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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127210
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】時計モジュール及び電子時計
(51)【国際特許分類】
   G04R 60/10 20130101AFI20240912BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20240912BHJP
   G04G 21/04 20130101ALI20240912BHJP
【FI】
G04R60/10
H01Q1/22 Z
G04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036201
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 宗隆
(72)【発明者】
【氏名】松江 剛志
(72)【発明者】
【氏名】三輪 順
【テーマコード(参考)】
2F002
5J047
【Fターム(参考)】
2F002AA12
2F002AB03
2F002AB06
2F002AC01
2F002AC03
2F002BB04
2F002GA06
5J047AA02
5J047AA12
5J047EF02
(57)【要約】
【課題】板状のアンテナの感度低下を抑えることのできる時計モジュール及び電子時計を提供する。
【解決手段】時計モジュールは、第1面を有する回路基板(13)と、回路基板(13)の第1面から離隔する方向に延びる板状のアンテナ板(17)と、金属部材と、を備える。アンテナ板(17)の板面をアンテナ板(17)の法線方向のうち外向きへ延長した第1範囲と、第1面の上方から見た平面視でアンテナ板(17)と重なる第2範囲とには、金属部材が位置しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する回路基板と、
前記回路基板の前記第1面から離隔する方向に延びる板状のアンテナと、
金属部材と、
を備え、
前記アンテナの板面を当該アンテナの法線方向のうち外向きへ延長した第1範囲と、前記第1面の上方から見た平面視で前記アンテナと重なる第2範囲とには、前記金属部材が位置しない
時計モジュール。
【請求項2】
前記金属部材には、前記回路基板を含む、平面視方向に重なる複数の構造物を固定する固定部材が含まれ、
前記固定部材は、前記回路基板に沿った方向の平面部と、前記複数の構造物のうち少なくともいずれかの側面に係止される係止部と、を備え、
前記係止部は、前記第1範囲外に位置する、
請求項1記載の時計モジュール。
【請求項3】
前記金属部材には、前記回路基板を含む、平面視方向に重なる複数の構造物を固定する固定部材が含まれ、
前記固定部材は、前記回路基板に平行に広がる平面部分を有し、前記平面部分は、前記第1範囲及び前記第2範囲に位置しない、
請求項1記載の時計モジュール。
【請求項4】
前記アンテナの前記板面を含む平面内には、前記金属部材が含まれない、請求項1記載の時計モジュール。
【請求項5】
前記回路基板の前記第1面の上方には、バッテリが位置し、
平面視で、少なくとも前記アンテナと前記バッテリとの間の第3範囲には、前記金属部材が含まれない、
請求項1記載の時計モジュール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の時計モジュールと、
前記時計モジュールを収容する筐体と、
を備える電子時計。
【請求項7】
前記筐体は、開口を有するベゼルと、前記時計モジュールの少なくとも側方を覆うケース本体とを含み、
前記ベゼルは金属であり、前記第2範囲に位置しない、
請求項6記載の電子時計。
【請求項8】
前記ケース本体は、樹脂であり、前記第1範囲に位置する部分を含む、請求項7記載の電子時計。
【請求項9】
前記筐体は、前記時計モジュールの外面に沿った部分を有して位置し、少なくとも前記時計モジュールを支える内装カバーを含み、
前記内装カバーは、金属であり、前記第2範囲に位置しない、
請求項6記載の電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時計モジュール及び電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の電子機器、特に腕に装着するなどの小型軽量が要求される電子腕時計などでは、通信電波の送受信に用いるアンテナ素子が他の金属部材などの影響を受けやすい。したがって、このような電子機器では、アンテナ素子の配置スペースに工夫が必要とされる。
【0003】
従来、板状のアンテナが用いられることによりアンテナの実質的な大きさを広げて、感度を稼ぐ技術が知られている。一方、特許文献1では、基板の表示面のある側とは反対側に位置する平面アンテナ(パッチアンテナ)の周囲に発生する電界に影響する非配置範囲内に、受信回路や制御回路などの金属部品が位置しないように配置設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-146240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子時計のようなサイズに余裕がないものでは、従来の配置では、基板上の板状のアンテナから単純に金属部品を全て離隔させるのが難しく、離隔させる距離を妥協するとアンテナの感度低下が十分に抑えられないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、板状のアンテナの感度低下を抑えることのできる時計モジュール及び電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
第1面を有する回路基板と、
前記回路基板の前記第1面から離隔する方向に延びる板状のアンテナと、
金属部材と、
を備え、
前記アンテナの板面を当該アンテナの法線方向のうち外向きへ延長した第1範囲と、前記第1面の上方から見た平面視で前記アンテナと重なる第2範囲とには、前記金属部材が位置しない
時計モジュールである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、板状のアンテナの感度低下を抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の時計モジュールを含む電子時計を示す図である。
図2】時計モジュールについて説明する図である。
図3】時計モジュールについて説明する図である。
図4】アンテナの構造及び位置関係について説明する図である。
図5】時計モジュールの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の時計モジュールを含む電子時計1を示す図である。図1(a)は、電子時計1の正面図である。図1(b)は、図1(a)の断面線AAにおける断面図である。この断面図では、説明のため、後述のバッテリ16(図3参照)を省略している。
なお、以下の正面図及び底面図は、いずれも上側が12時方向である。正面図と底面図では、3時方向と9時方向とが左右反転して示される。
【0011】
電子時計1は、腕時計形状であり、時計モジュール10と、ケーシング12(筐体)と、風防ガラス19と、を備える。ケーシング12の側面には、当該ケーシング12を貫通して押しボタンスイッチBが位置している。
【0012】
ケーシング12は、時計モジュール10を内部に収容して保護する。ケーシング12は、電子時計1の上面(表示面)側が表示部11(デジタル表示部)の表示画面に開放された開口12aとなっている。この開口12aを介して、表示画面への表示内容が外側から視認可能となっている。ケーシング12の上端は、透明な風防ガラス19により封止されている。ケーシング12は、ベゼル121と、ケース本体122と、裏蓋123と、内装カバー124と、を含む。電子時計1は、ケーシング12の周囲に装飾用途などに係る外装部材を更に有していてもよい。
なお、ケーシング12の下面側は、開放されていなくてもよい。この場合には、ケーシング12は、裏蓋123を含まない。
【0013】
ベゼル121は、電子時計1の上面側外面に露出して位置している。ベゼル121は、例えば、落下時の衝撃を緩和する。
ケース本体122は、時計モジュール10の少なくとも側方を覆っている。また、ケース本体122は、表示画面の表示に係る上下方向(12時方向及び6時方向)に係止部を有する。係止部は、電子時計1を腕に装着するためのバンドなどが装着される。
内装カバー124は、時計モジュール10の開口12aの側の角付近に、当該時計モジュール10の外面に沿った部分を有して位置している。内装カバー124は、時計モジュール10をケース本体122に対して固定、支持している。なお、内装カバー124は、ケース本体122と一体形成されていてもよい。
【0014】
ケーシング12は、絶縁性のものであり、例えば、樹脂である。樹脂には、強度、デザインや装飾などに応じてカーボンやシリコンなどが含まれていてもよい。なお、ベゼル121及び/又は裏蓋123は、ユーザを介して接地するために導体、すなわち金属部材などであってもよい。また、ベゼル121が後述のアンテナ板17とは異なる周波数の電波を受信又は送信するアンテナとして利用される場合には、ベゼル121は、金属導体である。
【0015】
時計モジュール10は、表示部11と、回路基板13と、上部収容部130と、固定部材14(回路押さえ部材)と、振動モータ15と、バッテリ収容部160と、アンテナ板17(板状のアンテナ)などを有する。
【0016】
表示部11は、特に限定するものではないが、ここではデジタル表示画面を有し、デジタル表示を行う。デジタル表示画面は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイなどである。
【0017】
図2及び図3は、時計モジュール10について説明する図である。
図2(a)は、時計モジュール10の正面図である。時計モジュール10は、上面側に表示部11の表示画面が位置している。表示画面は、各画素の電極及び配線といった金属部品を含む。表示画面は、時計モジュール10の回路基板13の当該表示面の側を収容して、表示画面を保持する上部収容部130により固定保持されている。上部収容部130の一部又は全部は、金属部材であってもよい。
固定部材14は、時計モジュール10において、回路基板13の一方の面の上方から見た平面視方向に重なる各構成(複数の構造物)をまとめて固定する。固定部材14の側面には、板ばねが位置している。板ばねは、上述の押しボタンスイッチBの押下に移動して変形し、押下操作を電気信号に変換するのに用いられる。
【0018】
図2(b)は、回路基板13の上面を見た図である。
回路基板13は、積層基板であってもよく、例えば、内層に回路配線が位置している。回路基板13の上面には、回路配線に接続された多数の電子部品などが位置している。電子部品は、原則的に上面側、すなわち、表示部11のある側に位置している。電子部品には、制御IC132と、通信IC133と、アンテナ調整回路134などを含む。
【0019】
制御IC132は、電子時計1の動作を統括制御するプロセッサを含む。制御IC132は、現在時刻の計数、及び現在時刻の表示を含む表示部11による表示動作を制御する。
【0020】
通信IC133は、アンテナ板17(図3参照)を用いて受信された電波を復調して制御IC132などに出力し、及び/又はアンテナ板17を用いて送信する信号を変調してアンテナ板17などに出力する。
【0021】
アンテナ調整回路134は、例えば、コイルなどであり、受信周波数のアンテナ板17の実効長を短縮して、波長に比してサイズの小さいアンテナ板17での電波受信を可能とする。受信対象は、例えば、近距離無線通信、例えば、ブルートゥース(登録商標)やWiFiに係る2.4GHz帯の電波などである。
【0022】
図3は、時計モジュール10の下面(第1面)の側を見た図である。時計モジュール10の下面側略中央には、バッテリ16が位置している。また、時計モジュール10の下側12時方向には、振動モータ15が位置している。バッテリ16は、バッテリ収容部160によって固定され、各電極が回路基板13の電力供給線などに接続されている。バッテリ16は、ここでは、固定された二次電池である。しかしながら、バッテリ16は、着脱交換可能なボタン型などの乾電池であってもよい。バッテリ16の形状は、平面視矩形でなくてもよい。振動モータ15は、回転動作することで振動を発生する錘などを有する。バッテリ収容部160の一部は、金属であってもよい。
【0023】
回路基板13の下面上には、平面視(以下、平面視は、上記一方の面とは反対側から見た底面視と同一として説明する)でバッテリ16及び振動モータ15がなす角スペースであって、バッテリ収容部160の外側にアンテナ板17が位置している。アンテナ板17は、回路基板13を貫通する配線により、回路基板13の上面のアンテナ調整回路134と電気的につながっている。
【0024】
上述のように、回路基板13の下面上には、平面視で振動モータ15及びバッテリ16に対してアンテナ板17の反対側に位置している接続端子や微小な電子部品を除き、電子部品が位置していない。アンテナ板17の周囲、少なくとも平面視でバッテリ16とアンテナ板17との間(第3範囲)には、電子部品が位置しないように定められている。
【0025】
また、時計モジュール10の裏面側から側面を部分的に覆って、固定部材14(回路押さえ部材が)時計モジュール10を一体保持している。固定部材14は、金属部材であり、筐体接地面をなしていてもよい。
【0026】
固定部材14は、平面視で振動モータ15、バッテリ16及びアンテナ板17の位置範囲とそれぞれ重ならないように孔部や切り欠きなどを有して回路基板13に略平行に広がる平面部分を有する。また、固定部材14は、側面に係止部141を有する。係止部141が上部収容部130(複数の構造物の少なくともいずれか)の突起などに係止されることで、時計モジュール10全体が固定保持される。係止部141は、特には限られないが、上記押しボタンスイッチBの押下操作を受けて変形する板ばね2枚の共通の根元部分であってもよい。
【0027】
図4は、アンテナの構造及び位置関係について説明する図である。
図4(a)の斜視図に示すように、アンテナ板17は、回路基板13の下面上に直立している、言い換えると、下面から離隔する方向に直立して延びる板状の導電性部材である。すなわち、板面の幅及び高さは、厚さに比して十分に大きい。アンテナ板17の高さは、回路基板13の下面に接している長さよりも短い。このように、アンテナ板17は、回路基板13の垂直方向に高さを有することで、電波送信面及び/又は受信面の面積を得ている。アンテナ板17は、安定して直立可能な剛性を有し、例えば、黄銅(真鍮)である。
【0028】
アンテナ板17は、回路基板13に沿った脚部171を有する。脚部171は、それぞれ回路基板13上の電極パッド135に接続されている。電極パッド135のうち一方は、回路基板13を貫通する配線(スルーホールなど)を介してアンテナ調整回路134と電気的につながっている。電極パッド135のうち他方は、どこにもつながっていない。したがって、アンテナ板17は、モノポールアンテナである。脚部171により、アンテナ板17が回路基板13から直立状態で安定的に支持される。
【0029】
2か所の脚部171の間には、位置合わせ部172がある。位置合わせ部172は、アンテナ板17を回路基板13に接合する際に、当該位置合わせ部172が両側の電極パッド135に接触しないように位置合わせされるための部分である。回路基板13は、位置合わせ部172の位置と合わせて表面のレジストが除去されて、接合位置がより調整しやすくされていてもよい。
【0030】
上述のように、アンテナ板17にアンテナ調整回路134が接続されていることで、アンテナ板17の板面は、送受信周波数のλ/8などよりも短くなっている。すなわち、アンテナ調整回路134により、アンテナ板17のサイズの小型化が図られている。
【0031】
アンテナ板17の板面からその法線方向外向きに延長した範囲(10時半方向の第1範囲)、すなわち正面には、他に金属部分が位置しない。時計モジュール10の金属部分には、回路基板13上の電子部品、固定部材14、振動モータ15などの他、上部収容部130、バッテリ収容部160や表示部11のそれぞれ一部又は全部などが含まれていてもよい。また、時計モジュール10以外の電子時計1の金属部分には、ケーシング12(ベゼル121、ケース本体122、裏蓋123や内装カバー124)などが含まれる。これにより、アンテナ板17による電波の送受信に係る電界が他の金属部分により乱されるのが抑制される。特に、固定部材14のうち側面に伸びる係止部141がアンテナ板17の板面の法線方向外向きの範囲に位置しないことで、電波の送受信を阻害しにくくなる。
【0032】
また、上記のように平面視でアンテナ板17と重なる位置には、固定部材14が位置していない。更に、図4(b)で示すように、表示画面は、平面視でアンテナ板17の位置範囲と重ならない。すなわち、時計モジュール10は、平面視でアンテナ板17と重なる範囲(第2範囲)には、金属部材が位置しない。言い換えると、アンテナ板17の板面を含む平面において、少なくとも時計モジュール10の上下方向には、時計モジュール10の他の金属部品が位置しない。なお、本実施形態の電子時計1では、時計モジュール10の外部の構成である裏蓋123や内装カバー124などは、第2範囲に位置している部分を含む。
【0033】
[変形例]
図5には、時計モジュール10の変形例を示す。図5(a)は、変形例の電子時計1を側面から見た図である。この図5(a)は、アンテナ板17の面に沿った方向から見た図である。
【0034】
上記実施形態とは、アンテナ板17の左右方向、すなわち、図5(a)の表示面に対して手前/奥行き方向にも金属部品が位置しない点が異なる。上記実施形態では、アンテナ板17の板面内で、図3の左上側に係止部141が位置していた。この変形例では、この係止部141が除去又は移動されている。したがって、時計モジュール10のアンテナ板17の板面に沿った(第1面を含む)平面内には、金属部品が含まれない。
【0035】
上記の変形例の構造の時計モジュール10によれば、時計モジュール10内の金属部品が、アンテナ板17による電波送受信に対し、より悪影響を及ぼしにくくなる。
【0036】
図5(b)は、他の変形例の電子時計1におけるケーシング12とアンテナ板17の位置関係を示す平面図である。
この変形例の電子時計1では、ケーシング12、特に内装カバー124が平面視でアンテナ板17と重なっていない。また、この変形例では、図示略の裏蓋123は、樹脂などの非金属部材である。すなわち、アンテナ板17に対し、第2範囲には、時計モジュール10内の金属部分だけではなく、電子時計1の部品も第2範囲に位置していないことになる。これにより、電子時計1では、より板状アンテナによる電波の送受信感度を向上させることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態の時計モジュール10は、下面(第1面)を有する回路基板13と、回路基板13の下面から離隔する方向に直立して延びる板状のアンテナ板17と、金属部材としての回路基板13上の電子部品や固定部材14などを備える。アンテナ板17の板面を当該アンテナ板17の法線方向のうち外向きへ延長した第1範囲と、下面の上方(底面側)から見た平面視(底面視)でアンテナ板17と重なる第2範囲とには、金属部材が位置しない。
このように、時計モジュール10は、アンテナ板17を回路基板13上に立てて配置している。時計モジュール10は、アンテナ板17に対して回路基板13の上下方向だけではなく、正面方向(板面の法線方向)からも金属部材を除外した構造としている。これにより、裏蓋と表示画面とに挟まれて送受信感度を上げにくい電子時計1において、側方から効率よく電波を受信/送信させることが可能になる。また、回路基板13の周縁付近に直立させることで、その正面から他の金属部品を除外することが従来のアンテナ配置よりも容易になる。
【0038】
また、金属部材には、回路基板13を含む、上下方向に重なる複数の構造物(バッテリ収容部160や上部収容部130)を固定する固定部材14が含まれる。固定部材14は、回路基板13に沿った方向の平面部と、複数の構造物のうち少なくともいずれかの側面に係止される係止部141と、を備える。係止部141は、アンテナ板17の正面方向から外れて位置している。
このように、固定部材14もアンテナ板17の位置を外して固定される、又は、固定部材14の係止部141の位置を外してアンテナ板17を設けることで、アンテナ板17による電波の送受信感度を適切に向上させることができる。
【0039】
また、金属部材には、回路基板13を含む、平面視方向に重なる複数の構造物を固定する固定部材14が含まれれる。固定部材14は、回路基板13に平行に広がる平面部分を有し、この平面部分は、上記の第1範囲及び第2範囲に位置しない。このように固定部材14がアンテナ板17の電波送受信に対して影響の少ない形状及び位置関係とされることで、時計モジュール10は、アンテナ板17による電波の送受信感度を適切に向上させることができる。
【0040】
また、アンテナ板17の板面を含む平面内には、金属部材が含まれない。すなわち、直立しているアンテナ板17の上下に加えて、左右にも、金属部材がないので、送受信電波に係る電磁界がより影響を受けにくくなる。これにより、時計モジュール10は、より電波の送受信の感度を向上させることができる。
【0041】
また、回路基板13の下面の上方(底面側)には、バッテリ16が位置する。平面視で、少なくともアンテナ板17とバッテリ16との間の範囲には、金属部材が含まれない。
このように、上記位置関係の範囲に限らず、アンテナ板17の周囲には、金属部材、特に回路基板13上の電子部品が位置しないように配置され得る。したがって、時計モジュール10は、より送受信電波への金属の影響を低減させて、適切に電波の送受信が可能となる。
【0042】
また、本実施形態の電子時計1は、上記の時計モジュール10と、時計モジュール10を収容するケーシング12と、を備える。このような電子時計1によれば、小型の電子機器であってもより安定して電波の送受信が可能となる。
【0043】
また、ケーシング12は、開口を有するベゼル121と、時計モジュール10の少なくとも側方を覆うケース本体122とを含む。ベゼル121は金属であり、第2範囲に位置しない。このようにアンテナ板17の板面に沿った上下方向に金属であるベゼル121が位置しない位置関係やベゼル121の形状とすることで、電子時計1は電波の送受信に係る感度の低下を抑えることができる。
【0044】
また、ケース本体122は、樹脂であり、第1範囲に位置する部分を含む。ケース本体122が金属部材ではないことで、電子時計1は、アンテナ板17による電波の送受信に影響しない。特に、ケース本体122が電波の送受信に係る感度を低下させないので、電子時計1は、より安定して電波の送受信を行うことができる。
【0045】
また、ケーシング12は、時計モジュール10の外側に位置し、少なくとも時計モジュール10を支える内装カバー124を含む。内装カバー124は、金属であり、第2範囲に位置しない。このように、電子時計1は、更に内装カバー124を有して、時計モジュール10をケース本体122に対して固定、支持させる場合がある。このような場合にも、内装カバー124の形状や内装カバー124とアンテナ板17との位置関係を適切に定めることで、電子時計1は、電波の送受信感度の低下を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、アンテナ板17が矩形であるものとして説明したが、これに限られない。多少角が丸められたりしていてもよい。また、アンテナ板17は、回路基板13の裏面(第1面)に対して多少傾いていてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、アンテナ板17の一箇所のみがアンテナ調整回路134につながるモノポールアンテナであるとして説明したが、これに限られるものではない。アンテナ板17は、ダイポールアンテナに利用されるものであってもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、回路基板13の下面側には、平面視でバッテリ16を挟んでアンテナ板17の反対側に多少の電子部品があってもよいとしたが、これに限られない。回路基板13の下面には、電子部品がない(外部へのコネクタは電子部品から除外されてもよい)構造とすることで、より電波の送受信感度を向上させることができる。
【0049】
また、アンテナ板17の材質は、電子時計1への衝撃などによらず直立状態が維持可能なものであり、必要な電気伝導度を有するものであれば、特には限られない。
【0050】
また、アンテナ板17は、時計モジュール10の中心から放射方向と法線方向とが一致する向きではなくてもよい。ケーシング12の内側面に対して傾いた向きであってもよい。
【0051】
また、アンテナ板17を含む通信部は、電波の送受信のうちいずれかのみを行うものであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0052】
1 電子時計
10 時計モジュール
11 表示部
12 ケーシング
12a 開口
13 回路基板
14 固定部材
15 振動モータ
16 バッテリ
17 アンテナ板
19 風防ガラス
121 ベゼル
122 ケース本体
123 裏蓋
124 内装カバー
130 上部収容部
132 制御IC
133 通信IC
134 アンテナ調整回路
135 電極パッド
141 係止部
160 バッテリ収容部
171 脚部
172 位置合わせ部
B 押しボタンスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5