(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127167
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】多機能救助工具
(51)【国際特許分類】
B25F 1/02 20060101AFI20240912BHJP
A62B 99/00 20090101ALI20240912BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20240912BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240912BHJP
B26B 29/04 20060101ALI20240912BHJP
B65G 7/12 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B25F1/02
A62B99/00 Z
B25F5/02
B25F5/00 G
B26B29/04
B65G7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036134
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】516322728
【氏名又は名称】有限会社アグリプロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】深代 光治
【テーマコード(参考)】
2E184
3C061
3C064
【Fターム(参考)】
2E184JA07
2E184KA04
2E184KA20
3C061BC03
3C064AA01
3C064AA04
3C064AA05
3C064AA20
3C064AC02
3C064AC03
3C064AC08
3C064AC14
3C064AD02
3C064AD03
3C064BA12
3C064BB80
3C064BB86
3C064CA03
3C064CB57
3C064CB58
3C064CB59
3C064CB61
3C064CB71
3C064CB86
3C064CB91
3C064CB93
(57)【要約】
【課題】手動による破砕、切断、及び引上げを含む多彩な作業を可能とする多機能救助工具を提供する。
【解決手段】略棒状の枠体(2)と、前記枠体(2)の長手方向の一方の端部に取り外し可能に装着されたビットツールと、前記枠体(2)の長手方向の他方の端部から突出する一対の刃(4a)を具備するカッター部(4)と、前記枠体(2)の内部に設置されたドラム(5c)と前記ドラム(5c)に巻き取り可能でありかつ前記枠体(2)の側面から引き出されたワイヤーロープ(5b)とを具備するウインチ部(5)と、を有する多機能救助工具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略棒状の枠体(2)と、
前記枠体(2)の長手方向の一方の端部に取り外し可能に装着されたビットツール(3,3A)と、
前記枠体(2)の長手方向の他方の端部から突出する一対の刃(4a)を具備するカッター部(4)と、
前記枠体(2)の内部に設置されたドラム(5c)と前記ドラム(5c)に巻き取り可能でありかつ前記枠体(2)の側面から引き出されたワイヤーロープ(5b)とを具備するウインチ部(5)と、を有する多機能救助工具。
【請求項2】
前記ビットツール(3,3A)として、固体を破砕するための破砕ビット又は梃子の作用点として用いるための平板状ビットのいずれかが装着される請求項1に記載の多機能救助工具。
【請求項3】
前記カッター部(4)は、
前記一対の刃(4a)の開閉を操作するために前記枠体(2)の側面上に設けられ前記枠体(2)の長手方向に沿った閉位置と長手方向に対して鋭角をなす開位置との間で旋回可能な操作レバー(4f)と、
前記操作レバー(4f)の旋回動作を前記一対の刃(4a)の開閉に変換する油圧機構と、を具備する請求項1に記載の多機能救助工具。
【請求項4】
前記ウインチ部(5)は、
前記枠体(2)の側面から引き出されたワイヤーロープ(5b)を巻き取るために前記ドラム(5c)と連結されかつ前記枠体(2)の側面から突出して設けられた巻上ハンドル(5a)と、
前記枠体(2)の側面から引き出された前記ワイヤーロープ(5b)の先端に取り付けられたフック(5e)と、
非使用時に前記フック(5e)を掛けるために前記枠体(2)の側面上に設けられたフック掛け(5f)と、を具備する請求項1に記載の多機能救助工具。
【請求項5】
前記カッター部(4)の前記一対の刃(4a)の開閉、前記ウインチ部(5)の前記ワイヤーロープ(5b)の巻き取り、及び前記ビットツール(3)の振動をそれぞれ行わせるための3つの電動機(8a,8b,8c)と、前記電動機(8a,8b,8c)の操作スイッチ(8d)と、を有し、前記電動機(8a,8b,8c)は内部電源又は外部電源により駆動される、請求項1に記載の多機能救助工具。
【請求項6】
前記枠体(2)の長手方向に対して垂直な方向に互いに反対向きに前記枠体(2)の側面上からそれぞれ延在する一対の枠体ハンドル(6)を有する、請求項1~5のいずれかに記載の多機能救助工具。
【請求項7】
前記枠体(2)を吊り下げるために前記枠体(2)の側面上に設けられた吊り環(7)を有する請求項1~5のいずれかに記載の多機能救助工具。
【請求項8】
前記一対の刃(2a)を覆いかつ前記枠体(2)に装着されるカッターカバー(2d)を具備する請求項1~5のいずれかに記載の多機能救助工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時の瓦礫等の撤去に用いる多機能救助工具に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害の際には被災者が瓦礫に閉じ込められることがある。少しでも早い救出が望ましいが、専用の重機の到着が遅れることもある。安全を確保して可能な限り人力での救助活動を行う場合に、人力のみでは瓦礫の撤去が困難なことも多々ある。
【0003】
特許文献1には、バールである防災用具であって、先端に破砕用のビットを備えると共に、ビットに続く杆部が伸縮調節可能に構成され、油圧ジャッキを内蔵する防災用具が開示されている。特許文献2には、バール本体部に、スコップ頭部とツルハシ剣先部を設けた多機能工具が開示されている。特許文献3には、バール先端をツルハシやハンマーに交換可能な救助用バールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-165529号公報
【特許文献2】特開2015-58495号公報
【特許文献3】特開2016-67701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の多機能救助工具は、破砕や掘削の機能は有するが、カッターによる切断やワイヤーロープによる引上げ機能については不十分であった。
【0006】
本発明は、破砕、切断、及び引上げを含む多彩な作業を可能とする多機能救助工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく本発明は、以下の構成を提供する。括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付している。
【0008】
[1]本発明の態様は、略棒状の枠体(2)と、
前記枠体(2)の長手方向の一方の端部に取り外し可能に装着されたビットツール(3,3A)と、
前記枠体(2)の長手方向の他方の端部から突出する一対の刃(4a)を具備するカッター部(4)と、
前記枠体(2)の内部に設置されたドラム(5c)と前記ドラム(5c)に巻き取り可能でありかつ前記枠体(2)の側面から引き出されたワイヤーロープ(5b)とを具備するウインチ部(5)と、を有する多機能救助工具である。
[2]上記態様において、前記ビットツール(3,3A)として、固体を破砕するための破砕ビット又は梃子の作用点として用いるための平板状ビットのいずれかが装着される。
[3]上記態様において、前記カッター部(4)は、
前記一対の刃(4a)の開閉を操作するために前記枠体(2)の側面上に設けられ前記枠体(2)の長手方向に沿った閉位置と長手方向に対して鋭角をなす開位置との間で旋回可能な操作レバー(4f)と、
前記操作レバー(4f)の旋回動作を前記一対の刃(4a)の開閉に変換する油圧機構と、を具備する。
[4]上記態様において、前記ウインチ部(5)は、
前記枠体(2)の側面から引き出されたワイヤーロープ(5b)を巻き取るために前記ドラム(5c)と連結されかつ前記枠体(2)の側面から突出して設けられた巻上ハンドル(5a)と、
前記枠体(2)の側面から引き出された前記ワイヤーロープ(5b)の先端に取り付けられたフック(5e)と、
非使用時に前記フック(5e)を掛けるために前記枠体(2)の側面上に設けられたフック掛け(5f)と、を具備する。
[5]上記態様において、前記カッター部(4)の前記一対の刃(4a)の開閉、前記ウインチ部(5)の前記ワイヤーロープ(5b)の巻き取り、及び前記ビットツール(3)の振動をそれぞれ行わせるための3つの電動機(8a,8b,8c)と、前記電動機(8a,8b,8c)の操作スイッチ(8d)と、を有し、前記電動機(8a,8b,8c)は内部電源又は外部電源により駆動される。
[6]上記態様において、前記枠体(2)の長手方向に対して垂直な方向に互いに反対向きに前記枠体(2)の側面上からそれぞれ延在する一対の枠体ハンドル(6)を有する。
[7]上記態様において、前記枠体(2)を吊り下げるために前記枠体(2)の側面上に設けられた吊り環(7)を有する。
[8]上記態様において、前記一対の刃(2a)を覆いかつ前記枠体(2)に装着されるカッターカバー(2d)を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、破砕、切断、及び引上げを含む多彩な作業を可能とする多機能救助工具が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の多機能救助工具の一実施形態の構成例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2(a)(b)は
図1に示したビットツールの、(c)(d)は別の種類のビットツールの例を示す概略的な正面図と側面図である。
【
図3】
図3は、非使用時にカッター部を覆うカッターカバーの例を概略的に示す。
【
図5】
図5は、
図1の多機能救助工具において、第2側面及び第3側面が顕れている概略斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の多機能救助工具において、第3側面及び第4側面が顕れている概略斜視図である。
【
図7】
図7は、破砕ビットであるビットツールを用いた作業状況の一例を概略的に示す。
【
図8】
図8は、カッター部を用いた作業状況の一例を概略的に示す。
【
図9】
図9は、ウインチ部を用いた作業状況の一例を概略的に示す。
【
図10】
図10は、吊り環を用いた作業状況の一例を概略的に示す。
【
図11】
図11は、本発明の多機能救助工具の別の実施形態の構成例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図示の方向に従って「上」「下」の表現を用いるが、本発明の多機能救助工具は、多様な姿勢で使用されるものである。
【0012】
図1は、本発明の多機能救助工具の一実施形態の構成例を示す概略斜視図である。多機能救助工具1は、略棒状の枠体2を有する。枠体2に対して異なる機能をもつ複数の工具が取り付けられている。枠体2は、図示の例では4つの平坦な側面をもつ略四角柱の側面部材2aから形成されている。
図1では、第1側面2a1及び第2側面2a2が顕れている。枠体2は、金属製、例えば鋼製又は鉄製が好ましい。多機能救助工具1は、少なくとも人力で取り扱い可能な重量でなければならない。しかしながら、作業対象物を砕くために多機能救助工具1の自重を利用することもあるため、ある程度の重量を有することが好ましい。限定しないが、重量は、例えば10~30kg、好ましくは15~20kgである。
【0013】
枠体2の全長Lは、多機能救助工具1の長手方向の全長の大部分を占める。多機能救助工具1は、平均的な大人が手動で使用することを前提としている。したがって、全長Lは、例えば100cm~140cm、好ましくは120~130cmとする。枠体2の長手方向に垂直な横断面の差し渡し長さの平均値は、例えば10cm~30cmとする。しかしながら、これらの長さに限定されない。図示の例では、枠体2は、その上端近傍が太くかつ一定の横断面を有し、さらに下方に向かってテーパー状に細くなっている。別の例として、枠体2は、上下方向において一定の横断面をもつ形状であってもよい。また別の例として、枠体2を、略四角柱以外の略多角柱又は略円柱の側面部材2aから形成してもよい。
【0014】
枠体2の一方の端部、ここでは下端部にビットツール3が装着されている。
図2(a)(b)は、
図1に示したビットツール3の概略的な正面図と側面図である。ビットツール3は、本体である円柱状のビット軸部3bと、作業を行うビット先端3aとを有する。ビット先端3bは、図示の例では、コンクリート等の硬い固体を破砕するための破砕ビットである。ビットツール3は、ビット軸部3bを枠体2の下端面の装着穴から挿入することにより装着される。このために、ビット軸部3bの上端近傍に、ビット軸部3bに対し垂直に延在する取付ピン部3cが設けられている。ビット軸部3b及び取付ピン部3cを枠体2に挿入し、その後、ビット軸部3bの軸を中心に所定の角度だけ回動させることで装着が完了する。ビットツール3の取付手段として、他にも公知の多様な方式を利用できる。
【0015】
ビットツール3は、枠体2から取り外し可能であり、別の種類のビットツール3Aに交換することができる。
図2(c)(d)は、別の種類のビットツール3Aの例を示す概略的な正面図と側面図である。ビットツール3Aのビット先端3aは、平板状ビットである。このビットツール3Aを装着した多機能救助工具1は、例えば、重いものを動かすための梃子として用いられる。その場合、平板状ビットは梃子の作用点となる。平板状ビットは、その先端に掘削用の刃を設けてもよい。これにより平板状ビットをスコップとして用いることもできる。
【0016】
好ましくは、枠体2の長手方向に対して垂直な方向に互いに反対向きに、枠体2の側面上からそれぞれ延在する一対の枠体ハンドル6が設けられている。これらのハンドル6を両手で持って多機能救助工具1を支持したり持ち上げたりすることができる。例えば、ビットツール3が破砕ビットであるとき、多機能救助工具1を持ち上げて落とすことによって作業対象物を破砕することができる。
【0017】
さらに、枠体2の他方の端部、ここでは上端部にカッター部4が設けられている。カッター部4は、ハサミ状の剪断用の一対の刃4aを有する。一対の刃4aは、例えば鉄筋、鉄パイプ、鉄骨等を切断するために用いられる。一対の刃4aは旋回軸4bで互いに連結されている。一対の刃4aは、枠体2の上端面に形成された開口から切断作業が可能な程度に上方に突出している。非使用時には一対の刃4aは閉じている。
【0018】
図3は、非使用時に安全のためにカッター部4を覆うカッターカバー2dの例を概略的に示す。カッターカバー2dは、枠体2の上端部分に蓋状に被せられ、適宜の固定具(図示せず)により取外し可能に固定される。
【0019】
図4は、
図1のI-I断面を概略的に示している。一対の刃4aの開閉は、枠体2の側面上に設置された操作レバー4fを用いて行う。操作レバー4fは、その一端が枠体2の側面上に取り付けられたレバー軸4f1に連結されている。操作レバー4fは、
図1に示す一対の刃4aの閉位置においては、枠体2の長手方向に沿って延在する。
図4に示すように、一対の刃4aを開位置とする際には、レバー軸4f1を中心として操作レバー4fを、枠体2の長手方向に対して鋭角をなす位置に旋回させる。操作レバー4fの旋回動作すなわちレバー軸4f1の回動は、枠体2の内部に設置された油圧機構に伝達され、一対の刃4aの開閉動作に変換される。この油圧機構は、油圧ジャッキに類似する。
【0020】
枠体2の内部に設置されたカッター部4の油圧機構は、一例として、操作レバー4fの旋回動作により作動する油圧ポンプ4eと、油圧ポンプ4eにより作動油が送られる油圧シリンダ4dと、油圧シリンダ4d内で往復動作する油圧ピストン4cとを有する。油圧ピストン4cの往復動作により一対の刃4aの開閉が行われる。図示の例では、一対の刃4aの各基端のリンク軸4g1に一対のリンク棒4hの一端がそれぞれ連結されている。一対のリンク棒4hの他端は油圧ピストン4cの先端のリンク軸4g2に連結されている。これらの機構により、操作レバー4fを旋回させると一対の刃4aが開く(黒矢印参照)。操作レバー4fを
図1の位置に戻すと一対の刃4aが閉じる。
【0021】
図5は、
図1の多機能救助工具1において、第2側面2a2及び第3側面2a3が顕れている概略斜視図である。枠体2はさらに、物体を吊り上げたり引き寄せたりするために用いるウインチ部5を有する。ウインチ部5は、枠体2の内部において設置されたドラム5cと、ドラム5cに巻かれたワイヤーロープ5bとを具備する。ドラム5cは、ドラム軸の両側に円板を具備する形状であり、ドラム軸を中心として回転自在に設置されている。ワイヤーロープ5bの先端は、枠体2の側面2a3に形成されたワイヤーロープ取出孔2eから引き出されている。好ましくはワイヤーロープ5bの先端に、物体に引っ掛けるためのフック5eが取り付けられている。この場合、好ましくは、非使用時にフック5eを掛けておくためのフック掛け5fが枠体2の側面上に設けられている。
【0022】
棒状の巻上ハンドル5aが側面2a2に対して垂直に突出している。巻上ハンドル5aの基端5a1は、ドラム5cの片側の円板の周縁近傍に連結されている。ドラム5cの片側の円板の外面は、枠体2の側面2a2と面一に露出している。巻上ハンドル5aを回すことによってドラム5cが回転し、ワイヤーロープ5bをドラム5cに巻き取ることができる。図示の巻上ハンドル5aの構成は一例であり、ドラム5cを回転させるための巻上ハンドルは多様に構成できる。
図4を参照すると、ワイヤーロープ5bは、ワイヤーロープ取出孔2eに設置された滑車5dを経由することで円滑に外部に引き出される。
【0023】
枠体2の内部では、カッター部4とウインチ部5にそれぞれ関連する部材が互いに干渉しないように適宜配置される。枠体2の側面においても、多機能救助工具1の各機能に関連する部材が互いに干渉しないように適宜配置される。
【0024】
図6は、
図1の多機能救助工具1において、第3側面2a3及び第4側面2a4が顕れている概略斜視図である。枠体2の第4側面2a4上には、吊り環7が設けられている。吊り環7は、枠体2すなわち多機能救助工具1を上方から吊り下げるために用いられる。
【0025】
図示しないが、枠体2の側面上には、適宜、枠体2を掴んだり支えたりするための取っ手や凹部などを形成してもよい。また、図示しないが、瓦礫中の生存者を発見するための集音装置(電池又は充電池により駆動)を枠体2の適宜の箇所に設置してもよい。
【0026】
以下、
図7~
図10を用いて多機能救助工具1の使用例を説明する。なお、図示の便宜上、
図3に示したカッターカバー2dを多機能救助工具1に装着していないが、カッター部4を使用する場合を除き、カッターカバー2dを取り付けた状態で使用することが好ましい。
【0027】
図7は、破砕ビットであるビットツール3を用いた作業状況の一例を概略的に示す。作業者Mが両手で枠体ハンドル6を掴み、多機能救助工具1を持ち上げては落とすことを繰り返すことによって、作業対象物を破砕する。この場合、多機能救助工具1の自重も効果的に作用する。
【0028】
図8は、カッター部4を用いた作業状況の一例を概略的に示す。作業者Mが操作レバー4fを旋回させることによって一対の刃4aで作業対象物Wを切断する。
【0029】
図9は、ウインチ部5を用いた作業状況の一例を概略的に示す。ワイヤーロープ5bの先端のフック5eを作業対象物Wに引っ掛け、作業者Mが巻上ハンドル5aを回すことによって作業対象物Wを引き寄せる。
【0030】
図10は、吊り環7を用いた作業状況の一例を概略的に示す。吊り環7に吊りワイヤーロープRを連結し、多機能救助工具1を吊り下げた状態とする。これにより、多機能救助工具1を取り扱う作業者Mの負担が軽減される。例えば、破砕ビットであるビットツール3を水平方向に打ち付けることで作業対象物Wを破砕することができる。
【0031】
図11は、本発明の多機能救助工具の別の実施形態を示す概略斜視図である。この実施形態では、多機能救助工具1が電気駆動機構8を備えている。これによって、人力による場合に比べて容易に作業を行うことができる。電気駆動機構8では、カッター部4の一対の刃4aの開閉を行うために、電動機8aが枠体2の内部に設置されている。電動機8aを駆動することによって
図4に示した油圧機構が作動する。油圧機構は電動機8aの回転を一対の刃4aの開閉に変換する。この場合、前述した実施形態の操作レバーは不要となる。また、ウインチ部5のワイヤーロープ5bの巻き取りを行うために、電動機8bが枠体2の内部に設置されている。電動機8bを駆動することによって
図4に示したドラム5cが回転する。この場合、前述した実施形態の巻上ハンドルは不要となる。
【0032】
さらに、ビットツール3を機械的に上下振動させるために、電動機8cが枠体2の内部に設置されている。この場合、電動機8cの回転を上下振動に変換する振動発生機構が付加される。振動発生機構としては、例えば、一対の偏心重錘を互いに反対向きに回転することによって上下振動を発生するバイブロ機構がある。機械的に振動するビットツール3を用いることで、作業対象物Wを容易に破砕することができる。
【0033】
これらの電動機8a、8b、8cの例えばオン及びオフを制御するための操作スイッチ8dが、例えば枠体2の側面上に設けられている。また、図示しないが、電動機8a、8b、8cの電源は、内部電源でも外部電源でもよい。内部電源は、例えば枠体2に設けた電池又は充電池である。外部電源は、枠体2と適宜のケーブルで接続された電源、例えば発電機又は系統電源である。
【0034】
なお、前述した手動式の多機能救助工具に、
図8に示した電動機8a、8b、8c、操作スイッチ8d等を組込むことによって、手動でも電動でも使用可能であるように構成してもよい。
【0035】
また、ここで図示し説明した各実施形態は一例であって、本発明はこれらに限定されるものではなく、多様な変形形態が可能である。また、各実施形態について説明した構成を、適用可能な他の実施形態に適用した形態も本発明に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0036】
1:多機能救助工具
2:枠体
2a:側面部材
2b:第1端部
2b1:ビット取付孔
2c:第2端部
2d:カッターカバー
2e:ワイヤーロープ取出孔
3、3A:ビットツール
3a:ビット先端
3b:ビット軸部
3c:取付ピン部
4:カッター部
4a:刃
4b:旋回軸
4c:油圧ピストン
4d:油圧シリンダ
4e:油圧ポンプ
4f:操作レバー
4f1:レバー軸
4g1、4g2:リンク軸
4h:リンク棒
5:ウインチ部
5a:巻上ハンドル
5b:ワイヤーロープ
5c:ドラム
5d:滑車
5e:フック
5f:フック掛け
6:枠体ハンドル
7:吊り環
8:電動機構
8a、8b、8c:電動機
8d:操作スイッチ
M:作業者
W:作業対象物
R:吊りワイヤーロープ