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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127153
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/348 20060101AFI20240912BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240912BHJP
   F16F 9/508 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F16F9/348
F16F9/32 L
F16F9/508
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036104
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】五味 瞭汰
(72)【発明者】
【氏名】小林 義史
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕紀
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA53
3J069CC13
3J069EE25
3J069EE28
3J069EE64
(57)【要約】
【課題】リーフバルブの疲労を抑制しつつチェックバルブとして機能できる減衰バルブおよび車両における乗心地を向上できる緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の減衰バルブEV,CVは、固定端と自由端とを有する環状の弁体21,27と、環状であって弁体21,27の自由端側の周面に対向する環状の対向座部20b,26bと対向座部20b,26bよりも弁体21,27の固定端側に設けられたポート20c,26dとを有する弁座部材20,26と、弁体21,27或いは弁座部材20,26に設けられて弁体21,27と対向座部20b,26bとが正対する状態で弁体21,27の弁座部材側と反弁座部材側とを連通するオリフィスO1,O2とを備えている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周或いは外周の一方が固定端とされ内周或いは外周の他方が自由端として前記固定端に対する前記自由端の撓みが許容される環状の弁体と、
環状であって、前記弁体の自由端側の周面の少なくとも一部に対向する環状の対向座部と、径方向で前記対向座部よりも前記弁体の固定端側に設けられたポートとを有する弁座部材と、
前記弁体或いは前記弁座部材に設けられて前記弁体と前記対向座部とが正対する状態で前記弁体の弁座部材側と反弁座部材側とを連通するオリフィスとを備えた
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記弁座部材は、
前記対向座部と前記ポートとの間に設けられて前記弁体に軸方向で対向して前記弁体が離着座可能な環状弁座を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記弁体は、
環状であって自由端の周面を前記対向座部に正対させるとともに軸方向に貫通する孔を有して前記環状弁座に離着座可能な第1リーフバルブと、
環状であって前記第1リーフバルブの反弁座部材側に積層されるとともに自由端から開口して前記孔に連通される切欠を有する第2リーフバルブと、
環状であって前記第2リーフバルブの反弁座部材側に積層される第3リーフバルブとを有し、
前記オリフィスは、前記切欠によって形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記弁体は、
環状であって自由端の周面を前記対向座部に正対させるとともに自由端から開口する切欠を有し、
前記オリフィスは前記切欠によって形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
前記弁座部材は、前記対向座部に形成される溝を有し、
前記オリフィスは、前記溝によって形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項6】
アウターチューブと、前記アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、前記アウターチューブに対する前記ロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられた請求項1から5のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、車両における乗心地を向上する目的で、車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、伸縮時に発揮する減衰力で車体および車輪の振動を抑制する。
【0003】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内の圧側室の下方に気室を区画するフリーピストンと、ピストンに設けられて伸側室と圧側室とを連通する減衰通路と、減衰通路に設けた減衰バルブとを備えている。
【0004】
近年、車両用の緩衝器には、車両における乗心地の向上のため、伸縮速度が低速よりも低い微低速域では減衰係数を高くし減衰力を伸縮の行程の切り換わりに対して速やかに立ち上げ、低速域では減衰係数を微低速域よりも小さくし、さらに、低速を超える中高速域では伸縮速度に比例するが低速域よりも減衰係数が小さくさせる減衰力特性の発揮が要望されている。
【0005】
このような要望に応えるために、減衰バルブは、環状であって内周側が固定されて外周側の撓みが許容されるリーフバルブと、環状であってリーフバルブの外周に非接触で対向する環状の対向座部と対向座部の内周側にポートとを有する弁座部材を備えており、伸側室と圧側室とを行き交う作動油の流れに抵抗を与える。
【0006】
このように構成された減衰バルブでは、緩衝器の伸縮速度が微低速域にある場合、リーフバルブが然程撓まず対向座部との間の流路面積を極小さくするように制限するので、伸縮速度に応じて急激に立ち上がる減衰力特性が得られ、車両に適する減衰力特性を実現できる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-183918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の減衰バルブでは、リーフバルブが撓まずに対向座部と径方向で正対する状態となるとリーフバルブと対向座部との間の隙間が非常に狭くなって、当該隙間を作動油が通過しがたくなるため、緩衝器の伸縮速度が微低速域にある場合、減衰力が急激に立ち上がる特性となるが、リーフバルブの撓み剛性を高くすると減衰力が過剰となる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、減衰力が過剰となるのを防止できる減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の減衰バルブは、内周が固定端とされ外周が自由端として固定端に対する自由端の撓みが許容される環状の弁体と、環状であって弁体の自由端側の周面の少なくとも一部に対向する環状の対向座部と、径方向で対向座部よりも弁体の固定端側に設けられたポートとを有する弁座部材と、弁体に設けられて弁体と対向座部とが正対する状態で弁体の弁座部材側と反弁座部材側とを連通するオリフィスとを備えている。
【0011】
このように構成された減衰バルブによれば、弁体の自由端と対向座部とが正対していても、弁体と対向座部との間の隙間以外にも液体がオリフィスを通過し得る。よって、減衰バルブによれば、弁体の撓み剛性を高く設定しても緩衝器の伸縮速度が微低速域にある場合の減衰力が過剰とならずに済む。
【0012】
また、減衰バルブにおける弁座部材は、対向座部とポートとの間に設けられて弁体に軸方向で対向して弁体が離着座可能な環状弁座を備えてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、ポートを一方側へ通過しようとする液体の流れに対しては減衰バルブとして機能し、ポートを他方側へ通過しようとする液体の流れに対してはチェックバルブとして機能できる。
【0013】
さらに、減衰バルブにおける弁体は、環状であって自由端の周面である外周を対向座部に正対させるとともに軸方向に貫通する孔を有して環状弁座に離着座可能な第1リーフバルブと、環状であって第1リーフバルブの反弁座部材側に積層されるとともに自由端である外周から開口して孔に連通される切欠を有する第2リーフバルブと、環状であって第2リーフバルブの反弁座部材側に積層される第3リーフバルブとを備え、オリフィスが切欠によって形成されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、弁体が弁座部材20から離間するように反弁座部材側へ撓む際には減衰バルブとして機能するとともに、弁体が弁座部材側へ撓んで環状弁座に着座すると第3リーフバルブの自由端が対向座部に正対して第3リーフバルブと対向座部との間の隙間を極小さくして、当該隙間の液体の通過をし難くできるので、チェックバルブとして機能する際にオリフィスを備えていてもポートを略閉鎖できる。
【0014】
また、減衰バルブにおける弁体は、環状であって自由端である外周の周面を対向座部に正対させるとともに自由端である外周から開口する切欠を備え、オリフィスが切欠によって形成されていてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、弁体の自由端にオリフィスを形成する切欠を設置するのみで足りるのでオリフィスの設置が容易となる。
【0015】
さらに、減衰バルブにおけるオリフィスは、弁座部材における環状座部に設けた溝で形成されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、対向座部にオリフィスを形成する溝を設置するのみで足りるのでオリフィスの設置が容易となる。
【0016】
さらに、本発明の緩衝器は、アウターチューブと、アウターチューブ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、アウターチューブに対するロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、作動室間に設けられた減衰バルブを備えている。このように構成された緩衝器では、伸縮速度が微低速域における減衰力が過剰となるのを抑制でき、車両における乗心地を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の減衰バルブによれば、減衰力が過剰となるのを防止でき、本発明の緩衝器によれば、車両における乗心地を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態の減衰バルブが適用された緩衝器の縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態の減衰バルブが適用された緩衝器の一部拡大断面図である。
図3図3(A)は、本発明の一実施の形態の減衰バルブの弁体の構成する第1リーフバルブの平面図である。図3(B)は、本発明の一実施の形態の減衰バルブの弁体の構成する第2リーフバルブの平面図である。図3(C)は、本発明の一実施の形態の減衰バルブの弁体の構成する第3リーフバルブの平面図である。
図4】本発明の一実施の形態の減衰バルブが適用された緩衝器の減衰力特性を示した図である。
図5】本発明の一実施の形態の第1変形例における減衰バルブの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、アウターチューブとしてのシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられる二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2との間に設けられた減衰バルブとしての伸側サブバルブEVと圧側サブバルブCVとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0020】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、緩衝器本体Aは、アウターチューブとしての有底筒状のシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されてシリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3とを備えている。
【0021】
そして、ロッド2の図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の一方に連結される。また、シリンダ1の底部1aにもブラケット(図示せず)が設けられており、シリンダ1が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の他方に連結される。
【0022】
このようにして緩衝器Dは車体と車輪との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ロッド2がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン3がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
【0023】
また、緩衝器本体Aは、シリンダ1の上端を塞ぐとともに、内周にロッド2が摺動自在に挿通される環状のロッドガイド10を備えている。よって、シリンダ1内は、密閉空間とされている。そして、そのシリンダ1内のピストン3から見てロッド2とは反対側に、フリーピストン11が摺動自在に挿入されている。
【0024】
シリンダ1内におけるフリーピストン11の上側には液室Lが形成され、下側には気室Gが形成されている。さらに、液室Lは、ピストン3でロッド2側の伸側室R1とピストン3側の圧側室R2とに区画されており、伸側室R1と圧側室R2には、それぞれ液体が充填されている。なお、緩衝器本体A内に充填される液体は、作動油や水、水溶液、その他の液体等とされてもよい。その一方、気室Gには、エア、または窒素ガス等の気体が圧縮された状態で封入されている。
【0025】
そして、緩衝器Dの伸長作動時にロッド2がシリンダ1から退出し、その退出したロッド2の体積分シリンダ内容積が増加すると、フリーピストン11がシリンダ1内を上側へ移動して気室Gを拡大させる。反対に、緩衝器Dの収縮作動時にロッド2がシリンダ1内へ侵入し、その侵入したロッド2の体積分シリンダ内容積が減少すると、フリーピストン11がシリンダ1内を下側へ移動して気室Gを縮小させる。
【0026】
なお、フリーピストン11に替えて、ブラダ、またはベローズ等を利用して液室Lと気室Gとを仕切っていてもよく、この仕切となる可動隔壁の構成は適宜変更できる。
【0027】
さらに、本実施の形態では、緩衝器Dが片ロッド、単筒型の緩衝器であり、緩衝器Dの伸縮時にフリーピストン11で気室Gを拡大または縮小させて、シリンダ1に出入りするロッド2の体積補償をする。しかし、この体積補償のための構成も適宜変更できる。
【0028】
たとえば、フリーピストン11と気室Gとを廃してシリンダ1の外周にアウターチューブを設け、シリンダ1とアウターチューブとの間に液体を貯留するリザーバを形成して、緩衝器を複筒型の緩衝器にする場合、リザーバによってシリンダ1に出入りするロッド2の体積補償をしてもよい。なお、リザーバは、シリンダ1とは別置き型のタンク内に形成されていてもよい。また、緩衝器Dは、ロッド2の中央にピストン3が装着されてシリンダ1の両端からロッド2の端部がシリンダ1外に突出する両ロッド型の緩衝器として構成されてもよい。
【0029】
ロッド2は、筒状であって先端側の外径が縮径されており、先端側の最小径の小径部2aと、小径部2aより外径が大きく小径部2aの図2中上側に設けられた大径部2bと、小径部2aと大径部2bとの境に設けられた段部2c、小径部2aの先端外周に設けられた螺子部2dと、小径部2aの螺子部2dよりも図2中上方に互いにずれた位置に設けられて小径部2aの内外を連通する4つの透孔2e,2f,2g,2hとを備えている。
【0030】
ロッド2の小径部2aには、伸側サブバルブEVにおける弁座部材20、弁体21、間座22およびバルブストッパ23と、スペーサ24と、仕切部材25と、圧側サブバルブCVにおける弁座部材26、弁体27、間座28およびバルブストッパ29と、メインバルブストッパ6と、圧側メインバルブ5と、ピストン3と、伸側メインバルブ4とが順番に組み付けられ、小径部2aの先端の螺子部2dに螺着されるピストンナット33によって固定される。
【0031】
ピストン3は、図1および図2に示すように、環状であってロッド2の小径部2aの外周に固定されてシリンダ1の内周に摺接しており、シリンダ1内を図1中上方側の伸側室R1と図1中下方側の圧側室R2とに区画している。また、ピストン3には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路3aと圧側通路3bとが設けられている。
【0032】
ピストン3の図2中下端には、環状であってロッド2の小径部2aの外周に嵌合されて伸側通路3aを開閉する伸側メインバルブ4が積層されている。伸側メインバルブ4は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周側がロッド2の小径部2aに固定されて外周側の撓みが許容されている。そして、伸側メインバルブ4は、ピストン3の下端に着座する状態では伸側通路3aの下端の出口端を閉塞し、外周側を撓ませてピストン3から離間させると伸側通路3aを開放するとともに伸側通路3aを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。なお、伸側メインバルブ4は、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに対してはピストン3に着座して伸側通路3aを閉塞する。
【0033】
ピストン3の図2中上端には、環状であってロッド2の小径部2aの外周に嵌合されて圧側通路3bを開閉する圧側メインバルブ5が積層されている。圧側メインバルブ5は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周側がロッド2の小径部2aに固定されて外周側の撓みが許容されている。そして、圧側メインバルブ5は、ピストン3の上端に着座する状態では圧側通路3bの上端の出口端を閉塞し、外周側を撓ませてピストン3から離間させると圧側通路3bを開放するとともに圧側通路3bを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。なお、圧側メインバルブ5は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対してはピストン3に着座して圧側通路3bを閉塞する。また、圧側メインバルブ5の図2中上方にはメインバルブストッパ6が積層されている。メインバルブストッパ6は、圧側メインバルブ5が大きく撓むと圧側メインバルブ5の反ピストン側に当接して圧側メインバルブ5を支持して圧側メインバルブ5に過大な応力が作用するのを阻止して圧側メインバルブ5を保護する。
【0034】
減衰バルブとしての伸側サブバルブEVは、本実施の形態では、図2に示すように、弁座部材20と、弁体21と、弁体21に設けたオリフィスO1とを備えている。弁座部材20は、環状であって、小径部2aの外周に嵌合する孔開き円盤状の隔壁体20aと、隔壁体20aの図2中下端の外周から下方へ向けて突出する環状の対向座部20bと、隔壁体20aの図2中下端の対向座部20bよりも内周側であって同一円周上に設けられる複数のポート20cと、隔壁体20aの図2中下端であって各ポート20cの出口端に連通される環状の凹部でなる窓20dと、隔壁体20aの図2中下端であって対向座部20bとポート20cとの間から下方へ向けて突出するように設けられた環状弁座20eと、窓20dの内周部に設けられた環状の内周座部20fとを備えている。
【0035】
対向座部20bは、隔壁体20aに対して隙間を空けて環状弁座20eの外周を取り囲んでおり、環状弁座20eの下端よりも下方側へ向けて突出している。つまり、対向座部20bの高さが隔壁体20aから見て環状弁座20eよりも高く、対向座部20bと環状弁座20eとの高低差は少なくとも後述する弁体21の軸方向の厚さよりも高くなっている。また、本実施の形態の場合、弁体21の内周が固定端で外周が自由端とされているので、弁座部材20における対向座部20bに対して環状弁座20eが径方向で弁体21の固定端側となる内周側に設けられている。また、内周座部20fの図2中下端面となる座面の高さは、環状弁座20eの図2中下端面となる座面の高さよりも高く、対向座部20bよりも低くなっている。
【0036】
なお、本実施の形態では、隔壁体20aに対して対向座部20bと環状弁座20eとが軸方向へ突出しており、対向座部20bと環状弁座20eとの間に環状の凹部が形成されているが、弁体21の内周側が固定端とされている場合、対向座部20bの内周側に環状弁座20eが設けられており、対向座部20bの高さが環状弁座20eよりも前述のように高くなっていれば、対向座部20bと環状弁座20eとが間に環状凹部を持たずに一体となって隔壁体20aから軸方向へ突出するように設けられてもよい。
【0037】
弁体21は、図2に示すように、内周側が小径部2aに固定されて固定端とされて撓みが許容される外周側が自由端とされる3枚のリーフバルブ21a,21b,21cで構成されており、弁座部材20の隔壁体20aの図2中下端に重ねられて小径部2aの外周に固定される。
【0038】
弁体21は、環状であって図2中最上方に配置されて弾性を備えた第1リーフバルブ21aと、環状であって弾性を備えて第1リーフバルブ21aの反弁座部材側に積層されて第1リーフバルブ21aと等しい内外径を持つ第2リーフバルブ21bと、環状であって弾性を備えて第2リーフバルブ21bの反弁座部材側に積層されて第1リーフバルブ21aと等しい内外径を持つ第3リーフバルブ21cとを備えている。
【0039】
第1リーフバルブ21aは、図3(A)に示すように、環状であって、軸方向に貫通する孔21a1を備え、何ら負荷が無く撓まない状態では、自由端となる外周の周面を対向座部20bに正対させるとともに環状弁座20eに軸方向で隙間を介して対向し、弁座部材側へ撓むと環状弁座20eに着座できる。第2リーフバルブ21bは、図3(B)に示すように、環状であって第1リーフバルブ21aの反弁座部材側に積層されるとともに自由端となる外周端から開口して孔21a1に連通される切欠21b1を備えている。切欠21b1は、第2リーフバルブ21bの同一円周上に設けられた複数の円弧状部21b2と、リーフバルブ21bの外周から開口して円弧状部21b2に通じる直線部21b3とを備えて構成れている。また、第3リーフバルブ21cは、図3(C)に示すように、環状であって第2リーフバルブ21bの反弁座部材側に積層されている。
【0040】
弁体21の第1リーフバルブ21a、第2リーフバルブ21bおよび第3リーフバルブ21cを重ねると、弁体21の弁座部材側のポート20cに連通される空間が孔21a1および切欠21b1によって弁体21の反弁座部材側の伸側室R1に連通され、直線部21b3の第2リーフバルブ21bの外周部における開口部を残して切欠21b1における直線部21b3の図2中上下が第1リーフバルブ21aと第3リーフバルブ21cによって閉塞され、直線部21b3がオリフィスO1として機能する。
【0041】
そして、このように構成された弁体21を弁座部材20の隔壁体20aの内周座部20fに重ねると、弁体21における第1リーフバルブ21aが対向座部20bに径方向で正対するとともに、内周座部20fが環状弁座20eよりも高いので環状弁座20eと軸方向で隙間を介して対向する。このように弁体21の第1リーフバルブ21aの自由端の外周面が弁座部材20の対向座部20bの内周面と僅かな隙間を介して径方向で対向するため、第1リーフバルブ21aが対向座部20bと正対する状態では、第1リーフバルブ21aと対向座部20bとの間の隙間が極小さいために液体が当該隙間を通過し難くなり、この状態を伸側サブバルブEVが閉弁する状態としている。このように伸側サブバルブEVが閉弁した状態では、殆どオリフィスO1のみを通じて液体の通過を許容する。なお、弁体21の自由端側の外周面の少なくとも一部が対向座部20bに対して径方向で対向していれば、伸側サブバルブEVはポート20cを開閉できるので、第1リーフバルブ21aの外周面全てが対向座部20bの内周面の全てに径方向で対向していなくともよい。
【0042】
弁体21の反弁座部材側に積層される間座22は、外径が弁体21の外径よりも小さく、小径部2aに不動に固定されいてる。なお、間座22は、一枚の環状板で構成されているが複数枚の環状板によって構成されてもよい。よって、弁体21は、弁座部材20の図2中上方からポート20cを下方へ向けて通過しようとする液体の圧力を受けると、間座22の外周縁を支点として外周側を図2中下方に撓ませる。すると、第1リーフバルブ21aの外周面が対向座部20bの内周面と径方向で正対しなくなって対向座部20bに対して下方にずれて、第1リーフバルブ21aと対向座部20bとの間の隙間でなる流路の面積を第1リーフバルブ21aの撓み量に応じて大きくする。このように第1リーフバルブ21aと対向座部20bとがずれて正対しなくなると伸側サブバルブEVが開弁し、伸側サブバルブEVは、弁体21によって液体が前記隙間を流れるのを許容しつつ液体の流れに対して抵抗を与える。
【0043】
また、弁体21は、弁座部材20の図2中下方からポート20cを上方へ向けて通過しようとする液体の圧力を受けると、弁座部材20の内周座部20fの内周縁を支点として外周側を図2中上方に撓ませる。そして、弁体21が予め設定された撓み量以上撓むと第1リーフバルブ21aが環状弁座20eに着座してポート20cを閉塞する。第1リーフバルブ21aが環状弁座20eに着座した状態でもポート20cと切欠21b1とが孔21a1によって連通されるが、切欠21b1を備えた第2リーフバルブ21bの反弁座部材側に積層された第3リーフバルブ21cの外周が対向座部20bに径方向で対向するようになって、第3リーフバルブ21cと対向座部20bとの間の環状の隙間を極めて小さくするので、液体は、第3リーフバルブ21cと対向座部20bとの間の隙間を通過し難くなる。よって、本実施の形態の減衰バルブとしての伸側サブバルブEVは、液体がポート20cを図2中上方から下方へ向けて流れる場合、弁体21の自由端が反弁座部材側へ向けて撓んで開弁すると液体の流れを許容し、反対に液体がポート20cを図2中下方から上方へ向けて流れる場合、弁体21の自由端が弁座部材側へ向けて撓んで環状弁座20eに着座して液体の流れを阻止する。このように伸側サブバルブEVは、ポート20cを一方側へ流れる液体の流れに対しては開弁してこれを許容しつつ抵抗を与える減衰バルブとして機能し、反対にポート20cを他方側へ流れる液体の流れに対しては閉弁してこれを阻止するチェックバルブとしても機能できる。
【0044】
なお、伸側サブバルブEVは、弁体21が弁座部材側へ向けて撓んで第3リーフバルブ21cが対向座部20bに対して径方向で正対するまでの間は、液体がオリフィスO1を下方側から上方側へ向けて流れるのを許容する。弁体21がチェックバルブとして機能する際に環状弁座20eに当接するまでの撓み量および第3リーフバルブ21cが対向座部20bに正対するまでの撓み量は、内周座部20fと環状弁座20eの座面の高さの設定によって調整できるが、内周座部20fと弁体21との間に間座を介装することによって前記撓み量を調整してもよい。間座を用いる場合、内周座部20fの座面の高さを環状弁座20eの座面の高さよりも低くして、間座の積層枚数で前記撓み量を調整するようにしてもよい。
【0045】
バルブストッパ23は、間座22の反弁座部材側に積層されており、弁体21が大きく撓むと弁体21に当接して弁体21を支持して弁体21に過大な応力が作用するのを阻止して弁体21を保護する。
【0046】
バルブストッパ23の図2中下方には、スペーサ24が積層されている。スペーサ24は、有底筒状に形成されて、底部にロッド2の小径部2aの挿通を許容する孔24aが設けられるとともに、筒部24bには内外を連通する切欠24cが設けられ、開口側を図2下方に向けてロッド2の小径部2aの外周に固定されている。なお、筒部24bは、小径部2aに設けられた透孔2e,2fに径方向で対向しており、筒部24b内がロッド2内に連通されている。なお、スペーサ24は、弁体21の反弁座部材側に配置されているので、スペーサ24の上端をバルブストッパとして利用してバルブストッパ23を廃止してもよい。
【0047】
仕切部材25は、有底筒状であって、底部にロッド2の小径部2aの挿通を許容する孔25aが設けられるとともに、開口側を上方に向けてスペーサ24の図2中下端に重ねるとともに筒部分を弁座部材20の外周に嵌合させてロッド2の小径部2aの外周に固定されている。仕切部材25は、外径がシリンダ1の内径よりも小径となっており、シリンダ1との間に環状隙間を形成するとともに、弁座部材20とともに圧側室R2内に空間R3を仕切っている。空間R3は、弁座部材20に設けられたポート20cを介して伸側室R1に連通されるとともに、スペーサ24の切欠24c、小径部2aの透孔2e,2fおよびロッド2内を通じて圧側室R2に連通されている。そして、ポート20c、空間R3、透孔2e,2fおよびロッド2内は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路としての伸側サブ通路EPを形成している。このように構成された伸側サブ通路EPは、ピストン3に設けられた伸側通路3aと並列して伸側室R1と圧側室R2とを連通している。よって、伸側サブバルブEVは、伸側通路3aを迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側サブ通路EPに設けられている。
【0048】
減衰バルブとしての圧側サブバルブCVは、本実施の形態では、図2に示すように、仕切部材25と圧側メインバルブ5との間に配置されて小径部2aの外周に装着されている。詳細には、圧側サブバルブCVは、弁座部材26と、弁体27とを備えている。
【0049】
弁座部材26は、環状であって、小径部2aの外周に嵌合する孔開き円盤状の隔壁体26aと、隔壁体26aの図2中下端の外周から下方へ向けて突出する環状の対向座部26bと、隔壁体26aの内周に設けた環状溝26cと、隔壁体26aの図2中下端の対向座部26bよりも内周側から開口して環状溝26cに連通される複数のポート26dと、隔壁体26aの図2中下端であって各ポート26dの出口端に連通される環状の凹部でなる窓26eと、隔壁体26aの図2中下端であって対向座部26bとポート26dとの間から下方へ向けて突出するように設けられた環状弁座26fと、窓26eの内周部に設けられた環状の内周座部26gと、隔壁体26aの窓26e内から軸方向へ突出する複数の規制部26hとを備えている。
【0050】
対向座部26bは、環状弁座26fの外周を取り囲んでおり、環状弁座26fの下端よりも下方側へ向けて突出している。つまり、対向座部26bの高さが隔壁体26aから見て環状弁座26fよりも高く、対向座部26bと環状弁座26fとの高低差は少なくとも後述する弁体27の軸方向の厚さよりも高くなっている。また、本実施の形態の場合、弁体27の内周が固定端で外周が自由端とされているので、弁座部材26における対向座部26bに対して環状弁座26fが径方向で弁体27の固定端側となる内周側に設けられている。また、内周座部26gの図2中下端面となる座面の高さは、環状弁座26fの図2中下端面となる座面の高さよりも高く、対向座部26bよりも低くなっている。
【0051】
なお、本実施の形態では、隔壁体26aに対して対向座部26bと環状弁座26fとが互いに一体となって軸方向へ突出しており、対向座部26bの内側に環状弁座26fが連なって設けられているが、弁体27の内周側が固定端とされている場合、対向座部26bの内周側に対向座部26bに対して環状弁座26fが離間して隔壁体26aから突出していてもよい。
【0052】
また、圧側サブバルブCVでは、弁座部材26が隔壁体26aの下端であって、径方向で環状弁座26fよりも弁体27の固定端側となる内周側から軸方向へ突出する複数の規制部26hを備えている。規制部26hは、本実施の形態では、環状弁座26fと内周座部26gとの間であって隔壁体26aの周方向で窓26e内のポート26d,26d間にそれぞれ設けられているが、環状弁座26fと内周座部26gとの間であってポート26dに干渉しなければ規制部26hの設置位置は任意に設計変更可能である。また、弁座部材26を軸方向から見た規制部26hの形状は、円弧状であってもよいし円形であってもよいし、任意に設計変更可能である。なお、規制部26hは、ポート26dを避ける位置に設けられているので、ポート26d,26d間に設けられているが、弁体27が弁座部材側へ向けて撓んだ際に弁体27を周方向で均一に支持するため、同一円周上に等間隔に設けられるのが好ましいが、弁体27を支持できれば必ずしも同一円周上に等間隔をもって設けられずともよい。また、規制部26hの座面の高さは、環状弁座26fの座面と同じ高さになっているが、弁体27が環状弁座26fに着座した状態でリーフバルブ27aに当接して弁体27を支持可能である限りにおいて環状弁座26fよりも低くてもよい。
【0053】
弁体27は、図2に示すように、内周側が小径部2aに固定されて固定端とされて撓みが許容される外周側が自由端とされて、リーフバルブ27aと、リーフバルブ27aに積層される弾性を有する2枚の環状板27b,27cとで構成されており、弁座部材26の隔壁体26aの図2中下端に重ねられて小径部2aの外周に固定される。
【0054】
弁体27は、環状であって図2中最上方に配置されて弾性を備えて自由端となる外周から開口する切欠27a1を有するリーフバルブ27aと、環状であって弾性を備えてリーフバルブ27aの反弁座部材側に積層されてリーフバルブ27aよりも外径が小さい環状板27bと、環状であって弾性を備えて環状板27bの反弁座部材側に積層されて環状板27bよりも外径が小さい環状板27cとを備えている。
【0055】
そして、このように構成された弁体27では、弁体27の弁座部材側のポート26dに連通される空間をリーフバルブ27aに設けられた切欠27a1によって弁体27の反弁座部材側の伸側室R1に連通しており、当該切欠27a1はオリフィスO2として機能する。
【0056】
そして、このように構成された弁体27を弁座部材26の隔壁体26aの内周座部26gに重ねると、弁体27におけるリーフバルブ27aが対向座部26bに径方向で正対するとともに、内周座部26gが環状弁座26fよりも高いので環状弁座26fと軸方向で隙間を介して対向する。このように弁体27のリーフバルブ27aの自由端の外周面が弁座部材26の対向座部26bの内周面と僅かな隙間を介して径方向で対向するため、リーフバルブ27aが対向座部26bと正対する状態では、リーフバルブ27aと対向座部26bとの間の隙間が極小さいために液体が当該隙間を通過し難くなり、この状態を圧側サブバルブCVが閉弁する状態としている。このように圧側サブバルブCVが閉弁した状態では、殆どオリフィスO2のみを通じて液体の通過を許容する。なお、弁体27の自由端側の外周面の少なくとも一部が対向座部26bに対して径方向で対向していれば、圧側サブバルブCVはポート26dを開閉できるので、リーフバルブ27aの外周面全てが対向座部26bの内周面の全てに径方向で対向していなくともよい。
【0057】
弁体27の反弁座部材側に積層される間座28は、外径が弁体27の最も反弁座部材側に配置される環状板27cの外径よりも小さく、小径部2aに不動に固定されいてる。なお、間座28は、一枚の環状板で構成されているが複数枚の環状板によって構成されてもよい。よって、弁体27は、弁座部材26の図2中上方からポート26dを下方へ向けて通過しようとする液体の圧力を受けると、間座28の外周縁を支点として外周側を図2中下方に撓ませる。すると、リーフバルブ27aの外周面が対向座部26bの内周面と径方向で正対しなくなって対向座部26bに対して下方にずれて、リーフバルブ27aと対向座部26bとの間の隙間でなる流路の面積をリーフバルブ27aの撓み量に応じて大きくする。このようにリーフバルブ27aと対向座部26bとがずれて正対しなくなると圧側サブバルブCVが開弁し、圧側サブバルブCVは、弁体27によって液体が前記隙間を流れるのを許容しつつ液体の流れに対して抵抗を与える。
【0058】
また、弁体27は、弁座部材26の図2中下方からポート26dを上方へ向けて通過しようとする液体の圧力を受けると、弁座部材26の内周座部26gの内周縁を支点として外周側を図2中上方に撓ませる。そして、弁体27が予め設定された撓み量以上撓むとリーフバルブ27aが環状弁座26fに着座し、オリフィスO2のみを介してポート26dを伸側室R1に連通させる状態を維持する。つまり、圧側サブバルブCVは、リーフバルブ27aを対向座部26bに径方向で正対して閉弁した状態から弁座部材26の図2中下方からポート26dを上方へ向けて通過しようとする液体の圧力を受けてリーフバルブ27aが環状弁座26fに着座する状態になっても、オリフィスO2を介して伸側室R1とポート26dとを連通させ、流路面積を制限する。このように減衰バルブとしての圧側サブバルブCVは、液体がポート26dを図2中上方から下方へ向けて流れる場合、弁体27の自由端が反弁座部材側へ向けて撓んで開弁すると液体の流れを許容し、反対に液体がポート26dを図2中下方から上方へ向けて流れる場合、弁体27の自由端が弁座部材側へ向けて撓んで環状弁座26fに着座して液体の流れに対してオリフィスO2によって抵抗を与える。このように圧側サブバルブCVは、ポート26dを一方側へ流れる液体の流れに対しては開弁してこれを許容しつつ抵抗を与える減衰バルブとして機能し、反対にポート26dを他方側へ流れる液体の流れに対してはオリフィスO2のみを有効とするチェックバルブとして機能する。
【0059】
なお、圧側サブバルブCVは、弁体27が弁座部材側へ向けて撓んで環状弁座26fに着座するまでの間は、液体がポート26dを下方側から上方側へ向けて流れるのを許容する。弁体27が環状弁座26fに当接するまでの撓み量である撓み量は、内周座部26gと環状弁座26fの座面の高さの設定によって調整できるが、内周座部26gと弁体27との間に間座を介装することによって前記撓み量を調整してもよい。間座を用いる場合、内周座部26gの座面の高さを環状弁座26fの座面の高さよりも低くして、間座の積層枚数で前記撓み量を調整するようにしてもよい。
【0060】
バルブストッパ29は、間座28の反弁座部材側に積層されており、弁体27が大きく撓むと弁体27に当接して弁体27を支持して弁体27に過大な応力が作用するのを阻止して弁体27を保護する。
【0061】
このように構成された圧側サブバルブCVを小径部2aの外周であってスペーサ24の下方に積層すると、弁座部材26の内周に形成された環状溝26cが小径部2aに設けられた透孔2g,2hに径方向で対向するので、ポート26dがロッド2内に連通される。よって、伸側室R1は、ポート26d、透孔2g,2hおよびロッド2内を通じて圧側室R2に連通される。そして、ポート26d、透孔2g,2hおよびロッド2内は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路としての圧側サブ通路CPを形成している。このように構成された圧側サブ通路CPは、ピストン3に設けられた圧側通路3bと並列して伸側室R1と圧側室R2とを連通している。よって、圧側サブバルブCVは、圧側通路3bを迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通する圧側サブ通路CPに設けられている。
【0062】
つづいて、ロッド2内には、ロッド2の内周面に外周面を摺接させてロッド2内で周方向への回転が許容される筒状のロータリバルブ12が収容されている。ロータリバルブ12は、透孔2e,2f,2g,2hに対向可能な位置にそれぞれ内外を連通する孔12a,12b,12c,12dを備えており、ロッド2内に挿通されるコントロールロッド13によって回転させられると透孔2eと孔12a、透孔2fと孔12b、透孔2gと孔12cおよび透孔2hと孔12dとの互いの連通度合を変化させ得るとともに、透孔2e,2f,2g,2hを孔12a,12b,12c,12dに対向させずに遮断し得る。つまり、ロータリバルブ12は、ロッド2に対する周方向の回転位置によって透孔2eと孔12a、透孔2fと孔12b、透孔2gと孔12cおよび透孔2hと孔12dでなる4つの流路の面積をそれぞれ調整でき、当該流路を通過する作動油の流れに与える抵抗を調整できる。なお、本実施の形態では、コントロールロッド13は、ロッド2の先端に取り付けれるステッピングモータ等の図外のロータリアクチュエータによって駆動されるが、ロータリアクチュエータはロッド2内に収容されてもよい。
【0063】
そして、ロータリバルブ12が透孔2e,2fに対してそれぞれ対応する孔12a,12bを連通させる状態では、伸側サブ通路EPを通じて伸側室R1と圧側室R2とが連通される。また、ロータリバルブ12が透孔2g,2hに対してそれぞれ対応する孔12c,12dを連通させる状態では、圧側サブ通路CPを通じて伸側室R1と圧側室R2とが連通される。このようにロータリバルブ12は、伸側サブ通路EPおよび圧側サブ通路CPの途中に設けられており、コントロールロッド13によって回転させられると、それぞれ孔12a,12b,12c,12dと対応する透孔2e,2f,2g,2hとの連通度合(流路面積)を変化させて伸側サブ通路EPおよび圧側サブ通路CPを通過する液体の流れに与える抵抗を変化させ得る。なお、ロータリバルブ12は、伸側サブ通路EPの流路面積の調整にあたり2つの孔12a,12bを圧側サブ通路CPの流路面積の調整にあたり2つの孔12c,12dを備えているが、孔の設置数については最大流路面積の設定に応じて任意に変更可能である。また、ロータリバルブ12に設けれる孔の数に対応してロッド2に設ける透孔の数を設定すればよい。さらに、ロータリバルブ12に設けられる孔12a,12b,12c,12dは、周方向にずらして設けられてもよく、ロッド2の設けられる透孔2e,2f,2g,2hの設置位置も孔12a,12b,12c,12dに対応して適切な位置に設けられればよい。また、緩衝器Dに所望する減衰力特性に応じて、伸側サブ通路EPの途中に設けられた孔12aと透孔2eとが対向して互いに連通する際に孔12bと透孔2fとが連通するようにしてもよいし、孔12aと透孔2eとが対向するタイミングと異なるタイミングで孔12bと透孔2fとが対向するように設定してもよく、これは、圧側サブ通路CPの途中に設けられる孔12c,12dと透孔2g,2hとの関係についても同様である。
【0064】
以上のように、減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVと緩衝器Dとは構成されており、以下に、減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVと緩衝器Dとの作動を説明する。
【0065】
まず、緩衝器Dの伸長作動時には、ピストン3がシリンダ1内を図1中上方へ移動して伸側室R1を圧縮する。伸側サブ通路EPおよび圧側サブ通路CPがロータリバルブ12によって連通状態におかれる場合、ピストン3の上方への移動によって圧縮される伸側室R1内の液体は、ピストン3に設けられた伸側通路3aとともに伸側サブ通路EPを通じて拡大する圧側室R2へ移動しようとする。ここで、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が伸側メインバルブ4の開弁圧に達しないため、伸側メインバルブ4は開弁せず伸側通路3aを閉塞したまま維持する。圧側メインバルブ5は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側通路3bを閉じる。
【0066】
緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧が伸側サブバルブEVにおける弁体21の開弁圧に達しないため弁体21は撓んでも第1リーフバルブ21aの外周面を対向座部20bの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となって弁体21と対向座部20bとの間の環状隙間における流路面積を極小さく維持し、殆どオリフィスO1のみによって伸側室R1をポート20cに連通させる状態となる。
【0067】
他方、圧側サブバルブCVにおける弁体27は、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が小さく、弁座部材側へ向けて環状弁座26fに着座するまでは撓まない。このように、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、弁体27は、リーフバルブ27aの外周面を対向座部26bの内周の軸方向幅の範囲で対向させて閉弁したままとなり、弁体27と対向座部26bとの間の環状隙間における流路面積を極小さく維持し、殆どオリフィスO2のみによって伸側室R1をポート26dに連通させる状態となる。
【0068】
よって、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、伸側メインバルブ4も伸側通路3aを閉じたままとなるので、伸側室R1内の液体は、伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVが閉弁したままとなるので伸側サブ通路EPについてはオリフィスO1を通過し、また、圧側サブ通路CPについてはオリフィスO2を通過して圧側室R2へ移動する。よって、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、オリフィスO1,O2を液体が通過する際に与えられる抵抗によって減衰力が発生するので、緩衝器Dのピストン速度に対して発生する減衰力の特性(減衰力特性)は、図4に示すように、減衰力が過剰とならずに立ち上がる特性となる。
【0069】
さらに、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化すると、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が弁体21の開弁圧を超えるので弁体21は、外周を対向座部20bの内周の軸方向幅の範囲から図2中下方へずれるようにして撓んで開弁し、弁体21と対向座部20bとの間の環状隙間の流路面積をオリフィスO1の流路面積よりも大きくする。すると、液体は、伸側サブバルブEVを通過するようになり、伸側サブ通路EPを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。他方、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化すると、圧側サブバルブCVにおける弁体27は、伸側室R1内の圧力を受けて撓んで弁座部材26における環状弁座26fに着座するので、ポート26dをオリフィスO2のみによって伸側室R1に連通する状態を維持し、液体が圧側サブ通路CPを通過するのを許容するが、オリフィスO2の流路面積よりも伸側サブバルブEVにおける流路面積の方が大きくなる。
【0070】
よって、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化すると、主として伸側サブバルブEVの弁体21と対向座部20bとによって減衰力が発生され、伸側サブバルブEVにおける流路面積がピストン速度の増加に応じて大きくなるので、緩衝器Dの減衰力特性は、図4に示すように、微低速域の減衰力特性線よりも傾きが小さくなる特性となる。
【0071】
さらに、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が増加して低速域を超えると、弁体21が大きく撓んでバルブストッパ23に当接して、対向座部20bとの間の環状隙間における流路面積を最大とする一方で、伸側メインバルブ4が撓んでピストン3から離間して伸側通路3aを開放する。すると、液体は、伸側メインバルブ4とピストン3との間の隙間を介して伸側室R1から圧側室R2へ移動するようになり、ピストン速度の増加によって伸側メインバルブ4の撓み量が増えて伸側メインバルブ4とピストン3との間の隙間における流路面積が伸側サブバルブEVにおける弁体21と対向座部20bとの間の環状隙間における流路面積よりも大きくなるしたがって、緩衝器Dは、主として伸側メインバルブ4が液体の流れに与える抵抗によって減衰力を発生するようになる。よって、緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が増加して低速域を超えると、ピストン速度の増加とともに緩衝器Dの減衰力特性は、図4に示すように、ピストン速度の増加に対して傾きがほぼ一定の減衰力を発生するような特性となる。なお、ロータリバルブ12を回転させることによって伸側サブ通路EPを通過する液体の流れに与える抵抗を調整できるので、本実施の形態の緩衝器Dでは減衰力を高低調整できる。なお、緩衝器Dの伸長作動時には、シリンダ1内からロッド2が退出するが、フリーピストン11がシリンダ1内で図2中上方へ移動して気室Gを拡大して、シリンダ1内から退出したロッド2の体積を補償する。
【0072】
つづいて、緩衝器Dの収縮作動時には、ピストン3がシリンダ1内を図1中下方へ移動して圧側室R2を圧縮する。伸側サブ通路EPおよび圧側サブ通路CPがロータリバルブ12によって連通状態におかれる場合、ピストン3の下方への移動によって圧縮される圧側室R2内の液体は、ピストン3に設けられた圧側通路3bとともに圧側サブ通路CPを通じて拡大する伸側室R1へ移動しようとする。ここで、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が圧側メインバルブ5の開弁圧に達しないため、圧側メインバルブ5は開弁せず圧側通路3bを閉塞したまま維持する。伸側メインバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側通路3aを閉じる。
【0073】
緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧が圧側サブバルブCVにおける弁体27の開弁圧に達しないため弁体27は撓んでもリーフバルブ27aの外周面を対向座部26bの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となって弁体27と対向座部26bとの間の環状隙間における流路面積を極小さく維持し、殆どオリフィスO2のみによって伸側室R1をポート26dに連通させる状態となる。
【0074】
他方、伸側サブバルブEVにおける弁体21は、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧小さく、弁座部材側へ向けて環状弁座20eに着座するまでは撓まない。このように、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、弁体21は、第1リーフバルブ21aの外周面を対向座部20bの内周の軸方向幅の範囲で対向させて閉弁したままとなり、弁体21と対向座部20bとの間の環状隙間における流路面積を極小さく維持し、殆どオリフィスO1のみによって伸側室R1をポート20cに連通させる状態となる。
【0075】
よって、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、圧側メインバルブ5も圧側通路3bを閉じたままとなるので、圧側室R2内の液体は、伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVが閉弁したままとなるので圧側サブ通路CPについてはオリフィスO2を通過し、また、伸側サブ通路EPについてはオリフィスO1を通過して伸側室R1へ移動する。よって、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、オリフィスO1,O2を液体が通過する際に与えられる抵抗によって減衰力が発生するので、緩衝器Dのピストン速度に対して発生する減衰力の特性(減衰力特性)は、図4に示すように、減衰力が過剰とならずに立ち上がる特性となる。
【0076】
さらに、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化すると、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が弁体27の開弁圧を超えるので弁体27は、外周を対向座部26bの内周の軸方向幅の範囲から図2中下方へずれるようにして撓んで開弁し、弁体27と対向座部26bとの間の環状隙間の流路面積をオリフィスO2の流路面積よりも大きくする。すると、液体は、圧側サブバルブCVにおけるリーフバルブ27aと対向座部26bとの間の環状の隙間を通過するようになり、圧側サブ通路CPを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。他方、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化すると、伸側サブバルブEVにおける弁体21は、圧側室R2内の圧力を受けて撓んで弁座部材20における環状弁座20eに着座する。すると、切欠21b1を備えた第2リーフバルブ21bの反弁座部材側に積層された第3リーフバルブ21cの外周が対向座部20bに径方向で対向するようになって、第3リーフバルブ21cと対向座部20bとの間の環状の隙間を極めて小さくするため、液体は、第3リーフバルブ21cと対向座部20bとの間の隙間を通過し難くなる。よって、伸側サブバルブEVは、緩衝器Dの収縮速度が低速域になると、ポート26dの開口を遮断して液体が圧側サブ通路CPを通過するのを阻止する。
【0077】
このように、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化すると、圧側サブバルブCVは、流路面積をオリフィスO2の流路面積よりも大きくし、伸側サブバルブEVは、チェックバルブとして機能して伸側サブ通路EPを遮断する。
【0078】
よって、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が増加して微低速域から低速域にまで変化すると、主として圧側サブバルブCVにおける弁体27と対向座部26bとによって減衰力が発生され、圧側サブバルブCVにおける流路面積がピストン速度の増加に応じて大きくなるので、緩衝器Dの減衰力特性は、図4に示すように、微低速域の減衰力特性線よりも傾きが小さくなる特性となる。
【0079】
さらに、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が増加して低速域を超えると、弁体27が大きく撓んでバルブストッパ29に当接して、対向座部26bとの間の環状隙間における流路面積を最大とする一方で、圧側メインバルブ5が撓んでピストン3から離間して圧側通路3bを開放する。すると、液体は、圧側メインバルブ5とピストン3との間の隙間を介して圧側室R2から伸側室R1へ移動するようになり、ピストン速度の増加によって圧側メインバルブ5の撓み量が増えて圧側メインバルブ5とピストン3との間の隙間における流路面積が圧側サブバルブCVにおける弁体27と対向座部26bとの間の環状隙間における流路面積よりも大きくなる。したがって、緩衝器Dは、主として圧側メインバルブ5が液体の流れに与える抵抗によって減衰力を発生するようになる。よって、緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が増加して低速域を超えると、ピストン速度の増加とともに緩衝器Dの減衰力特性は、図4に示すように、ピストン速度の増加に対して傾きがほぼ一定の減衰力を発生するような特性となる。なお、ロータリバルブ12を回転させることによって圧側サブ通路CPを通過する液体の流れに与える抵抗を調整できるので、本実施の形態の緩衝器Dでは減衰力を高低調整できる。なお、緩衝器Dの収縮作動時には、シリンダ1内にロッド2が侵入するが、フリーピストン11がシリンダ1内で図2中下方へ移動して気室Gを縮小して、シリンダ1内に侵入したロッド2の体積を補償する。
【0080】
以上、本実施の形態の減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVは、内周が固定端とされ外周が自由端として固定端に対する自由端の撓みが許容される環状の弁体21,27と、環状であって弁体21,27の自由端側の周面の少なくとも一部に対向する環状の対向座部20b,26bと、径方向で対向座部20b,26bよりも弁体21,27の固定端側に設けられたポート20c,26dとを有する弁座部材20,26と、弁体21,27に設けられて弁体21,27と対向座部20b,26bとが正対する状態で弁体21,27の弁座部材側と反弁座部材側とを連通するオリフィスO1,O2とを備えている。
【0081】
このように構成された減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVによれば、弁体21,27の自由端と対向座部20b,26bとが正対していても、弁体21,27と対向座部20b,26bとの間の隙間以外にも液体がオリフィスO1,O2を通過し得る。よって、減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVによれば、弁体21,27の撓み剛性を高く設定しても緩衝器Dの伸縮速度が微低速域にある場合の減衰力が過剰とならずに済む。また、減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVによれば、弁体21,27の撓み剛性を高く設定しても緩衝器Dの伸縮速度が微低速域にある場合の減衰力が過剰とならずに済むので、弁体21,27の撓み剛性の設計自由度が向上するので所望する減衰力特性を得やすくなる。
【0082】
なお、前述した本実施の形態の減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVは、弁体21,27が反弁座部材側へ撓むと開弁してポート20c,26dを開放し、弁体21,27が弁座部材側へ撓むと環状弁座20e,26fに着座してチェックバルブとして機能するが、特開2019-183918に開示されているバルブのように、環状弁座20e,26fを廃止して弁体21,27が弁座部材側へ撓んでも反弁座部材側へ撓んでもポート20c,26dを開放するようにしてもよい。
【0083】
また、本実施の形態の減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVにおける弁座部材20,26は、対向座部20b,26bとポート20c,26dとの間に設けられて弁体21,27に軸方向で対向して弁体21,27が離着座可能な環状弁座20e,26fを備えている。このように構成された減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVによれば、ポート20c,26d側からの圧力を受けると弁体21,27が撓んでポート20c,26dを開放するとともにポート20c,26dを通過する液体の流れに抵抗を与えるとともに、弁体21,27が弁座部材20,26側へ押圧する圧力を受けると弁体21,27が環状弁座20e,26fに着座してポート20c,26dを遮断するので、ポート20c,26dを一方側へ通過しようとする液体の流れに対しては減衰バルブとして機能し、ポート20c,26dを他方側へ通過しようとする液体の流れに対してはチェックバルブとして機能できる。
【0084】
さらに、本実施の形態の減衰バルブとしての伸側サブバルブEVにおける弁体21は、環状であって自由端の周面である外周を対向座部20bに正対させるとともに軸方向に貫通する孔21a1を有して環状弁座20eに離着座可能な第1リーフバルブ21aと、環状であって第1リーフバルブ21aの反弁座部材側に積層されるとともに自由端である外周から開口して孔21a1に連通される切欠21b1を有する第2リーフバルブ21bと、環状であって第2リーフバルブ21bの反弁座部材側に積層される第3リーフバルブ21cとを備え、オリフィスO1が切欠21b1によって形成されている。このように構成された減衰バルブとしての伸側サブバルブEVによれば、弁体21が弁座部材20から離間するように反弁座部材側へ撓む際には弁体21で弁体21と対向座部20bとの間の隙間を通過する液体の流れに抵抗を与えて減衰バルブとして機能するとともに、弁体21が弁座部材側へ撓んで環状弁座20eに着座すると第3リーフバルブ21cの自由端である外周が対向座部20bに正対して第3リーフバルブ21cと対向座部20bとの間の隙間を極小さくして、当該隙間の液体の通過をし難くできるので、チェックバルブとして機能する際にはオリフィスO1を備えていてもポート20cを略閉鎖できる。よって、このように構成された減衰バルブとしての伸側サブバルブEVによれば、チェックバルブとして機能する際にはオリフィスO1を備えていてもポート20cを略閉鎖できるので、緩衝器Dの伸側の減衰力特性を独立して設定できる。
【0085】
また、減衰バルブとしての圧側サブバルブCVにおける弁体27は、環状であって自由端である外周の周面を対向座部26bに正対させるとともに自由端である外周から開口する切欠27a1を備え、オリフィスO2が切欠27a1によって形成されていてもよい。このように、圧側サブバルブCVがチェックバルブとして機能する際に、弁体27でポート26dを完全に遮断する必要がない場合、弁体27が弁座部材側および反弁座部材側のどちらへ撓んでもポート26dを開放する場合には、弁体27の自由端にオリフィスO2を形成する切欠を設置するのみで足りるのでオリフィスO2の設置が容易となる。なお、弁体27の外周に切欠27a1を設けてオリフィスO2を設ける場合であって、弁体27が環状弁座26fに着座した際にポート26dを遮断したい場合、切欠27a1の深さを弁体27が環状弁座26fに着座した状態で切欠27a1の先端がポート26dに対向しないような深さに設定すればよい。このようにすれば、弁体27が背面側から伸側室R1の圧力を受けて環状弁座26fに着座すると切欠27a1とポート26dとの連通が断たれて弁体27によってポート26dを遮断できる。このように、弁体27の自由端に切欠27a1を設けてオリフィスO2を形成する場合であっても、弁体27によってポート26dを完全に遮断することも可能である。
【0086】
また、オリフィスは、図5に示すように、弁体27に設ける代わりに、弁座部材26における対向座部26bに設けた溝26b1で形成されてもよく、減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVがチェックバルブとして機能する際に、弁体27でポート26dを完全に遮断する必要がない場合、弁体27が弁座部材側および反弁座部材側のどちらへ撓んでもポート26dを開放する場合には、対向座部26bにオリフィスを形成する溝26b1を設置するのみで足りるのでオリフィスの設置が容易となる。
【0087】
なお、前述したところでは、弁体21,27の内周側を固定端として外周側を自由端として、弁体21,27の外周面を対向座部20b,26bの内周面に対向させることにより、減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVを構成しているが、弁体の外周側を固定端として内周側を自由端として、弁体の内周側に対向座部を設けて、弁体の内周面を対向座部の外周面に対向させることによって減衰バルブを構成してもよい。その場合、弁体の内周側から開口する切欠によりオリフィスを形成すればよい。
【0088】
また、本実施の形態の減衰バルブとしての圧側サブバルブCVにおける弁座部材26は、径方向で環状弁座26fよりも弁体27の固定端側に設けられて弁体27に対して軸方向で対向して、弁体27の自由端が弁座部材側へ所定量以上撓むと弁体27に当接して弁体27の撓みを規制する規制部26hを備えている。
【0089】
このように構成された減衰バルブとしての圧側サブバルブCVによれば、弁体27の中間部分が弁座部材側へ向けて押圧されて撓んで規制部26hに当接すると弁体27の中間部分が規制部26hによって支持されて弁体27のそれ以上の撓みが阻止されるので、弁体27に過大な圧力が作用してもリーフバルブ27aに応力を軽減でき、リーフバルブ27aの疲労を抑制できる。
【0090】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ(アウターチューブ)1と、シリンダ(アウターチューブ)1内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド2と、シリンダ(アウターチューブ)1に対するロッド2の移動によって液体が行き来する少なくとも伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体Aと、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVを備えている。このように構成された緩衝器Dでは、伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVを備えているので、緩衝器Dの伸縮速度が微低速域における減衰力が過剰となるのを抑制でき、車両における乗心地を向上できる。また、液体が伸側室R1から圧側室R2へ向かう際に減衰力を発生して、液体が圧側室R2から伸側室R1へ向かう際に伸側サブ通路EPを閉鎖できるので、緩衝器Dの伸側の減衰力特性を独立して設定でき、圧側サブバルブCVは、液体が圧側室R2から伸側室R1へ向かう際に減衰力を発生して、液体が伸側室R1から圧側室R2へ向かう際にオリフィスO2で抵抗を与えるので、緩衝器Dの圧側の減衰力特性を独立して設定できる。
【0091】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVとがピストン3における伸側通路3aと圧側通路3bとを迂回する伸側サブ通路EPと圧側サブ通路CPに設けられており、減衰バルブがピストン3における伸側メインバルブ4および圧側メインバルブ5に並列されているが、減衰バルブを伸側のメインバルブ或いは圧側のメインバルブとして利用してもよい。また、本実施の形態の緩衝器Dでは、減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVとがピストン3における伸側通路3aと圧側通路3bとを迂回する伸側サブ通路EPと圧側サブ通路CPに設けられているが、伸側サブバルブEVのみ或いは圧側サブバルブCVのみを緩衝器Dに設けてもよい。
【0092】
また、図1に示したところでは、二つの作動室を伸側室R1と圧側室R2としているが、緩衝器Dがシリンダの外周にアウターチューブとしてアウターシェルを備えてシリンダとアウターシェルとの間にリザーバを備える複筒型緩衝器とされる場合には、圧側室とリザーバとの間に減衰バルブDVを設けてもよい。よって、減衰バルブにおけるポートは、伸側室R1と圧側室R2とを連通してもよいし、圧側室とリザーバとを連通してもよい。
【0093】
また、このように本実施の形態の緩衝器Dでは、主として減衰バルブとしての伸側サブバルブEVおよび圧側サブバルブCVによって減衰力を発生する速度域を低速域としているが、微低速、低速および低速を超える高い速度を区分する速度については設計者が任意に設定できる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1・・・シリンダ(アウターチューブ)、2・・・ロッド、20,26・・・弁座部材、20b,26b・・・対向座部、26b1・・・溝、20c,26d・・・ポート、20e,26f・・・環状弁座、26h・・・規制部、21,27・・・弁体、21a・・・第1リーフバルブ、21b・・・第2リーフバルブ、21b1,27a1・・・切欠、21c・・・第3リーフバルブ、A・・・緩衝器本体、CV・・・圧側サブバルブ(減衰バルブ)D・・・緩衝器、EV・・・伸側サブバルブ(減衰バルブ)、O1,O2・・・オリフィス、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)
図1
図2
図3
図4
図5