(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127231
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036238
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
(72)【発明者】
【氏名】今関 太一
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CC14
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD21
3D333CD23
3D333CD28
3D333CE20
3D333CE44
(57)【要約】
【課題】第2ハウジングが第1ハウジングに対してウォームホイールの軸回り方向に回転(揺動)することを抑制する電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、第1取付部を有する第1ハウジングと、第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、第1取付部に設けられウォームホイールの径方向に延びる凸部と、第2取付部に設けられて凸部が挿入され、且つ、径方向の長さが凸部よりも長い凹部と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるピニオン軸と、
前記ピニオン軸における第1方向の一方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、
第1方向と交差する第2方向に延び、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、
前記ピニオン軸を収容し且つ第1方向の一方側に第1取付部を有する第1ハウジングと、当該第1ハウジングに対して第1方向の一方側に隣接して配置され、前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容し、且つ、前記第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、
前記第1取付部および前記第2取付部のうちの一方に設けられて他方に向けて突出し、且つ、第1方向から見て、前記ピニオン軸に向けて前記ウォームホイールの径方向に延びる凸部と、
前記第1取付部および前記第2取付部のうちの前記他方に設けられて前記凸部が挿入される凹部と、
を備える、
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
第1方向に延びるピニオン軸と、
前記ピニオン軸における第1方向の一方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、
第1方向と交差する第2方向に延び、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、
前記ピニオン軸を収容し且つ第1方向の一方側に第1取付部を有する第1ハウジングと、当該第1ハウジングに対して第1方向の一方側に隣接して配置され、前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容し、且つ、前記第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、
前記第1取付部および前記第2取付部のうちの一方から他方に向けて突出するピンと、
前記第1取付部および前記第2取付部のうち前記他方に設けられ且つ前記ピンが挿入される止まり穴と、
を備え、
前記止まり穴は、第1方向から見て、前記ピニオン軸に向けて前記ウォームホイールの径方向に延びる長穴である、
電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記径方向に延びる一対の平行な外側面を有し、
前記凹部は、前記外側面に面し且つ当該外側面に沿って延びる一対の平行な内側面を有する、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記凸部の前記外側面と前記凹部の前記内側面との間には間隙が設けられる、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記第1取付部および前記第2取付部のうちの一方に設けられ且つ他方に向けて突出するピンと、
前記第1取付部および前記第2取付部のうち前記他方に設けられ且つ前記ピンが挿入される止まり穴と、
を備え、
前記止まり穴は、第1方向から見て、前記ピニオン軸に向けて前記径方向に延びる長穴である、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記第1ハウジングにおける第1方向の一方側には、
前記ピニオン軸の外周側であって前記第1取付部の内周側に配置され、且つ、第1方向の一方側に凸に形成される環状凸部が設けられ、
前記第2ハウジングにおける第1方向の他方側には、前記環状凸部に挿入される環状凹部が設けられ、当該環状凹部の内周面と前記環状凸部の外周面との間には間隙が設けられる、
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記ピンは、前記凸部および前記凹部の一方に設けられ、
前記止まり穴は、前記凸部および前記凹部の他方に設けられる、
請求項5に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記凸部の前記外側面および前記凹部の前記内側面は、第1方向から見て、前記ウォームシャフトに直交する方向に沿って延びる、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記止まり穴は、第1方向から見て、前記ウォームシャフトに直交する方向に沿って延びる、
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
前記ボルトの数は、3本以下である、
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電動パワーステアリング装置は、ピニオン軸と、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、ハウジングと、を備える。具体的には、ピニオン軸の軸方向の端部にウォームホイールが取り付けられる。ウォームホイールの径方向外側にはウォーム歯部が設けられ、当該ウォーム歯部は、ウォームシャフトのシャフト歯部に噛み合う。ウォームシャフトは、モータの出力軸に回転可能に取り付けられる。
【0003】
ハウジングは、ピニオン軸を収容する第1ハウジングと、ウォームホイールおよびウォームシャフトを収容する第2ハウジングと、を備える。第1ハウジングには、径方向外側に突出する複数の第1フランジが設けられ、第2ハウジングには、第1フランジに重なる第2フランジが複数設けられる。第1フランジは、ボルトを介して第2フランジに締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転するウォームシャフトからウォームホイールに力が伝達されると、その反作用としてウォームホイールからウォームシャフトに反力が加わる。当該反力は、ウォームホイールの中心軸の軸回り方向に向かう。ウォームシャフトは、第2ハウジングに軸受を介して取り付けられるため、前記反力により、第2ハウジングが第1ハウジングに対してウォームホイールの軸回り方向に回転(揺動)する可能性がある。
【0006】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、第2ハウジングが第1ハウジングに対してウォームホイールの軸回り方向に回転(揺動)することを抑制する電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、一態様に係る電動パワーステアリング装置は、第1方向に延びるピニオン軸と、前記ピニオン軸における第1方向の一方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、第1方向と交差する第2方向に延び、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、前記ピニオン軸を収容し且つ第1方向の一方側に第1取付部を有する第1ハウジングと、当該第1ハウジングに対して第1方向の一方側に隣接して配置され、前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容し、且つ、前記第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、前記第1取付部および前記第2取付部のうちの一方に設けられて他方に向けて突出し、且つ、第1方向から見て、前記ピニオン軸に向けて前記ウォームホイールの径方向に延びる凸部と、前記第1取付部および前記第2取付部のうちの前記他方に設けられて前記凸部が挿入される凹部と、を備える。
【0008】
前述したように、特許文献1では、回転するウォームシャフトからウォームホイールに力が伝達されると、その反作用としてウォームホイールからウォームシャフトに反力が加わる。当該反力は、ウォームホイールの中心軸の軸回り方向に向かうため、第2ハウジングが第1ハウジングに対してウォームホイールの軸回り方向に回転(揺動)する可能性がある。
【0009】
ここで、本開示においては、ボルトに加えて、第1取付部および第2取付部の一方に凹部を設け他方に凸部を設け且つ凹部に凸部を挿入する。また、凹部および凸部が延びる方向をウォームホイールの径方向に設定するため、ウォームホイールの軸回り方向と凹部および凸部が延びる方向とが略直交する。よって、第2ハウジングが回転しようとしても、凸部が凹部の内側面に当たってストッパーの作用をするため、第2ハウジングが第1ハウジングに対してウォームホイールの軸回り方向に回転(揺動)することが抑制される。また、凹部には凸部が挿入され、且つ、凹部の径方向の長さが凸部よりも長いため、凹部に対して凸部が径方向にスライド可能になる。このため、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離を変えて芯間距離の調整を行うことが可能となる。即ち、第1ハウジングに対する第2ハウジングの相対位置を変えると、ウォームホイールの中心軸と、ウォームシャフトの中心軸との距離が変わり、ウォームホイールのホイール歯部とウォームシャフトのシャフト歯部との噛み合い状態を調整することができる。
【0010】
一態様に係る電動パワーステアリング装置は、第1方向に延びるピニオン軸と、前記ピニオン軸における第1方向の一方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、第1方向と交差する第2方向に延び、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、前記ピニオン軸を収容し且つ第1方向の一方側に第1取付部を有する第1ハウジングと、当該第1ハウジングに対して第1方向の一方側に隣接して配置され、前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容し、且つ、前記第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、前記第1取付部および前記第2取付部のうちの一方から他方に向けて突出するピンと、前記第1取付部および前記第2取付部のうち前記他方に設けられ且つ前記ピンが挿入される止まり穴と、を備え、前記止まり穴は、第1方向から見て、前記ピニオン軸に向けて前記ウォームホイールの径方向に延びる長穴である。
【0011】
これによれば、本開示においては、ボルトに加えて、ピンと止まり穴により、第2ハウジングの回転(揺動)の抑制、および、ホイール歯部とシャフト歯部との噛み合いの調整を行うことができる。即ち、止まり穴が長穴であるため、ピンが止まり穴内を移動することにより、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離が変わる。特に、止まり穴は、径方向に延びる長穴であるため、止まり穴とウォームホイールの軸回り方向との交差角度がより直角に近くなる。よって、反力を受けた第2ハウジングが第1ハウジングに対して回転(揺動)することを抑制する際に有利になる。
【0012】
望ましい態様として、前記凸部は、前記径方向に延びる一対の平行な外側面を有し、前記凹部は、前記外側面に面し且つ当該外側面に沿って延びる一対の平行な内側面を有する。
【0013】
凸部の一対の外側面が平行でない場合および凹部の一対の内側面が平行でない場合と、本開示とを比較すると、本開示の方が、ウォームホイールの軸回り方向と外側面および内側面との交差角度がより直角に近くなる。従って、本開示によれば、第2ハウジングが第1ハウジングに対して回転(揺動)することがより抑制される。また、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離を変えて芯間距離の調整を行う場合においても、凹部に対して凸部が凹部に対して径方向に沿ってよりスムーズにスライドするため、ウォームホイールのホイール歯部とウォームシャフトのシャフト歯部との噛み合いをより高い精度で調整することができる。
【0014】
望ましい態様として、前記凸部の前記外側面と前記凹部の前記内側面との間には間隙が設けられる。これによれば、凹部に対して凸部が径方向に沿ってよりスムーズにスライドする。
【0015】
望ましい態様として、前記第1取付部および前記第2取付部のうちの一方に設けられ且つ他方に向けて突出するピンと、前記第1取付部および前記第2取付部のうち前記他方に設けられ且つ前記ピンが挿入される止まり穴と、を備え、前記止まり穴は、第1方向から見て、前記ピニオン軸に向けて前記径方向に延びる長穴である。
【0016】
前述した凹部および凸部に加えて、ピンと止まり穴により、第2ハウジングの回転(揺動)の抑制、および、ホイール歯部とシャフト歯部との噛み合いの調整を行うことができる。即ち、止まり穴が長穴であるため、ピンが止まり穴内を移動することにより、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離が変わる。特に、止まり穴は、径方向に延びる長穴であるため、止まり穴とウォームホイールの軸回り方向との交差角度がより直角に近くなる。よって、反力を受けた第2ハウジングが第1ハウジングに対して回転(揺動)することを抑制する際に有利になる。
【0017】
望ましい態様として、前記第1ハウジングにおける第1方向の一方側には、前記ピニオン軸の外周側であって前記第1取付部の内周側に配置され、且つ、第1方向の一方側に凸に形成される環状凸部が設けられ、前記第2ハウジングにおける第1方向の他方側には、前記環状凸部に挿入される環状凹部が設けられ、当該環状凹部の内周面と前記環状凸部の外周面との間には間隙が設けられる。
【0018】
従って、環状凸部を環状凹部に挿入した状態で、第1ハウジングに対して第2ハウジングを移動させることが可能である。このため、前述のように、ウォームホイールとウォームシャフトとの相対距離を変えることにより、ホイール歯部とシャフト歯部との噛み合い状態を調整することが可能となる。
【0019】
望ましい態様として、前記ピンは、前記凸部および前記凹部の一方に設けられ、前記止まり穴は、前記凸部および前記凹部の他方に設けられる。
【0020】
従って、ピンを凹部以外の部位に設け且つ止まり穴を凸部以外の部位に設ける場合よりも、ピン、止まり穴、凹部および凸部を設置する面積が小さくなる。なお、本開示では、ピンを凹部に設け、止まり穴を凸部に設けたが、ピンを凸部に設け、止まり穴を凹部に設けてもよい。さらに、本発明は、ピンを凹部以外の部位に設け且つ止まり穴を凸部以外の部位に設ける態様も含む。
【0021】
望ましい態様として、前記凸部の前記外側面および前記凹部の前記内側面は、第1方向から見て、前記ウォームシャフトに直交する方向に沿って延びる。ウォームホイールからの反力が最も大きく掛かる部位はウォームシャフトである。従って、第1方向から見て、凸部の外側面および凹部の内側面をウォームシャフトに直交するように配置することにより、反力を受けた第2ハウジングが第1ハウジングに対して回転(揺動)することを抑制することがより有利になる。
【0022】
また、凹部に沿って凸部をスライドさせることにより、ウォームシャフトの中心軸に直交する方向にウォームシャフトを移動して、ウォームホイールのホイール歯部とウォームシャフトのシャフト歯部との噛み合いを調整することが可能となる。
【0023】
望ましい態様として、前記止まり穴は、第1方向から見て、前記ウォームシャフトに直交する方向に沿って延びる。
【0024】
従って、止まり穴に沿ってピンを移動させることにより、ウォームシャフトの中心軸に直交する方向にウォームシャフトを移動して、ウォームホイールのホイール歯部とウォームシャフトのシャフト歯部との噛み合いを調整することが可能となる。
【0025】
望ましい態様として、前記ボルトの数は、3本以下である。前述のように、本開示では、凹部、凸部、ピンおよび止まり穴を設ける。従って、ボルトの数をより少ない本数、例えば3本以下にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、第2ハウジングが第1ハウジングに対してウォームホイールの軸回り方向に回転(揺動)することを抑制する電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【
図6】
図6は、
図5から第2ハウジングを取り外した状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図6からウォームホイールとウォームシャフトを取り外した状態を示す模式図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置の一部を示す模式図であり、第1実施形態に係る
図6に対応する図である。
【
図16】
図16は、
図15からウォームホイールとウォームシャフトを取り外した状態を示す模式図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る第2ハウジングを示す斜視図であり、第1実施形態に係る
図10に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、同一構造の部位には同一符号を付けて、説明を省略する。なお、本実施形態において、Z方向を第1方向とし、X方向を第2方向とする。Z方向は、Y方向と交差する。X方向は、Y方向およびZ方向と交差する。Z1側は第1方向の一方側、Z2側は第1方向の他方側である。
【0029】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2は、
図1の一部を示す斜視図である。
図3は、
図1のIII-III線による断面図である。
【0030】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール10と、第1ステアリングシャフト11と、第2ステアリングシャフト12と、操舵ピニオン軸13と、ラック軸15と、タイロッド16と、アシストピニオン軸(ピニオン軸)21と、ウォームホイール23と、ウォームシャフト27と、モータ44と、ハウジング400と、を備える。ハウジング400は、操舵側ハウジング3と、アシスト側ハウジング40と、を含む。電動パワーステアリング装置100は、例えばいわゆるデュアルピニオンタイプのステアリング装置である。なお、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、デュアルピニオンタイプに限定されず、シングルピニオンタイプにも適用することができる。
【0031】
図1に示すように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11に連結され、第1ステアリングシャフト11は、ユニバーサルジョイント111を介して第2ステアリングシャフト12に連結される。第2ステアリングシャフト12は、ユニバーサルジョイント121を介して操舵ピニオン軸13に連結される。操舵ピニオン軸13の下端部の外周には、ピニオン歯14が設けられる。
【0032】
図1に示すように、ラック軸15は、X方向に延びる。ここで、ラック軸15の中心軸を中心軸AX2(
図2参照)とすると、中心軸AX2の軸方向は、X方向に沿っている。即ち、ラック軸15は、中心軸AX2の軸方向に延びる。X方向は、例えば車両の車幅方向である。
図1に示すように、ラック軸15の部位のうちX2側の外周には、ラック歯151が設けられる。ラック歯151は、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14と噛み合う。ラック軸15の部位のうちX1側の外周には、ラック歯152が設けられる。ラック歯152は、アシストピニオン軸21のピニオン歯22と噛み合う。ラック軸15のX1側およびX2側の両端部は、タイロッド16を介して車輪17に連結される。
【0033】
以上説明したように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11、第2ステアリングシャフト12を介して操舵ピニオン軸13に連結される。従って、運転者がステアリングホイール10に対して、左または右方向に操舵トルクを付与することにより、第1ステアリングシャフト11と第2ステアリングシャフト12とを介して操舵ピニオン軸13に操舵トルクが伝達される。そして、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14は、ラック歯151と噛み合うため、操舵トルクは、ラック軸15がX方向に移動する力に変換される。
【0034】
また、図示しない操舵トルクセンサにより、ステアリングホイール10に付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じて、図示しないコントローラがモータ44に電流を供給する。モータ44に電流が供給されると、モータ44にウォームホイール23とウォームシャフト27とを介して接続されたアシストピニオン軸21に、モータ44が発生させたアシストトルクが伝達され、アシストピニオン軸21に接続されたラック軸15がX方向に移動するアシスト力が発生する。
【0035】
すなわち、ステアリングホイール10を操舵することにより生じる操舵トルクに応じてモータ44を駆動することにより、ラック軸15がX方向に移動することを補助することができる。
【0036】
次に、ハウジング400について説明する。
図1および
図2に示すように、ハウジング400は、X2側の操舵側ハウジング3とX1側のアシスト側ハウジング40とを含む。
図2に示すように、操舵側ハウジング3のX2側の端部およびアシスト側ハウジング40のX1側の端部には、それぞれ車体取付部31、413が取り付けられる。車体取付部31には、貫通孔32が設けられ、貫通孔32に締結部材(例えばボルト)が挿入される。車体取付部413には、貫通孔414が設けられ、貫通孔414に締結部材(例えばボルト)が挿入される。即ち、締結部材を貫通孔32、414に貫通させたのち車体に締結することにより、操舵側ハウジング3およびアシスト側ハウジング40が車体に取り付けられる。
【0037】
操舵側ハウジング3には、操舵ピニオン軸13およびラック軸15におけるX2側の部位が収容される。具体的には、操舵ピニオン軸13の先端部は、操舵ピニオン軸収容部33の内部に収容される。アシスト側ハウジング40には、アシストピニオン軸21、ウォームホイール23、ウォームシャフト27およびラック軸15におけるX2側の部位が収容される。
【0038】
図2および
図3に示すように、アシスト側ハウジング40は、ラック軸収容部411と、第1ハウジング4と、第2ハウジング5と、を備える。ラック軸収容部411は、ラック軸15を収容する。第1ハウジング4は、アシストピニオン軸(ピニオン軸)21を収容する。第1ハウジング4は、本体部41と、本体部41におけるZ1側(第1方向の一方側)の部位に設けられるフランジ(第1取付部)42とを有する。第2ハウジング5は、第1ハウジング4に対してZ1側に隣接して配置される。第1ハウジング4および第2ハウジング5については、詳細に後述する。
【0039】
図3に示すように、アシストピニオン軸21は、Z方向(第1方向)に延びる。アシストピニオン軸21は、ピニオン歯22を有する。アシストピニオン軸21におけるZ1側の部位は、軸受242を介してフランジ42に回転可能に支持される。アシストピニオン軸21におけるZ2側の部位は、軸受241を介して本体部41に回転可能に支持される。アシストピニオン軸21におけるZ2側の端部にはナット25が締結される。ナット25は、軸受241を支持する。
【0040】
ラック軸15は、Y1側の側面にラック歯152を有する。ラック歯152は、ピニオン歯22と噛み合う。ラック軸15におけるY2側の側面は、湾曲面である。ラック軸15のY2側には、ラックガイド153と、スプリング154と、封止部材155と、が設けられる。具体的には、筒状のラックガイド収容部412が第1ハウジング4からY2側に向けて突出する。ラックガイド収容部412の内側に、ラックガイド153と、スプリング154と、が収容される。ラックガイド収容部412のY2側の端部には、封止部材155が嵌められる。スプリング154が縮んだ状態で、ラックガイド153とスプリング154とが収容されるため、スプリング154がラックガイド153をY1側に押すと、ラックガイド153がアシストピニオン軸21に押し付けられる。これにより、ラック軸15のラック歯152とアシストピニオン軸21のピニオン歯22との噛み合いが保持される。
【0041】
図3に示すように、ウォームホイール23は、アシストピニオン軸21のZ1側の端部に嵌合される。ウォームホイール23は、芯金部231と、ホイール歯部232とを備える。ホイール歯部232は、ウォームシャフト27のシャフト歯部271に噛み合う。ウォームシャフト27は、中心軸AX1を有する。中心軸AX1は、X方向(第2方向)に延びる。ウォームシャフト27は、モータ44(
図2参照)の出力軸に回転可能に取り付けられる。即ち、
図2に示すように、モータ取付フランジ部7は、第2ハウジング5の一部であり、モータ取付フランジ部7にモータ44が取り付けられる。このモータ44が回転駆動すると、出力軸と共にウォームシャフト27が回転し、ウォームシャフト27に噛み合うウォームホイール23も回転する。
【0042】
次に、第1ハウジング4および第2ハウジング5について説明する。
図3に示すように、第1ハウジング4は、本体部41と、フランジ42(第1取付部310)と、を備える。
【0043】
本体部41は、Z方向に延びる筒状の部材である。本体部41は、アシストピニオン軸21における軸受242が取り付けられる部位よりもZ2側の部位を収容する。本体部41におけるZ2側の端部は開口され、当該開口はキャップ26で封止される。
【0044】
フランジ42は、本体部41におけるZ1側の端部から径方向外側に向けて延びる。フランジ42は、第1取付部310とも称する。フランジ42は、径方向内側に環状凸部401を有する。環状凸部401は、Z1側に凸に形成される。環状凸部401は、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って延びる。環状凸部401の外周面401aには、シール部材収容溝514が周方向に沿って設けられる。シール部材収容溝514は、径方向内側に凹む。シール部材収容溝514には、シール部材Sが収容される。環状凸部401の内周面401bには、軸受242の外輪が当接する。環状凸部401は、アシストピニオン軸21の外周側であってフランジ42の内周側に配置される。なお、環状凸部401に対してZ1側には、ウォームホイール23が配置される。
【0045】
図3に示すように、第2ハウジング5は、ウォームホイール23およびウォームシャフト27を収容する。第2ハウジング5は、側面部51と、天面部52と、第2取付部330とを有する。側面部51は、ウォームホイール23およびウォームシャフト27の側部を外周側から覆う。天面部52は、ウォームホイール23およびウォームシャフト27の上部(Z1側の部位)をZ1側から覆う。側面部51には、環状凸部401に挿入される環状凹部402が設けられる。
図3では明記していないが、環状凹部402の内周面402aと環状凸部401の外周面401aとの間には、径方向に小さい間隙が設けられる。
【0046】
第2取付部330は、例えば、フランジ331であり、当該フランジ331は、第1取付部310のフランジ42にボルトBLを介して締結される。本実施形態では、Z2側からZ1側に向けてボルトBLを挿入して締結する。即ち、フランジ42には、ボルトBLの雄ねじ部220が貫通する第1ボルト孔42aが設けられ、フランジ331には、雌ねじ部332を有する第2ボルト孔333が設けられる。ボルトBLの頭部210は、フランジ42の下面に当接する。ボルトBLの雄ねじ部220は、フランジ42の第1ボルト孔42aを貫通してフランジ331の雌ねじ部332に噛みあう。これにより、フランジ42とフランジ331とがボルトBLを介して固定される。以下、ボルトBLの雄ねじ部220が貫通する貫通孔を第1ボルト孔とも呼び、雄ねじ部220が噛み合う雌ねじ部332を第2ボルト孔とも呼ぶ。
【0047】
なお、ボルトBLの上下位置は、反対であってもよい。即ち、ボルトBLの頭部210がZ1側で雄ねじ部220がZ2側であり、第2取付部330のフランジ331に第1ボルト孔を形成し、フランジ42に第2ボルト孔を形成してもよい。
【0048】
次に、第1取付部および第2取付部に設けられるフランジについて具体的に説明する。
図4は、
図1の一部を示す斜視図である。
図5は、
図4を別の方向から見た斜視図である。
図6は、
図5から第2ハウジングを取り外した状態を示す模式図である。
【0049】
図4から
図6に示すように、第1取付部310であるフランジ42は、第1フランジ424と第2フランジ425A、425Bとを含み、第2取付部330であるフランジ331は、第3フランジ334と第4フランジ335A、335Bとを含む。
【0050】
第1フランジ424は、第3フランジ334に対応する。具体的には、第1フランジ424のZ1側に第3フランジ334が重なる。第2フランジ425Aは、第4フランジ335Aに対応する。具体的には、第2フランジ425AのZ1側に第4フランジ335Aが重なる。第2フランジ425Bは、第4フランジ335Bに対応する。具体的には、第2フランジ425BのZ1側に第4フランジ335Bが重なる。
【0051】
従って、第1フランジ424および第3フランジ334は、Z方向から見て、ウォームホイール23に対してウォームシャフト27の反対側(即ち、ウォームホイール23に対してY2側)に位置する。また、第2フランジ425A、425Bと第4フランジ335A、335Bとは、Z方向から見て、ウォームシャフト27に対してウォームホイール23の反対側(即ち、ウォームシャフト27に対してY1側)に位置する。第2フランジ425Aおよび第4フランジ335Aは、第2フランジ425Bおよび第4フランジ335Bに対してX2側に位置する。
【0052】
また、第1フランジ424、第2フランジ425Aおよび第2フランジ425Bには、それぞれボルト孔424a、425Aa、425Baが設けられる。第3フランジ334、第4フランジ335Aおよび第4フランジ335Bには、それぞれボルト孔334a、335Aa、335Baが設けられる。
【0053】
ボルト孔424aは、ボルト孔334aに対応する。ボルト孔424aとボルト孔334aとの一方は、前述した第1ボルト孔であり、他方は第2ボルト孔である。ボルト孔425Aaは、ボルト孔335Aaに対応する。ボルト孔425Aaとボルト孔335Aaとの一方は、前述した第1ボルト孔であり、他方は第2ボルト孔である。ボルト孔425Baは、ボルト孔335Baに対応する。ボルト孔425Baとボルト孔335Baとの一方は、前述した第1ボルト孔であり、他方は第2ボルト孔である。
【0054】
また、
図3および
図6に示すように、環状凸部401に対してZ1側には、ウォームホイール23が配置される。
【0055】
次に、本実施形態に係る凸部70、凹部80、ピン630について説明する。
図7は、
図6からウォームホイールとウォームシャフトを取り外した状態を示す模式図である。
図8は、
図7の一部を拡大した斜視図である。
図9は、
図7のIX-IX線による断面図である。
【0056】
図7および
図8に示すように、第1取付部310であるフランジ42のうち、環状凸部401よりもY1側の部位には、凹部80およびピン630が設けられる。
【0057】
凹部80は、端80aから端80bまでY方向に沿って延びる。換言すると、凹部80は、Z方向から見て、中心軸AX3に向けてウォームホイール23(
図3、
図6参照)の径方向に延びる。具体的には、凹部80は、フランジ42の上面84よりも一段で凹んだ溝である。
図8に示すように、凹部80は、底面81および内側面82、83に面する。底面81および内側面82、83は、平坦面である。底面81は、Y方向およびX方向に延びる。内側面82、83は、上面84からZ2側に向けて底面81まで延びる。内側面82、83と底面81との交差角度は、例えば、90度(直角)である。内側面82と内側面83とは、X方向に間隔をおいて互いに平行に延びる。
【0058】
図9に示すように、底面81には、Z2側に凹む止まり穴610が設けられる。止まり穴610の内周面は、例えば、円筒面である。止まり穴610には、ピン630が嵌まる。例えば、ピン630の軸方向の略半分が止まり穴610に嵌まる。即ち、底面81から、ピン630の軸方向の略半分がZ1側に突出する。また、例えば、ピン630の外周面と止まり穴610の内周面とが当接しており、ピン630の外周面と止まり穴610の内周面との隙間はない。例えば、内側面82と内側面83とのX方向の略中央部にピン630が配置される。
【0059】
次に、本実施形態に係る凸部70について説明する。
図10は、第2ハウジングを示す斜視図である。
図11は、
図10の一部を拡大した斜視図である。
図12は、
図11のXII-XII線による断面図である。
図13は、
図8のXIII-XIII線による断面図である。
図14は、
図8のXIV-XIV線による断面図である。
【0060】
図10および
図11に示すように、第2取付部330のうち、Y1側の部位には、凸部70が設けられる。凸部70は、端70aから端70bまでY方向に沿って延びる。換言すると、凸部70は、Z方向から見て、中心軸AX3に向けてウォームホイール23(
図3、
図6参照)の径方向に延びる。凸部70は、第2取付部330の下面74よりもZ2側に凸の直方体の形状を有する。
図11に示すように、凸部70は、天面71および外側面72、73を有する。天面71および外側面72、73は、平坦面である。天面71は、Y方向およびX方向に延びる。外側面72、73は、天面71からZ1側に向けて下面74まで延びる。外側面72、73と天面71との交差角度は、例えば、90度(直角)である。外側面72と外側面73とは、X方向に間隔をおいて互いに平行に延びる。
【0061】
なお、凹部80の長さは、
図7に示す端80aから端80bまでの距離であり、凸部70の長さは、
図11に示す端70aから端70bまでの距離である。凹部80の長さは、凸部70の長さよりも長い。また、凸部70が凹部80に挿入された状態では、外側面72、73は、内側面82、83に沿って延びる。従って、凸部70は、凹部80に挿入可能であり、且つ、凹部80に対して凸部70がY方向(ウォームホイール23の径方向)にスライド可能である。凸部70の外側面72、73と凹部80の内側面82、83との間には間隙が設けられる。
【0062】
また、
図11から
図14に示すように、天面71には、Z1側に凹む止まり穴620が設けられる。止まり穴620は、Z方向から見て、中心軸AX3に向けてウォームホイール23(
図3、
図6参照)の径方向(Y方向)に延びる長方形の形状を有する長穴である。
図11に示すように、止まり穴620のY方向に沿った距離は、距離L1である。止まり穴620のX方向に沿った距離は、距離L2である。止まり穴620のZ方向に沿った距離(深さ)は、距離L3である。距離L1は、ピン630の直径よりも大きい。距離L1は、距離L2よりも大きい。距離L2は、ピン630の直径以下である。
図14に示すように、凸部70が凹部80に挿入された状態では、ピン630のZ1側の端は、凹部80の底面81より距離L4だけZ1側に突出し、止まり穴620の底には当接しない。
【0063】
ここで、
図6に示すように、凹部80は、Z方向から見て、中心軸AX1に対して直交する。換言すると、凸部70の外側面72、73および凹部80の内側面82、83は、Z方向から見て、中心軸AX1に直交する方向に沿って延びる。また、止まり穴620も、Z方向から見て、中心軸AX1に直交する方向に沿って延びる。そして、第2ハウジング5は、第1ハウジング4に対して
図6の矢印で示す方向D1に沿って移動(スライド)可能である。具体的には、方向D1は、中心軸AX1に直交する方向である。
【0064】
以上説明したように、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置100は、アシストピニオン軸21(ピニオン軸)と、ウォームホイール23と、ウォームシャフト27と、ハウジング400と、第1取付部310に設けられる凸部70と、第2取付部330に設けられる凹部80と、を備える。ハウジング400は、第1取付部310を有する第1ハウジング4と、第2取付部330を有する第2ハウジング5とを含む。
【0065】
前述したように、特許文献1では、回転するウォームシャフトからウォームホイールに力が伝達されると、その反作用としてウォームホイールからウォームシャフトに反力が加わる。当該反力は、ウォームホイールの中心軸の軸回り方向に向かうため、第2ハウジングが第1ハウジングに対してウォームホイールの軸回り方向に回転(揺動)する可能性がある。
【0066】
ここで、本実施形態においては、ボルトBLに加えて、第1取付部310および第2取付部330の一方に凹部80を設け他方に凸部70を設け且つ凹部80に凸部70を挿入する。また、凹部80および凸部70が延びる方向をウォームホイール23の径方向に設定するため、ウォームホイール23の軸回り方向と凹部80および凸部70が延びる方向とが略直交する。よって、第2ハウジング5が回転しようとしても、凸部70が凹部80の内側面に当たってストッパーの作用をするため、第2ハウジング5が第1ハウジング4に対してウォームホイール23の軸回り方向に回転(揺動)することが抑制される。
【0067】
また、凹部80には凸部70が挿入され、且つ、凹部80の径方向の長さが凸部70よりも長いため、凹部80に対して凸部70がスライド可能になる。このため、ウォームホイール23とウォームシャフト27との距離を変えて芯間距離の調整を行うことが可能となる。即ち、第1ハウジング4に対する第2ハウジング5の相対位置を変えると、第1ハウジング4に設けられるウォームホイール23の中心軸AX3と、第2ハウジング5に設けられるウォームシャフト27の中心軸AX1との距離が変わり、ウォームホイール23のホイール歯部232とウォームシャフト27のシャフト歯部271との噛み合いを調整することができる。
【0068】
凸部70は、径方向に延びる一対の平行な外側面72、73を有する直方体の形状を有する。凹部80は、外側面72、73に沿って延びる一対の平行な内側面82、83を有する。
【0069】
凸部70の外側面72、73が平行でない場合および凹部80の内側面82、83が平行でない場合と比較すると、本実施形態の方が、ウォームホイール23の軸回り方向と、外側面72、73および内側面82、83と、の交差角度がより直角に近くなる。従って、本実施形態によれば、第2ハウジング5が第1ハウジング4に対して回転(揺動)することがより抑制される。また、ウォームホイール23とウォームシャフト27との距離を変えて芯間距離の調整を行う場合においても、ウォームホイール23のホイール歯部232とウォームシャフト27のシャフト歯部271との噛み合いをより高い精度で調整することができる。
【0070】
凸部70の外側面72、73と凹部80の内側面82、83との間には間隙が設けられる。このため、凹部80に対して凸部70が径方向に沿ってよりスムーズにスライドする。
【0071】
第1取付部310に設けられるピン630と、第2取付部330に設けられ且つピン630が挿入される止まり穴620と、を備える。止まり穴620は、Z方向から見て、中心軸AX1に向けて径方向に延びる長穴である。
【0072】
前述した凹部80および凸部70に加えて、ピン630と止まり穴620により、第2ハウジング5の回転(揺動)の抑制、および、ホイール歯部232とシャフト歯部271との噛み合いの調整を行うことができる。即ち、止まり穴620が長穴であるため、ピン630が止まり穴620内を移動することにより、ウォームホイール23とウォームシャフト27との距離が変わる。特に、止まり穴620は、径方向に延びる長穴であるため、止まり穴620とウォームホイール23の軸回り方向との交差角度がより直角に近くなる。よって、反力を受けた第2ハウジング5が第1ハウジング4に対して回転(揺動)することを抑制する際に有利になる。
【0073】
なお、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置100では、凹部80および凸部70に加えて、ピン630と止まり穴620を設けているが、本発明は、両者を備える態様に限定されない。即ち、本発明に係る電動パワーステアリング装置100では、凹部80および凸部70のみであっても、第2ハウジング5の回転(揺動)の抑制、および、ホイール歯部232とシャフト歯部271との噛み合いの調整を行うことができる。また、ピン630と止まり穴620のみであっても、第2ハウジング5の回転(揺動)の抑制、および、ホイール歯部232とシャフト歯部271との噛み合いの調整を行うことができる。
【0074】
第1ハウジング4のZ1側には環状凸部401が設けられ、第2ハウジング5のZ2側には、環状凹部402が設けられる。環状凹部402の内周面402aと環状凸部401の外周面401aとの間には、間隙が設けられる。
【0075】
従って、環状凸部401に環状凹部402を挿入した状態で、第1ハウジング4に対して第2ハウジング5を移動させることが可能である。このため、前述のように、ウォームホイール23とウォームシャフト27との相対距離を変えることにより、ホイール歯部232とシャフト歯部271との噛み合い状態を調整することが可能となる。
【0076】
ピン630は、凹部80に設けられ、止まり穴620は、凸部70に設けられる。従って、ピン630を凹部80以外の部位に設け且つ止まり穴620を凸部70以外の部位に設ける場合よりも、ピン630、止まり穴620、凹部80および凸部70を設置する面積が小さくなる。なお、本実施形態では、ピン630を凹部80に設け、止まり穴620を凸部70に設けたが、ピン630を凸部70に設け、止まり穴620を凹部80に設けてもよい。さらに、本発明は、ピン630を凹部80以外の部位に設け且つ止まり穴620を凸部70以外の部位に設ける態様も含む。
【0077】
凸部70の外側面72、73および凹部80の内側面82、83は、Z方向から見て、ウォームシャフト27に直交する方向に沿って延びる。
【0078】
ウォームホイール23からの反力が最も大きく掛かる部位はウォームシャフト27である。従って、Z方向から見て、凸部70の外側面72、73および凹部80の内側面82、83をウォームシャフト27に直交するように配置することにより、反力を受けた第2ハウジング5が第1ハウジング4に対して回転(揺動)することを抑制することがより有利になる。
【0079】
また、凹部80に沿って凸部70をスライドさせることにより、ウォームシャフト27の中心軸AX1に直交する方向にウォームシャフト27を移動して、ウォームホイール23のホイール歯部232とウォームシャフト27のシャフト歯部271との噛み合いを調整することが可能となる。
【0080】
止まり穴620は、Z方向から見て、ウォームシャフト27に直交する方向に沿って延びる。従って、止まり穴620に沿ってピン630を移動させることにより、ウォームシャフト27の中心軸AX1に直交する方向にウォームシャフト27を移動して、ウォームホイール23のホイール歯部232とウォームシャフト27のシャフト歯部271との噛み合いを調整することが可能となる。
【0081】
ボルトBLの数は、3本以下である。前述のように、本実施形態では、凹部80、凸部70、ピン630および止まり穴620を設けて、第1取付部310に第2取付部330を支持するため、ボルトBLの数をより少ない本数、例えば3本以下にすることができる。
【0082】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。
図15は、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置の一部を示す模式図であり、第1実施形態に係る
図6に対応する図である。
図16は、
図15からウォームホイールとウォームシャフトを取り外した状態を示す模式図である。
図17は、第2実施形態に係る第2ハウジングを示す斜視図であり、第1実施形態に係る
図10に対応する図である。
図18は、
図16の一部を拡大した模式図である。
図19は、
図17の一部を拡大した斜視図である。
【0083】
第2実施形態では、第1実施形態に対して、凹部および凸部の延びる方向と、ピンが挿入される止まり穴(長穴)の延びる方向が異なる。以下、当該異なる点を中心に説明する。
【0084】
図16および
図18に示すように、第1取付部310であるフランジ42のうち、環状凸部401よりもY1側の部位で且つX1側よりの部位には、凹部80Aおよびピン630が設けられる。凹部80Aは、内側面85A(端80Aa)から内側面86A(端80Ab)まで延びる。延びる方向は、Z1側からZ2側に向けてZ方向から見た場合に、Y方向に対して反時計回り方向に傾いた方向である。換言すると、凹部80Aは、Z方向から見て、中心軸AX3に向けてウォームホイール23(
図3、
図6参照)の径方向に延びる。
図18に示すように、凹部80Aは、底面81A、内側面82A、83A、85A、86Aに面する。内側面82Aと内側面83Aとは、X方向に間隔をおいて互いに平行に延びる。内側面82Aと内側面83Aとの距離は、距離L12である。内側面85Aと内側面86Aとは、Y方向に間隔をおいて互いに平行に延びる。内側面85Aと内側面86Aとの距離は、距離L11である。底面81Aには、円筒面の形状を有する止まり穴が設けられ、当該止まり穴にピン630が嵌められる。底面81Aからピン630がZ1側に突出する。
【0085】
図17および
図19に示すように、第2取付部330のうち、凹部80Aに対応する部位には、凸部70Aが設けられる。凸部70Aは、端70Aaから端70Abまで延びる。換言すると、凸部70Aは、Z方向から見て、中心軸AX3に向けてウォームホイール23(
図3、
図6参照)の径方向に延びる。凸部70Aは、直方体の形状を有する。
図19に示すように、凸部70Aは、天面71Aおよび外側面72A、73A、75A、76Aを有する。凸部70Aにおける径方向の長さは、距離L13である。換言すると、外側面75A(端70Aa)と外側面76A(端70Ab)との距離は、距離L13である。凸部70Aにおける幅方向の長さは、距離L14である。換言すると、外側面72Aと外側面73Aとの距離は、距離L14である。
【0086】
前述した凹部80Aにおける距離L11は、凸部70Aにおける距離L13よりも大きい。凹部80Aにおける距離L12は、凸部70Aにおける距離L14よりも大きい。従って、凸部70Aは、凹部80Aに挿入可能である。なお、凸部70Aには、止まり穴620Aが設けられる。止まり穴620Aの大きさは、止まり穴620と同じである。即ち、止まり穴620における距離L1、L2、L3は、止まり穴620Aにおける距離L1、L2、L3と同一である。止まり穴620Aは長穴であり、止まり穴620Aの長穴の延びる方向は、凸部70Aおよび凹部80Aが延びる方向と同一である。即ち、
図15に示すように、止まり穴620Aの長穴の延びる方向は、方向D2である。方向D2は、方向D2Aと方向D2Bとが合成される方向である。方向D2Aは、中心軸AX1に直交する方向である。方向D2Bは、中心軸AX1と平行な方向である。よって、第2ハウジング5は、第1ハウジング4に対して方向D2に移動(スライド)可能である。
【0087】
このように、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置においては、第1実施形態による作用効果に加えて、第1ハウジング4に対して第2ハウジング5を方向D2に移動(スライド)可能となる作用効果を有する。方向D2は、前述のように、中心軸AX1に直交する方向と中心軸AX1と平行な方向とが合成される方向である。換言すると、中心軸AX1に対して斜めに交差する方向である。従って、例えば、シャフト歯部271をホイール歯部232に対してウォームホイール23の径方向に向けて近づけつつ、同時に、シャフト歯部271をホイール歯部232に対してウォームホイール23の周方向に向けて近づける調整等が可能となる。
【符号の説明】
【0088】
3 操舵側ハウジング
4 第1ハウジング
5 第2ハウジング
7 モータ取付フランジ部
10 ステアリングホイール
11 第1ステアリングシャフト
12 第2ステアリングシャフト
13 操舵ピニオン軸
14 ピニオン歯
15 ラック軸
16 タイロッド
17 車輪
21 アシストピニオン軸(ピニオン軸)
22 ピニオン歯
23 ウォームホイール
26 キャップ
27 ウォームシャフト
31 車体取付部
32 貫通孔
33 操舵ピニオン軸収容部
40 アシスト側ハウジング
41 本体部
42 フランジ(第1取付部)
44 モータ
51 側面部
52 天面部
70 凸部
70a、70b 端
71 天面
72、73 外側面
74 下面
70A 凸部
70Aa、70Ab 端
71A 天面
72A、73A、75A、76A 外側面
80 凹部
80a、80b 端
81 底面
82、83 内側面
84 上面
80A 凹部
80Aa、80Ab 端
81A 底面
82A、83A、85A、86A 内側面
100 電動パワーステアリング装置
111 ユニバーサルジョイント
121 ユニバーサルジョイント
151、152 ラック歯
153 ラックガイド
154 スプリング
155 封止部材
220 雄ねじ部
231 芯金部
232 ホイール歯部
241、242 軸受
271 シャフト歯部
310 第1取付部
330 第2取付部
331 フランジ(第2取付部)
332 雌ねじ部
333 第2ボルト孔
334 第3フランジ
334a、335Aa、335Ba ボルト孔
335A、335B 第4フランジ
400 ハウジング
401 環状凸部
401a 外周面
401b 内周面
402 環状凹部
402a 内周面
610、620、620A 止まり穴
630 ピン
AX1、AX2、AX3 中心軸
BL ボルト
S シール部材