(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127236
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】化粧品原料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240912BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240912BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240912BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240912BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q19/00
A61K8/9789
A61K8/49
A61Q19/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036245
(22)【出願日】2023-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】500094543
【氏名又は名称】新日本製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】塘口 一光
(72)【発明者】
【氏名】松本 大志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩基
(72)【発明者】
【氏名】宮地 佑希野
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC841
4C083AC842
4C083BB51
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】皮膚状態の改善効果に優れ、特に、皮膚バリア機能の向上に寄与する化粧品原料を提供する。
【解決手段】本発明を適用した化粧品原料は、化粧料における全量基準で重量比率が、ヒドロキシプロリン:0.1%、アセチルヒドロキシプロリン:0.1%、カンゾウフラボノイド:0.00025%、を含む組成を有している。また、本化粧品原料は、ヒドロキシプロリン、アセチルヒドロキシプロリン及びカンゾウフラボノイドが、上記の配合量となるようにして、各種原料と混合して化粧料とすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロリンと、
アセチルヒドロキシプロリンとを含有し、
前記ヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.00781%~0.25%の範囲内であり、
前記アセチルヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.00781%~0.25%の範囲内である
化粧品原料。
【請求項2】
前記ヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%~0.2%の範囲内であり、
前記アセチルヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%~0.2%の範囲内である
請求項1に記載の化粧品原料。
【請求項3】
カンゾウフラボノイドを含有する
請求項2に記載の化粧品原料。
【請求項4】
シコンエキスを含有する
請求項2に記載の化粧品原料。
【請求項5】
前記ヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%であり、
前記アセチルヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%であり、
前記カンゾウフラボノイドは、含有量が、化粧料における全量基準で0.00025%である
請求項3に記載の化粧品原料。
【請求項6】
前記ヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%であり、
前記アセチルヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%であり、
前記シコンエキスは、含有量が、化粧料における全量基準で0.01%である
請求項4に記載の化粧品原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品原料に関する。詳しくは、皮膚状態の改善効果に優れ、特に、皮膚バリア機能の向上に寄与する化粧品原料に係るものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、その形態変化に繋がる様々な要因にさらされている。例えば、乾燥、紫外線等の刺激性物質による外的要因又はホルモンバランスの乱れ等の内的要因が原因となって肌荒れが生じる。
【0003】
また、肌荒れにより、皮膚バリア機能の低下、角層水分量の低下、表皮ターンオーバーの亢進、角質の粗造化等の現象が伴って生じるものとなる。
【0004】
また、皮膚では、加齢とともにシワ、タルミ、くすみ、色素沈着等の老化現象が生じる。特に、シワやタルミといった形態変化は、真皮マトリックスの90%以上を占めるコラーゲンによる影響が大きいと考えられている。
【0005】
このコラーゲンの量は、加齢と共に減少し、コラーゲンの減少で真皮構造の形成が不完全になるため、皮膚が衰え、シワ、タルミの大きな要因の一つとなっている。
【0006】
ここで、肌荒れの防止や皮膚状態の改善のため、従来、ヒドロキシプロリンを含有する化粧料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このヒドロキシプロリンは、皮膚コラーゲン中に多く含まれるコラーゲン特有のアミノ酸であり、肌のコラーゲン構造の安定化に寄与する効果が知られている。
【0008】
例えば、特許文献1に記載された皮膚化粧料では、(A)D-アミノ酸、その誘導体及び/又は塩の1種又は2種以上と、(B)β-アラニン誘導体及びその塩の1種又は2種以上とを含有することを特徴とし、D-アミノ酸として、D-ヒドロキシプロリンを含む皮膚化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された組成をはじめ、従前の皮膚化粧料又は化粧品原料では、皮膚状態の改善効果が不充分であり、より肌に良好な効果を高める改良が望まれている。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、皮膚状態の改善効果に優れ、特に、皮膚バリア機能の向上に寄与する化粧品原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の化粧品原料は、ヒドロキシプロリンと、アセチルヒドロキシプロリンとを含有し、前記ヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.00781%~0.25%の範囲内であり、前記アセチルヒドロキシプロリンは、含有量が、化粧料における全量基準で0.00781%~0.25%の範囲内であるように構成されている。
【0013】
ここで、ヒドロキシプロリンを含有することによって、ヒドロキシプロリンの機能を化粧品原料に付与することができる。即ち、例えば、線維芽細胞におけるコラーゲン産生促進、コラーゲンの構造の安定化、表皮細胞の増殖促進、保湿性、しわ改善、及び、アトピー性皮膚炎の緩和等の効果を付与することができる。また、ヒドロキシプロリンは経皮吸収性に優れ、皮膚組織中又は血管系に浸透させることができる。
【0014】
また、アセチルヒドロキシプロリンを含有することによって、アセチルヒドロキシプロリンの機能を化粧品原料に付与することができる。即ち、例えば、繊維芽細胞におけるコラーゲン産生促進、皮膚セラミド量の増加、皮膚の弾力性及び柔軟性の改善、しわ改善、アトピー性皮膚炎の緩和、表皮ケラチノサイトの増殖等の効果を付与することができる。また、アセチルヒドロキシプロリンは経皮吸収性に優れ、皮膚組織中又は血管系に浸透させることができる。
【0015】
また、ヒドロキシプロリンと、アセチルヒドロキシプロリンとを含有することによって、皮膚バリア機能を向上させ、かつ、皮膚セラミド合成を促進させることが可能となる。
【0016】
また、ヒドロキシプロリンが、含有量が、化粧料における全量基準で0.00781%~0.25%の範囲内であり、アセチルヒドロキシプロリンが、含有量が、化粧料における全量基準で0.00781%~0.25%の範囲内であることによって、細胞毒性がなく、良好な細胞生存率を担保しながら、皮膚バリア機能を向上させ、かつ、皮膚セラミド合成を促進させることが可能となる。
【0017】
また、ヒドロキシプロリンが、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%~0.2%の範囲内であり、アセチルヒドロキシプロリンが、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%~0.2%の範囲内である場合には、単一成分を作用させるよりも、相乗的に、皮膚バリア機能を向上させ、かつ、皮膚セラミド合成を促進させることが可能となる。
【0018】
また、カンゾウフラボノイドを含有する場合には、カンゾウフラボノイドの機能を化粧品原料に付与することができる。即ち、例えば、カンゾウフラボノイドが有する色素沈着抑制作用及び抗菌作用を付与することができる。なお、ここでいうカンゾウフラボノイドとは、スペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linne)及びウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisher)又はその他同属植物(Leguminosae)の根及び根茎から抽出して得られる油溶性抽出物である。
【0019】
また、シコンエキスを含有する場合には、シコンエキスの機能を化粧品原料に付与することができる。即ち、例えば、シコンエキスが有する線維芽細胞の増殖効果を付与することができる。なお、ここでいうシコンエキスとは、ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zuccarini(Boraginaceae))の根であるシコン(紫根)から抽出して得られる油溶性抽出物である。
【0020】
また、ヒドロキシプロリンが、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%であり、アセチルヒドロキシプロリンが、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%であり、カンゾウフラボノイドが、含有量が、化粧料における全量基準で0.00025%である場合には、単一成分を作用させるよりも、より一層相乗的に、皮膚バリア機能を向上させ、かつ、皮膚セラミド合成を促進させることが可能となる。
【0021】
また、ヒドロキシプロリンが、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%であり、アセチルヒドロキシプロリンが、含有量が、化粧料における全量基準で0.1%であり、シコンエキスは、含有量が、化粧料における全量基準で0.01%である場合には、単一成分を作用させるよりも、より一層相乗的に、保湿性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る化粧品原料は、皮膚状態の改善効果に優れ、特に、皮膚バリア機能の向上に寄与するものとなっている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した化粧品原料の一例である化粧品原料の組成について説明する。
【0024】
(本発明の第1の実施の形態)
ここで示す化粧品原料は、化粧料における全量基準で重量比率が、ヒドロキシプロリン:0.2%、アセチルヒドロキシプロリン:0.2%、を含む組成を有している。
【0025】
また、本化粧品原料は、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンが上記の配合量となるようにして、各種原料と混合して化粧料とすることができる。即ち、本発明の化粧品原料は、化粧料中の全量基準で、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの配合量が、それぞれ0.2%となるように配合される。
【0026】
ここで、化粧料に用いる各種原料とは、例えば、精製水等の基剤、保湿剤(油剤含む)、柔軟剤、界面活性剤、pH調整剤、増粘剤、中和剤、植物エキス及び添加剤、防腐剤、特徴成分等が挙げられる。本化粧品原料は、適宜、これらの各種原料と混合して、化粧料とすることができる。
【0027】
また、ここで示す各種原料は一例に過ぎず、その他の成分や異なる配合量を適宜設定することが可能である。例えば、上記以外に、製剤の種類、用途に合わせて、キレート剤(金属イオン封鎖剤)、収れん剤、殺菌剤、皮膚賦活剤(ビタミン類、アミノ酸及びアミノ酸誘導体)、消炎剤、美白剤(アルブチン、トラネキサム酸、ビタミンC誘導体等)を含むことが可能である。また、必要に応じて香料や着色料も配合することも可能である。
【0028】
また、化粧料の種類としては、例えば、化粧水、乳液、洗顔料、クレンジング、美容液、ジェル、及び、クリーム等が挙げられる。
【0029】
なお、本発明を適用した化粧品原料は、例えば、各種原料と混合した態様の他、カプセル化構造を有するリポソームに内包させた態様の化粧品原料としても使用することが可能である。
【0030】
ここで、本発明を適用した化粧品原料を含む化粧料から、電極を用いた化粧料としての使用は除かれる。即ち、一対の電極(導入電極)を生体に接触させ、各電極に通電しながら、イオン化された化粧料の有効成分(イオン化成分)を体に導入する、所謂、イオン導入法を用いた化粧料として使用されるものではない。
【0031】
ヒドロキシプロリンは、線維芽細胞におけるコラーゲン産生促進、コラーゲンの構造の安定化、表皮細胞の増殖促進、保湿性、しわ改善、及び、アトピー性皮膚炎の緩和等の効果を付与する特徴成分である。
【0032】
ここで、必ずしも、ヒドロキシプロリンは、化粧料中の全量基準で、その配合量が0.2%に限定されるものではない。ヒドロキシプロリンは、細胞毒性がなく、良好な細胞生存率を担保しながら、皮膚バリア機能を向上させ、かつ、皮膚セラミド合成を促進させる観点から、化粧料中の全量基準で、0.00781%~0.25%の範囲内で配合することが可能である。
【0033】
また、アセチルヒドロキシプロリンは、繊維芽細胞におけるコラーゲン産生促進、皮膚セラミド量の増加、皮膚の弾力性及び柔軟性の改善、しわ改善、アトピー性皮膚炎の緩和、表皮ケラチノサイトの増殖等の効果を付与する特徴成分である。
【0034】
また、アセチルヒドロキシプロリンは、ヒドロキシプロリンと組み合わせることで、化粧料において、相乗的に、皮膚バリア機能を向上させ、かつ、皮膚セラミド合成を促進させる効果を付与する特徴成分である。
【0035】
ここで、必ずしも、アセチルヒドロキシプロリンは、化粧料中の全量基準で、その配合量が0.2%に限定されるものではない。アセチルヒドロキシプロリンは、細胞毒性がなく、良好な細胞生存率を担保しながら、皮膚バリア機能を向上させ、かつ、皮膚セラミド合成を促進させる観点から、化粧料中の全量基準で、0.00781%~0.25%の範囲内で配合することが可能である。
【0036】
(本発明の第2の実施の形態)
ここで示す化粧品原料は、化粧料における全量基準で重量比率が、ヒドロキシプロリン:0.1%、アセチルヒドロキシプロリン:0.1%、カンゾウフラボノイド:0.00025%、を含む組成を有している。
【0037】
また、本化粧品原料は、ヒドロキシプロリン、アセチルヒドロキシプロリン及びカンゾウフラボノイドが、上記の配合量となるようにして、各種原料と混合して化粧料とすることができる。即ち、本発明の化粧品原料は、化粧料中の全量基準で、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの配合量が、それぞれ0.1%で、カンゾウフラボノイドの配合量が0.00025%となるように配合される。
【0038】
ここで、化粧料に用いる各種原料とは、例えば、精製水等の基剤、保湿剤(油剤含む)、柔軟剤、界面活性剤、pH調整剤、増粘剤、中和剤、植物エキス及び添加剤、防腐剤、特徴成分等が挙げられる。本化粧品原料は、適宜、これらの各種原料と混合して、化粧料とすることができる。
【0039】
また、ここで示す各種原料は一例に過ぎず、その他の成分や異なる配合量を適宜設定することが可能である。例えば、上記以外に、製剤の種類、用途に合わせて、キレート剤(金属イオン封鎖剤)、収れん剤、殺菌剤、皮膚賦活剤(ビタミン類、アミノ酸及びアミノ酸誘導体)、消炎剤、美白剤(アルブチン、トラネキサム酸、ビタミンC誘導体等)を含むことが可能である。また、必要に応じて香料や着色料も配合することも可能である。
【0040】
また、化粧料の種類としては、例えば、化粧水、乳液、洗顔料、クレンジング、美容液、ジェル、及び、クリーム等が挙げられる。
【0041】
なお、本発明を適用した化粧品原料は、例えば、各種原料と混合した態様の他、カプセル化構造を有するリポソームに内包させた態様の化粧品原料としても使用することが可能である。
【0042】
ここで、本発明を適用した化粧品原料を含む化粧料から、電極を用いた化粧料としての使用は除かれる。即ち、一対の電極(導入電極)を生体に接触させ、各電極に通電しながら、イオン化された化粧料の有効成分(イオン化成分)を体に導入する、所謂、イオン導入法を用いた化粧料として使用されるものではない。
【0043】
カンゾウフラボノイドは、色素沈着抑制作用及び抗菌作用を付与する薬用エキスである。
【0044】
また、カンゾウフラボノイドは、アセチルヒドロキシプロリン及びヒドロキシプロリンと組み合わせることで、化粧料において、相乗的に、皮膚バリア機能を向上させ、かつ、皮膚セラミド合成を促進させる効果を付与する成分である。
【0045】
また、カンゾウフラボノイドは、スペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linne)の根及び根茎から、無水エタノールにて抽出後、濃縮して、更に、酢酸エチルで抽出後、減圧乾燥して得られたものである。
【0046】
ここで、カンゾウフラボノイドは、必ずしも、スペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linne)の根及び根茎から抽出するものに限定されるものではない。例えば、ウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisher)又はその他同属植物(Leguminosae)の根及び根茎から抽出して得たものを採用することも可能である。
【0047】
(本発明の第3の実施の形態)
ここで示す化粧品原料は、化粧料における全量基準で重量比率が、ヒドロキシプロリン:0.1%、アセチルヒドロキシプロリン:0.1%、シコンエキス:0.01%、を含む組成を有している。
【0048】
また、本化粧品原料は、ヒドロキシプロリン、アセチルヒドロキシプロリン及びシコンエキスが、上記の配合量となるようにして、各種原料と混合して化粧料とすることができる。即ち、本発明の化粧品原料は、化粧料中の全量基準で、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの配合量が、それぞれ0.1%で、カンゾウフラボノイドの配合量が0.01%となるように配合される。
【0049】
ここで、化粧料に用いる各種原料とは、例えば、精製水等の基剤、保湿剤(油剤含む)、柔軟剤、界面活性剤、pH調整剤、増粘剤、中和剤、植物エキス及び添加剤、防腐剤、特徴成分等が挙げられる。本化粧品原料は、適宜、これらの各種原料と混合して、化粧料とすることができる。
【0050】
また、ここで示す各種原料は一例に過ぎず、その他の成分や異なる配合量を適宜設定することが可能である。例えば、上記以外に、製剤の種類、用途に合わせて、キレート剤(金属イオン封鎖剤)、収れん剤、殺菌剤、皮膚賦活剤(ビタミン類、アミノ酸及びアミノ酸誘導体)、消炎剤、美白剤(アルブチン、トラネキサム酸、ビタミンC誘導体等)を含むことが可能である。また、必要に応じて香料や着色料も配合することも可能である。
【0051】
また、化粧料の種類としては、例えば、化粧水、乳液、洗顔料、クレンジング、美容液、ジェル、及び、クリーム等が挙げられる。
【0052】
なお、本発明を適用した化粧品原料は、例えば、各種原料と混合した態様の他、カプセル化構造を有するリポソームに内包させた態様の化粧品原料としても使用することが可能である。
【0053】
ここで、本発明を適用した化粧品原料を含む化粧料から、電極を用いた化粧料としての使用は除かれる。即ち、一対の電極(導入電極)を生体に接触させ、各電極に通電しながら、イオン化された化粧料の有効成分(イオン化成分)を体に導入する、所謂、イオン導入法を用いた化粧料として使用されるものではない。
【0054】
シコンエキスは、線維芽細胞の増殖効果を付与する薬用エキスである。
【0055】
また、シコンエキスは、アセチルヒドロキシプロリン及びヒドロキシプロリンと組み合わせることで、化粧料において、相乗的に、保湿性を向上させる効果を付与する成分である。
【0056】
また、シコンエキスは、ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zuccarini(Boraginaceae))の根であるシコン(紫根)から、スクワランにて抽出して得られたものである。
【0057】
ここで、必ずしも、シコンエキスの抽出は、スクワランによる抽出に限定されるものではない。例えば、パルミチン酸イソプロピル、エーテル等の抽出溶媒で抽出することも可能である。
【0058】
以上のとおり、本発明を適用した化粧品原料は、膚状態の改善効果に優れ、特に、皮膚バリア機能の向上に寄与するものとなっている。
【実施例0059】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0060】
本発明を適用した化粧品原料の実施例及び比較例を作製し、以下の評価を行った。
(1)試料
まず、表1に示す濃度となるように、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンを培養液に添加して、実施例1~6及び比較例1~2として、以下の内容の細胞生存率評価を行った。例えば、表1の比較例1は、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの各濃度が0.5%であり、実施例1は、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの各濃度が0.25%となる。
【0061】
(2)細胞生存率評価
NHEK(正常ヒト表皮角化細胞)を培養用フラスコから回収した。細胞を計測して、96ウェルマイクロプレートの各ウェル2×104cellsになるように細胞を播種した。37℃にてインキュベーターで一晩培養した。翌日、一晩経った培養液を回収し、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンを、表1に示す各濃度に調整し、培養液に添加した(実施例1~6及び比較例1~2)。添加後の培養液を、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに100μl添加して、37℃にてインキュベーターで一晩培養した。翌日、培溶液中にCell Counting Kit-8が10%になるように調整した。一晩経った培養液を回収し、調整していた、培溶液+Cell Counting Kit-8を96ウェルマイクロプレートの各ウェルに100μl添加した。添加後の96ウェルマイクロプレートを、37℃インキュベーター内に4h静置した。その後、マイクロプレートリーダーで、吸光度(波長:(1)450nm、(2)650nm、半値幅:5nm)を測定し、細胞生存率を算出した。なお、以下表1に示す各成分の数値は、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの培養液中の濃度(%)又は細胞生存率(%)を示したものである。
【0062】
【0063】
実施例1~6では、いずれも100%を上回る良好な細胞生存率(%)の値を示し、細胞毒性がないことが明らかとなった。
【0064】
(3)細胞遺伝子発現評価
NHEK(正常ヒト表皮角化細胞)を培養用フラスコから回収した。細胞を計測して、6ウェルプレートの各ウェル3×105cellsになるように細胞を播種した。37℃にてインキュベーターで一晩培養した。翌日、一晩経った培養液を回収し、ヒドロキシプロリン又はアセチルヒドロキシプロリンを、以下に示す濃度(%)に調整して、培養液に添加した。
実施例7:ヒドロキシプロリン(0.2%)、アセチルヒドロキシプロリン(0.2%)
実施例8:ヒドロキシプロリン(0.1%)、アセチルヒドロキシプロリン(0.1%)
比較例3:ヒドロキシプロリン(0.2%)
添加後の培養液を6ウェルプレートの各ウェルに2mL添加し、37℃にてインキュベーターで一晩培養した。翌日、RNA培養HCキット(クラボウ社製:RC-S2)とQuick Gene(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いてRNA回収を行った。回収したRNAから、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher Scientific社製:製品番号4368814)、サーマルサイクラー(株式会社アステック製:Astec GeneAtlas)を用いてcDNAを合成した。合成したcDNAと調整した評価目的のプライマーを混合し、リアルタイム用サーマルサイクラーにて、皮膚バリア機能に関わるバリア関連因子について、遺伝子の発現量の解析を行った。
【0065】
また、以下の表2における数値は、コントロール(ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンを含まない試料)を1とした場合のシグナル値の比(ratio)を、実施例7~8及び比較例3を添加した試料の遺伝子ごとに示した結果である。
【0066】
評価したバリア関連因子は以下のとおりである。
OCLN:皮膚バリア機能の一端を担うタイトジャンクション(密着結合)の形成に寄与するタンパク質の一つ。これらの因子が細胞同士を接着させることで密着結合が形成され、皮膚バリア機能を発揮する。
SMPD1:皮膚内でのセラミド生合成に関わるセラミド合成関連酵素の一つ。セラミドは皮膚の角質細胞の間を埋める細胞間脂質の1種である。
TGM1:タンパク質架橋に働く表皮酵素。表皮細胞の成熟の指標として用いられる。表皮細胞の成熟はセラミド産生に大きく関与する。
CLDN1:皮膚バリア機能の一端を担うタイトジャンクション(密着結合)の形成に寄与するタンパク質の一つ。これらの因子が細胞同士を接着させることで密着結合が形成され、皮膚バリア機能を発揮する。
【0067】
【0068】
実施例7及び実施例8では、いずれのバリア関連因子についても、比較例3と比較して、遺伝子発現量の増加が確認された。
【0069】
(4)細胞生存率評価
表3に示す各濃度となるように、カンゾウフラボノイドを培養液に添加して、実施例9~13として、上記(2)と同様に、細胞生存率評価を行った。また、実施例9~13では、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの濃度は、それぞれ0.1%とした。例えば、表3の実施例9は、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの各濃度が0.1%であり、カンゾウフラボノイドの濃度が0.000250%である。
【0070】
また、表4に示す各濃度となるように、シコンエキスを培養液に添加して、実施例14~19として、上記(2)と同様に、細胞生存率評価を行った。また、実施例14~19では、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの濃度は、それぞれ0.1%とした。例えば、表4の実施例14は、ヒドロキシプロリン及びアセチルヒドロキシプロリンの各濃度が0.1%であり、シコンエキスの濃度が0.04%である。
【0071】
【0072】
【0073】
実施例9~13では、いずれも100%を上回る良好な細胞生存率(%)の値を示し、細胞毒性がないことが明らかとなった。
また、実施例14~19では、いずれも100%を上回る良好な細胞生存率(%)の値を示し、細胞毒性がないことが明らかとなった。
【0074】
(5)細胞遺伝子発現評価
上記(3)と同様の内容にて、以下の実施例8、実施例20及び実施例21について、皮膚バリア機能に関わるバリア関連因子について、遺伝子の発現量の解析を行った。
実施例20:ヒドロキシプロリン(0.1%)、アセチルヒドロキシプロリン(0.1%)、カンゾウフラボノイド(0.00025%)
実施例21:ヒドロキシプロリン(0.1%)、アセチルヒドロキシプロリン(0.1%)、シコンエキス(0.01%)
実施例8:ヒドロキシプロリン(0.1%)、アセチルヒドロキシプロリン(0.1%)
【0075】
また、以下の表5における数値は、実施例8の解析値を1とした場合でのシグナル値の比(ratio)を、実施例20及び実施例21を添加した試料の遺伝子ごとに示した結果である。
【0076】
評価したバリア関連因子は以下のとおりである。
OCLN、SMPD1、TGM1(上記(3)参照)
FLG:ヒトが持つ保湿成分である天然保湿因子(Natural moisturizing factor:NMF)の元となるタンパク質。
【0077】
【0078】
実施例20では、OCLN、SMPD1、TGM1について、実施例8と比較して遺伝子発現量の増加が確認された。
実施例21では、FLGについて、実施例8と比較して遺伝子発現量の増加が確認された。