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特開2024-127143画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127143
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240912BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240912BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20240912BHJP
【FI】
A61B6/00 350C
A61B6/00 330A
G06T7/00 616
G06T7/20 300Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036088
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 弘
(72)【発明者】
【氏名】山村 拓也
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA13
4C093CA18
4C093CA29
4C093DA10
4C093FF24
4C093FF28
4C093FF35
4C093FF37
4C093FG14
4C093FG16
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA25
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA12
5L096HA02
(57)【要約】
【課題】所望する解析結果をより迅速に取得可能な画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置は、被写体の放射線動態画像を構成する複数のフレーム画像を取得する取得部と、複数のフレーム画像のうち、基準フレーム画像に解析箇所を設定する設定部と、複数の追跡アルゴリズムから一の追跡アルゴリズムを選択する選択部と、解析箇所を一の追跡アルゴリズムに基づいて時間方向に追跡する追跡部と、追跡部による追跡結果を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の放射線動態画像を構成する複数のフレーム画像を取得する取得部と、
前記複数のフレーム画像のうち、基準フレーム画像に解析箇所を設定する設定部と、
複数の追跡アルゴリズムから一の追跡アルゴリズムを選択する選択部と、
前記解析箇所を前記一の追跡アルゴリズムに基づいて時間方向に追跡する追跡部と、
前記追跡部による追跡結果を出力する出力部と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記選択部は、ユーザーの選択に基づいて、前記複数の追跡アルゴリズムから前記一の追跡アルゴリズムを選択する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記解析箇所の情報に基づいて、前記複数の追跡アルゴリズムから前記一の追跡アルゴリズムを選択する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記複数のフレーム画像のフレームレートが7.5fps以下である場合、あるいは前記複数のフレーム画像の何れかにフレームアウトが発生している場合、CSRTを前記一の追跡アルゴリズムとして選択する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記複数のフレーム画像のフレーム数が200以上である場合、KCFを前記一の追跡アルゴリズムとして選択する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記選択部は、前記解析箇所が被写体のエッジのコーナーに設定されている場合、オプティカルフローベースの追跡アルゴリズムを前記一の追跡アルゴリズムとして選択する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記追跡結果を表示する表示部を備える請求項1から6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像処理装置の画像処理方法であって、
被写体の放射線動態画像を構成する複数のフレーム画像を入力する入力ステップと、
前記フレーム画像のうち、基準フレーム画像に解析箇所を設定する設定ステップと、
複数の追跡アルゴリズムから一の追跡アルゴリズムを選択する選択ステップと、
前記解析箇所を前記一の追跡アルゴリズムに基づいて時間方向に追跡する追跡ステップと、
前記追跡ステップによる追跡結果を出力する出力ステップと、を備える画像処理方法。
【請求項9】
画像処理装置のコンピューターを、
被写体の放射線動態画像を構成する複数のフレーム画像を取得する取得部、
前記複数のフレーム画像のうち、基準フレーム画像に解析箇所を設定する設定部、
複数の追跡アルゴリズムから一の追跡アルゴリズムを選択する選択部、
前記解析箇所を前記一の追跡アルゴリズムに基づいて時間方向に追跡する追跡部、
前記追跡部による追跡結果を出力する出力部、として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線撮影により生体の対象部位の動きを捉えた動態画像を取得して画像処理をする画像処理装置が知られている。当該画像処理装置は、撮影した複数のフレーム画像から設定された関心領域をトラッキングして動き推定処理をする。
【0003】
動態画像のトラッキングには、複数の解析アルゴリズムが存在する。複数の解析アルゴリズムは、それぞれ得意な内容と不得意な内容を有する。そのため、解析の対象や状況等に応じて、適宜適切な解析アルゴリズムを選択する必要がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、複数の医用画像データに複数の動き推定処理を実行し、複数の動き情報の中から、尤もらしいものを選択する画像処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-194164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明は、解析の対象や状況を考慮せず、予め定められた複数の動き推定処理を実行する。そのため、本来必要のない動き推定処理を実行することとなり、解析結果が得られるまでの時間がかかる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。その目的は、所望する解析結果をより迅速に取得可能な画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、画像処理装置であって、
被写体の放射線動態画像を構成する複数のフレーム画像を取得する取得部と、
前記複数のフレーム画像のうち、基準フレーム画像に解析箇所を設定する設定部と、
複数の追跡アルゴリズムから一の追跡アルゴリズムを選択する選択部と、
前記解析箇所を前記一の追跡アルゴリズムに基づいて時間方向に追跡する追跡部と、
前記追跡部による追跡結果を出力する出力部と、を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記選択部は、ユーザーの選択に基づいて、前記複数の追跡アルゴリズムから前記一の追跡アルゴリズムを選択する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記選択部は、前記解析箇所の情報に基づいて、前記複数の追跡アルゴリズムから前記一の追跡アルゴリズムを選択する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記選択部は、前記複数のフレーム画像のフレームレートが7.5fps以下である場合、あるいは前記複数のフレーム画像の何れかにフレームアウトが発生している場合、CSRTを前記一の追跡アルゴリズムとして選択する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記選択部は、前記複数のフレーム画像のフレーム数が200以上である場合、KCFを前記一の追跡アルゴリズムとして選択する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記選択部は、前記解析箇所が被写体のエッジのコーナーに設定されている場合、オプティカルフローベースの追跡アルゴリズムを前記一の追跡アルゴリズムとして選択する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記追跡結果を表示する表示部を備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、画像処理装置の画像処理方法であって、
被写体の放射線動態画像を構成する複数のフレーム画像を入力する入力ステップと、
前記フレーム画像のうち、基準フレーム画像に解析箇所を設定する設定ステップと、
複数の追跡アルゴリズムから一の追跡アルゴリズムを選択する選択ステップと、
前記解析箇所を前記一の追跡アルゴリズムに基づいて時間方向に追跡する追跡ステップと、
前記追跡ステップによる追跡結果を出力する出力ステップと、を備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、プログラムであって
画像処理装置のコンピューターを、
被写体の放射線動態画像を構成する複数のフレーム画像を取得する取得部、
前記複数のフレーム画像のうち、基準フレーム画像に解析箇所を設定する設定部、
複数の追跡アルゴリズムから一の追跡アルゴリズムを選択する選択部、
前記解析箇所を前記一の追跡アルゴリズムに基づいて時間方向に追跡する追跡部、
前記追跡部による追跡結果を出力する出力部、として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所望する解析結果をより迅速に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】放射線撮影システムのブロック図である。
図2】画像処理装置のブロック図である。
図3】画像処理装置による動態画像解析処理のフローチャートである。
図4】画像処理ツールの起動画面の一例を示す図である。
図5】選択した動態画像が表示された画像処理ツールの一例を示す図である。
図6】画像処理ツールの解析条件設定画面の一例を示す図である。
図7】ROIが設定されたフレーム画像の一例を示す図である。
図8】肩関節がROIに設定された場合の解析内容の一例を示す図である。
図9】椎体がROIに設定された場合の解析内容の一例を示す図である。
図10A】胸部がROIに設定された場合の解析内容の一例を示す図である。
図10B】胸部がROIに設定された場合の解析内容の一例を示す図である。
図11A】位置合わせをしていない場合の膝部の追跡結果を示す図である。
図11B】位置合わせをした場合の膝部の追跡結果を示す図である。
図12】追跡結果である追跡線が表示されたフレーム画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されない。
【0020】
[放射線撮影システムの構成]
初めに、本実施形態に係る放射線撮影システム100の概略構成について説明する。図1は放射線撮影システム100を表すブロック図である。
【0021】
本実施形態の放射線撮影システム100は、図1に示すように、放射線発生装置1と、放射線検出器2と、画像処理装置3と、サーバー4と、を備える。
これら各装置は、通信ネットワークNを介して互いに通信可能である。また、放射線撮影システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communication in Medium)規格に準ずる。そのため、各装置はDICOMに則って通信する。
【0022】
なお、放射線撮影システム100は、上位システムと接続してもよい。本発明における上位システムは、例えばHIS(Hospital Information System;病院情報システム)、RIS(Radiology Information System;放射線科情報システム)及びPACS(Picture Archiving and Communication System;画像保存通信システム)等である。
【0023】
<放射線発生装置>
放射線発生装置1は、ジェネレーター及び放射線源等を備える。ジェネレーターは、放射線発生装置1の照射指示に基づいて、管電圧、管電流及び照射時間(mAs値)等の予め設定された放射線照射条件に応じた電圧を印加する。放射線源は、ジェネレーターから電圧が印加された際に、印加された電圧に応じた線量の、例えばX線等の放射線を生成する。そして、放射線発生装置1は、撮影する動態画像に応じた態様で放射線を発生させる。
【0024】
なお、放射線発生装置1は、撮影室内に据え付けられてもよい。あるいは、放射線発生装置1は、画像処理装置3等と共に回診車で移動可能に構成されてもよい。
【0025】
<放射線検出器>
放射線検出器2は、FPD(Flat panel Display)等の半導体イメージセンサーによって構成される。放射線検出器2は、放射線検出素子、基板、走査回路、読み出し回路、制御部及び出力部等を備える。放射線検出素子は、放射線を受けることで線量に応じた電荷を発生させる。基板は、電荷の蓄積及び放出を行うスイッチ素子を備え、画素が二次元的、すなわちマトリクス状に配列されている。走査回路は、各スイッチ素子のオンとオフを切り替える。読み出し回路は、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す。制御部は、読み出し回路が読み出した複数の信号値からフレーム画像を生成する。出力部は、制御部が生成したフレーム画像のデータ等を外部へ出力する。
そして、放射線検出器2は、放射線発生装置1から放射線が照射されるタイミングと同期して、照射された放射線に応じた複数のフレーム画像からなる動態画像を生成する。
ここで、動態撮影には動画撮影が含まれるが、動画を表示しながら静止画を撮影するものは含まれない。また、動態画像には動画が含まれるが、動画を表示しながら静止画を撮影して得られた画像は含まれない。
【0026】
上記においては、放射線検出器2がいわゆる直接型である場合を例示したが、これに限られない。すなわち、放射線検出器2は、いわゆる間接型でもよい。間接型の放射線検出器2は、照射された放射線を可視光等の他の波長の光に変換するシンチレーター等を内蔵する。間接型の放射線検出器2は、当該シンチレーターで変換した光に応じた電荷を発生させる。
また、放射線検出器2は、撮影台と一体化された専用機型のものでも、可搬型、特にカセッテ型のものでもよい。
【0027】
<画像処理装置>
画像処理装置3は、PC(Personal Computer)や専用の装置等で構成されている。画像処理装置3は、放射線検出器2から取得した複数のフレーム画像に動態画像解析処理を実行する。画像処理装置3の詳細については後述する。
【0028】
なお、画像処理装置3は、各種撮影条件を、放射線発生装置1や放射線検出器2等に設定可能なコンソールであってもよい。各種撮影条件とは、例えば管電圧、管電流、照射時間(mAs値)、フレームレート、被写体の体格及びグリッドの有無等である。そして、各種撮影条件の設定は、HISやRIS等の他のシステムから取得した撮影オーダー情報や、ユーザーによる操作に基づく。
【0029】
<サーバー>
サーバー4は、PCや専用の装置、あるいはクラウド上の仮想サーバー等で構成される。サーバー4は、DB(Database)41を有する。DB41は、放射線検出器2が生成した放射線動態画像や、画像処理装置3の処理結果の蓄積が可能である。
【0030】
なお、本実施形態においては、画像処理装置3等から独立したサーバー4にDB41を設ける場合を例示したが、これに限られない。DB41は、画像処理装置3内に設けてもよい。また、DB41は、放射線撮影システム100が備える他の装置内に設けてもよい。
また、例えば放射線撮影システム100にPACS等の他のシステムが接続される場合、DB41は、当該他のシステム内に設けてもよい。
【0031】
放射線撮影システム100において、放射線発生装置1の放射線源と放射線検出器2は、間に被写体を挟むように対向配置される。そして、放射線源から被写体に放射線照射をすると、被写体を放射線撮影できる。
【0032】
本実施形態に係る放射線撮影システム100は、1回の撮影操作で、放射線源から、短時間で複数回(例えば15回/1秒)パルス状の放射線を照射する動作を繰り返す。そして、放射線検出器2は、当該照射に応じて短時間で複数回動態画像生成を繰り返して、被写体の動態画像を生成する。
【0033】
[画像処理装置の構成]
次に、放射線撮影システム100が備える画像処理装置3の具体的構成について説明する。図2は画像処理装置3を表すブロック図である。
【0034】
本実施形態に係る画像処理装置3は、図2に示すように、制御部31、通信部32、記憶部33、表示部34及び操作部35等を備える。これらの各部は、バス等で電気的に接続される。
【0035】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読み出してRAM内に展開する。そして、CPUは、RAMに展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、画像処理装置3の各部の動作を集中制御する。
【0036】
通信部32は、通信モジュール等で構成される。画像処理装置3と他の装置は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)あるいはインターネット等の通信ネットワークNを介して接続される。通信部32は、通信ネットワークNを介して接続された他の装置との間で各種信号や各種データを送受信する。
【0037】
記憶部33は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部33は、制御部31が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶する。記憶部33は、後述する動態画像解析処理を実行する画像処理ツールに係る各種プログラムを記憶する。記憶部33は、動態画像を記憶可能であっていてもよい。
【0038】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等で構成される。また、表示部34は、制御部31から入力される制御信号に基づいて、放射線動態画像や計測結果等を表示する。
【0039】
操作部35は、各種機能キーを備えたキーボード、マウス等のポインティングデバイス及び表示装置の表面に積層されたタッチパネル等で構成される。
操作部35は、ユーザーの操作に応じた制御信号を、制御部31へ出力する。
【0040】
なお、画像処理装置3に、表示部や操作部を備えるタブレット端末等の表示装置を接続してもよい。当該表示装置を画像処理装置3に接続した場合、画像処理装置3に表示部34や操作部35を設けずともよい。
【0041】
[動態画像解析処理]
画像処理装置3の制御部31は、所定条件が成立したことを契機として、図3に示すような動態画像解析処理を実行する。所定条件とは、例えば画像処理装置3の電源の起動、操作部35への所定操作、あるいは画像処理装置3が動態画像のデータや制御信号を取得したこと等を含む。
【0042】
図4は、本実施形態に係る画像処理ツールの起動画面の一例を示す。
制御部31は、初めに画像取得処理を実行する(ステップS101)。画像取得処理では、通信部32を介して他の装置から動態画像を受信する。他の装置とは、放射線検出器2やPACS等である。なお、動態画像を受信する際には、個々のフレーム画像を順次取得してもよいが、全フレーム画像をまとめて取得するのが好ましい。
制御部31は、上記したような画像取得処理を実行することにより、取得部として機能する。
【0043】
なお、通信部32を介さず、記憶媒体に記憶させた動態画像を読み込むことで、画像取得処理を実行してもよい。また、動態画像解析処理の開始が、他の装置から動態画像のデータを取得したことを契機とする場合、当該画像取得処理は不要である。
【0044】
ユーザーは、制御部31が画像取得処理で取得した動態画像から、一の動態画像を選択する(ステップS102)。
【0045】
一の動態画像が選択されると、制御部31は、図5に示すように、選択された動態画像を表示部34に表示させる(ステップS103)。
【0046】
ユーザーは、選択した一の動態画像の解析条件を選択する(ステップS104)。
図6は動態画像の解析条件設定画面の一例を示す。図6に示すように、本ステップにおいては、例えばいずれの追跡アルゴリズムを使用するかの選択が可能である。
制御部31は、このように、いずれの追跡アルゴリズムを使用するかという選択を受け付ける選択処理を実行することにより、選択部として機能する。
【0047】
なお、ステップS104においては、選択した追跡アルゴリズムにおいて変更可能なパラメーターの設定も可能である。ステップS104で選択可能なパラメーターは、例えばfilter_lr、template_size、maxLevel等である。このように、解析対象に最適なパラメーターをユーザーが設定することで、より高精度な解析が可能となる。
【0048】
解析条件の設定後、図7に示すように、ユーザーは動態画像を構成する一のフレーム画像上に少なくとも1つの解析箇所であるROI(Region Of Interest)aを設定する(ステップS105)。
制御部31は、このように、フレーム画像上にROIaを設定する設定処理を実行することにより、設定部として機能する。また、以下においては、一の動態画像においてROIaを設定したフレーム画像を基準フレーム画像Fとする。
【0049】
なお、図7においては、基準フレーム画像Fが、複数のフレーム画像のうち先頭のフレーム画像である場合を例示しているが、これに限られない。基準フレーム画像Fは、一の動態画像のいずれのフレーム画像であってもよい。このように、所望のフレーム画像でROIaを設定可能とすることで、ユーザーがより容易にROIaを設定可能となる。
【0050】
基準フレーム画像Fにおいて、ROIaは少なくとも1つ設定すればよく、複数設定してもよい。例えば基準フレーム画像Fに2つのROIaを設定した場合、両点の動きを独立に追跡しても、両点の距離を取得してもよい。また、例えば基準フレーム画像Fに3つのROIaを設定した場合、3点からなる2つの線分の角度を取得してもよい。また、例えば基準フレーム画像Fに4つのROIaを設定した場合、2つの線分の距離や角度を取得してもよい。特に、対象部位の回旋(ねじれ)や横ずれ(角度変化)を把握したい場合、基準フレーム画像FにROIaを複数設定すると、計測精度が向上する。
【0051】
また、上記においては、ユーザーが手動でROIaを設定する場合を例示したが、これに限られない。例えば、「右横隔膜頂点」など、所定の部位をROIaに設定するキーを設けてもよい。ユーザーが当該キーを操作した場合、制御部31がフレーム画像から自動的に当該所定の部位を検出し、ROIaに設定する。そして、制御部31は、当該所定の部位に応じた解析を実行する。
【0052】
例えば、当該所定の部位が肩関節である場合、制御部31は、選択した一の動態画像の各フレーム画像において、肩甲骨及び上腕骨を検出する。そして、図8に示すように、制御部31は、垂直線tと、肩甲骨並びに上腕骨がそれぞれなす角度を自動的に解析する。
【0053】
また、当該所定の部位が頸椎や腰椎等の椎体である場合、制御部31は、選択した一の動態画像の各フレーム画像において、椎体を検出する。そして、図9に示すように、制御部31は、各椎骨の四隅又は中心の位置を自動的に解析する。なお、後述するステップS109において、椎体の動態解析結果を出力する場合、最下端のC7骨の位置で規格化した解析結果を制御部31に出力させるのが好ましい。
【0054】
あるいは、当該所定の部位が肋骨等の胸部である場合、制御部31は、選択した一の動態画像の各フレーム画像において、肋骨を検出する。また、制御部31は、最大吸気位ないし最大呼気位のフレーム画像を基準フレーム画像Fと設定する。そして、基準フレーム画像Fにおける肋骨を基準として、他の各フレーム画像における肋骨の位置、距離及び角度の変化量を取得する。なお、ここで「距離」は、例えば図10Aに示すように、各肋骨を3等分する4点のうち、基部の2点を繋ぐ線分あるいは端部の点からその下の肋骨に垂直に降ろした線分の長さである。また、「角度」は、例えば図10Bに示すように、両端の点と、基部の2点の中点の3点がなす角度である。
【0055】
上記したように、ユーザーの指示に応じて制御部31が解析箇所を検出して、ROIaを設定すると、ユーザーがROIaを設定するよりも高精度かつ高速に再現性の高い解析結果を得られる。
【0056】
図3に戻って、ROIa並びに基準フレーム画像Fの設定後、制御部31は、設定したROIaを時間方向に追跡する(ステップS106)。
制御部31は、このように、ROIaを追跡する追跡処理を実行することにより、追跡部として機能する。
【0057】
基準フレーム画像Fに設定したROIaを他のフレーム画像で追跡する方法としては、例えばテンプレートマッチングが挙げられる。テンプレートマッチングにおいて、制御部31は、基準フレーム画像Fに設定したROIaの画像領域をテンプレート画像とする。そして、制御部31は、基準フレーム画像Fにおいて設定したROIaと同じ箇所を、他のフレーム画像において時間方向に追跡する。
【0058】
ROIaの追跡方法はテンプレートマッチングに限定されない。本発明において、ユーザーは、CSRT(Channel and Spatial Reliability Tracking)、Dasiam、MOSSE(Minimum Output Sum of Squared Error)、KCF(Kernelized Correlation Filter)、Boosting、MIL(Multiple Instance Learning)、GOTURN、Median-Flow、Lucas-Kanade、RLOF及びDeepFlow等、適宜公知の追跡アルゴリズムを選択可能である。
【0059】
なお、制御部31は、複数のフレーム画像における追跡位置結果をもとに、特定のフレーム画像の追跡位置を補正してもよい。例えば、特定のフレーム画像で追跡位置が大きくズレた場合、制御部31は、隣接フレーム画像の追跡位置情報を元に、その追跡位置を補正してもよい。
【0060】
また、制御部31は、ROIaに応じて固定部位を設定するようにしてもよい。例えば、膝の動きを測定するために被験者が膝を動かしても、膝だけでなく足全体が動いてしまい、脚の動きがノイズとなることがある。そこで、ROIaを膝に設定している場合、制御部31は、大腿骨を固定部位として設定する。そして、制御部31は、固定部位である大腿骨は動きが無いものとして、各フレーム画像における大腿骨のブレを補正する。このように、制御部31が、被写体のうちROIa以外の不要な部分のブレを補正することで、本来求めたいROIaの解析結果が好適に得られる。
なお、このようなROIaに応じた固定部位の自動設定の有無は、例えばステップS104における解析条件の設定時等に変更可能であるのが好ましい。
【0061】
あるいは、例えば、膝の動きを測定するために動態画像を撮影したとしても、関節の中心の回動軸が動いてしまうと、図11Aに示すように、視点が安定しなくなり得る。そこで、図11Bに示すように、制御部31は、一の動態画像における追跡結果に基づいて、各フレーム画像を位置合わせするようにしてもよい。このようにすることで、ユーザーが解析結果を視認する際に表示サイズを調整する煩雑さを低減させられる。
【0062】
また、上記したように、ROIaを設定する基準フレーム画像Fは、動態画像におけるいずれのフレーム画像であってよい。そのため、ステップS106における「時間方向」の追跡は、順方向に限られない。例えば基準フレーム画像Fが最後のフレーム画像である場合は、逆方向の追跡でもよい。また、基準フレーム画像Fが先頭のフレーム画像でも最後のフレーム画像でもない場合、順方向あるいは逆方向のいずれかのみに限られず、両方向の追跡でもよい。
【0063】
ROIaの追跡が完了した制御部31は、図12に示すように、追跡結果として、全ての追跡線を動態画像と重ねた画像を表示部34に出力する(ステップS107)。例えば、ROIaが矩形である場合、制御部31は、例えば中心点の軌跡を表示させる。このように、追跡線を動態画像と重ねながら表示させることで、動態画像のみをユーザーが視認した場合の見落としを防止できる。また、ユーザーが解析結果を迅速に確認でき、診断効率を上昇させられる。
制御部31は、このように、追跡結果を出力することにより、出力部として機能する。
【0064】
なお、ステップS107において、追跡線は、ユーザーの操作により、任意に表示と非表示を切り替え可能であってよい。
【0065】
また、動態画像の撮影倍率と被写体の動きによっては、ROIaがフレームアウトしてしまい、ユーザーが解析結果を視認できなくなることがある。そこで、制御部31は、解析結果に応じて、少なくとも全ての解析線が表示部34内に収まるように、解析結果の表示倍率を低下させるようにしてもよい。
【0066】
表示部34に追跡結果を出力した制御部31は、当該追跡結果の外部出力を受け付けたか否かを判定する(ステップS108)。制御部31は、追跡結果の外部出力を受け付けた場合(ステップS108;Yes)、表示部34に追跡結果を外部出力する(ステップS109)。
【0067】
ステップS109における、制御部31による追跡結果の外部出力形式は、任意の形式としてよい。例えば、制御部31は、CSV(Comma-Separated Values)データとして、各フレーム画像における追跡点の座標をファイル出力できる。
あるいは、制御部31は、例えばグラフとして追跡結果を外部出力できる。外部出力するグラフは、例えば横軸は時間、縦軸は2点間の距離であるグラフや、横軸はフレーム番号、縦軸は3点がなす角度であるグラフ等である。このように、解析結果をグラフ表示させることで、ユーザーは整理された解析結果を迅速に視覚的に確認できる。結果、ユーザーの診断効率が上昇する。
【0068】
このような外部出力データは、動態画像と共に本画像処理ツールで読み取ることで、再度追跡結果が重ねられた動態画像を表示部34に表示できる。そのため、再解析をせずとも、必要に応じて動態画像の解析結果を表示可能となり、診断効率を向上させられる。また、解析結果を含む動態画像を解析前の動態画像と別に保存しておく必要が無いため、放射線撮影システム100のデータ容量を削減できる。
【0069】
なお、追跡結果の外部出力先は表示部34に限られず、他の外部装置であってもよい。特に、PACSへの出力が可能であってよい。
【0070】
追跡結果の外部出力を受け付けなかった場合(ステップS108;No)、あるいは追跡結果の外部出力後、制御部31は、動態画像解析処理を終了する。
【0071】
[実施形態の効果]
以上に示すように、本実施形態に係る画像処理装置3は、被写体の放射線動態画像を構成する複数のフレーム画像を取得する取得部を備える。また、本実施形態に係る画像処理装置3は、フレーム画像のうち、基準フレーム画像Fに解析箇所を設定する設定部を備える。また、本実施形態に係る画像処理装置3は、複数の追跡アルゴリズムから一の追跡アルゴリズムを選択する選択部を備える。また、本実施形態に係る画像処理装置3は、解析箇所を一の追跡アルゴリズムに基づいて時間方向に追跡する追跡部を備える。また、本実施形態に係る画像処理装置3は、追跡部による追跡結果を出力する出力部を備える。
当該構成によれば、複数の解析アルゴリズムから解析対象に応じた適切な解析アルゴリズムを選択できる。
【0072】
[その他の構成]
なお、上記においては、ステップS104において、ユーザーが一の動態画像の解析条件を設定するものとしたが、これに限られない。制御部31が、一の動態画像に適切な追跡アルゴリズムを選択する、選択手段として機能する構成としてもよい。上記においては、解析条件を設定するステップS104の後に、ROIaを設定するステップS105を実行するとしたが、本構成においては、先にユーザーがROIaを設定する。そして、制御部31は、当該設定されたROIaの情報から、適切な追跡アルゴリズムを選択する。
【0073】
ROIaの情報には、例えば、ROIaがエッジ部分であるか、コーナーであるか、あるいはいずれでもないかという形状に係る情報を含む。また、ROIaの情報には、SN比(Signal to Noise ratio)に係る情報を含む。また、ROIaの情報には、ROIaが点、多角形あるいは矩形であるかという、ROIaの形状に係る情報を含む。また、ROIaの情報には、骨等の構造物の有無、部位、フレームレート、総フレーム数、画素サイズ、被写体及び被写体の動きといった、画像の情報を含む。
【0074】
上記したROIaの情報のうち、いずれを元に制御部31が追跡アルゴリズムを選択するかは、適宜任意に設定可能である。制御部31は、例えばフレームレートが7.5fps以下である場合、CSRTを追跡アルゴリズムとして選択する。また、制御部31は、例えば一の動態画像において被写体の動きが大きく、フレームからフレームアウトする場合にも、CSRTを追跡アルゴリズムとして選択する。
【0075】
また、制御部31は、例えば一の動態画像を構成するフレーム画像の数が200枚以上である場合、KCFを追跡アルゴリズムとして選択する。また、制御部31は、例えば各フレーム画像間での物体動きが小さい場合にも、KCFを追跡アルゴリズムとして選択する。
【0076】
また、制御部31は、例えば一の動態画像において、解析箇所が被写体のエッジのコーナーに設定され、当該解析箇所を追跡する場合、Lucas-KanadeやDeepFlowなどオプティカルフローベースの追跡アルゴリズムを選択する。
【0077】
また、所望の解析結果が得られなかった場合、ユーザーの指示に応じて再解析可能としてもよい。制御部31は、例えばステップS107とステップS108の間で、ユーザーの再解析指示を受け付ける。ユーザーから再解析指示を受け付けた場合、制御部31は、ユーザーの指示に応じて基準フレーム画像F及びROIa等を変更した上で、ステップS106に遷移して、再度画像特徴を追跡する。
当該構成とすることで、より正確な結果を解析結果として利用でき、診断効率を向上させられる。
【0078】
なお、上記においては、ユーザーの指示に応じて基準フレーム画像F及びROIa等を変更するとしたが、制御部31が自動で変更してもよい。また、制御部31は、再解析を受け付けた場合、その結果を次回以降の自動解析に反映させる学習機能を有する学習部として機能してもよい。
【0079】
また、制御部31は、外部の動画解析ワークステーションとの接続を検知した場合、当該動画解析ワークステーション内の動態画像をリスト化して表示部34に表示してよい。そして、ユーザーが当該リストから一の動態画像を選択した場合、制御部31は、本実施形態に係る画像処理ツールの各機能により動態画像解析処理をするようにしてもよい。当該構成とすることで、画像処理装置3に動態画像をコピーしたり、動画解析ワークステーションに画像処理ツールをインストールしたりする必要が無い。すなわち、簡便に動態画像の解析が可能となる。
【0080】
また、制御部31は、ユーザーが選択した複数の解析画像を任意の割合でブレンドした、ブレンド画像を生成可能であってもよい。当該構成とすることで、ユーザーは2つの解析画像を1つの表示部34で視認することができる。そして、ユーザーは異なる複数の解析方法から得られる情報に基づいて、総合的に診断を下すことができる。
なお、ブレンド画像は2つの解析画像からなるものに限られず、3つ以上の解析画像からなるものであってもよい。
【0081】
以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体として不揮発性の半導体メモリーやハードディスクを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、揮発性メモリーのROM(Read Only Memory)や、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0082】
3 画像処理装置
31 制御部(取得部、設定部、選択部、追跡部、出力部)
34 表示部
F 基準フレーム画像
a ROI(解析箇所)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12