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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127187
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/14 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G08B21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036168
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】庄司 匡克
(72)【発明者】
【氏名】高比良 直史
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA02
5C086AA38
5C086CB01
5C086CB07
5C086CB11
5C086DA08
5C086FA01
5C086FA12
5C086FA15
(57)【要約】
【課題】通信状態が悪い環境下における作業環境を外部において把握することができる監視システムを提供する。
【解決手段】監視システムは、持ち運び可能な子機20と、子機20に電力線P1で接続された親機40とを備える。子機20は、周囲のガス濃度や温度、湿度などを計測する計測器と、支持体20aと、支持体20aに取り付けられる照明装置25と、を備える。照明装置25は、支持体20aに対して上下方向に回転可能に取り付けられた回転支持部と、回転支持部に取り付けられた光源と、を備える。親機40は、計測器から取得した計測結果が警報条件を満たした場合には、警報を出力する警報処理を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持ち運び可能な子機と、前記子機に有線で接続された親機とを備え、前記子機の周囲の環境状況を監視する監視システムであって、
前記子機は、周囲の環境を計測する計測器と、支持体と、前記支持体に取り付けられる照明装置と、を備え、
前記照明装置は、前記支持体に対して上下方向に回転可能に取り付けられた回転支持部と、前記回転支持部に取り付けられた光源と、を備え、
前記親機は、前記計測器から取得した計測結果が警報条件を満たした場合には、警報を出力する警報処理を実行する
ことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記光源は、前記回転支持部に対して回転可能に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記光源は、前記支持体に対する前記回転支持部の回転によって、前記支持体の上端よりも上方の位置と前記上端よりも下方の位置との間を移動可能に構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記上端は、前記子機を把持するための把持部を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の地下ピット等の空間で行なわれる作業の周囲の環境を監視する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の地下においては、排水管等の排水設備を配置した地下ピットという空間が設けられていることがある。この地下ピットでは、排水設備のメンテナンス作業が行なわれる。ここで、建物が鉄筋コンクリート造の場合には、地下ピットは、鉄筋コンクリートで覆われているため、点検口以外開口しておらず、閉塞空間になっている。したがって、地下ピット内は、外気の交換が行われ難いため、低濃度の酸素しか存在しなかったり室内に有害な気体が存在したりすることがある。
【0003】
そこで、ガス検出装置を具備した警報装置が検討されている。警報装置の一例は、ガス検出装置が所定のガス濃度に到達したことを検出した場合に、照明の表示色を切り替える(例えば、特許文献1を参照)。これにより、作業者に対して作業エリア内のガス濃度が人体に有害な濃度であることを警告する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-102694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、警報装置において警告が出た場合、地下ピット内の作業者だけで対応できないことがある。この場合、地下ピット内の環境に応じて外部で対応することがある。しかし、地下ピットは、閉鎖空間であるため、通信状態が悪いことが多い。したがって、作業者が作業を行なう作業環境を、外部において把握することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する監視システムは、持ち運び可能な子機と、前記子機に有線で接続された親機とを備え、前記子機の周囲の環境状況を監視する監視システムであって、前記子機は、周囲の環境を計測する計測器と、支持体と、前記支持体に取り付けられる照明装置と、を備え、前記照明装置は、前記支持体に対して上下方向に回転可能に取り付けられた回転支持部と、前記回転支持部に取り付けられた光源と、を備え、前記親機は、前記計測器から取得した計測結果が警報条件を満たした場合には、警報を出力する警報処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通信状態が悪い環境下における作業環境を外部において把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態における監視システムの構成を表すブロック図である。
図2図2は、実施形態の管理者端末を構成する情報処理装置のハードウェア構成を表すブロック図である。
図3図3は、実施形態における監視機器を表す斜視図である。
図4図4は、実施形態における子機を背面側から見た斜視図である。
図5図5は、実施形態における子機の正面図である。
図6図6は、実施形態における子機の側面図である。
図7図7は、実施形態における子機の側面図である。
図8図8は、実施形態におけるタグ設置作業の作業手順を説明する流れ図である。
図9図9は、実施形態における監視方法の処理手順を説明する流れ図である。
図10図10は、実施形態における監視システムが地下ピットで使用される状態を示す模式図である。
図11図11は、実施形態の監視システムにおける監視画面の模式図である。
図12図12は、実施形態の監視システムにおける所在地画面の模式図である。
図13図13は、実施形態の監視システムにおける所在地画面の模式図である。
図14図14は、実施形態の監視システムにおける警報処理の処理手順を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図14を用いて、監視システムの一実施形態を説明する。本実施形態では、建物の地下ピットにおけるメンテナンス作業を行なうために、地下ピット内の環境状況を監視するための監視システムとして説明する。この地下ピットは、建物の最下部に設けられた閉塞空間であって、点検口を介してのみ地上に開放されている。この点検口は、例えば、1m四方の大きさであって、通常は蓋によって覆われている。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の監視システム10は、子機20と、この子機20に有線で接続される親機40とを備えた監視機器15を備えている。監視機器15の親機40は、管理者端末60に接続される。子機20は、持ち運び可能に構成されている。監視システム10では、監視機器15のうち、親機40を地下ピットの外部に配置した状態で、子機20のみが地下ピットの内部に持ち込まれる。
【0011】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、管理者端末60を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、一例として、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、及び、プロセッサH15を備える。なお、情報処理装置H10は、他のハードウェア構成によって実現することも可能である。
【0012】
通信装置H11は、他の装置との間でデータの送受信を実行するインタフェースである。通信装置H11は、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0013】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置である。入力装置H12は、例えば、マウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。なお、入力装置H12及び表示装置H13として、タッチパネルディスプレイを用いてもよい。
【0014】
記憶装置H14は、管理者端末60の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶装置H14は、例えば、ROM、RAM、ハードディスク等である。
【0015】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いることで、管理者端末60における各処理を制御する。プロセッサH15は、例えば、CPUやMPU等である。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0016】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0017】
〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路
〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサH15は、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0018】
(監視機器15の構成)
次に、監視機器15の各機能を説明する。
図1に示すように、監視機器15は、子機20と、子機20に電力線P1で接続される親機40とを備える。
【0019】
<子機20の機能>
子機20は、ガス検知器24、照明装置25、筐体26、非常用ボタン27、温湿度センサ28、タグリーダ31、カメラ32及びフラッシュライト33を備える。筐体26以外の詳細については後述する。
【0020】
子機20の筐体26には、制御部35、無線通信部36、PLC通信部37及び受電部38が内蔵されている。
制御部35には、後述するガス検知器24、非常用ボタン27、温湿度センサ28、タグリーダ31、カメラ32からのデータ信号が供給される。
【0021】
制御部35は、上述した情報処理装置H10の記憶装置H14及びプロセッサH15と同様の構成を備える。制御部35は、取得した各種データを、PLC通信部37を介して親機40に送信する。本実施形態では、制御部35は、ガス検知器24が計測したガス濃度計測値、非常用ボタン27の押下に応じた緊急信号、温湿度センサ28が計測した環境計測値、タグリーダ31が読み取った情報、カメラ32が撮影した画像データを送信する。なお、ガス濃度計測値及び環境計測値が計測結果に相当する。
【0022】
更に、制御部35は、親機40から、後述するフラッシュライト33の点滅指示のデータ信号を受信したときに、フラッシュライト33を点滅させる。
無線通信部36は、作業者が携帯している携帯端末のWi-Fi(登録商標)のアクセスポイントとして機能することで、携帯端末等の外部と無線通信を実行する。
【0023】
PLC通信部37は、制御部35の制御に応じて、電力線P1を用いて親機40との間でデータを送受信する。
受電部38は、電力線P1を介して親機40からの電源供給を受けるとともに、フラッシュライト33の点滅指示のデータを受信する。更に、この受電部38は、PLC通信部37からのデータ信号を親機40に送信する。
【0024】
<親機40の機能>
親機40は、積層回転灯42、送電部45a、PLC通信部46a、外部通信部46b及び制御装置50を備える。積層回転灯42の詳細については、後述する。
【0025】
親機40の送電部45aは、外部商用電源からの電力供給を受けるとともに、電力線P1を介して子機20に電力を供給する。本実施形態では、子機20において設けられたコンセント部29(図4参照)に工具等の機器が接続された場合に、子機20において商用電源からの電力を供給する。送電部45aは、PLC通信によるデータ信号を子機20の受電部38と送受信(通信)する。
【0026】
PLC通信部46aは、制御装置50の制御部51の制御に応じて、電力線P1を用いて子機20との間でデータを送受信する。
外部通信部46bは、管理者端末60とネットワークを介して通信を行なう。本実施形態では、外部通信部46bは、無線LAN通信を用いて接続したSIM搭載無線ルータや光回線ルータから、インターネットを経由して、管理者端末60との間でデータを送受信する。
【0027】
制御装置50は、制御部51、図面記憶部52及び環境情報記憶部53を備える。制御部51は、上述した情報処理装置H10の記憶装置H14及びプロセッサH15と同様の構成を備える。制御部51は、管理処理、取得処理、所在特定処理及び緊急対応処理を実行する。そして、制御部51は、監視プログラムを実行することにより、管理部511、取得部512、所在特定部513及び緊急対応部514として機能する。なお、本実施形態では、管理部511及び所在特定部513が表示処理を実行するとともに、緊急対応部514が警報処理を実行する。
【0028】
管理部511は、電源投入後のプログラムの起動等の監視開始処理を実行する。また、管理部511は、取得した環境計測値やガス濃度計測値を監視する管理処理を実行する。この場合、管理部511は、緊急対応部514に警報処理を実行させる条件として警報条件を記憶している。例えば、警報条件としては、子機20の非常用ボタン27の押下に応じた緊急信号を受信した場合、酸素ガスの濃度が閾値以下、有毒ガスである一酸化炭素や二酸化炭素の濃度が閾値以上である。管理部511は、これらの警報条件に用いる閾値を記憶している。そして、管理部511は、警報条件の少なくとも1つを満たしたと判定した場合に、警報処理を実行させる。
【0029】
取得部512は、子機20から取得した各種データを取得する処理を実行する。具体的には、子機20のガス検知器24が計測したガス濃度計測値、温湿度センサ28が計測した環境計測値、カメラ32の画像、タグリーダ31が読み取った部屋識別子を取得する。更に、この取得部512は、取得する環境計測値の閾値やガス濃度計測値の閾値を記憶している。
【0030】
所在特定部513は、子機20の現在地を特定するための処理を実行する。具体的には、所在特定部513は、取得部512が取得した部屋識別子と、これに関連付けられた図面情報とを用いて、子機20の現在の所在地を特定する。
【0031】
緊急対応部514は、管理部511の判定に応じて警報処理を実行する。緊急対応部514は、管理者端末60に緊急メールを送信する。このため、緊急対応部514は、管理者端末60のメールアドレスを記憶している。更に、緊急対応部514は、子機20のフラッシュライト33の点滅、親機40の積層回転灯42の点灯を制御するとともに、スピーカ(図示せず)から警報音を出力する。
【0032】
図面記憶部52には、地下ピットの図面データが記憶されている。この図面データは、作業を行なう地下ピットの図面に関するデータである。地下ピットは、例えば、複数の部屋を備える。図面データには、建物識別子、各部屋の位置及び各部屋の部屋識別子が含まれている。
【0033】
建物識別子は、各地下ピットが設けられた建物(の図面)を特定するための識別子である。各部屋の位置は、地下ピットにおける各部屋(領域)の位置を図面上で特定するための座標である。部屋識別子は、部屋を特定するための識別子である。図面データには、部屋識別子と各部屋の位置とが関連付けられている。部屋識別子は、各部屋に配置されたICタグに記憶される。
【0034】
環境情報記憶部53には、取得部512が取得したデータが、取得した時間とともに記憶される。本実施形態では、子機20のガス検知器24が計測したガス濃度計測値、温湿度センサ28が計測した環境計測値、カメラ32の画像、タグリーダ31が読み取った部屋識別子が記憶される。
【0035】
(管理者端末60の機能的構成)
管理者端末60は、作業者を管理する管理者が閲覧するコンピュータ端末である。管理者端末60は、インターネットを介して親機40との間でデータを送受信する。管理者端末60は、親機40が生成した画面データを取得するとともに、作業者の地下ピット内の作業場所の周囲環境等を表示する。また、この管理者端末60は、親機40による警報処理の実行により緊急メールを取得する。
【0036】
(子機20の構成)
次に、上述した子機20の機能を実現する子機20の機械的な構成について説明する。
図4に示すように、子機20は、支持体20aと、照明装置25とを備えている。支持体20aは、一体に構成されたフレーム部21及び筐体26を備えている。フレーム部21は、例えば、塩化ビニル管等を組み合わせて構成されている。筐体26は、開閉可能な蓋部を側方に備える直方体の箱形状を有する。
【0037】
フレーム部21は、下端部21aを備える。下端部21aは、平行に延びる2本の第1管21a1と、2本の第1管21a1を繋ぐ1本の第2管21a2とを備える。下端部21aは、2本の第1管21a1と1本の第2管21a2とによって四角枠のうち一辺が開口した形状を有する。
【0038】
下端部21aの下面には、離間した位置にキャスタ22が回転可能に取り付けられている。具体的に、下端部21aには、下端部21aのうち2本の第1管21a1のそれぞれに1つずつ、第2管21a2に2つの計4つのキャスタ22が取り付けられている。
【0039】
フレーム部21は、下端部21aの2本の第1管21a1のそれぞれから上方に延在した2本の垂直部21bと、上下に離間した2本の連結部21cと、2本の垂直部21bの上端を繋ぐループ部21dとを有している。連結部21cは、2本の垂直部21b同士を水平方向に連結している。連結部21cには、筐体26が備える1つの側面の上部と下部が固定されている。
【0040】
垂直部21bは、下端部21aの2本の第1管21a1のそれぞれにおいて、2つのキャスタ22の間の位置に接続されている。垂直部21bは、下端部21aに対して直角に延在するように接続している。
【0041】
ループ部21dは、垂直部21bの上端から第2管21a2側に傾斜している。ループ部21dは、把持部21d1を備える。把持部21d1は、フレーム部21の上端に位置する。本実施形態では、ループ部21dは、把持部21d1が筐体26の重心位置よりも第2管21a2側に位置するまで延在している。把持部21d1は、子機20を持ち運ぶ際に把持される。把持部21d1には、ゴムシートやウレタンなどのグリップ性を高める部材が配置される。筐体26は、把持部21d1よりも下方に配置される。把持部21d1は、支持体20aの上端であって、支持体20aのなかで最上部に位置する。
【0042】
2本の連結部21cのうち上部に位置する連結部21cには、掛止部(図示せず)が設けられている。この掛止部には、ガス検知器24が着脱可能に掛止される。なお、図4では、ガス検知器24の図示を省略している。
【0043】
ガス検知器24は、子機20の周囲のガス(気体)の濃度を検出する。本実施形態のガス検知器24は、酸素、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素及びメタンの各濃度を計測する。更に、本実施形態では、ガス検知器24は、所定時間毎(例えば1秒毎)に検出する。ガス検知器24は、各ガスの濃度を計測した場合、計測したガス濃度計測値を、ローカル通信を用いて子機20の制御部35に送信する。本実施形態では、ガス検知器24は、ローカル通信(Bluetooth(登録商標))を用いる。
【0044】
ループ部21dには、照明装置25が取り付けられる。照明装置25は、地下ピットなどの暗所での作業時に必要な照明光を供給する。照明装置25は、回転支持部25aと、光源25bとを備える。回転支持部25aの一端は、ループ部21dに対して回転可能に取り付けられる。回転支持部25aの他端には、光源25bが回転支持部25aに対して回転可能に取り付けられる。回転支持部25aは、ループ部21dとの接続部分を回転軸として、支持体20aに対して上下方向に回転する。光源25bは、回転支持部25aとの接続部分を回転軸として、回転支持部25aに対して上下方向に回転する。光源25bは、一例として、光源25bの前方に照明光を照射するLED照明である。
【0045】
図5に示すように、筐体26の一方の側面には、非常用ボタン27と温湿度センサ28とが設けられている。筐体26の他方の側面には、コンセント部29が設けられている。なお、電力線P1は、筐体26の内部からコンセント部29が設けられた側面を通じて親機40へと延在している。
【0046】
非常用ボタン27は、非常事態に救助を求めるために用いられる。この非常用ボタン27の押下を検知した制御部35は、緊急信号を親機40に送信する。温湿度センサ28は、温度、湿度及びWBGT(暑さ指数)を、所定時間毎(例えば1秒毎)に計測する。本実施形態の温湿度センサ28は、これら計測した環境計測値を制御部35に供給する。コンセント部29には、例えば工具等の電源コンセントが差し込まれる。これにより、コンセント部29を介して工具に電力が供給される。
【0047】
筐体26の蓋部の前面には、タグリーダ31が設けられている。このタグリーダ31は、非接触で、近傍にある記憶媒体としてのICタグに記憶された情報を読み取る。本実施形態では、各部屋に配置されたICタグに記憶された部屋識別子を読み取る。
【0048】
筐体26の上面には、カメラ32が固定されている。このカメラ32は、子機20の前方や後方を動画で撮影する。
更に、筐体26の下面には、フラッシュライト33が取り付けられている。このフラッシュライト33は、親機40からの指示信号に応じて点灯(点滅)する。
【0049】
(照明装置25の構成)
次に、図6図7を参照して上述した照明装置25について詳述する。なお、図7では、連結部21cに設けられた掛止部にガス検知器24が掛止された状態を図示している。
【0050】
図6に示すように、照明装置25において、光源25bは、支持体20aに対する回転支持部25aの回転によって、二点鎖線で示す把持部21d1よりも下方の位置と、実線で示す把持部21d1よりも上方の位置との間を移動可能に構成される。光源25bが把持部21d1よりも下方に位置する状態では、光源25bと筐体26とが水平方向に隣接する。光源25bが把持部21d1よりも上方に位置する状態では、光源25bと筐体26とが上下に並ぶ。したがって、支持体20aに対して回転支持部25aが回転することで、光源25bの高さを変えることができる。また、光源25bが把持部21d1よりも下方に位置する状態では、把持部21d1が子機20のなかで最上部に位置する。なお、照明装置25は、支持体20aに対する回転支持部25aの回転の可動範囲のなかで、光源25bの高さを段階的に変更可能な構成でもよいし、任意の高さに変更可能な構成でもよい。
【0051】
例えば、子機20を持ち運ぶ際には、光源25bが把持部21d1よりも下方に位置する状態に照明装置25を折り畳むことで、作業者が把持部21d1を把持し易くなる。また、子機20の全体の高さを低くすることができる点でも子機20がコンパクトになることから、より子機20の持ち運びが容易となる。更に、光源25bと筐体26とが水平方向に隣接することから、子機20の全体の重心のバランスが取りやすくなるため、より子機20の持ち運びが容易となる。そして、地下ピットでの作業時には、光源25bが把持部21d1よりも上方に位置する状態に照明装置25を起立させることで、光源25bの高さを変えることができる。
【0052】
図7に示すように、照明装置25において、光源25bは、回転支持部25aに対して回転可能に構成される。これにより、照明装置25では、光源25bが照射する照明光の照射方向を変えることができる。なお、照明装置25は、回転支持部25aに対する光源25bの回転の可動範囲のなかで、光源25bの照射方向を段階的に変更可能な構成でもよいし、任意の照射方向に変更可能な構成でもよい。
【0053】
(親機40の構成)
次に、図3を用いて、上述した親機40の機能を実現する親機40の機械的な構成について説明する。
【0054】
図3に示すように、親機40は、本体部41、積層回転灯42、電源ボックス45及び制御ボックス46を備えている。本体部41は、平面が略長方形状の上下2段の台部41a,41bを有する台車で構成される。本体部41の下段の台部41aの下面には、離間した4つのキャスタ41cが回転可能に設けられている。本体部41の上段の台部41bの短辺の近傍には、ハンドル41dが設けられている。
【0055】
上段の台部41bの上面には積層回転灯42が固定されている。この積層回転灯42は、2つの回転灯が積層されて構成される。この積層回転灯42は、下側に緑色の回転灯、上側に赤色の回転灯が配置されている。
【0056】
本体部41の上段の台部41bの長辺部には、離間した2つのリールR1が回転可能に設けられている。リールR1には、電力線P1が巻回されている。本実施形態の電力線P1は、例えば100mの長さを有する。
【0057】
本体部41の前後には、電源ボックス45及び制御ボックス46が設けられている。電源ボックス45には、送電部45aが内蔵されている。制御ボックス46には、上述したPLC通信部46a、外部通信部46b及び制御装置50が内蔵されている。
【0058】
(地下ピットにおける作業)
次に、図8図14を用いて、地下ピットにおける作業において、上述した監視システム10を用いた監視方法を説明する。
【0059】
ここで、図8に示すように、地下ピットにおける作業を行なう準備作業としてタグ設置作業を実行する。
このタグ設置作業においては、まず、部屋識別子を図面記憶部52に記憶する(ステップS1-1)。具体的には、制御装置50の制御部51は、図面記憶部52に記憶されている各部屋に関連付けて、各部屋に割り当てた部屋識別子を記憶する。
【0060】
次に、ICタグへの部屋識別子の書き込み処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、図面記憶部52に記憶した各部屋の部屋識別子を各ICタグのメモリに書き込んで記憶する。すなわち、1つのICタグには、1つの部屋の部屋識別子が書き込まれる。
【0061】
その後、ICタグを配置する(ステップS1-3)。具体的には、ICタグに記憶されている部屋識別子で特定される部屋に、ICタグをそれぞれ配置する。この場合、ICタグを部屋の天井等に紐等で吊り下げておく。
【0062】
(監視処理)
その後、作業者が、地下ピットにおいて作業を行なう。
図10に示すように、まず、地下ピットの点検口D1の周囲を安全柵F1で覆う。そして、監視機器15を点検口D1の近傍まで移動させる。この場合、作業者は、監視機器15の子機20を親機40の上段の台部41bに載置した状態(図3参照)で、親機40のハンドル41dを持って監視機器15を運搬する。このとき、子機20は、光源25bが把持部21d1よりも下方に位置する状態に照明装置25が折り畳まれた状態で親機40に載置される。また、光源25bは、照明光の照射方向が筐体26と反対側に向かうように配置される。
【0063】
そして、図9に示すように、監視機器15の親機40の電源が投入される(ステップS2-1)。具体的には、作業者が、親機40の電源を外部商用電源に接続する。ここで、親機40の電源がオンされると、積層回転灯42の赤い回転灯が点灯する。更に、電力線P1を介して子機20に電力が供給される(ステップS2-2)。
【0064】
次に、親機40の制御装置50の制御部51は、プログラムを起動する(ステップS2-3)。そして、制御部51の管理部511は、プログラムの起動が完了した場合には、赤色の回転灯を消灯し、代わりに緑色の回転灯を点灯する。
【0065】
一方、電力の供給を受けた子機20は、環境計測値及び画像の送信開始処理を実行する(ステップS2-4)。具体的には、子機20の制御部35は、温湿度センサ28において計測した環境計測値(温度、湿度及びWBGTの計測値)を、所定時間毎(例えば1秒毎)に、PLC通信部37、受電部38及び電力線P1を介して親機40に送信する。更に、制御部35は、カメラ32が撮影した画像データも、PLC通信部37、受電部38及び電力線P1を介して親機40に送信する。そして、子機20は、これ以降、これらのデータを親機40に送信し続ける。
【0066】
親機40の制御装置50の制御部51は、環境計測値及び画像の記録開始処理を実行する(ステップS2-5)。具体的には、制御部51の取得部512は、子機20から取得した環境計測値データ及び画像データを、取得した現在時刻と関連付けて、環境情報記憶部53に記録する。そして、親機40は、これ以降、子機20から取得した環境計測値データ及び画像データを環境情報記憶部53に記録し続ける。
【0067】
一方、子機20は、ガス濃度計測値の送信開始処理を実行する(ステップS2-6)。具体的には、親機40の緑色の回転灯の点灯を確認した作業者は、ガス検知器24の電源を投入する。これにより、子機20のガス検知器24は、各ガスの濃度の計測を開始するとともに、ローカル通信を介して各ガスの濃度の計測値を子機20の制御部35に送信する。制御部35は、ガス濃度計測値を取得する度に、ガス濃度計測値を、PLC通信部37、受電部38及び電力線P1を介して親機40に送信する。そして、子機20は、これ以降、ガス検知器24からのガス濃度計測値データを親機40に送信し続ける。
【0068】
親機40の制御装置50の制御部51は、ガス濃度計測値の記録開始処理を実行する(ステップS2-7)。具体的には、制御部51の取得部512は、子機20から取得したガス濃度計測値を、取得した現在時刻と関連付けて、環境情報記憶部53に記録する。ここでは、ガス濃度計測値として、酸素、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素及びメタンの各濃度の計測値を取得する。そして、親機40は、これ以降、取得したガス濃度計測値データを環境情報記憶部53に記録し続ける。
【0069】
そして、親機40の制御装置50の制御部51は、計測値等の表示処理を実行する(ステップS2-8)。具体的には、管理者は、管理者端末60を用いて、監視画面の表示を指示する。これに応じて、親機40の制御部51の管理部511は、最新の計測値、閾値及び最新の画像等を含む監視画面データを生成するとともに、生成した監視画面データを管理者端末60に送信する。管理者端末60は、取得した監視画面データに基づいて監視画面を表示装置H13に表示する。
【0070】
この場合、図11に示すように、管理者端末60の表示装置H13には、監視画面800を表示する。この監視画面800には、ガス検知器24からのガス濃度計測値及び温湿度センサ28の環境計測値をそれぞれ表示する表示欄801,802と、カメラ32が撮影した画像を表示する撮影画面部805とが含まれる。表示欄801,802は、各計測値が、棒グラフ及び閾値とともに表示されている。
【0071】
図9に戻り、その後、作業者は、照明スイッチ(図示せず)を操作して、子機20の照明装置25の照明を点灯する(ステップS2-9)。
図10に戻り、そして、作業者は、親機40の上段の台部41bに載置された子機20を持って、安全柵F1に囲まれた点検口D1を降りる。これにより、点検口D1の下の地下ピットの部屋A1に子機20が持ち込まれる。その後、照明装置25の回転支持部25aを支持体20aに対して回転させることで、把持部21d1よりも上方の位置に光源25bを移動させる。なお、地下ピットの部屋A1が、地下ピット内の空間の領域に対応する。
【0072】
このとき、もし、地下ピットの部屋A1における酸素のガス濃度が低い場合には、親機40が警報処理を実行する。これにより、親機40の積層回転灯42が赤く点灯するとともに、管理者端末60に緊急通知メールが送信される。これら警報処理については、後述する。
【0073】
図9に戻り、そして、子機20は、Wi-Fiへの接続処理を実行する(ステップS2-10)。具体的には、作業者が携帯している携帯端末を、Wi-Fi通信可能に設定する。これにより、子機20は、アクセスポイントとして機能する。
【0074】
次に、設置されているICタグの部屋識別子の読取処理を実行する(ステップS2-11)。具体的には、作業者は、部屋A1に降ろした子機20を、部屋A1に設置されたICタグT1(図10参照)の近傍に移動させる。そして、子機20のタグリーダ31の近傍までICタグT1を近づけた後、タグリーダ31に、ICタグT1が記憶している情報を読み取らせる。これにより、子機20は、タグリーダ31を介してICタグT1から部屋識別子を読み取った後、電力線P1を介して読み取った部屋識別子を親機40に送信する。
【0075】
親機40の制御装置50の制御部51は、部屋識別子の記録処理を実行する(ステップS2-12)。具体的には、制御部51の取得部512は、取得した部屋識別子を、取得した時間に関連付けて、環境情報記憶部53に記憶する。
【0076】
次に、親機40の制御装置50の制御部51は、所在地の表示処理を実行する(ステップS2-13)。具体的には、管理者は、管理者端末60を用いて、所在地の表示を指示する。これに応じて、親機40の制御部51の所在特定部513は、図面記憶部52に記憶している図面データから、取得した部屋識別子で特定される部屋A1を含む図面を取得する。そして、所在特定部513は、部屋識別子で特定される部屋A1を、他の部分と区別可能なマークを付した所在地画面データを生成し、管理者端末60に送信する。管理者端末60は、親機40から計測値等を含む所在地画面データを取得した後、取得した所在地画面データに基づいて表示装置H13に所在地画面表示する。
【0077】
図12には、表示装置H13に表示された所在地画面850を示している。この所在地画面850には、地下ピットの図面855が含まれる。図面855には、子機20のタグリーダ31がICタグT1を読み取った部屋A1の位置L1が表示されている。
【0078】
その後、図10に示すように、作業者は、部屋A1における作業を終了し、他の部屋A2に移動して作業を行なう。ここで、移動先である部屋A2に到達した場合、作業者は、部屋A2に設置しているICタグT2を、子機20のタグリーダ31に読み取らせる。これにより、監視システム10は、上述したステップS2-11~S2-13の処理を実行する。
【0079】
図13に示すように、親機40の制御装置50の制御部51は、新たなICタグT2の部屋識別子を取得した場合、その部屋識別子に関連付けられた部屋A2の位置L2を、所在地画面860の図面865に表示する。
【0080】
(警報処理)
次に、監視機器15における警報処理について説明する。
図14に示すように、親機40の制御装置50の制御部51は、警報条件を満たしたか否かの判定処理を実行する(ステップS3-1)。具体的には、制御部51の管理部511は、例えば、緊急信号の受信の有無の判定、取得したガス濃度計測値と予め記憶された各種ガスの閾値との比較を実行する。
【0081】
ここで、親機40の制御装置50の制御部51は、警報条件を満たさなかったと判定した場合(ステップS3-1において「NO」の場合)、緊急信号や新たなガス濃度計測値の取得まで待機する。
【0082】
一方、親機40の制御装置50の制御部51は、警報条件を満たしたと判定した場合(ステップS3-1において「YES」の場合)、警報灯の点灯及び警報音の出力処理を実行する(ステップS3-2)。具体的には、制御部51の緊急対応部514は、積層回転灯42の緑色の回転灯を消灯するとともに、赤色の回転灯を点灯する。更に、緊急対応部514は、警報音をスピーカから出力する。また、緊急対応部514は、子機20のフラッシュライト33を点滅させる。
【0083】
次に、親機40の制御装置50の制御部51は、緊急メールの通知処理を実行する(ステップS3-3)。具体的には、制御部51の緊急対応部514は、記憶している管理者のメールアドレスに、緊急メールを送信する。この場合、緊急対応部514は、管理部511が満たしたと判定した警報条件の内容を緊急メールに含めてもよい。
【0084】
管理者端末60は、緊急メールの表示処理を実行する(ステップS3-4)。具体的には、管理者端末60は、受信した緊急メールを表示装置H13に表示する。これにより、緊急メールを見た管理者は、対応を行なう。
【0085】
(実施形態の作用)
監視システム10は、持ち運び可能な子機20と、この子機20と電力線P1を介して接続される親機40とを備える。これにより、子機20が得た作業環境の情報を、親機40を介して外部で把握することができる。
【0086】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、監視システム10の監視機器15は、持ち運び可能な子機20と、この子機20と電力線P1を介して接続される親機40とを備える。子機20は、周囲の環境を計測するガス検知器24や温湿度センサ28を備える。地下ピット内に持ち込まれた子機20は、計測されたガス濃度計測値や環境計測値を電力線P1で、通信環境がよい地下ピット外の親機40に送信する。これにより、子機20が得た作業環境の情報を、親機40を介して外部で把握することができる。
【0087】
(2)本実施形態では、親機40の制御部51は、緊急信号やガス濃度計測値に応じて警報条件が満たされたと判定された場合(ステップS3-1において「YES」の場合)、警報処理を実行する。この警報処理において、親機40は、警報灯の点灯及び警報音の出力処理を実行するとともに、管理者端末60への緊急メールの通知処理を実行する(ステップS3-2,S3-3)。これにより、地下ピット内において発生した異常を、子機20を介して作業者に知らせるとともに、地下ピットの外の親機40を介して管理者に迅速に通知することができる。すなわち、子機20の周囲の環境が警報条件を満たしたことを、親機40を介して外部で把握することができる。
【0088】
(3)子機20において、支持体20aに対して照明装置25の回転支持部25aが回転することで、作業時に必要な照明光を供給する光源25bの高さを変えることができる。これにより、地下ピットのような暗所での作業性を向上できる。例えば、把持部21d1よりも上方の位置に光源25bを移動させることにより、高い位置から広い範囲を照明できる。また、照明装置25は回転支持部25aにより支持されるため、安定した状態で照明できる。
【0089】
(4)子機20の照明装置25において、光源25bが回転支持部25aに対して回転することで、光源25bからの照明光の照射方向を変えることができる。これにより、地下ピットのような暗所での作業性をより向上できる。例えば、照明装置25を側方に向けることにより、作業位置に応じた照射方向を設定できる。また、照明装置25を上方に向けることにより、地下ピットの天井を照らして、全体的な間接照明を実現できる。
【0090】
(5)光源25bは、支持体20aの上端よりも上方の位置と、支持体20aの上端よりも下方の位置との間を移動可能に構成される。これにより、例えば、子機20の使用時には光源25bを支持体20aの上端よりも高い位置に配置しつつ、子機20の持ち運び時には光源25bを把持部21d1よりも下方に配置することで子機20を小型化できる。また、支持体20aの上端が把持部21d1を備えることで、光源25bが把持部21d1よりも下方に位置する状態に照明装置25を折り畳むことで、作業者が把持部21d1を把持する際に光源25bが邪魔にならず把持し易い状態となる。
【0091】
(6)光源25bが把持部21d1よりも下方に位置する状態で光源25bと筐体26とが水平方向に隣接することで、子機20の全体の重心のバランスが取りやすくなるため、より子機20の持ち運びが容易となる。
【0092】
(7)本実施形態では、地下ピットの各部屋A1,A2には、配置された部屋A1,A2を特定する部屋識別子が記憶されたICタグT1,T2が配置されている。子機20は、ICタグT1,T2から読み取った部屋識別子を親機40に送信する。親機40の制御部51は、所在地画面850,860の地下ピットの図面855,865において、取得した部屋識別子に対応する部屋A1,A2の位置L1,L2を管理者端末60に表示する。これにより、子機20を持ち込んでいる作業者の現在の所在地を把握できる。
【0093】
(8)本実施形態では、子機20は、フレーム部21の下端部21aに、複数のキャスタ22が設けられている。これにより、地下ピット内で作業する作業者とともに子機20を容易に持ち運びできる。
【0094】
(9)本実施形態では、子機20のフレーム部21の上端には、筐体26側に傾斜した把持部21d1が形成されている。これにより、制御部35や受電部38が内蔵されることにより重量のある筐体26側に把持部21d1を位置させたので、子機20を容易に持ち上げて地下ピット内に持ち込むことができる。
【0095】
(10)本実施形態では、親機40の制御部51は、子機20が取得したガス濃度計測値や環境計測値を、各計測値の閾値とともに表示する表示欄801,802を監視画面800に含めて表示する。これにより、計測値と閾値との関係を把握することもできるので、警報条件を満たす前にも、地下ピット内の環境状況を把握することができる。
【0096】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0097】
・把持部21d1が支持体20aの上端に位置する構成に限定されず、フレーム部21の何れの箇所に把持部21d1を設けてもよい。また、フレーム部21に把持部21d1を設ける構成に代えて、筐体26に把持部を設けてもよい。筐体26に把持部を設ける場合でも、当該把持部は支持体20aの上端に位置してもよいし、支持体20aの上端以外の何れの箇所に当該把持部を設けてもよい。
【0098】
・光源25bが把持部21d1よりも上方の位置と把持部21d1よりも下方の位置との間を移動可能に構成される場合を例示した。これに限定されず、例えば、光源25bが最も高い位置に配置された状態において、把持部21d1が光源25bよりも上方に位置してもよい。この場合、支持体20aの全高が大きくなるものの、光源25bが最も高い位置に配置された状態においても、把持部21d1を把持し易くすることができる。したがって、光源25bが最も高い位置に配置された状態であっても、把持部21d1を把持して子機20を走行させることもできる。また、光源25bが最も高い位置に配置された状態において、把持部21d1が光源25bよりも上方に位置するように、垂直部21bが伸縮可能であってもよい。
【0099】
・光源25bは、回転支持部25aに対して回転不能に取り付けられてもよい。この場合、光源25bは、一方向のみに照明光を照らすものであってもよいし、円筒形状のLED照明のように周囲全体を照らすものであってもよい。
【0100】
・照明装置25は、フレーム部21に取り付けられる構成に限定されず、例えば、支持体20aのうち筐体26に対して回転可能に取り付けられてもよい。
・上記実施形態においては、監視機器15の親機40が、警報条件を満たしたか否かの判定処理を実行した。警報条件を満たしたか否かの判定処理は、親機40に限られず、親機40とは別の管理サーバで行なってもよいし、子機20の制御部35で行なってもよい。前者の場合には、管理サーバが、図面記憶部や環境情報記憶部を備え、各種計測値の閾値を記憶する。そして、親機40は、取得した計測値や画像を管理サーバに転送した後、管理サーバで警報条件を判定してもよい。また、子機20の制御部35で警報条件を判定する場合には、迅速にフラッシュライト33を点滅させることができる。
【0101】
・上記実施形態においては、子機20のガス検知器24は、ローカル通信で制御部35にガス濃度計測値を送信した。ガス検知器24が計測したガス濃度計測値は、子機20の制御部35にデータが供給できれば、どのような通信方法を用いてもよい。
【0102】
・上記実施形態において、子機20は、ガス濃度を計測するガス検知器24と、温度、湿度及びWBGTを計測する温湿度センサ28とを備える。子機20の周囲の環境状態を計測する計測器は、これらガス検知器24や温湿度センサ28に限られない。例えば、子機20は、他の有害物質を計測してもよいし、作業者のバイタルデータ等を取得してもよい。
【0103】
・上記実施形態においては、親機40の制御部51は、図14に示す警報処理において、警告灯の点灯及び警報音の出力処理(ステップS3-2)及び緊急メールの通知処理(ステップS3-3)を実行した。警報処理において出力する警報は、これらの処理に限定されない。例えば、親機40に更にフラッシュライトを設けたうえで、警報処理においてこのフラッシュライトを点滅してもよい。
【0104】
・子機20は、フレーム部21に取り付けられた照明装置25に加えて、他の照明を備えてもよい。例えば、支持体20aのフレーム部21または筐体26に着脱可能に取り付けられる懐中電灯として機能する照明を備えてもよい。例えば、子機20は、円筒形状のLED照明のように、子機20の近傍全体を照らす他の照明を備えてもよい。この場合、他の照明によって子機20の周囲を照らしつつ、進行方向や作業対象に照明装置25の照明を照射してもよい。
【0105】
・上記実施形態においては、地下ピット内の各部屋A1,A2に、部屋A1,A2をそれぞれ特定する部屋識別子を記憶したICタグT1,T2を配置した。地下ピット内の各部屋のように、空間の各領域を識別する識別子を記憶した記憶媒体を、各領域において読み取ることができれば、記憶媒体はICタグに限られない。例えば、各部屋(領域)に、この領域(部屋)を特定する領域識別子を記憶したコード画像を設けてもよい。更に、記憶媒体に記憶する識別情報は、領域(場所)を特定する部屋識別子や領域識別子に限られない。例えば、記憶媒体を特定する媒体識別情報を用いてもよい。この場合には、媒体識別情報に、領域識別子を関連付けて記憶したうえで、読み取った媒体識別情報から領域識別子を特定する。
【0106】
・上記実施形態においては、監視機器15を、点検口以外開放されていない閉塞空間である地下ピット内の作業に用いた。監視機器15は、地下ピット内の作業に限られず、例えば、放射線を用いる部屋等、通信環境がよくない空間に持ち込んで作業を行なってもよい。
【0107】
・ガス検知器24は、連結部21cに設けられた掛止部に掛け止めされる形態に限定されず、子機20の任意の位置に着脱可能な状態で取り付けられてもよい。例えば、筐体26にガス検知器24を取り付けるための掛止部を設けてもよい。
【0108】
・監視システム10において、親機40による管理者端末60への計測値等の表示処理は割愛されてもよい。この場合でも、親機40による警報処理によって、子機20の周囲や親機40の周囲に警報が発せられるとともに、管理者端末60に地下ピット内での異常の発生が通知される。
【0109】
(付記)
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(付記1)
持ち運び可能な子機と、前記子機に有線で接続された親機とを備え、前記子機の周囲の環境状況を監視する監視システムであって、
前記子機は、周囲の環境を計測する計測器と、支持体と、前記支持体に取り付けられる照明装置と、を備え、
前記照明装置は、前記支持体に対して上下方向に回転可能に取り付けられた回転支持部と、前記回転支持部に取り付けられた光源と、を備え、
前記親機は、
前記計測器から取得した計測結果の表示処理と、
前記計測結果が警報条件を満たした場合には、警報を出力する警報処理とを実行する
ことを特徴とする監視システム。
【0110】
(付記2)
前記親機は、前記子機が持ち込まれる空間における領域の位置と、前記領域を特定する識別情報と、を関連付けた図面情報を記憶した図面記憶部に接続されており、
前記子機は、記憶媒体に記憶された情報を読み取るリーダを備えており、
前記親機は、前記リーダにより読み取った前記記憶媒体の前記識別情報を前記子機から取得し、前記識別情報に対応する前記領域の位置を、前記図面記憶部から特定して、前記表示処理を実行する
ことを特徴とする付記1に記載の監視システム。
【符号の説明】
【0111】
A1,A2…領域としての部屋、D1…点検口、F1…安全柵、L1,L2…位置、P1…電力線、R1…リール、T1,T2…記憶媒体としてのICタグ、10…監視システム、15…監視機器、20…子機、20a…支持体、21…フレーム部、21a…下端部、21b…垂直部、21c…連結部、21d…ループ部、21d1…把持部、22,41c…キャスタ、24…ガス検知器、25…照明装置、25a…回転支持部、25b…光源、26…筐体、27…非常用ボタン、28…温湿度センサ、29…コンセント部、31…タグリーダ、32…カメラ、33…フラッシュライト、35,51…制御部、36…無線通信部、37,46a…PLC通信部、38…受電部、40…親機、41…本体部、41a,41b…台部、41d…ハンドル、42…積層回転灯、45…電源ボックス、45a…送電部、46…制御ボックス、46b…外部通信部、50…制御装置、52…図面記憶部、53…環境情報記憶部、60…管理者端末、511…管理部、512…取得部、513…所在特定部、514…緊急対応部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14