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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127166
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20240912BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240912BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H5/06 L
B65H3/06 340E
B65H3/52 310A
B65H3/52 310E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036130
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】梅田 貴典
(72)【発明者】
【氏名】山谷 啓介
【テーマコード(参考)】
3F049
3F343
【Fターム(参考)】
3F049AA10
3F049DA12
3F049DB13
3F049EA02
3F049LA07
3F049LB03
3F343FA02
3F343FB05
3F343FC05
3F343GA03
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA16
3F343JA14
3F343KB04
3F343KB17
3F343LA03
3F343LA04
3F343LA15
3F343LA16
3F343LB08
3F343LC11
3F343LC22
3F343LC23
3F343LC25
3F343LC27
3F343LD10
3F343LD29
3F343MB04
3F343MB13
3F343MC05
3F343MC10
3F343MC19
3F343MC23
(57)【要約】
【課題】媒体の損傷を抑制しつつ載置部に積載された媒体の給送精度を向上する。
【解決手段】複数の媒体SPを積載可能な載置部63と、印刷部20と、搬送方向Aに向けて載置部63に載置された媒体SPを給送する給送ローラー72と、を備え、給送ローラー72は、媒体SPの搬送方向Aにおける下流への給送を開始する前に、第1媒体SP1に接して回転する予備給送動作と、媒体SPを給送しない非給送動作と、を複数回繰り返すことにより、複数の媒体SPのうちの少なくとも一部が載置部63側の媒体SPよりも第1媒体SP1の方が搬送方向Aにおける下流側に配置される積載ずれ状態S1を形成し、積載ずれ状態S1の形成後に、第1媒体SP1を載置部63から搬送方向Aにおける下流側に給送する印刷装置11。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単票状の媒体を積載可能な載置部と、
前記媒体に印刷する印刷部と、
前記載置部と対向する位置に設けられ、前記載置部から前記印刷部に向かう搬送方向に向けて前記載置部に載置された前記媒体を給送する給送ローラーと、
を備え、
前記給送ローラーは、
前記載置部から前記搬送方向における下流への前記媒体の給送を開始する前に、前記載置部に積載された前記媒体のうちの積載方向における最も前記給送ローラー側の第1媒体に接触するとともに回転する予備給送動作と、前記予備給送動作とは異なる動作を行う非給送動作と、を複数回繰り返すことにより、前記第1媒体が前記積載方向における前記第1媒体より前記載置部側の前記媒体よりも前記搬送方向における下流側に配置される積載ずれ状態を形成し、
前記積載ずれ状態の形成後に、前記第1媒体を前記載置部から前記搬送方向における下流側に給送することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載された印刷装置において、
分離ローラーとリタードローラーとからなる分離ローラー対を前記給送ローラーよりも前記搬送方向における下流側に備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載された印刷装置において、
前記搬送方向において前記給送ローラーと前記分離ローラー対との間に、前記給送ローラーにより給送される前記媒体の先端が摺接する分離部材を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載された印刷装置において、
前記分離部材は、前記媒体の幅方向に延在する窪み部が形成された前記媒体の先端が摺接する摺接面を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載された印刷装置において、
前記分離部材として、前記窪み部が形成される窪み部形成分離部材と、前記窪み部が形成されない窪み部非形成分離部材と、を有し、
前記窪み部形成分離部材は、前記分離部材が配置される領域において前記媒体の幅方向の中心を基準にして対称の位置に配置され、前記窪み部非形成分離部材は、前記分離部材が配置される領域において前記媒体の幅方向の中心を基準にして対称の位置に配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記給送ローラーは、前記非給送動作の実行中は前記第1媒体から離間することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項6に記載された印刷装置において、
前記給送ローラーは、
モーターによって駆動され、
前記予備給送動作に伴って前記モーターが第1方向に回転するときに前記第1媒体と接触して回転し、
前記非給送動作に伴って前記モーターが前記第1方向と反対側の第2方向に回転するときに前記第1媒体から離間することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項2に記載された印刷装置において、
前記分離ローラーよりも前記搬送方向における下流側に前記媒体を搬送する搬送ローラーを備え、
前記給送ローラーと前記分離ローラーと前記搬送ローラーの駆動源は共通することを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項8に記載された印刷装置において、
前記駆動源としてのモーターと前記搬送ローラーとの間に、前記モーターが第1方向に回転した場合でも前記モーターが前記第1方向と反対側の第2方向に回転した場合でも前記搬送ローラーが同じ方向に回転するように構成された、駆動力伝達部材を備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な印刷装置が使用されている。このうち、複数の単票状の媒体を積載可能な載置部を備え、載置部から媒体を1枚ずつ給送し、1枚ずつ媒体を搬送しつつ印刷を行う印刷装置がある。例えば、特許文献1には、複数の単票紙を積載可能な単票紙収容部と、ピックアップローラーと、セパレートローラーと、リタードローラーと、を備え、ピックアップローラーで単票紙収容部から単票紙を1枚ずつ給送するとともに、セパレートローラーとリタードローラーとで単票紙を分離して、1枚ずつ単票紙を搬送しつつ印刷を行う構成の印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-130286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の印刷装置のような、従来のセパレートローラーとリタードローラーとで媒体を分離する構成の印刷装置においては、セパレートローラーとリタードローラーとのニップ圧が強すぎる場合などによっては、媒体にニップ痕などが残り、媒体を損傷させてしまう虞がある。一方、セパレートローラーとリタードローラーとのニップ圧が弱すぎると媒体の分離精度が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の印刷装置は、複数の単票状の媒体を積載可能な載置部と、前記媒体に印刷する印刷部と、前記載置部と対向する位置に設けられ、前記載置部から前記印刷部に向かう搬送方向に向けて前記載置部に載置された前記媒体を給送する給送ローラーと、を備え、前記給送ローラーは、前記載置部から前記搬送方向における下流への前記媒体の給送を開始する前に、前記載置部に積載された前記媒体のうちの積載方向における最も前記給送ローラー側の第1媒体に接触するとともに回転する予備給送動作と、前記予備給送動作とは異なる動作を行う非給送動作と、を複数回繰り返すことにより、前記第1媒体が前記積載方向における前記第1媒体より前記載置部側の前記媒体よりも前記搬送方向における下流側に配置される積載ずれ状態を形成し、前記積載ずれ状態の形成後に、前記第1媒体を前記載置部から前記搬送方向における下流側に給送することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施例に係る印刷装置の内部構成を表す側面断面図。
図2図1の印刷装置において単票紙を単票紙搬送ローラー対に向けて給送する前に予備給送動作を行う際の状態を表す側面断面図であって、予備給送動作の開始直後にピックアップローラーを単票紙に当接させてピックアップローラーを回転させ始めた状態を表す図。
図3図1の印刷装置における側面断面図であって、図2の状態の後にピックアップローラーを単票紙から離間させて非給送動作を実行している状態を表す図。
図4図1の印刷装置における側面断面図であって、図3の状態の後にピックアップローラーを単票紙に再度当接させて予備給送動作を再度実行している状態を表す図。
図5図1の印刷装置における分離部材などの構成を表す斜視図。
図6図1の印刷装置における分離部材などの構成を表す側面断面図。
図7図1の印刷装置における駆動力伝達部材などの構成を表す側面断面図。
図8図1の印刷装置におけるピックアップローラーの移動機構を表す斜視図であって、ピックアップローラーを単票紙に当接させる方向に移動させた状態を表す図。
図9図1の印刷装置におけるピックアップローラーの移動機構を表す斜視図であって、ピックアップローラーを単票紙から離間させる方向に移動させた状態を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の印刷装置は、複数の単票状の媒体を積載可能な載置部と、前記媒体に印刷する印刷部と、前記載置部と対向する位置に設けられ、前記載置部から前記印刷部に向かう搬送方向に向けて前記載置部に載置された前記媒体を給送する給送ローラーと、を備え、前記給送ローラーは、前記載置部から前記搬送方向における下流への前記媒体の給送を開始する前に、前記載置部に積載された前記媒体のうちの積載方向における最も前記給送ローラー側の第1媒体に接触するとともに回転する予備給送動作と、前記予備給送動作とは異なる動作を行う非給送動作と、を複数回繰り返すことにより、前記第1媒体が前記積載方向における前記第1媒体より前記載置部側の前記媒体よりも前記搬送方向における下流側に配置される積載ずれ状態を形成し、前記積載ずれ状態の形成後に、前記第1媒体を前記載置部から前記搬送方向における下流側に給送することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、給送ローラーは、搬送方向における下流への第1媒体の給送を開始する前に、第1媒体に接して回転する予備給送動作と、媒体を給送しない非給送動作と、を複数回繰り返すことにより、複数の媒体のうちの少なくとも一部が載置部側の媒体よりも第1媒体の方が搬送方向における下流側に配置される積載ずれ状態を形成する。そして、し、積載ずれ状態の形成後に第1媒体を載置部から搬送方向における下流側に給送する。このように、積載ずれ状態を形成することで、第1媒体と第1媒体よりも載置部側の残りの媒体との分離がしやすくなる。このため、媒体の損傷を抑制しつつ載置部に積載された媒体の給送精度を向上することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の印刷装置は、前記第1の態様に従属する態様において、分離ローラーとリタードローラーとからなる分離ローラー対を前記給送ローラーよりも前記搬送方向における下流側に備えることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、分離ローラーとリタードローラーとからなる分離ローラー対を給送ローラーよりも搬送方向における下流側に備える。このような構成とすることで、分離ローラー対のニップ圧を弱くしても、第1媒体と第1媒体よりも載置部側の残りの媒体との分離がしやすくなる。したがって、媒体の損傷を抑制しつつ載置部に積載された媒体の給送精度を向上することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の印刷装置は、前記第2の態様に従属する態様において、前記搬送方向において前記給送ローラーと前記分離ローラー対との間に、前記給送ローラーにより給送される前記媒体の先端が摺接する分離部材を備えることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、搬送方向において給送ローラーと分離ローラー対との間に、給送ローラーにより給送される媒体の先端が摺接する分離部材を備える。このため、第1媒体と第1媒体よりも載置部側の残りの媒体との分離が特にしやすくなる。
【0013】
本発明の第4の態様の印刷装置は、前記第3の態様に従属する態様において、前記分離部材は、前記媒体の幅方向に延在する窪み部が形成された前記媒体の先端が摺接する摺接面を備えることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、分離部材は、媒体の幅方向に延在する窪み部が形成された媒体の先端が摺接する摺接面を備える。このように傾斜面と窪み部とが形成されていることで、第1媒体と第1媒体よりも載置部側の残りの媒体との分離精度が特に向上する。
【0015】
本発明の第5の態様の印刷装置は、前記第4の態様に従属する態様において、前記分離部材として、前記窪み部が形成される窪み部形成分離部材と、前記窪み部が形成されない窪み部非形成分離部材と、を有し、前記窪み部形成分離部材は、前記分離部材が配置される領域において前記媒体の幅方向の中心を基準にして対称の位置に配置され、前記窪み部非形成分離部材は、前記分離部材が配置される領域において前記媒体の幅方向の中心を基準にして対称の位置に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、分離部材として、窪み部が形成される窪み部形成分離部材と、窪み部が形成されない窪み部非形成分離部材と、を有し、窪み部形成分離部材は分離部材が配置される領域において媒体の幅方向の中心を基準にして対称の位置に配置され、窪み部非形成分離部材は分離部材が配置される領域において媒体の幅方向の中心を基準にして対称の位置に配置されている。このような構成とすることで、第1媒体と第1媒体よりも載置部側の残りの媒体との分離精度を特に向上することができるとともに、全ての分離部材を窪み部形成分離部材とする場合よりも装置構成を簡略化することができる。
【0017】
本発明の第6の態様の印刷装置は、前記第1から第5のいずれか1つの態様に従属する態様において、前記給送ローラーは、前記非給送動作の実行中は前記第1媒体から離間することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、給送ローラーは非給送動作の実行中は第1媒体から離間する。このような構成とすることで、非給送動作の実行中に給送ローラーが第1倍体を給送させてしまうことを抑制できるとともに、第1媒体から離間する動作を挟むことで第1媒体と第1媒体よりも載置部側の残りの媒体との間に空気の層を形成でき、両者の分離性能を高めることができる。
【0019】
本発明の第7の態様の印刷装置は、前記第6の態様に従属する態様において、前記給送ローラーは、モーターによって駆動され、前記予備給送動作に伴って前記モーターが第1方向に回転するときに前記第1媒体と接触して回転し、前記非給送動作に伴って前記モーターが前記第1方向と反対側の第2方向に回転するときに前記第1媒体から離間することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、給送ローラーは、予備給送動作に伴ってモーターが第1方向に回転するときに第1媒体と接触して回転し、非給送動作に伴ってモーターが第2方向に回転するときに第1媒体から離間する。このような構成とすることで、非給送動作の実行中にも給送ローラーを回転させた状態とすることが可能になり、給送ローラーの回転制御が簡単になる。
【0021】
本発明の第8の態様の印刷装置は、前記第2の態様に従属する態様において、前記分離ローラーよりも前記搬送方向における下流側に前記媒体を搬送する搬送ローラーを備え、前記給送ローラーと前記分離ローラーと前記搬送ローラーの駆動源は共通することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、給送ローラーと分離ローラーと搬送ローラーの駆動源は共通する。このため装置構成を簡略化でき、装置を小型化することなどが可能になる。
【0023】
本発明の第9の態様の印刷装置は、前記第8の態様に従属する態様において、前記駆動源としてのモーターと前記搬送ローラーとの間に、前記モーターが第1方向に回転した場合でも前記モーターが前記第1方向と反対側の第2方向に回転した場合でも前記搬送ローラーが同じ方向に回転するように構成された、駆動力伝達部材を備えることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、モーターと搬送ローラーとの間に、モーターが第1方向に回転した場合でもモーターが第2方向に回転した場合でも搬送ローラーが同じ方向に回転するように構成された駆動力伝達部材を備える。このような構成とすることで、モーターの制御を簡単にすることができる。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を具体的に説明する。最初に、図1を参照して本発明の一実施例に係る印刷装置11の概要について説明する。印刷装置11は、例えば、媒体にインクを吐出して印刷するインクジェット式のプリンターである。図面に付記する座標においては、印刷装置11が水平面上に置かれているものとして、互いに直交する3つの仮想軸を、X軸、Y軸及びZ軸とする。Y軸は、印刷装置11の前後方向と平行な軸であり、Y軸を示す矢印の先端側を「前」とする。X軸は、印刷装置11の左右方向と平行な軸であり、X軸を示す矢印の先端側を「右」とする。Z軸は鉛直方向と平行な仮想軸であり、Z軸を示す矢印の先端側を「上」とする。
【0026】
図1に示すように、印刷装置11は、直方体状の筐体12、及び印刷装置11の各部を支持する本体フレーム16を有する。筐体12の内部には、媒体であるロール紙RPを収容するロール紙収容部40と、ロール紙RP以外の媒体である単票紙SPを収容する単票紙収容部60と、ロール紙収容部40から供給されるロール紙RPに印刷可能であり、かつ、単票紙収容部60から供給される単票紙SPに印刷可能である印刷部20が設けられる。ロール紙収容部40及び単票紙収容部60は、印刷部20の鉛直方向における下方に位置する。また、Y軸において印刷部20が存在する範囲が、Y軸においてロール紙収容部40が存在する範囲とY軸において単票紙収容部60が存在する範囲とに重なる。本実施形態の印刷装置11は、単票紙収容部60がロール紙収容部40よりも下方に位置する。
【0027】
1-1.印刷部
印刷部20は、媒体に向かってインクを吐出するノズル23を有するヘッド22と、ヘッド22を搭載するキャリッジ21と、X軸に沿って配置されたガイドレール24とを備える。また、印刷部20は、キャリッジ21をガイドレール24に沿って往復移動させる移動機構を備える。ヘッド22と対向する位置には、媒体を支持する支持部25が設けられる。ヘッド22は、キャリッジ21と共に媒体の幅方向に往復移動しながらインクを吐出することで、支持部25に支持された媒体に印刷を行う。なお、本実施形態では、印刷部20として、ヘッド22が幅方向に往復移動するシリアルヘッド方式を例示したが、ヘッドが幅方向に延在し固定して配列されたラインヘッド方式の印刷部であってもよい。
【0028】
筐体12の上部には、媒体が搬送される媒体搬送路30と、印刷部20で印刷された媒体を切断可能な切断部27とが設けられる。媒体搬送路30は、支持部25よりも上流に設けられる供給路30a及び反転路30bと、支持部25よりも下流に設けられる排出路30cとを有する。さらに、供給路30aは、媒体の一例であるロール紙が供給されるロール紙供給路30Rと、媒体の一例である単票紙が供給される単票紙供給路30Sとを有する。
【0029】
供給路30aは、ロール紙供給路30Rから支持部25までを結ぶ経路である。供給路30aの上流には、ロール紙供給路30Rと合流するロール紙合流点P2が設けられる。供給路30aの下流には、媒体を下流から上流に搬送する際に供給路30aから分岐する分岐点P1が設けられる。反転路30bは、分岐点P1からロール紙合流点P2までを結ぶ経路である。供給路30aにおけるロール紙合流点P2と分岐点P1との間には、単票紙供給路30Sと合流する単票紙合流点P3が設けられる。
【0030】
筐体12の前面には、印刷された媒体が排出される排出口14が設けられる。なお、本実施形態において、筐体12の前面とは、筐体12の前方に面する面である。排出路30cは、支持部25から排出口14までを結ぶ経路である。排出路30cの途中には、印刷部20で印刷された媒体を切断する切断部27が設けられる。切断部27は、媒体の幅方向であるX軸に沿って往復移動可能に構成された可動刃28と、幅方向に延在して固定された固定刃29とを有する。可動刃28は、排出路30cの上方に設けられ、固定刃29は、排出路30cの下方に設けられる。可動刃28が固定刃29に対して当接しながら幅方向に移動することにより、例えば、ロール状態から巻き解かれたロール紙RPや余白部などが切断される。切断部27の下方には、切断部27による切断で生じる切断屑を収容する切断屑収容部80を備える。
【0031】
媒体搬送路30には、媒体搬送路30に供給される媒体を搬送する搬送部31が設けられる。搬送部31は、供給路30aに上流から順に、中間ローラー32、中間ローラー32の外周に複数設けられる従動ローラー33、及び上流搬送ローラー対34を有する。従動ローラー33は、回転自在に設けられ、中間ローラー32との間に媒体を挟んで従動回転する。搬送部31は、排出路30cに上流から順に、下流搬送ローラー対35、第1ローラー対36、及び第2ローラー対37を有する。第1ローラー対36は切断部27の上流に位置し、第2ローラー対37は切断部27の下流に位置する。
【0032】
中間ローラー32、従動ローラー33、上流搬送ローラー対34、下流搬送ローラー対35、第1ローラー対36、及び第2ローラー対37は、媒体を挟んだ状態で回転することにより媒体を搬送する。搬送部31が正転駆動することにより、媒体がY軸のプラス側、すなわち上流から下流に搬送される。搬送部31が逆転駆動することにより、媒体がY軸のマイナス側、すなわち下流から上流に搬送される。
【0033】
印刷装置11は、搬送部31を正転駆動して媒体を上流から下流に搬送しつつ、支持部25に位置する媒体に対して印刷部20からインクを吐出して媒体の第1面に印刷する。印刷装置11は、媒体の第1面の裏面である第2面に印刷可能に構成されている。印刷装置11は、搬送部31を逆転駆動して第1面を印刷後の媒体を下流から上流に搬送する。媒体は、分岐点P1から反転路30bを経由し供給路30aの上流に達する。印刷装置11が再び搬送部31を正転駆動し、媒体が中間ローラー32の外周を1回転することにより、媒体の表裏が反転する。印刷装置11は、媒体を上流から下流に搬送しつつ、支持部25に位置する媒体に対して印刷部20からインクを吐出して媒体の第2面に印刷する。これにより、媒体の両面に印刷が実行される。なお、媒体がロール状態から巻き解かれたロール紙RPの場合、表面の印刷後に切断部27で単票紙状態に切断された媒体に対して裏面の印刷が実行される。
【0034】
1-2.ロール紙収容部
筐体12内において、印刷部20の鉛直方向における下方には、ロール紙収容部40が設けられる。また、Y軸方向において、ロール紙収容部40が存在する範囲は、印刷部20が存在する範囲に重なる。ロール紙収容部40は、前面の下部に筐体12の一部をなす前板部42を備える。ロール紙収容部40は、ロール紙RPが筐体12のX方向に延びる支軸41を介して回転可能に支持される。すなわち、ロール紙RPは、ロール紙収容部40により、支軸41とともに支軸41を回転中心として回転可能に支持される。
【0035】
支軸41は、正逆両方向に回転駆動可能に構成される。ロール紙RPは、支軸41を介して正逆両方向に回転駆動される。また、ロール紙収容部40には、ロール状態から巻き解かれるロール紙RPをロール紙供給路30Rに向かって搬送するためのロール紙搬送路50が設けられる。
【0036】
ロール紙搬送路50は、その上流端部、すなわちロール紙搬送路50におけるロール紙RPの前斜め下方の位置に、ほぼ直角に曲がる屈曲部50aを有する。そして、ロール紙搬送路50における屈曲部50aの直ぐ下流側には、ロール紙RPの曲がり癖を矯正するデカールを行うためのデカール機構51が設けられる。デカール機構51は、第1ローラー52と、第2ローラー53と、屈曲部50aの一部を形成する曲面54aを有した曲面部54と、第1ローラー52を移動させるための移動装置55とを備える。本実施形態において、第2ローラー53は筐体12内に配置された後述のモーター100によって駆動される駆動ローラーによって構成され、第1ローラー52はニップ位置にあるときに第2ローラー53の回転駆動力がロール紙RPを介して伝達されることで従動回転する従動ローラーによって構成される。
【0037】
ロール紙搬送路50におけるデカール機構51よりも下流側には、ロール紙RPに搬送力を付与するロール紙搬送ローラー対56が適宜間隔を置いて設けられる。ロール紙搬送ローラー対56が回転駆動することにより、ロール紙RPがロール紙供給路30Rに搬送される。
【0038】
ロール紙収容部40は、本体フレーム16に支持される。ロール紙収容部40は、ロール紙RPを収容する際に、筐体12の前面における中央部に形成された開口部13を通じて印刷装置11の前方に開放される。ロール紙収容部40は、本体フレーム16に対して印刷装置11の前方に引き出し式に移動可能に構成される。すなわち、印刷装置11に対して排出口14から媒体が排出される側に、ロール紙収容部40が移動可能な構成である。
【0039】
1-3.切断屑収容部
切断屑収容部80は、ロール紙収容部40の前方に位置し、本体フレーム16に着脱可能に設けられる。切断屑収容部80の下側には、引き出し式のロール紙収容部40の前板部42が露出している。
【0040】
切断屑収容部80は、筐体12への取付時に開口部13を覆う外壁81と、外壁81と対向する内壁82と、X方向の両端において外壁81及び内壁82と接合される側壁83とを有する。切断屑収容部80の下端部には、底壁84が設けられ、切断屑収容部80の上端部には、切断部27で切断された切断屑を受容する受容口85が設けられる。内壁82は、ロール状態のロール紙RPの外周に倣って湾曲している。
【0041】
切断屑収容部80の取付時に、開口部13は外壁81及び前板部42によって覆われる。このとき、外壁81の外面は前板部42の外面と面一になる。すなわち、切断屑収容部80の外壁81及びロール紙収容部40の前板部42は、印刷装置11の筐体12の一部として機能する。また、ロール紙収容部40が前方に開放された状態では、切断屑収容部80が本体フレーム16から取り外される。
【0042】
1-4.単票紙収容部
筐体12内において、ロール紙収容部40の鉛直方向における下方には、単票紙収容部60が設けられる。Y軸方向において、単票紙収容部60が存在する範囲は、ロール紙収容部40が存在する範囲に重なる。単票紙収容部60は、前面に筐体12の一部をなす前板部62を備える。単票紙収容部60は、単票状の媒体である単票紙SPが収容されるボックス状のトレイ61を有する。トレイ61は、単票紙SPを幅方向に位置決めする際に操作される一対のエッジガイド65と、単票紙SPを前後方向に位置決めする際に操作されるストッパー64と、トレイ61に収容された単票紙SPの下流側の端部をピックアップローラー72に対向させる載置面63とを備える。
【0043】
単票紙収容部60は、本体フレーム16に支持される。単票紙収容部60は、単票紙SPを収容する際に、筐体12の前面における下部に形成された開口部17を通じて印刷装置11の前方に開放される。単票紙収容部60は、本体フレーム16に対して印刷装置11の前方に引き出し式に移動可能に構成される。また、単票紙収容部60の移動経路、すなわち単票紙収容部60の前方には、切断屑収容部80が位置しない。
【0044】
単票紙収容部60は、単票紙SPを印刷部20に向けて供給する単票紙供給ユニット70の一部をなす。単票紙供給ユニット70は、複数の単票紙SPを積載可能な載置部としての載置面63を有する単票紙収容部60、単票紙搬送路71、単票紙収容部60と対向する位置に設けられ単票紙収容部60から印刷部20に向かう搬送方向Aに向けて単票紙収容部60に載置された単票紙SPを給送する給送ローラーとしてのピックアップローラー72、リタードローラー73、分離ローラー74、分離部材76などを有する。
【0045】
ピックアップローラー72は、単票紙収容部60に収容された単票紙SPの下流側端部寄りの上方に位置する。ピックアップローラー72は、単票紙SPに接触した状態で回転することにより、単票紙SPを取り出す。リタードローラー73及び分離ローラー74は、ピックアップローラー72の下流において上下方向に対向して設けられる。リタードローラー73及び分離ローラー74は、ピックアップローラー72によって単票紙収容部60から取り出された単票紙SPを挟み込んだ状態で回転することで、単票紙SPを印刷部20に向けて送り出す。
【0046】
分離ローラー74は、単票紙SPに対してピックアップローラー72が接触する面と同一の面に接触するローラーであり、リタードローラー73はその反対側の面に接触するローラーである。すなわち、リタードローラー73は、分離ローラー74の下方に位置する。なお、リタードローラー73は、分離ローラー74の回転に伴って従動回転するローラーである。また、リタードローラー73は、単票紙SPに対する摩擦係数が分離ローラー74よりも大きくなるように構成されている。そして、分離ローラー74及びリタードローラー73は、この摩擦係数の差によって単票紙SPを一枚ずつに分離して搬送する。
【0047】
また、分離部材76は、ピックアップローラー72に搬送方向Aに沿って給送された単票紙SPの先端に摺接して、単票紙収容部60に積層された単票紙SPが重送されないように、積層された単票紙SPのうちの一番上にある単票紙SP1をその他の単票紙SPに対して分離する。なお、リタードローラー73及び分離部材76などによる積層された単票紙SPの分離についての詳細は後述する。
【0048】
単票紙搬送路71は、分離ローラー74及びリタードローラー73から上方に屈曲し、ロール紙収容部40の背後を上方に向かって単票紙供給路30Sまで伸びる。単票紙搬送路71には、単票紙SPに搬送力を付与する単票紙搬送ローラー対75が適宜間隔を置いて設けられる。単票紙搬送ローラー対75が回転駆動することにより、単票紙SPが単票紙供給路30Sに搬送される。
【0049】
2.単票紙収容部に収容された単票紙の給送について
以下に、単票紙収容部60に収容された単票紙SPの給送について図2から図9を参照して詳細に説明する。本実施例の印刷装置11は、単票紙搬送ローラー対75に向けて単票紙SPを給送する前に、予備給送動作と非給送動作とを繰り返すことで、単票紙SPを損傷させることなく単票紙SPの重送を抑制することを可能にする構成となっている。
【0050】
ここで、図2は、印刷装置11において単票紙SPを載置面63から単票紙搬送ローラー対75に向けて給送する前に予備給送動作を行う際の状態を表す側面断面図であって、予備給送動作の開始直後にピックアップローラー72を単票紙SPに当接させてピックアップローラー72を回転方向C1に回転させ始めた状態を表している。また、図3は、印刷装置11における側面断面図であって、図2の状態の後にピックアップローラー72を単票紙SPから離間させて非給送動作を実行している状態を表している。なお、この状態では、ピックアップローラー72は回転方向C2に回転している。そして、図4は、印刷装置11における側面断面図であって、図3の状態の後にピックアップローラー72を単票紙SPに再度当接させて予備給送動作を再度実行している状態を表している。なお、この状態では、ピックアップローラー72は回転方向C1に回転している。予備給送動作においては、ピックアップローラー72は単票紙SP1に当接するとともに、回転方向C1に回転するので、単票紙SP1を搬送方向下流側に移動させることになる。また、非給送動作においては、ピックアップローラー72を単票紙SPから離間するので、単票紙SPを搬送方向下流側には移動させない。
【0051】
印刷装置11は、図2及び図4で表される予備給送動作と、図3で表される非給送動作とを、3回繰り返す。すると、図4の単票紙SPの積載状態で表されるように、載置面63に積載された複数の単票紙SPのうちの少なくとも一部が、単票紙SPのうちの上側に積載された単票紙SPが下側の単票紙SPよりも搬送方向Aにおける下流側に配置される状態を形成する。特に、載置面63に積載された複数の単票紙SPのうちの単票紙SPのうちの一番上に積載された単票紙SP1がその他の単票紙SPよりも搬送方向Aにおける下流側に配置される積載ずれ状態S1を形成する。なお、予備給送動作の開始前は、ピックアップローラー72は単票紙SPに対して離間した図3で表される状態となっている。ピックアップローラー72が単票紙SPに対して接触している時間が長くなると単票紙SPを損傷する虞が出るためである。
【0052】
別の表現をすると、ピックアップローラー72は、載置面63から搬送方向Aにおける下流への単票紙SPの給送を開始する前に、載置面63に積載された単票紙SPのうちの積載方向における最もピックアップローラー72側の第1媒体である単票紙SP1に接触するとともに回転する予備給送動作と、予備給送動作とは異なる動作を行う非給送動作と、を複数回繰り返すことにより、単票紙SP1が積載方向における単票紙SP1より載置面63側の単票紙SPよりも搬送方向Aにおける下流側に配置される積載ずれ状態S1を形成する。そして、ピックアップローラー72は、積載ずれ状態S1の形成後に、単票紙SP1を載置面63から搬送方向Aにおける下流側に給送する。
【0053】
このように、積載ずれ状態S1を形成することで、ピックアップローラー72により単票紙SP1を単票紙搬送ローラー対75に向けて給送する際、単票紙SP1と単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPとの分離がしやすくなる。載置面63に積載された単票紙SPの各々がそれと接触する単票紙SPに対して移動しやすくなるためである。このため、本実施例の印刷装置11は、単票紙SPの損傷を抑制しつつ載置面63に積載された単票紙SPの給送精度を向上することができる。
【0054】
また、本実施例の印刷装置11は、図2から図4で表されるように、分離ローラー74とリタードローラー73とからなる分離ローラー対77を、ピックアップローラー72よりも搬送方向Aにおける下流側に備えている。積載ずれ状態S1を形成することが可能なこのような構成とすることで、分離ローラー対77による単票紙SPに対するニップ圧を弱くしても、単票紙SP1と単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPとの分離がしやすくなる。したがって、本実施例の印刷装置11は、単票紙SPの損傷を抑制しつつ載置面63に積載された単票紙SPの給送精度を向上することができている。
【0055】
また、本実施例の印刷装置11は、図2から図4で表されるように、搬送方向Aにおいてピックアップローラー72と分離ローラー対77との間に、ピックアップローラー72により給送される単票紙SPの先端SPeが摺接する分離部材76を備えている。すなわち、単票紙SP1と単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPとを分離する機構を、分離ローラー対77に加えて分離部材76を備えることで、2種類有することとなる。したがって、このように、分離部材76を備えることで、単票紙SP1と単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPとの分離が特にしやすくなる。
【0056】
ここで、図5及び図6を参照して、分離部材76の詳細な構成について説明する。分離部材76は、X方向に沿う幅方向に複数形成されている。そして、分離部材76として、幅方向において中央に近い位置に分離部材76Aが形成され、幅方向において分離部材76Aの両外側に分離部材76Bが形成されている。そして、図5で表されるように、分離部材76A及び分離部材76Bのいずれにも、単票紙SP1の先端が摺接する摺接面としての、単票紙SPの幅方向から見て搬送方向Aに対して傾斜する傾斜面761が設けられている。
【0057】
分離部材76のうちの分離部材76Aは、図6で表されるように、単票紙SP1の幅方向に延在する窪み部762が形成された傾斜面761を備えている。このように、分離部材76Aに傾斜面761と窪み部762とが形成されていることで、単票紙SP1と単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPとの分離精度が特に向上する。
【0058】
上記のように、本実施例の印刷装置11は、分離部材76として、窪み部762が形成される窪み部形成分離部材である分離部材76Aと、窪み部762が形成されない窪み部非形成分離部材である分離部材76Bと、を有し、図5で表されるように、分離部材76Aは分離部材76が配置される領域において単票紙SP1の幅方向の中心を基準にして対称の位置に配置され、分離部材76Bは分離部材76が配置される領域において単票紙SP1の幅方向の中心を基準にして対称の位置に配置されている。具体的には、概ね搬送方向Aから見た場合、分離部材76Aの両外側に分離部材76Bが設けられている。別の表現では、概ね搬送方向Aから見た場合、分離部材76Bに対して単票紙SPの幅方向の中心寄りに分離部材76Aが設けられている。このような構成とすることで、単票紙SP1と単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPとの分離精度を特に向上することができるとともに、全ての分離部材76を窪み部形成分離部材とする場合よりも装置構成を簡略化することができる。また、単票紙SP1を給送する際に、単票紙SP1が斜行することを抑制することができる。また、本実施例の印刷装置11は、単票紙SPの幅にかかわらず、搬送路の幅方向における中央部に位置に寄せられた状態で単票紙SPが給送される構成となっているので、分離効果の高い分離部材76Aに単票紙SPを接触させることができる。
【0059】
詳細には、ピックアップローラー72により単票紙SP1を給送する際、単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPも搬送方向Aに押される。その際、単票紙SP1の先端SPeは窪み部762が形成される領域よりも上部で分離部材76に接触し、単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPの先端SPeは窪み部762が形成される領域で分離部材76に接触する。窪み部762は、単票紙SPが搬送方向Aに押されてもそれを止める効果が大きいので、単票紙SP1のみが搬送方向Aに給送されやすくなり、単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPは分離部材76で止められやすくなる。
【0060】
ここで、本実施例の印刷装置11は、図1で表されるように、分離ローラー74よりも搬送方向Aにおける下流側に単票紙SPを搬送する搬送ローラーとしての単票紙搬送ローラー対75を備えている。そして、本実施例の印刷装置11においては、ピックアップローラー72と、分離ローラー74と、単票紙搬送ローラー対75を構成するローラーのうちの駆動ローラーと、の駆動源はいずれもモーター100である。なお、モーター100は、図7において回転軸のみが表されている。このように、ピックアップローラー72と、分離ローラー74と、単票紙搬送ローラー対75の駆動ローラーと、の駆動源を共通化することで、装置構成を簡略化でき、装置を小型化することなどが可能になる。
【0061】
また、本実施例の印刷装置11は、図7で表されるように、駆動力伝達部材110を備えている。駆動力伝達部材110は、モーター100の回転軸と単票紙搬送ローラー対75の駆動ローラーの回転軸109との間に設けられており、モーター100の回転軸が第1方向R1に回転した場合でもモーター100の回転軸が第1方向R1と反対側の第2方向R2に回転した場合でも単票紙搬送ローラー対75の駆動ローラーが同じ方向である回転方向R2に回転するように構成されている。このような構成とすることで、モーター100の制御を簡単にすることができる。
【0062】
ここで、駆動力伝達部材110の詳細について、図7を参照して説明する。モーター100の回転軸には、モーターピニオン101が設けられている。モーターピニオン101はモーター100の回転軸に同期して第1方向R1と第2方向R2とに回転する。モーターピニオン101は歯車102と係合している。このため、モーターピニオン101が第1方向R1に回転すると歯車102は第2方向R2に回転し、モーターピニオン101が第2方向R2に回転すると歯車102は第1方向R1に回転する。
【0063】
歯車102は、デュアルワンウェイ歯車103の基部歯車部103aと係合している。このため、歯車102が第1方向R1に回転すると基部歯車部103aは第2方向R2に回転し、歯車102が第2方向R2に回転すると基部歯車部103aは第1方向R1に回転する。
【0064】
ここで、デュアルワンウェイ歯車103は、1つの基部歯車部103aと2つのワンウェイ歯車部103bとで構成されている。図7では、2つのワンウェイ歯車部103bのうちの-X方向側の一方のみが表されており、2つのワンウェイ歯車部103bのうちの+X方向側の他方は基部歯車部103aで隠れている。なお、2つのワンウェイ歯車部103bの構成は同様である。
【0065】
しかしながら、-X方向側のワンウェイ歯車部103bは、基部歯車部103aが回転方向R1に回転した場合は基部歯車部103aとともに回転方向R1に回転するが、基部歯車部103aが回転方向R2に回転した場合は回転せず基部歯車部103aは空回りする。逆に、+X方向側のワンウェイ歯車部103bは、基部歯車部103aが回転方向R2に回転した場合は基部歯車部103aとともに回転方向R2に回転するが、基部歯車部103aが回転方向R1に回転した場合は回転せず基部歯車部103aは空回りする。すなわち、基部歯車部103aが回転方向R1に回転した場合は2つのワンウェイ歯車部103bのうちの-X方向側のワンウェイ歯車部103bのみが回転方向R1に回転し、基部歯車部103aが回転方向R2に回転した場合は2つのワンウェイ歯車部103bのうちの+X方向側のワンウェイ歯車部103bのみが回転方向R2に回転する。
【0066】
-X方向側のワンウェイ歯車部103bは、歯車104と係合している。このため、-X方向側のワンウェイ歯車部103bが第1方向R1に回転すると歯車104は第2方向R2に回転する。歯車104は歯車105と係合している。このため、歯車104が第2方向R2に回転すると歯車105は第1方向R1に回転する。歯車105は歯車107と係合している。このため、歯車105が第1方向R1に回転すると歯車107は第2方向R2に回転する。
【0067】
+X方向側のワンウェイ歯車部103bは、歯車106と係合している。このため、+X方向側のワンウェイ歯車部103bが第2方向R2に回転すると歯車106は第1方向R1に回転する。歯車106は歯車107と係合している。このため、歯車106が第1方向R1に回転すると歯車107は第2方向R2に回転する。すなわち、モーター100の回転軸が回転方向R1に回転した場合も、モーター100の回転軸が回転方向R2に回転した場合も、歯車107は第2方向R2に回転する。
【0068】
歯車107は、単票紙搬送ローラー対75の駆動ローラーの回転軸109に嵌められた歯車108と係合している。このため、歯車107が第2方向R2に回転すると歯車108は第1方向R1に回転し、単票紙搬送ローラー対75の駆動ローラーも第1方向R1に回転する。単票紙搬送ローラー対75の駆動ローラーが第1方向R1に回転すると、単票紙搬送ローラー対75でニップされた単票紙SPは搬送方向Aに搬送される。
【0069】
ここで、図3で表されるように、本実施例の印刷装置11においては、ピックアップローラー72は、非給送動作の実行中は単票紙SP1から離間する。このような構成とすることで、非給送動作の実行中にピックアップローラー72が単票紙SP1を給送させてしまうことを抑制できるとともに、単票紙SP1から離間する動作を挟むことで単票紙SP1と単票紙SP1よりも載置面63側の残りの単票紙SPとの間に空気の層を形成でき、両者の分離性能を高めることができる。
【0070】
なお、本実施例においては、非給送動作の実行中にはピックアップローラー72を回転方向C2に逆回転させる。ただし、このような構成に限定されず、非給送動作の実行中にピックアップローラー72を離間させる代わりに、ピックアップローラー72を単票紙SP1と接触させたまま停止させるなどとしてもよい。
【0071】
そして、本実施例の印刷装置11では、ピックアップローラー72は、モーター100によって駆動され、図2及び図4で表される予備給送動作に伴ってモーター100の該回転軸が第1方向R1に回転するときに単票紙SP1と接触する。そして、ピックアップローラー72は、図3で表される非給送動作に伴ってモーター100の回転軸が図7で表される第1方向R1と反対側の第2方向R2に回転するときに単票紙SP1から離間する。このような構成とすることで、非給送動作の実行中にもピックアップローラー72を回転させた状態とすることが可能になり、ピックアップローラー72の回転制御が簡単になる。
【0072】
ここで、図8は、印刷装置11におけるピックアップローラー72の移動機構120を表す斜視図であって、ピックアップローラー72を単票紙SPに当接させる方向に移動させた状態を表している。また、図9は、印刷装置11におけるピックアップローラー72の移動機構120を表す斜視図であって、ピックアップローラー72を単票紙SPから離間させる方向に移動させた状態を表している。図8及び図9で表されるように、移動機構120は、モーター100の回転力が伝わる回転軸121と、回転軸121に嵌められ回転軸121とともに第3方向R3及び第4方向R4に回転する歯車122と、歯車122と嵌合する歯車部123aとトルクリミッター部123bとを有する歯車123と、ピックアップローラー72の回転軸125に嵌められ歯車部123aと嵌合する歯車124と、歯車122、歯車123及び歯車124が設けられこれらを一体的に移動させる板金部126と、を備えている。
【0073】
ピックアップローラー72を単票紙SPに当接させる方向に移動させた状態に対応する図8で表されるように、予備給送動作に伴ってピックアップローラー72を単票紙SPに当接させる場合、回転軸121及び歯車122は第3方向R3に回転する。すると、歯車123は第4方向R4に回転するとともにトルクリミッター部123bにトルクがかかり歯車124を下方に押し下げるように板金部126に力が加わる。そして、歯車123が第4方向R4に回転することに伴い歯車124とピックアップローラー72の回転軸125は第3方向R3に回転する。ここで、第3方向R3は、図2から図4の回転方向C1に対応する。
【0074】
一方、ピックアップローラー72を単票紙SPから離間させる方向に移動させた状態に対応する図9で表されるように、非給送動作に伴ってピックアップローラー72を単票紙SPから離間させる場合、回転軸121及び歯車122は第4方向R4に回転する。すると、歯車123は第3方向R3に回転するとともにトルクリミッター部123bにトルクがかかり歯車124を上方に押し上げるように板金部126に力が加わる。そして、歯車123が第3方向R3に回転することに伴い歯車124とピックアップローラー72の回転軸125は第4方向R4に回転する。ここで、第4方向R4は、図2から図4の回転方向C2に対応する。
【0075】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。また、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
11…印刷装置、12…筐体、13…開口部、14…排出口、16…本体フレーム、17…開口部、20…印刷部、21…キャリッジ、22…ヘッド、23…ノズル、24…ガイドレール、25…支持部、27…切断部、28…可動刃、29…固定刃、30…媒体搬送路、30a…供給路、30b…反転路、30c…排出路、30R…ロール紙供給路、30S…単票紙供給路、31…搬送部、32…中間ローラー、33…従動ローラー、34…上流搬送ローラー対、35…下流搬送ローラー対、36…第1ローラー対、37…第2ローラー対、40…ロール紙収容部、41…支軸、42…前板部、50…ロール紙搬送路、50a…屈曲部、51…デカール機構、52…第1ローラー、53…第2ローラー、54…曲面部、54a…曲面、55…移動装置、56…ロール紙搬送ローラー対、60…単票紙収容部、61…トレイ、62…前板部、63…載置面(載置部)、64…ストッパー、65…エッジガイド、70…単票紙供給ユニット、71…単票紙搬送路、72…ピックアップローラー(給送ローラー)、73…リタードローラー、74…分離ローラー、75…単票紙搬送ローラー対、76…分離部材、76A…分離部材(窪み部形成分離部材)、76B…分離部材(窪み部非形成分離部材)、77…分離ローラー対、80…切断屑収容部、81…外壁、100…モーター(駆動源)、101…モーターピニオン、102…歯車、103…デュアルワンウェイ歯車、103a…基部歯車部、103b…ワンウェイ歯車部、104…歯車、105…歯車、106…歯車、107…歯車、108…歯車、109…回転軸、110…駆動力伝達部材、120…移動機構、121…回転軸、122…歯車、123…歯車、123a…歯車部、123b…トルクリミッター部、124…歯車、125…回転軸、126…板金部、761…傾斜面、762…窪み部、S1…積載ずれ状態、SP…単票紙(媒体)、SP1…単票紙、SPe…先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9