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特開2024-127196覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法
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  • 特開-覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法 図1
  • 特開-覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法 図2
  • 特開-覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127196
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240912BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
E21D11/10 A ESW
E04G21/02 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036185
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇野 洋志城
(72)【発明者】
【氏名】小野 和義
(72)【発明者】
【氏名】小山 広光
(72)【発明者】
【氏名】弘光 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正佑
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
【Fターム(参考)】
2D155BB02
2D155CA06
2D155CA07
2D155KA00
2D155LA14
2D155LA15
2E172DB13
2E172DE02
(57)【要約】
【目的】
経験や勘に頼ることなく且つ危険を伴うことなく覆工型枠内へのコンクリートの充填完了時期を判定することができ、しかもコスト増を招くことなく且つ煩雑な手間を掛けることなく判定することができる覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法を提供する。
【構成】
コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することにより打込みを行う構成において、
前記覆工型枠の外側面の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、該加速度計が充填中の覆工型枠への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより覆工型枠内の充填進行具合乃至は充填完了を判定する構成であることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することにより打込みを行う構成の覆工コンクリートの打込みシステムにおいて、
前記覆工型枠の外側面の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、該加速度計が充填中の覆工型枠への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより覆工型枠内の充填進行具合乃至は充填完了を判定する構成であることを特徴とする覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項2】
前記圧入孔が、前記覆工型枠の1スパンの略中央位置におけるアーチ左右両側の底部近傍の各々に設けられる構成であることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項3】
前記加速度計が、前記各々の圧入孔の近傍位置における高さ方向の複数箇所に取り付けられる構成であることを特徴とする請求項2に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項4】
前記加速度計が、前記覆工型枠の1スパンの長さ方向の一端近傍及び/又は他端近傍の頂部に取り付けられる構成であることを特徴とする請求項3に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項5】
前記圧送管に、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサが配設されており、この圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填が完了したことを判定する構成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【請求項6】
コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することによって覆工コンクリートの打込みを行う際に、
前記覆工型枠の外側面の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、充填中の覆工型枠への骨材の衝突により生じる振動を前記加速度計が計測することにより覆工型枠内のどの高さまで充填が進行しているかの充填進行具合を把握し、更に頂部近傍に取り付けられた加速度計が前記振動を計測することにより充填完了と判定する構成であることを特徴とする覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項7】
前記圧入孔が、前記覆工型枠の1スパンの略中央位置におけるアーチ左右両側の底部近傍の各々に設けられる構成であることを特徴とする請求項6に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項8】
前記加速度計が、前記各々の圧入孔の近傍位置における高さ方向の複数箇所に取り付けられる構成であることを特徴とする請求項7に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項9】
前記加速度計が、前記覆工型枠の1スパンの長さ方向の一端近傍及び/又は他端近傍の頂部に取り付けられ、充填中の型枠への骨材の衝突により生じる振動を前記加速度計が計測することにより前記覆工型枠の1スパンの長さ方向の一端近傍及び/又は他端近傍の頂部までの充填が完了したことを判定する構成であることを特徴とする請求項8に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【請求項10】
前記圧送管に、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサが配設されており、この圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填が完了したことを判定する構成であることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法に関し、詳しくは上方が閉鎖された覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填する際に充填完了時期を把握することができる打込みシステム及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な型枠内へのコンクリート打込みは、型枠上方からコンクリートを流し込むように送り込むことから、型枠内にコンクリートが充填されていく状態を常に目視確認できるため充填進行具合を常に把握することができる。従って、充填完了時期の見極めは極めて容易である。
【0003】
しかし、覆工コンクリートのように上方が閉鎖された覆工型枠内にコンクリートの打込みを行う場合は、充填進行具合を上方から目視確認できない。型枠内部空間の容積から充填に必要なコンクリート量は予め大よそ判っているが、必要充分な最適量を充填できたか、充填完了時期の判断は現場作業者の経験や勘に頼ることが多かった。
更に現場作業者は、コンクリート充填中の覆工型枠の軋み音や僅かな膨らみ等を間近で感知すること等によっても充填完了時期の判断材料にしており、型枠破綻等の危険が伴うことから安全性の点でも問題が多かった。
【0004】
そこで、経験や勘に頼ることなく覆工型枠内へのコンクリートの充填進行具合を把握することができる技術が提案された(例えば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6055695号
【特許文献2】特許第5316895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、覆工型枠内の頂部の地山側に圧力センサを覆工型枠の長手方向に複数配設することにより、コンクリートが覆工型枠内の頂部内まで充填されたことを検知するものである。かかる構成によって、コンクリートが覆工型枠内の頂部まで充填されたことを現場作業者の経験や勘に頼ることなく客観的に判断することができる技術である。
【0007】
特許文献2の技術は、覆工型枠内である地山側に充填検知センサを配設すると共に覆工型枠の表面側に圧力センサを配設することにより、コンクリートの充填具合を検知すると共に覆工型枠への加圧付加状態を検知するものである。かかる構成によって、現場作業者の経験や勘に頼ることなく客観的にコンクリートの充填進行具合を判断することができる技術である。
【0008】
しかし、特許文献1、2の技術では共に、覆工型枠内に複数の圧力センサを配設しなければならず、覆工トンネルが長スパンの場合、その全長に亘って圧力センサを配設しなければならないことから、多数箇所への圧力センサの配設作業は煩雑で手間が掛かるだけでなく、配設した多数の圧力センサは打込み工事終了後も回収されることなくコンクリート内に埋設されたままとなるためコストを要するという問題点を有している。
【0009】
そこで本発明の課題は、経験や勘に頼ることなく且つ危険を伴うことなく覆工型枠内へのコンクリートの充填完了時期を判定することができ、しかもコスト増を招くことなく且つ煩雑な手間を掛けることなく判定することができる覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0011】
1.コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することにより打込みを行う構成の覆工コンクリートの打込みシステムにおいて、
前記覆工型枠の外側面の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、該加速度計が充填中の覆工型枠への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより覆工型枠内の充填進行具合乃至は充填完了を判定する構成であることを特徴とする覆工コンクリートの打込みシステム。
【0012】
2.前記圧入孔が、前記覆工型枠の1スパンの略中央位置におけるアーチ左右両側の底部近傍の各々に設けられる構成であることを特徴とする上記1に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0013】
3.前記加速度計が、前記各々の圧入孔の近傍位置における高さ方向の複数箇所に取り付けられる構成であることを特徴とする上記2に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0014】
4.前記加速度計が、前記覆工型枠の1スパンの長さ方向の一端近傍及び/又は他端近傍の頂部に取り付けられる構成であることを特徴とする上記3に記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0015】
5.前記圧送管に、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサが配設されており、この圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填が完了したことを判定する構成であることを特徴とする上記1~4のいずれかに記載の覆工コンクリートの打込みシステム。
【0016】
6.コンクリートポンプと、該コンクリートポンプに一端を接続する圧送管と、該圧送管の他端が接続される圧入孔が設けられた覆工型枠と、を有して成り、前記覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填することによって覆工コンクリートの打込みを行う際に、
前記覆工型枠の外側面の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計を取り付け、充填中の覆工型枠への骨材の衝突により生じる振動を前記加速度計が計測することにより覆工型枠内のどの高さまで充填が進行しているかの充填進行具合を把握し、更に頂部近傍に取り付けられた加速度計が前記振動を計測することにより充填完了と判定する構成であることを特徴とする覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0017】
7.前記圧入孔が、前記覆工型枠の1スパンの略中央位置におけるアーチ左右両側の底部近傍の各々に設けられる構成であることを特徴とする上記6に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0018】
8.前記加速度計が、前記各々の圧入孔の近傍位置における高さ方向の複数箇所に取り付けられる構成であることを特徴とする上記7に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0019】
9.前記加速度計が、前記覆工型枠の1スパンの長さ方向の一端近傍及び/又は他端近傍の頂部に取り付けられ、充填中の型枠への骨材の衝突により生じる振動を前記加速度計が計測することにより前記覆工型枠の1スパンの長さ方向の一端近傍及び/又は他端近傍の頂部までの充填が完了したことを判定する構成であることを特徴とする上記8に記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【0020】
10.前記圧送管に、圧送される自己充填コンクリートの圧力値を計測する圧力センサが配設されており、この圧力センサによって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリートの充填が完了したことを判定する構成であることを特徴とする上記6~9のいずれかに記載の覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法。
【発明の効果】
【0021】
請求項1、6に示す発明によれば、経験や勘に頼ることなく且つ危険を伴うことなく覆工型枠内へのコンクリートの充填完了時期を判定することができ、しかもコスト増を招くことなく且つ煩雑な手間を掛けることなく判定することができる覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法を提供することができる。
【0022】
特に、圧送する自己充填コンクリート内に配合された骨材が覆工型枠の内側面に衝突した際に生じる振動を、該覆工型枠の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に配設した加速度計が計測することにより型枠内のどの高さまで充填が進行しているかの充填進行具合を把握することができる。
更に、頂部近傍に取り付けられた加速度計が前記振動を計測することにより型枠内の頂部まで充填が完了したことを把握することができるので充填完了を判定することができる。
従って、充填の途中経過から完了までを把握することができるため、圧送を終了するタイミングを適切に判定することができるので、地山側に未充填箇所を残さず、密実な覆工を形成することができ、且つ型枠端部の安全性も確保することができる。
【0023】
また加速度計は、覆工型枠内に配設した場合では打込み終了後もコンクリート内に埋設されたままとなって一回限りの使い捨て状態となるが、覆工型枠内ではなく外側面に取付ける構成なので、特に故障の無い限りは繰り返し使用することができる。
【0024】
更に加速度計の取付けは、覆工型枠の外側面を掘削したり加工して埋設・埋込するのではなく、覆工型枠の外側面に単に張り付けるだけであるため、極めて容易である。従って、現場での取付位置の変更や取付数の増減にも容易に対応することができると共に、計測終了後の取り外しも容易である。
【0025】
請求項2又は7に示す発明によれば、覆工型枠が形成するアーチの左右両側に対して自己充填コンクリートが均等に充填されているかどうかを把握することができる。
【0026】
請求項3又はまた8に示す発明によれば、覆工型枠の1スパンの範囲の中で圧入孔に近い位置での充填の進行具合を把握することでき、特にこの位置における頂部まで充填が進んでいることを把握できることによって、圧入孔から遠い1スパンの長さ方向の端部の頂部の位置における充填も間もなくであることを事前に把握することができる。
【0027】
請求項4又は8に示す発明によれば、圧入孔から圧送される自己充填コンクリートが該圧入孔から遠い1スパンの長さ方向の端部の頂部の位置、即ち、最後に充填される位置にまで充填されたかを把握することができる。
【0028】
請求項5又は10に示す発明によれば、自己充填コンクリートが圧送される側である覆工型枠に取付けた加速度計によって充填の進行具合と充填完了時期を把握することに加えて、自己充填コンクリートを圧送する側である圧送管の圧力値からも充填完了時期を把握することによって、より確度の高い判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る覆工コンクリートの打込みシステムの一実施例における加速度計の取付位置を示す概略説明図(覆工型枠を正面視した図)
図2】覆工型枠に取付ける加速度計の配置位置の一例を示す概略説明図(覆工型枠を側面視した際の断面図)
図3】圧送管に取り付ける圧力センサの配置位置の一例を示す概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る覆工コンクリートの打込みシステム(以下、単に打込みシステムと言うこともある。)及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法(以下、単に判定方法と言うこともある。)について説明する。
【0031】
本発明の打込みシステム及び判定方法は、上方が閉鎖された覆工型枠内に自己充填コンクリートを圧送充填する際の充填完了時期を把握することができる技術である。
即ち、一般的な型枠内へのコンクリート打込みでは、型枠上方からコンクリートを流し込むように送り込むことから該型枠内にコンクリートが充填されていく状態を常に目視確認できるため、充填進行具合を常に把握することができる。しかし、覆工型枠内へのコンクリート打込みでは、上方が閉鎖されていることによってコンクリート打込み時の充填進行具合を型枠の上方から確認することができないが、本発明によれば、覆工型枠内への自己充填コンクリートの圧送充填の際の充填完了時期を現場作業者の経験や勘に頼ることなく且つ危険を伴うことなく把握することができる。
【0032】
本発明の打込みシステムの具体的構成としては、図1及び図2に示すように、
コンクリートポンプ車のコンクリートポンプ1と、該コンクリートポンプ1に一端を接続する圧送管2と、該圧送管2の他端が接続される圧入孔3が設けられた覆工型枠4と、を有して成り、前記覆工型枠4内に自己充填コンクリート5を圧送充填することにより打込みを行う構成において、
前記覆工型枠4の外側面の底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に加速度計6を取り付け、該加速度計6が充填中の覆工型枠4への骨材の衝突によって生じる振動を計測することにより覆工型枠4内の充填進行具合乃至は充填完了を判定する構成であること、
を主構成とするものである。
【0033】
図1において、符号7は自己充填コンクリート5を攪拌するアジテータ車、符号8は地山、符号9は覆工型枠4と地山8との間の打込み空間、符号10は加速度計6によって計測された振動値を表示・記録するデータロガー、符号11は加速度計6とデータロガー10とを接続するケーブル、を各々示す。
【0034】
また、図1に示すように覆工型枠4は断面アーチ形を有しており、アーチ形である覆工型枠4の長手方向の左右両側の底部近傍に圧入孔3が各々設けられている。
更に、図2に示すように、圧入孔3は覆工型枠4の1スパンの略中央位置に設けられている。この位置に圧入孔3を設けることにより、1スパンの両端方向に対して均等な充填が可能となる。
【0035】
更に、圧入孔3に接続される圧送管2は、該圧入孔3に接続される以前に切替弁21を介して左右2本に分岐しており、覆工型枠4の左側の圧入孔3と右側の圧入孔3に各々接続される。
自己充填コンクリート5の充填圧送の際には、一定量毎に切替弁21によって間欠的に左右交互に切り替えて圧送充填される構成である。
【0036】
加速度計6は、覆工型枠4内に圧送充填される自己充填コンクリート5中に配合されている骨材(砂利や砂等)が該覆工型枠4の内壁に衝突した材の衝撃によって生じる微細な振動を検知して計測するものであり、計測した振動値はケーブル11を介してデータロガー10に送られて表示・記録される。本発明の判定方法は、この計測・表示・記録された振動値に基いて自己充填コンクリート5の充填完了時期を適切に判定する技術である。
【0037】
用いられる加速度計6としては、公知公用の加速度計の中から施工現場環境に適した防水性を有し、且つ骨材による振動振幅範囲内を測定範囲とするものを選択して用いることができる。かかる構成の加速度計は多数の市販品の中から容易に適宜選択可能である。
【0038】
また、加速度計6は、対象物への取付構成が脱着の容易な磁力吸着タイプであるものが好ましく、かかる構成の加速度計6によれば、主として金属製である覆工型枠4に直接磁力吸着させることができるため脱着が極めて容易である。
【0039】
加速度計6の取付位置は、先ず、覆工型枠が形成するアーチの左右両側に設けられている圧入孔3・3の各々の近傍位置における高さ方向の複数箇所(本実施例では左右4箇所ずつ)に取り付けられている。
【0040】
覆工型枠4が形成するアーチの左右両側に加速度計6を取付けることによって、アーチの左右両側に対して自己充填コンクリート5が均等に充填されているかどうかを把握することができる。
更に、自己充填コンクリート5がされて覆工型枠4内の充填の進行していく過程において、底部近傍から頂部近傍にかけての高さ方向の複数箇所に配設した加速度計6が前記した骨材の振動を計測することにより覆工型枠4内のどの高さまで充填が進行しているかの充填進行具合を把握することができる。
【0041】
特に、この覆工型枠4の1スパンの範囲の中で略中央位置に設けられた圧入孔3に近い位置での充填の進行具合を把握することにより、この位置において頂部まで充填が進んだことを把握した場合には、圧入孔から遠い1スパンの長さ方向の両端部の頂部の位置における充填完了も間もなくであることを事前に把握することができる。
【0042】
加速度計6の取付位置は、更に、図2に示すように、覆工型枠4の1スパンの長さ方向の両端である一端近傍と他端近傍の頂部に取り付けられている。
この1スパンの両端の頂部に取付けた加速度計6によって、圧入孔3から最も遠い1スパンの長さ方向の端部の頂部の位置、即ち、自己充填コンクリート5が最後に充填される位置にまで充填されたかを把握することができる。
尚、図2に示す本実施例では、1スパンの頂部の中央と一端との間、同じく1スパンの中央と他端との間、の各々に1個ずつ加速度計6を追加して取り付けている。この追加の加速度計6によって、頂部位置における充填の進行途中経過を計測することができる。
【0043】
以上の構成によって、覆工型枠4内への自己充填コンクリート5の充填の途中経過から完了までを把握することができることから、圧送を終了するタイミングを適切に判定することができるので、地山側に未充填箇所を残さず、密実な覆工を形成することができ、且つ覆工型枠4の端部の安全性も確保することができる。
【0044】
尚、本発明が適用される覆工型枠4としては、この種の覆工トンネル施工において用いられる公知公用の覆工型枠に特別の制限なく適用することができる。
尚また、覆工型枠4は、1スパンのスパン長が概ね10.5m程度、トンネル高さが約6m程度が一般的であるが、種々施工環境条件等により、これらの数値より大きい場合も小さい場合もあることは勿論である。
【0045】
また、コンクリートポンプ1、圧送管2、切替弁21、自己充填コンクリート5、アジテータ車7の各々についても同様にこの種の覆工トンネル施工において用いられる公知公用の各々を特別の制限なく用いることができる。
【0046】
以上の構成を有する本発明の打込みシステムによれば、覆工型枠4内に自己充填コンクリート5を圧送充填した際に、加速度計6によって自己充填コンクリート5内に配合されている骨材が覆工型枠4に衝突した際の衝撃による振動を計測し、この振動を計測した位置に取り付けられている加速度計6の高さ位置まで自己充填コンクリート5の充填が進行していると判定することができることが判った。
【0047】
充填完了時期、即ち、圧送の終了するタイミングを適切に把握することができるため、打込み空間9に未充填箇所を残さず、密実な覆工を形成することができ、且つ型枠端部の安全性も確保することができる。しかも、この充填完了時期の判定構成は、覆工型枠4内の多数箇所に多数の圧力センサを配設する必要がなく、覆工型枠4の外側面の複数箇所に加速度計6を取付けるだけなので施工準備が極めて簡単であることから、覆工型枠4内にその全長に亘って多数の圧力センサを予め配設するという煩雑な手間が不要であり、打込み終了後もコンクリート5内に埋設されたままとなる多数の圧力センサの無駄も無くなり、コスト増とならない。加速度計6は、施工の度に回収不能と成る構成に用いる圧力センサとは異なり、特に故障のない限りは繰り返し使用できるので高精度の高価な加速度計6を採用することも可能である。
また、充填完了時期の判定は、加速度計6からケーブル11を介して振動値の確認を行うデータロガー10にて遠隔確認できるため、充填完了時期の判断を覆工型枠4近くで作業員が確認する必要がなくなり、作業員の安全を確保することができる。
【0048】
次に下記の諸条件にて図1及び図2に示す覆工型枠4(高さ約6m、スパン長10.5m、圧入口3(直径130mm)は1スパン10.5mの中央位置であって底部から0.5mの位置に)に自己充填コンクリート5を圧送充填し検証した。
【0049】
[自己充填コンクリートの配合]
W/C :41.6%
s/a :48.7%
空気量 : 4.5%
水 :170kg/m
普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製、密度3.15g/cm):409kg/m
山砂(茨城県行方市産、表乾密度2.58g/cm):576kg/m
砕砂(栃木県佐野市会沢産、表乾密度2.69g/cm):257kg/m
2005砕石(茨城県つくば市産、表乾密度2.69g/cm):904kg/m
高性能AE減水剤 標準形(I種)シーカメント(登録商標)1100NT V(日本シーカ社製、ポリカルボン酸系化合物と増粘成分):6.95kg/m
AE剤(I種)フローリックAE400(フローリック社製、ロジン系界面活性剤:0.002kg/m
AE剤(I種)シーカ(登録商標)AER-50(日本シーカ社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩):0.006kg/m
【0050】
上記配合の自己充填コンクリートは、土木学会高流動コンクリート設計・施工指針(案)に規定される自己充填ランク3の条件(スランプフロー:600±50mm、U形充填高さ・障害なし:300mm)を目標値とした。
自己充填コンクリートは1バッチ当り1.5mを練り混ぜ、1台のアジテータ車に2バッチ分3mを積み込み、実験用の覆工型枠に対して2台用意した。尚、運搬時間は約15分であり、実験場所に到着後にスランプフロー試験及び空気量測定等を実施してフレッシュ性状を確認した後に圧送充填を行った。
【0051】
自己充填コンクリートの圧送はコンクリートポンプ車(極東開発工業社製PY100-26H)を用いた。
圧送管は125A(5B)管を用いた。また、覆工型枠の圧入孔の大きさはφ130mmとした。
コンクリートポンプ車のコンクリートポンプ1から圧入孔3までの圧送管2の全長(水平換算距離)は35.5mとした。
圧送充填のための吐出量は20m/hとした。
【0052】
加速度計6は、左右の圧入口3に近い位置において高さ方向に各々4個(底部から高さ0.5m(底部近傍)、同2.1m、同4.0m、同5.95m(頂部近傍))、1スパン(10.5m)の一端及び他端から各々0.3mの位置であって且つ底部から高さ5.95m(頂部近傍)の位置に各々1個、更に底部から高さ5.95m(頂部近傍)において1スパンの中央と一端との間に1個、同じく1スパンの中央と他端との間に1個、の計12個を取付けた。
【0053】
上記諸条件にて、覆工型枠4への自己充填コンクリート5の圧送充填を開始した。
圧送開始と共に、計12個の加速度計6が圧送による覆工型枠4の微細な振動値を計測し、データロガー10に表示・記録し始めた。
【0054】
自己充填コンクリート5の圧送が進み、充填開始から約45分経過した時点で圧入口3に最も近く底部から0.5mの高さに取付けられている加速度計6の計測値が高くなったことから、この底部から0.5mの高さまで充填が進行していることが判った。
【0055】
次に、充填開始から約2時間30分経過した時点で底部から2.1mの高さに取付けられている加速度計6の計測値が高くなったことから、この底部から2.1mの高さまで充填が進行していることが判った。
【0056】
次に、充填開始から約4時間30分経過した時点で底部から4.0mの高さに取付けられている加速度計6の計測値が高くなったことから、この底部から4.0mの高さまで充填が進行していることが判った。
【0057】
次に、充填開始から約6時間40分経過した時点で底部から5.95mの高さに取付けられている加速度計6の計測値が高くなったことから、この底部から5.95mの高さまで、即ち、1スパンの中央部分の頂点近傍まで充填が進行しており、充填完了が近付いていることが判った。
【0058】
更に、充填開始から約6時間50分経過した時点で1スパンの略中央と一端・他端との間の位置の各々に取付けられている加速度計6の計測値が高くなったことから、この頂部部分における充填が更に進行しており、まもなく充填完了であることが判った。
【0059】
そして、充填開始から約7時間経過した時点で1スパンの一端近傍・他端近傍の位置の各々に取付けられている加速度計6の計測値が高くなったことから、この頂部部分まで充填が進行し、打ち込み空間9の全域に自己充填コンクリート5が充填されたこと、即ち、充填完了と判定できることが判った。
【0060】
以上、本発明に係る覆工コンクリートの打込みシステム及び覆工コンクリート打込みにおける充填完了時期の判定方法について実施例に基づき説明したが、本発明は上記構成に限定されず本発明の範囲内において他の態様を採ることもできる。
【0061】
例えば、図3に示すように、圧送管2に、圧送される自己充填コンクリート5の圧力値を計測する圧力センサ12を配設し、この圧力センサ12によって計測された圧力値がピークとなった時に自己充填コンクリート5の充填が完了したことを判定する構成を付加することもできる。
かかる構成の付加によれば、自己充填コンクリート5が圧送される側である覆工型枠4に取付けた加速度計6によって充填の進行具合と充填完了時期を把握することに加えて、自己充填コンクリート5を圧送する側である圧送管2の圧力値からも充填完了時期を把握することによって、より確度の高い判定が可能となる。
図3において、符号13は圧力センサ12によって計測された圧力値を表示・記録するデータロガー、符号14は圧力センサ12とデータロガー13とを接続するケーブル、を各々示す。
【符号の説明】
【0062】
1 コンクリートポンプ
2 圧送管
21 切替弁
3 圧入孔
4 覆工型枠
5 自己充填コンクリート
6 加速度計
7 アジテータ車
8 地山
9 打込み空間
10 データロガー
11 ケーブル
12 圧力センサ
13 データロガー
14 ケーブル
図1
図2
図3