(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127229
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】処理液およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/32 20060101AFI20240912BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20240912BHJP
C11D 3/26 20060101ALI20240912BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20240912BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G03F7/32
C11D1/66
C11D3/26
C11D1/72
C11D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036236
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊池 一雄
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 真也
(72)【発明者】
【氏名】佐口 琢哉
【テーマコード(参考)】
2H196
4H003
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196AA30
2H196GA08
2H196GA10
4H003AC07
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA05
4H003DB03
4H003EB19
4H003ED02
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】
本発明の処理液は、特にフォトレジストのアルカリ現像液として有用であり、現像不足(残渣)やパターン剥離の無い良好なパターンエッジを形成することが可能である為、半導体デバイスや液晶デバイスをより高精細に製造することが可能である。
【解決手段】
(A)アルカリ性化合物、(B)非イオン性界面活性剤、および(C)水を含有し、
前記(A)成分は0.01質量%以上0.15質量%以下、前記(B)成分は0.05質量%以上0.15質量%以下の含有量であり、かつ(B)成分の含有量/(A)成分の含有量が0.50以上3.0以下である処理液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ性化合物、(B)非イオン性界面活性剤、および(C)水を含有し、
前記(A)成分は0.01質量%以上0.15質量%以下、前記(B)成分は0.05質量%以上0.15質量%以下の含有量であり、かつ(B)成分の含有量/(A)成分の含有量が0.50以上3.0以下である処理液。
【請求項2】
前記(A)成分が有機アルカリ性化合物である請求項1に記載の処理液。
【請求項3】
前記成分(A)がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである請求項1に記載の処理液。
【請求項4】
前記(B)成分が、ポリオキシアルキレン誘導体である請求項1または2に記載の処理液。
【請求項5】
前記(B)成分が、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルまたはポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルである請求項1または2に記載の処理液。
【請求項6】
実質的に、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分のみからなる請求項1または2に記載の処理液。
【請求項7】
アルカリ現像用途である請求項1または2に記載の処理液。
【請求項8】
請求項1または2に記載の処理液を用いてフォトレジストパターンを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体デバイス製造工程、液晶デバイス製造工程において用いられる処理液とその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程、液晶デバイス製造工程ではリソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程、剥離工程、研磨工程などの様々な工程が含まれている。リソグラフィ工程中には、金属層または絶縁層の上に均一なフォトレジストを形成する工程、必要な露光および現像を実施して、フォトレジストパターンを形成する工程、フォトレジストパターンをマスクとして使用し金属層または絶縁層を有する基材をドライエッチング法によりエッチングし、微細回路を形成する工程、および不要なフォトレジスト層、エッチング残渣、残留フォトレジストおよびフォトレジスト副産物のいずれかを液体除去剤で基材から除去する工程を含む。様々な有機液体フォトレジスト除去剤が、不要なフォトレジスト層、エッチング残渣、残留フォトレジストおよびフォトレジスト副産物を基材から除去するために使用されている。従来技術ではしばしば、不要なフォトレジスト層を除去するためのフォトレジスト除去液において、フッ化水素酸のようなフッ素化合物を含有する組成物が使用されている。
また、各工程の終了後、あるいは次の工程に移る前に、処理液を用いて不要な有機物等を処理する工程が含まれることが一般的である。
このような半導体デバイスの製造工程において使用されるプリウェット液、現像液、リンス液、剥離液等の各種処理液(以下、「半導体製造用処理液」などともいう。)という。
【0003】
半導体製造において、フォトレジスト塗膜の現像では、浸漬現像、揺動現像、ディップ現像、シャワー・スプレー現像、パドル現像などの方法により行われるが、この現像の際には、アルカリ性現像液が用いられている。
【0004】
従来のアルカリ性現像液としては、一般的に、2~3重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が広く用いられている。こういったアルカリ性現像液は、たとえばノボラック樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤とからなるフォトレジスト膜などの分子量のあまり大きくない有機物質を溶解するように設計されている。
【0005】
しかしながらこのような従来公知の現像液を用いて、比較的分子量の大きいバインダーポリマーと、感放射線性化合物とを含み、顔料あるいは微粒子が分散された感放射線性組成物たとえばカラーフィルタ用感放射線性組成物あるいは層間膜用シリカ粒子分散感放射線性組成物などからなる塗膜を現像してレジスト膜あるいはカラーフィルタなどを形成しようとすると、不要な塗膜を充分に溶解除去することができないことがあった。すなわちレジスト膜の非形成部分に粒子あるいは未溶解物が残存しやすく、スカム、地汚れ、膜残りなどが生じて、シャープなパターンエッジを有するレジストパターンあるいは画素を形成することができないという問題点があった。
【0006】
特許文献1には、アルカリ現像性の向上を目的として、曇点が50℃以上の非イオン性界面活性剤を用いる技術が開示されている。また特許文献2には、現像残りや地汚れを防止することを目的として、強塩基性物質と弱塩基性物質を組み合わせた緩衝性水溶液を用いることが開示されている。特許文献3には、泡に起因する現像のこりが生じにくいカラーフィルタ用現像液の実現を目的として、分子内に窒素原子を有する非イオン性界面活性剤を用いることが開示されている。しかし、これらの方法を用いても現像不足とパターン剥離を両立する処理液は未だ実現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-286387号公報
【特許文献2】特開平9-171261号公報
【特許文献3】特開平11-305451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記現状に鑑み、本発明は、シャープなパターンエッジを有するレジストパターンの形成を可能にする、すなわち現像不足(残渣)やパターン剥離が無く、良好なパターンエッジを形成する処理液の提供を目的とする。特に基材ウェーハとレジストとの密着性が悪くレジスト剥離が発生しやすいレジストに関して有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、こうした実状のもと鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下1)~)に関する。
1)
(A)アルカリ性化合物、(B)非イオン性界面活性剤、および(C)水を含有し、
前記(A)成分は0.01質量%以上0.15質量%以下、前記(B)成分は0.05質量%以上0.15質量%以下の含有量であり、かつ(B)成分の含有量/(A)成分の含有量が0.50以上3.0以下である処理液。
2)
上記(A)成分が有機アルカリ性化合物である上記1)に記載の処理液。
3)
上記成分(A)がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである上記1)に記載の処理液。
4)
前記(B)成分が、ポリオキシアルキレン誘導体である上記1)または2)に記載の処理液。
5)
上記(B)成分が、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルまたはポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルである上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の処理液。
6)
実質的に、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分のみからなる上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の処理液。
7)
アルカリ現像用途である上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の処理液。
8)
上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の処理液を用いてフォトレジストパターンを形成する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の処理液は、特にフォトレジストのアルカリ現像液として有用であり、現像不足(残渣)やパターン剥離の無い良好なパターンエッジを形成することが可能である為、半導体デバイスや液晶デバイスをより高精細に製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、(A)アルカリ性化合物、(B)非イオン性界面活性剤、および(C)水を含有し、
前記(A)成分は0.01質量%以上0.15質量%以下、前記(B)成分は0.05質量%以上0.15質量%以下の含有量であり、かつ(B)成分の含有量/(A)成分の含有量が0.50以上3.0以下である処理液に関する。
【0013】
[(A)成分:アルカリ性化合物]
本発明における(A)成分は、アルカリ性化合物であれば、有機アルカリ性化合物であっても、無機アルカリ性化合物であってもよい。
前記無機アルカリ性化合物とは、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア等を挙げることができる。
【0014】
また、前記有機アルカリ性化合物とは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノエトキシエタノール、ブトキシプロピルアミン、メトキシプロピルアミン、エタノールプロピルアミン、エチルエタノールアミン、n-ヒドロキシエチルモルホリン、アミノプロピルジエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N-メチルジエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、ジイソプロピルアミン、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、N,N-ジメチルアミノメチルプロパンジオール、イソプロピルアミン,2-アミノ-1-ブタノール、アミノメチルプロパノール、アミノジメチルプロパノール、N,N-ジメチルアミノメチルプロパノーノール、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ベンジルアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、モルホリン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチレンテトラミン、3,3-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、ジプロピルアミン、ジメチルアミノエタノール、エチルジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、N-ヒドロキシエチルピペリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、2-エチルヘキシルオキシプロピルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、モノメチルアミン、ジエチルアミン、モノイソピルアミン、ジイソピルアミン等を挙げることができる。
これらのうち、好ましくは有機アルカリ性化合物であって、具体的にはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドであり、さらに好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムであり、特に好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0015】
本発明の処理液中、成分(A)の含有量は、0.01質量%以上0.15質量%以下である。この含有量としてより好ましい下限は、順に0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%であり、特に好ましくは0.05質量%である。また、より好ましい上限は、順に0.12質量%、0.10質量%、0.09質量%、0.08質量%であり、特に好ましくは0.07質量%である。すなわち(A)成分の最も好ましい含有量は0.05質量%以上0.07質量%以下である。
【0016】
[(B)成分:界面活性剤]
本発明における(B)成分である非イオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレン誘導体である場合が好ましく、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。
このうち、本発明においては、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルまたは分子内に芳香環を有するポリオキシアルキレン誘導体が特に好適に用いられる。例えば分子内に芳香環を有するポリオキシアルキレン誘導体としてはポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルやポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。なお、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルは、エマルゲンA-60(花王株式会社製)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルはアデカトールPC-8(株式会社ADEKA製)として市場から入手可能である。
またポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルは、ノイゲンXL-70(第一工業製薬株式会社製)として市場より入手可能である。
【0017】
本発明の処理液中、成分(B)の含有量は、0.05質量%以上0.15質量%以下である。この含有量として、より好ましい上限は、順に、0.14質量%、0.13質量%、0.12質量%、0.11質量%であり、特に好ましくは0.10質量%である。また、より好ましい下限は、順に0.06質量%、0.07質量%であり、特に好ましくは0.08質量%である。従って(B)成分の含有量として最も好ましくは0.08質量%以上0.10質量%以下である。
【0018】
[(B)成分の含有量/(A)成分の含有量]
本発明の処理液は、[(B)成分の含有量/(A)成分の含有量]が0.50以上3.0以下である。この比によって現像性と良好なパターンエッジを両立することができる。
[(B)成分の含有量/(A)成分の含有量]の下限として更に好ましくは、順に、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3であって、特に好ましくは1.4である。また上限として更に好ましくは、2.8、2.6、2.4、2.2、2.0、1.9、1.8、1.7であって、特に好ましくは1.6である。すなわち[(B)成分の含有量/(A)成分の含有量]として最も好ましくは1.4以上1.6以下である。
【0019】
[成分(C)水]
本発明における成分(C)水は、脱イオン水、超純水などが好ましく、有機汚染物を含有せず、抵抗率の最小値が約4~17メガオームであることが好ましい。水の抵抗率は17メガオーム以上であることがより好ましい。
本発明の処理液中、成分(C)の含有量は95質量%以上である場合が好ましく、更に好ましくは98質量%以上であり、特に好ましくは99質量%以上である。また、本発明の処理液は、実質的に(A)、(B)、(C)成分のみで構成されている場合が最も好ましく、その場合成分(A)、(B)に対する残部が成分(C)という構成になる。ここで前記「実質的に」とは不可避的に混入する不純物は除くという意味である。
【0020】
[その他成分]
本発明の処理液は、上記成分(A)~(C)のみで構成される場合が最も好ましいが、必要に応じて他の成分を添加することも可能である。他の成分としては、例えば、pH調整剤、有機添加剤、腐食抑制剤、有機溶剤等を挙げることができる。
【0021】
<pH調整剤について>
本発明の処理液に含まれてもよいpH調整剤とは、以下説明する好ましいpHに調整できる成分であれば特に限定されないが、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、LiOH、KOH、RbOH、CsOH)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、Be(OH)2、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2)、及び式NR1R2R3R4OH(式中、R1、R2、R3及びR4は、互いに同じでも、異なっていてもよく、水素、直鎖又は分岐鎖のC2-C6アルキル(例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル)、C1-C6アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ)及び置換又は非置換のC6-C10アリール、例えば、ベンジルからなる群から選択され、R1、R2、R3及びR4がすべてメチル基になることはない。)を有する化合物が含まれる。市販されているテトラアルキルアンモニウム水酸化物には、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAH)、テトラプロピルアンモニウム水酸化物(TPAH)、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)、トリブチルメチルアンモニウム水酸化物(TBMAH)、ベンジルトリメチルアンモニウム水酸化物(BTMAH)、水酸化コリン、エチルトリメチルアンモニウム水酸化物、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム水酸化物、ジエチルジメチルアンモニウム水酸化物、トリエチルメチルアンモニウム水酸化物、トリスヒドロキシエチルメチルアンモニウム水酸化物及びそれらの組合せが含まれ、それらを使用することができる。代わりに、又は加えて、少なくとも一種の四級塩基は、式(PR1R2R3R4)OH(式中、R1、R2、R3及びR4は、互いに同じでも、異なっていてもよく、水素、直鎖のC1-C6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル)、分岐鎖のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ)、置換C6-C10アリール、非置換C6-C10アリール(例えば、ベンジル)及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。)の化合物、例えば、テトラブチルホスホニウム水酸化物(TBPH)、テトラメチルホスホニウム水酸化物、テトラエチルホスホニウム水酸化物、テトラプロピルホスホニウム水酸化物、ベンジルトリフェニルホスホニウム水酸化物、メチルトリフェニルホスホニウム水酸化物、エチルトリフェニルホスホニウム水酸化物、N-プロピルトリフェニルホスホニウム水酸化物であり得る。一実施態様において、pH調整剤はKOHを含む。別の実施態様において、pH調整剤は水酸化コリンを含む。別の実施態様において、pH調整剤は、本明細書に列挙した少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物及び少なくとも一種の別の水酸化物を含む。別の実施態様において、pH調整剤は、KOH及び本明細書に列挙した少なくとも一種の別の水酸化物を含む。さらに別の実施態様において、pH調整剤は、KOH及び水酸化コリンを含む。
【0022】
<有機添加剤について>
本発明の処理液に含まれてもよい有機添加剤とは、特に限定されないが、例えば、2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン(HEP)、グリセロール、1,4-ブタンジオール、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、ジメチルスルホン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラグライム、ジグリム、グリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGBE)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(EGHE)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEGHE)、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPGME)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPGME)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(DPGPE)、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(ドワノールPnB)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル(ドワノールPPh))及びそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。代わりに、又は加えて、有機添加剤は、ホスホン酸及びその誘導体、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、1,5,9-トリアザシクロドデカン-N,N’,N’’-トリス(メチレンホスホン酸)(DOTRP)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラキス(メチレンホスホン酸)(DOTP)、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETAP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、イス(is)(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N’’-トリス(メチレンホスホン酸(NOTP)、それらの塩及びそれらの誘導体を含むことができる。代わりに、又は加えて、有機添加剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、N-ビニルピロリドンモノマーを使用して調製された任意のポリマー、ポリアクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステルの類似体、ポリアミノ酸(例えば、ポリアラニン、ポリロイシン、ポリグリシン)、ポリアミドヒドロキシウレタン、ポリラクトン、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、キトサン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン(PEI)、糖アルコール、例えばソルビトール及びキシリトール、アンヒドロソルビトールのエステル、二級アルコールエトキシレート、例えばTERGITOL、及びそれらの組合せを含むことができる。好ましい実施態様において、少なくとも一種の有機添加剤はHEDPを含む。別の好ましい実施態様において、少なくとも一種の有機添加剤は、トリエチレングリコールモノブチルエーテル又はプロピレングリコールn-ブチルエーテル又はプロピレングリコールフェニルエーテルを含む少なくとも一種のグリコールエーテルを含む。さらに別の好ましい実施態様において、少なくとも一種の有機添加剤は、HEDP、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル又はプロピレングリコールn-ブチルエーテル又はプロピレングリコールフェニルエーテルを含む少なくとも一種のグリコールエーテルを含む。さらに別の好ましい実施態様において、少なくとも一種の有機添加剤は、HEC、又はHEDP及びHECの組合せ、又はHEC、HEDP、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル若しくはプロピレングリコールn-ブチルエーテル若しくはプロピレングリコールフェニルエーテルを含む少なくとも一種のグリコールエーテルの組合せ、又はHEC、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル若しくはプロピレングリコールn-ブチルエーテル若しくはプロピレングリコールフェニルエーテルを含む少なくとも一種のグリコールエーテルの組合せを含む。
【0023】
<腐食抑制剤について>
本発明の処理液に含まれてもよい腐食抑制剤とは、酢酸、アセトンオキシム、アクリル酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、ベタイン、ジメチルグリオキシム、ギ酸、グリセリン酸、グリセロール、グリコール酸、グリオキシル酸、ヒスチジン、イタコン酸、乳酸、ロイシン、リジン、無水マレイン酸、マンデル酸、2,4-ペンタンジオン、フェニル酢酸、フェニルアラニン、プロリン、プロピオン酸、ピロカテコール、キナ酸、セリン、ソルビトール、チロシン、バリン、キシリトール、タンニン酸、ピコリン酸、1,3-シクロペンタンジオン、カテコール、ピロガロール、レゾルシノール、ヒドロキノン、シアヌル酸、バルビツル酸、1,3-ジメチルバルビツル酸、ピルビン酸、プロパンチオール、ベンゾヒドロキサム酸類、2,5-ジカルボキシプリジン(dicarboxypryidine)、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン(HEM)、N-アミノエチルピペラジン(N-AEP)、チオウレア、1,1,3,3-テトラメチル尿素、尿素、尿素誘導体、グリシン、システイン、イソロイシン、メチオニン、ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ピロリジン、スレオニン、トリプトファン、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、サリチルヒロキサム酸(salicylhyroxyamic)、5-スルホサリチル酸及びそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。
【0024】
<有機溶媒>
本発明の処理液に含まれてもよい有機溶剤は、水溶性であっても非水溶性であっても良い。
非水溶性溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1、4-ジオキサン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。
水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C6アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6ジオール、又はC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール若しくはチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のポリオール(トリオール)、グライム系溶媒(モノグライム、ジグライム等)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、アセトニトリルなどが挙げられる。なお、上記の水溶性有機溶剤には、例えばトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれている。しかし、該物質等は固体であっても水溶性を示し、さらに該物質等を含有する水溶液は水溶性有機溶剤と同様の性質を示し、同じ効果を期待して使用することができる。このため本明細書においては、便宜上、このような固体の物質であっても上記と同じ効果を期待して使用できる限り、水溶性有機溶剤の範疇に含むこととする。
【0025】
[pHについて]
本発明の処理液は、pHが9.5以上13.0以下である場合が好ましい。
処理液のpHとして更に好ましい範囲としての上限は、好ましい順に12.8、12.6、12.4、12.2、12.0、11.8であり、特に好ましくは11.6である。また下限としては、好ましい順に9.7、9.9、10.1、10.3、10.5、10.7、10.9、11.2であり特に好ましくは11.4である。すなわち最も好ましいpHの範囲は11.4以上11.6以下である。
なお、pHは組成によっては特別な調整を必要としない場合もあり、また上記pH調整剤によって調整することもできる。
【0026】
<製造方法>
本発明の処理液は、例えば以下の方法で製造することができる。ただし、この製造方法に限定されるものではない。
まず、必要に応じて用いる成分(C)水と成分(A)有機アルカリ性化合物、(B)界面活性剤を混合し、一液化する。
次に必要に応じてpH調整剤、有機添加剤、腐食抑制剤、有機溶剤を添加し、攪拌し合する。その後ろ過工程を経て、本発明の処理液となる。
【0027】
<本発明の処理液の使用方法>
本発明の処理液の使用方法としては、露光後のレジスト膜を処理する現像液として、基板加工後に基板表面に残存したレジストを剥離する剥離液として、前記剥離工程や現像工程後に基板表面に残存したレジストを処理する剥離液として、基板表面を洗浄するリンス液として、使用する方法がある。
このうち、フォトレジストの現像剤としての用途が有用であり、特にCMOS、CCD等の精密電子機器の電気光学表示装置用カラーフィルタにおいてアルカリ可溶型感光膜をアルカリ現像する際に用いられる。特に基材ウェーハとの密着性が悪い場合には有用である。
【実施例0028】
[実施例1~5、比較例1~8の処理液製造]
(A)成分、(B)成分を表1、2に記載の含有量(質量%)になるように正確に量り取り、成分(C)を加え10分攪拌し混合することで、実施例1~5、および比較例1~8の処理液を得た。
【0029】
[評価1]
5インチのシリコンウェーハ上に顔料分散カラーネガレジストカヤミラーDCF(日本化薬株式会社製)を膜厚0.4μmになるように塗布し、70℃、60秒でプリベークを行い、露光量600mJ/cm2で露光を実施した。塗布・露光に関してはNSR-2005i10C(株式会社ニコン製)を用いた。
次いで実施例1~3および比較例1~3の薬液を用い、10秒の浸漬現像を行い、超純水を用いて1分間リンスを実施し、窒素を用いてブロー乾燥した。光学顕微鏡にてパターン形状のエッジ、残膜、パターンの剥離を確認した。結果を表1に示す。
パターン線幅はL/S(ラインアンドスペース)50/50μmとして評価を行った。
各項目については以下の基準を用いて評価した。
パターンエッジ:〇きれいな直線性が得られた
×現像不足で直線性が得られなかった
-現像不足でパターンの確認ができなかった
残膜 〇未露光部レジストが現像液に溶解し、残渣が無かった
×未露光部レジストが現像液に完全に溶解せず、残渣があった(現像不足)
パターン剥離 :〇現像・リンス後に所望のL/Sパターンが残っていた
×現像・リンス後にL/Sパターンが剥離して残っていなかった
-現像不足でパターンの確認ができなかった
【0030】
【0031】
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
エマルゲンA-60:ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王株式会社製)
アデカトールPC-8:ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(株式会社ADEKA製)
ノイゲンXL-70:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル(第一工業製薬株式会社製)
ソフタノール70:セカンダリーアルコールエトキシレート(株式会社日本触媒)
【0032】
[評価2]
5インチのシリコンウェーハ上にUC-2L(3)NP(日本化薬株式会社製)を塗布、ついで80℃、100秒でベーク後200℃5分ベークし膜厚約0.06μmの下地膜を形成した。その上に顔料分散カラーネガレジストカヤミラーDCF(日本化薬株式会社製)を膜厚0.4μmになるように塗布し、70℃、60秒でプリベークを行い、所定のパターンフォトマスクを介して露光量600mJ/cm2で露光を実施した。塗布・露光に関してはNSR-2005i10C(株式会社ニコン製)を用いた。
次いで実施例1,2,4,5および比較例4,5,6,7,8の薬液を用い、300秒の浸漬現像を行い、超純水を用いて1分間リンスを実施し、窒素を用いてブロー乾燥した。光学顕微鏡にて、残膜、パターンの剥離を確認した。結果を表1に示す。
パターン線幅は0.5μmドットパターンの評価を行った。
各項目については以下の基準を用いて評価した。
残膜 〇未露光部レジストが現像液に溶解し、残渣が無かった
×未露光部レジストが現像液に完全に溶解せず、残渣があった(現像不足)
剥がれ
0.5μmドットパターンの残存率を0(すべてのパターンが剥がれている)~10(すべてのパターンが剥がれずに残存している)の数値で評価。
【0033】
【0034】
表1、2から明らかなように、本発明の処理液は、現像不足がなく、かつ優れたパターンエッジを実現することができるものである。
本発明の処理液は、特にフォトレジストのアルカリ現像液として有用であり、現像不足(残渣)やパターン剥離の無い良好なパターンエッジを形成することが可能である為、半導体デバイスや液晶デバイスをより高精細に製造することが可能である。