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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127137
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両用空調制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B60H1/00 101Q
B60H1/00 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036073
(22)【出願日】2023-03-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英明
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA01
3L211BA32
3L211EA02
3L211GA83
(57)【要約】
【課題】車両を限定することなく、乗員ごとの嗜好を反映した空調制御を行う車両用空調制御システムを提供する。
【解決手段】車両用空調制御システム1は、車両の乗員が携帯する携帯端末100と、携帯端末100と通信可能な車両用空調制御装置200とを備え、車両用空調制御装置200は、車両が走行を開始するときに、車両の乗員が携帯する携帯端末100から乗員ごとの空調設定に関する嗜好データを取得し、乗員が携帯する携帯端末100の位置と乗員の着座位置とを紐づけ、取得した嗜好データに基づいて各座席の空調制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が携帯する携帯端末と、前記携帯端末と通信可能な車両用空調制御装置とを備えた車両用空調制御システムであって、
前記携帯端末が、
前記乗員の空調設定の嗜好データを取得し記憶部に記憶させる嗜好データ取得部を備え、
前記車両用空調制御装置が、
前記携帯端末の位置を検出する端末位置検出部と、
前記乗員の着座位置を検出する着座位置検出部と、
前記携帯端末の位置と、前記着座位置とに基づいて、前記着座位置に紐づく前記携帯端末を特定する特定部と、
前記携帯端末から前記嗜好データを取得するデータ取得部と、
前記着座位置と、該着座位置に紐づく前記携帯端末から取得した前記嗜好データとに基づいて、前記着座位置ごとの前記空調設定を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする車両用空調制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記乗員ごとの前記嗜好データに基づいて設定した前記空調設定が所定値より大きい乖離がある場合には、前記乖離が所定値以下となるように、前記着座位置ごとの空調設定を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調制御システム。
【請求項3】
前記特定部において、前記着座位置に紐付く前記携帯端末を特定できなかった場合には、前記制御部は、前記特定部において特定できた前記携帯端末から取得した前記嗜好データに基づいて、前記携帯端末が特定できなかった前記着座位置の前記空調設定を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、設定した前記空調設定を前記乗員が変更し、所定時間以上、該空調設定を変更しなかった場合には、該空調設定に基づいて更新した更新嗜好データを前記携帯端末に送信し、前記携帯端末に記憶された前記嗜好データを前記更新嗜好データに更新することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調制御システム。
【請求項5】
車両の乗員が携帯する携帯端末と、前記携帯端末と通信可能な車両用空調制御装置とを備えた車両用空調制御システムであって、
前記携帯端末は、
前記乗員の空調設定の嗜好データを取得しに記憶させる嗜好データ取得部を備え、
前記車両用空調制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、前記1つまたは複数のプロセッサに通信可能に接続される1つまたは複数のメモリと、を備え、
前記携帯端末の位置を検出する端末位置検出部と、
前記乗員の着座位置を検出する着座位置検出部と、
前記携帯端末の位置と、前記着座位置とに基づいて、前記着座位置に紐づく前記携帯端末を特定する特定部と、
前記携帯端末から前記嗜好データを取得するデータ取得部と、
前記着座位置と、該着座位置に紐づく前記携帯端末から取得した前記嗜好データとに基づいて、前記着座位置ごとの前記空調設定を制御する制御部と、
を含むことを特徴とする車両用空調制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車室内を快適な空間にするために、車両の乗員を識別し、各乗員が登録した空調設定において、座席ごとの空調制御を行う車両が実用化されている。
例えば、この種の技術では、車両の乗員が携帯する携帯端末の位置に基づいて、各座席の着座者を識別し、空調制御装置に記憶された着座者ごとの空調設定において、各座席の空調制御を行う車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-084358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では、乗員ごとの空調設定データを特定の車両に搭載された空調制御装置が記憶しているため、乗員の嗜好が反映された空調制御が行われる車両が限定されてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両を限定することなく、乗員ごとの嗜好を反映した空調制御を行う車両用空調制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両の乗員が携帯する携帯端末と、前記携帯端末と通信可能な車両用空調制御装置とを備えた車両用空調制御システムであって、前記携帯端末が、前記乗員の空調設定の嗜好データを取得し記憶部に記憶させる嗜好データ取得部を備え、前記車両用空調制御装置が、前記携帯端末の位置を検出する端末位置検出部と、前記乗員の着座位置を検出する着座位置検出部と、前記携帯端末の位置と、前記着座位置とに基づいて、前記着座位置に紐づく前記携帯端末を特定する特定部と、前記携帯端末から前記嗜好データを取得するデータ取得部と、前記着座位置と、該着座位置に紐づく前記携帯端末から取得した前記嗜好データとに基づいて、前記着座位置ごとの前記空調設定を制御する制御部と、を備えることを特徴とする車両用空調制御システムを提案している。
【0007】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記乗員ごとの前記嗜好データに基づいて設定した前記空調設定が所定値より大きい乖離がある場合には、前記乖離が所定値以下となるように、前記着座位置ごとの空調設定を変更することを特徴とする車両用空調制御システムを提案している。
【0008】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記特定部において、前記着座位置に紐付く前記携帯端末を特定できなかった場合には、前記制御部は、前記特定部において特定できた前記携帯端末から取得した前記嗜好データに基づいて、前記携帯端末が特定できなかった前記着座位置の前記空調設定を決定することを特徴とする車両用空調制御システムを提案している。
【0009】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御部は、設定した前記空調設定を前記乗員が変更し、所定時間以上、該空調設定を変更しなかった場合には、該空調設定に基づいて更新した更新嗜好データを前記携帯端末に送信し、前記携帯端末に記憶された前記嗜好データを前記更新嗜好データに更新することを特徴とする車両用空調制御システムを提案している。
【0010】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両の乗員が携帯する携帯端末と、前記携帯端末と通信可能な車両用空調制御装置とを備えた車両用空調制御システムであって、前記携帯端末は、前記乗員の空調設定の嗜好データを取得し記憶部に記憶させる嗜好データ取得部を備え、前記車両用空調制御装置は、1つまたは複数のプロセッサと、前記1つまたは複数のプロセッサに通信可能に接続される1つまたは複数のメモリと、を備え、前記携帯端末の位置を検出する端末位置検出部と、前記乗員の着座位置を検出する着座位置検出部と、前記携帯端末の位置と、前記着座位置とに基づいて、前記着座位置に紐づく前記携帯端末を特定する特定部と、前記携帯端末から前記嗜好データを取得する嗜好データ取得部と、前記着座位置と、該着座位置に紐づく前記携帯端末から取得した前記嗜好データとに基づいて、前記着座位置ごとの前記空調設定を制御する制御部と、を含むことを特徴とする車両用空調制御システムを提案している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、車両を限定することなく、乗員ごとの嗜好を反映した空調制御を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御システムの構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御システムを構成する携帯端末の構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御システムを構成する携帯端末の嗜好データ取得用の表示例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御システムを構成する車両用空調制御装置の構成を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御装置が検出する携帯端末の位置情報を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御装置が携帯端末と座席とを紐づける際に参照する座席の位置情報を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御装置の温度の設定方法を例示した図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御装置の温度の設定方法を例示した図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御装置の処理のフローを示した図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調制御装置の処理のフローを示した図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る車両用空調制御システムの構成を示す図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る車両用空調制御システムを構成する携帯端末の構成を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る車両用空調制御システムを構成する車両用空調制御装置の構成を示す図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る車両用空調制御装置の処理のフローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図14を用いて、本実施形態に係る車両用空調制御システムについて説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1から図10を用いて、本実施形態に係る車両用空調制御システム1について説明する。
【0015】
<車両用空調制御システム1の構成>
図1に示すように、本実施形態に係る車両用空調制御システム1は、携帯端末100_1~100_Mと、車両用空調制御装置200と、空調装置300と、入力装置400とを含んで構成されている。
なお、以下では、携帯端末100_1~100_Mを「携帯端末100」と総称する。
携帯端末100は、例えば、スマートフォンであって、車両の乗員が携帯する携帯端末である。
携帯端末100は、本実施形態においては、特に、後述する車両用空調制御装置200と接続して、携帯端末100を携帯する乗員の嗜好が反映された空調設定に関する情報の送受信を行う。
なお、携帯端末100の詳細については、後述する。
【0016】
車両用空調制御装置200は、車両の座席ごとの温度、風量、風向等の空調設定を決定し、決定した空調設定を後述する空調装置300に送信する。
なお、車両用空調制御装置200の詳細については、後述する。
【0017】
空調装置300は、車両用空調制御装置200から受信した座席ごとの空調設定に基づいて、送風ファン、ヒータ、コンプレッサ、風向変更機構等を制御し、送風を行う。
【0018】
入力装置400は、例えば、空調設定の変更を行う時に乗員が操作するスイッチ等を備えた装置であって、乗員が設定した温度、風量、風向等に関する情報を取得し、取得した情報を車両用空調制御装置200に送信する。
【0019】
<携帯端末100の構成>
図2に示すように、携帯端末100は、嗜好データ取得部110と、記憶部120と、通信部130とを備えている。
【0020】
嗜好データ取得部110は、乗員の空調設定の嗜好データを取得し、取得した嗜好データを記憶部120に記憶させる。
嗜好データ取得部110は、例えば、温度設定値、風量の好み、乾燥/湿度の好み、暑がり/寒がり等の空調設定に関する嗜好データ(以下、「嗜好データ」と呼ぶ。)を取得する。
図3に示すように、嗜好データ取得部110は、嗜好データ取得用の画面を図示しない表示部に表示し、乗員が入力した空調の温度設定値に関する情報と、乗員が選択した各空調設定に関する嗜好の情報とを取得し、取得した情報を記憶部120に格納する。
【0021】
通信部130は、例えば、Bluetooth通信を用いて、車両用空調制御装置200と接続し、空調設定の嗜好データを送受信するためのインターフェースとして機能する。
【0022】
<車両用空調制御装置200の構成>
図4に示すように、車両用空調制御装置200は、プロセッサ210と、メモリ220と、を備えている。
なお、プロセッサ210の詳細については、後述する。
メモリ220は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含み、ROMには、制御プログラムが格納され、RAMには、後述するプロセッサ210から受信した情報等が格納される。
【0023】
<プロセッサ210の構成>
プロセッサ210は、通信部211と、端末位置検出部212と、着座位置検出部213と、特定部214と、データ取得部215と、制御部216と、を含んで構成されている。
【0024】
通信部211は、例えば、Bluetooth通信を用いて、車両に乗車した乗員が携帯する携帯端末100と接続し、空調設定の嗜好データを送受信するためのインターフェースとして機能する。
【0025】
端末位置検出部212は、携帯端末100の位置を検出する。
端末位置検出部212は、車両内に存在する携帯端末100を検出し、各携帯端末100の位置を検出し、検出結果をメモリ220に格納する。
図5に示すように、端末位置検出部212は、例えば、携帯端末100とのBluetooth通信を用いて、設定した基準点Aからの距離Lと、基準点Aを通る角度基準線ALとの角度θとを算出する。
ここで、端末位置検出部212は、車両内に存在する携帯端末100の位置が検出できればよいため、例えば、UWB(Ultra Wide Band)通信を用いて、携帯端末100の位置を検出するようにしてもよい。
【0026】
着座位置検出部213は、乗員の着座位置を検出する。
着座位置検出部213は、例えば、車両の各座席に配設された、座席の座面にかかる荷重を検出する着座センサの出力に基づいて、車両の乗員がどの座席に着座しているかを検出し、検出結果をメモリ220に格納する。
なお、着座位置検出部213は、乗員の着座位置が検出できればよいため、例えば、車室内を撮像した画像に基づいて、乗員の着座位置を検出するようにしてもよい。
【0027】
特定部214は、携帯端末100の位置と、着座位置とに基づいて、着座位置に紐づく携帯端末100を特定する。
ここで、特定部214が着座位置に紐づく携帯端末100を特定する方法の一例を説明する。
図6に示すように、車両に存在する座席(例えば、運転席/助手席/後部座席1~3)の位置情報は、携帯端末100の位置検出と同様に、基準点Aからの距離Lと基準点Aを通る角度基準線ALとの角度θとで示され、予めメモリ220に格納されている。
特定部214は、着座位置検出部213において、乗員が着座していると検出された座席の位置情報をメモリ220から取得し、その座席位置から一番近い距離に存在する携帯端末100をその座席に着座する乗員が携帯する携帯端末として特定する。
特定部214は、着座位置検出部213において、乗員が着座していると検出された座席ごとに紐づく携帯端末100を特定し、その特定結果をメモリ220に格納する。
【0028】
データ取得部215は、携帯端末100から嗜好データを取得する。
データ取得部215は、通信部211を介して、携帯端末100に接続し、携帯端末100の記憶部120に格納されている、嗜好データに関する情報を取得する。
データ取得部215は、取得した嗜好データ、嗜好データを取得した携帯端末100および着座位置を紐づけて、メモリ220に格納する。
【0029】
制御部216は、メモリ220に格納された制御プログラムに従って、車両用空調制御装置200全体の制御を行う。
制御部216は、本実施形態においては、着座位置と、その着座位置に紐づく携帯端末100から取得した嗜好データとに基づいて、着座位置ごとの空調設定を制御する。
制御部216は、図3に示した嗜好データの「設定温度」、「設定風量」、「風向」等に基づいて、座席ごとの温度、風量、風向等の設定値を決定する。
また、制御部216は、例えば、乗員が暑がりであった場合には、嗜好データの「設定風量」、「風向」に基づいて、乗員が早く涼しく感じられるような風量、風向(例えば、顔に強い風をあてる等)を決定する。
制御部216は、着座位置ごとの空調設定値を空調装置300に送信し、送信した空調設定値をメモリ220に格納する。
【0030】
制御部216は、乗員ごとの嗜好データに基づいて設定した空調設定が所定値より大きい乖離がある場合には、乖離が所定値以下となるように、着座位置ごとの空調設定を変更する。
図7を用いて、上述した空調設定の変更処理の一例について説明する。
制御部216は、車両内に存在する携帯端末100から取得した嗜好データの設定温度の温度差(乖離)を算出する。
制御部216は、例えば、設定温度の温度差(乖離)が4℃より大きい場合には、温度差(乖離)が4℃以下となるように、着座位置ごとの温度設定を変更する。
図7に示すように、運転席の設定温度と助手席の設定温度との差が6℃であった場合には、制御部216は、温度差が4℃以下になるように、運転席の設定温度と助手席の設定温度を変更する。
制御部216は、例えば、運転席の設定温度(26℃)と、助手席の設定温度(20℃)との平均温度(23℃)に対して、均等に設定温度が近づくように、運転席の設定温度と助手席の設定温度とを変更する。
具体的には、制御部216は、携帯端末100_1に紐づいた運転席の設定温度を26℃から25℃に変更し(1℃下げる変更)、携帯端末100_2に紐づいた助手席の設定温度を20℃から21℃に変更する(1℃上げる変更)。
なお、制御部216は、車両内に存在する携帯端末100が3台以上検出された場合には、嗜好データの設定温度の最高温度と最低温度との差が所定値より大きいか否かを確認し、所定値より大きい温度差が合った場合には、所定値以下になるように着座位置ごとの設定温度を変更する。
制御部216は、上述した変更処理により決定した着座位置ごとの空調設定値を空調装置300に送信し、送信した空調設定値をメモリ220に格納する。
【0031】
また、制御部216は、特定部214において着座位置に紐づく携帯端末100を特定できなかった場合には、特定部214において特定できた携帯端末100から取得した嗜好データに基づいて、携帯端末100が特定できなかった着座位置の空調設定を決定する。
図8に示すように、制御部216は、特定部214において、例えば、後部座席1の座席に紐づく携帯端末100が特定できなかった場合には、運転席に紐づいた携帯端末100_1および助手席に紐づいた携帯端末100_2から取得した嗜好データに基づいて、後部座席1の空調設定を決定する。
具体的には、制御部216は、例えば、後部座席1の温度設定を携帯端末100_1および携帯端末100_2から取得した設定温度の平均値に決定する。
【0032】
<車両用空調制御装置200の処理>
図9および図10を用いて、車両用空調制御装置200の処理について説明する。
【0033】
図9に示すように、制御部216は、車両のアクセサリ(ACC)電源がオンであるか否かを判定する(ステップS110)。
制御部216は、車両のアクセサリ(ACC)電源がオンでないと判定する場合(ステップS110の「NO」)には、処理を戻し、待機状態に移行する。
【0034】
一方で、制御部216において、車両のアクセサリ(ACC)電源がオンであると判定された場合(ステップS110の「YES」)には、着座位置検出部213は、車両の乗員の着座位置を検出し、検出結果をメモリ220に格納する(ステップS120)。
【0035】
端末位置検出部212は、車両内に存在する携帯端末100の位置を検出し、検出結果をメモリ220に格納する(ステップS130)。
【0036】
特定部214は、ステップS120において検出された乗員の着座位置と、ステップS130において検出された携帯端末100の位置とに基づいて、着座位置に紐づく携帯端末100を特定し(ステップS140)、特定結果をメモリ220に格納する。
【0037】
データ取得部215は、車両内に存在する携帯端末100から嗜好データを取得し、メモリ220に格納し(ステップS150)、処理をステップS160に移行させる。
【0038】
制御部216は、ステップS150において取得された嗜好データに基づいて、携帯端末100に紐づいた各座席の空調設定を決定し(ステップS160)、処理をステップS170に移行させる。
【0039】
制御部216は、決定した各座席の空調設定が所定値より大きい乖離があるか否かを判定する(ステップS170)。
制御部216は、決定した各座席の空調設定が所定値より大きい乖離がないと判定する場合(ステップS170の「NO」)には、処理をステップS190に移行させる。
一方で、制御部216は、決定した各座席の空調設定が所定値より大きい乖離があると判定する場合(ステップS170の「YES」)には、空調設定値の変更処理を行い(ステップS180)、処理をステップS190に移行させる。
【0040】
制御部216は、決定した各座席の空調設定を空調装置300に送信し(ステップS190)、処理を終了させる。
【0041】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係る車両用空調制御システム1は、車両の乗員が携帯する携帯端末100と、携帯端末100と通信可能な車両用空調制御装置200とを備え、携帯端末100が、乗員の空調設定の嗜好データを取得し記憶部120に記憶させる嗜好データ取得部110を備え、車両用空調制御装置200が、携帯端末100の位置を検出する端末位置検出部212と、乗員の着座位置を検出する着座位置検出部213と、携帯端末100の位置と、着座位置とに基づいて、着座位置に紐づく携帯端末100を特定する特定部214と、携帯端末100から嗜好データを取得するデータ取得部215と、着座位置と、着座位置に紐づく携帯端末100から取得した嗜好データとに基づいて、着座位置ごとの空調設定を制御する制御部216と、を備えている。
つまり、車両用空調制御装置200は、車両に乗員が乗車したとき(例えば、アクセサリ電源がオンされたとき)に、乗員が携帯する携帯端末100から乗員ごとの空調設定に関する嗜好データを取得し、携帯端末100の位置と乗員の着座位置とを紐づけ、取得した嗜好データに基づいて各座席の空調制御を実行する。
これにより、車両用空調制御システム1は、車両を限定することなく、乗員ごとの嗜好を反映した空調制御を行うことができる。
また、車両用空調制御装置200は、インターネット網に接続されたサーバに登録された乗員の嗜好データを取得するのではなく、乗員が携帯する携帯端末100から乗員の嗜好データを取得する。
これにより、例えば、車両の現在位置が、インターネット網に接続不可能なエリアであったとしても、車両用空調制御装置200は、乗員の携帯する携帯端末100から乗員の嗜好データを取得することができるため、車両の現在位置を限定することなく、乗員ごとの嗜好を反映した空調制御を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る車両用空調制御装置200の制御部216は、乗員ごとの嗜好データに基づいて設定した空調設定が所定値より大きい乖離がある場合には、乖離が所定値以下となるように、着座位置ごとの空調設定を変更する。
例えば、運転席に着座する乗員の温度設定と助手席に着座する乗員の温度設定とが、所定値より大きい温度差(乖離)があった場合には、温度差のある風が相互に干渉してしまい、双方の乗員が不快に感じてしまう場合がある。
そのため、制御部216は、双方の乗員が不快と感じ難い温度差(所定値以下)となるように、座席ごとの温度設定値を変更する。
これにより、車両用空調制御システム1は、乗員全員の嗜好データを考慮した空調制御を行うことができる。
また、座席ごとの温度設定値の乖離が大きくなると、空調装置300の送風ファン、ヒータ、コンプレッサ等において消費されるエネルギーが増加するため、例えば、電気自動車の場合には、航続可能距離が短くなり、また、エンジンを搭載した車両の場合には、燃費が悪化する。
しかしながら、制御部216は、座席ごとの温度設定の乖離が所定値より大きい場合には、各座席の温度設定値の乖離が所定値以下となるように、座席ごとの温度設定値を変更するため、航続可能距離および燃費の悪化を防止することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る車両用空調制御装置200の制御部216は、特定部214において着座位置に紐づく携帯端末100を特定できなかった場合には、特定部214において特定できた携帯端末100から取得した嗜好データに基づいて、携帯端末100が特定できなかった着座位置の空調設定を決定する。
つまり、携帯端末100を携帯しない幼児等が着座した場合には、着座位置に紐づいた携帯端末100が検出できないため、制御部216は、車両内に存在する携帯端末100から取得した嗜好データに基づいて、幼児等が着座する座席の空調設定を決定する。
これにより、車両用空調制御システム1は、携帯端末100を携帯しない乗員が乗車した場合であっても、他の乗員の嗜好データに基づいて決定した空調設定を適用することができる。
また、制御部216は、携帯端末100が検出できなかった着座位置の空調設定を、特定部214において特定できた携帯端末100から取得した嗜好データの平均値に設定する。
これにより、座席ごとの温度設定の乖離が大きくならないため、車両用空調制御システム1は、航続可能距離および燃費の悪化を防止することができる。
【0044】
<第2の実施形態>
図11から図14を用いて、本実施形態に係る車両用空調制御システム1Aについて説明する。
なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0045】
<車両用空調制御システム1Aの構成>
図11に示すように、本実施形態に係る車両用空調制御システム1は、携帯端末100A_1~100A_Mと、車両用空調制御装置200Aと、を含んで構成されている。
なお、以下では、携帯端末100A_1~100A_Mを「携帯端末100A」と総称する。
【0046】
<携帯端末100Aの構成>
図12に示すように、携帯端末100Aは、嗜好データ取得部110と、記憶部120と、通信部130と、嗜好データ更新部140と、を備えている。
【0047】
嗜好データ更新部140は、通信部130を介して、後述する車両用空調制御装置200Aから更新嗜好データを受信したときに、記憶部120に記憶されている乗員の嗜好データを受信した更新嗜好データに更新する。
【0048】
<車両用空調制御装置200Aの構成>
図13に示すように、車両用空調制御装置200Aは、プロセッサ210Aと、メモリ220と、を備えている。
【0049】
<プロセッサ210Aの構成>
プロセッサ210Aは、通信部211と、端末位置検出部212と、着座位置検出部213と、特定部214と、データ取得部215と、制御部216Aと、を含んで構成されている。
【0050】
制御部216Aは、設定した空調設定を乗員が変更し、所定時間以上、その空調設定を変更しなかった場合には、その空調設定に基づいて更新した更新嗜好データを携帯端末100Aに送信し、携帯端末100Aに記憶された嗜好データを更新嗜好データに更新する。
制御部216Aは、入力装置400から空調設定の変更操作に関する情報を受信し、その後、所定時間以上(例えば、15分以上)、その空調設定が変更されなかった場合には、変更後の空調設定が乗員の空調設定の嗜好に合致していると判定し、変更後の空調設定に基づいた更新嗜好データを携帯端末100Aに送信し、携帯端末100Aに記憶された嗜好データを更新嗜好データに更新する。
具体的には、制御部216Aは、例えば、設定温度が変更されたことを検出した場合には、携帯端末100Aから取得した嗜好データの設定温度を変更後の設定温度に更新した更新嗜好データに更新する。
また、制御部216Aは、嗜好データに基づいて、風を顔にあてない風向設定により空調制御を行ったが、風を顔にあてる風向設定に変更されたことを検出した場合には、嗜好データの風向の項目を更新した更新嗜好データに更新する。
制御部216Aは、空調設定が変更された座席に紐づく携帯端末100Aに更新嗜好データを送信する。
【0051】
<車両用空調制御システム1Aの処理>
図14を用いて、嗜好データに基づいて設定した空調設定が乗員により変更された場合の車両用空調制御システム1Aの処理について説明する。
【0052】
車両用空調制御装置200Aの制御部216Aは、乗員が空調設定の変更を行ったか否かを確認する(ステップS210)。
制御部216Aは、入力装置400から受信した情報に基づいて、乗員が空調設定の変更を行っていないと判定する(ステップS210の「NO」)には、処理を戻し、待機状態に移行させる。
一方で、制御部216Aは、入力装置400から受信した情報に基づいて、乗員が空調設定の変更を行ったと判定する(ステップS210の「YES」)には、処理をステップS220に移行させる。
【0053】
制御部216Aは、乗員が変更した空調設定を所定時間以上変更しなかったか否かを判定する(ステップS220)。
制御部216Aは、乗員が変更した空調設定を所定時間以上経過する前に変更したと判定する場合(ステップS220の「NO」)には、処理を終了させる。
一方で、制御部216Aは、乗員が変更した空調設定を所定時間以上変更しなかったと判定する場合(ステップS220の「YES」)には、変更後の空調設定に基づいた更新嗜好データを携帯端末100Aに送信する(ステップS230)。
【0054】
携帯端末100Aの嗜好データ更新部140は、記憶部120に格納されている嗜好データを受信した更新嗜好データに更新し(ステップS240)、処理を終了させる。
【0055】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係る車両用空調制御システム1Aを構成する車両用空調制御装置200Aの制御部216Aは、設定した空調設定を乗員が変更し、所定時間以上、その空調設定を変更しなかった場合には、その空調設定に基づいて更新した更新嗜好データを携帯端末100Aに送信し、携帯端末100Aに記憶された嗜好データを更新嗜好データに更新する。
つまり、制御部216Aは、乗員の嗜好データに基づいた空調設定により空調制御を行ったが、乗員がその空調設定を変更した場合には、その空調設定が乗員の嗜好と合致していない可能性が高いと判定する。
制御部216Aは、乗員が空調設定を変更した後、所定時間以上、空調設定を変更しなかった場合には、変更後の空調設定が乗員の嗜好に合致していると判定し、変更後の空調設定に基づいて更新した更新嗜好データを、空調設定が変更された着座位置に紐づく携帯端末100Aに送信し、携帯端末100Aに記憶された嗜好データを更新嗜好データに更新する。
これにより、例えば、季節の変化等により、乗員の空調設定に関する嗜好が変化した場合であっても、携帯端末100Aに記憶された嗜好データが、乗員の嗜好を反映した嗜好データに更新されるため、車両用空調制御システム1Aは、常に乗員の嗜好を反映した空調制御を行うことができる。
また、車両用空調制御システム1Aは、携帯端末100Aの記憶部120に格納された嗜好データを更新嗜好データに更新するため、車両を限定することなく、乗員ごとの嗜好を反映した空調制御を行うことができる。
【0056】
<変形例1>
上述した本実施形態に係る車両用空調制御装置200の制御部216は、着座位置に紐づいた携帯端末100に嗜好データが登録されていなかった場合には、他の携帯端末100から取得した嗜好データに基づいて、嗜好データが登録されていない携帯端末に紐づいた着座位置の空調設定を決定するようにしてもよい。
これにより、車両用空調制御システム1は、携帯端末100に嗜好データが登録されていない場合であっても、他の乗員の嗜好データに基づいて決定した空調設定を適用することができる。
また、制御部216は、嗜好データが登録されていない携帯端末100に対して、嗜好データの入力を促す表示の指示を送信するようにしてもよい。
具体的には、携帯端末100は、制御部216から嗜好データの入力を促す表示の指示を受信した場合には、携帯端末100の図示しない表示部に、例えば、「あなたの空調設定に関する嗜好データの登録をお願いします。登録をしていただければ、車両を限定することなく、あなた好みの空調設定が反映された快適な車両空間を提供します。」等の表示を行う。
これにより、乗員に対して、携帯端末100に嗜好データを登録することを促すことができ、乗員が携帯端末100に嗜好データを登録した場合には、車両用空調制御システム1は、車両を限定することなく、乗員の嗜好が反映された空調制御を行うことができる。
【0057】
なお、上述した通信部211、端末位置検出部212、着座位置検出部213、特定部214、データ取得部215、制御部216等の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをメモリに読み込ませ、実行することによって本発明の車両用空調制御装置200を実現することができる。
ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0058】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0059】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0060】
以上、この発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1;車両用空調制御システム
100;携帯端末
110;嗜好データ取得部
120;記憶部
130;通信部記憶部
140;嗜好データ更新部
200;車両用空調制御装置
210;プロセッサ
211;通信部
212;端末位置検出部
213;着座位置検出部
214;特定部
215;データ取得部
216;制御部
220;メモリ
300;空調装置
400;入力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14