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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127205
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】射出成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036195
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】渕井 理司
(72)【発明者】
【氏名】丁 イメイ
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 直毅
(72)【発明者】
【氏名】丸山 英伸
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
(72)【発明者】
【氏名】金井 保人
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM09
4F206AR06
4F206JA07
4F206JF01
4F206JL02
4F206JM16
4F206JP01
4F206JP12
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP17
4F206JP18
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】より最適な成形条件を導き出すことが可能な射出成形システムを提供すること。
【解決手段】射出成形システムは、成形品を成形する成形装置と、前記成形品の形状及び重量を検査する検査装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、記憶部と、標準成形条件に含まれるパラメータの変更内容を受付ける受付部と、を有し、前記受付部で受付けた前記変更内容に応じて前記パラメータを変更した第2成形条件により、前記成形品を成形させる第1制御と、前記第1制御で変更した前記パラメータと同じ前記パラメータを変更した第3成形条件により、前記成形品を成形させる第2制御と、前記第2成形条件と、前記第2成形条件で成形された前記成形品の検査結果とを紐付けて、前記記憶部に記憶する第3制御と、前記第3成形条件と、前記第3成形条件で成形された前記成形品の前記検査結果とを紐付けて、前記記憶部に記憶する第4制御と、を実行する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形条件に従って、成形型に材料を吐出して成形品を射出成形する成形装置と、
前記成形品の形状及び重量の少なくともいずれかを検査する検査装置と、
前記成形品を前記成形装置から前記検査装置へと搬送するロボットと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
記憶部と、
予め定められた前記成形条件である標準成形条件に含まれるパラメータの変更内容を受付ける受付部と、を有し、
前記受付部で受付けた前記変更内容に応じて前記パラメータを変更した第2成形条件により、前記成形装置で前記成形品を成形させる第1制御と、
前記第1制御で変更した前記パラメータと同じ前記パラメータを変更した第3成形条件により、前記成形装置で前記成形品を成形させる第2制御と、
前記第2成形条件と、前記第2成形条件で成形された前記成形品の前記検査装置による検査結果とを紐付けて、前記記憶部に記憶する第3制御と、
前記第3成形条件と、前記第3成形条件で成形された前記成形品の前記検査結果とを紐付けて、前記記憶部に記憶する第4制御と、を実行し、
前記第3成形条件は、前記第2成形条件とは異なる条件である、
射出成形システム。
【請求項2】
前記制御装置は、変更した前記パラメータと前記検査結果との相関関係、および、変更した前記パラメータの前記検査結果への寄与率の少なくとも一方のデータを出力する、
請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記変更内容に応じて前記パラメータを変更した複数の前記成形条件ごとに、前記成形条件と、前記成形条件で成形された前記成形品の前記検査結果と、前記材料の物性とを紐付けて、前記記憶部に記憶させる、
請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項4】
前記記憶部には、前記変更内容に応じて前記パラメータを変更した複数の前記成形条件が記憶されており、
前記制御装置は、前記成形品の形状と前記材料の物性に基づいて、前記記憶部から前記寄与率の最も高い前記パラメータを読み出し、前記受付部に送信する、
請求項2に記載の射出成形システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記変更内容に応じて前記パラメータを変更した複数の前記成形条件ごとに、複数回に亘って前記成形品を成形させ、
前記変更内容に応じて変更する前記パラメータとして、金型温度、または、バレル温度が含まれる場合、少なくとも1回目の前記成形品については、前記検査装置による前記検査を行わない、
請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項6】
前記成形型は、複数のキャビティを有しており、
前記制御装置は、
前記変更内容に応じて前記パラメータを変更した複数の前記成形条件ごとに、複数の前記キャビティごとに前記成形品を成形し、
前記キャビティごとに、前記成形条件と、前記成形条件で成形された前記成形品の前記検査結果とを紐付けて、前記記憶部に記憶させる、
請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記パラメータを変更した複数の前記成形条件による成形において、特定の前記キャビティにおいて不合格品が生じる場合、前記成形型に異常がある旨の出力をする、
請求項6に記載の射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回帰分析を用いて成形条件から成形不良の度合いを予測することによって、成形不良の度合いが所望の値以内となる成形条件を決定する技術が開示されている。例えば、特許文献1の射出成形システムでは、CAE解析用の成形品有限要素モデルデータに対して変形量とデフォームの度合いを予測し、この変形量とデフォームの度合いが所望の値以内となるまで、CADシステムによる製品再設計およびCAE解析を行って最適成形条件を決定した後に、金型の設計製作を行い、この金型を用いて、前記最適成形条件による成形条件で射出成形を行う、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-138310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、実際の成形結果との乖離が生じ兼ねないという課題がある。詳しくは、当該文献のように、仮想的に品質を予測し、成形条件を決定する場合、品質を左右する要因の一部しか加味できず、実際の成形品における成形結果との乖離が生じる虞があった。
つまり、より最適な成形条件を導き出すことが可能な射出成形システムが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に係る一態様の射出成形システムは、成形条件に従って、成形型に材料を吐出して成形品を射出成形する成形装置と、前記成形品の形状及び重量の少なくともいずれかを検査する検査装置と、前記成形品を前記成形装置から前記検査装置へと搬送するロボットと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、記憶部と、予め定められた前記成形条件である標準成形条件に含まれるパラメータの変更内容を受付ける受付部と、を有し、前記受付部で受付けた前記変更内容に応じて前記パラメータを変更した第2成形条件により、前記成形装置で前記成形品を成形させる第1制御と、前記第1制御で変更した前記パラメータと同じ前記パラメータを変更した第3成形条件により、前記成形装置で前記成形品を成形させる第2制御と、前記第2成形条件と、前記第2成形条件で成形された前記成形品の前記検査装置による検査結果とを紐付けて、前記記憶部に記憶する第3制御と、前記第3成形条件と、前記第3成形条件で成形された前記成形品の前記検査結果とを紐付けて、前記記憶部に記憶する第4制御と、を実行し、前記第3成形条件は、前記第2成形条件とは異なる条件である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1に係る射出成形システムの概要を示す斜視図。
図2】射出成形システムの機能ブロック図。
図3】成形装置の概略構成を示す要部の断面図。
図4】フラットスクリューの斜視図。
図5】フラットスクリューの断面図。
図6】バレルの平面図。
図7】バレル周辺部位の断面図。
図8】成形条件のパラメータの一例を示す一覧表。
図9】部品の基本情報の一例を示す一覧表。
図10】標準成形条件の一例を示す一覧表。
図11】成形品の検査データの収集方法の流れを示すフローチャート図。
図12】成形品データの一例を示す表。
図13】バレル温度と検査結果との相関関係を示す表。
図14】バレル温度と測定寸法との相関関係を示すグラフ図。
図15】金型温度と測定寸法との相関関係を示すグラフ図。
図16】パラメータごとの成形条件に対する寄与率を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
***射出成形システムの概要***
図1は、実施形態1に係る射出成形システムの概要を示す斜視図である。
図1を含む各図には、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示している。詳しくは、射出成型装置700の延在方向をXプラス方向とし、奥行き方向をYプラス方向とし、高さ方向をZプラス方向としている。なお、Xプラス方向、および、Xマイナス方向を含めたX軸に沿った方向をX方向ともいう。同様に、Y軸に沿った方向をY方向、Z軸に沿った方向をZ方向ともいう。
【0008】
図1に示すように、射出成形システム800は、成形装置220を含む射出成型装置700と、射出成型装置700の動作を制御する制御装置100とから構成される。
射出成型装置700は、材料供給ユニット500と、射出成型ユニット200と、検査収納ユニット400とから構成される。3つのユニットは、材料供給ユニット500、射出成型ユニット200、検査収納ユニット400の順に、Xプラス方向に並んで配置されている。
【0009】
材料供給ユニット500は、材料乾燥機521、材料供給部522などから構成される。材料乾燥機521は、材料貯留部であり、ペレット状の樹脂材料が貯留される。材料乾燥機521に貯留された材料は、材料乾燥機521内で除湿および乾燥される。
材料供給部522は、材料を搬送するコンベヤを備えたローダーである。材料乾燥機521の材料は、材料供給部522により、成形装置220のホッパー91に圧送される。
【0010】
射出成型ユニット200は、成形装置220、コントローラー230、成形型温調器235、取り出し装置240、運搬装置250、ゲートカット装置260などから構成される。図1に示すように、射出成型ユニット200の上面には、成形装置220、取り出し装置240、運搬装置250、ゲートカット装置260が配置されている。射出成型ユニット200の内部には、コントローラー230、成形型温調器235が収納されている。
成形装置220には、成形型12が着脱可能に装着されている。成形装置220は、可塑化した材料を成形型12に射出注入して、成形品を成形する。成形型12は、金属製であってもよいし樹脂製であってもよい。成形型12のことを、金型ともいう。成形装置220には、材料の供給を受けるホッパー91が設けられている。本実施形態において「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0011】
コントローラー230は、成形装置220、取り出し装置240、運搬装置250、ならびに、後述するロボット420や、検査装置430、スタッキング機構440の統括制御を行う装置である。コントローラー230は、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)によって構成されている。コントローラー230は、制御装置100と接続しており、制御装置100から送信される成形条件に従って、成形装置220に成形を実施させる。換言すれば、成形装置220は、成形条件に従って、成形型12に材料を吐出して成形品を射出成形する。
成形型温調器235は、成形型12に設けられた冷却管に熱媒体を循環させ、成形型12の温度を一定の温度に保つための温度調節装置である。
【0012】
取り出し装置240は、成形装置220によって成形されて離型された成形品を成形型12から取り出す装置である。取り出し装置240は、成形装置220の手前側、すなわち、Yマイナス方向側に配置されている。取り出し装置240は、成形品を把持するハンドと、ハンドをX方向およびY方向に沿って移動させるリニアアクチュエーターによって構成されている。
取り出し装置240は、ハンドによって成形装置220から成形品を取り出し、成形装置220から取り出した成形品を、リニアアクチュエーターによって、運搬装置250のXマイナス方向側の端部まで移動させ、運搬装置250上に載置する。
【0013】
運搬装置250は、取り出し装置240が取り出した成形品を運搬する装置である。運搬装置250は、成形装置220の手前側、すなわち、Yマイナス方向側に配置されている。そして、運搬装置250は、取り出し装置240のXプラス方向側に隣接して配置されている。運搬装置250は、X方向に沿って成形品を移動可能なリニアアクチュエーターによって構成されている。運搬装置250は、取り出し装置240によって運搬装置250上に載置された成形品を、Xマイナス方向側の端部からXプラス方向側の端部に向けて移動させる。運搬装置250の上には、成形品に残存するゲート部やランナーを切断するゲートカット装置260が配置されている。運搬装置250上を運搬されている成形品は、このゲートカット装置260により、運搬中にゲート部やランナーが切断される。
【0014】
検査収納ユニット400は、ロボット420、検査装置430、スタッキング機構440などから構成される。
ロボット420は、運搬装置250によって運搬された成形品を移動させる装置である。本実施形態では、ロボット420は、スカラーロボットとして構成されている。ロボット420には、ロボット420を制御するためのコントローラーが一体的に組み込まれている。ロボット420は、運搬装置250によって運搬装置250のXプラス方向の端部まで運搬された成形品を把持し、その成形品を検査装置430の検査ステージ410に移動させる。更に、ロボット420は、検査装置430によって検査が完了した成形品を、スタッキング機構440上のトレイまで移動させ、トレイに載置する。なお、ロボット420は、スカラーロボットに限らず、複数の軸を有する垂直多関節ロボットによって構成されてもよい。換言すれば、ロボット420は、成形品を成形装置220から検査装置430へと搬送する。なお、取り出し装置240及び運搬装置250はなくてもよく、直接的にロボット420が成形装置220から成形品を取り出し、検査ステージ410に移動させてもよい。
【0015】
検査装置430は、ロボット420のXプラス方向側に隣接して配置されている。検査装置430は、成形品の画像を撮像するための撮像部431、および、成形品の重さを計測するための重量計測部432を備えている。
撮像部431は、CCD(Charge Coupled Device)センサー、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーなどの撮像素子を備えたカメラであり、照明部も附属している。検査装置430は、検査ステージ410上の成形品を撮像部431により撮像し、撮像された画像を解析して成形品の形状を含む外観検査を行う。外観検査終了後、成形品は、ロボット420により重量計測部432に移動される。
【0016】
重量計測部432は、ロードセルなどの重量センサーを備えた重量計測部である。検査装置430は、重量計測部432の上に載置された成形品の重量を測定する。外観検査終了後、成形品は、ロボット420によりスタッキング機構440上のトレイまで移動される。なお、検査装置430によって不良品と判定された成形品は、ロボット420によって、所定の不良品排出領域に排出される。換言すれば、検査装置430は、成形品の形状、重量の少なくともいずれかを検査する。
【0017】
スタッキング機構440は、ロボット420によって検査装置430から運ばれた検査済みの成形品を収容するトレイを積み重ねる収納機構である。スタッキング機構440は、ロボット420のYマイナス方向側に配置されている。
スタッキング機構440は、第1昇降装置441と第2昇降装置442とを備える。ロボット420は、第1昇降装置441に配置されたトレイに、所定数の成形品を配置する。第1昇降装置441は、所定数の成形品がトレイに配置されると、トレイを下降させる。下降したトレイの上には、第2昇降装置442の最上部に配置されたトレイが、スライド機構によってスライド移動され、配置される。なお、第2昇降装置442から第1昇降装置441へのトレイの移動は、ロボット420によって行われてもよい。第2昇降装置442には、複数のトレイが積み重なっており、最上部のトレイが第1昇降装置441に移動すると、第2昇降装置442は、残りのトレイを上昇させる。こうして、成形品の配置されたトレイが、第1昇降装置441上に所定数、積み重ねられると、成形品の製造が一旦休止される。スタッキング機構440の下部には、補充用の扉が設けられており、当該扉を開けることにより、内部で積み上げられたトレイを取り出し、新たなトレイを第2昇降装置442に補充可能な構成となっている。
【0018】
制御装置100は、コンピューター30、サーバー50などから構成される。
コンピューター30は、好適例では、液晶パネルからなる表示部31、キーボードからなる操作部32を備えたノート型コンピューターを用いている。なお、操作部32は、表示部31に設けられたタッチパネルでも良いし、マウスであっても良い。サーバー50は、コンピューター30よりも情報処理能力が高いサーバーであり、例えば、LAN(Local Area Network)環境下で、コンピューター30と接続している。
【0019】
図2は、射出成形システムの機能ブロック図である。
図2に示すように、コンピューター30は、表示部31、操作部32、第1記憶部33、第1処理部35などから構成される。
【0020】
第1記憶部33は、RAM(Random Access Memory)、及び、ROM(Read Only Memory)を備えて構成される。RAMは、各種データ等の一時記憶に用いられ、ROMは、射出成型装置700の動作を制御するための制御プログラムや、付随するデータなどを記憶する。制御プログラムには、成形品データを収集する際の処理の順序と内容を規定した成形品データ収集プログラムなどが記憶されている。付随データには、部品ごとの標準成形条件や、複数の成形条件、複数のパラメータ情報が含まれている。
第1処理部35は、1つ又は複数のプロセッサーを含んで構成され、各部の動作を統括制御する。第1処理部35は、周辺装置とのインターフェイス回路、演算装置及びレジスタを含んで構成されている。第1処理部35は、成形品データ収集プログラムの実行時には受付部36として機能し、成形条件の変更内容を受付け、射出成型装置700のコントローラー230に送信する。換言すれば、制御装置100は、複数の成形条件を記憶する第1記憶部33と、成形条件の変更内容を受付ける受付部36と、を有する。
【0021】
サーバー50は、第2処理部51、第2記憶部53などから構成される。なお、サーバー50は、操作部や、表示部なども備えているが、図示を省略している。
第2処理部51は、1つ又は複数のプロセッサー、周辺装置とのインターフェイス回路、演算装置及びレジスタなどを含んで構成されている。
第2記憶部53は、RAM、ROM、に加えて、HDD(Hard Disk Drive)などの大容量記憶デバイスを備えて構成される。
第2処理部51は、演算部52として機能し、演算部52は、成形条件を変化させた複数の取得データを用いて重回帰分析を行い、パラメータごとの寄与率を含む分析データを演算する。
【0022】
コンピューター30とサーバー50とは、好適例では、LAN40を介して、双方向に通信可能に接続されている。なお、インターネットを介して接続されることでも良い。また、制御装置100は、2台構成に限定するものではなく、同様の機能を担えれば良く、1台のコンピューターで構成しても良いし、コンピューター30にサーバーが複数台接続されることでも良い。
コンピューター30と射出成型装置700のコントローラー230との間は、例えば、通信ケーブル41で接続される。
コントローラー230は、コンピューター30から受信した成形条件に沿って射出成型装置700の成形装置220を含む各部を制御し、成形品を成形する。
【0023】
***成形装置の構成***
図3は、成形装置の概略構成を示す要部の断面図である。図4は、フラットスクリューの斜視図である。図6は、バレルの平面図である。
成形装置220は、可塑化装置110、射出制御機構120、成形型12、型締装置130などから構成される。
【0024】
可塑化装置110は、フラットスクリュー111とバレル112とヒーター113とノズル114とスクリュー駆動部115とを有している。フラットスクリュー111は、モーターによって構成されるスクリュー駆動部115により回転軸RXを中心に回転駆動される。バレル112の中心には、連通孔116が形成されている。連通孔116には、後述するシリンダー121が接続されている。スクリュー駆動部115によるフラットスクリュー111の回転と、ヒーター113による加熱とは、コントローラー230によって制御される。
【0025】
図4に示すように、フラットスクリュー111は、回転軸RXに沿った方向である軸線方向における高さが直径よりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー111におけるバレル112に対向する溝形成面201には、中央部205を中心に、渦状の溝部202が形成されている。溝部202は、フラットスクリュー111の側面に形成された材料投入口203に連通している。
ホッパー91(図1)から供給される材料は、材料投入口203を通じて溝部202に供給される。溝部202は、凸条部204によって隔てられることにより形成されている。図4では、溝部202が2本形成されている例を示しているが、溝部202の数は、1本でもよいし、3本以上であってもよい。なお、溝部202は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部205から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0026】
図6に示すように、バレル112は、フラットスクリュー111の溝形成面201に対向する対向面212を有している。対向面212の中央には、連通孔116が形成されている。対向面212には、連通孔116に接続され、連通孔116から外周に向かって渦状に延びる複数の案内溝211が形成されている。
フラットスクリュー111の溝部202に供給された材料は、フラットスクリュー111の回転とヒーター113の加熱とによって、フラットスクリュー111とバレル112との間において可塑化されながら、フラットスクリュー111の回転によって溝部202および案内溝211に沿って流動し、フラットスクリュー111の中央部205へと導かれる。中央部205に流入した材料は、バレル112の中心に設けられた連通孔116から射出制御機構120へと導かれる。なお、案内溝211が設けられていなくてもよい。
【0027】
図3に示すように、射出制御機構120は、シリンダー121と、プランジャー122と、プランジャー駆動部123とを備えている。射出制御機構120は、シリンダー121内の可塑化材料を、後述するキャビティ117に射出注入する機能を有している。射出制御機構120は、コントローラー230の制御下で、ノズル114からの可塑化材料の射出量を制御する。シリンダー121は、バレル112の連通孔116に接続された略円筒状の部材であり、内部にプランジャー122を備えている。プランジャー122は、シリンダー121の内部を摺動し、シリンダー121内の可塑化材料を、可塑化装置110に備えられたノズル114に圧送する。プランジャー122は、モーターによって構成されるプランジャー駆動部123により駆動される。
【0028】
本実施形態において、ノズル114は、ホットランナーノズルとして構成されている。ノズル114の周囲には、ヒーターが配置されており、ホットランナーコントローラー(図示せず)が、そのヒーターを制御することにより、ノズル114の温度が調整される。
【0029】
成形型12は、可動型12Mと固定型12Sとから構成される。可動型12Mと固定型12Sとは、互いに対面して設けられ、その間に成形品の形状に応じた空間であるキャビティ117を有している。キャビティ117には、可塑化材料が射出制御機構120によって圧送されてノズル114から射出される。
型締装置130は、成形型駆動部131を備えており、可動型12Mと固定型12Sとの開閉を行う。型締装置130は、コントローラー230の制御下で、モーターによって構成される成形型駆動部131を駆動することによってボールネジ132を回転させ、ボールネジ132に結合された可動型12Mを固定型12Sに対して移動させて成形型12を開閉させる。つまり、固定型12Sは、射出成形システム800において静止しており、その静止した固定型12Sに対して、可動型12Mが、相対的に移動することにより、成形型12の開閉が行われる。
【0030】
成形型12が成形装置220に装着されている状態において、可動型12Mには、成形品を成形型12から離型させるための押出機構407が設けられている。押出機構407は、エジェクターピン408と、支持板409と、支持棒406と、バネ411と、押出板412と、スラストベアリング413とを有する。
【0031】
エジェクターピン408は、キャビティ117内で成形された成形品を押し出すための棒状部材である。エジェクターピン408は、可動型12Mを貫通してキャビティ117まで挿通するように設けられている。支持板409は、エジェクターピン408を支持する板部材である。エジェクターピン408は、支持板409に固定されている。支持棒406は、支持板409に固定されており、可動型12Mに形成された貫通孔に挿通される。バネ411は、可動型12Mと支持板409との間の空間に配置され、支持棒406に挿入されている。バネ411は、成形時において、エジェクターピン408の頭部がキャビティ117の壁面の一部をなすように支持板409を付勢する。押出板412は、支持板409に固定されている。スラストベアリング413は、押出板412に取り付けられており、ボールネジ132の頭部が押出板412を傷つけないように設けられている。なお、スラストベアリング413に替えて、スラスト滑り軸受等を用いてもよい。
【0032】
***温度センサー、圧力センサーの配置態様***
図4に示すように、フラットスクリュー111の溝形成面201の内部には、複数の圧力センサー10、及び、温度センサー3が配置されている。
複数の圧力センサー10は、平面的に小さな円板状をなしており、溝部202に重なる部分において、中央部205から放射線状に配置されている。
温度センサー3は、平面的に棒状をなしており、中央部205から放射線状に複数本配置されている。図4に示すように、複数の圧力センサー10と、複数の温度センサー3とは、平面的に重ならないように配置されている。
【0033】
図5は、フラットスクリューの断面図である。
図5に示すように、フラットスクリュー111は、第1部分11と、第2部分21との2つの部分から構成されている。好適例では、第1部分11、第2部分21共にステンレス鋼で構成される。なお、アルミニウムで構成されることでも良い。
第1部分11は、溝形成面201を有しており、その背面に第2部分21を収納するための凹部11aを備えている。
第2部分21は、円板状の部材であり、その中央には、駆動軸が挿入される貫通穴21bが設けられている。第1部分11と第2部分21とは、不図示のボルトを含む接続機構により一体化されており、駆動軸の回転に伴ない一緒に回転する。
【0034】
そして、圧力センサー10、及び、温度センサー3は、第1部分11と第2部分21との間に配置される。
図5において、回転軸RXの左側には圧力センサー10の断面を示している。図5に示すように、圧力センサー10は、溝部202の底面の下に取付けられている。好適例では、圧力センサー10は、第1部分11の凹部11aの底面11bに設けられる。
圧力センサー10は、好適例では、圧電素子を用いた圧力センサーを用いる。圧力センサー10は、個別のディスクリート部品であっても良いし、第1部分11の凹部11aの底面11bに成膜して作り込むことであっても良い。
【0035】
図5において、回転軸RXの右側には温度センサー3の断面を示している。
図5に示すように、温度センサー3は、第1部分11の凹部11aの底面11bに設けられる。温度センサー3は、好適例では、光ファイバーによって構成されたFBG(ファイバー・ブラッグ・グレーティング)センサーを用いる。詳しくは、温度センサー3は、1本の光ファイバーの内部に形成された周期的な回折格子3aを備えた構成となっている。回折格子3aは、屈折率が変調する部分であり、回折格子3aの周期が作るブラッグ反射条件を満たす波長の光のみを反射させる。この反射光のブラッグ波長を観測することにより、温度を測定することができる。なお、温度センサー3は、歪の測定も可能である。なお、温度センサー3は、FBGセンサーに限定するものではなく、耐熱性が高い温度センサーであれば良く、例えば、熱電対センサーを用いても良い。
【0036】
これらの温度センサー3、圧力センサー10は、コントローラー230と電気的に接続されており、各センサーによる検知データは、コンピューター30の第1処理部35に送信される。第1処理部35では、各センサーが配置された部位の温度、圧力をモニターすることができる。例えば、検知した値が設定値と乖離している場合は、設定値に近づくように制御できる。また、温度センサー3、圧力センサー10は、バレル112に設置されていても良い。
【0037】
図6に戻る。
図6に示すように、バレル112の内部にも、複数の圧力センサー10、及び、温度センサー3が配置されている。なお、圧力センサー10、温度センサー3は、フラットスクリュー111に用いられる物と同じセンサーである。
図6に示すように、ヒーター113は、連通孔116を中心とした円環状のヒーター113aと、ヒーター113aよりも大径でヒーター113aを囲う同心円状のヒーター113bとから構成されている。複数の圧力センサー10は、ヒーター113a,113bと重なる位置に配置されている。
温度センサー3は2本設けられており、1本は連通孔116と、ヒーター113aとの間に円環状に配置されている。もう1本は、ヒーター113aと、ヒーター113bとの間に円環状に配置されている。
【0038】
図7は、バレル周辺部位の断面図である。
図7に示すように、バレル112は、第3部分13と、第4部分22との2つの部分から構成されている。第3部分13は、対向面212を有する円板状の部分であり、ベース部分となる第4部分22の中央に配置されている。好適例では、第3部分13、第4部分22共にステンレス鋼で構成される。なお、アルミニウムで構成されることでも良い。
図7に示すように、複数の圧力センサー10は、2つのヒーター113a,113bと重なる部分に配置されている。また、2本の温度センサー3のうち1本は、連通孔116とヒーター113aとの間に同心円状に配置されている。もう1本は、ヒーター113aとヒーター113bとの間に同心円状に配置されている。
【0039】
また、図7に示すように、シリンダー121の外側にも、圧力センサー10、及び、温度センサー3が配置されている。詳しくは、シリンダー121のバレル112側の外側には、シリンダー121の延在方向に沿って複数の圧力センサー10が配置されている。そして、シリンダー121の反対側の外側には、シリンダー121の延在方向に沿って1本の温度センサー3が配置されている。これにより、シリンダー121内の分岐流路118内における材料の状態を把握することができる。
図7において、連通孔116の下流側で分岐流路118との合流部分を含む点線で囲った部分をチェックバルブ抑え部48という。チェックバルブ抑え部48の外側にも、圧力センサー10、及び、温度センサー3が配置されている。
【0040】
***最適な成形条件の導出方法について***
前述の特許文献1のように、CAE(Computer Aided Engineering)解析を用いた流動シミュレーション技術のみで成形条件を導出した場合、品質を左右する要因の一部しか加味できず、実際の成形品における成形結果との乖離が生じる虞があった。詳しくは、射出成型における多岐に渡る変動因子、例えば、成形条件のパラメータや、部品の取り個数、金型のゲート配置、寸法値などが複合した複雑な現象に対して、シミュレーション技術のみでは、品質特性を左右する要因の一部しか定義することが出来ず、実際の成形品における成形結果との乖離が生じてしまう。加えて付帯設備毎の制御誤差や設備間における制御時差によって品質バラツキが生じ、その大小関係は条件や部品形状ごとに異なるため、従来のシミュレーション技術のみでは、最適な成形条件を導出することは困難であった。
【0041】
この問題を鑑み、本実施形態では、まず、部品の形状や材料、取り個数などの基本情報を用いてCAE解析による流動シミュレーションを行い、標準成形条件を作成する。
次いで、標準成形条件における所定のパラメータを変更した成形条件により、射出成型装置700で実際に射出成型を行い、その成形品を検査した検査データを収集する。この検査データと、所定のパラメータを変更した成形条件とを紐付けした成形品データを、変更した成形条件ごとに収集する。
そして、収集した複数の成形品データについて回帰解析、または、重回帰解析を含むデータ解析を行い、部品特有のパラメータ寄与率や、最適条件を見出し、当該部品における最適な成形条件を導出する。
【0042】
図8は、成形条件のパラメータの一例を示す一覧表である。
図8の表71は、成形装置220における成形条件のパラメータの一覧表である。
表71に示すように、パラメータは、可塑化装置欄、射出制御機構欄、及び、計量関係欄の3つに区分けされて記載されている。
可塑化装置欄には、成形装置220(図3)におけるパラメータが挙げられている。例えば、スクリュー回転数は、フラットスクリュー111の回転数である。また、バレル温度は、バレル112の温度である。その他には、せん断応力や、可塑化材料の粘度などのパラメータがある。
【0043】
射出制御機構欄には、射出制御機構120(図3)におけるパラメータが挙げられている。例えば、シリンダー温度はシリンダー121の温度であり、シリンダー内圧はシリンダー121の内部圧力である。その他には、保圧時間や、充填時間などのパラメータがある。計量関係欄には、射出制御機構120のシリンダー121、プランジャー122による計量関係のパラメータが挙げられている。例えば、計量時間、計量完了位置などのパラメータがある。
これらの成形条件のパラメータは部品ごとに異なる。各パラメータは、部品の形状や材料、取り個数などの基本情報に応じて設定される。
【0044】
図9は、部品の基本情報の一例を示す一覧表である。図10は、標準成形条件の一例を示す一覧表である。
図9の表72は、部品73の基本情報を示す一覧表である。部品73は、円板状のローラーの中心に回転軸を備えた回転コマ状の部品である。
表72に示すように、基本情報としては、部品形状とサイズ、材料、材料の型式、部品の取り個数、ゲート種類などがある。部品形状とサイズには、部品73は、ローラーの直径を示すWや、重量の基準値が記載されている。
【0045】
図10の表74は、部品73の基本情報に基づいてCAE解析による流動シミュレーションを行い生成した標準成形条件を示す一覧表である。なお、シミュレーションに限定するものではなく、その部品に適した成形条件であれば良く、例えば、類似部品の成形条件の一部を反映しても良い。
表74に示すように、標準成形条件のパラメータとしては、バレル温度、射出速度、保圧、射出時最大圧、スクリュー回転数などの具体的な数値が示されている。例えば、バレル温度は、標準成形条件の設定値が210℃となっている。
【0046】
***成形品データの収集方法***
図11は、成形品の検査データの収集方法の流れを示すフローチャート図である。図12は、成形品データの一例を示す表である。
ここでは、成形品の検査データの収集方法の流れについて、図11を主体に、適宜、他の図面を交えて説明する。なお、成形品として部品73を事例とし、部品73の基本情報、標準成形条件は、上記の通りである。
【0047】
ステップS10では、成形品の検査データを収集するために、射出成型装置700の準備をする。具体的には、成形装置220に部品73用の金型をセットし、材料乾燥機521には部品73用の材料を投入する。制御装置100のコンピューター30では、第1記憶部33の成形品データ収集プログラムが実行される。当該プログラムでは、部品73の標準成形条件におけるバレル温度を200℃~215℃の範囲で5℃刻みに変更しながら、各温度で5ショットの成形を行うものとして説明する。なお、この成形条件の変更内容は、コンピューター30の第1処理部35が受付部36として機能することにより受付け、その変更内容を射出成型装置700のコントローラー230に送信する。
【0048】
ステップS11では、制御装置100は、受付部36で受付けた変更内容に応じて成形条件を変更した成形条件をコントローラー230に送信する。なお、最初の第2成形条件は、標準成形条件からバレル温度を200℃に変更した成形条件となる。
【0049】
ステップS12では、コントローラー230は、成形装置220に変更した成形条件を設定し、成形品を成形させる。この工程が、第1制御に相当する。換言すれば、第1制御では、受付部36で受付けた変更内容に応じてパラメータを変更した第2成形条件により、成形装置220で成形品を成形させる。
【0050】
ステップS13では、運搬装置250、および、ロボット420により成形された成形品が検査装置430に移動される。
【0051】
ステップS14では、検査装置430により、成形品の外観検査、および、重量検査が行われる。具体的には、撮像部431により成形品を撮像し、撮像された画像を解析して成形品の形状を含む外観検査を行った後、重量計測部432で重量を測定する。この際、取り個数が複数の場合は、キャビティごとに検査が行われる。なお、撮像された画像の解析は、制御装置100のサーバー50で行われる。
【0052】
ステップS15では、制御装置100は、変更した成形条件において、標準成形条件と異なる変更内容として金型温度、または、バレル温度が含まれるか否か判定する。当該温度条件が含まれる場合は、ステップS17に進む。当該温度条件が含まれない場合は、ステップS16に進む。なお、部品73の場合は、バレル温度を変更しているため、ステップS17に進むことになる。
【0053】
ステップS16では、制御装置100は、変更した成形条件と、当該成形条件で成形された成形品の検査装置430による検査結果とを紐付けて成形品データとして、サーバー50の第2記憶部53に記憶させる。この工程が、第3制御に相当する。図12の表75は、成形品データの一例であり、部品73の基本情報における物性と、第2成形条件と、検査データとが紐付けされたデータとなっている。また、成形品データのインデックスは、部品ナンバー、キャビティナンバー、ショット回数となっている。なお、表75では、好適例として物性も入れているが、成形品データとしては、第2成形条件と、検査データとが紐付けされていれば良い。詳しくは後述するが、表75の検査データにおいて、形状と寸法は規格外の不良判定となっている。
換言すれば、第3制御では、第2成形条件と、第2成形条件で成形された成形品の検査装置430による検査結果とを紐付けて、第2記憶部53に記憶する。好ましくは、キャビティごとに、第2成形条件と、第2成形条件で成形された成形品の検査装置430による検査結果とを紐付けて、第2記憶部53に記憶させる。
【0054】
ステップS17では、制御装置100は、成形品が変更した成形条件で成形した1回目の成形品であるか否か判定する。1回目の成形品である場合は、ステップS18に進む。1回目の成形品ではない場合は、ステップS16に進む。ここでは、金型温度、または、バレル温度が変更された場合、温度が安定するまで時間が掛るため、当該温度変更があった際には、不安定要素を含む1回目の成形品を検査対象から外している。
換言すれば、制御装置100は、1つの成形条件ごとに複数の成形品を成形させ、第2成形条件において、標準成形条件と異なる変更内容として、金型温度、または、バレル温度が含まれる場合、第2成形条件で成形した少なくとも1回目の成形品については、検査装置430による検査を行わない。なお、1回目の成形品の検査を行っても良いが、この場合、当該検査結果は成形品データとして使用しない。
【0055】
ステップS18では、制御装置100は、成形品データ収集プログラムで設定されている成形回数に達したか否か判定する。設定回数に達した場合は、ステップS19に進む。設定回数に達していない場合は、ステップS11に戻る。部品73の場合、各温度で5ショットの成形を行う設定となっているため、5回に達したか否か判定する。
【0056】
ステップS19では、制御装置100は、成形品データ収集プログラムで設定されている変更内容に達したか否か判定する。変更内容に達した場合は、当該プログラムを終了する。変更内容に達していない場合は、ステップS20に進む。部品73の場合、バレル温度を200℃~215℃の範囲で5℃刻みに変更する変更内容のため、215℃での成形品データの収集が終了したか否か判定する。
【0057】
ステップS20では、制御装置100は、変更内容に従いコントローラー230の成形条件を変更する。この工程が、第2制御に相当する。部品73の場合、バレル温度が200℃の第2成形条件が終了した後、次は、バレル温度を205℃の第3成形条件に変更される。換言すれば、第2制御では、第1制御で変更したパラメータと同じパラメータを変更した第3成形条件により、成形装置220で成形品を成形させる。そして、第4制御では、第3成形条件と、第3成形条件で成形された成形品の検査結果とを紐付けて、第2記憶部53に記憶する。これらの処理を繰り返して、部品73の場合、バレル温度200℃から215℃までの範囲で5℃刻みの成形条件ごとに複数ショットによる成形品データの収集が行われる。
【0058】
***成形品データによる分析***
図13は、バレル温度と検査結果との相関関係を示す表である。図14は、バレル温度と測定寸法との相関関係を示すグラフ図である。図15は、金型温度と測定寸法との相関関係を示すグラフ図である。
図13の表80は、部品73の第2成形条件におけるバレル温度を200℃から5℃刻みで215℃まで変化させた際における検査結果の一覧表である。なお、標準成形条件のバレル温度は210℃である。
【0059】
バレル温度が200℃のときの形状の検査結果はNGとなっている。画像76は、この際の成形品の撮像画像であり、良品の画像78との比較で解るように、輪郭が歪んで、内部の模様も不均一となっていることが解る。この原因は、材料の充填不足によるものであると推測される。また、部品73の円板部分の直径寸法も規格外となっている。
バレル温度が205℃のときの形状の検査結果もNGとなっている。画像77は、この際の成形品の撮像画像であり、画像76よりは改善されているものの、輪郭が歪みや、内部の模様の不均一が観察される。原因は材料の充填不足と推測され、直径寸法も規格外となっている。なお、このような不良が特定のキャビティで生じる場合、成形型12に異常がある旨の出力を、例えば、コンピューター30の表示部31に行っても良い。換言すれば、制御装置100は、複数回の第2成形条件による成形において、特定のキャビティにおいて不合格品が生じる場合、成形型12に異常がある旨の出力をする。
【0060】
バレル温度が210℃のときの形状の検査結果はGOODとなっている。画像78は、この際の成形品の撮像画像であり、輪郭がきれいな円で、内部の模様も乱れなく観察されている。材料は十分に充填されており、直径寸法も規格内となっている。
バレル温度が215℃のときの形状の検査結果はGOODとなっている。画像79は、この際の成形品の撮像画像であり、画像78と同様に、輪郭がきれいな円で、内部の模様も乱れなく観察されている。材料は十分に充填されており、直径寸法も規格内となっている。
【0061】
図14のグラフ81は、上記のバレル温度と測定寸法との相関関係をグラフ化したものであり、横軸にバレル温度(℃)、縦軸に直径寸法(mm)を取っている。なお、直径寸法の規格値は、6.00±0.05mmである。
グラフ81に示すように、バレル温度が205℃のときに、直径寸法が規格値の下限以下になっていることが解る。つまり、バレル温度は、標準成形条件の設定値よりも5℃下がっただけで不良が生じ兼ねず、注意が必要なパラメータであることが解る。また、バレル温度と直径寸法との相関関係は、回帰分析により求めることができる。
【0062】
図15のグラフ82は、金型温度と測定寸法との相関関係をグラフ化したものであり、横軸に金型温度(℃)、縦軸に直径寸法(mm)を取っている。部品73の第2成形条件における金型温度を40℃から10℃刻みで80℃まで変化させた際における検査結果を示している。なお、標準成形条件の金型温度は70℃であり、直径寸法の規格値は6.00±0.05mmである。
グラフ82に示すように、金型温度が変化しても直径寸法の変化は僅かであり、全て規格値内に収まっている。また、金型温度と直径寸法との相関関係は、回帰分析により求めることができる。ここで、グラフ81とグラフ82とを比較すると、寸法に関してより寄与率が高いパラメータはバレル温度であることが解る。
【0063】
上記では、一例として、バレル温度と金型温度とを用いて説明したが、他のパラメータにおいても同様な分析を行うことができる。具体的には、パラメータと検査データとの相関関係は、回帰分析、または、重回帰解析により求めることが可能であり、解析結果を用いて、規格値や目標品質に対する寄与率が高いパラメータを演算、及び、解析により特定できる。なお、本実施形態では、サーバー50の演算部52で当該演算、及び、解析が行われる。そして、制御装置100は、第2成形条件と検査結果との相関関係、および、第2成形条件における寄与率を、例えば、表示部31に表示する。換言すれば、制御装置100は、第2成形条件と検査結果との相関関係、および、第2成形条件における寄与率の少なくとも一方を出力する。
なお、複数のパラメータの組み合わせを変更しても良い。例えば、金型温度とバレル温度の両パラメータの組み合わせを少しずつ変更しながら、成形品データを収集しても良い。
【0064】
図16は、パラメータごとの成形条件に対する寄与率を示すグラフ図である。
図16の表83では、横軸には成形条件のパラメータを取り、縦軸には成形条件に対する寄与率(%)を示している。表83は、部品73とは異なる2個取りの部品において、パラメータごとに、上記の成形品データ収集プログラムを実行し、複数の成形品データを収集し蓄積した後、当該蓄積データを用いてサーバー50で演算、及び、解析を行って導出したグラフである。寄与率(%)が大きい程、寄与率が高いパラメータとなる。棒グラフ84はキャビティ1で、棒グラフ85はキャビティ2を示している。
表83に示すように、最も棒グラフが高いパラメータは、射出終了位置(mm)である。射出終了位置は、材料の注入量を表すパラメータであり、この部品においては、重点管理すべきパラメータであることが解る。これを踏まえて、より最適な成形条件を導出することができる。つまり、部品の形状や品質特性によってパラメータ寄与率や条件振りの優先度を変えて成形条件を決めることにより、製品に合わせた条件作りを行うことができる。または、寄与率が高いパラメータを特定した後、より最適な成形条件を第1記憶部33に記憶させておき、当該成形条件を読み出して設定することもできる。換言すれば、制御装置100は、成形品の形状と材料の物性に基づいて、第1記憶部33から寄与率の高い第2成形条件を読み出し、受付部36に送信する。
【0065】
以上、述べた通り、本実施形態の射出成形システム800によれば、以下の効果を得ることができる。
射出成形システム800は、成形条件に従って、成形型12に材料を吐出して成形品を射出成形する成形装置220と、成形品の形状、重量の少なくともいずれかを検査する検査装置430と、成形品を成形装置220から検査装置430へと搬送するロボット420と、制御装置100と、を備え、制御装置100は、第1記憶部33及び第2記憶部53と、予め定められた成形条件である標準成形条件に含まれるパラメータの変更内容を受付ける受付部36と、を有し、受付部36で受付けた変更内容に応じてパラメータを変更した第2成形条件により、成形装置220で成形品を成形させる第1制御と、第1制御で変更したパラメータと同じパラメータを変更した第3成形条件により、成形装置220で成形品を成形させる第2制御と、第2成形条件と、第2成形条件で成形された成形品の検査装置430による検査結果とを紐付けて、第2記憶部53に記憶する第3制御と、第3成形条件と、第3成形条件で成形された成形品の検査結果とを紐付けて、第2記憶部53に記憶する第4制御と、を実行し、第3成形条件は、第2成形条件とは異なる条件である。
【0066】
好適例では、部品の形状や材料、取り個数などの基本情報を用いてCAE解析による流動シミュレーションを行い、標準成形条件を作成する。
そして、標準成形条件における所定のパラメータを変更した成形条件により、射出成型装置700で実際に射出成型を行い、その成形品を検査した検査データを収集する。この検査データと、所定のパラメータを変更した成形条件とを紐付けした成形品データを、変更した成形条件ごとに収集する。収集した複数の成形品データについて回帰解析、または、重回帰解析を含むデータ解析を行い、部品特有のパラメータ寄与率や、最適条件を見出し、当該部品における最適な成形条件を導出することができる。つまり、変更した成形条件により実際に成形した成形品による成形品データから得られた情報を、標準成形条件に加味することで、実際の成形品における成形結果との乖離が少ない、より最適な成形条件を生成することができる。
従って、より最適な成形条件を導き出すことが可能な射出成形システム800を提供することができる。
【0067】
また、制御装置100は、変更したパラメータと検査結果との相関関係、および、変更したパラメータの検査結果への寄与率の少なくとも一方のデータを出力する。
これによれば、相関関係、または、寄与率を用いることにより、より最適な成形条件を導き出すことができる。
【0068】
また、制御装置100は、変更内容に応じてパラメータを変更した複数の成形条件ごとに、成形条件と、成形条件で成形された成形品の検査結果と、材料の物性とを紐付けて、第2記憶部53に記憶させる。
これによれば、より最適な成形条件を導き出すことができる。
【0069】
また、第1記憶部33には、変更内容に応じてパラメータを変更した複数の成形条件が記憶されており、制御装置100は、成形品の形状と材料の物性に基づいて、第1記憶部33から寄与率の最も高いパラメータを読み出し、受付部36に送信する。
これによれば、より最適な成形条件を導き出すことができる。
【0070】
また、制御装置100は、変更内容に応じてパラメータを変更した複数の成形条件ごとに、複数回に亘って成形品を成形させ、変更内容に応じて変更するパラメータとして、金型温度、または、バレル温度が含まれる場合、少なくとも1回目の成形品については、検査装置430による検査を行わない。
これによれば、有効な検査データを効率良く収集することができる。
【0071】
また、成形型12は、複数のキャビティを有しており、制御装置100は、前記変更内容に応じて前記パラメータを変更した複数の成形条件ごとに、複数のキャビティごとに成形品を成形し、キャビティごとに、成形条件と、成形条件で成形された成形品の検査装置430による検査結果とを紐付けて、第2記憶部53に記憶させる。
これによれば、複数個取りの部品においても、より最適な成形条件を導き出すことができる。
【0072】
また、制御装置100は、パラメータを変更した複数の成形条件による成形において、特定のキャビティにおいて不合格品が生じる場合、成形型12に異常がある旨の出力をする。
これによれば、成形型12の異常を報知できる。
【符号の説明】
【0073】
3…温度センサー、3a…回折格子、10…圧力センサー、11…第1部分、11a…凹部、11b…底面、12…成形型、12M…可動型、12S…固定型、13…第3部分、21…第2部分、21b…貫通穴、22…第4部分、30…コンピューター、31…表示部、32…操作部、33…第1記憶部、35…第1処理部、36…受付部、40…LAN、41…通信ケーブル、48…チェックバルブ抑え部、50…サーバー、51…第2処理部、52…演算部、53…第2記憶部、71,72…表、73…部品、74,75…表、76~79…画像、80…表、81,82…グラフ、83…表、84…棒グラフ、85…棒グラフ、91…ホッパー、100…制御装置、110…可塑化装置、111…フラットスクリュー、112…バレル、113…ヒーター、113a…ヒーター、113b…ヒーター、114…ノズル、115…スクリュー駆動部、116…連通孔、117…キャビティ、118…分岐流路、120…射出制御機構、121…シリンダー、122…プランジャー、123…プランジャー駆動部、130…型締装置、131…成形型駆動部、132…ボールネジ、200…射出成型ユニット、201…溝形成面、202…溝部、203…材料投入口、204…凸条部、205…中央部、211…案内溝、212…対向面、220…成形装置、230…コントローラー、235…成形型温調器、240…取り出し装置、250…運搬装置、260…ゲートカット装置、400…検査収納ユニット、406…支持棒、407…押出機構、408…エジェクターピン、409…支持板、410…検査ステージ、411…バネ、412…押出板、413…スラストベアリング、420…ロボット、430…検査装置、431…撮像部、432…重量計測部、440…スタッキング機構、441…第1昇降装置、442…第2昇降装置、500…材料供給ユニット、521…材料乾燥機、522…材料供給部、700…射出成型装置、800…射出成形システム。
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