,前記フィルタに対しパルスジェットを噴射するパルスジェット噴射手段のいずれかであることを特徴とする請求項5記載の循環式ブラスト装置。
【請求項7】
前記研磨材の循環系内を循環している研磨材の粒度分布を測定する粒度分布測定機と,
前記研磨材の循環系内に新たな研磨材を補充する研磨材補充器と,
前記粒度分布測定機によって測定された粒度分布が予め設定された目標の粒度分布に近付くよう,前記研磨材補充器を制御して前記研磨材の循環系内に補充する研磨材量を変化させる,補充器制御手段から成る,粒度分布維持機構を設けたことを特徴とする請求項5又は6記載の循環式ブラスト装置。
【請求項8】
前記集塵機の排気を導入して濾過した後に大気放出する,HEPAフィルタを備えたエアフィルタを前記研磨材の循環系外に設けたこと特徴とする請求項5又は6記載の循環式ブラスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ブラストガンより圧縮気体と共に乾式噴射した研磨材をワークに衝突させて行うサンドブラスト,ショットブラスト,ショットピーニング等(本明細書では,これらを総称して「ブラスト」という。)のうち,噴射した研磨材を回収して再使用する,所謂「循環式ブラスト」における研磨材の循環方法及びこの循環方法を実行する循環式ブラスト装置に関し,特に,微粉研磨材の循環使用に適した研磨材循環方法及び循環式ブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラストガンより噴射した研磨材を回収して再使用する循環式ブラスト装置の構成例を
図5に示す。
【0003】
この循環式ブラスト装置100は,ブラストガン110を収容したキャビネット120の底部を,回収ダクト130を介して研磨材回収手段であるサイクロン140に連通させると共に,サイクロン140で回収された研磨材を,該サイクロン140の下端に連通された研磨材タンク151,研磨材ホース152,及び,前記研磨材タンク151と研磨材ホース152に圧縮気体を供給する圧縮気体供給源153から成る研磨材供給手段150を介してブラストガン110に供給できるように構成したものであり,ブラストガン110,キャビネット120,回収ダクト130,研磨材回収手段(サイクロン)140,及び,研磨材供給手段150(研磨材タンク151,研磨材ホース152,及び圧縮気体供給源153)によってブラストガン110で噴射した研磨材を再度ブラストガン110に循環させる研磨材の循環系が形成されている。
【0004】
このように,研磨材の循環系内に研磨材回収手段として設けられているサイクロン140には,前述した研磨材の循環系の『外』に配置されている集塵機160が連通されており,この集塵機160によってサイクロン140内の空気を吸引することによりサイクロン140によって研磨材が分離,回収された後の粉塵を含んだ空気を研磨材の循環系『外』に排出することができるように構成されている。
【0005】
なお,
図6に示すように後掲の特許文献1には,前述したサイクロン140による微粉体状の研磨材の回収効率を向上させるために,キャビネット120内で噴射された研磨材をキャビネット120の底部に連通された回収ダクト130を介して並列に配置された複数のサイクロン140(141,142)に導入して回収することを提案する(特許文献1の請求項1,
図1他)。
【0006】
また,
図5を参照して説明した循環式ブラスト装置100に設けられた研磨材供給手段150では,ダンプバルブ154を開いてサイクロン140より一回分の研磨材を研磨材タンク151内に落下させた後,ダンプバルブ154を閉じて研磨材タンク151内に圧縮気体を導入して加圧すると共に研磨材ホース152の後端より圧縮気体を導入してブラストガン110に研磨材を供給する構成を採用するため,ブラストガン110に対する研磨材の供給は間欠的なものとなる。
【0007】
これに対し,後掲の特許文献2には,
図7に示すように,研磨材回収タンク151’内の研磨材を,回転ディスク155に設けた計量孔156に装填し,回転ディスク155の回転によって研磨材が充填された計量孔156に搬送気流導入路158の上端と研磨材搬出路159の下端間を通過させることにより,計量孔156内の研磨材を研磨材搬出路159内に吹き上げてブラストガン110に供給できるようにした連続式の研磨材供給手段150が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-141915号公報
【特許文献2】特開2000-768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5を参照して説明した循環式ブラスト装置100では研磨材を循環して繰り返し使用することにより,一回毎に新たな研磨材に入れ替えてブラスト処理を行う場合に比較して経済的にブラスト処理を行うことができる。
【0010】
しかしながら,従来の循環式ブラスト装置100において研磨材回収手段として採用されているサイクロン140は,その構造上,研磨材の粒径が小さくなるに従い研磨材の回収率が低下するため,循環系の『外』に配置されている集塵機160に排出されて再使用されずに廃棄される研磨材量が増えることにより加工コストが上昇する。
【0011】
この点に関し,前掲の特許文献1では,微粉体状の研磨材を使用した場合のサイクロン140の回収率を向上させる目的で,研磨材の循環系内に複数台のサイクロン140(141,142)を並列に設ける構成を採用しており,これにより集塵機160によって各サイクロン141,142に作用する負圧を低く抑えることにより集塵機160に導入される研磨材の量を減少させている。
【0012】
しかしながら,特許文献1に記載の構成では,研磨材の循環系内に設けるサイクロン140(141,142)の数が複数台に増えるだけでなく,これに伴う配管の増設,各サイクロン141,142の一次側流路内の圧力が同じになるように制御するためのダンパ146や圧力計147の増設等が必要となり,部品点数の増加や配管構造,制御構造が複雑になることにより,装置全体の大型化やコストアップが不可避となる。
【0013】
しかも,特許文献1における「微粉体状」がどの程度の粒径を指称しているかは不明であるが,本発明の発明者らが一例としてアルミナ,シリコンカーバイト,二硫化モリブデン等の比重が3~5程度の研磨材を使用して検証を行ったところ,JIS R 6001(1998)における精密研磨用の砥粒において「微粉」と規定されている研磨材(♯240よりも番手が大きい/粒径が小さい)のうち,更に,♯1000(粒径分布1~15μm)程度まで粒径が小さな研磨材(以下,このような粒径の研磨材を「超微粉研磨材」という。)になると,サイクロン140によって回収できる量が大幅に減少し,多量の研磨材が循環系の『外』に配置されている集塵機160に排出されてしまい循環使用できなくなることが確認されている。
【0014】
しかも,循環式ブラスト装置100における研磨材の搬送は空気流によって行われるが,前述した超微粉研磨材では,一旦空気中を浮遊すると長時間にわたって浮遊し続けて沈降しなくなるため,仮にサイクロン140によって超微粉研磨材を回収することができたとしても,回収された超微粉研磨材は,サイクロン140やサイクロン140の底部に連通された研磨材タンク151内においていつまでも沈降,堆積せずに浮遊し続けることになる。
【0015】
これに対し,
図5を参照して説明した循環式ブラスト装置100の研磨材供給手段150では,ダンプバルブ154の一回の開閉によってサイクロン140から研磨材タンク151内に落下させる研磨材量により,特許文献2に記載されている研磨材供給手段150では,
図7に示すように回転ディスク155に設けた計量孔156内に溜まった研磨材と研磨材供給盤の回転速度によりブラストガン110に対し供給する研磨材量の計量を行っているが,これらの研磨材供給手段150による研磨材の計量は,いずれも研磨材がサイクロン140の底部や研磨材タンク151’内で沈降,堆積した状態となっていることを前提とするものであり,空気中を浮遊している状態の研磨材の計量や供給を行える構造とはなっていない。
【0016】
そのため,前述した超微粉研磨材を循環式ブラスト装置100で使用しようとした場合,研磨材回収手段140によって回収された超微粉研磨材を,沈降,堆積させた状態で研磨材供給手段150に導入できるようにするための何等かの手段が必要となる。
【0017】
以上で説明したように,循環式ブラスト装置100において超微粉研磨材を使用しようとした場合,研磨材の循環系内にサイクロンに代わる研磨材回収手段140を設ける必要があると共に,研磨材回収手段140で回収された超微粉研磨材を研磨材供給手段150に導入する前に沈降,堆積させるための構成が必要となるが,このような構成を備えた循環式ブラスト装置は存在せず,既存の循環式ブラスト装置では超微粉研磨材を使用したブラスト処理を行うことができなかった。
【0018】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,比較的簡単な構成であり,かつ,低コストで提供することができるものでありながら,超微粉研磨材を使用した場合であっても研磨材を高回収率で回収することができると共に,回収された研磨材を沈降,堆積させた状態で研磨材供給手段に対し導入して循環させることができる,循環式ブラストにおける研磨材循環方法及び該循環方法を実行可能な循環式ブラスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0020】
上記目的を達成するために,本発明の循環式ブラストにおける研磨材循環方法は,
ブラストガン10が収容されたキャビネット20と,前記キャビネット20内で前記ブラストガン10より噴射された研磨材を前記キャビネット20内の空気と共に導入して回収する研磨材回収手段40と,前記研磨材回収手段40によって回収された研磨材を前記ブラストガン10に再度供給する研磨材供給手段50から成る研磨材の循環系を備えた循環式ブラスト装置1において,
吸入口45を前記キャビネット20内の空間に連通させた集塵機を前記研磨材回収手段40として前記研磨材の循環系内に配置し,
該集塵機40のフィルタ42表面に吸引付着させることにより前記研磨材を凝集状態で捕集し,
前記フィルタ42の表面に捕集された凝集状態の前記研磨材を,前記フィルタ42の表面より払い落すことにより,前記集塵機40内の底部空間41c内に堆積させ,
該堆積させた状態の前記研磨材を前記研磨材供給手段50に導入して,前記ブラストガン10に再度供給することを特徴とする(請求項1)。
【0021】
前記フィルタ42の表面からの前記研磨材の払い落としは,前記フィルタ42に対する振動の付加,又は,パルスジェットの噴射のいずれかにより行うことができる(請求項2)。
【0022】
また,前記研磨材の循環系内を循環している研磨材の粒度分布を測定し,
測定された粒度分布が予め設定された目標の粒度分布に近付くよう,前記研磨材の循環系内に新たな研磨材を補充する,粒度分布維持処理を実行するものとしても良い(請求項3)。
【0023】
更に,前記集塵機40の排気を,前記研磨材の循環系外に設けたエアフィルタ60に設けたHEPAフィルタで濾過した後に大気放出するようにすることが好ましい(請求項4)。
【0024】
また,本発明の循環式ブラスト装置1は,
ブラストガン10が収容されたキャビネット20と,前記キャビネット20内で前記ブラストガン10より噴射された研磨材を前記キャビネット20内の空気と共に導入して回収する研磨材回収手段40と,前記研磨材回収手段40によって回収された研磨材を前記ブラストガン10に再度供給する研磨材供給手段50から成る研磨材の循環系を備えた循環式ブラスト装置1において,
吸入口45を前記キャビネット20内の空間に連通させた集塵機を前記研磨材回収手段40として前記研磨材の循環系内に配置し,
前記集塵機40に,
表面に前記研磨材を吸引付着させて凝集状態で捕集するフィルタ42と,
前記フィルタ42の表面に凝集状態で捕集された前記研磨材を払い落とす,研磨材払い落とし手段(図示せず)と,
前記フィルタ42より払い落とされた前記研磨材を堆積させる底部空間41cを設け,
前記底部空間41cに堆積された前記研磨材を,前記研磨材供給手段50を介して前記ブラストガン10に供給することを特徴とする(請求項5)。
【0025】
前記集塵機40の前記研磨材払い落とし手段としては,前記フィルタ42に対して付加される振動を発生させる振動発生手段(図示せず),又は,前記フィルタ42に対しパルスジェットを噴射するパルスジェット噴射手段(図示せず)のいずれかを採用することができる(請求項6)。
【0026】
また,本発明の循環式ブラスト装置1には,前記研磨材の循環系内を循環している研磨材の粒度分布を測定する粒度分布測定機71と,
前記研磨材の循環系内に新たな研磨材を補充する研磨材補充器72と,
前記粒度分布測定機71によって測定された粒度分布が予め設定された目標の粒度分布に近付くよう,前記研磨材補充器72を制御して前記研磨材の循環系内に補充する研磨材量を変化させる,補充器制御手段73から成る,粒度分布維持機構70を設けるものとしても良い(請求項7)。
【0027】
更に,本発明の循環式ブラスト装置1には,前記集塵機40の排気を導入して濾過した後に大気放出する,HEPAフィルタを備えたエアフィルタ60を前記研磨材の循環系外に設けるものとしても良い(請求項8)。
【発明の効果】
【0028】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の循環式ブラスト装置1では,一般的な研磨材のみならず,従来の循環式ブラスト装置では使用することができなかった超微粉研磨材についても使用することが可能となった。
【0029】
すなわち,研磨材回収手段140としてサイクロンを採用していた従来の循環式ブラスト装置100(
図5参照)で超微粉研磨材を使用すると,研磨材の回収率が著しく低下して循環使用されずに廃棄される研磨材量が増大するだけでなく,浮遊した研磨材が沈降,堆積することなくサイクロン140や,サイクロン140の下方に配置された研磨材タンク151,151’内で浮遊し続けることにより,ブラストガン110に対して供給する研磨材の計量等を行うことができないものとなっていた。
【0030】
これに対し,本発明の循環式ブラスト装置1では,前記研磨材回収手段40として集塵機を研磨材の循環系内に設けると共に,この集塵機40のフィルタ42に吸引付着させることにより凝縮させた研磨材を払い落とすことにより回収することにより,超微粉研磨材であっても高回収率で回収することができると共に,1粒子単位では空気中での浮遊時間が長く沈降,堆積させることが困難であった超微粉研磨材であっても,フィルタ42に対する吸引付着によって塊の状態に凝集された研磨材は,これを払い落として落下させることにより集塵機40内の底部空間41cに容易に沈降,堆積させることができた。
【0031】
また,超微粉研磨材であっても集塵機40の底部空間41c内に沈降,堆積させることができたことにより,超微粉研磨材を,これよりも粒径の大きな他の研磨材と同様,既知の研磨材供給手段50によって計量し,ブラストガン10に供給することが可能となった。
【0032】
なお,
図5を参照して説明した従来の循環式ブラスト装置100にも,研磨材の循環系『外』にではあるが集塵機160自体は設けられていた。
【0033】
一方,本発明の循環式ブラスト装置1では,集塵機を研磨材回収手段40として使用することにより,従来の循環式ブラスト装置100では不可欠の構成であったサイクロン140が不要となるため,従来の循環式ブラスト装置100に対し,サイクロンが不要となる分,部品点数の減少が実現されており,低コストで超微粉研磨材を使用可能な循環式ブラスト装置1を提供することができた。
【0034】
研磨材の循環系内を循環する研磨材の粒度分布を測定する粒度分布測定機71と,研磨材の循環系内に新たな研磨材を補充する研磨材補充器72と,前記粒度分布測定機71によって測定された粒度分布が予め設定された目標の粒度分布に近付くよう,前記研磨材補充器72を制御して研磨材の循環系内に補充する研磨材量を変化させる補充器制御手段73から成る粒度分布維持機構70を設けた構成では,循環使用に伴う研磨材の破砕等が生じた場合であっても,循環系内を循環する研磨材の粒度分布を略一定に保つことができ,例えば二硫化モリブデンのように破砕が生じ易い材質の研磨材を使用してブラスト加工を行った場合であっても加工精度を一定に維持することができた。
【0035】
更に,前記集塵機40の排気を導入して濾過した後に大気放出する,HEPAフィルタを備えたエアフィルタ60を研磨材の循環系外に設けた構成では,集塵機40の排気中に含まれる微細な粉塵等が大気放出されることを防止して,作業環境の汚染や,該汚染に伴う作業員の健康被害の発生等についても防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】本発明の循環式ブラスト装置の研磨材供給手段の説明図。
【
図3】本発明の循環式ブラスト装置の研磨材供給手段の変形例を示す説明図。
【
図6】従来の循環式ブラスト装置の説明図(特許文献1の
図1に対応)。
【
図7】特許文献2の研磨材供給手段の説明図(特許文献2の
図2に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0038】
〔ブラスト加工装置の全体構成〕
本発明の循環式ブラスト装置1の構成例を
図1に示す。
【0039】
この循環式ブラスト装置1は,研磨材を圧縮気体と共に乾式噴射するブラストガン10と,該ブラストガン10を内部に収容したキャビネット20と,該キャビネット20内の底部に連通された回収ダクト30と,前記回収ダクト30を介してキャビネット20内で噴射された研磨材を回収する研磨材回収手段40と,研磨材回収手段40で回収された研磨材をブラストガン10に供給する研磨材供給手段50を備え,ブラストガン10,キャビネット20,回収ダクト30,研磨材回収手段40,及び,研磨材供給手段50によって研磨材の循環系が形成されている点では
図5を参照して説明した従来の循環式ブラスト装置と同様である。
【0040】
〔研磨材回収手段〕
図5を参照して説明した従来の循環式ブラスト装置100では,キャビネット120内で噴射された研磨材を回収する研磨材回収手段140としてサイクロンを採用していたが,本発明の循環式ブラスト装置1では,このサイクロンに代えて,集塵機を研磨材回収手段40として採用している。
【0041】
この集塵機40の外殻を成すケーシング41内には,フィルタ42を収容するフィルタ収容空間41bと,該フィルタ収容空間41bの下方に形成されて,フィルタ42より払い落とされた研磨材を堆積させる底部空間41cが形成されており,本実施形態にあってはこの下部空間41cを,下方に向かって幅が狭まるホッパ型の空間として形成している。
【0042】
また,フィルタ収容空間41bの上方には該フィルタ収容空間41b内の空気を排出する排風機43が収容された排風室41aが設けられていると共に,この排風室41aが排気口44及び該排気口44に連通されたエアフィルタ60を介して機外へと連通されている。
【0043】
前述のフィルタ収容空間41b内に収容するフィルタ42としては既知の各種構成のものが採用可能であるが,本実施形態ではこのフィルタ42としてバグフィルタを設け,排風室41a内に収容されている排風機43を作動させると,バグフィルタ42の内部の空気が吸引されることにより,吸入口45を介してフィルタ収容空間41b内に導入されたキャビネット20からの空気が,バグフィルタ42の外側から内側に抜けると共に,上方に排出されることにより,バグフィルタ42の外周表面にキャビネット20内の空気と共に搬送された研磨材が吸引付着するように構成されている。
【0044】
この集塵機40には,バグフィルタ42の表面に対しある程度の量の研磨材が吸引付着して凝集されると,これを払い落とす,払い落とし手段(図示せず)が設けられている。
【0045】
バグフィルタ42表面にどの程度の量の研磨材が吸引付着されたときに払い落しを実行するかは,払い落としを実行する時間隔の設定によって決定するものとして良く,又は,排風機43を駆動するモータ43aの電流値等に基づいてバグフィルタ42の目詰まり状態を観察し,バグフィルタ42が所定の目詰まり状態となったときに行うものとしても良く,バグフィルタ42の表面にある程度の量の研磨材が吸引付着されて凝集した状態となっているときに払い落としを行うものであれば,払い落としの実行タイミングは特に限定されない。
【0046】
このような払い落とし手段としては,バグフィルタ42に対して付加する振動を発生させる振動発生手段(図示せず)を採用することもできるが,本実施形態では,バグフィルタ42の内部に瞬間的な高圧圧縮機空気(パルスジェット)の噴射を行う,パルスジェット噴射手段(図示せず)を研磨材払い落とし手段として採用した。
【0047】
図1に示すようにフィルタ収容空間41b内に複数のバグフィルタ42を設けた構成では,全てのバグフィルタ42に対し同時に払い落しを行うものとしても良く,又は,各バグフィルタ42に対する払い落しを異なるタイミングで行うようにしても良い。
【0048】
バグフィルタ42毎に異なるタイミングで払い落しを行う場合,払い落しを行っていないバグフィルタ42による研磨材の吸引付着を継続させつつ,払い落としの対象としたバグフィルタ42より研磨材の払い落しを同時に行うことができ,集塵機40の動作を停止させることなく払い落としが実行可能となる。
【0049】
このように,本発明の循環式ブラスト装置1では,研磨材回収手段として集塵機40を設け,この集塵機40によってキャビネット20内の空気を吸引させることにより,集塵機40のフィルタ収容空間41b内にはキャビネット20内の空気と共に研磨材が導入され,この研磨材がバグフィルタ42の外周表面に吸引付着される。
【0050】
バグフィルタ42の外周表面に対しては,先に吸引付着された研磨材上に,更に後続の研磨材が順次折り重なるように吸引付着されることにより,バグフィルタ42の外周面上には凝集された状態で研磨材が付着して捕集される。
【0051】
このように,バグフィルタ42の外周面に凝集した状態で捕集された研磨材を払い落すことにより,払い落された研磨材は塊の状態で落下し,個々の粒子単位では空気中を浮遊してしまうために沈降,堆積させることが困難であった超微粉研磨材であってもこれを容易に底部空間41c内に沈降,堆積させることができ,研磨材回収手段としてサイクロンを使用していた従来の循環式ブラスト装置によっては回収できない,又は,極めて低回収率でしか回収できなかった超微粉研磨材を,高い回収率で,かつ,底部空間41c内に沈降,堆積させた状態で回収することが可能となる。
【0052】
このように底部空間41cに沈降,堆積された研磨材は,堆積に伴い自重によって圧縮され,特に底部空間41cを下向きに狭まるホッパ形状とした図示の実施形態では,下向きに移動するに従い研磨材は更に圧縮されて密度が高められることにより空気中を浮遊し難くなり,ブラスト加工に使用する研磨材として超微粉研磨材を使用した場合であっても,これよりも粒径の大きい一般的な研磨材と同様に後述の研磨材供給手段50にて取り扱うことが可能となる。
【0053】
〔研磨材供給手段〕
本発明の循環式ブラスト装置1に研磨材回収手段として設けられている集塵機40の底部空間41cは,キャビネット20内に配置されているブラストガン10に対し研磨材を供給する研磨材供給手段50に連通されており,集塵機40の底部空間41c内に堆積された研磨材は,この研磨材供給手段50によってブラストガン10に供給されて,再度,キャビネット20内で噴射されることにより循環使用される。
【0054】
前述したように,本発明の循環式ブラスト装置1では研磨材回収手段として集塵機40を設けたことにより,超微粉研磨材を使用した場合であっても集塵機40の底部空間41c内に研磨材を凝集状態で沈降,堆積させることができたことにより,超微粉研磨材よりも粒径の大きい一般的な研磨材と同様の取り扱いが可能となったことから,この研磨材供給手段50としては,既知の循環式ブラスト装置で採用されている各種の研磨材供給手段の構成が採用可能である。
【0055】
一例として,
図2は,
図5を参照して説明した従来の循環式ブラスト装置100で採用していた研磨材供給手段150と同様の構成の研磨材供給手段50を本発明の循環式ブラスト装置1に採用した場合の構成例であり,
図2に示した研磨材供給手段50は,研磨材タンク51,該研磨材タンク51の下端に中間位置が連通された研磨材ホース52と,前記研磨材タンク51内及び前記研磨材ホース52の後端に圧縮気体を供給する圧縮気体供給源53を備えており,研磨材ホース52の先端をブラストガン10に連通することにより,ブラストガン10に対する研磨材の供給を行うことができるように構成されている。
【0056】
この構成では,集塵機40の底部空間41cと研磨材タンク51間にダンプバルブ54を設け,該ダンプバルブ54の一回の開閉によって研磨材タンク51内に落下させた研磨材を圧縮気体と共にブラストガン10に供給することができる。
【0057】
このように,
図2に示した構成では,集塵機40の底部空間41cに堆積された研磨材を研磨材タンク51内に落下させる構成を採用するが,集塵機40の底部空間41c内に堆積した研磨材は,堆積による圧縮によって凝集していることから,研磨材として超微粉研磨材を使用した場合であっても研磨材を浮遊させることなく研磨材タンク51内に落下させることができる。
【0058】
なお,
図2を参照して説明した研磨材供給手段50ではブラストガン10に対する研磨材を供給が間欠的に行われるものとなるのに対し,研磨材供給手段として
図3に示す構成のものを採用してブラストガン10に対し研磨材の連続供給を可能とするようにしても良い。
【0059】
この研磨材供給手段50は,複数の計量孔56が等間隔に形成された回転ディスク55を攪拌モータ57によって研磨材が堆積された研磨材タンク51’内で水平回転自在に設けると共に,回転ディスク55の回転に伴い,回転ディスク55に設けた計量孔56が,搬送気流導入路58の先端58aと研磨材搬出路59の後端59b間を通過するように構成したものである。
【0060】
この構成では,搬送気流導入路58の後端58bに圧縮気体供給源(図示せず)を接続して圧縮気体を導入すると共に,研磨材搬送路59の先端59aを,研磨材ホース52を介してブラストガン10に連通させた状態で攪拌モータ57によって回転ディスク55を回転させると,研磨材が詰まった計量孔56が搬送気流導入路58の先端58aと研磨材搬出路59の後端59b間を通過する際に搬送気流導入路58からの搬送気流によって計量孔56より研磨材搬送路59内に押し出されてブラストガン10に供給される。
【0061】
従って,
図3に示した研磨材供給手段50を設ける場合には,攪拌モータ57により回転ディスク55の回転速度を制御することにより,回転速度に応じた供給量の研磨材を連続してブラストガン10に供給することが可能となる。
【0062】
なお,本発明の循環式ブラスト装置で採用する研磨材供給手段は,上記
図2及び
図3を参照して説明した構成に限定されず,既知の各種構成のものを採用可能であり,図示の構成に限定されるものではない。
【0063】
〔粒度分布保持機構〕
研磨材を循環使用する循環式ブラスト装置1では,繰り返しの使用によって研磨材が破砕することにより,経時と共に研磨材の粒度分布が徐々に小径側にシフトすることにより被加工物の加工精度が変化してしまう。
【0064】
特に,二硫化モリブデンのように,脆く,破砕し易い材質の研磨材を使用する場合には粒度分布が顕著に変化する場合があることから,本発明の循環式ブラスト装置1には,更に,研磨材の循環系内の研磨材の粒度分布を略一定に維持することを可能と成す,粒度分布維持機構70を設けるものとしても良い(
図1参照)。
【0065】
この粒度分布維持機構70として,本発明の循環式ブラスト装置1には,
図1に示すように研磨材の循環系内を循環する研磨材の粒度分布を測定する粒度分布測定機71と,研磨材の循環系に対し新たな研磨材を補充する研磨材補充器72と,前記粒度分布測定機71によって測定された粒度分布が予め設定された粒度分布となるように研磨材補充器72の動作を制御して研磨材の循環系に対する研磨材の補充量を制御する補充器制御手段73を設けている。
【0066】
研磨材の循環系内を循環する研磨材の粒度分布を測定するために,該循環系内を循環する研磨材が例えば一定時間毎にサンプルとして一定量,抜き出されると共に,前述の粒度分布測定機71にて該サンプルの粒度分布が測定される。
【0067】
研磨材の粒度分布を測定する粒度分布測定機71としては,レーザ回析法,撮像法,沈降法,電機抵抗法等の既知の各種方式の粒度分布測定機を使用することができる。
【0068】
また,前述の研磨材補充器72は,後述する補充器制御手段73からの指令に従い,指令された量の研磨材を,研磨材の循環系内に補充することができるものであれば如何なる構造のものを採用することもできるが,一例として本実施形態では,
図4に示す構造の研磨材補充器72を設けている。
【0069】
この研磨材補充器72は,逆裁頭円錐形状に形成されたホッパ722の下方に多数の小孔が形成されたパンチングメタルや網等から成るスクリーン723を配置して,ホッパ722内に投入された研磨材を前記スクリーン723上に落下させることができるように構成されていると共に,ホッパ722上方に配置された攪拌モータ724に設けられた回転軸724aに,ホッパ722内で回転する攪拌ブレード725と,前記スクリーン723上で回転するスクレーパ726を取り付けて,攪拌モータ724の回転に伴い回転させることができるように構成している。
【0070】
このスクレーパ726には,スクレーパ726の回転に伴いスクリーン723表面に摺接されるブレード727が設けられており,このブレード727によって,スクリーン723に形成された小孔内より研磨材を落下させることができるように構成されている。
【0071】
従って,ホッパ722内に砥粒を投入した状態で攪拌モータ724を回転させることにより,ホッパ722内の研磨材が攪拌ブレード725によって攪拌されてスクリーン723上に落下する。
【0072】
この砥粒をスクレーパ726の回転によりスクリーン723の小孔内にブレード727によって送り込まれた砥粒がスクリーン723の小孔を通過して,少量ずつ下方に落下する。
【0073】
そのため,上記構成の研磨材補充器72では,攪拌モータ724の回転速度を早めることにより研磨材の補充量を増大させ,これとは逆に攪拌モータ724の回転速度を低下させることにより研磨材の補充量を減少させることができ,攪拌モータ724の回転速度を制御することにより,研磨材の循環系内に対する研磨材の補充量を可変とすることができるように構成されている。
【0074】
このようにして,スクリーン723を通過した研磨材が落下する研磨材受け部728は,研磨材の循環系のいずれか位置,一例として図示の実施形態では回収ダクト30内に連通されており,研磨材の循環系内に攪拌モータ724の回転速度によって決まる所定量の研磨材を補充することができるように構成されている。
【0075】
前述の粒度分布測定機71により測定された研磨材の粒度分布は,例えばブラスト装置1の制御用に設けられているマイクロコントローラ等の電子制御装置によって実現される補充器制御手段73に送信され,補充器制御手段73は,予め記憶されている粒度分布と攪拌モータ724の回転速度との対応関係に基づいて,測定された粒度分布が,目標の粒度分布に近付くよう,粒度分布測定機71が測定した粒度分布に基づいて攪拌モータ724の回転速度を変化させて研磨材の補充量を変化させる。
【0076】
研磨材を循環使用する場合,循環使用する回数が増えるに従って研磨材は破砕して粒径が小さくなることから,粒度分布は小径側にシフトする。
【0077】
従って,研磨材補充器72によって補充する研磨材として,目標とする粒度分布に対し粒径の大きい研磨材を補充することにより,研磨材の循環系内を循環する研磨材の粒度分布を大径側にシフトさせることができると共に,追加する研磨材量に応じてシフト幅を変化させることができ,前述したフィードバック制御によって研磨材を追加する量を制御することにより,循環系内の研磨材の粒度分布を略一定に維持させることができる。
【0078】
〔エアフィルタ(HEPAフィルタ)〕
なお,
図1中の符号60は,研磨材回収手段として設けた集塵機40の排気口44に接続されたエアフィルタである。
【0079】
このエアフィルタ60には,フィルタとしてHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を設け,排気中に含まれる微細な粉塵を除去することができるようにした。
【0080】
本発明の循環式ブラスト装置1では超微粉研磨材を使用したブラスト加工を予定するものであるところ,このような超微粉研磨材を使用したブラスト加工によって発生した微細な粉塵が機外へと漏出することに伴い発生する作業環境の汚染や,これに伴う作業者の健康被害の発生を防止すべく,集塵機の排気を更にHEPAフィルタを備えたエアフィルタによって清浄化した後に大気放出する。
【0081】
〔動作等〕
以上で説明した構成を備えた本発明の循環式ブラスト装置1では,研磨材回収手段である集塵機40に設けた排風機43を作動させた状態でキャビネット20内に配置されたブラストガン10より圧縮気体と共に研磨材を図示せざるワークに向けて乾式噴射すると,ワークを加工した後の研磨材は,キャビネット20内の空気と共に回収ダクト30を介して研磨材回収手段である集塵機40のフィルタ収容空間41b内に導入される。
【0082】
キャビネット20内の空間は,集塵機40によって研磨材と共に内部の空気が吸引されていることから,ブラスト加工中,常に負圧となっており,キャビネット20に設けた外気吸い込み口21を介して外気の吸引が行われていることから,キャビネット20内に噴射された研磨材の機外への漏出が防止されている。
【0083】
回収ダクト30を介してキャビネット20内の空気と共に集塵機40のフィルタ収容空間41b内に導入された研磨材は,研磨材を搬送する空気流がバグフィルタ42の外周面よりバグフィルタ42内に通過する際にバグフィルタ42の外周表面に吸引付着される。
【0084】
バグフィルタ42の外周表面に吸引付着された研磨材上には,更に,後続の研磨材が順次折り重なるように付着することにより,研磨材の粒子が多数凝集した状態で捕集される。
【0085】
このようにして,凝集した状態の研磨材を表面に捕集しているバグフィルタに対し,定期的に払い落し手段によって機械的な振動の付加やパルスジェットの噴射(本実施形態ではパルスジェットの噴射)を行うと,バグフィルタ42の表面に捕集された研磨材が払い落されて集塵機40の底部空間41cに落下する。
【0086】
研磨材はバグフィルタ42の外周表面に捕集された際に凝集していることから,研磨材が超微粉研磨材であったとしても凝集状態を維持したまま落下することにより,バグフィルタ42から払い落したとしても研磨材を浮遊させることなく底部空間41c内に堆積させることができるものとなっている。
【0087】
そして,この底部空間41cに落下して堆積した研磨材は,堆積に伴う圧縮によって更に密度を高めた凝集状態となることにより,超微粉研磨材を使用した場合であっても,これよりも粒径の大きな一般的な研磨材を使用した場合と同様,空気中での浮遊を抑制した状態で取り扱うことが可能となる。
【0088】
その結果,このようにして集塵機40の底部空間41cに堆積された研磨材を,
図2及び
図3を参照して説明した研磨材供給手段50を使用してブラストガン10に再供給することが可能となっている。
【0089】
すなわち,
図2を参照して説明した研磨材供給手段50を設けた構成では,集塵機40の底部空間41cと研磨材タンク51間に設けられたダンプバルブ54を開閉して,一回分の研磨材を研磨材タンク51に落下させると共に,圧縮気体供給源53からの圧縮気体を研磨材タンク51と研磨材ホース52の後端部に導入することにより,圧縮気体と共に研磨材をブラストガン10に供給してブラストガン10よりワークに対し噴射することができ,その後,前述した作業が繰り返される。
【0090】
また,
図3に示す形式の研磨材供給手段50を備えた循環式ブラスト装置1の構成では,集塵機40の底部空間41cに連通された研磨材タンク51’内に落下して貯留された研磨材が,回転ディスク55に設けた計量孔56内に充填され,攪拌モータによる回転ディスク55の回転によって研磨材が充填された計量孔56が搬送気流導入路の先端58aと研磨材搬送路59の後端59b間に到達すると,図示せざる圧縮気体供給源からの圧縮気体によって計量孔56内の研磨材が研磨材搬送路59に押し出されて圧縮気体と共にブラストガンに供給されると共にブラストガンより噴射され,その後,前述した作業が繰り返される。
【0091】
一方,集塵機40の排気は,集塵機40の排気口44に連通されたエアフィルタ60に設けられているHEPAフィルタによって排気中に含まれる超微細な粉塵までもが除去された清浄に空気として大気放出されることにより,超微細粉塵による作業環境の汚染や,これに伴う作業員の健康被害の発生が防止されている。
【0092】
研磨材の循環系内を循環する研磨材よりサンプルとして所定量取り出した研磨材の粒度分布を測定する粒度分布測定機71と,研磨材の循環系に対し新たな研磨材を補充する研磨材補充器72,及び,前記粒度分布測定機71によって測定された粒度分布に応じて研磨材補充器72が補充する研磨材量を制御する補充器制御手段73から成る粒度分布維持機構70を備えた構成では,研磨材の循環系内を循環する研磨材の粒度分布を粒度分布測定機71が例えば所定の時間隔毎に監視し,測定された粒度分布が予め設定された粒度分布に近づくように補充器制御手段73が研磨材補充器72を制御して研磨材の循環系内に追加する研磨材量を変化させるフィードバック制御を行うことにより,研磨材の循環系内を循環する研磨材の粒度分布を略一定に保持することが可能となる。
【0093】
これにより,繰り返しの循環使用による研磨材の破砕等によって研磨材の循環系内を循環している研磨材の粒度分布が変化することを防止することにより,経時と共にブラスト加工条件が変化してワークWの加工精度等が変化することを防止でき,特に,研磨材として二硫化モリブデンのように脆く破砕し易い材質のものを使用する場合に効果的である。
【符号の説明】
【0094】
1 循環式ブラスト装置
10 ブラストガン
20 キャビネット
21 外気吸い込み口
30 回収ダクト
40 集塵機(研磨材回収手段)
41 ケーシング
41a 排風室
41b フィルタ収容空間
41c 底部空間
42 フィルタ(バグフィルタ)
43 排風機
43a モータ(排風機の)
44 排気口
45 吸入口
50 研磨材供給手段
51,51’ 研磨材タンク
52 研磨材ホース
53 圧縮気体供給源
54 ダンプバルブ
55 回転ディスク
56 計量孔
57 攪拌モータ
58 搬送気流導入路
58a 先端(搬送気流導入路の)
58b 後端(搬送気流導入路の)
59 研磨材搬出路
59a 先端(研磨材搬出路の)
59b 後端(研磨材搬出路の)
60 エアフィルタ
70 粒度分布維持機構
71 粒度分布測定機
72 研磨材補充器
722 ホッパ
723 スクリーン
724 攪拌モータ
724a 回転軸
725 攪拌ブレード
726 スクレーパ
727 ブレード
728 研磨材受け部
73 補充器制御手段
100 循環式ブラスト装置
110 ブラストガン
120 キャビネット
130 回収ダクト
140,141,142 研磨材回収手段(サイクロン)
146 ダンパ
147 圧力計
150 研磨材供給手段
151,151’ 研磨材タンク
152 研磨材ホース
153 圧縮気体供給源
154 ダンプバルブ
155 回転ディスク
156 計量孔
158 搬送気流導入路
159 研磨材搬出路
160 集塵機