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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127192
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】根巻き用具および根巻き工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 13/02 20060101AFI20240912BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20240912BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240912BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240912BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20240912BHJP
   E04F 17/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E04G13/02 A
E04B1/41 502B
E04B1/58 511H
E04B1/24 R
E02D27/00 Z
E04F17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036175
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕
(72)【発明者】
【氏名】米谷 光広
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 浩司
【テーマコード(参考)】
2D046
2E125
2E150
【Fターム(参考)】
2D046AA11
2D046AA14
2E125AA03
2E125AA45
2E125AB16
2E125AC13
2E125AG41
2E125BA02
2E125BA22
2E125BA32
2E125BE07
2E150HD13
(57)【要約】
【課題】簡便且つ好適に根巻きを施し得る根巻き用具および根巻き工法を提供する。
【解決手段】支柱100に取り付けられ、根巻きの上端の高さに根巻きの上縁と当接する当接部22を備えた上縁部20と、平面視で上縁部20を取り囲むように設けられ、根巻きの素材を充填する内部空間を形成すると共に根巻きの側面を形成する側面部10とを備えて根巻き用具1を構成する。当接部22は、根巻きの上縁と接する面が内側から外側へ向けて下る向きの斜面を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に取り付けられ、根巻きの上端の高さに根巻きの上縁と当接する当接部を備えた上縁部と、
平面視で前記上縁部を取り囲むように設けられ、根巻きの素材を充填する内部空間を形成すると共に根巻きの側面を形成する側面部と
を備えたことを特徴とする根巻き用具。
【請求項2】
前記当接部は、根巻きの上縁と接する面が内側から外側へ向けて下る向きの斜面を形成すること
を特徴とする請求項1に記載の根巻き用具。
【請求項3】
前記上縁部は、前記支柱に取り付けられた状態において前記当接部が前記支柱の脚部の高さに位置するよう構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の根巻き用具。
【請求項4】
前記上縁部は、前記支柱を設置面に固定するアンカーボルトに対し取付可能に構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の根巻き用具。
【請求項5】
請求項1に記載の根巻き用具を前記支柱に対して設置し、
前記側面部の内側に前記当接部の高さまで素材を充填することで前記支柱の基部に根巻きを施すこと
を特徴とする根巻き工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架台等の構造物の柱に根巻きを施す際に用いる根巻き用具、およびこれを用いた根巻き工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や各種の構造物においては、柱の基部に対し、腐食の防止や補強等を目的として根巻きが施される場合がある。
【0003】
根巻きの作業における一般的な手順は次の通りである。まず、木などの素材により製作された型枠を、柱の基部を囲むように設置する。次いで、そこにコンクリートやモルタル等の素材を流し込む。素材が固化したら型枠を取り外す。
【0004】
型枠は、木製であれば、取り外したのち廃棄されるが、固化した素材に取り付けたまま、根巻きの一部として使用する樹脂製の型枠等も販売されている。
【0005】
また、根巻きには、上縁部等に面取りが施される場合もある。その場合、固化した素材を切削して面取りを行うことも可能であるが、根巻きの素材は固く、数が多い場合などは切削が大変であるので、素材の充填を行う前の段階で、型枠における根巻きの上縁にあたる部分に面木を取り付け、素材の充填される空間を予め面取りの施された形状としておくという手順が、より一般的である。
【0006】
尚、こうした根巻きのための用具や工法に関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-269978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、地面等の設置面に対し構造物を設置する際、設置面の状況(設置面の高さや角度、凹凸の有無や程度等)や、設置面に対する柱の基部の状況等は必ずしも一様ではない。このため、柱の基部に対し根巻きを行うにあたり、従来の工法においては、各柱毎に必要な寸法を測定し、それに合わせた形状の型枠や面木を作成する必要があった。これは職人が現地において手作業で行うため、型枠や面木といった根巻き用具の設置には多大な手間がかかり、費用の高騰や工期の長期化等の一因となっていた。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡便且つ好適に根巻きを施し得る根巻き用具および根巻き工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、支柱に取り付けられ、根巻きの上端の高さに根巻きの上縁と当接する当接部を備えた上縁部と、平面視で前記上縁部を取り囲むように設けられ、根巻きの素材を充填する内部空間を形成すると共に根巻きの側面を形成する側面部とを備えたことを特徴とする根巻き用具にかかるものである。
【0011】
本発明の根巻き用具において、前記当接部は、根巻きの上縁と接する面が内側から外側へ向けて下る向きの斜面を形成してもよい。
【0012】
本発明の根巻き用具において、前記上縁部は、前記支柱に取り付けられた状態において前記当接部が前記支柱の脚部の高さに位置するよう構成されていてもよい。
【0013】
本発明の根巻き用具において、前記上縁部は、前記支柱を設置面に固定するアンカーボルトに対し取付可能に構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明は、上述の根巻き用具を前記支柱に対して設置し、前記側面部の内側に前記当接部の高さまで素材を充填することで前記支柱の基部に根巻きを施すことを特徴とする根巻き工法にかかるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の根巻き用具および根巻き工法によれば、簡便且つ好適に根巻きを施すという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施による根巻き用具の形態の一例を示す斜視図である。
図2図1の根巻き用具の分解斜視図である。
図3図1図2の根巻き用具を用いた根巻き工法の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】根巻きの対象としての支柱の形態の一例を示す斜視図である。
図5】根巻き作業の手順の一段階を示す斜視図であり、支柱に上縁部を取り付けた状態を示している。
図6】根巻き作業の手順の一段階を示す斜視図であり、さらに側面部を取り付けた状態を示している。
図7図6の段階において、側面部が支柱および上縁部に対して傾斜した状態の一例を示す側面図である。
図8】本実施例の根巻き用具および根巻き工法によって施された根巻きの形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1図2は本発明の実施による根巻き用具の形態の一例を示している。本実施例の根巻き用具1は、根巻きの側面を構成し、根巻きの素材を充填する内部空間を形成する側面部10と、根巻きの高さの目安として機能すると共に根巻きの上縁に面取りを施すための上縁部20を備えている。根巻き用具1の材質としては、種々の素材が考えられるが、加工性と耐久性の観点から、例えば金属が好適である。特に、耐食性のあるステンレス鋼が適している。使用後、完成した根巻きから外して再利用するためである。
【0019】
側面部10は、一対の同形の部品(側面半割体)11によって構成されている。各側面半割体11は、板状の部材をコの字型に折り曲げて成形されており、側面部10は、側面半割体11同士を組み合せた状態においては、全体として略直方体状の筒型をなしている。
【0020】
略直方体状をなす側面部10は、直方体の6面のうち上面と下面が開放されており、残りの4側面を側面半割体11によって構成される。側面部10は、平面視で略長方形状をなしており、その短辺にあたる側面において、一対の側面半割体11に分割されている。すなわち、側面部10をなす各側面半割体11は、3つの側壁を備えており、これらの側壁を平面視において時計回りに順に第一~第三側壁11a~11cとすると、第一側壁11aと第二側壁11b、第二側壁11bと第三側壁11cは互いに直交しており、第一側壁11aと第三側壁11cは平行である。そして、一対の側面半割体11を第二側壁11bの内面同士が向かい合うように配置し、一方の側面半割体11の第一側壁11aと他方の側面半割体の第三側壁11c、一方の側面半割体11の第三側壁11cと他方の側面半割体の第一側壁11aをそれぞれ繋ぎ合わせる形で、側面半割体11同士を組み合わせ、一個の側面部10とする。側面半割体11同士を組み合わせた状態においては、第二側壁11bが平面視における長辺をなし、第一側壁11aと第三側壁11cをつなぎ合わせた面が平面視における短辺をなす。
【0021】
第一側壁11aと第二側壁11b、第二側壁11bと第三側壁11cは、上述の通り互いに直角をなしているが、これらの間には、各側壁11a~11cに対し斜めの角度で交差する面をなす面取部11dが設けられている。面取部11dは、上下方向に沿って細長い面をなし、第一~第三側壁11a~11cに対しそれぞれ約45度の角度をなすよう設けられており、平面視で略長方形状をなす側面部10の四隅に位置している。すなわち、平面視で略長方形状をなす側面部10は、より正確には平面視で八角形をなしている。これにより、後述の根巻き作業の際、根巻きの側面の角部に面取りが施されるようになっている。
【0022】
第一側壁11aと第三側壁11cには、それぞれ側面半割体11同士を組み合わせる際に互いに接続するための係合部11e,11fが設けられている。本実施例において、第一側壁11a側の係合部11eは、第一側壁11aの外面から外側へ突出するように設けられた円柱状の突起部である。係合部11eの外周面には、締結具を取り付けるためのネジ山が形成されている。
【0023】
第三側壁11c側の係合部11fは、第三側壁11cの端部(平面視における端部。すなわち、側面視において上下方向に沿って表れる端辺)における係合部11eと対応する位置に設けられた切欠きとして形成されている。一対の側面半割体11同士を組み合わせる際には、第三側壁11cに設けられた切欠きである係合部11fに、第一側壁11aに設けられた突起部である係合部11eを嵌め込む形で両者を係合させ、係合部11eに締結具12(ここに示した例では蝶ナットとして構成されている)を取り付けて両者を接続する。
【0024】
上縁部20は、一対の同形の部品(上縁半割体)21によって構成されている。上縁部20は、上縁半割体21同士を組み合わせた状態において、平面視で略長方形状(より正確には八角形;当接部22の外周部が側面部10の内周面に沿う形に形成されているため)をなしている。
【0025】
上縁部20は、使用時(後述する根巻き作業時)において根巻きの上縁に当接する当接部22と、該当接部22を根巻きの対象である支柱に支持するための支持部23を備えている。
【0026】
当接部22は、細長い板状の部材を略長方形の環状に組み合せた形に構成される。平面視における当接部22の外周は、側面部10の内周面にちょうど収まる寸法および形状に設定されている。すなわち、当接部22の平面視における輪郭は、より正確には八角形である。当接部22を構成する板状の各部材は、環状をなす当接部22の内側から外側へ下る向きに傾斜する斜面をなしている。
【0027】
支持部23は、細長い板状の部材を逆U字状に屈曲させて形成された部品であり、平面視で略長方形状をなす当接部22の長辺同士を橋渡しする形で、1個の上縁部20につき2箇所に設けられている。各支持部23は、基部が当接部22の長辺をなす部材の上面から上方へ立ち上がり、その先端は中央部で繋がっている。支持部23の中央部には、支持部23の部材を上下に貫通する形で固定孔23aが設けられており、ここに支柱のアンカーボルトを通すことで、支柱に対し上縁部20を取り付けられるようになっている。また、支持部23は、この固定孔23aが設けられた部分が当接部22に対し適当な高さに位置するよう寸法を設定されており、これにより、根巻き作業の際、対象の支柱に対し、当接部22が根巻きの上端にあたる適当な高さに位置するようになっている(この寸法の設定については後に詳述する)。
【0028】
上縁部20は、当接部22の長辺における中央部において一対の上縁半割体21に分割されるようになっている。すなわち、各上縁半割体21は、当接部22を構成する部分として略長方形のうち3つの辺をなす斜面部を備えており、これらを平面視において時計回りに順に第一~第三辺部22a~22cとすると、一方の上縁半割体21の第一辺部22aと他方の上縁半割体21の第三辺部22c、他方の上縁半割体21の第一辺部22aと一方の上縁半割体21の第三辺部22cをそれぞれ繋ぐ形で当接部22が形成され、当接部22のなす略長方形の形状のうち、長辺を第一、第三辺部22a,22cが、短辺を第二辺部22bが構成する。そして、各上縁半割体21の第一辺部22aと第三辺部22cを橋渡しする形で、支持部23が設けられている。
【0029】
当接部22の長辺の中央部にあたる第一、第三辺部22a,22cの端部には、ずれ止めのための係合部22dが設けられている。本実施例における係合部22dは、第一辺部22aの端部における上面のなす斜面の下側と、第三辺部22cの端部における上面のなす斜面の上側にそれぞれ設けられた長方形状の板状の部材である。各係合部22dは、第一、第三辺部22a,22cの端部から、それぞれ第一、第三辺部22a,22cの長手方向に突出する形で設けられている。上縁半割体21同士を組み合わせる際には、第一、第三辺部22a,22cの端部同士を合わせると共に、第一辺部22aに設けられた係合部22dの上辺と、第三辺部22cに設けられた係合部22dの下辺を合わせることにより、上縁半割体21同士の位置を合わせ、ずれを防止するようになっている。
【0030】
根巻き用具1は、支柱を有する各種の構造物や建造物に対して使用でき、例えば、下水処理に用いる散気装置の架台の支柱に対し根巻きを施す際に使用することができる。
【0031】
次に、上記した本実施例の根巻き用具1による根巻き作業の手順を、図3のフローチャートおよび図4図8を参照しながら説明する。
【0032】
図4に示す如く、設置面に支柱100を設置する(ステップS1)。本実施例では、支柱100として散気装置の架台の支柱を想定しており、ここでは支柱100として、基端部に左右へ突出するプレート状の脚部101が設けられた四角柱状の形態を図示している。
【0033】
プレート状の脚部101には、該脚部101を上下に貫通する孔が設けられている。この孔に、設置面に打設されたアンカーボルト102を通し、脚部101から上方へ突出するアンカーボルト102にナット等である締結具103を取り付け、設置面に対し支柱100を固定する。尚、アンカーボルト102には、脚部101の下面側にも水平調整のためのナット(裏ナット)が取り付けられる。ここで、締結具103は、各アンカーボルト102に対し2個を上下に重ねて取り付けられる。また、従来の工法であればこの段階でアンカーボルトの余った部分を切断してしまうことが多いが、本実施例では以下の工程において根巻き用具1の上縁部20を取り付けて使用するため、この時点でアンカーボルト102を切断することはしない。
【0034】
このような形態の支柱100に対し、根巻き作業を行う(ステップS2)。まず図5に示す如く、支柱100に根巻き用具1の上縁部20を取り付ける。上縁部20の支持部23を、支柱100の両側の脚部101から突出したアンカーボルト102に取り付ける。支持部23の中央に設けられた固定孔23aにアンカーボルト102を通し、ナットである締結具24を締め込んで固定する。支柱100を設置面に固定するためのアンカーボルト102を上縁部20の取付けに利用することで、上縁部20の取付けのための特別な構造等を必要とせず、上縁部20を簡便に取り付けることができるようになっている。
【0035】
ここで、上縁部20は、当接部22の長辺の中央部において一対の上縁半割体21に分割されているので、上述のアンカーボルト102に対する取付けの作業は、一対の上縁半割体21を支柱100を挟むように配置しつつ、各上縁半割体21毎に行えばよい。その際、上縁半割体21同士は、当接部22の第一、第三辺部22a,22cに設けられた係合部22dを利用して互いにずれ止めをするとよい。また、当接部22の下面は、後の工程において根巻きの素材が接することになるので、ここに剥離剤を塗布しておく。
【0036】
さらに図6に示す如く、側面部10を設置する(ステップS3)。支柱100に取り付けた上縁部20に対し、これを一対の側面半割体11で両側から挟むように各側面半割体11を設置する。第一、第三側壁11a,11cの係合部11e,11f同士を係合させ、突起部である11fに蝶ナットである締結具12を取り付けて側面半割体11同士を固定する。側面半割体11の内面には、剥離剤を塗布しておく。
【0037】
この状態において、上縁部20は側面部10の内側にちょうど収まっている。平面視で側面部10が上縁部20を取り囲み、略長方形をなす側面部10の内周に、同じく略長方形をなす上縁部20の外周が沿う形である。ここで、上縁部20は支柱100に対し、支持部23によって決まった高さで固定されるが、上縁部20や支柱100に対して側面部10は固定されるわけではなく、側面部10に対する上縁部20の高さは様々である。設置面に対する支柱100の設置状況は様々であり、例えば水平の設置面に対し脚部101の下面が接した状態の場合もあれば、設置面から上方に突出したアンカーボルト102の途中に脚部101が設置面から浮いていたり、あるいは設置面が傾斜しているために脚部101の一部が設置面に埋まって(あるいは浮いて)いたり、といったこともあり得る。例えば下水等の処理に用いられる散気装置の架台においては、散気装置を設置する架台上面が水平であることが求められる一方、処理槽の底面である設置面には傾斜や凹凸がある場合が多い。つまり、架台上面を支える支柱においては、上端の高さは一定であるが、下端においては高さや周囲の状況が一定でないのである。
【0038】
こういった事情を念頭に、本実施例の根巻き用具1は、側面部10は設置面側に置く形で設置する一方、上縁部20は支柱100側に固定する形で設置するようになっている。つまり、側面部10と上縁部20の位置関係は、設置面と支柱100の位置関係に応じて変わる。そこで、上述の根巻き用具1を用いた根巻きを行う際には、上縁部20に対し、高さの異なる複数の種類の側面部10を用意しておき、設置面における支柱100の状況に応じて適した高さの側面部10を選択して使用するとよい。
【0039】
支柱100に対する上縁部20の高さについても説明する。上縁部20は、支柱100に対しアンカーボルト102を介して固定されるので、これにより、当接部22を支柱100に対し決まった高さや角度で固定することができる。すなわち、上縁部20において、支柱100に取り付けられた状態を考慮して当接部22の位置を適当な高さに設定しておけば、上縁部20を支柱100に取り付けるだけで、素材を充填する高さ(すなわち、根巻きの上縁の高さ)として適当な位置に当接部22を配置することができる。本実施例の場合、当接部22を脚部101の高さに支持することで、当接部22を次の工程において素材を流し込む高さの目安とすると共に、根巻きの上縁と接する当接部22の下面に形成された斜面により、根巻きの上縁に面取りが施されるようにしている。
【0040】
アンカーボルト102には、上述の通り、例えば図4に示すように脚部101の上から締結具(ナット)103が2個重ねで取り付けられ、これによって脚部101が固定される。そこで本実施例では、上縁部20において、支持部23に設けられる固定孔23aの位置を、当接部22に対してナット103の2個分の高さに設定している。固定孔23aは、アンカーボルト102に対して固定される部分であり、上縁部20をアンカーボルト102に取り付けた状態においては、該アンカーボルト102に取り付けられた2個のナット103の上面に接する(図5参照)。よって、固定孔23aの位置を支持部23に対してナット103の2個分の高さに設定すれば、上縁部20をアンカーボルト102に取り付けた状態において、当接部22は脚部101の高さに支持されることになる。つまり、締結具であるナット103をスペーサとしても利用するのである。
【0041】
一般に、支柱の基部に根巻きを施す場合、概ね脚部の高さまでを根巻きの素材で包むことが多いので、上の如く設計した上縁部20を支柱100に取り付け、そこに当接部22の高さまで素材を注入すれば、適当な高さまで素材が充填されることになる。また、そのようにすると、当接部22が根巻きの上縁に接することになるので、当接部22を構成する各辺部22a~22cの下面に設けられた斜めの角度により、各辺部22a~22cに接する素材の上縁部分に面取りが施されることにもなる。
【0042】
尚、例えば図7に示すように、設置面に凹凸があるために側面部10ががたつく等の理由で側面部10の水平が取れず、支柱100および上縁部20に対し側面部10が多少傾斜するようなことも考えられるが、このような状態で根巻き用具1を設置しても大きな支障はない。
【0043】
ここで、側面部10と上縁部20の間や、側面部10と設置面の間等に隙間がある場合には、シール材等で適宜埋めることもできる。
【0044】
こうして取り付けた根巻き用具1に対し、根巻きの素材を充填する(ステップS4)。環状をなす上縁部20の当接部22の中央にある空隙から、側面部10に囲まれた内部空間へ、コンクリートやモルタル等の素材を流し込む。このとき、上縁部20の当接部22を目安とし、その高さまで素材を流し込むようにする。
【0045】
素材が固化したら、根巻き用具1を取り外す(ステップS5)。さらに、アンカーボルト102を切断する(ステップS6)。ここまでの工程では上縁部20を支持するためにアンカーボルト102の上端部を利用していたが、根巻き用具1を取り外してしまえば不要であるので、支柱100の脚部101を固定する締結具103に必要な長さを残し、余った部分を切り落とす。
【0046】
図8は、こうして支柱100の基部に対し根巻きが施された状態を示している。根巻きは脚部101の高さまで施されており、その上縁には上縁部20の当接部22によって面取りが施された状態である。側面における角部にも、側面部10の面取部11dによって面取りが施されている。尚、根巻き用具1を取り外した根巻きに対し、必要に応じてバリ取りなどの修正を行うこともできる。
【0047】
このような根巻き用具1を用いた根巻き作業では、型枠や面木に相当する道具として簡単な構成で取扱いも簡便な既成の根巻き用具1を使用し、これによって好適な根巻きを行うことができる。特に本実施例の場合、型枠にあたる側面部10については設置面に置く形で使用する一方、面木にあたる上縁部20は支柱100に対し決まった姿勢で固定し、これに対し側面部10を取り囲むように設置するようになっている。これにより、上縁部20は単に支柱100に取り付けるだけで適切な位置および角度に固定され、さらに側面部10は支柱100や設置面に対し厳密な位置決めをしなくとも、上縁部20の周囲に手順通り設置するだけで、根巻きにとって適切な位置に配置される。従来のように型枠や面木を支柱や設置面に合わせて現場で作成したり、これを各支柱に対し位置決めしながら設置していくような手間をかける必要がなく、従来と比べて大幅に工期を短縮し、費用も抑えることができる。また、使用後の根巻き用具1は付着した素材等を適宜除去して再利用できるので、根巻きの型枠として使用した素材を廃棄するような必要もなく、経済的である。
【0048】
以上のように、上記本実施例の根巻き用具1は、支柱100に取り付けられ、根巻きの上端の高さに根巻きの上縁と当接する当接部22を備えた上縁部20と、平面視で上縁部20を取り囲むように設けられ、根巻きの素材を充填する内部空間を形成すると共に根巻きの側面を形成する側面部10とを備えて構成されている。
【0049】
また、本実施例の根巻き工法においては、上述の根巻き用具1を支柱100に対して設置し、側面部10の内側に当接部22の高さまで素材を充填することで支柱100の基部に根巻きを施すようにしている。
【0050】
このようにすれば、簡単な構成で取扱いも簡便な根巻き用具1によって好適な根巻きを行うことができる。
【0051】
本実施例の根巻き用具1において、当接部22は、根巻きの上縁と接する面が内側から外側へ向けて下る向きの斜面を形成している。このようにすれば、当接部22まで素材を充填することで、根巻きの上縁に面取りを施すことができる。
【0052】
本実施例の根巻き用具1において、上縁部20は、支柱100に取り付けられた状態において当接部22が支柱100の脚部101の高さに位置するよう構成されている。このようにすれば、上縁部20を支柱100に取り付けるだけで、素材を充填する高さとして適当な位置に当接部22を配置することができる。
【0053】
本実施例の根巻き用具1において、上縁部20は、支柱100を設置面に固定するアンカーボルト102に対し取付可能に構成されている。このようにすれば、上縁部20の取付けのための特別な構造等を必要とせず、アンカーボルト102を利用して上縁部20を簡便に取り付けることができる。
【0054】
したがって、上記本実施例によれば、簡便且つ好適に根巻きを施し得る。
【0055】
尚、本発明の根巻き用具および根巻き工法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 根巻き用具
10 側面部
20 上縁部
22 当接部
100 支柱
101 脚部
102 アンカーボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8