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特開2024-127226在庫管理システム、在庫管理方法、およびサーバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127226
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】在庫管理システム、在庫管理方法、およびサーバー
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/40 20180101AFI20240912BHJP
【FI】
G16H40/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036231
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】504237832
【氏名又は名称】ノーベルファーマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507212768
【氏名又は名称】三菱ケミカルグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】般谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】山本 吉秀
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の製品からなる製品セットを適切に管理する医療器具の在庫管理システム、在庫管理方法およびサーバーを提供する。
【解決手段】在庫管理システム1は、個別にICタグを付した複数の製品セットと、製品セットを収納し、製品に付されたICタグからタグ情報を読み取るとともに読み取ったタグ情報を発信する機能を有し、製品が消費される医療機関に配置される通信機能付き収納箱30と、通信機能付き収納箱30との間でデータの送受信を行う機能を備えたサーバー10と、サーバー10との間でデータの送受信を行う機能を備えたメーカー端末60とを備える。サーバー10には通信機能付き収納箱30に収納された製品の情報が医療機関に置いた製品の在庫管理データとして記憶されており、サーバー10は、通信機能付き収納箱30内の製品の存否に関する情報を通信機能付き収納箱30から受信し、医療機関に置いた製品の在庫情報を更新する機能を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別にICタグを付した複数の製品からなる製品セットと、
前記製品セットを収納し、前記製品に付されたICタグからタグ情報を読み取るとともに読み取ったタグ情報を発信する機能を有し、前記製品が消費される医療機関に配置される収納箱と、
前記収納箱との間でデータの送受信を行う機能を備えたサーバーと、
前記サーバーとの間でデータの送受信を行う機能を備えたメーカー端末と、
を備え、
前記サーバーには前記収納箱に収納された製品の情報が前記医療機関に置いた製品の在庫情報として記憶されており、
前記サーバーは、前記収納箱内の製品の存否に関する情報を前記収納箱から受信し、前記医療機関に置いた製品の在庫情報を更新する機能を備え、
前記メーカー端末は、前記更新された在庫情報を前記サーバーから取得して表示する機能を有する在庫管理システム。
【請求項2】
前記サーバーは前記製品の存否に関する情報とともに、前記収納箱が配置された医療機関に関する情報を受信する請求項1に記載の在庫管理システム。
【請求項3】
前記製品の存否に関する情報は、前記収納箱に残っている製品のタグ情報及び/または抜き取られた製品のタグ情報である請求項1または2に記載の在庫管理システム。
【請求項4】
前記メーカー端末は、前記在庫情報に基づき前記収納箱から製品が抜き取られたことを検出したことに応じて、当該製品に関する費用の請求書を生成する請求書生成手段を備える請求項1または2に記載の在庫管理システム。
【請求項5】
前記メーカー端末は、前記在庫情報に基づき前記収納箱から製品が抜き取られたことを検出したことに応じて、当該製品に関する費用の請求書を生成する請求書生成手段を備える請求項3に記載の在庫管理システム。
【請求項6】
前記収納箱は、電源がオンされたときに前記ICタグからタグ情報を読み取るとともに読み取ったタグ情報をメモリに記憶し、電源がオフされたときに前記タグ情報をメモリから消去する請求項1または2に記載の在庫管理システム。
【請求項7】
前記収納箱は、電源がオンされたときに前記ICタグからタグ情報を読み取るとともに読み取ったタグ情報をメモリに記憶し、電源がオフされたときに前記タグ情報をメモリから消去する請求項3に記載の在庫管理システム。
【請求項8】
前記メーカー端末は、前記製品の存否に関する情報に基づき前記収納箱から製品が抜き取られたことを検出したことに応じて、当該収納箱への製品の補充を指示するアラートを出力する請求項1または2に記載の在庫管理システム。
【請求項9】
前記メーカー端末は、前記製品の存否に関する情報に基づき前記収納箱から製品が抜き取られたことを検出したことに応じて、当該収納箱への製品の補充を指示するアラートを出力する請求項3に記載の在庫管理システム。
【請求項10】
前記製品の使用実績情報または使用予定情報を前記サーバーに送信する医療機関端末を備え、
前記サーバーは、複数の物流拠点ごとの製品の在庫を拠点在庫情報として記憶しており、
前記サーバーは、前記拠点在庫情報から前記使用実績情報または使用予定情報に基づく製品数を減算した物流拠点の製品在庫が安全在庫を下回る場合に、当該物流拠点への製品の補充指示を前記メーカー端末に送信する、請求項1に記載の在庫管理システム。
【請求項11】
前記サーバーは、複数の物流拠点ごとの製品の在庫を拠点在庫情報として記憶しており、
前記サーバーは、前記複数の物流拠点の拠点在庫情報に基づいて、前記製品の使用期限までの期間が所定の期間以下となった長期在庫を検出し、検出した長期在庫を複数の物流拠点に割り振るようにアラートを出力する、請求項1に記載の在庫管理システム。
【請求項12】
患者のカルテの情報を記憶した医療機関端末を備え、
前記医療機関端末は、患者に対して使用された製品の識別情報を前記収納箱から受信し、前記患者のカルテの情報に前記製品の識別情報を記憶する請求項1に記載の在庫管理システム。
【請求項13】
個別にICタグを付した複数の製品からなる製品セットを収納し、前記製品に付されたICタグからタグ情報を読み取るとともに読み取ったタグ情報を発信する機能を有し、前記製品が消費される医療機関に配置される収納箱と、前記製品のメーカー端末と、通信可能に接続されたサーバーによって製品の在庫管理を行う方法であって、
当該収納箱に収納した製品のタグ情報と配送先の医療機関の情報を関連付けた在庫情報を記憶部に記憶する工程と、
前記収納箱と通信を行って前記収納箱内の製品の存否に関する情報を前記収納箱から受信する工程と、
前記製品の存否に関する情報に基づいて前記記憶部の在庫情報を更新する工程と、
前記製品の在庫情報をメーカー端末に送信する工程と、
を備える在庫管理方法。
【請求項14】
複数の製品によって製品セットを構成する製品の在庫を管理するサーバーであって、
前記製品セットを収納する収納箱と通信を行うと共に、前記製品のメーカーのメーカー端末と通信を行う通信部と、
前記収納箱に収納された製品の情報を在庫情報として、当該収納箱が配置された医療機関の情報とともに記憶した記憶部と、
前記収納箱が前記製品に付されたICタグを読み取ることで取得した製品の存否に関する情報を前記収納箱から受信し、受信した情報に基づいて前記在庫情報を更新する在庫情報更新部と、を備え、
前記サーバーは、前記記憶部に記憶された製品の在庫情報を前記メーカー端末に送信するサーバー。
【請求項15】
前記記憶部は、複数の物流拠点ごとの製品の在庫を拠点在庫情報として記憶しており、
前記サーバーは、前記製品の使用実績情報または使用予定情報を医療機関端末から受信し、前記拠点在庫情報から前記使用実績情報または使用予定情報に基づく製品数を減算した物流拠点の製品在庫が安全在庫を下回る場合に、当該物流拠点への製品の補充指示を前記メーカー端末に送信する、請求項14に記載のサーバー。
【請求項16】
前記記憶部は、複数の物流拠点ごとの製品の在庫を拠点在庫情報として記憶しており、
前記サーバーは、前記複数の物流拠点の拠点在庫情報に基づいて、前記製品の使用期限までの期間が所定の期間以下となった長期在庫を検出し、検出した長期在庫を複数の物流拠点に割り振るようにアラートを出力する、請求項14に記載のサーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具等の製品の在庫を管理するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる複数のサイズや形状等の製品群からなる製品セットとして流通する製品がある。例えば、内転型痙攣性発声障害の治療に用いられる医療機器も、そのような製品の一つである。
【0003】
内転型痙攣性発声障害は、神経難病疾患である局所性ジストニアの一種で、若年女性に多い、原因不明の難治性疾患である。チタンブリッジ(登録商標)を用いた甲状軟骨形成術2型治療は、内転型痙攣性発声障害に対する症状根治治療として、2001年に世界に先駆けて開発された日本独自の医療技術である。この治療法は、咽頭枠組み軟骨を正中で左右に開大することにより前連合付近、声帯前方に声門間隙を作成し、過閉鎖を防止する手術法である(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ノーベルファーマ株式会社2016年2月10日報道発表資料<URL:https://www.nobelpharma.co.jp/_cms/wp-content/uploads/2020/04/20160210.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の製品群によって構成される製品セットとして流通する製品の中には、実際に使用されるのがそのセットに含まれるごく一部の製品であるといったものも存在している。また、そのような製品の中には、その製品セットに含まれる製品のうち、どの製品が実際に使用可能であるのかが、当該製品の使用のタイミングまでわからないものも存在している。例えば、チタンブリッジは、3種類のサイズと、各サイズにつき7種類の開大幅のものが用意されている。このチタンブリッジを用いた手術においては、患者における甲状軟骨の厚み等を確認後、甲状軟骨正中切開断端を徐々に広げながら患者に繰り返し発声させて開大幅を調整し、目的の開大幅にあった大きさのものを選ぶ。
【0006】
つまり、どの大きさのチタンブリッジを使用するかは、実際に手術を行って患部の状態を確認するまでわからないので、術前に全種類のチタンブリッジを準備しておく必要がある。チタンブリッジは、甲状軟骨の上下2箇所に用いられ、予備も合わせると、各種類3個ずつのチタンブリッジが必要である。その一方で、実際に手術に使うのはそのうちの一部であるので、医療機関にとって在庫の管理が煩雑であった。また、手術の回数が多くない医療機関にとって、多くの在庫を抱えることは好ましくない。
【0007】
このため、チタンブリッジを使用する手術の際には、一旦、全種類のチタンブリッジからなるセットを病院に納入し、必要なものを用いて手術を行った後、使わなかったものを返品するといったことが行われていた。しかし、この様な対応を行うことは手続きを煩雑にするばかりでなく、人為的なミスを招来するおそれもある。
【0008】
本発明は、上記背景に鑑み、複数の製品からなる製品セットを適切に管理する医療器具の在庫管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の在庫管理システムは、個別にICタグを付した複数の製品からなる製品セットと、前記製品セットを格納し、前記製品に付されたICタグからタグ情報を読み取るとともに読み取ったタグ情報を発信する機能を有し、前記製品が消費される医療機関に配置される収納箱と、前記収納箱との間でデータの送受信を行う機能を備えたサーバーと、前記サーバーとの間でデータの送受信を行う機能を備えたメーカー端末とを備え、前記サーバーには前記収納箱に収納された製品の情報が前記医療機関に置いた製品の在庫管理データとして記憶されており、前記サーバーは、前記収納箱内の製品の存否に関する情報を前記収納箱から受信し、前記医療機関に置いた製品の在庫情報を更新する機能を備え、前記メーカー端末は、前記更新された在庫情報を前記サーバーから取得して表示する機能を有する。
【0010】
複数の製品からなる製品セットでは、製品がセットを構成する製品が揃っていることが大切である。本発明の構成により、医療機関に配置した収納箱に複数の製品からなる製品セットを収納しておき、サーバーは、収納箱から受信した製品の存否に関する情報に基づいて、各医療機関に置いた製品を管理するので、製品セットのうちの一部の製品を使用した場合に、当該製品を適時に補充することができる。ここで、製品はチタンブリッジであってもよく、製品セットはサイズや開大幅の異なるチタンブリッジのセットであってもよい。
【0011】
本発明の在庫管理システムにおいて、前記サーバーは前記製品の存否に関する情報とともに、前記収納箱が配置された医療機関に関する情報を受信してもよい。この構成により、医療機関の情報を元にして在庫情報の更新を容易に行える。
【0012】
本発明の在庫管理システムにおいて、前記製品の存否に関する情報は、収納箱に残っている製品のタグ情報及び/または抜き取られた製品のタグ情報であってもよい。このように、収納箱において抜き取られた製品の情報を生成してもよいし、収納箱から残る製品のデータを受信してサーバー側で抜き取られた製品を把握することとしてもよい。
【0013】
本発明の在庫管理システムにおいて、前記メーカー端末は、前記在庫情報に基づき前記収納箱から製品が抜き取られたことを検出したことに応じて、当該製品に関する費用の請求書を生成する請求書生成手段を備えてもよい。この構成により、医療機関にて使用した製品に対する請求を確実に行える。なお、請求書の発行は、製品が抜き取られた情報を受信するたびに行ってもよいし、医療機関ごとに一定期間当該データを蓄積してからまとめて行うこととしてもよい。
【0014】
本発明の在庫管理システムにおいて、前記収納箱は、電源がオンされたときに、前記ICタグからタグ情報を読み取るとともに読み取ったタグ情報をメモリに記憶し、電源がオフされたときに、前記タグ情報をメモリから消去してもよい。このように電源がオフされたときにタグ情報をメモリから消去することにより、製品に関する情報が外部に漏洩するリスクを抑えることができる。
【0015】
本発明の在庫管理システムにおいて、前記メーカー端末は、前記製品の存否に関する情報に基づき前記収納箱から製品が抜き取られたことを検出したことに応じて、当該収納箱への製品の補充を指示するアラートを出力してもよい。
【0016】
このように抜き取られた製品の補充を指示するアラートを出力することにより、ユーザに製品補充の気づきを与え、製品セットの製品を揃えた状態にすることを支援できる。なお、収納箱には、医療機関に設置されているか運送中であるかを表す情報を記憶していてもよい。アラートを出力する際に、医療機関に設置されているか運送中であるかを表す情報をアラートと共に出力することにより、製品が医療機関で使用されたのか、運送中に紛失等したものかを区別することができる。
【0017】
本発明の在庫管理システムは、前記製品の使用実績情報または使用予定情報を前記サーバーに送信する医療機関端末を備え、前記サーバーは、複数の物流拠点ごとの製品の在庫を拠点在庫情報として記憶しており、前記サーバーは、前記拠点在庫情報から前記使用実績情報または使用予定情報に基づく製品数を減算した物流拠点の製品在庫が安全在庫を下回る場合に、当該物流拠点への製品の補充指示を前記メーカー端末に送信してもよい。
【0018】
この構成により、医療機関端末から送信される使用実績情報または使用予定情報に基づいて、物流拠点の製品在庫が安全在庫を下回る場合に速やかに補充を行うことができるので、医療機関に対して適時に製品を供給することができる。
【0019】
本発明の在庫管理システムにおいて、前記サーバーは、複数の物流拠点ごとの製品の在庫を拠点在庫情報として記憶しており、前記サーバーは、前記複数の物流拠点の拠点在庫情報に基づいて、前記製品の使用期限までの期間が所定の期間以下となった長期在庫を検出し、検出した長期在庫を複数の物流拠点に割り振るようにアラートを出力してもよい。
【0020】
このようにアラートを出力し、長期在庫を複数の物流拠点に割り振ることにより、長期在庫が使用される可能性を高めることができる。
【0021】
ここで、物流拠点の在庫情報には、医療機関に置いている製品在庫の情報を含めてもよい。医療機関に置いてある製品について、使用した初めて医療機関に所有権が移転する契約の場合は、医療機関に置いてある収納箱内の製品も在庫であり、物流拠点の在庫と同様に移動し、融通することが可能である。物流拠点の在庫情報に医療機関においてある製品在庫の情報を含めることで、医療機関に置いてある製品で、使用期限までの期間が所定の期間以下となった長期在庫を検出し、検出した長期在庫を他の医療機関に移動するようにアラートを出力してもよい。
【0022】
この構成により、長期在庫を他の医療機関に移動し(病院間転送)、長期在庫が使用される可能性を高めることができる。移動先の他の医療機関は、同じ物流拠点のカバーエリア内にある医療機関であってもよいし、別の物流拠点のカバーエリア内にある医療機関であってもよい。なお、在庫の病院間転送は、長期在庫に係る製品だけではなく、製品の緊急使用時にも、サーバーが管理する在庫情報に基づいて行ってもよい。
【0023】
本発明の在庫管理システムは、患者のカルテの情報を記憶した医療機関端末を備え、前記医療機関端末は、患者に対して使用された製品の識別情報を前記収納箱から受信し、前記患者のカルテの情報に前記製品の識別情報を記憶してもよい。
【0024】
このようにカルテの情報に当該患者に対して使用した製品の識別情報を加えることで、製品の情報を容易に参照することができる。
【0025】
本発明の在庫管理方法は、個別にICタグを付した複数の製品からなる製品セットを格納し、前記製品に付されたICタグからタグ情報を読み取るとともに読み取ったタグ情報を発信する機能を有し、前記製品が消費される医療機関に配置される収納箱と、前記製品のメーカー端末と、通信可能に接続されたサーバーによって製品の在庫管理を行う方法であって、当該収納箱に収納した製品のタグ情報と配送先の医療機関の情報を関連付けて記憶部に記憶する工程と、前記収納箱と通信を行って前記収納箱内の製品の存否に関する情報を前記収納箱から受信する工程と、前記製品の存否に関する情報に基づいて前記記憶部の在庫情報を更新する工程と、前記製品の在庫情報をメーカー端末に送信する工程とを備える。
【0026】
本発明のサーバーは、複数の製品によって製品セットを構成する製品の在庫を管理するサーバーであって、前記製品セットを収納する収納箱と通信を行うと共に、前記製品のメーカーのメーカー端末と通信を行う通信部と、前記収納箱に収納された製品の情報を在庫情報として、当該収納箱が配置された医療機関の情報とともに記憶した記憶部と、前記収納箱が前記製品に付されたICタグを読み取ることで取得した製品の存否に関する情報を前記収納箱から受信し、受信した情報に基づいて前記在庫情報を更新する在庫情報更新部とを備え、前記サーバーは、前記記憶部に記憶された製品の在庫情報を前記メーカー端末に送信する構成を有する。
【0027】
本発明のサーバーにおいて、前記記憶部は、複数の物流拠点ごとの製品の在庫を拠点在庫情報として記憶しており、前記サーバーは、前記製品の使用実績情報または使用予定情報を医療機関端末から受信し、前記拠点在庫情報から前記使用実績情報または使用予定情報に基づく製品数を減算した物流拠点の製品在庫が安全在庫を下回る場合に、当該物流拠点への製品の補充指示を前記メーカー端末に送信してもよい。
【0028】
本発明のサーバーにおいて、前記記憶部は、複数の物流拠点ごとの製品の在庫を拠点在庫情報として記憶しており、前記サーバーは、前記複数の物流拠点の拠点在庫情報に基づいて、前記製品の使用期限までの期間が所定の期間以下となった長期在庫を検出し、検出した長期在庫を複数の物流拠点に割り振るようにアラートを出力してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、複数製品からなる製品セットのうちの一部の製品を使用した場合に、使用状況や在庫状況を適切に管理することができ、必要に応じて当該製品を適切に補充することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施の形態の在庫管理システムの概要を示す図である。
図2】(a)通信機能付き収納箱を示す斜視図である。(b)通信機能付き収納箱の断面図である。
図3】通信機能付き収納箱の内部構成を示す図である。
図4】サーバーの構成を示す図である。
図5】サーバーの記憶部に記憶された在庫データの例を示す図である。
図6】メーカー端末の構成を示す図である。
図7】在庫管理システムの処理の流れの例を示す図である。
図8】在庫管理システムの処理の流れの別の例を示す図である。
図9】第2の実施の形態の在庫管理システムが想定する物流経路を示す図である。
図10】第2の実施の形態の在庫管理システムのシステム構成を示す図である。
図11】第2の実施の形態のサーバーの構成を示す図である。
図12】記憶部に記憶された物流拠点の在庫のデータの例を示す図である。
図13】記憶部に記憶された物流拠点のカバーエリアのデータの例を示す図である。
図14】長期在庫を他の物流拠点に移動することの効果を説明するための図である。
図15】第2の実施の形態の在庫管理システムによる物流拠点の在庫管理の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態の在庫管理システムについて図面を参照して説明する。以下の実施の形態では、在庫管理の対象の医療器具として、内転型痙攣性発声障害の手術に用いるチタンブリッジを例として説明する。なお、以下の説明はあくまでも好ましい態様の一例を示したものであり、特許請求の範囲に記載された発明を限定する意図ではない。
【0032】
(第1の実施の形態)
チタンブリッジは、3種類のサイズと、各サイズにつき7種類の開大幅のものが用意されている。すなわち、21種類のチタンブリッジが存在する。上述したとおり、どの大きさのチタンブリッジを使用するかは、実際に手術を行って患部の状態を確認するまでわからないので、術前に全種類を準備しておく必要がある。各種類につき3個ずつのチタンブリッジを準備する必要があるので、手術時には、合計で63個ものチタンブリッジが必要である。本実施の形態の在庫管理システム1は、医療機関に置いたチタンブリッジの在庫を適切に管理する。
【0033】
図1は、本システムの一例である、チタンブリッジの在庫管理システム1の概要を示す図である。供給元はチタンブリッジを製造して、医療機関に供給する。本システムは、チタンブリッジの在庫管理を行うサーバー10を有する。サーバー10は、チタンブリッジの物流を担う会社により運用されてもよい。サーバー10は、各医療機関に配置された収納箱30と通信可能に接続されている。なお、以下の説明において、収納箱は「通信機能付き収納箱」という。図では「収納箱」と記載している。
【0034】
医療機関が通信機能付き収納箱30からチタンブリッジを抜き取って使用したときには、抜き取られたチタンブリッジを速やかに補充する必要がある。上述したとおり、手術を行うまでどのチタンブリッジを使うか分からないので、通信機能付き収納箱30内に、常時、全種類を収納しておく。
【0035】
サーバー10には、医療機関端末50、メーカー端末60、卸業者端末80が接続されている。医療機関端末50は医者等の医療機関従事者が使用する端末、メーカー端末60は製品メーカーが使用する端末、卸業者端末80は製品を扱う卸業者が使用する端末である。サーバー10は、クラウド上に配置することが好ましい。医療機関端末50、メーカー端末60、卸業者端末80からサーバー10に記憶された在庫情報等を閲覧できるが、各端末がアクセスできる範囲を階層分けしてもよい。例えば、医療機関端末50については、当該医療機関に置かれている製品の在庫状況だけを閲覧可能とし、他の医療機関の情報にはアクセスできないように設定してもよい。卸業者端末80は、担当の医療機関あるいは担当地域の製品の在庫状況と使用状況を閲覧可能とし、他の医療機関や地域の情報にはアクセスできないように設定してもよい。
【0036】
サーバー10と医療機関との間では、医療機関に配置された通信機能付き収納箱30からサーバー10に対し、製品のタグ情報、医療機関の情報、使用情報等が送られる。チタンブリッジの個装箱には、例えば底面にICタグが貼り付けられている。通信機能付き収納箱30は、ICタグを読み取ることで、収納している製品のタグ情報を取得する。
【0037】
サーバー10と製品供給元のメーカー端末60との間では、サーバー10からメーカー端末60に対して、在庫情報が送られる。製品供給元のメーカーは、在庫情報に基づいて医療機関に対する請求書を発行する。
【0038】
図2(a)は、実施の形態の在庫管理システム1で用いられる通信機能付き収納箱30を示す斜視図である。一例において、図2(a)に示すように通信機能付き収納箱30は3段の引出し31を有している。3つの引出し31のそれぞれに、「S」「M」「L」のチタンブリッジが収納されてもよい。
【0039】
通信機能付き収納箱30の例えば上面に操作用のタッチパネル32を備えている。また好ましい態様において、通信機能付き収納箱30の上面には、通信機能付き収納箱30を持ち上げるための把手33が取り付けられている。通信機能付き収納箱30は、キャスターを備えてもよい。
【0040】
図2(b)は、通信機能付き収納箱30のアンテナ配置を示す図である。3つの引出し31のそれぞれの下にICタグを読み取るためのアンテナ34が配置され、引出し31に収納されたチタンブリッジのICタグを読み取ることができる。アンテナ34は、データの読み取り処理を行う回路を備えたリーダー基盤35に接続されている。また、リーダー基盤35は制御基盤36に接続されている。制御基盤36は、タッチパネル32を通じて入力されたデータに基づく処理を行ったり、処理結果をタッチパネル32に表示する機能を有する。また、制御基盤36は、インターネット接続するためのルーター37や電源38と接続されている。本例では、図2(a)に示すように、リーダー基盤35、制御基盤36、ルーター37および電源38は、いずれも背面板39の上に設けられており、背面板39を外せば容易にメンテナンスを行うことができる。
【0041】
図3は、実施の形態の在庫管理システム1で用いられる通信機能付き収納箱30の構成を示す図である。通信機能付き収納箱30は、サーバー10とインターネット接続するためのルーター37と、ボックス内のICタグ40を読み取るリーダー基盤35およびアンテナ34を備えている。アンテナ34は、ICタグ40のアンテナ41との間で短波通信を行う。また、制御基盤36は、タッチパネル32と接続されている。
【0042】
制御基盤36は図示しないメモリを有しており、メモリにはボックス内のICタグ40を読み取った情報を記憶する。通信機能付き収納箱30の電源がオンされたときに、制御基盤36は通信機能付き収納箱30内のすべてのICタグ40を読み取って、読み取ったICタグ40のデータをメモリに記憶する。制御基盤36は、通信機能付き収納箱30の電源がオフされたときに、メモリ内のデータを消去する。
【0043】
図4は、サーバー10の構成を示す図である。サーバー10は、入力部11と、出力部12と、演算部20と、記憶部13と、通信部14とを有している。入力部11および出力部12は、ユーザーとのインターフェースであり、入力部11としては、キーボード、マウス、マイク等が挙げられ、出力部12としては、ディスプレイやスピーカー等が挙げられる。通信部14は、医療機関に配置された通信機能付き収納箱30や、メーカー端末60と通信を行う機能を有する。記憶部13は、チタンブリッジの在庫情報を記憶している。
【0044】
図5は、記憶部13に記憶された在庫データの例を示す図である。記憶部13には、商品在庫である製品情報が、その製品を収納した収納箱IDに関連付けて記憶されている。製品情報は、種類とシリアル番号の情報を有している。シリアル番号は、製品を一意に特定する情報である。種類のデータは、例えば、1文字目のアルファベットがチタンブリッジのサイズを示し、2文字目の数字が開大幅を示す。大きさは、「S」「M」「L」の3種類あり、開大幅は「1」~「7」まである。収納箱IDには、通信機能付き収納箱30のタイプと、通信機能付き収納箱30が配置されている医療機関を特定する医療機関IDが対応付けられている。
【0045】
また、製品情報には、存否情報が対応付けられている。存否情報は、通信機能付き収納箱30内に製品が存在しているか否かを示す情報である。図5において、「〇」は通信機能付き収納箱30内に製品が存在していることを示し、「×」は通信機能付き収納箱30内に製品が存在していないことを示している。通信機能付き収納箱30を医療機関に配送する際には、全種類のチタンブリッジが揃っており、存否情報はすべて「〇」である。「×」とされた製品は通信機能付き収納箱30から抜き取られ、医療機関において手術に使用されたと判断することができる。
【0046】
図5に示す例では、医療機関IDが「H001」の医療機関に配置された「B001」の通信機能付き収納箱30では、大きさ「M」で開大幅が「3」の2つのチタンブリッジ(M3-06739,M3-06740)が通信機能付き収納箱30から抜き取られたことを示している。このように、記憶部13を参照すると、通信機能付き収納箱30と医療機関と通信機能付き収納箱30に収容された製品の存否を把握できる。
【0047】
図4に戻り、サーバー10の構成について説明する。演算部20は、在庫情報登録部21と、在庫情報更新部22とを有している。在庫情報登録部21は、通信機能付き収納箱30に収納したチタンブリッジのタグ情報を在庫情報として記憶部13に登録する機能である。具体的には、在庫情報登録部21は、在庫情報の登録画面を表示し、通信機能付き収納箱30のID、医療機関のID、および製品情報のユーザによる入力を受け付け、入力されたデータを関連付けて記憶部13に記憶する。
【0048】
チタンブリッジの最初の登録時には、チタンブリッジの個装箱にICタグを貼り付け、ICタグリーダライタを用いて、ICタグに製品情報を書き込む。これにより、チタンブリッジに貼り付けたICタグから製品情報を読み取ることが可能となる。それと共に、通信機能付き収納箱30に収納するチタンブリッジの種類とシリアル番号を、通信機能付き収納箱30のIDに関連付けて記憶部13に記憶させる。なお、通信機能付き収納箱30を別の医療機関に移動する場合には、在庫情報登録部21は、在庫情報の登録画面を表示し、通信機能付き収納箱30に紐づく医療機関IDを書き換えればよい。
【0049】
在庫情報更新部22は、通信機能付き収納箱30から送信されてくる製品の存否に関する情報に基づいて、記憶部13の在庫情報を更新する機能を有する。通信機能付き収納箱30が、医療機関のIDと共に、通信機能付き収納箱30から抜き取られたチタンブリッジのシリアル番号のデータを送信してくる場合には、在庫情報更新部22は、送信されてきた製品の存否情報を「×」に更新する。この処理については、図7を参照して後述する。
【0050】
なお、通信機能付き収納箱30が医療機関のIDと共に、通信機能付き収納箱30内に存在する製品の全情報を送信してくる場合には、在庫情報更新部22は、その医療機関に配置した通信機能付き収納箱30内の製品の存否情報と比較して、抜き取られた製品を特定し、その製品の存否情報を「×」に更新してもよい。この処理については、図8を参照して後述する。
【0051】
図6は、メーカー端末60の構成を示す図である。メーカー端末60は製品の供給元のメーカーが使う端末であり、メーカーが製品を管理するためのシステムを含んでいてもよい。メーカー端末60は、入力部61と、出力部62と、演算部70と、在庫情報記憶部63と、使用履歴記憶部64と、使用期限記憶部65と、通信部66とを有している。入力部61および出力部62は、ユーザーとのインターフェースであり、入力部61としては、キーボード、マウス、マイク等が挙げられ、出力部62としては、ディスプレイやスピーカー等が挙げられる。通信部66は、サーバー10と通信を行う機能を有する。
【0052】
在庫情報記憶部63は、製品の在庫情報を記憶している。在庫情報記憶部63は、サーバー10から送信されてくる在庫情報に基づいて更新され、サーバー10の記憶部13と同じデータを記憶している。メーカー端末60は、在庫情報が必要なときに、サーバー10にアクセスする構成とすることも可能であり、その場合にはメーカー端末60は在庫情報記憶部63を持たなくてもよい。
【0053】
使用履歴記憶部64は、使用された製品のシリアル番号に関連付けて、使用年月日、使用した医療機関のデータを履歴として記憶している。使用期限記憶部65は、製品のロット番号に関連付けて、当該製品の使用期限のデータを記憶している。ロット番号とシリアル番号の対応関係は別のデータベースに記憶されており、これを参照することで、シリアル番号に対応する使用期限を読み出すことができる。なお、使用期限記憶部65は、使用期限のデータをシリアル番号に対応付けて記憶してもよい。
【0054】
使用状況管理部71は、在庫情報に基づいて製品の抜き取りが検知されたときに、製品が使用されたと判定し、使用された製品のシリアル番号と使用年月日と使用した医療機関のデータを使用履歴記憶部64に記憶する。
【0055】
アラート報知部72は、通信機能付き収納箱30から製品が抜き取られたことに応じて、製品の補充を指示するアラートを報知する機能を有する。
【0056】
請求書生成部73は、通信機能付き収納箱30から製品が抜き取られたことに応じて、その製品に対する請求書を生成する機能を有する。請求書生成部73は、通信機能付き収納箱30から製品が抜き取られるごとに請求書を発行してもよいし、一定期間に抜き取られた製品の情報に基づいて、まとめて請求書を発行してもよい。
【0057】
使用期限管理部74は、在庫製品の使用期限を管理する機能を有する。使用期限管理部74は、使用期限記憶部65に記憶された製品ごとの使用期限のデータを参照して、使用期限が近づいている製品がないかをチェックする。使用期間が近づいていることの判定基準は適宜に設定することができるが、例えば、使用期限前の3カ月である。使用期限管理部74は、使用期限が3カ月以内に迫っている製品を抽出し、製品が置かれた医療機関のデータを対応付けて表示する。これにより、在庫の入れ替えが必要な医療機関を特定できる。また、使用期間が迫った製品が多い場合には、使用期限切れに備えて製品の製造を開始することができる。これにより、使用期限切れに起因して在庫が不足するという事態を回避できる。
【0058】
図7は、実施の形態の在庫管理システム1の処理の例を示す図である。
医療機関に配置された通信機能付き収納箱30は、収納されている製品のICタグを読み取る(S10)。通信機能付き収納箱30は、ユーザからの指示に応じてICタグの読み取りを行うほか、定期的に(例えば、1日1回等)、通信機能付き収納箱30内のICタグを読み取る。なお、定期的な読み取りの頻度やタイミングは、ユーザが設定することができる仕様とする。ICタグの読み取りをユーザからの指示に応じて行うようにしているのは、ユーザが製品を使用したときに読み取りを行うことが好ましいからである。ICタグの読み取りをユーザの指示だけに応じて行うこととすると、ユーザが読み取り指示を忘れたときに状態の更新が行われないことになってしまうので、定期的な読み取りも行うようにしている。
【0059】
通信機能付き収納箱30は、読み取ったICタグの製品情報と予め記憶された収納情報とを比較し、抜き取られた製品があるか否かを検出する(S11)。抜き取られた製品がない場合には(S11でNO)、在庫管理システム1の動作を終了する。
【0060】
通信機能付き収納箱30は、抜き取られた製品があることが検出された場合(S11でYES)、抜き取られた製品の製品情報を医療機関IDと共にサーバー10に送信する(S12)。サーバー10は、製品の抜き取り情報を受信すると(S13)、抜き取り情報に基づいて該当する通信機能付き収納箱30の在庫情報を更新する(S14)。また、サーバー10は、更新した在庫情報をメーカー端末60に送信する(S15)。これにより、メーカー端末60は在庫情報を共有することができる。
【0061】
なお、図7では、在庫情報をメーカー端末60に送信する例を挙げているが、在庫情報はメーカー端末60からの問い合わせに応じて随時メーカー端末60に送信してもよい。同様に、医療機関端末50や卸業者端末80からの問い合わせに応じて、そのアクセス権限の範囲内の在庫情報を医療機関端末50や卸業者端末80に送信してもよい。
【0062】
図8は、実施の形態の在庫管理システム1の処理の別の例を示す図である。
医療機関に配置された通信機能付き収納箱30は、収納されているチタンブリッジのICタグを読み取る(S20)。通信機能付き収納箱30は、ユーザからの指示に応じてICタグの読み取りを行うほか、定期的に(例えば、1日1回等)、通信機能付き収納箱30内のICタグを読み取る。なお、定期的な読み取りをいつ行うかは、ユーザが設定することができる仕様とする。
【0063】
通信機能付き収納箱30は、取得した製品の製品情報をサーバー10に送信する(S21)。ここでは、通信機能付き収納箱30は、読み取ったICタグのすべての製品情報、すなわち、通信機能付き収納箱30内に現時点で存在する全製品の情報をサーバー10に送信する。ここで、通信機能付き収納箱30は、ICタグの情報に加えて、通信機能付き収納箱30が配置された医療機関のIDを送信する。
【0064】
サーバー10は、通信機能付き収納箱30から製品情報のデータを受信すると(S22)、受信したデータに基づいて在庫情報を更新する(S23)。具体的には、サーバー10は、受信したICタグ情報と、受信した医療機関IDに関連付けて記憶された製品情報とを比較し、記憶部13に記憶された製品情報の存否を判定し、在庫の存否を更新する。在庫情報として記憶された製品情報と比べて受信した製品情報に不足があれば、その製品は抜き取られたものとして、存否情報を「〇」から「×」に更新する。
【0065】
ここでの比較は、通信機能付き収納箱30から受信した在庫の個数と記憶された在庫の個数の比較だけでなく、通信機能付き収納箱30から送信された製品のシリアル番号と記憶された在庫のシリアル番号とを比較する。これにより、例えば、前回更新時から抜き取られた製品の個数と同数の製品がたまたま入庫されて、通信機能付き収納箱30内の製品在庫の個数に変化がない場合であっても、製品の抜き取りがあったことを正確に把握できる。
【0066】
また、サーバー10は、更新した在庫情報をメーカー端末60に送信する(S24)。これにより、メーカー端末60は在庫情報を共有することができる。なお、図8では、在庫情報をメーカー端末60に送信する例を挙げているが、在庫情報はメーカー端末60からの問い合わせに応じて随時メーカー端末60に送信してもよい。同様に、医療機関端末50や卸業者端末80からの問い合わせに応じて、そのアクセス権限の範囲内の在庫情報を医療機関端末50や卸業者端末80に送信してもよい。
【0067】
以上、実施の形態の在庫管理システム1の構成及び動作について説明した。本実施の形態の在庫管理システム1は、通信機能付き収納箱30に収納されたチタンブリッジのICタグを読み取って、抜き取られた製品があった場合には、その製品に対する請求書を発行するので、使用されたチタンブリッジに対してのみ請求書を発行することができる。これは、医療機関に置いていたチタンブリッジのうち、抜き取られた製品を納品したことに該当する。これにより、使用する可能性のある全種類のチタンブリッジを納入して、手術後に、使わなかった残余のチタンブリッジを返品するといった煩雑な手続きが必要なくなる。
【0068】
また、チタンブリッジを供給する側にとっては、医療機関においてある実在庫を管理できるという効果がある。従来は、医療機関においた製品がどれだけ使われたかは、卸業者が定期的に医療機関を訪問して確認していたが、在庫管理システム1により、そのような人員と手間を省くことができる。さらに、どの医療機関にどのシリアル番号の製品があるかもわかるので、不動在庫の管理も容易になる。医療機関全体の在庫の期限が確認できるので、有効期限内の先入れ先出しの運用が可能になり、製品の廃棄等の削減につながる。
【0069】
また、本実施の形態の在庫管理システム1は、抜き取られた製品と同じ種類の製品の補充の気づきを与えるアラートを出力するので、手術に必要な全種類のチタンブリッジを間違いなく揃えて、医療機関においておくことができる。
【0070】
本実施の形態の在庫管理システム1は、通信機能付き収納箱30内のICタグを定期的に読み取る構成を採用しているので、手術のためにいったんオペ室に持ち出したとしても、使用しなかったチタンブリッジを通信機能付き収納箱30に戻しておけば、在庫が確認される。
【0071】
上記した実施の形態では、サーバーが、医療機関においた通信機能付き収納箱内の在庫管理を中心に説明したが、サーバーは、製品が抜き取られて使用された履歴を管理してもよい。すなわち、サーバーは、いつ、どの医療機関で、どのロット番号の製品が使用されたかの履歴データを記録しておいてもよい。これにより、製品のトレーサビリティを高めることができる。例えば、万が一、製品に不具合が見つかったときには、個別に医療機関に連絡をすることが可能となる。
【0072】
また、医療機関端末50が患者のカルテの情報を電子的に記憶している場合には、患者に対して使用された製品の識別情報をカルテの情報と共に記憶することとしてもよい。医療機関端末50は、通信機能付き収納箱30から抜き取られた製品の識別情報を受信し、受信した製品の識別情報を患者のカルテの情報に加える。この際、受信した製品の情報と患者のカルテを表示し、医師に確認をさせた上で、情報を記憶することとしてもよい。
【0073】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の在庫管理システム2は、医療機関に配置した通信機能付き収納箱30の在庫に加えて、物流拠点にある製品在庫も管理する。図9は、第2の実施の形態の在庫管理システム2が想定する物流経路を示す図である。メーカーは複数の医療機関に製品を供給するが、メーカーと医療機関との間に複数の物流拠点が存在する。各物流拠点は、その物流拠点の周囲の所定の範囲(以下、「カバーエリア」という。)にある医療機関に対して製品を供給する。また、各物流拠点は、安全在庫を保持しており、医療機関に対して適時に製品を供給する。各医療機関は、手術においてどのタイプのチタンブリッジが必要になっても良いように、全種類の製品をセットで保持している。
【0074】
物流拠点は国を跨いで存在してもよい。例えば、メーカーが日本にあり、物流拠点は、フランス、ドイツ、イタリア等のヨーロッパの各国にあってもよい。また、物流経路は段階的な構造を有していてもよい。例えば、ヨーロッパを代表する物流拠点の下に各国の物流拠点を有し、各国の物流拠点がその国の医療機関をカバーするような形態である。
【0075】
図10は、第2の実施の形態の在庫管理システム2のシステム構成を示す図である。図10では、医療機関を一つだけ示しているが、図9で示したとおり、複数の医療機関が存在する。第2の実施の形態の在庫管理システム2の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであるが、第2の実施の形態においては、サーバー10は、物流拠点の在庫を適切に管理するため、医療機関端末50から手術実施情報及び手術予定情報を受信する。手術実施情報は、製品が使用されたことを示す情報であり、手術に使った製品の情報を含む。手術予定情報は、これから行われる手術の情報であり、手術に使うと想定される製品の情報を含む。本書では、手術実施情報と手術予定情報を総称して「手術情報」という。
【0076】
在庫管理システム2は、医療機関端末50から受信した手術情報に基づいて、物流拠点の在庫が安全在庫を下回ると想定される場合に、メーカー端末60に対し、拠点在庫の補充指示を送信する。
【0077】
図11は、第2の実施の形態の在庫管理システム2で用いられるサーバー10の構成を示す図である。第2の実施の形態のサーバー10は、第1の実施の形態のサーバー10の構成に加え、拠点在庫管理部23、拠点在庫補充指示部24、長期在庫検出部25、長期在庫アラート部26を備えている。また、記憶部13には、各物流拠点の在庫のデータと各物流拠点が担当する医療機関のデータを記憶している。
【0078】
図12は、記憶部13に記憶された物流拠点の在庫のデータの例を示す図である。記憶部13は、各物流拠点の製品の在庫を製品の種類ごとに記憶している。図12に示す例では、種類S1の製品在庫は、ロット番号L001の製品が20個、ロット番号L002の製品が60個であり、合計で80個の在庫がある。製品在庫をロット番号ごとに管理しているのは、製品のロットによって使用期限が異なるからである。
【0079】
図13は、記憶部13に記憶された物流拠点のカバーエリアのデータの例を示す図である。具体的には、記憶部13は、各物流拠点のカバーエリア内にある医療機関の識別情報を記憶している。図13に示す例では、物流拠点D001のカバーエリア内には、医療機関H001,H002,H003,・・等がある。物流拠点D001はこれらの医療機関への製品供給を担っている。
【0080】
拠点在庫管理部23は、各物流拠点の在庫を管理する機能を有する。拠点在庫管理部23は、各物流拠点における安全在庫を計算する。安全在庫の計算の仕方は様々な方法が知られているが、一例としては、安全在庫は、安全係数×使用量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)によって計算することができる。拠点在庫管理部23は、カバーエリア内の医療機関の安全在庫を計算し、全医療機関の安全在庫を合計する。なお、安全在庫は、製品の種類ごとに計算する。
【0081】
サーバー10は医療機関端末50から手術情報を受信し、拠点在庫管理部23は手術情報に基づいて今後使用されるであろう製品数を推定する。推定された数の製品が使用されたとして、つまり、記憶部13に記憶された在庫数から推定された製品数を引いて求めた予測在庫と、安全在庫とを比較する。予測在庫が安全在庫を下回ると判定された場合には、拠点在庫補充指示部24が、メーカー端末60に対して在庫の補充を指示する信号を送信する。なお、手術予定情報には、手術に使うと想定される製品の情報を含むが、実際には手術を行うまではどの製品が使用されるかはわからない。しかし、複数の医療機関から送信される多数の手術予定情報から求めた製品情報を足し合わせることにより、統計的に、実際に使用される製品情報に近い値となることが期待される。また、過去の使用実績に基づいて使用数を推定してもよい。例えば、医療機関や地域ごとの使用実績から使用頻度の高い品番を使用されるものとして推定するか、過去の実績から品番ごとの使用確率を算出し、その値を2にかけたものを仮想的な使用数として計算式に入れる。または、全ての品番を2つずつ使用するとして計算式に入れるなどの方法が考えられる。
【0082】
長期在庫検出部25は、記憶部13に記憶された物流拠点の在庫データを読み出し、使用期限が迫った製品の在庫(これを「長期在庫」という)を検出する。使用期限が迫っていることの判断は、使用期限までの期間が所定の期間(例えば3カ月)以下であるかどうかによって行う。長期在庫検出部25による長期在庫の検出は、定期的あるいは任意のタイミングで行ってよい。
【0083】
長期在庫検出部25にて長期在庫を検出したときには、長期在庫アラート部26は、長期在庫があることをアラートする。このアラートには、長期在庫がある物流拠点を特定する情報と、製品の種類および長期在庫の個数の情報を含めてもよい。長期在庫のアラートを受け、ユーザは、長期在庫を他の物流拠点に移動することができる。
【0084】
図14は、長期在庫を他の物流拠点に移動することの効果を説明するための図である。図14では、物流拠点としてA~Cの3拠点を例としている。上段に示すように、物流拠点Aにおいて長期在庫が検出されたとする。この場合、長期在庫の一部を物流拠点B,Cに移動することで、下段に示すように、各物流拠点A~Cに長期在庫を分散する。これにより、物流拠点Aが担当する医療機関のみならず、物流拠点B,Cが担当する医療機関でも長期在庫に係る製品を使用することができるので、長期在庫を効率的に消費することができる。なお、図14において、物流拠点A~Cの在庫には、各々の物流拠点のカバーエリア内にある医療機関に置いた通信機能付き収納箱30内の在庫を含んでもよい。これにより、通信機能付き収納箱30内の長期在庫についても、使用の可能性を高めることができる。
【0085】
図15は、第2の実施の形態の在庫管理システム2による物流拠点の在庫管理の動作を示す図である。医療機関端末50はサーバー10に対して手術情報を送信し(S30)、サーバー10は医療機関端末50から送信された手術情報を受信する(S31)。図15では、一つの医療機関端末50を示しているが、実際には多数の医療機関端末50から手術情報を受信する。
【0086】
サーバー10の拠点在庫管理部23は、物流拠点のカバーエリアのデータを参照し、各物流拠点について、そのカバーエリア内の医療機関で使用される製品の個数を推定する(S32)。拠点在庫管理部23は、各物流拠点について、現在の在庫から推定された個数を引いた予測在庫が、安全在庫を下回るか否かを判定する(S33)。すべての物流拠点において、安全在庫を上回っている場合には(S33でNO)、物流拠点の在庫管理の処理を終了する。安全在庫を下回る物流拠点がある場合には(S33でYES)、メーカー端末60に対して、安全在庫を下回る製品の補充を指示する信号を送信する(S34)。
【0087】
以上、第2の実施の形態の在庫管理システム2の構成および動作について説明した。第2の実施の形態の在庫管理システム2では、各物流拠点に安全在庫を上回る個数の製品の在庫を確保しておくように処理を行うことによって在庫切れを回避し、医療機関に対して適時に製品を供給することができる。また、本実施の形態では、手術予定情報を入手するので、在庫補充日程の計画性が可能になり、補充リードタイムの余裕ができる。
【0088】
また、第2の実施の形態の在庫管理システム2では、サーバー10が長期在庫を検出してアラートを出力するので、アラートを受けたユーザは、長期在庫を複数の物流拠点に分散して配置することで、長期在庫の使用を促進することができる。
【0089】
上記した実施の形態では、安全在庫を下回る物流拠点がある場合には、メーカー端末に対して製品の補充を指示する信号を送信することしたが、他の物流拠点に対して在庫の移送を指示することとしてもよい。これにより、他の物流拠点の在庫が長期在庫となる前に製品を使用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 在庫管理システム
10 サーバー
11 入力部
12 出力部
13 記憶部
14 通信部
20 演算部
21 在庫情報登録部
22 在庫情報更新部
23 拠点在庫管理部
24 拠点在庫補充指示部
25 長期在庫検出部
26 長期在庫アラート部
30 通信機能付き収納箱
31 引出し
32 タッチパネル
33 把手
34 アンテナ
35 リーダー基盤
36 制御基盤
37 ルーター
38 電源
39 背面板
40 ICタグ
41 アンテナ
50 医療機関端末
60 メーカー端末
61 入力部
62 出力部
63 在庫情報記憶部
64 使用履歴記憶部
65 使用期限記憶部
66 通信部
70 演算部
71 使用状況管理部
72 アラート報知部
73 請求書生成部
74 使用期限管理部
80 卸業者端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15