(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127211
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】連続焼鈍ライン及び連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法
(51)【国際特許分類】
B21B 38/00 20060101AFI20240912BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20240912BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B21B38/00 F
G01N21/892 B
B21C51/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036203
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小松 鈴奈
(72)【発明者】
【氏名】大野 紘明
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB01
2G051AB07
2G051AC21
2G051DA06
2G051EA14
2G051EC01
(57)【要約】
【課題】光沢ムラに起因する誤検出を抑制して連続焼鈍ラインよりも前の工程で生じた表面欠陥を検出することができ、また、連続焼鈍ラインで生じる表面欠陥を検出することができる連続焼鈍ライン及び連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】圧延工程を経た鋼板1に対して急速冷却することによって高張力鋼板を製造する焼鈍炉21を備えている連続焼鈍ライン100であって、鋼板1の表面欠陥を検出する第一検出装置30及び第二検出装置31と、鋼板1を洗浄する洗浄設備4とを備え、第一検出装置30は鋼板1の搬送方向で焼鈍炉21の上流側であってかつ洗浄設備4の下流側に設けられ、圧延工程において鋼板1に生じた表面欠陥を検出し、第二検出装置31は鋼板1の搬送方向で焼鈍炉21の下流側に設けられ、焼鈍炉21において鋼板1に生じた表面欠陥を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延工程を経た鋼板に対して急速冷却することによって高張力鋼板を製造する焼鈍炉を備えている連続焼鈍ラインであって、
前記鋼板の表面欠陥を検出する第一検出装置、及び、第二検出装置と、
前記鋼板を洗浄する洗浄設備とを備え、
前記第一検出装置は、前記鋼板の搬送方向で前記焼鈍炉の上流側であってかつ前記洗浄設備の下流側に設けられており、前記圧延工程において前記鋼板に生じた表面欠陥を検出し、
前記第二検出装置は、前記鋼板の搬送方向で前記焼鈍炉の下流側に設けられており、前記焼鈍炉において前記鋼板に生じた表面欠陥を検出する
連続焼鈍ライン。
【請求項2】
前記第二検出装置は、前記第一検出装置によって検出した第一検出情報と、前記第二検出装置によって検出した第二検出情報とに基づいて前記焼鈍炉において前記鋼板に生じた表面欠陥を判別する
請求項1に記載の連続焼鈍ライン。
【請求項3】
前記第一検出装置は、前記鋼板の表面欠陥のうち、少なくとも模様状欠陥、及び、凹凸欠陥を検出するように構成されており、
前記第二検出装置は、前記鋼板の表面欠陥のうち、少なくとも前記鋼板の表面に付着した異物、前記焼鈍炉内で前記鋼板を搬送する時に前記鋼板の表面に生じた搬送疵を検出するように構成されている
請求項1または2に記載の連続焼鈍ライン。
【請求項4】
圧延工程を経た鋼板に対して急速冷却することによって高張力鋼板を製造する焼鈍炉を備えている連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法であって、
前記鋼板の搬送方向で洗浄設備の下流側であってかつ前記焼鈍炉の上流側に設けられている第一検出装置によって前記圧延工程において前記鋼板に生じた表面欠陥を検出する第一検出工程と、
その後に、前記搬送方向で前記焼鈍炉の下流側に設けられている第二検出装置によって前記焼鈍炉において前記鋼板に生じた表面欠陥を検出する第二検出工程とを有する
連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続焼鈍ライン及び連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高張力鋼板(高張力冷延鋼板と称されることもある。)の需要が増大しており、高張力鋼板の製造に有利な急速冷却技術が重要となっている。高張力鋼板の製造方法のうち、特に加熱した鋼板を冷却水に浸漬する水焼入れ法は最も冷却速度が速い。また、水焼入れ法では、マルテンサイト変態により強度を確保するため、強度確保のための合金元素の添加量を少なくできる。したがって、他の製造方法と比較して安価に高張力鋼板の製造が可能となっている。しかしながら、水焼入れ法では、急冷による鋼板の収縮や、マルテンサイト変態に伴う鋼板の膨張によって鋼板に座屈が生じ、焼鈍炉内を通板する際に、焼鈍炉内のロールと鋼板とが接触して光沢ムラが発生してしまう。
【0003】
一般的に高張力鋼板を製造する連続焼鈍ラインでは、焼鈍炉の出側に表面検査装置が設置されており、その表面検査装置で水焼入れを行った鋼板の表面検査を行っている。しかしながら、水焼入れを行った鋼板に上述した光沢ムラがある場合には、光沢ムラが原因となって表面検査装置で鋼板の表面欠陥の誤検出が生じてしまい、検出が必要な鋼板の表面欠陥を検出できない可能性がある。上述した検出の必要な鋼板の表面欠陥は、例えば、連続焼鈍ラインで鋼板に生じた表面欠陥、及び、連続焼鈍ラインよりも前の工程で鋼板に生じた表面欠陥を挙げることができる。連続焼鈍ラインで鋼板に生じた表面欠陥(以下、現工程での表面欠陥と記す。)としては、主として異物の付着や凹凸のあるロール疵等を挙げることができる。連続焼鈍ラインよりも前の工程で鋼板に生じた表面欠陥(以下、前工程での表面欠陥と記す。)としては、例えば、模様状のヘゲ欠陥や、凹凸のあるヘゲ欠陥を挙げることができる。
【0004】
上述した表面検査装置の一例が特許文献1に記載されている。その装置は、偏光を利用することにより顕著な凹凸を持たない模様状の表面欠陥を検出するように構成されている。具体的には、鋼板の表面に偏光を照射し、反射光をカメラで受光する。検出する表面欠陥ごとにそれらのコントラストが最適となるように、複数の検光子角度が予め設定されており、受光した偏光の強度に基づいて表面欠陥の有無を判定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置では、検光子角度を調整することによって誤検出の原因となる光沢ムラの検出を抑制することができ、また、現工程での表面欠陥を検出することができる。しかしながら、光沢ムラの検出を抑制すると、前工程での表面欠陥の検出も抑制されてしまう。これは、現工程での表面欠陥の光学特性と、光沢ムラの光学特性とが互いに近いためである。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、光沢ムラに起因する誤検出を抑制して連続焼鈍ラインよりも前の工程で生じた表面欠陥を検出することができ、また、連続焼鈍ラインで生じる表面欠陥を検出することができる連続焼鈍ライン及び連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、
[1]圧延工程を経た鋼板に対して急速冷却することによって高張力鋼板を製造する焼鈍炉を備えている連続焼鈍ラインであって、前記鋼板の表面欠陥を検出する第一検出装置、及び、第二検出装置と、前記鋼板を洗浄する洗浄設備とを備え、前記第一検出装置は、前記鋼板の搬送方向で前記焼鈍炉の上流側であってかつ前記洗浄設備の下流側に設けられており、前記圧延工程において前記鋼板に生じた表面欠陥を検出し、前記第二検出装置は、前記鋼板の搬送方向で前記焼鈍炉の下流側に設けられており、前記焼鈍炉において前記鋼板に生じた表面欠陥を検出する連続焼鈍ライン。
[2]前記第二検出装置は、前記第一検出装置によって検出した第一検出情報と、前記第二検出装置によって検出した第二検出情報とに基づいて前記焼鈍炉において前記鋼板に生じた表面欠陥を判別する上記の[1]に記載の連続焼鈍ライン。
[3]前記第一検出装置は、前記鋼板の表面欠陥のうち、少なくとも模様状欠陥、及び、凹凸欠陥を検出するように構成されており、前記第二検出装置は、前記鋼板の表面欠陥のうち、少なくとも前記鋼板の表面に付着した異物、前記焼鈍炉内で前記鋼板を搬送する時に前記鋼板の表面に生じた搬送疵を検出するように構成されている上記の[1]または[2]に記載の連続焼鈍ライン。
[4]圧延工程を経た鋼板に対して急速冷却することによって高張力鋼板を製造する焼鈍炉を備えている連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法であって、前記鋼板の搬送方向で洗浄設備の下流側であってかつ前記焼鈍炉の上流側に設けられている第一検出装置によって前記圧延工程において前記鋼板に生じた表面欠陥を検出する第一検出工程と、その後に、前記搬送方向で前記焼鈍炉の下流側に設けられている第二検出装置によって前記焼鈍炉において前記鋼板に生じた表面欠陥を検出する第二検出工程とを有する連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鋼板の搬送方向で洗浄設備の下流側であってかつ焼鈍炉の上流側に第一検出装置が設けられており、搬送方向で焼鈍炉の下流側に第二検出装置が設けられている。そのため、光沢ムラがない状態で、圧延工程において鋼板に生じた第一表面欠陥を第一検出装置によって検出することができる。また、焼鈍炉において鋼板に生じた第二表面欠陥を第二検出装置によって検出することができる。このように、本願発明では、光沢ムラに起因する誤検出を抑制して連続焼鈍ラインよりも前の工程で生じた表面欠陥を検出することができ、また、連続焼鈍ラインで生じる表面欠陥を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る連続焼鈍設備の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて具体的に説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な一例を示すものであり、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0012】
本発明の実施形態に係る連続焼鈍ラインは、圧延工程を経た鋼板に水焼入れを行って急速冷却することによって高張力鋼板を製造する設備である。圧延工程を経た鋼板は帯状であって、ロール状に巻かれた状態で連続焼鈍ラインの入側設備にまで搬送され、入側設備において、ロールから巻き出されて連続焼鈍ラインに供給される。
【0013】
図1は、本実施形態に係る連続焼鈍ラインに相当する連続焼鈍設備の一例を示す図である。
図1に示す連続焼鈍設備100は、入側設備20、炉体設備21、及び、出側設備24に大別され、鋼板1の搬送方向で上流側から上記の順に配置される。入側設備20は、ペイオフリール2、溶接機3、洗浄設備4、入側ルーパー5を含み、鋼板1の搬送方向で上流側から上記の順に配置される。
【0014】
ペイオフリール2はロール状に巻かれた鋼板1を巻き出して連続焼鈍設備100に供給する設備であり、
図1に示す例では2つのペイオフリール2が設けられている。それらのペイオフリール2から巻き出された鋼板1は溶接機3に交互に搬送され、溶接機3において、先行する鋼板1の尾端と後行する鋼板1の先端とが溶接によって互いに接続される。
【0015】
洗浄設備4は、連続焼鈍設備100よりも前の工程(以下、前工程と記す。)で、例えば、圧延工程で鋼板1に付着した油脂を除去する設備であり、例えば、電解脱脂によって鋼板1の表面から油脂を除去する電解清浄装置であってよい。
【0016】
入側ルーパー5は炉体設備21における鋼板1の搬送速度と入側設備20における処理速度との調整を図るため、一時的に鋼板1を貯留する設備である。
【0017】
炉体設備21は本実施形態に係る焼鈍炉に相当するものであって、焼鈍設備22及び再加熱設備23から構成される。焼鈍設備22は鋼板1の搬送方向で再加熱設備23の上流側に設けられており、加熱帯6、均熱帯7及び冷却帯8を含み、それらは鋼板1の搬送方向で上流側からこの順に配置されている。また、焼鈍設備22は前記搬送方向で加熱帯6の上流側に設けられた予熱帯9を含む場合がある。
【0018】
加熱帯6には、鋼板1を昇温させる加熱設備が配置されており、当該加熱設備を用いて鋼板1の成分組成に応じて600℃以上900℃以下程度の温度範囲内で予め設定された温度まで鋼板1を加熱する。加熱帯6では、直火あるいは輻射式の燃焼バーナーが用いられる。
【0019】
均熱帯7には、鋼板1を所定温度に保持する装置が配置される。鋼板1を所定温度に保持する装置は、炉体放散熱などを補う程度の加熱容量の装置である。
【0020】
冷却帯8には、鋼板1を所定の温度まで冷却する冷却設備が配置される。当該冷却設備における冷却手段として液体冷却、ガスジェット冷却、ロール冷却、ミスト冷却(気液混合冷却と称される場合がある。)などが用いられる。液体冷却は水を用いた水冷却(ウォータークエンチと称される場合がある。)により行われることが多い。水冷却は鋼板1の搬送方向で均熱帯7の下流側に設置された浸漬水槽に鋼板1を浸漬させて冷却する冷却手段である。ガスジェット冷却は鋼板1の表面にノズルから気体を吹き付ける冷却手段である。ロール冷却は鋼板1を水冷ロールに接触させて冷却する冷却手段である。ミスト冷却は水を微細な霧状に噴霧してその気化熱により冷却を行う冷却手段である。ミスト冷却では、噴霧される水滴の大きさは0.1mm以上1.0mm以下程度であることが好ましい。
【0021】
再加熱設備23は鋼板1の搬送方向で冷却帯8の下流側に配置され、冷却帯8において鋼板1を所定の温度まで冷却された鋼板1を所定の温度まで再加熱する設備である。再加熱設備23は再加熱帯10、過時効帯11、最終冷却帯12を含んでおり、鋼板1の搬送方法で上流側からこの順に配置されている。
【0022】
再加熱帯10に、一例として誘導加熱装置が配置されており、再加熱帯10では、誘導加熱装置を用いて300℃以上400℃以下程度の温度まで鋼板1を再加熱する。
【0023】
鋼板1の搬送方向で再加熱帯10の下流側に、再加熱した鋼板1を所定時間保持する過時効処理を行う過時効帯11が設けられている。鋼板1の搬送方向で過時効帯11の下流側に過時効処理を行った鋼板1を室温付近まで最終冷却する最終冷却帯12が設けられている。なお、再加熱設備23は連続焼鈍設備100に必須な設備ではなく、連続焼鈍設備によっては備えていないものもある。
【0024】
出側設備24は出側ルーパー13、調質圧延設備14、検査台15、テンションリール16を含んでおり、鋼板1の搬送方向で上流側からこの順に配置されている。
【0025】
出側ルーパー13は炉体設備21における鋼板1の搬送速度と出側設備24における処理速度との調整を図るため、一時的に鋼板1を貯留する設備である。
【0026】
調質圧延設備14は、鋼板1に対して0.1%以上3.0%以下程度の伸びを付与して、鋼板1の形状を平坦化する装置である。
図1に示す例では、鋼板1の搬送方向で出側ルーパー13と検査台15との間に配置される。調質圧延設備14に用いられるワークロールは、所定のタイミングで交換する必要がある。鋼板1の搬送方向で出側ルーパー13の下流側に調質圧延設備14を配置することで、ワークロールを交換する場合の炉体設備21における鋼板1の速度変更を当該出側ルーパー13によって抑制できる。つまり、炉体設備21における鋼板1の速度変更を抑制しつつ、ワークロールの交換に要する時間を確保することができる。
【0027】
検査台15では、鋼板1の寸法精度や表面品質などの目視検査が行われる。テンションリール16は鋼板1をコイル状に巻き取る設備である。鋼板1はテンションリール16によってコイルとして巻き取られる。検査台15での品質検査により合格と判定された鋼板1は、製品コイルとして出荷される場合と、鋼板1のめっきを行う表面処理設備に送られて表面処理が行われる場合とがある。一方、テンションリール16によってコイルとして巻き取られ、検査台15での品質検査により不合格又は保留と判定された鋼板1は、図示しないリコイルラインに送られ、鋼板1の寸法や重量の調整、品質確性用のサンプル採取、形状・寸法検査、コイルの巻き直しなどが行われる。
【0028】
また、
図1に示す連続焼鈍設備100は、鋼板1の表面欠陥を検出する2つの検出装置を備えている。第一検出装置30は前工程での鋼板1の表面欠陥を検出する装置であり、鋼板1の搬送方向で洗浄設備4と炉体設備21との間に設けられている。具体的には、搬送方向で洗浄設備4と入側ルーパー5との間に設けられている。これは、鋼板1の表面に油脂が付着した状態で鋼板1の表面欠陥を検出しようとすると、油脂が原因となって表面欠陥を誤検出する可能性があるので、これを避けるためである。前工程での表面欠陥としては、例えば、模様状のヘゲ欠陥や、凹凸のあるヘゲ欠陥を挙げることができる。なお、上述した模様状のヘゲ欠陥が本発明の模様状欠陥に相当し、凹凸のあるヘゲ欠陥が本発明の凹凸欠陥に相当している。第一検出装置30で実行される処理が本発明の第一検出工程に相当している。
【0029】
第二検出装置31は、炉体設備21で鋼板1に生じた表面欠陥(以下、現工程での表面欠陥と記す。)を検出する装置であり、鋼板1の搬送方向で炉体設備21の下流側に設けられている。具体的には、搬送方向で調質圧延設備14と検査台15との間に設けられている。現工程での表面欠陥としては、例えば、鋼板1の表面に付着した異物や、炉体設備21内の図示しない搬送ロールと鋼板1とが互いに接触して鋼板1に生じるロール疵を挙げることができる。なお、上述したロール疵が本発明の搬送疵に相当している。第二検出装置31で実行される処理が本発明の第二検出工程に相当している。
【0030】
各検出装置30、31は偏光を使用して鋼板1の表面欠陥を検出する装置であってよく、例えば、上述した特許文献1に記載されている装置とほぼ同様に構成された装置であってよい。また、各検出装置30、31は互いに電気的に接続されており、第一検出装置30によって検出した鋼板1の表面欠陥についての第一検出情報を第二検出装置31に出力できるようになっている。第二検出装置31は、入力された第一検出情報と、当該第二検出装置31によって検出した鋼板1の表面欠陥についての第二検出情報とに基づいて、現工程での鋼板1の表面欠陥を判別するように構成されている。すなわち、各検出情報には、鋼板1の表面における表面欠陥の位置情報が付随しているため、各検出情報を組み合わせて使用することによって、前工程での表面欠陥と現工程での表面欠陥とを判別するようになっている。また、第一検出装置30での第一検出情報と、第2検出装置31での第二検出情報とを組み合わせることで前工程での欠陥と現工程での欠陥を漏れなく検出することが出来るようになり、品質保証の精度を高めることが可能となる。なお、各検出装置30、31による鋼板1の表面欠陥の検出結果は、図示しない表示手段に出力されるように構成されていてよい。また、表面欠陥を検出した場合には、その検出結果が図示しない警告手段に出力されるように構成されていてよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る連続焼鈍設備100の作用・効果について説明する。圧延工程を経てロール巻きされた状態の鋼板1は、入側設備20のペイオフリール2によって巻き出され、溶接機3を介して洗浄設備4に搬送される。洗浄設備4において、鋼板1の表面に付着した油脂が除去され、その後、第一検出装置30によって鋼板1の表面欠陥が検査される。つまり、光沢ムラが生じていない状態で第一検出装置30によって鋼板1の表面欠陥が検査される。そのため、光沢ムラに起因する前工程での表面欠陥の誤検出を回避あるいは抑制することができ、前工程での表面欠陥の検出精度を向上することができる。
【0032】
第一検出装置30を経た鋼板1は炉体設備21に搬送され、鋼板1に対して水焼入れが行われる。具体的には、冷却帯8において、鋼板1に対して水焼入れが行われ、再加熱設備23を介して出側設備24に搬送される。鋼板1に水焼入れを行うと、鋼板1に座屈が生じ、また、炉体設備21を通板する際に、当該炉体設備21内の図示しない搬送ロールと鋼板1とが互いに接触して鋼板1にロール疵が生じる場合がある。それらの座屈やロール疵の生じた箇所に光沢ムラが生じる。ここで、上述した光沢ムラとは、鋼板1の表面における光沢がその周囲の光沢と相違していることを意味している。
【0033】
炉体設備21を通板した鋼板1は、出側設備24の調質圧延設備14に搬送されて平坦化される。次いで、第二検出装置31によって現工程での鋼板1の表面欠陥が検査される。第二検出装置31にまで搬送されてきた鋼板1の表面には、光沢ムラが生じている場合がある。しかしながら、鋼板1に光沢ムラが生じているとしても、光沢ムラの光学特性と、現工程での鋼板1の表面欠陥、具体的には、鋼板1に付着した異物やロール疵の光学特性とは互いに離れている。そのため、光沢ムラがあったとしても、偏光を用いることによって現工程での表面欠陥を精度よく検出することができる。
【0034】
また、第一検出装置30での第一検出情報は第二検出装置31に出力され、第二検出装置31では、第一検出情報と第二検出情報とに基づいて、現工程での表面欠陥を判別する。第一検出装置30での第一検出情報と、第2検出装置31での第二検出情報とを組み合わせることで前工程での欠陥と現工程での欠陥とを漏れなく検出することが出来るようになる。そのため、これによっても現工程での表面欠陥の検出精度を向上することができる。
【0035】
それらの結果、本実施形態に係る連続焼鈍設備100によれば、光沢ムラに起因する前工程での表面欠陥の誤検出を回避することができ、これにより、全体として鋼板の表面欠陥の検出精度を従来に比較して向上することができる。また、光沢ムラのない状態で前工程での表面欠陥を検出するため、前工程での表面欠陥が軽度であったとしてもこれを検出でき、品質保証の精度を高めることが可能となる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されない。例えば、炉体設備21の上流側では、鋼板1に光沢ムラが生じない。そのため、第一検出装置30は偏光を使用して鋼板1の表面欠陥を検出する装置に代えて、従来知られた汎用的な正反射光学系や拡散反射光学系を用いる表面欠陥の検出装置であってもよい。
【実施例0037】
次に、本発明の実施形態に係る連続焼鈍ライン及び連続焼鈍ラインにおける鋼板の表面欠陥検出方法の作用及び効果を確認するために行った実施例について説明する。この実施例では、鋼板の搬送方法で炉体設備の上流側に第一検出装置を設置し、下流側に第二検出装置を設置し、それらの検出結果を組み合わせて鋼板の表面欠陥を検査した。一方、比較例では、鋼板の搬送方法で炉体設備の下流側のみに第二検出装置を設置して鋼板の表面欠陥を検査した。なお、実施例の第一検出装置としては、正反射光学系や拡散反射光学系を用いる表面欠陥の検出装置を使用した。第二検出装置としては、偏光を使用した検出装置を使用した。
【0038】
実施例及び比較例の表面欠陥の検査結果を表1にまとめて記載してある。
【0039】
【0040】
表1に示すように、炉体設備の下流側にのみ、第二検出装置を配置した比較例では、重度の前工程での表面欠陥と、重度の現工程での表面欠陥のみ検出可能であった。これに対して、炉体設備の上流側と下流側とのそれぞれに検出装置を配置した実施例では、前工程での表面欠陥と現工程での表面欠陥とのいずれであっても軽度から重度まで検出できるという良好な結果が得られた。
【0041】
1 鋼板
2 ペイオフリール
3 溶接機
4 洗浄設備
5 入側ルーパー
7 加熱帯
7 均熱帯
8 冷却帯
9 予熱帯
10 再加熱帯
11 過時効帯
12 最終冷却帯
13 出側ルーパー
14 調質圧延設備
15 検査台
16 テンションリール
20 入側設備
21 炉体設備
22 焼鈍設備
23 再加熱設備
24 出側設備
30 第一検出装置
31 第二検出装置
100 連続焼鈍設備