(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127201
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/50 20200101AFI20240912BHJP
【FI】
D06F33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036191
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】三井 賀貴
(72)【発明者】
【氏名】吉川 政志
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA02
3B167AA04
3B167AB22
3B167AB23
3B167AB33
3B167AB43
3B167AE04
3B167AE07
3B167AE12
3B167BA08
3B167BA78
3B167KA36
3B167LA08
3B167LA23
3B167LA38
3B167LC01
3B167LC02
3B167LC09
3B167LC14
3B167LC15
3B167LC20
3B167LD03
(57)【要約】
【課題】除菌力を向上することが可能な洗濯乾燥機を提供する。
【解決手段】衣類を収容するドラムと、ドラム内に空気を送風する送風ファンと、ドラム内に送風する空気を加熱するヒータと、ドラム内を加湿する給水路と、送風ファン、ヒータおよび加湿手段を制御する制御装置と、を備える。加熱工程は、ドラム内の温度が異なる複数の工程があり、複数の工程のドラム内の温度は、加熱工程における第一工程よりも第二工程の方がドラム内の温度が高く、制御装置は、第一工程において、ヒータによる加熱と加湿手段による加湿を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を収容する内槽と、前記内槽内に空気を送風する送風手段と、前記内槽内に送風する空気を加熱する加熱手段と、前記内槽内を加湿する加湿手段と、前記送風手段、前記加熱手段および前記加湿手段を制御する制御部と、を備え、
加熱工程は、前記内槽内の温度が異なる複数の工程があり、
前記複数の工程の前記内槽内の温度は、前記加熱工程における第一工程よりも第二工程の方が前記内槽内の温度が高く、
前記制御部は、前記第一工程において、前記加熱手段による加熱と前記加湿手段による加湿を行うことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯乾燥機において、
前記第二工程は、前記第一工程に続く最終工程であり、
前記制御部は、前記第二工程の加熱を開始するとともに、前記第一工程の加湿を停止することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項1に記載の洗濯乾燥機において、
前記内槽内の湿度を検知する湿度センサを備え、
前記制御部は、前記湿度が閾値以下となった際に、次の加熱工程に移行することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯乾燥機において、
前記加湿手段は、水を液滴化するノズルを含み、
前記内槽内に収容された前記衣類に前記ノズルから液滴を滴下することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯乾燥機において、
前記加湿手段は、前記内槽を囲い水を溜める外槽と、前記水を加熱するヒータであり、前記ヒータによる加熱で蒸発した水分により、前記内槽内を加湿することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯乾燥機において、
前記内槽は回転しないことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯乾燥機において、
前記第一工程に入る前の前記衣類は乾燥していることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯乾燥機において、
前記内槽内の温度は、前記第一工程よりも前記第二工程の方が10~20℃高いことを特徴とする洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗濯乾燥機において、衣類を清潔に保つことに対するニーズが増加している。洗濯乾燥の手段として、例えば、特許文献1には、衣類にミストを噴射して乾燥することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている洗濯乾燥機では、ミスト噴射により衣類のしわは改善するものの、衣類が高温の乾燥風に長時間晒されることで、衣類に傷みや縮みが発生する可能性があり、また、それを低温化、短時間化すると除菌力が低下してしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、除菌力を向上することが可能な洗濯乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、衣類を収容する内槽と、前記内槽内に空気を送風する送風手段と、前記内槽内に送風する空気を加熱する加熱手段と、前記内槽内を加湿する加湿手段と、前記送風手段、前記加熱手段および前記加湿手段を制御する制御部と、を備え、加熱工程は、前記内槽内の温度が異なる複数の工程があり、前記複数の工程の前記内槽内の温度は、前記加熱工程における第一工程よりも第二工程の方が前記内槽内の温度が高く、前記制御部は、前記第一工程において、前記加熱手段による加熱と前記加湿手段による加湿を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、除菌力を向上することが可能な洗濯乾燥機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る洗濯乾燥機の内部を示す構成図である。
【
図2】本実施形態の洗濯乾燥機の動作を示すフローチャートである。
【
図3】除菌コースにおける温度と湿度の状態を示すタイムチャートである。
【
図4】本実施形態の洗濯乾燥機の動作を示す別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態例について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含むものである。なお、以下では、
図1に示す方向を基準にして説明する。また、
図1において紙面に垂直な方向は左右方向である。
図1は、本実施形態に係る洗濯乾燥機の内部を示す構成図である。
図1に示すように、洗濯乾燥機100は、ドラム式の洗濯乾燥機であり、筐体1と、ドラム3(内槽)と、ドラム3内に空気を送風する送風ファン26(送風手段)と、ドラム3内に送風する空気を加熱するヒータ28(加熱手段)と、ドラム3内を加湿する加湿手段と、制御装置30(制御部)と、を備えて構成されている。
【0010】
筐体1は、ベース1hの上部に、主に鋼板と樹脂成形品で作られた側板(図示せず)及び補強材(図示せず)を組み合わせて骨格を構成し、さらにその上に樹脂成形品で作られた前面カバー1a、下部前面カバー1b、上面カバー1cを取り付けることで構成されている。また、前面カバー1aには、洗濯物(衣類)を出し入れする際に開閉されるドア9が設けられている。
【0011】
筐体1の内部には、ほぼ中央部に水を溜める外槽2を備えている。外槽2は、有底円筒状に形成され、下部に設けられた複数個のダンパ(図示せず)によって弾性支持されている。外槽2には、前面側に形成された前面開口(ドア9側)に外槽カバー2aが取り付けられている。外槽カバー2aは、後側が外槽2の前面開口と接続され、前側に洗濯物が出し入れされる円形の開口部2a1が形成されている。
【0012】
また、外槽2の内側には、回転可能に支持されたドラム3が設けられている。ドラム3は、有底円筒状に形成された洗濯物(衣類35)を収容可能であり、前側に開口3aが位置している。また、ドラム3の回転軸Oは、前側が後側よりも高くなるように傾斜している。なお、ドラム3の回転軸は、略水平となるように構成されていてもよい。
【0013】
ドア9は、樹脂製のドア枠9bに、ドアガラス9aを固定したものであり、ヒンジ(図示せず)によって筐体1に開閉自在に取り付けられている。また、ドア9は、ドア枠9bが筐体1に形成された円形の開口1sの周縁部に当接する。また、ドアガラス9aは、筐体1の開口1sよりも奥側(後側)に入り込むように凸形状を成すようにして構成されている。
【0014】
ドラム3の開口3aの外周には、脱水時の洗濯物のアンバランスによる振動を低減するための、流体バランサ(図示省略)が設けられている。また、ドラム3の側壁(周壁)には、洗濯物を持ち上げる複数個のリフタ(図示せず)が等間隔に設けられている。また、ドラム3は、ドラム駆動用のモータ(図示せず)に直結されている。また、ドラム3は、側壁である円筒部に遠心脱水および通風用の多数の小孔(図示せず)を有している。
【0015】
外槽カバー2aには、弾性体からなるゴム製のドアパッキン(図示せず)が取付けられている。このドアパッキンは、略円環状に形成され、奥側(後側)の開口縁部が外槽カバー2aの開口部に取り付けられ、手前側(前側)の開口縁部が筐体1の開口1sの縁部に取り付けられている。ドア9を閉じることで、ドアガラス9aがドアパッキンに密着し、外槽2とドア9との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い、すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。
【0016】
また、外槽2の下方には、循環ポンプ18が設けられている。この循環ポンプ18は、筐体1のベース1h側に固定されている。また、循環ポンプ18は、洗濯水を外槽2の上部までくみ上げて、ドラム3内の洗濯物に散布する機能を有している。洗濯水は、外槽2の下部に設けられた水受け部(図示せず)の排水口20から配管21を通して糸屑フィルタ22に送られる。糸屑フィルタ22を通過した洗濯水は、循環ポンプ18の吸込口側に入り、循環ポンプ18で昇圧されたのち、散水ノズル(図示せず)からドラム3内に向けて散水される。また、排水口20は、糸屑フィルタ22と排水弁23を介して、排水ホース24に通じており、外槽2内の水を機外に排水できるようになっている。
【0017】
また、外槽2の背部には、外槽2と送風ファン26(送風手段)とを接続する送風ダクト25aが設けられている。送風ダクト25aは、ドラム3内の洗濯物に気流を導くものであり、一端が外槽2の背面下部に接続されている。送風ファン26は、乾燥フィルタ27を介して送風ダクト25aの他端と接続されている。また、送風ファン26および乾燥フィルタ27は、筐体1に固定されている。送風ファン26によって生成された風は、ヒータ28によって加熱された後に温風となって、送風ダクト25bを通って、ノズル29からドラム3内に吐出される。洗濯物(衣類)に吹き付けられた温風は、高温多湿の空気となって、送風ダクト25aに吸い込まれ、送風ダクト25aに設けられた水冷除湿機構(不図示)で冷却除湿されて低温空気となる。なお、ヒータ28および水冷除湿機構の替わりにヒートポンプを用いてもよい。また、本実施形態では、水冷除湿機構(不図示)およびヒータ28によって、衣類を乾燥するための乾燥手段が構成されている。
【0018】
ノズル29は、外槽2の上部に設けられ、スリット形状の開口を有している。また、ノズル29は、ドラム3の開口3aからドラム3の背面3bに向けて温風が吐出されるようになっている。
【0019】
また、ノズル29と送風ダクト25bとの間は、柔軟構造のゴム製の蛇腹管25cによって接続されている。また、送風ダクト25aの上端と乾燥フィルタ27との間は、柔軟構造のゴム製の蛇腹管25dによって接続されている。また、図示していないが、排水口20と循環ポンプ18との間の配管21も蛇腹管(図示せず)によって接続されている。これら蛇腹管25c,25d、外槽2の下部のダンパ(不図示)などによって、運転時の外槽2の振動を吸収している。
【0020】
制御装置30(制御部)は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。また、制御装置30は、循環ポンプ18、排水弁23、送風ファン26、ドラム駆動用のモータ(不図示)、ヒータ28、後記する給水弁を制御するとともに、湿度センサ31によって検知された検出値を取得する。
【0021】
洗濯乾燥機100は、外槽2の上部に、加湿手段として給水弁(不図示)と給水路(不図示)を備えている。給水弁が開くことにより水が給水路を介して送風ダクト25bに供給されるようになっている。給水路からの水が供給される送風ダクト25bの位置は、ヒータ28よりも下流である。給水弁が開弁され、給水路から送風ダクト25bに供給された水は、送風ファン26からの気流によって、ノズル29に運ばれ、ノズル29からミストとなってドラム3内に供給される。
【0022】
図2は、本実施形態の洗濯乾燥機の動作を示すフローチャートである。
まず、ユーザは、ドア9を開いて、ドラム3内に除菌を行いたい衣類35を投入する。このとき、ドラム3の底側に位置する面(曲面)に衣類35を広げて載置する。そして、制御装置30は、ユーザによって電源スイッチがオンされると起動し、操作パネルから除菌コースが選択されることで、ROMから除菌コースの制御プログラムを読み出して実行する。
【0023】
図2に示すように、制御装置30は、ステップS10において、ドラム3内に温風を供給する。すなわち、送風ファン26とヒータ28をオンにすることで、温風が生成され、ノズル29からドラム3内に温風が衣類35に向けて供給される。このステップS10の処理によって、衣類35が加熱される。なお、このとき、ドラム3内の温度が温度T1に設定される。
【0024】
ステップS20において、制御装置30は、ドラム3内を加湿する。すなわち、給水弁が開弁されることで、水が給水路に流れ、送風ダクト25bに供給される。送風ダクト25bに導入された水は、送風ファン26から供給される高速の風に乗ってノズル29まで運ばれ、ノズル29からミスト水となってドラム3内に供給される。このステップS20の処理によって、衣類35が加湿される。
【0025】
なお、本実施形態では、温風を供給した後に加湿する構成を例に挙げて説明したが、加湿した後に温風を供給するようにしてもよく、または温風の供給と加湿を同時に行ってもよい。
【0026】
ステップS30において、制御装置30は、ステップS10を開始してからの経過時間t1が、予め決められた設定時間taを超えていると判定した場合には(Yes)、ステップS40に進み、経過時間t1が設定時間ta以下であると判定した場合には(No)、ステップS10の処理に戻る。なお、設定時間taは、事前の試験によって決められる。
【0027】
ステップS40において、制御装置30は、加湿を停止する。すなわち、給水弁が閉じられ、給水路および送風ダクト25bへの給水が停止される。これによって、ノズル29からのミスト水の供給が停止する。なお、送風ファン26は継続して動作させる。このようにして加湿が停止することで、ドラム3内の湿度が低下する。
【0028】
ステップS50において、制御装置30は、ドラム3内を昇温する。例えば、ヒータ28の出力を増加させることで、ドラム3内の温度がステップS10の昇温時の温度T1よりも高い温度T2に設定される。これにより、ドラム3内の温度が上昇する。
【0029】
ステップS60において、制御装置30は、加湿を停止してからの経過時間t2が、予め決められた設定時間tbを超えている場合には(Yes)、除菌運転を終了し、経過時間t2が設定時間tb以下であると判定した場合には(No)、ステップS50の処理に戻る。なお、設定時間tbは、事前の試験によって決められる。
【0030】
図3は、除菌コースにおけるドラム内の温度と湿度の状態を示すタイムチャートである。なお、上図は温度のタイムチャートであり、下図は湿度のタイムチャートである。
図3に示すように、除菌コースでは、第一工程において、ヒータ28と送風ファン26によって温風が生成され、ドラム3内が温度T1で加熱される。また、第一工程では、給水弁が開弁され、ノズル29からミスト水がドラム3内に供給されることで、衣類35に対して加湿が行われる。第一工程では、例えば、ドラム3内の湿度H1が100%に設定され、温度T1が60℃に設定される。
【0031】
そして、第二工程において、給水弁が閉じられ、衣類35に対する加湿が停止される。また、ヒータ28の温度を上昇させ、衣類35が温度T2で加熱される(T2>T1)。第二工程では、例えば、ドラム3内の湿度H2が10%に設定され、温度T2が70~80℃に設定される。
【0032】
このように、洗濯乾燥機100の除菌コースでは、第一工程において、衣類35に対して加熱と加湿を行う湿熱除菌が行われる。そして、第二工程において、衣類35に対する加湿を停止して、衣類35を昇温させる乾熱除菌が行われる。このように、第一工程においてエネルギ伝達効率の高い湿熱除菌を行うことによって除菌力を向上させることができ、第二工程において乾熱除菌によって昇温させることで除菌力を回復させることができる。なお、第二工程は第一工程において湿った衣類35を乾燥させる工程でもあり、加湿を停止させている。このように、第一工程の湿熱除菌(低温高湿)と第二工程の乾熱除菌(高温低湿)を組み合わせることで、運転開始から運転終了まで乾熱除菌(例えば、衣類湿度が10%、衣類温度が80℃)のみを行う場合と比較して、運転全体の平均温度低下や時間短縮を図ることができる。その結果、衣類35の傷みや縮みを抑えることができる。
【0033】
以下、湿熱による除菌のメカニズムを記載すると、以下の3点を挙げることができる。(1)水分子による酵素の化学的な変性作用、(2)水蒸気から水に変化する際の潜熱効果、および、(3)水の熱伝導率が空気と比較して高いこと、が関係していると考えられる。化学的変性作用に関しては、加熱された水分子が細菌の酵素の水素結合やイオン結合に作用し結合を切断することで、細胞の高次構造が損傷し、細菌が死滅すると考えられている。なお、水分子が実質的にない乾燥した状態の場合は、加熱により細胞内の水分が蒸発し、酵素分子やDNA分子の共有結合が切断され、細菌が死滅すると考えられており、これには湿熱よりも高温かつ長時間の熱処理が必要となる。また、潜熱効果に関しては、水の顕熱に対して凝縮潜熱は約5倍高く、熱伝導率に関しても、水の方が空気よりも約20倍高いため、水分が存在することで乾燥した状態と比較し効率的に細菌に熱を伝えることができると考えられる。
【0034】
以上説明したように、洗濯乾燥機100は、衣類35を収容するドラム3と、ドラム3内に空気を送風する送風ファン26(送風手段)と、ドラム3内に送風する空気を加熱するヒータ28(加熱手段)と、ドラム3内を加湿するノズル29(加湿手段)と、送風ファン26、ヒータ28および給水弁(加湿手段)を制御する制御装置30(制御部)と、を備える。また、加熱工程は、ドラム3内の温度(T1,T2)が異なる第一工程と第二工程がある。2つの工程のドラム3内の温度は、加熱工程における第一工程よりも第二工程(最終工程)の方がドラム3内の温度が高い(T1<T2)。制御装置30は、第一工程において、ヒータ28による加熱と加湿手段による加湿を行う(
図2参照)。これによれば、エネルギ伝達効率の高い湿熱除菌を行うことにより除菌力を向上させることができる。第一工程の湿熱除菌(低温高湿)と第二工程の乾熱除菌(高温低湿)とを組み合わせることで、運転全体の平均温度低下と運転時間短縮を図ることができる。
【0035】
また、洗濯乾燥機100は、最終工程は、第一工程に続く第二工程であり、制御装置30(制御部)は、第二工程において加熱を開始するとともに、第一工程の加湿を停止する(
図2参照)。これによれば、加湿を停止することによって除菌力が低下するが、加熱によって昇温することで除菌力を回復させることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、加熱工程として第一工程と第二工程とを備えた場合を例に挙げて説明したが、第一工程と第二工程との間に他の工程が入ってもよい。
【0037】
また、洗濯乾燥機100において、加湿手段は、水を液滴化するノズル29を含み、ドラム3内に収容された衣類35にノズル29から液滴を滴下する。これによれば、液滴を直接衣類35に滴下することで、衣類35を確実に湿らせることができ、湿熱除菌効果が向上する。なお、液滴量は、ドラム3内の湿度に応じて調整してよい。また、液滴を滴下するタイミングは、常時でも間欠でもよい。
【0038】
また、洗濯乾燥機100において、ドラム3は回転させなくてもよい。これによれば、型くずれ防止のため、攪拌不可のスーツやコートでも除菌することができる。
【0039】
また、洗濯乾燥機100において、第一工程に入る前の衣類は乾燥していてもよい。これによれば、水洗い出来ない衣類でも除菌することができる。
【0040】
また、洗濯乾燥機100において、ドラム3内の温度は、第一工程(60℃)よりも第二工程(70~80℃)の方が10~20℃高い。これによれば、第一工程において温度低下させることができるので衣類35の布傷みを抑えることができ、第二工程において温度を高めているので除菌力を回復させることができる。
【0041】
なお、前記した実施形態では、洗濯乾燥機100における衣類の除菌を例に挙げて説明したが、洗濯乾燥機100に限定されるものではなく、食器洗い乾燥機、電子レンジなど温湿度を活用する各種家庭用電化製品に適用してもよい。
【0042】
図4は、本実施形態の洗濯乾燥機の動作を示す別のフローチャートである。なお、
図4は、
図2に示す動作にステップS45を追加したものである。
図4に示すように、ステップS40において、加湿を停止することで、衣類の湿度が低下する。そして、ステップS45において、制御装置30は、湿度センサ31(
図1参照)によって検出される湿度が予め設定された閾値以下であるかを判定し、湿度が閾値以下でないと判定した場合には(No)、ステップS45の処理を繰り返し、湿度が閾値以下であると判定した場合には(Yes)、ステップS50に進む。なお、このときの閾値は、例えば、50%に設定される。そして、ステップS50において、制御装置30は、ドラム3内を昇温する。例えば、ヒータ28の出力を増加させることで、ドラム3内の温度がステップS10の昇温時の温度T1よりも高い温度T2に設定される。
【0043】
このように構成された洗濯乾燥機100は、ドラム3内の湿度を検知する湿度センサ31を備え、制御装置30は湿度が閾値以下となった際に、第二工程(次の加熱工程)に移行する。これによれば、実測した湿度に基づくことで、除菌に効率的な温度制御が可能になる。
【0044】
図5は、他の加湿手段を示す構成図である。なお、
図1と同様の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図5に示すように、洗濯乾燥機100の加湿手段は、ドラム3を囲い、水を溜める外槽2と、水を加熱する加湿用ヒータ40とを備えて構成されている。この加湿用ヒータ40は、制御装置30によってオン・オフ制御される。外槽2の底部に給水され、加湿用ヒータ40がオンされる。なお、このときの水位は、ドラム3に水が触れない程度の低い水位である。そして、水が加湿用ヒータ40によって加熱されることで、蒸気が発生し、衣類35を加湿することができる。このように加湿用ヒータ40による加熱で蒸発した水分によって、ドラム3内を加湿する。なお、このとき、送風ファン26を駆動して、ドラム3内に風を送ることで、ドラム3内の衣類に満遍なく蒸気を与えることができる。
【0045】
なお、さらに他の加湿手段としては、超音波装置を用いてミストを噴霧してもよい。また、さらに他の加湿手段としては、図示しない水冷除湿手段において供給される冷却水を、送風ファン26を駆動して発生させた風によってミスト水にする構成であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 筐体
2 外槽
2a 外槽カバー
3 ドラム(内槽)
25a 送風ダクト
25b 送風ダクト
26 送風ファン(送風手段)
28 ヒータ(加熱手段)
29 ノズル(加湿手段)
30 制御装置(制御部)
31 湿度センサ
40 加湿用ヒータ(ヒータ)
100 洗濯乾燥機
O 回転軸