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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127180
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/62 20170101AFI20240912BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240912BHJP
   E04B 1/04 20060101ALI20240912BHJP
   G06T 7/90 20170101ALI20240912BHJP
【FI】
G06T7/62
E04B1/00 ESW
E04B1/04
G06T7/90 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036158
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大山 能永
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA12
5L096DA02
5L096GA28
5L096GA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を設計図書を用いずに簡便に計算するプログラムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素排出量計算システムにおいて、プログラムは、建築部分が既定の色で着色された基準階平面図が画像として入力されると、画像内の既定の色の画素数を計算する画素数計算機能と、既定の色の画素数を基に、基準階における建築部分の体積を計算する建築部分体積計算機能と、建築部分の体積を基に、建材の種類毎に、基準階における当該種類の建材の重量又は体積を計算する建材使用量計算機能と、建材の種類毎に、当該種類の建材の重量又は体積と、当該種類の建材の二酸化炭素排出原単位を乗算して、基準階における当該種類の建材の二酸化炭素排出量を計算し、建材の種類の各々の二酸化炭素排出量の総和を、基準階の二酸化炭素排出量として計算する建物二酸化炭素排出量計算機能とを、コンピュータに実行させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を計算するプログラムであって、
コンピュータに、
前記建材が使用された建築部分が既定の色で着色された基準階平面図が画像として入力されると、当該画像内の前記既定の色の画素数を計算する、画素数計算機能と、
前記既定の色の前記画素数を基に、基準階における前記建築部分の体積を計算する、建築部分体積計算機能と、
前記建築部分の前記体積を基に、前記建材の種類ごとに、前記基準階における当該種類の前記建材の重量または体積を計算する、建材使用量計算機能と、
前記建材の前記種類ごとに、当該種類の前記建材の前記重量または前記体積と、当該種類の前記建材の二酸化炭素排出原単位を乗算して、前記基準階における当該種類の前記建材の二酸化炭素排出量を計算し、前記建材の種類の各々の前記二酸化炭素排出量の総和を、前記基準階の二酸化炭素排出量として計算する、基準階二酸化炭素排出量計算機能と、
前記基準階の前記二酸化炭素排出量を基に、前記建物の二酸化炭素排出量を計算する、建物二酸化炭素排出量計算機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項2】
前記建築部分は、床または柱を含み、
前記画素数計算機能は、前記床または前記柱に相当する部分が前記既定の色で着色された前記基準階平面図が画像として入力されると、当該画像内の前記既定の色の前記画素数を、前記床または前記柱に相当する前記部分の前記画素数として計算し、
前記建築部分体積計算機能は、前記床または前記柱に相当する前記部分の前記画素数を基に、前記基準階における前記床または前記柱の総面積を計算し、前記建築部分が前記床の場合には、前記床の前記総面積に、前記床の厚さを乗算し、前記建築部分が前記柱の場合には、前記柱の前記総面積に、前記基準階の階高を乗算して、前記基準階における前記床または前記柱の前記体積を計算する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記建築部分は、梁または壁を含み、
前記画素数計算機能は、前記梁または前記壁に相当する部分に沿って前記既定の色で線が引かれた前記基準階平面図が画像として入力されると、当該画像内の前記既定の色の前記画素数を、前記梁または前記壁に相当する前記部分の前記画素数として計算し、
前記建築部分体積計算機能は、前記梁または前記壁に相当する前記部分の前記画素数を基に、前記基準階における前記梁または前記壁の総長を計算し、前記建築部分が前記梁の場合には、前記梁の前記総長に、前記梁の幅と梁せいを乗算し、前記建築部分が前記壁の場合には、前記壁の前記総長に、前記壁の厚さと階高を乗算して、前記基準階における前記梁または前記壁の前記体積を計算する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記建築部分を構成する前記建材の前記種類は、鉄筋と、セメントを含み、
前記建材使用量計算機能は、
前記建築部分の前記体積と、単位体積当たりの前記鉄筋の量から、前記鉄筋の重量を計算し、
前記建築部分の前記体積と、鉄筋コンクリートの比重から、前記鉄筋コンクリートの重量を計算し、前記鉄筋コンクリートの前記重量から前記鉄筋の重量を減算してコンクリートの重量を計算し、前記コンクリートの前記重量を前記コンクリートの比重で除算して前記コンクリートの体積を計算し、前記コンクリートの前記体積に調合時の単位セメント量を乗算して前記セメントの重量を計算する、請求項1から3のいずれか一項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を計算するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出量を削減する等、環境へ配慮することが求められている。日本においては、排出される二酸化炭素の4割程度が建築に関連するといわれており、建築において、二酸化炭素の排出量を評価する必要性が高まっている。例えば、建物を新築する場合においては、使用される建材に関する二酸化炭素排出量を計算することが求められる。
【0003】
これに関し、特許文献1には、建物に用いられる建設資材に関する二酸化炭素の排出量推定システムが開示されている。この排出量推定システムでは、二酸化炭素の排出量を直接算出する品目として選定された直接算定品目について、建物の総重量に占める推定使用重量からカバー率を設定し、直接算定品目の使用数量を入力データとして、二酸化炭素排出量の原単位を乗ずることで、それぞれの二酸化炭素排出量を算出し、入力データがある直接算定品目の二酸化炭素排出量及びカバー率を積算して合計排出量及び合計カバー率を算出する。そして、合計カバー率に含まれない建物に用いられる建設資材の割合に基づいて合計排出量を補正することで、建物に用いられる建設資材の総二酸化炭素排出量を算出している。ここで、直接算定品目については、推定対象となる建物における使用数量を入力している。このような排出量推定システムでは、コンクリート、鉄筋、鉄骨などの主要品目の使用数量を、例えば建物全体の80%以上の重量がカバーされる程度に入力することで、補正係数による補正の効果により、建物全体の二酸化炭素排出量の予測精度を向上させている。
【0004】
特許文献1の構成においては、上記のように、主要品目の使用数量を、例えば建物全体の80%以上の重量がカバーされる程度に入力する必要がある。しかし、建物の設計図書を基に、建材の種類と使用量を把握することは、容易ではなく、非常に手間がかかる、専門性が高い作業である。したがって、特許文献1に開示されたシステムによって、建物の二酸化炭素排出量を計算するのは、容易ではない。
また、例えば既に施工が完了した後の建物に関して、建物を建築した際の二酸化炭素排出量を計算する必要に迫られた場合に、設計図書が現存していなければ、建物の二酸化炭素排出量を計算すること自体が不可能となる。
このように、建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を、設計図書を用いずに簡便に計算することが、望まれている。特に、施工、運用されている数が多く、将来においても多くが施工される鉄筋コンクリート造の建物に対し、二酸化炭素排出量を計算することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-91900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる、プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のプログラムは、鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を計算するプログラムであって、コンピュータに、前記建材が使用された建築部分が既定の色で着色された基準階平面図が画像として入力されると、当該画像内の前記既定の色の画素数を計算する、画素数計算機能と、前記既定の色の前記画素数を基に、基準階における前記建築部分の体積を計算する、建築部分体積計算機能と、前記建築部分の前記体積を基に、前記建材の種類ごとに、前記基準階における当該種類の前記建材の重量または体積を計算する、建材使用量計算機能と、前記建材の前記種類ごとに、当該種類の前記建材の前記重量または前記体積と、当該種類の前記建材の二酸化炭素排出原単位を乗算して、前記基準階における当該種類の前記建材の二酸化炭素排出量を計算し、前記建材の種類の各々の前記二酸化炭素排出量の総和を、前記基準階の二酸化炭素排出量として計算する、基準階二酸化炭素排出量計算機能と、前記基準階の前記二酸化炭素排出量を基に、前記建物の二酸化炭素排出量を計算する、建物二酸化炭素排出量計算機能と、を実現させることを特徴とする。
このような構成によれば、建材が使用された建築部分が既定の色で着色された基準階平面図が画像として入力されると、当該画像内の既定の色の画素数が計算され、この画素数を基に、基準階における建築部分の体積が計算される。そして、この建築部分の体積を基に、建材の種類ごとに、基準階における当該種類の建材の重量または体積が計算される。このようにして計算された、基準階における建材の重量または体積に対しては、建材の種類ごとに、二酸化炭素排出原単位が乗算されて、基準階における当該種類の建材の二酸化炭素排出量が計算される。更に、建材の種類の各々について、計算された二酸化炭素排出量の総和を計算して、基準階の二酸化炭素排出量とする。そして、基準階の二酸化炭素排出量を基に、建物の二酸化炭素排出量を計算する。
このように、建物の二酸化炭素排出量を計算する基となる、基準階における建築部分の体積は、建築部分が既定の色で着色された基準階平面図を基に計算される。すなわち、基準階平面図に着色してこれを画像としてプログラムに入力するのみで、建物の二酸化炭素排出量を計算することができる。このため、例えば設計図書を読む等の、煩雑で専門性を要するような作業を行う必要がない。
また、上記のように、設計図書を用いなくとも二酸化炭素排出量を計算することができるため、仮に設計図書が現存しないような場合であっても、二酸化炭素排出量を計算することが可能である。
このようにして、鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる、プログラムを提供することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記建築部分は、床または柱を含み、前記画素数計算機能は、前記床または前記柱に相当する部分が前記既定の色で着色された前記基準階平面図が画像として入力されると、当該画像内の前記既定の色の前記画素数を、前記床または前記柱に相当する前記部分の前記画素数として計算し、前記建築部分体積計算機能は、前記床または前記柱に相当する前記部分の前記画素数を基に、前記基準階における前記床または前記柱の総面積を計算し、前記建築部分が前記床の場合には、前記床の前記総面積に、前記床の厚さを乗算し、前記建築部分が前記柱の場合には、前記柱の前記総面積に、前記基準階の階高を乗算して、前記基準階における前記床または前記柱の前記体積を計算する。
このような構成によれば、建築部分の床または柱に相当する部分が既定の色で着色された基準階平面図が画像として入力された際には、当該画像内の既定の色の画素数を、床または柱に相当する部分の画素数として計算する。上記のように、基準階平面図においては、床または柱に相当する部分が既定の色で着色されているため、この床または柱に相当する部分の画素数から、基準階における床または柱の総面積を計算することができる。そして、床の場合には、計算された床の総面積に、床の厚さを乗算することで、及び柱の場合には、計算された柱の総面積に、基準階の階高を乗算することで、基準階における床または柱の体積を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる。
【0009】
本発明の別の態様においては、前記建築部分は、梁または壁を含み、前記画素数計算機能は、前記梁または前記壁に相当する部分に沿って前記既定の色で線が引かれた前記基準階平面図が画像として入力されると、当該画像内の前記既定の色の前記画素数を、前記梁または前記壁に相当する前記部分の前記画素数として計算し、前記建築部分体積計算機能は、前記梁または前記壁に相当する前記部分の前記画素数を基に、前記基準階における前記梁または前記壁の総長を計算し、前記建築部分が前記梁の場合には、前記梁の前記総長に、前記梁の幅と梁せいを乗算し、前記建築部分が前記壁の場合には、前記壁の前記総長に、前記壁の厚さと階高を乗算して、前記基準階における前記梁または前記壁の前記体積を計算する。
このような構成によれば、建築部分の梁または壁に相当する部分に沿って既定の色で線が引かれた基準階平面図が画像として入力された際には、当該画像内の既定の色の画素数を、梁または壁に相当する部分の画素数として計算する。上記のように、基準階平面図においては、梁または壁に相当する部分に沿って既定の色で線が引かれているため、この梁または壁に相当する部分の画素数から、基準階における梁または壁の総長を計算することができる。そして、梁の場合には、計算された梁の総長に、梁の幅と梁せいを乗算することで、及び壁の場合には、計算された壁の総長に、壁の厚さと階高を乗算することで、基準階における梁または壁の体積を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる。
【0010】
本発明の別の態様においては、前記建築部分を構成する前記建材の前記種類は、鉄筋と、セメントを含み、前記建材使用量計算機能は、前記建築部分の前記体積と、単位体積当たりの前記鉄筋の量から、前記鉄筋の重量を計算し、前記建築部分の前記体積と、鉄筋コンクリートの比重から、前記鉄筋コンクリートの重量を計算し、前記鉄筋コンクリートの前記重量から前記鉄筋の重量を減算してコンクリートの重量を計算し、前記コンクリートの前記重量を前記コンクリートの比重で除算して前記コンクリートの体積を計算し、前記コンクリートの前記体積に調合時の単位セメント量を乗算して前記セメントの重量を計算する。
このような構成によれば、建築部分の体積と、単位体積当たりの鉄筋の量から、鉄筋の重量を計算することができる。また、建築部分の体積と、鉄筋コンクリートの比重から、鉄筋コンクリートの重量を計算する。そして、鉄筋コンクリートの重量から鉄筋の重量を減算することによって、コンクリートの重量を計算し、コンクリートの重量をコンクリートの比重で除算してコンクリートの体積を計算する。このようにして計算されたコンクリートの体積に、コンクリートを調合した際の単位セメント量を乗算することで、セメントの重量を計算することができる。このようにして、建築部分を構成する建材に含まれる鉄筋と、セメントの重量を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる、プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る実施形態に係るプログラムを実行する、二酸化炭素排出量計算システムの機能構成を示す図である。
図2図1の二酸化炭素排出量計算システムに入力される建物の基準階平面図の一例を示す図である。
図3】基準階平面図の画像を基に、床が既定の色により着色された画像の一例を示す図である。
図4】基準階平面図の画像を基に、柱が既定の色により着色された画像の一例を示す図である。
図5】基準階平面図の画像を基に、梁が既定の色により着色された画像の一例を示す図である。
図6】基準階平面図の画像を基に、壁が既定の色により着色された画像の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係るプログラムによって実行される、二酸化炭素排出量の計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】建築部分を構成する床における、建築部分の画素数を計算するステップ、及び建築部分の体積を計算するステップの流れの詳細を示すフローチャートである。
図9】建築部分の体積の計算に用いる、代表値の例を示す図である。
図10】建築部分を構成する柱における、建築部分の画素数を計算するステップ、及び建築部分の体積を計算するステップの詳細な流れを示すフローチャートである。
図11】建築部分を構成する梁における、建築部分の画素数を計算するステップ、及び建築部分の体積を計算するステップの流れの詳細を示すフローチャートである。
図12】建築部分を構成する壁における、建築部分の画素数を計算するステップ、及び建築部分の体積を計算するステップの流れの詳細を示すフローチャートである。
図13】建材の重量を計算するステップ、基準階の二酸化炭素排出量を計算するステップの詳細な流れを示すフローチャートである。
図14】上記実施形態の第1変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、画像の一例を示す図である。
図15】上記実施形態の第2変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、画像の一例を示す図である。
図16】上記実施形態の第2変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、他の画像の一例を示す図である。
図17】上記実施形態の第3変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、画像の一例を示す図である。
図18】上記実施形態の第3変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、他の画像の一例を示す図である。
図19】上記実施形態の第3変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、更に他の画像の一例を示す図である。
図20】上記実施形態の検証例における、建築部分を構成する部材の計算値を示す図である。
図21】上記実施形態の検証例における、実施例と比較例における建築部分を構成する部材の計算値を示す図である。
図22】上記実施形態の検証例における、実施例と比較例の鉄筋とセメントの重量の計算値を示す図である。
図23】上記実施形態の検証例における、実施例と比較例の二酸化酸素排出量の計算値を示す図である。
図24】上記実施形態の検証例における、屋根スラブの鉄筋、及びセメントの重量、二酸化酸素排出量の計算値を示す図である。
図25】上記実施形態の検証例における、建物全体の二酸化酸素排出量の計算値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明によるプログラムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係るプログラムを実行する、二酸化炭素排出量計算システムの機能構成を示す図を図1に示す。図2は、二酸化炭素排出量計算システムに入力される建物の基準階平面図の一例を示す図である。
二酸化炭素排出量計算システム10は、プロセッサ、メモリ等のハードウェアを備えたコンピュータであり、本実施形態に係るプログラムを実行することで、図1に示されるような、画像入力部11と、画像処理部12と、画素数計算部13と、建築部分体積計算部14と、建材使用量計算部15と、二酸化炭素排出量計算部16と、建物二酸化炭素排出量計算部17と、結果出力部18と、データベース19と、を機能的に備えている。
【0014】
二酸化炭素排出量計算システム10は、基準階平面図Mに基づいて、鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を計算する。基準階平面図Mは、建物の設計図書に含まれる設計図であってもよいが、本実施形態では、図2に示すように、基準階平面図Mとして、いわゆる間取り図を用いる。基準階平面図Mには、建物1の基準階の建築部分1kを構成する、床2、柱3、梁4、壁5等の配置が示されている。ここで、建築部分1kとは、建材が使用されて建物1が構築された、建物1を構成する部分を示す。
【0015】
図3は、基準階平面図の画像を基に、床が既定の色により着色された画像の一例を示す図である。図4は、基準階平面図の画像を基に、柱が既定の色により着色された画像の一例を示す図である。図5は、基準階平面図の画像を基に、梁が既定の色により着色された画像の一例を示す図である。図6は、基準階平面図の画像を基に、壁が既定の色により着色された画像の一例を示す図である。
画像入力部11は、外部から、基準階平面図Mの画像100の入力を受け付ける。画像入力部11に入力される基準階平面図Mには、予め、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5等に、既定の色による着色がなされている。より詳細には、基準階平面図Mの画像100は、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5の、各々ごとに作成されて、プログラムに入力される。すなわち、作業者によって床2が既定の色により着色された基準階平面図Mの画像100aと、柱3が既定の色により着色された基準階平面図Mの画像100bと、梁4が既定の色により着色された基準階平面図Mの画像100cと、及び壁5が既定の色により着色された基準階平面図Mの画像100dと、の各々が、個別に入力される。
図3図6に示される画像100a、100b、100c、100dにおいては、図面をわかりやすくするために、基準階平面図Mから、床2、柱3、梁4、壁5の各々が既定の色により着色された部分のみが、画像100a、100b、100c、100d内に描かれて、基準階平面図Mの他の部分においては画像100a、100b、100c、100dには描かれていない例が示されている。これに替えて、図2に示される基準階平面図Mに対し、床2、柱3、梁4、壁5を、基準階平面図Mとは異なる既定の色により、直接、上書き、上塗りするように着色することで、基準階平面図Mにもともと含まれている図形と、既定の色により着色された部分の双方が含まれるように、画像100a、100b、100c、100dが作成されても構わない。
また、基準階平面図Mには、実寸法Dの分かる線分Ldが、予め定められた既定の色により着色されている。実寸法Dとは、当該線分Ldの、実際の建物1の尺度における、実際の長さ、寸法である。
ここで、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5等に着色する色と、実寸法Dの分かる線分に着色する色とは、互いに異なる色とする。例えば、本実施形態では、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5等を「赤」で着色し、実寸法Dの分かる線分Ldを「青」で着色する。
【0016】
例えば図3に示されるように、床2については、作業者が、基準階平面図Mの床2の部分のみを、既定の色(赤)で塗りつぶして着色することで、床2に関する基準階平面図Mの画像100aを作成する。このようにして作成された床2に関する基準階平面図Mの画像100aにおいては、床2の全面が既定の色で着色されているから、画像100aがプログラムに入力されると、着色された部分の画素数を基に、床2の水平面内における総面積を計算することが可能である。
なお、図3においては、柱や区切り壁を含むように床2が着色されている。このようにすれば、作業者が着色作業を簡便に行うことができるが、柱や区切り壁を除外するように、床2に相当する部分のみに限定して着色すれば、二酸化炭素排出量の計算精度がより向上するのは言うまでもない。
【0017】
柱3についても同様であり、例えば図4に示されるように、作業者が、基準階平面図Mの柱3の部分のみを、既定の色(赤)で塗りつぶして着色することで、柱3に関する基準階平面図Mの画像100bを作成する。このようにして作成された柱3に関する基準階平面図Mの画像100bにおいては、柱3の全断面が既定の色で着色されているから、画像100bがプログラムに入力されると、着色された部分の画素数を基に、柱3の水平面内における総面積(総断面積)を計算することが可能である。
また、壁5については、例えば図6に示されるように、作業者が、基準階平面図Mの壁5の、表面を表す2つの輪郭線の一方輪郭線のみを、既定の色(赤)でなぞるように着色し、壁5に関する基準階平面図Mの画像100dを作成する。このようにして作成された壁5に関する基準階平面図Mの画像100dにおいては、全ての壁5の一方の表面が既定の色で着色されているから、画像100dがプログラムに入力されると、着色された部分の画素数を基に、壁5の水平面内における総長を計算することが可能である。なお、本実施形態においては、壁5として、建物1の外部に面して配置された外壁5sのみを計算の対象とする。
【0018】
ところで、基準階平面図M(間取り図)には、建築部分1kを構成する梁4については、記載されているとは限らない。このため、梁4は、互いに隣り合う柱3どうしの間に架設されているものとし、作業者は、例えば図5に示されるように、既定の色(赤)の線分Lcは、互いに隣り合う柱3どうしの間に、梁4の長辺に沿うように描く。この場合、互いに隣り合う柱3どうしの間に、梁4の長辺に沿うように描いた、既定の色(赤)の線分Lcが、互いに隣り合う柱3どうしの間の距離(柱間距離)の実寸法Dを示す線分を兼ねるようにしてもよい。
このようにして、作業者が、梁4に関する基準階平面図Mの画像100cを作成する。このようにして作成された梁4に関する基準階平面図Mの画像100cにおいては、全ての梁4に相当する部分が線分Lcとして既定の色で描かれているから、画像100cが入力されると、着色された部分の画素数を基に、梁4の水平面内における総長を計算することが可能である。
【0019】
なお、ここで例示した「赤」、「青」といった色は一例に過ぎず、適宜他の色に変更可能である。
ただし、入力された画像100を解析し、どの部分が作業者によって着色された部分であるのかを明確に特定できるようにするために、画像100中の画素を構成する輝度成分R(赤)、G(緑)、B(青)の輝度値を例えば二値化した際に、いずれか一つの輝度が最大(例えば255)であり、他が最小(例えば0)であるような色となるのが望ましい。この観点からすれば、上記の色は、赤、青、緑のいずれかとするのが望ましい。
【0020】
画像入力部11に画像100を入力するに先立って行う、作業者による、基準階平面図Mにおける着色は、例えば、紙に印刷された基準階平面図Mに対し、フェルトペン、ボールペン、色鉛筆等の着色可能な筆記具を用い、手作業で行ってもよい。この場合、手作業で着色した基準階平面図M(紙)は、スキャナー装置による読取、カメラによる撮影によって、コンピュータに入力可能な画像100にデータ化する。
また、基準階平面図Mにおける着色は、コンピュータ上で、予め用意された基準階平面図Mが示された画像100に対し、描画ソフトウェア等を用いて行うようにしてもよい。この場合、基準階平面図Mの画像100への着色を行うコンピュータは、二酸化炭素排出量計算システム10であってもよいし、他の外部のパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。基準階平面図Mへの着色を行うコンピュータは、基準階平面図Mが示された画像100を、LAN、Wi-Fi、インターネット等のネットワークや、各種の記憶媒体を介して外部から取得してもよい。
【0021】
データベース19は、後に詳述する、建物1の建築部分1kを構成する建材の二酸化炭素排出量を計算するのに必要な各種のデータを記憶している。データベース19は、建物1の建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5等の体積を計算するのに必要な、各種の値(代表値)を記憶している。データベース19は、建物1の建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5等の体積から、使用されている建材(鉄筋、セメント)の重量を計算するのに必要な値を記憶している。データベース19は、建物1の建築部分1kに使用されている建材(鉄筋、セメント)の重量から、二酸化炭素排出量を計算するのに必要な値を記憶している。
【0022】
画像処理部12は、画像入力部11に入力された基準階平面図Mの画像100(100a~100d)の各々に対し、床2、柱3、梁4、壁5等の体積を算出するに先立った前処理を行う。画像処理部12は、基準階平面図Mの画像100(100a~100d)の各々から、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5等を抽出する。基準階平面図Mの画像100における、床2、柱3、梁4、壁5等の抽出は、例えば、画像処理部12が、予め設定された画像処理プログラムに基づいて、画像100から、既定の色に着色されている画素を抽出することで行う。本実施形態では、画像処理部12が、画像100から、「赤」、「青」に着色されている画素を抽出する。
この、画像100からの既定の色の抽出に際し、画像処理部12は、画像100を構成する画素のなかで、「赤」、「青」に着色されていると考えられる画素の各輝度値を二値化して、各輝度値が最大値(例えば255)または最小値(例えば0)となるように、調整する。例えば画像100を保存する際に、解像度が低い画像に圧縮されると、画素によっては、設定したはずの色とは微妙に輝度値が異なる色とされることがある。また、例えば画像100が、作業者が基準階平面図Mに筆記具により着色し、これをデータ化することで作成された場合においては、筆記具の色によっては、既定の色とは異なる輝度値を有していることもある。このような場合においては、上記のような、建築部分1kとして既定の色で着色したはずの部分が既定の色として正しく判定されず、結果としてプログラムが計算する二酸化炭素排出量の精度が低下する可能性がある。これに対し、上記のように「赤」、「青」に着色されていると考えられる画素の輝度値を二値化したうえで、例えばいずれか一つの輝度が最大(例えば255)であり、他が最小(例えば0)であるような色として設定された既定の色と比較するようにすれば、上記のような画素に関しても、既定の色により着色された部分であると、正しく判定することが可能となる。
【0023】
また、画像処理部12は、梁4に関する基準階平面図Mの画像100cと、壁5に関する基準階平面図Mの画像100dの各々に対し、壁5の輪郭線や梁4に沿うように描かれた、「赤」に着色された線分に相当する画素について、その線の幅を1画素分とする、細線化処理を行う。
同様に、画像処理部12は、各画像100(100a~100d)に対し、寸法Dの分かる線分Ldを示す「青」に着色されている画素について、その線の幅を1画素分とする、細線化処理を行う。
【0024】
画素数計算部13は、画像100(100a~100d)内の既定の色の画素数を計算する画素数計算機能を有する。画素数計算部13は、画像処理プログラムにより、画像100中の、既定の色(赤、青)に着色された部分の画素数を計算する。画素数計算部13は、建築部分1kの床2、柱3の面積や、梁4、壁5の長さを示す、例えば「赤」に着色されている画素数を計算する。
また、画素数計算部13は、実寸法Dの分かる線分Ldを示す、例えば「青」に着色されている画素数を計算する。実寸法Dの分かる線分Ldは、上記のように幅が1画素となるように細線化されているため、「青」に着色されている画素数は、画像上における線分Ldの長さに相当する。したがって、この線分Ldに相当する実寸法Dを、「青」に着色されている画素数で除算した値は、1つの画素の一辺の長さに相当する、実際の建物1の尺度における実際の長さとなる。
【0025】
より詳細には、画素数計算部13は、床2に相当する部分が既定の色(赤)で着色された基準階平面図Mが画像100aとして入力されると、当該画像100a内の既定の色の画素数を、床2に相当する部分の画素数として計算する。画像100aにおいては、床2の全面が既定の色で着色されているから、1つの画素の一辺の長さに相当する、実際の建物1の尺度における実際の長さを二乗した値に、床2に相当する部分の画素数を乗算すると、実際の建物1の尺度における、床2の総面積を計算することができる。
画素数計算部13は、柱3に相当する部分が既定の色(赤)で着色された基準階平面図Mが画像100bとして入力されると、当該画像100b内の既定の色の画素数を、柱3に相当する部分の画素数として計算する。画像100bにおいては、柱3の全断面が既定の色で着色されているから、1つの画素の一辺の長さに相当する、実際の建物1の尺度における実際の長さを二乗した値に、柱3に相当する部分の画素数を乗算すると、実際の建物1の尺度における、柱3の総断面積を計算することができる。
【0026】
画素数計算部13は、梁4に相当する部分に沿った線分が既定の色(赤)で描かれた基準階平面図Mが、画像100cとして入力されると、当該画像100c内の既定の色の画素数を、梁4に相当する部分の画素数として計算する。梁4に沿うように描かれた線分Lcは、上記のように幅が1画素となるように細線化されているため、梁4に相当する部分の画素数は、画像上における線分Lcの長さの総和に相当する。このため、1つの画素の一辺の長さに相当する、実際の建物1の尺度における実際の長さに、梁4に相当する部分の画素数を乗算すると、実際の建物1の尺度における、梁4の長さの総和を計算することができる。
画素数計算部13は、外壁5sである壁5の輪郭線が既定の色(赤)で描かれた基準階平面図Mが画像100dとして入力されると、当該画像100d内の既定の色の画素数を、壁5に相当する部分の画素数として計算する。壁5の輪郭線は、上記のように幅が1画素となるように細線化されているため、壁5に相当する部分の画素数は、画像上における輪郭線の長さの総和に相当する。このため、1つの画素の一辺の長さに相当する、実際の建物1の尺度における実際の長さに、壁5に相当する部分の画素数を乗算すると、実際の建物1の尺度における、壁5の長さの総和を計算することができる。
【0027】
建築部分体積計算部14は、画素数計算部13で計算された、既定の色の画素数を基に、基準階における建築部分1kの体積を計算する建築部分体積計算機能を有する。建築部分体積計算部14は、画素数計算部13で計算された、床2、柱3、梁4、壁5等の「赤」の部分の画素数と、実寸法Dの分かる線分Ldの画素数とに基づいて、床2、柱3、梁4、壁5等の各々の体積を計算する。
建築部分体積計算部14は、床2に相当する部分の画素数を基に、上記のようにして基準階における床2の総面積を計算し、床2の総面積に、床2の厚さを乗算して、基準階における床2の体積を計算する。
建築部分体積計算部14は、柱3に相当する部分の画素数を基に、上記のようにして基準階における柱3の総面積を計算し、柱3の総面積に、基準階の階高を乗算して、基準階における柱3の体積を計算する。
建築部分体積計算部14は、梁4に相当する部分の画素数を基に、上記のようにして基準階における梁4の総長を計算する。建築部分体積計算部14は、計算された梁4の総長に、梁4の梁せいと幅とを乗算して、基準階における梁4の体積を計算する。
建築部分体積計算部14は、壁5に相当する部分の画素数を基に、上記のようにして基準階における壁5の総長を計算し、壁5の総長に、壁5の厚さと階高を乗算して、基準階における壁5の体積を計算する。
更に、建築部分体積計算部14は、計算された、基準階における、床2の体積、柱3の体積、梁4の体積、壁5の体積を加算することで、基準階における建築部分1kの体積を計算する。
【0028】
建材使用量計算部15は、建築部分体積計算部14で計算された建築部分1kの体積を基に、建材の種類ごとに、当該建材の種類の使用量として、基準階における当該種類の建材の重量または体積を計算する。
本実施形態の二酸化炭素排出量計算システム10は、鉄筋コンクリート造の建物1を対象とするものである。このため、建築部分1kを構成する建材の種類は、鉄筋と、セメントを含み、後に説明するように、二酸化炭素排出量計算システム10は、鉄筋とセメントの各々の使用量を計算し、これを基に、鉄筋とセメントの各々の二酸化炭素排出量を計算する。ここで、これらの鉄筋とセメントに関しては、二酸化炭素排出量を計算する際に使用する二酸化炭素排出原単位は、単位重量あたりの二酸化炭素の排出量として設定されているため、本実施形態における建材使用量計算部15は、建築部分体積計算部14で計算された建築部分1kの体積を基に、鉄筋とセメントの各々において、鉄筋とセメントの各々の使用量として、基準階における鉄筋とセメントの各々の重量を計算する。
このためには、建材使用量計算部15は、まず、建築部分1kの体積と、単位体積当たりの鉄筋の重量から、鉄筋の重量を計算する。
また、建材使用量計算部15は、建築部分1kの体積と、鉄筋コンクリートの比重とから、鉄筋コンクリートの重量を計算する。建材使用量計算部15は、計算された鉄筋コンクリートの重量から、上記のように計算された鉄筋の重量を減算することによって、コンクリートの重量を計算する。建材使用量計算部15は、更に、計算されたコンクリートの重量を、コンクリートの比重で除算して、コンクリートの体積を計算する。加えて、建材使用量計算部15は、計算されたコンクリートの体積に、コンクリートを調合した際の単位セメント量を乗算し、セメントの重量を計算する。
このようにして、建材使用量計算部15は、基準階において、床2、柱3、梁4、壁5といった建築部分1kを形成するのに用いた建材として、鉄筋の重量と、セメントの重量と、を計算する。
【0029】
更に、二酸化炭素排出量計算部16は、建材の種類(鉄筋、セメント)ごとに、建材使用量計算部15で求めた重量と、当該種類の建材の二酸化炭素排出原単位を乗算して、基準階における当該種類の建材の二酸化炭素排出量を計算する。二酸化炭素排出量計算部16は、建材使用量計算部15で計算された、基準階において建築部分1kを形成するのに用いた鉄筋の重量と、鉄筋の二酸化炭素排出原単位とを乗算する。これにより、建築部分1kを形成するのに用いた鉄筋における二酸化炭素排出量が計算される。二酸化炭素排出量計算部16は、建材使用量計算部15で計算された、基準階において建築部分1kを形成するのに用いたセメントの重量と、セメントの二酸化炭素排出原単位とを乗算する。これにより、建築部分1kを形成するのに用いたセメントにおける二酸化炭素排出量が計算される。
二酸化炭素排出量計算部16は、計算された建材の種類の各々の二酸化炭素排出量の総和を、基準階の二酸化炭素排出量として計算する。二酸化炭素排出量計算部16は、建築部分1kを形成するのに用いた、鉄筋の重量と鉄筋の二酸化炭素排出原単位との乗算値と、セメントの重量とセメントの二酸化炭素排出単位との乗算値との和を、基準階の二酸化炭素排出量として計算する。
【0030】
建物二酸化炭素排出量計算部17は、基準階の二酸化炭素排出量を基に、建物1全体における二酸化炭素排出量を計算する。建物二酸化炭素排出量計算部17は、基準階の二酸化炭素排出量に、例えば建物1の階層数を積算することで、建物1の二酸化炭素排出量を計算する。
結果出力部18は、建物二酸化炭素排出量計算部17で算出された、建物1の二酸化炭素排出量の計算結果を、外部に出力する。結果出力部18は、計算結果を示すデータを、二酸化炭素排出量計算システム10が備えるモニター装置(図示無し)、プリンター、外部の他のコンピュータ(パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン)等に出力する。
【0031】
図7は、本実施形態に係るプログラムによって実行される、二酸化炭素排出量の計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
次に、上記したような二酸化炭素排出量計算システム10を用い、鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を計算する、二酸化炭素排出量の計算方法の流れについて説明する。以下に示す二酸化炭素排出量の計算方法は、コンピュータである二酸化炭素排出量計算システム10が、本実施形態のプログラムに基づいた処理を順次実行することで実現される。
図7に示されるように、二酸化炭素排出量の計算方法は、画像が入力されるステップS10と、画像の前処理を行うステップS20と、建築部分の画素数を計算するステップS30と、建築部分の体積を計算するステップS40と、建築部分の総体積を計算するステップS50と、建材の重量を計算するステップS60と、基準階の二酸化炭素排出量を計算するステップS70と、建物の二酸化炭素排出量を計算するステップS80と、結果を出力するステップS90と、を含む。
【0032】
画像が入力されるステップS10では、画像入力部11で、外部から基準階平面図Mの画像100(100a~100d)の入力を受け付ける。画像入力部11に入力される基準階平面図Mには、上述したように、予め、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5等に、既定の色による着色がなされている。また、基準階平面図Mには、実寸法Dの分かる線分Ldが、予め定められた既定の色により着色されている。
基準階平面図Mが、紙に印刷されたものである場合、画像が入力されるステップS10では、基準階平面図Mをスキャナー装置による読取、カメラによる撮影によって、コンピュータに入力可能な画像100にデータ化した後、画像入力部11に入力する。また、基準階平面図Mの画像100は、LAN、Wi-Fi、インターネット等のネットワークや、各種の記憶媒体を介して外部から画像入力部11に入力される。
【0033】
画像の前処理を行うステップS20では、画像入力部11に入力された基準階平面図Mの画像100(100a~100d)に対し、床2、柱3、梁4、壁5等の体積を算出するに先立った前処理を行う。画像処理部12は、予め設定された画像処理プログラムに基づいて、画像100から、既定の色に着色されている画素を抽出することで、基準階平面図Mの画像100から、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5等を抽出する。本実施形態では、画像処理部12が、画像100から、「赤」、「青」に着色されている画素を抽出する。
より詳細には、画像処理部12はまず、画像100を構成する画素のなかで、「赤」、「青」に着色されていると考えられる画素の各輝度値を二値化して、各輝度値が最大値(例えば255)または最小値(例えば0)となるように、調整する。
また、画像処理部12は、梁4に関する基準階平面図Mの画像100cと、壁5に関する基準階平面図Mの画像100dの各々に対し、壁5の輪郭線や梁4に沿うように描かれた、「赤」に着色された線分に相当する画素について、その線の幅を1画素分とする、細線化処理を行う。
同様に、画像処理部12は、各画像100(100a~100d)に対し、実寸法Dの分かる線分Ldを示す「青」について、その線の幅を1画素分とする、細線化処理を行う。
【0034】
建築部分の画素数を計算するステップS30では、建築部分1kが既定の色で着色された画像100(100a~100d)に基づいて、当該画像100内の既定の色の画素数を計算する。建築部分の画素数を計算するステップS30では、ステップS20で調整された、床2に関する基準階平面図Mの画像100a、柱3に関する基準階平面図Mの画像100b、梁4に関する基準階平面図Mの画像100c、壁5に関する基準階平面図Mの画像100dの各々について、画素数計算部13で、画像処理プログラムにより、画像100中の、既定の色(赤、青)に着色された部分の画素数を計算する。
【0035】
建築部分の体積を計算するステップS40では、建築部分体積計算部14で、画素数計算部13で計算された、既定の色の画素数を基に、基準階における建築部分1kの体積を計算する。建築部分体積計算部14では、画素数計算部13で計算された、床2、柱3、梁4、壁5等の面積や長さを示す「赤」の部分の画素数、実寸法Dの分かる線分Ldの長さを示す「青」の部分の画素数に基づいて、床2、柱3、梁4、壁5等の各々の体積を計算する。
【0036】
上記のステップS30、及びS40においては、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5の各々について、個別に、画素数の計算、体積の計算を行う。
図8は、建築部分を構成する床における、建築部分の画素数を計算するステップ、及び建築部分の体積を計算するステップの流れの詳細を示すフローチャートである。
図8に示されるように、建築部分1kを構成する床の場合、建築部分1kの画素数を計算するステップS30では、ステップS20で調整された、床2に関する基準階平面図Mの画像100aに基づいて、既定の色に着色された画素を計数し、ヒストグラムを生成する(ステップS30A)。具体的には、画素数計算部13で、床2の部分を示す、既定の色(赤)で着色された画素数Pfと、画像100aにおいて実寸法Dの分かる線分Ldを示す、既定の色(青)で着色された画素数Nbを、それぞれ計数する。
【0037】
次いで、建築部分の体積を計算するステップS40Aでは、まず、建築部分体積計算部14で、既定の色(青)で着色された、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbに基づき、1つの画素の大きさ(1つの画素の1辺の長さ)Zを算出する(ステップS41A)。これには、外部から、線分Ldの実寸法Dの数値、すなわち画像100aにおける線分Ldの、実際の建物1の尺度における、実際の長さを、キーボード、タッチパッド等の入力手段により入力する。ステップS20において、実寸法Dの分かる線分Ldを示す「青」については、その線の幅を1画素分とする、細線化処理が行われているため、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbは、画像100aにおける、線分Ldの長さに相当する。このため、建築部分体積計算部14では、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbと、線分Ldの実寸法Dの数値とに基づき、下式(1)により、1つの画素の一辺の、実際の建物1の尺度における大きさZを算出する。
Z=D/Nb …(1)
更に、建築部分体積計算部14では、1つの画素の、実際の建物1の尺度における面積Aを、下式(2)により算出する(ステップS42A)。
A=Z …(2)
【0038】
次いで、建築部分体積計算部14で、基準階における床2の総面積を算出する(ステップS43A)。これには、ステップS30Aで計数された、床2の部分を示す、既定の色(赤)で着色された画素数Pfと、ステップS42Aで算出された面積Aとに基づいて、下式(3)により、基準階における床2の実際の総面積Afを算出する。
Af=Pf×A=Pf×Z …(3)
【0039】
図9は、建築部分の体積の計算に用いる、代表値の例を示す図である。
次に、建築部分体積計算部14では、床2の厚さを取得する(ステップS44A)。これには、床2の厚さが、設計図書などから取得可能である場合、その厚さの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により外部から入力する。
また、床2の厚さが不明である場合、例えば、図9に示すような、データベース19に予め登録された代表値を用いる。図9において、建物1が建築された時期に応じて、階高と床2の厚さ(スラブ厚さ)の代表値が予め設定されている。そこで、作業者は、建物1が建設された時期を、入力手段により外部から入力すると、入力された時期に対応するスラブ厚さがデータベース19から参照されて、床2の厚さの代表値として取得される。
【0040】
続いて、建築部分体積計算部14では、ステップS43Aで算出された床2の総面積Afと、ステップS44Aで取得された床2の厚さtとに基づいて、下式(4)により、基準階における床2の総体積Vfを算出する(ステップS45A)。
Vf=Af×t=Pf×Z×t …(4)
【0041】
図10は、建築部分を構成する柱における、建築部分の画素数を計算するステップ、及び建築部分の体積を計算するステップの詳細な流れを示すフローチャートである。
図10に示されるように、建築部分1kを構成する柱3の場合、建築部分1kの画素数を計算するステップS30では、ステップS20で調整された、柱3に関する基準階平面図Mの画像100bに基づいて、既定の色に着色された画素を計数し、ヒストグラムを生成する(ステップS30B)。具体的には、画素数計算部13で、柱3の部分を示す、既定の色(赤)で着色された画素数Pcと、画像100bにおいて実寸法Dの分かる線分Ldを示す、既定の色(青)で着色された画素数Nbを、それぞれ計数する。
【0042】
次いで、建築部分の体積を計算するステップS40Bでは、まず、建築部分体積計算部14で、既定の色(青)で着色された、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbに基づき、1つの画素の大きさZを算出する(ステップS41B)。これには、外部から、線分Ldの実寸法Dの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により入力する。建築部分体積計算部14では、ステップS41Aと同様に、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbと、線分Ldの実寸法Dの数値とに基づき、上式(1)により、1つの画素の一辺の、実際の建物1の尺度における大きさZを算出する。
更に、建築部分体積計算部14では、1つの画素の、実際の建物1の尺度における面積Aを、上式(2)により算出する(ステップS42B)。
なお、ステップS41B、S42Bで算出する、大きさZ、面積Aは、ステップS41A、S42Aで算出したものと同じであるので、S41A、S42Aの算出結果をそのまま用いてもよい。
【0043】
次いで、建築部分体積計算部14で、基準階における柱3の総断面積を算出する(ステップS43B)。これには、ステップS30Bで計数された、柱3の部分を示す、既定の色(赤)で着色された画素数Pcと、ステップS42Bで算出された面積Aとに基づいて、下式(5)により、基準階における柱3の実際の総断面積Acを算出する。
Ac=Pc×A=Pc×Z …(5)
【0044】
次に、建築部分体積計算部14では、柱3の高さ、すなわち基礎階の階高Hを取得する(ステップS44B)。これには、階高Hが、設計図書などから取得可能である場合、その階高Hの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により外部から入力する。
また、階高Hが不明である場合、例えば、図9に示すような、データベース19に予め登録された代表値を用いる。作業者は、建物1が建設された時期を、入力手段により外部から入力すると、入力された時期に対応する階高がデータベース19から参照されて、階高の代表値として取得される。
【0045】
続いて、建築部分体積計算部14では、ステップS43Bで算出された柱3の総断面積Acと、ステップS44Bで取得された階高Hとに基づいて、下式(6)により、基準階における柱3の総体積Vcを算出する(ステップS45B)。
Vc=Ac×H=Pc×Z×H …(6)
【0046】
図11は、建築部分を構成する梁における、建築部分の画素数を計算するステップ、及び建築部分の体積を計算するステップの流れの詳細を示すフローチャートである。
図11に示されるように、建築部分1kを構成する梁4の場合、建築部分1kの画素数を計算するステップS30では、ステップS20で調整された、梁4に関する基準階平面図Mの画像100cに基づいて、既定の色に着色された画素を計数し、ヒストグラムを生成する(ステップS30C)。具体的には、画素数計算部13で、梁4に相当する部分に沿って描かれた線分Lcを示す、既定の色(赤)で着色された画素数Pbと、画像100cにおいて、実寸法Dの分かる線分Ldを示す、既定の色(青)で着色された画素数Nbを、それぞれ計数する。
【0047】
次いで、建築部分の体積を計算するステップS40Cでは、まず、建築部分体積計算部14で、既定の色(青)で着色された、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbに基づき、1つの画素の大きさZを算出する(ステップS41C)。これには、外部から、線分Ldの実寸法Dの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により入力する。建築部分体積計算部14では、ステップS41Aと同様に、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbと、線分Ldの実寸法Dとに基づき、上式(1)により、1つの画素の一辺の、実際の建物1の尺度における大きさZを算出する。
【0048】
次いで、建築部分体積計算部14で、基準階における梁4の総長を算出する(ステップS42C)。ステップS20において、梁4に関する基準階平面図Mの画像100cの、「赤」に着色された線分については、その線の幅を1画素分とする、細線化処理が行われているため、「赤」に着色された画素の数Pbは、画像100cにおける、梁4の総長に相当する。このため、ステップS30Cで計数された、梁4の部分を示す、既定の色(赤)で着色された画素数Pbと、ステップS41Cで算出された大きさZとに基づいて、下式(7)により、基準階における梁4の総長BLを算出する。
BL=Pb×Z …(7)
【0049】
続いて、建築部分体積計算部14では、梁4の高さである梁せいBhを取得する(ステップS43C)。これには、梁せいBhが、設計図書などから取得可能である場合、その梁せいBhの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により外部から入力する。また、梁せいBhが不明である場合、梁せいは一般に梁の長さの1/10とされることが多いため、例えば、作業者に入力手段で柱スパン(梁の長さ)Lの数値を外部から入力させて、これを基に、下式(8)で求められる値を用いることができる。
Bh=L/10 …(8)
【0050】
次に、建築部分体積計算部14では、梁4の幅Wbを取得する(ステップS44C)。これには、幅Wbが、設計図書などから取得可能である場合、その幅Wbの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により外部から入力する。また、幅Wbが不明である場合、梁の幅は一般に梁せいの2/3とされることが多いため、例えば、下式(9)で求められる値を用いる。
Wb=(2/3)×Bh …(9)
【0051】
次に、建築部分体積計算部14では、ステップS42Cで算出された梁4の総長BLと、ステップS43Cで取得された梁せいBhと、ステップS44Cで取得された幅Wbとに基づいて、下式(10)により、基準階における梁4の総体積Vbを算出する(ステップS45C)。
Vb=BL×Bh×Wb …(10)
【0052】
図12は、建築部分を構成する壁における、建築部分の画素数を計算するステップ、及び建築部分の体積を計算するステップの流れの詳細を示すフローチャートである。
図12に示されるように、建築部分1kを構成する壁5の場合、建築部分1kの画素数を計算するステップS30では、ステップS20で調整された、壁5に関する基準階平面図Mの画像100dに基づいて、既定の色に着色された画素を計数し、ヒストグラムを生成する(ステップS30D)。具体的には、画素数計算部13で、壁5の輪郭線の長辺を示す、既定の色(赤)で着色された画素数Pwと、画像100dにおいて実寸法Dの分かる線分Ldを示す、既定の色(青)で着色された画素数Nbを、それぞれ計数する。
【0053】
次いで、建築部分の体積を計算するステップS40Dでは、まず、建築部分体積計算部14で、既定の色(青)で着色された、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbに基づき、1つの画素の大きさZを算出する(ステップS41D)。これには、外部から、線分Ldの実寸法Dの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により入力する。建築部分体積計算部14では、ステップS41Aと同様に、実寸法Dの分かる線分Ldの画素の数Nbと、線分Ldの実寸法Dとに基づき、上式(1)により、1つの画素の一辺の、実際の建物1の尺度における大きさZを算出する。
【0054】
次いで、建築部分体積計算部14で、基準階における壁5の総長を算出する(ステップS42D)。ステップS20において、壁5に関する基準階平面図Mの画像100dの、「赤」に着色された線分については、その線の幅を1画素分とする、細線化処理が行われているため、「赤」に着色された画素の数Pwは、画像100cにおける、壁5の総長に相当する。このため、ステップS30Dで計数された、壁5の輪郭線の長辺を示す、既定の色(赤)で着色された画素数Pwと、ステップS41Dで算出された大きさZとに基づいて、下式(11)により、基準階における壁5の総長WLを算出する。
WL=Pw×Z …(11)
【0055】
次に、建築部分体積計算部14では、壁5の高さ、すなわち基礎階の階高Hを取得する(ステップS43D)。これには、階高Hが、設計図書などから取得可能である場合、その階高Hの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により外部から入力する。また、階高Hが不明である場合、例えば、図9に示すような、データベース19に予め登録された代表値を用いる。作業者は、建物1が建設された時期を、入力手段により外部から入力すると、入力された時期に対応する階高がデータベース19から参照されて、階高の代表値として取得される。
【0056】
続いて、建築部分体積計算部14では、壁5の面積Awを算出する(ステップS44D)。これにはまず、作業者が、壁5に窓があるか否かを確認する。壁5に窓がない場合、下式(12)により、壁5の総面積Awを算出する。
Aw=WL×H …(12)
また、壁5に窓が有る場合、居室の窓の面積は、建築基準法により、床面積の1/7以上とすることが定められているため、ここでは、上式(3)で求めた床2の総面積Afを基に、壁5の総面積Awを、下式(13)により簡便に算出する。
Aw=WL×H-Af/7 …(13)
【0057】
次に、建築部分体積計算部14では、壁5の厚さTwを取得する(ステップS45D)。壁5の厚さTwが、設計図書などから取得可能である場合、その厚さTwの数値を、キーボード、タッチパッド等の入力手段により外部から入力する。また、厚さTwが不明である場合、厚さTwを、予めデータベース19に登録された代表値、例えば一般的な値である150mmとする。
【0058】
続いて、建築部分体積計算部14では、ステップS44Dで算出された壁5の総面積Awと、ステップS45Dで取得された壁5の厚さTwとに基づいて、下式(14)により、基準階における壁5の総体積Vwを算出する(ステップS46D)。
Vw=Aw×Tw …(14)
【0059】
図7に示すように、基準階における建築部分の総体積を計算するステップS50では、ステップS40Aで算出された基準階における床2の総体積Vfと、ステップS40Bで算出された基準階における柱3の総体積Vcと、ステップS40Cで算出された基準階における梁4の総体積Vbと、ステップS40Dで算出された基準階における壁5の総体積Vwとに基づき、基準階における建築部分1kの総体積Vkを、下式(15)により算出する。
Vk=Vf+Vc+Vb+Vw …(15)
【0060】
図13は、建材の重量、具体的には鉄筋コンクリートに含まれる鉄筋とセメントの重量を計算するステップ、基準階の二酸化炭素排出量を計算するステップの詳細な流れを示すフローチャートである。
図13に示されるように、建材の重量を計算するステップS60では、建材使用量計算部15で、上式(15)で求めた基準階における建築部分1kの総体積に基づき、基準階の建築部分1kに使用されている鉄筋の重量を算出する(ステップS61)。これには、建築部分1kを構成する鉄筋コンクリートに対する、単位体積当たりの鉄筋の重量を、作業者が入力する。作業者は、単位体積当たりの鉄筋の重量が、設計図書等から取得できる場合、その数値を、外部から入力する。また、単位体積当たりの鉄筋の重量が不明である場合、予めデータベース19に登録されている代表値、例えば125kg/mといった値を用いる。基準階の建築部分1kに使用されている鉄筋の重量Gsは、単位体積当たりの鉄筋の重量をRsとすると、次式(16)により算出される。
Gs=Vk×Rs …(16)
【0061】
また、建材使用量計算部15は、上式(15)で求めた基準階における建築部分1kの総体積に基づき、基準階の建築部分1kに使用されている鉄筋コンクリートの重量を算出する(ステップS62)。これには、基準階の建築部分1kを形成する際に用いられた鉄筋コンクリートの比重を、作業者が入力する。作業者は、鉄筋コンクリートの比重が、設計図書等から取得できる場合、その数値を、外部から入力する。また、鉄筋コンクリートの比重が不明である場合、予めデータベース19に登録されている代表値、例えば2.45t/mといった値を用いる。基準階の建築部分1kに使用されている鉄筋コンクリートの重量Grcは、鉄筋コンクリートの比重をRrcとすると、次式(17)により算出される。
Grc=Vk×Rrc …(17)
【0062】
次いで、建材使用量計算部15は、ステップS61で算出された鉄筋の重量Gsと、ステップS62で算出された鉄筋コンクリートの重量Grcとに基づいて、基礎階の建築部分1kに使用されたコンクリートの重量を算出する(ステップS63)。基礎階の建築部分1kに使用されたコンクリートの重量Gcは、次式(18)のように、鉄筋コンクリートの重量Grcから、鉄筋の重量Gsを減算することで得られる。
Gc=Grc-Gs …(18)
【0063】
続いて、建材使用量計算部15は、基礎階の建築部分1kに使用されたコンクリートの体積Vconを算出する(ステップS64)。これには、次式(19)のように、ステップS63で算出されたコンクリートの重量Gcを、予めデータベース19に登録されたコンクリートの比重Wconの代表値、例えば2.3g/cmといった値で除算する。
Vcon=Gc/Wcon …(19)
【0064】
次に、建材使用量計算部15は、ステップS64で計算されたコンクリートの体積Vconに基づいて、基礎階の建築部分1kに使用されたセメントの重量を算出する(ステップS65)。これには、基礎階の建築部分1kに使用されたコンクリートを調合する際の、単位セメント量を、作業者が入力する。作業者は、単位セメント量が、設計図書等から取得できる場合、その数値を、外部から入力する。また、単位セメント量が不明である場合、予めデータベース19に登録されている代表値、例えば270kg/mといった値を用いる。基準階の建築部分1kに使用されたセメントの重量Gcemは、単位セメント量をRcemとすると、次式(20)により算出される。
Gcem=Vcon×Rcem …(20)
このようにして、建材の重量を計算するステップS60では、基準階の建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5を形成するのに用いた建材として、鉄筋の重量Gsと、セメントの重量Gcemと、を計算する。
【0065】
基準階の二酸化炭素排出量を計算するステップS70では、基準階における、建材の種類ごとの二酸化炭素排出量を計算する。ステップS70では、建材の種類(鉄筋、セメント)ごとに、ステップS60で求めた、建材の重量(鉄筋の重量Gs、セメントの重量Gcem)と、当該種類の建材の二酸化炭素排出原単位を乗算して、基準階における、建材の種類ごとの二酸化炭素排出量を計算する。
これには、まず、二酸化炭素排出量計算部16で、基準階の建築部分1kに使用した鉄筋における二酸化炭素排出量を算出する(ステップS71)。鉄筋における二酸化炭素排出量は、ステップS61で計算された、基準階において建築部分1kを形成するのに用いた鉄筋の重量Gsと、鉄筋の二酸化炭素排出原単位とを乗算することで算出される。鉄筋の二酸化炭素排出原単位は、予めデータベース19に登録された、単位重量あたりの二酸化炭素排出量の値、例えば、2.04(t-CO2/t)を用いる。
また、二酸化炭素排出量計算部16で、基準階の建築部分1kに使用したセメントにおける二酸化炭素排出量を算出する(ステップS72)。セメントにおける二酸化炭素排出量は、ステップS65で計算された、基準階において建築部分1kを形成するのに用いたセメントの重量Gcemと、セメントの二酸化炭素排出原単位とを乗算することで算出される。セメントの二酸化炭素排出原単位は、予めデータベース19に登録された、単位重量あたりの二酸化炭素排出量の値、例えば、0.758(t-CO2/t)を用いる。
次いで、二酸化炭素排出量計算部16は、計算された建材の種類の各々の二酸化炭素排出量の総和を、基準階の二酸化炭素排出量として計算する(ステップS73)。すなわち、二酸化炭素排出量計算部16は、ステップS71で算出された、鉄筋における二酸化炭素排出量と、ステップS72で算出された、セメントにおける二酸化炭素排出量との和を、基準階の二酸化炭素排出量として計算する。
【0066】
図7に示す、建物の二酸化炭素排出量を計算するステップS80では、ステップS73で算出された基準階の二酸化炭素排出量を基に、建物二酸化炭素排出量計算部17で、建物1の全体としての二酸化炭素排出量を計算する。建物二酸化炭素排出量計算部17では、基準階の二酸化炭素排出量に、建物1の階層数を乗算することで、建物1の二酸化炭素排出量を計算する。このようにして得られる、建物1の二酸化炭素排出量は、建物1全体の建築部分1kに用いられた、鉄筋における二酸化炭素排出量と、セメントにおける二酸化炭素排出量との総和である。
【0067】
結果を出力するステップS90では、結果出力部18で、ステップS80で算出された、建物1の二酸化炭素排出量の計算結果を、外部に出力する。結果出力部18は、計算結果を示すデータを、例えば、二酸化炭素排出量計算システム10が備えるモニター装置(図示無し)、プリンター、外部の他のコンピュータ(パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン)等に出力する。
【0068】
上述したようなプログラムによれば、鉄筋コンクリート造の建物1の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を計算するプログラムであって、コンピュータに、建材が使用された建築部分1kが既定の色で着色された基準階平面図Mが画像100(100a~100d)として入力されると、当該画像100内の既定の色の画素数を計算する、画素数計算機能と、既定の色の画素数を基に、基準階における建築部分1kの体積を計算する、建築部分体積計算機能と、建築部分1kの体積を基に、建材の種類ごとに、基準階における当該種類の建材の重量を計算する、建材使用量計算機能と、建材の種類ごとに、当該種類の建材の重量と、当該種類の建材の二酸化炭素排出原単位を乗算して、基準階における当該種類の建材の二酸化炭素排出量を計算し、建材の種類の各々の二酸化炭素排出量の総和を、基準階の二酸化炭素排出量として計算する、基準階二酸化炭素排出量計算機能と、基準階の二酸化炭素排出量を基に、建物1の二酸化炭素排出量を計算する、建物二酸化炭素排出量計算機能と、を実現させる。
このような構成によれば、建材が使用された建築部分1kが既定の色で着色された基準階平面図Mが画像100(100a~100d)として入力されると、当該画像100内の既定の色の画素数が計算され、この画素数を基に、基準階における建築部分1kの体積が計算される。そして、この建築部分1kの体積を基に、建材の種類ごとに、基準階における当該種類の建材の重量が計算される。このようにして計算された、基準階における建材の重量に対しては、建材の種類ごとに、二酸化炭素排出原単位が乗算されて、基準階における当該種類の建材の二酸化炭素排出量が計算される。更に、建材の種類の各々について、計算された二酸化炭素排出量の総和を計算して、基準階の二酸化炭素排出量とする。そして、基準階の二酸化炭素排出量を基に、建物1の二酸化炭素排出量を計算する。
このように、建物1の二酸化炭素排出量を計算する基となる、基準階における建築部分1kの体積は、建築部分1kが既定の色で着色された基準階平面図Mを基に計算される。すなわち、基準階平面図Mに着色してこれを画像100(100a~100d)としてプログラムに入力するのみで、建物1の二酸化炭素排出量を計算することができる。このため、例えば設計図書を読む等の、煩雑で専門性を要するような作業を行う必要がない。
また、上記のように、設計図書を用いなくとも二酸化炭素排出量を計算することができるため、仮に設計図書が現存しないような場合であっても、二酸化炭素排出量を計算することが可能である。
このようにして、鉄筋コンクリート造の建物1の建築に要する建材の二酸化炭素排出量を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる、プログラムを提供することが可能となる。
【0069】
ここで、鉄筋コンクリート造の建物の場合、建物全体を構成する建材としては、コンクリート、鉄筋の他に、PCa、石膏ボード、鉄骨、石、軽量鉄骨、床下地材、ガラス、砂利、フローリング、システムキッチン、モルタル、電気ケーブル、ユニットバス、スチール建具、鋼管、タイル、アスファルト防水材、木製建具、シーリング材、アルミ建具等が用いられている。これらの建材のうち、コンクリートと鉄筋を合わせた重量は、建物全体を構成する建材の重量のうち、91%を占める、とされている。環境省によれば、2016年3月に、「Q&Aサプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答集」において、個々の建材の二酸化炭素排出量を積み上げて対象(建物)の二酸化炭素排出量を算定する場合、個々の建材の二酸化炭素量の総和が90%近ければ良い、としている。このため、上記したような手法により、鉄筋とセメントの二酸化炭素排出量を求めることで、十分な精度で、建物1における二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0070】
また、建築部分1kは、床2を含み、画素数計算機能は、床2に相当する部分が既定の色で着色された基準階平面図Mが画像100aとして入力されると、当該画像100a内の既定の色の画素数を、床2に相当する部分の画素数として計算し、建築部分体積計算機能は、床2に相当する部分の画素数を基に、基準階における床2の総面積を計算し、床2の総面積に、床2の厚さを乗算して、基準階における床2の体積を計算する。
このような構成によれば、建築部分1kの床2に相当する部分が既定の色で着色された基準階平面図Mが画像100aとして入力された際には、当該画像100内の既定の色の画素数を、床2に相当する部分の画素数として計算する。上記のように、基準階平面図Mにおいては、床2に相当する部分が既定の色で着色されているため、この床2に相当する部分の画素数から、基準階における床2の総面積を計算することができる。そして、計算された床2の総面積に、床2の厚さを乗算することで、基準階における床2の体積を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる。
【0071】
また、建築部分1kは、柱3を含み、画素数計算機能は、柱3に相当する部分が既定の色で着色された基準階平面図Mが画像100bとして入力されると、当該画像100b内の既定の色の画素数を、柱3に相当する部分の画素数として計算し、建築部分体積計算機能は、柱3に相当する部分の画素数を基に、基準階における柱3の総面積を計算し、柱3の総面積に、基準階の階高を乗算して、基準階における柱3の体積を計算する。
このような構成によれば、建築部分1kの柱3に相当する部分が既定の色で着色された基準階平面図Mが画像100bとして入力された際には、当該画像100内の既定の色の画素数を、柱3に相当する部分の画素数として計算する。上記のように、基準階平面図Mにおいては、柱3に相当する部分が既定の色で着色されているため、この柱3に相当する部分の画素数から、基準階における柱3の総面積を計算することができる。そして、計算された柱3の総面積に、基準階の階高を乗算することで、基準階における柱3の体積を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる。
【0072】
また、建築部分1kは、梁4を含み、画素数計算機能は、梁4に相当する部分に沿って既定の色で線が引かれた基準階平面図Mが画像100cとして入力されると、当該画像100c内の既定の色の画素数を、梁4に相当する部分の画素数として計算し、建築部分体積計算機能は、梁4に相当する部分の画素数を基に、基準階における梁4の総長を計算し、梁4の総長に、梁4の幅と梁せいを乗算して、基準階における梁4の体積を計算する。
このような構成によれば、建築部分1kの梁4に相当する部分に沿って既定の色で線が引かれた基準階平面図Mが画像100cとして入力された際には、当該画像100内の既定の色の画素数を、梁4に相当する部分の画素数として計算する。上記のように、基準階平面図Mにおいては、梁4に相当する部分に沿って既定の色で線が引かれているため、この梁4に相当する部分の画素数から、基準階における梁4の総長を計算することができる。そして、計算された梁4の総長に、梁4の幅と梁せいを乗算することで、基準階における梁4の体積を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる。
【0073】
また、建築部分1kは、壁5を含み、画素数計算機能は、壁5に相当する部分に沿って既定の色で線が引かれた基準階平面図Mが画像100dとして入力されると、当該画像100d内の既定の色の画素数を、壁5に相当する部分の画素数として計算し、建築部分体積計算機能は、壁5に相当する部分の画素数を基に、基準階における壁5の総長を計算し、壁5の総長に、壁5の厚さと階高を乗算して、基準階における壁5の体積を計算する。
このような構成によれば、建築部分1kの壁5に相当する部分に沿って既定の色で線が引かれた基準階平面図Mが画像100dとして入力された際には、当該画像100内の既定の色の画素数を、壁5に相当する部分の画素数として計算する。上記のように、基準階平面図Mにおいては、壁5に相当する部分に沿って既定の色で線が引かれているため、この壁5に相当する部分の画素数から、基準階における壁5の総長を計算することができる。そして、計算された壁5の総長に、壁5の厚さと階高を乗算することで、基準階における壁5の体積を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる。
【0074】
また、建築部分1kを構成する建材の種類は、鉄筋と、セメントを含み、建材使用量計算機能は、建築部分1kの体積と、単位体積当たりの鉄筋の量から、鉄筋の重量を計算し、建築部分1kの体積と、鉄筋コンクリートの比重から、鉄筋コンクリートの重量を計算し、鉄筋コンクリートの重量から鉄筋の重量を減算してコンクリートの重量を計算し、コンクリートの重量をコンクリートの比重で除算してコンクリートの体積を計算し、コンクリートの体積に調合時の単位セメント量を乗算してセメントの重量を計算する。
このような構成によれば、建築部分1kの体積と、単位体積当たりの鉄筋の量から、鉄筋の重量を計算することができる。また、建築部分1kの体積と、鉄筋コンクリートの比重から、鉄筋コンクリートの重量を計算する。そして、鉄筋コンクリートの重量から鉄筋の重量を減算することによって、コンクリートの重量を計算し、コンクリートの重量をコンクリートの比重で除算してコンクリートの体積を計算する。このようにして計算されたコンクリートの体積に、コンクリートを調合した際の単位セメント量を乗算することで、セメントの重量を計算することができる。このようにして、建築部分1kを構成する建材に含まれる鉄筋と、セメントの重量を、設計図書を用いずに簡便に計算することができる。
【0075】
また、建築部分体積計算機能は、床2の厚さが入力されない場合には、データベース19に登録されている床2の厚さの代表値を使用して、床2の体積を計算する。
また、建築部分体積計算機能は、階高が入力されない場合には、データベース19に登録されている階高の代表値を使用して、柱3の体積と、壁5の体積を計算する。
また、建築部分体積計算機能は、壁5の厚さが入力されない場合には、データベース19に登録されている壁5の厚さの代表値を使用して、壁5の体積を計算する。
このような構成によれば、より適切に、二酸化炭素排出量を計算することができる。
【0076】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明のプログラムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
図14は、上記実施形態の第1変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、画像の一例を示す図である。
例えば、上記実施形態では、壁5として、建物1の外側を向く外壁5sのみを対象とし、一連の処理を行うようにしたが、例えば、図14に示すように、建築部分1kを構成する壁5として、建物1の内部に配置された区画壁5kについても、上記と同様にして、二酸化炭素排出量の計算を行うことができる。この場合においては、入力される壁5に関する基準階平面図Mの画像100dに、壁5として、外壁5sとともに、区画壁5kが既定の色で着色されることにより、区画壁5kを考慮することができる。この場合においては、図12のステップS45Dで用いる、区画壁5kの厚さは、上記実施形態で示した外壁5sの厚さと同一となる。
【0077】
(実施形態の第2変形例)
図15は、上記実施形態の第2変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、画像の一例を示す図である。図16は、上記実施形態の第2変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、他の画像の一例を示す図である。
第1変形例のように、建物1の内部に配置された区画壁5kについても二酸化炭素排出量の計算を行う場合、区画壁5kの厚さwpを、上記実施形態で示した外壁5sの厚さと異なるものとしてもよい。この場合、画像入力部11に入力する、壁5に関する基準階平面図Mの画像100dとして、図15に示すような、外壁5sのみが既定の色で着色された画像100d1と、図16に示すような、区画壁5kのみが既定の色で着色された画像100d2と、を用意し、これらを個別に入力して、画像100d1と画像100d2の各々に対して個別に上記実施形態のステップS30D、S40Dを実行することで、基準階における外壁5sの総体積と、基準階における区画壁5kの総体積を計算し、これらを加算することで、基準階における壁5の総体積Vwを算出すればよい。
【0078】
(実施形態の第3変形例)
また、上記実施形態では、壁5に形成された窓の面積を、床2の面積の1/7とするようにしたが、窓の仕様が判明している場合には、窓の大きさを考慮することで、壁5の体積をより正確に計算するようにしてもよい。
図17は、上記実施形態の第3変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、画像の一例を示す図である。図18は、上記実施形態の第3変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、他の画像の一例を示す図である。図19は、上記実施形態の第3変形例における、建築部分を構成する壁の二酸化炭素排出量計算に用いる、更に他の画像の一例を示す図である。
ここでは、建物の複数の側面、例えば図17において上方に位置する第一面1Aと、下方に位置する第二面1Bの各々の外壁5sに、窓8があり、第一面1Aと第二面1Bの各々における、窓8の高さ方向における各開口寸法が既知である場合を考える。このような場合においては、平面視したときに窓8が設けられていない部分の外壁5sの総体積と、第一面1Aにおいて平面視したときに窓8が設けられている部分における(窓8を除いた)外壁5sの総体積と、第二面1Bにおいて平面視したときに窓8が設けられている部分における(窓8を除いた)外壁5sの総体積と、をそれぞれ計算し、これらを加算することで、壁5の体積を計算することができる。
例えば、図17に示すように、窓8が設けられた高さにおいて外壁5sを断面視した画像100d3を入力して、上記実施形態のステップS30D、S40Dを実行することで、平面視したときに窓8が設けられていない部分における、外壁5sの総体積Vw1を計算する。このとき、外壁5sの体積を算出する際に、外壁5sの面積に乗算される高さの値は、上記実施形態と同様に、階高とする。
【0079】
次いで、図18に示されるような、建物1の第一面1Aにおいて、窓8が設けられている部分の上下に配置された外壁5saを断面視した画像100d4を入力して、上記実施形態のステップS30D、S40Dを実行することで、建物1の第一面1Aにおいて、平面視したときに窓8が設けられている部分における、窓8の上下に配置された外壁5saの総体積Vw2を計算する。このとき、外壁5saの体積を算出する際に、外壁5saの面積に乗算される高さの値は、階高から、建物1の第一面1Aにおける窓8の高さ、すなわち窓8の上下方向における開口寸法を減算した値とすればよい。
そして、図19に示されるような、建物1の第二面1Bにおいて、窓8が設けられている部分の上下に配置された外壁5sbを断面視した画像100d5を入力して、上記実施形態のステップS30D、S40Dを実行することで、建物1の第二面1Bにおいて、平面視したときに窓8が設けられている部分における、窓8の上下に配置された外壁5sbの総体積Vw3を計算する。このとき、外壁5sbの体積を算出する際に、外壁5sbの面積に乗算される高さの値は、階高から、建物1の第二面1Bにおける窓8の高さ、すなわち窓8の上下方向における開口寸法を減算した値とすればよい。
そのうえで、上記の総体積Vw1、Vw2、Vw3を加算し、これを壁5の総体積Vwとすることで、窓8が形成された外壁5sの面積を、正確に算出することができる。
【0080】
(実施形態の他の変形例)
また、上記実施形態では、基準階における二酸化炭素排出量を基に、階層数を乗算することで、建物1全体の二酸化炭素排出量を算出するようにした。
ここで、通常、建物1の1階部分には、エントランス等の共用部が設けられることで、基準階とは異なる間取りを有している場合がある。このような場合には、当該階層に対して、基準階とは個別に、上記実施形態で示した、二酸化炭素排出量の計算を実行することで、建物1の二酸化炭素排出量をより正確に計算できることは、言うまでもない。
【0081】
また、上記実施形態で示したような構成は、既存の建物1に限らず、新設の建物にも適用可能である。新設の建物においては、設計図書が現存しているためこれを参考にすれば正確な二酸化炭素排出量を算出可能であるが、この場合においても上記実施形態または変形例のプログラムを適用することによって、設計図書を参照しなくとも、より簡便に、二酸化炭素排出量を計算することが可能である。
更には、既存建物に対し、例えばこれに隣接して新たな区画に構造物を施工して既存建物に接合するような場合にも、上記実施形態で示したような構成を適用可能である。
【0082】
また、上記実施形態においては、建材として鉄筋とセメントを例示して説明したが、
建築部分を構成する建材の種類は、鉄筋と、セメントに限られないのは、言うまでもない。建材の種類としては、鉄筋とセメントの他に、例えば、石膏ボードや石、砂利、モルタルなど、鉄筋コンクリート造の建物の建築に要する他の建材が含まれ得る。
これに関し、上記実施形態においては、建築部分1kとして、床2、柱3、梁4、壁5を対象としたが、これに限られない。例えば、建築部分1kとして、窓を対象とし、窓に相当する部分を既定の色(赤)でなぞるように着色した基準階平面図を入力として、窓に相当する部分の総長を計算し、これに窓の高さや厚さを乗算して、基準階における窓の面積及び体積を求めるようにしてもよい。
この場合においては、建材はガラスを含み、建材使用量計算機能は、窓の体積とガラスの比重からガラスの重量を計算し、基準階二酸化炭素排出量計算機能は、ガラスの重量と、ガラスの二酸化炭素排出原単位を乗算して、基準階におけるガラスの二酸化炭素排出量を計算する。
このようにすれば、より正確に、二酸化炭素排出量を計算することができる。
【0083】
また、上記実施形態においては、建材として鉄筋とセメントを例示して説明した。これらの鉄筋やセメントに関しては、二酸化炭素排出原単位は、単位重量あたりの二酸化炭素の排出量として設定されている。これに対し、建材によっては、二酸化炭素排出原単位が、単位体積あたりの二酸化炭素の排出量として設定されているものもある。このような場合においては、建材使用量計算機能において、建築部分1kの体積を基に、建材の種類ごとに、基準階における当該種類の建材の体積を計算し、基準階二酸化炭素排出量計算機能において、建材の種類ごとの二酸化炭素排出量を計算する際に、当該種類の建材の、建材使用量計算機能によって計算された体積と、当該種類の建材の二酸化炭素排出原単位を乗算するようにすればよい。
すなわち、このような場合においては、建材使用量計算機能は、建築部分1kの体積を基に、建材の種類ごとに、基準階における当該種類の建材の体積を計算し、基準階二酸化炭素排出量計算機能は、建材の種類ごとに、当該種類の建材の体積と、当該種類の建材の二酸化炭素排出原単位を乗算して、基準階における当該種類の建材の二酸化炭素排出量を計算し、建材の種類の各々の二酸化炭素排出量の総和を、基準階の二酸化炭素排出量として計算する。
あるいは、二酸化炭素排出原単位が単位重量あたりの二酸化炭素の排出量として設定されるような建材と、二酸化炭素排出原単位が単位体積あたりの二酸化炭素の排出量として設定されるような建材とが、混在して用いられるような場合においては、建材使用量計算機能は、二酸化炭素排出原単位の種類に応じて、建材の種類ごとに基準階において使用されている重量または体積のいずれかを計算し、基準階二酸化炭素排出量計算機能は、建材使用量計算機能が計算した値を二酸化炭素排出原単位に乗算するようにすればよい。
すなわち、このような場合においては、建材使用量計算機能は、建築部分1kの体積を基に、建材の種類ごとに、基準階における当該種類の建材の重量または体積を計算し、基準階二酸化炭素排出量計算機能は、建材の種類ごとに、当該種類の建材の重量または体積と、当該種類の建材の二酸化炭素排出原単位を乗算して、基準階における当該種類の建材の二酸化炭素排出量を計算し、建材の種類の各々の二酸化炭素排出量の総和を、基準階の二酸化炭素排出量として計算する。
【0084】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0085】
(検証例)
上記実施形態に対して第2変形例、第3変形例の双方を適用した構成により、建物の二酸化酸素排出量の計算を行い、検証を行ったので、以下にその結果を示す。
検討対象の建物は、1980年建築の、RC壁式構造の、地上7F建ての中層の集合住宅とした。
建物1の1階部分は、最右の1室がエントランスになっており、2階部分から7階部分は、図2に示すような、基準階と同じ平面構成とした。建物1の建築部分1kに使用されたコンクリートは、一般的なもので、単位セメント量270(kg/m)、鉄筋量125kg/m、比重:2.3t/mとした。また、床2のスラブ厚さは120mm、階高は2550mm、外壁5sの厚さは150mm、梁せいは640mm、梁幅は450mm、窓8の高さは、第一面1A側のベランダ側は1800mm、第二面1B側の廊下側は、1000mmとした。
二酸化炭素排出原単位は、セメント:0.758(t-CO2/t)、鉄筋:2.04(t-CO2/t)とした。
【0086】
上記のような建物に対し、実施例として、上記の変形例を適用した構成により二酸化炭素排出量を計算し、また比較例として、設計図書から得た寸法を基に二酸化炭素排出量を計算して、これらの結果を比較した。
実施例としては、床2が既定の色により着色された画像100aとして、図3に示すものを用いた。この図3において、階段部分は床2の面積エリアに含め、エレベータ部分は含めないものとした。また、柱3が既定の色により着色された画像100bとして、図4に示すものを用いた。また、梁4が既定の色により着色された画像100cとして、図5に示すものを用いた。また、壁5として、建物1の外部に面して配置された外壁5sが既定の色により着色された画像100dとして、窓8を除いた外壁5sを対象として計算を行うよう、図17図19に示すものを用いた。
これらの画像100a~100dを用い、上記実施形態で示したプログラムを用い、建築部分1kを構成する床2、柱3、梁4、壁5に関する各数値を計算した。その計算結果を図20に示す。
【0087】
また、比較例としては、設計図書から得た、床2、柱3、梁4、壁5の各部の実際の寸法を基に、図20と同様の、床2、柱3、梁4、壁5に関する各数値を算出した。その結果を図21に示した。
図21に示されるように、上記実施形態で示したプログラムを用いて求めた各値は、実際の寸法を基に得た各数値に対し、その誤差は概ね1割以内であった。
実施例では、基準階の建築部分1kの鉄筋コンクリートの体積は、115.1mであった。この値は、図21に示されるように、比較例における建築部分1kの鉄筋コンクリートの体積の1.096倍であった。
この鉄筋コンクリートの体積を重量に変換し、コンクリートの重量と鉄筋の重量に分けた。その結果を、図22に示す。
求められたコンクリートの重量からセメント分を導出した。セメントの重量と二酸化炭素排出原単位を乗算して、セメントの二酸化炭素排出量を求めた。同様に、鉄筋の重量と鉄筋の二酸化炭素排出原単位とを乗算して、鉄筋の二酸化炭素排出量を求めた。その結果を、図23に示す。
【0088】
ところで、上記実施形態では、基準階のみを対象としていたが、建物全体で、より正確に二酸化炭素排出量を計算するには、最上階の屋根スラブの構築に用いる建材の二酸化炭素排出量を算出するのが好ましい。この場合、屋根スラブの厚さを、床2のスラブの厚さと同じとし、屋根スラブによる二酸化炭素排出量を算出した。その結果を、図24に示す。
建物1の全体では、1階部分にエントランスなど共用部があると考えるが、その部分の構築のために投入された建材は、1戸分と同じと考え、図25に示すように建物全体の二酸化炭素排出量を算出した。これは、比較例における二酸化炭素排出量の1.09倍であった。
鉄筋コンクリート造の建物では、鉄筋コンクリート部分のみを対象として二酸化炭素排出量を算出すると、鉄筋コンクリート部分以外も含めた二酸化炭素排出量の91%と言われている。上記実施例における建物全体の二酸化炭素排出量は、比較例に対して1.09倍であったので、つまり、この実施例では建物全体の二酸化炭素排出量を精度0.99(=0.91×1.09)で算出できたことになる。
【符号の説明】
【0089】
1 建物 4 梁
1k 建築部分 5 壁
2 床 100(100a~100d) 画像
3 柱 M 基準階平面図
図1
図2
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