(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127242
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、X線診断装置及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/50 20240101AFI20240912BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240912BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61B6/00 331A
A61B6/00 350S
A61B5/055 383
A61B6/00 360Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036257
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山地 瑠弥子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 淳
(72)【発明者】
【氏名】小池 由貴
(72)【発明者】
【氏名】江刺 智
(72)【発明者】
【氏名】池野 敏行
(72)【発明者】
【氏名】飯島 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】室井 稔雄
(72)【発明者】
【氏名】小倉 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】大賀 信浩
(72)【発明者】
【氏名】郡司 正則
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA24
4C093AA25
4C093EA02
4C093EB12
4C093EB13
4C093EE20
4C093FA44
4C093FF19
4C093FF21
4C093FF24
4C093FF34
4C096AA11
4C096AA18
4C096AD14
4C096AD19
4C096AD24
4C096DC21
4C096DC22
4C096DC33
4C096FC14
(57)【要約】
【課題】X線診断装置で表示する血管造影画像に対して、合併のリスクを評価し、治療の継続や投薬を即時判断するための情報を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部、生成部、リスク評価部及び表示制御部を備える。取得部は、第1の時相において時系列に収集された第1の血管造影画像群と、前記第1の時相より後の第2の時相において時系列に収集された第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群を取得する。生成部は、前記第1の血管造影画像群を用いて第1の特徴量を生成し、前記第2の血管造影画像群を用いて第2の特徴量を生成する。リスク評価部は、前記第1の特徴量と前記第2の特徴量との差分に基づいて、異なる時相間の血流変化に起因するリスクを評価する。表示制御部は、前記第2の時相に対応する第3の画像と前記リスクに関する情報とから生成された第4の画像をディスプレイに表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時相において時系列に収集された第1の血管造影画像群と、前記第1の時相より後の第2の時相において時系列に収集された第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群を取得する取得部と、
前記第1の血管造影画像群を用いて第1の特徴量を生成し、前記第2の血管造影画像群を用いて第2の特徴量を生成する生成部と、
前記第1の特徴量と前記第2の特徴量との差分に基づいて、異なる時相間の血流変化に起因するリスクを評価するリスク評価部と、
前記第2の時相に対応する第3の画像と前記リスクに関する情報とから生成された第4の画像をディスプレイに表示させる表示制御部と、
を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の特徴量及び前記第2の特徴量は、前記血管造影画像群における一定期間内に変化した有効画素値に基づいて生成される、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の特徴量及び前記第2の特徴量は、少なくとも、血流の速度、血管の奥行き、前記血流の繋がり及び前記血流の向きを含む、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の時相は、血流改善に関する手技の前の時相又は血管を塞栓する手技の前の時相であり、
前記第2の時相は、前記血流改善に関する手技の後の時相又は前記血管を塞栓する手技の後の時相である、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記第2の血管造影画像群のうち、予め定められた時系列毎に、複数の短期間血管造影画像を生成し、前記複数の短期間血管造影画像を時系列に繋げ、前記時系列に繋げた短期間血管造影画像と、非造影画像の差分処理を行うことにより、前記第3の画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
治療位置の座標と前記第4の画像上での近傍にある前記第2の特徴量に対して、前記治療位置との距離の近さを示す関連情報を付与する付与部と、をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記血管造影画像群は、X線画像である、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記血管造影画像群は、MRI画像である、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
X線を照射するX線管と、
前記X線管により照射されたX線を検出するX線検出器と、
第1の時相において時系列に収集された第1の血管造影画像群と、前記第1の時相より後の第2の時相において時系列に収集された第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群を取得する取得部と、
前記第1の血管造影画像群を用いて第1の特徴量を生成し、前記第2の血管造影画像群を用いて第2の特徴量を生成する生成部と、
前記第1の特徴量と前記第2の特徴量との差分に基づいて、異なる時相間の血流変化に起因するリスクを評価するリスク評価部と、
前記第2の時相に対応する第3の画像と前記リスクに関する情報とから生成された第4の画像をディスプレイに表示させる表示制御部と、
を備える、X線診断装置。
【請求項10】
第1の時相において時系列に収集された第1の血管造影画像群と、前記第1の時相より後の第2の時相において時系列に収集された第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群を取得し、
前記第1の血管造影画像群を用いて第1の特徴量を生成し、前記第2の血管造影画像群を用いて第2の特徴量を生成し、
前記第1の特徴量と前記第2の特徴量との差分に基づいて、異なる時相間の血流変化に起因するリスクを評価し、
前記第2の時相に対応する第3の画像と前記リスクに関する情報とから生成された第4の画像をディスプレイに表示させる、
処理をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は医用画像処理装置、X線診断装置及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、閉塞した血管治療(一例として、頸動脈ステント留置術(Carotid Artery Stenting:CAS)等)において、治療デバイス(一例して、バルーンやステント等)を血管内に留置して、再灌流を実現するが、機械的拡張の直後又は予後観察時にSlow Flowといった血流の低下(合併)を認めることがある。例えば、血流の低下の原因の1つとして、細かい破片や血栓がフィルタをすり抜けたり、治療後に新たに形成されたりすることによると考えられている。
【0003】
手技において、治療デバイスによるプラークの吸引や血栓回収フィルタを用いた予防が行われており有効であることが確認されているが、完全に予防することは難しい。血栓の移動による血流は、動脈瘤のコイル塞栓術においても認められており、多くの血管治療でのリスクとなっている。また、頸動脈の再灌流手術の合併症として、血液が流れ過ぎるようになった結果、過灌流症候群となる可能性もあり、術後早期にその予兆を検出することも重要となる。
【0004】
従来技術としては、治療手技前後(又は手技中)に造影した血管造影画像データや、血流の時間変化を見易くするために、例えば、パラメトリックイメージング(Parametric Imaging)を用いることで、医師が目視で治療箇所の血流回復や新たな血管の閉塞を確認可能である。
【0005】
しかしながら、複数の血管造影画像データを並べて表示し、目視で比較する方法では、末梢血管の変化やSlow Flowの発見、治療後の予測は難しい。また、治療箇所から遠い血流の変化を見つけることは肉眼では難しく、治療や予後治療計画の取りこぼしのリスクとなる可能性がある。
【0006】
また、従来技術では、治療後に造影した血管像から血流が回復したことや閉塞個所を確認することは可能であるが、再灌流障害が起きうる個所や注視していない個所の変化を目視で発見することは困難な場合がある。また、治療が拡大視野で行われた場合の拡大視野外の末梢血管で起きた異常に気付きにくく、治療の影響による変化かどうかの判断が困難な場合がある。したがって、経過観察(Follow Up)までの期間で合併が起こった場合の発見が遅くなり、場合によっては再治療を行わなければならなくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線診断装置で表示する血管造影画像に対して、合併のリスクを評価し、治療の継続や投薬を即時判断するための情報を提供することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部、生成部、リスク評価部及び表示制御部を備える。取得部は、第1の時相において時系列に収集された第1の血管造影画像群と、前記第1の時相より後の第2の時相において時系列に収集された第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群を取得する。生成部は、前記第1の血管造影画像群を用いて第1の特徴量を生成し、前記第2の血管造影画像群を用いて第2の特徴量を生成する。リスク評価部は、前記第1の特徴量と前記第2の特徴量との差分に基づいて、異なる時相間の血流変化に起因するリスクを評価する。表示制御部は、前記第2の時相に対応する第3の画像と前記リスクに関する情報とから生成された第4の画像をディスプレイに表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る血流の速度及び血流量を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る血管の奥行きを説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る短期間血管造影画像の開始座標及び終了座標を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図15】
図15は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図16】
図16は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図17】
図17は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、医用画像処理装置、X線診断装置及び医用画像処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、医用画像処理装置及びX線診断装置を含んだ医用情報処理システムを一例として説明する。
【0013】
図1に示すように、第1の実施形態に係る医用情報処理システム1は、X線診断装置10、画像保管装置20及び医用画像処理装置30を備える。
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、X線診断装置10、画像保管装置20及び医用画像処理装置30は、ネットワークを介して相互に接続される。
【0014】
X線診断装置10は、被検体PからX線画像を収集する。なお、データとして処理されるX線画像については、X線画像データとも記載する。例えば、X線診断装置10は、被検体Pから時系列の複数のX線画像データを収集し、収集した複数のX線画像データを画像保管装置20及び医用画像処理装置30に送信する。なお、X線診断装置10の構成については後述する。
【0015】
画像保管装置20は、X線診断装置10によって収集された複数のX線画像データを保管する。例えば、画像保管装置20は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、画像保管装置20は、ネットワークを介してX線診断装置10から複数のX線画像データを取得し、取得した複数のX線画像データを、装置内又は装置外に設けられたメモリに記憶させる。
【0016】
医用画像処理装置30は、ネットワークを介して時系列の複数のX線画像データを取得し、取得した複数のX線画像データを用いて種々の処理を実行する。例えば、医用画像処理装置30は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、医用画像処理装置30は、X線診断装置10によって収集された時系列の複数のX線画像データを取得する。また、医用画像処理装置30は、取得した複数のX線画像データについて画像処理を行う。なお、医用画像処理装置30による画像処理については後述する。
【0017】
図1に示すように、医用画像処理装置30は、入力インターフェース31、ディスプレイ32、メモリ33及び処理回路34を有する。
【0018】
入力インターフェース31は、各種指示や各種設定等を行うためのトラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース31は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路34へと出力する。
【0019】
なお、入力インターフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像処理装置30とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路34へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース31の例に含まれる。
【0020】
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、各種の画像データを表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイである。
【0021】
メモリ33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ33は、X線診断装置10から取得した時系列の複数のX線画像データを記憶する。また、例えば、メモリ33は、医用画像処理装置30に含まれる各回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。
【0022】
処理回路34は、取得機能341、設定機能342、生成機能343、付与機能344、リスク評価機能345及び表示制御機能346を実行することで、医用画像処理装置30全体の動作を制御する。
【0023】
図1に示す医用画像処理装置30においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ33へ記憶されている。処理回路34は、メモリ33からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路34は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0024】
なお、
図1においては単一の処理回路34にて、取得機能341、設定機能342、生成機能343、付与機能344、リスク評価機能345及び表示制御機能346が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路34を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0025】
次に、時系列の複数のX線画像データを収集するX線診断装置10について、
図2を用いて説明する。
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置10の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、X線診断装置10は、X線高電圧装置101、X線管102、コリメータ103、フィルタ104、天板105、Cアーム106、X線検出器107、制御装置108、メモリ109、ディスプレイ110、入力インターフェース111及び処理回路112を備える。
【0026】
X線高電圧装置101は、処理回路112による制御の下、X線管102に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置101は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管102に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管102が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0027】
X線管102は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管102は、X線高電圧装置101から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。
【0028】
コリメータ(X線絞り装置ともいう)103は、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータ103は、絞り羽根をスライドさせることで、X線管102が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛等で構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管102のX線照射口付近に設けられる。
【0029】
フィルタ104は、被検体Pに対する被曝線量の低減とX線画像データの画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体Pに吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像データのコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタ104は、その材質や厚み、位置等によってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管102から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0030】
天板105は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置10に含まれない。
【0031】
Cアーム106は、X線管102、コリメータ103及びフィルタ104と、X線検出器107とを、被検体Pを挟んで対向するように保持する。なお、
図2では、X線診断装置10がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
【0032】
X線検出器107は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器107は、X線管102から照射されて被検体Pを透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路112へと出力する。なお、X線検出器107は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0033】
制御装置108は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構及び駆動機構を制御する回路を含む。制御装置108は、処理回路112による制御の下、コリメータ103やフィルタ104、天板105、Cアーム106等の動作を制御する。例えば、制御装置108は、コリメータ103の絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0034】
また、制御装置108は、フィルタ104の位置を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の線量の分布を制御する。また、例えば、制御装置108は、Cアーム106を回転・移動させたり、天板105を移動させたりする。
【0035】
メモリ109は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ109は、例えば、処理回路112によって収集されたX線画像データを受け付けて記憶する。また、メモリ109は、処理回路112によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。
【0036】
ディスプレイ110は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ110は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや、各種のX線画像を表示する。例えば、ディスプレイ110は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。
【0037】
入力インターフェース111は、各種指示や各種設定等を行うためのトラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース111は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路112へと出力する。
【0038】
なお、入力インターフェース111は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置10とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路112へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース111の例に含まれる。
【0039】
処理回路112は、制御機能113、収集機能114及び表示制御機能115を実行することで、X線診断装置10全体の動作を制御する。例えば、処理回路112は、メモリ109から制御機能113に相当するプログラムを読み出して実行することにより、入力インターフェース111を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路112の各種機能を制御する。
【0040】
また、処理回路112は、メモリ109から収集機能114に相当するプログラムを読み出して実行することにより、X線画像データを収集する。例えば、収集機能114は、X線高電圧装置101を制御し、X線管102に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量やオン/オフを制御する。また、収集機能114は、制御装置108を制御し、コリメータ103が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0041】
さらに、収集機能114は、制御装置108を制御し、フィルタ104の位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。収集機能114は、制御装置108を制御し、Cアーム106の回転及び移動、天板105の移動等を制御する。また、収集機能112bは、X線検出器107から受信した検出信号に基づいてX線画像データを生成し、生成したX線画像データをメモリ109に格納する。
【0042】
ここで、収集機能114は、メモリ109が記憶するX線画像データに対して各種画像処理を行う場合であってもよい。例えば、収集機能114は、X線画像データに対して、画像処理フィルタによるノイズ低減処理や、散乱線補正を実行する。
【0043】
また、処理回路112は、メモリ109から表示制御機能115に相当するプログラムを読み出して実行することにより、ディスプレイ110において、収集機能114によって収集されたX線画像データを表示する。また、表示制御機能115は、ディスプレイ110において、操作者の指示を受け付けるためのGUIを表示する。
【0044】
図2に示すX線診断装置10においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ109へ記憶されている。処理回路112は、メモリ109からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路112は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0045】
なお、
図2においては単一の処理回路112にて、制御機能113、収集機能114及び表示制御機能115が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路112を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0046】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0047】
プロセッサはメモリ33又はメモリ109に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサ毎に単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。また、
図1及び
図2においては、単一のメモリ33又はメモリ109が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、複数のメモリ33を分散して配置し、処理回路34は、個別のメモリ33から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0048】
同様に、複数のメモリ109を分散して配置し、処理回路112は、個別のメモリ109から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ33及びメモリ109にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0049】
以上、医用画像処理装置30及びX線診断装置10を含んだ医用情報処理システム1について説明した。係る構成の下、医用情報処理システム1における医用画像処理装置30は、以下、詳細に説明する処理回路34による処理によって、X線画像の視認性を向上させる。以下、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30が行う処理について詳細に説明する。
【0050】
まず、設定機能342は、画像処理の単位となる時系列の数を設定する。設定機能342は、設定部の一例である。具体的には、設定機能342は、画像処理の単位となるフレーム数(短期間血管造影画像の期間)を設定する。例えば、設定機能342は、入力インターフェース31を介して、フレーム数の入力操作を受け付けることにより、フレーム数を設定する。以下では一例として、画像処理の単位となるフレーム数として「5フレーム」が設定された場合について説明する。なお、設定機能342は、フレーム数を設定する以外にも、予め定められた時間を設定しても良い。
【0051】
次に、X線診断装置10における収集機能114は、時系列の複数のX線画像データを収集する。例えば、収集機能114は、まず、X線管102から被検体Pに対してパルス状のX線を照射させる。この際、X線検出器107は、被検体Pの心臓を透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路112に出力する。
【0052】
次に、収集機能114は、X線検出器107から受信した検出信号に基づいてX線画像データを生成し、生成したX線画像データを医用画像処理装置30に出力する。さらに、収集機能114は、パルス状のX線を照射する度にX線画像データを生成し、生成したX線画像データを医用画像処理装置30に順次出力する。
【0053】
次に、取得機能341は、異なる時相間で収集された時系列の複数のX線画像データを取得する。取得機能341は、取得部の一例である。ここで、異なる時相間は、血流改善に関する手技の前の時相と後の時相、又は血管を塞栓する手技の前の時相と後の時相である。また、取得機能341は、治療後のX線画像データを取得する。例えば、取得機能341は、収集機能114によって収集されたX線画像データを順次取得し、メモリ33に記憶させる。
【0054】
また、取得機能341は、第1の時相において時系列に収集された第1の血管造影画像群と、第1の時相より後の第2の時相において時系列に収集された第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群を取得する。例えば、取得機能341は、収集機能114によって収集された血管造影画像群をメモリ33に記憶させる。
【0055】
第1の血管造影画像群は、血流改善に関する手技の前の時相又は血管を塞栓する手技の前の時相において、時系列に収集された血管造影画像群である。第2の血管造影画像群は、血流改善に関する手技の後の時相又は血管を塞栓する手技の後の時相において、時系列に収集された血管造影画像群である。第1の血管造影画像群と、第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群は、生成機能343により生成される。血管造影画像群は、X線画像である。
【0056】
例えば、収集機能114によって
図3に示すX線画像データI21が収集されると、取得機能341は、X線画像データI21を取得してメモリ33に記憶させる。次に、収集機能114によってX線画像データI22が収集されると、取得機能341は、X線画像データI22を取得してメモリ33に記憶させる。
【0057】
次に、収集機能114によってX線画像データI23が収集されると、取得機能341は、X線画像データI23を取得してメモリ33に記憶させる。次に、収集機能114によってX線画像データI24が収集されると、取得機能341は、X線画像データI24を取得してメモリ33に記憶させる。次に、収集機能114によってX線画像データI25が収集されると、取得機能341は、X線画像データI25を取得してメモリ33に記憶させる。なお、
図3は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を示す図である。
【0058】
図3において、X線画像データI21、X線画像データI22、X線画像データI23、X線画像データI24及びX線画像データI25は、血管内に造影剤の注入期間中の被検体Pが描出されたX線画像データである。例えば、X線画像データI21、X線画像データI22、X線画像データI23、X線画像データI24及びX線画像データI25は、X線の照射範囲内において造影剤の注入期間中における一定の時間に区切ったX線画像データである。なお、造影剤の注入は、図示しないインジェクターが行う場合であってもよいし、操作者が行う場合であってもよい。
【0059】
ここで、造影剤の種類には、被検体Pの周辺組織よりX線減弱係数の大きな陽性造影剤と、被検体Pの周辺組織よりX線減弱係数の小さな陰性造影剤とがある。例えば、陽性造影剤は、ヨードや硫酸バリウム等を主成分とする造影剤である。また、例えば、陰性造影剤は、二酸化炭素、酸素、窒素、空気等の気体造影剤である。
【0060】
以下では、一例として、造影剤が二酸化炭素である場合について説明する。
図3のX線画像データI21、X線画像データI22、X線画像データI23、X線画像データI24及びX線画像データI25に示すように、血管内に注入された二酸化炭素は、周辺組織よりも画素値が大きく(明るく)描出される。また、血管内に注入された二酸化炭素は、血流によって、下流方向に流される。
【0061】
生成機能343は、第1の時相において時系列に収集された第1の血管造影画像群と、第1の時相より後の第2の時相において時系列に収集された第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群を生成する。まず、生成機能343は、取得機能341が取得した複数のX線画像データのうち、造影剤が注入されていない状態の被検体Pが描出されたX線画像データから、造影剤注入前の背景画像を生成する。生成機能343は、生成部の一例である。なお、造影剤注入前の背景画像は、非造影画像の一例である。
【0062】
次に、生成機能343は、取得機能341が取得した複数のX線画像データのうち、設定機能342が設定したフレーム数「5フレーム」のX線画像データ毎に、各画素の画素値が、「5フレーム」のX線画像データにおいて対応する画素の有効画素値を表す画像データを生成する。
【0063】
ここで、対応する画素とは、例えば、X線画像データにおける位置(座標)が同じ画素である。例えば、生成機能343は、各画素の画素値が、X線画像データI21、X線画像データI22、X線画像データI23、X線画像データI24及びX線画像データI25において対応する画素の有効画素値を表す短期間血管造影画像I26を生成する。有効画素値は、造影剤の種類に応じて変更してもよい。
【0064】
以下、各画素の画素値が、複数のX線画像データにおいて対応する画素の画素値の最大値を表す画像データを最大値短期間血管造影画像と記載する。また、以下では、各画素の画素値が、複数のX線画像データにおいて対応する画素の画素値の最小値を表す画像データを最小値短期間血管造影画像と記載する。生成機能343は、最大値短期間血管造影画像及び最小値短期間血管造影画像の双方を生成してもよいし、最大値短期間血管造影画像及び最小値短期間血管造影画像のいずれか一方を生成してもよい。最大値短期間血管造影画像及び最小値短期間血管造影画像を単に短期間血管造影画像ともいう。
【0065】
例えば、生成機能343は、造影剤の種類に応じて、最大値短期間血管造影画像及び最小値短期間血管造影画像のいずれか一方を生成する。一例を挙げると、生成機能343は、造影剤が二酸化炭素である場合、最大値短期間血管造影画像を生成する。ここで、生成機能343は、造影剤の種類を、操作者からの入力操作を受け付けることにより取得してもよいし、被検体Pに対する撮影条件から取得してもよい。また、インジェクターにより造影剤の注入を行う場合、生成機能343は、造影剤の種類を、インジェクターにおける造影条件から取得してもよい。
【0066】
例えば、生成機能343は、
図3に示すように、各画素の画素値が、X線画像データI21、X線画像データI22、X線画像データI23、X線画像データI24及びX線画像データI25において対応する画素の最大値を表す最大値短期間血管造影画像I26を生成する。ここで、二酸化炭素は周辺組織よりも画素値が大きく描出されることから、X線画像データI21、X線画像データI22、X線画像データI23、X線画像データI24及びX線画像データI25のうち少なくとも1つに描出された二酸化炭素が、最大値短期間血管造影画像I26においても描出されることとなる。
【0067】
なお、血管内の二酸化炭素は、注入時や血管内を流れる途中に分断され、単一の気泡になっていない場合がある。この場合、X線画像データI21、X線画像データI22、X線画像データI23、X線画像データI24及びX線画像データI25においては、本来連続的であるはずの血管が分断されて描出されることとなる。ここで、生成機能343は、最大値短期間血管造影画像I26を生成することにより、血管を連続的なものとして描出し、視認性を向上させることができる。
【0068】
また、血管内での二酸化炭素の広がり方によっては、X線画像データにおいて、周辺組織に対する二酸化炭素のコントラストが弱くなる場合がある。この場合でも、生成機能343は、最大値短期間血管造影画像I26を生成することにより、周辺組織に対する二酸化炭素のコントラストを強調し、視認性を向上させることができる。
【0069】
また、生成機能343は、複数のX線画像データのうち、予め定められた時系列毎に、造影剤が注入されている状態を示す造影中の血管造影画像を生成する。具体的には、生成機能343は、取得機能341が取得した複数のX線画像データのうち、設定機能342が設定したフレーム数「5フレーム」のX線画像データ毎に、
図4に示す、最大値短期間血管造影画像I36、最大値短期間血管造影画像I46及び最大値短期間血管造影画像I56を生成する。
【0070】
さらに、生成機能343は、生成した最大値短期間血管造影画像を時系列に繋げ、造影中における最大値血管造影画像I57を生成する。例えば、生成機能343は、
図4に示すように、最大値短期間血管造影画像I26、最大値短期間血管造影画像I36、最大値短期間血管造影画像I46及び最大値短期間血管造影画像I56を時系列に繋げ、造影中における最大値血管造影画像I57を生成する。さらに、生成機能343は、最大値血管造影画像と、背景画像(非造影画像)の差分処理を行うことにより、血管造影画像(第3の画像)を生成する。
【0071】
つまり、生成機能343は、第2の血管造影画像群のうち、予め定められた時系列毎に、複数の短期間血管造影画像を生成し、複数の短期間血管造影画像を時系列に繋げ、時系列に繋げた短期間血管造影画像と、非造影画像の差分処理を行うことにより、第3の画像を生成する。これにより、血流を時間軸に沿って管理することが可能となる。
【0072】
また、生成機能343は、生成した血管造影画像における血流の流れを示す血流情報を生成する。血流の流れを示す血流情報は、造影剤の流れに関する特徴量の一例である。血流情報は、少なくとも、血流の速度、血管の奥行き、血流の繋がり及び血流の向きを含む。血流情報は、血流量をさらに含んでも良い。生成機能343は、第1の血管造影画像群を用いて第1の特徴量を生成し、第2の血管造影画像群を用いて第2の特徴量を生成する。
【0073】
さらに、生成機能343は、血管造影画像における一定期間内に変化した有効画素値に基づいて、血流情報を生成する。具体的には、まず、生成機能343は、血管造影画像における一定期間内に変化した有効画素値を抽出する。例えば、生成機能343は、基準とする短期間血管造影画像と、1つ前の短期間血管造影画像の画素値の差分から、有効画素値を抽出する。
【0074】
ここで、
図5を用いて、有効画素値を抽出する例について説明する。
図5には、n番目の短期間血管造影画像I71、n+1番目の短期間血管造影画像I72、短期間血管造影画像I71及び短期間血管造影画像I72を時系列に繋げた血管造影画像I73を示す。
【0075】
生成機能343は、短期間血管造影画像I71及び短期間血管造影画像I72をエリア分割し、各エリア内の平均画素値から血管位置を判定する。また、生成機能343は、短期間血管造影画像I71及び短期間血管造影画像I72の画素値の差分により、有効画素値を抽出する。さらに、生成機能343は、短期間血管造影画像I71及び短期間血管造影画像I72内の抽出した有効画素値を繋げ、血流情報I74を生成する。
【0076】
図5には、血管造影画像I73内には、生成機能343が生成した血流情報I74を示す。これにより、生成機能343は、血流を時間軸に沿ってより確実に管理することが可能となる。なお、血流情報は、短期間血管造影画像に、前後(開始位置及び終了位置)を繋ぐ短期間血管造影画像の情報を含んでもよい。
【0077】
次に、生成機能343は、抽出した短期間血管造影画像内の有効画素値に基づいて、血流情報に含まれる、血流の速度、血流量、血管の奥行き、血流の繋がり及び血流の向きを特定する。まず、血流の速度及び血流量について、
図6を用いて説明する。
図6には、5×5のピクセルをもつ短期間血管造影画像であり、短期間血管造影画像には、進行方向A1、進行方向A1に対して直交する直交方向A2を示す。なお、a、b、cは、それぞれピクセルの値である。
【0078】
図6に示すように、生成機能343は、有効画素値がある座標のうち、広がりが大きい領域(進行方向A1)から、期間内での血管像の長さを特定する。長さは、進行方向A1で連続するピクセルの最大値であり、長さ=√(a
2+b
2)である。生成機能343は、算出した長さの値が大きいほど、期間内の流れる血流が速いと特定することができる。
【0079】
また、生成機能343は、有効画素値がある座標のうち、広がりが大きい領域(進行方向A1)に対して、直交する直交方向A2の領域から、期間内での血管像の太さを特定する。太さは、直交方向A2の連続するピクセルの最大値である。太さ=√(c2+d2)である。生成機能343は、算出した太さの値が大きいほど、期間内に流れる血流量が多いと特定することができる。
【0080】
次に、血管の奥行きについて、
図7を用いて説明する。
図7には、2×2のピクセルをもつ短期間血管造影画像を示す。なお、x1、x2、x3及びx4は、それぞれ有効画素値である。生成機能343は、有効画素値のうち、一定ピクセル毎の画素値の平均から、期間内での血管像の奥行きを特定する。例えば、
図7を用いて奥行きを示すと、奥行き=(x1+x2+x3+x4)/(2×2)である。
【0081】
例えば、
図6に示す有効画素値を含む領域全体で、画素の平均値をとった場合、画素値が丸められてしまう。そのため、本実施形態において、血管の奥行きについては、生成機能343は、有効画素値のうち、一定ピクセル毎(一例として、
図7の場合は、2×2)の画素値の平均から、期間内での血管像の奥行きを特定する。
【0082】
これにより、生成機能343は、算出した奥行きの値が大きいほど、期間内に流れる血流量が多いと特定することができる。また、生成機能343は、比較する短期間血管造影画像データの奥行きの値の差が大きいほど、血流の変化が大きいと特定することができる。
【0083】
例えば、生成機能343は、比較する短期間血管造影画像の奥行きの値のプラスの差が大きい場合、血流の急激な増加/出現を特定することができる。また、例えば、生成機能343は、比較する短期間血管造影画像の奥行きの値のマイナスの差が大きい場合、血流の急激な減少/消失を特定することができる。なお、一定ピクセル毎の分割サイズは、抽出した短期間血管造影画像に対応して、変更しても良い。なお、上述した血流情報は、分割した状態での画素値の平均値を含む。
【0084】
次に、血流の繋がり及び血流の向きについて説明する。生成機能343は、短期間血管造影画像の順番及び短期間血管造影画像内の有効画素値に基づいて、血流の繋がり及び血流の向きを特定する。具体的には、まず、短期間血管造影画像には、開始座標(Node start)及び終了座標(Node end)を含む(保持する)。開始座標及び終了座標を含む情報をノード情報ともいう。
【0085】
ただし、短期間血管造影画像の開始座標は、時系列で繋がった、直前の短期間血管造影画像の座標に近い位置するものとする。また、短期間血管造影画像の終了座標は、時系列で繋がった、次の短期間血管造影画像の有効画素値のうち、最も開始座標に近い位置するものとする。
【0086】
ここで、
図8を用いて、短期間血管造影画像の開始座標及び終了座標について説明する。
図8は、短期間血管造影画像の開始座標及び終了座標を説明するための図である。
【0087】
例えば、生成機能343は、
図8に示す短期間血管造影画像I32の座標位置を示す、Node 2(x21,y21)とNode 2(x22,y22)の開始位置を特定するためには、時系列上、直前である短期間血管造影画像I31の座標位置を示す、Node 1(x11,y11)及びNode 1(x12,y12)との距離L1、距離L2、距離L3及び距離L4をそれぞれ算出する。
図8の場合、最も短い距離L1を算出したNode 2(x21,y21)を開始座標(Node2 start)と特定することができる。
【0088】
生成機能343は、短期間血管造影画像内に含む(保持する)、開始座標(Node start)及び終了座標(Node end)が特定できるため、血流の繋がりを特定することができる。また、生成機能343は、血流の向きについて、短期間血管造影画像内における開始座標から終了座標へ向かう方向であると特定することができる。これにより、生成機能343は、変化を判別した際に影響のある短期間血管造影画像を遡ることができる。
【0089】
ただし、生成機能343は、開始座標と終了座標に基づいて、前後のノード情報を修正する。また、生成機能343は、短期間血管造影画像内の終了座標と次の短期間血管造影画像内の開始座標が一定値以上離れている場合は、血管の繋がりはないと特定する。
【0090】
さらに、生成機能343は、複数の血管造影画像データ間における血流情報の交点を示すツリー情報を生成する。具体的には、生成機能343は、短期間血管造影画像上の血流情報を時系列的に接続し、複数の血管造影画像データ間における血流情報の交点を示すツリー情報を生成する。
【0091】
ここで、
図9を用いて、ツリー情報の例について説明する。
図9には、n+1番目の短期間血管造影画像I81、n+2番目の短期間血管造影画像I82、短期間血管造影画像I81及び短期間血管造影画像I82を時系列に繋げた血管造影画像I83を示す。短期間血管造影画像I81には、血流情報I84を示す。また、短期間血管造影画像I82には、血流情報I85を示す。さらに、血管造影画像I83には、ツリー情報I86を示す。
【0092】
生成機能343は、短期間血管造影画像上の血流情報I84及び血流情報I85を時系列的に接続し、複数の血管造影画像データ間における血流情報の交点を示すツリー情報I86を生成する。
【0093】
従来、手技透視中に、治療デバイスのマーカ位置や接着剤等の薬液に含まれる造影剤から治療位置を特定する技術が開示されている。これらの技術を用いて、付与機能344は、治療位置の座標と第4の画像上での近傍にある第2の特徴量に対して、治療位置との距離の近さを示す関連情報を付与する。付与機能344は、付与部の一例である。例えば、付与機能344は、検出した治療位置の座標と血管造影画像上での近傍にある、短期間血管造影画像の血流情報に対して、治療位置との距離の近さを示す関連情報を付与する。関連情報は、治療位置との重なりによる重みづけと、各短期間血管造影画像と、を含んでも良い。
【0094】
具体的には、付与機能344は、治療位置の近傍の短期間血管造影画像の血流情報に含まれる、血流の進行方向にある短期間血管造影画像のノード情報に対して、治療による影響が考えられることを示す関連情報を付与する。
【0095】
図10には、血管造影画像I91に対して、治療位置及び関連情報を重畳した例を示す。
図10に示す値は、血流情報(矢印)に対して、治療位置との距離の近さや治療位置との重なりによる重みづけをした値で示した関連情報である。
【0096】
血流情報は、治療位置との距離の値を関連情報として付与される場合、治療による影響範囲にある短期間血管造影画像であると判断できる。また、関連情報は、治療位置との距離を影響の度合いとして判断に使用することができる。例えば、関連情報は、治療位置との距離が近いほど、治療後の影響が強くなると判断できる。なお、治療位置との距離による判断定基準は、治療方法によって適宜変更可能とする。
【0097】
リスク評価機能345は、第1の特徴量と第2の特徴量との差分に基づいて、異なる時相間の血流変化に起因するリスク(変化リスクともいう)を評価する。リスク評価機能345は、リスク評価部の一例である。具体的には、リスク評価機能345は、治療前と治療後の血管造影画像に基づいて、術後の変化リスクを評価する。リスク評価機能345は、術後の変化リスクについて、血管造影画像の血流情報からリスク度を算出し評価する。具体的には、リスク評価機能345が評価する変化リスクは、血管造影画像の血流情報に含まれる、長さ(Length)、太さ(Width)、奥行き(Depth)、治療後ノード情報と治療位置との接続、及び治療後中心座標と治療位置中心座標の差分に基づく、それぞれの変化量に対応して、リスク度を評価する。
【0098】
長さに対応する変化リスクは、例えば、瘤や再灌流障害のリスクである。太さに対応する変化リスクは、例えば、瘤や再灌流障害のリスクである。奥行きに対応する変化リスクは、例えば、再塞栓、再灌流、塞栓後の状況に関係するリスクである。治療後ノード情報と治療位置との接続に対応する変化リスクは、例えば、治療位置との繋がりの有無に関係するリスクである。治療後中心座標と治療位置中心座標の差分に対応する変化リスクは、例えば、治療との関連、影響範囲の判断に関係するリスクである。
【0099】
また、長さに対応する変化量は、例えば、血流の速さに対応する変化情報である。太さに対応する変化量は、例えば、血流量に対応する変化情報である。奥行きに対応する変化量は、例えば、血流や、血流の消失/出現に対応する変化情報である。治療後ノード情報と治療位置との接続の変化量は、例えば、血流方向と治療位置との関連に対応する変化情報である。治療後中心座標と治療位置中心座標の差分に対応する変化量は、例えば、治療位置との距離に対応する変化情報である。
【0100】
例えば、リスク評価機能345は、治療前後における同じ座標位置に存在する血流情報に基づいて、リスク度を算出する。リスク度は、例えば、リスク度=|長さ(治療前)―長さ(治療後)|×α+|太さ(治療前)―太さ(治療後)|×β+|奥行き(治療前)―奥行(治療後)|×γ+(治療前のノード情報と治療後のノード情報との関連)×δ×|治療後の中心座標―治療位置の中心座標|×εで、リスク評価機能345により算出される。ここで、α、β、γ、δ及びεは、各変化量に対する重みづけである。なお、重みづけは治療の種別や判別したいリスクによってはマイナス値をとる(減算する)変更も可能である。なお、どの変化リスクを重視するかは、治療別の種別(一例として、灌流か塞栓術か等)や、医師の判断により、上述した各変化量に対する重みづけを適宜変更可能である。
【0101】
ここで、
図11、
図12及び
図13を用いて、リスク度について説明する。
図11、
図12及び
図13は、リスク度を説明するための一例を示す模式図である。
図11は、治療前の血管造影画像I101、治療後の血管造影画像I102、治療前の血管造影画像I101と、治療後の血管造影画像I102との血流情報の差分から、各変化量(長さ、太さ、奥行き)に対して、血流変化による重みづけ(α、β及びγ、δ及びε)をした各変化情報を重畳した血管造影画像I103を示す。血管造影画像I103には、各変化情報として、血管の増加や消失、血流量の増加や減少、血流の逆向きが示されている。
【0102】
図12は、治療前の血管造影画像I101に治療位置を重畳した血管造影画像I111、治療前の血管造影画像I102に治療位置を重畳した血管造影画像I112、血管造影画像I111と、血管造影画像I112との血流情報の差分から、各変化量(長さ、太さ、奥行き)に対して、治療位置による重みづけ(δ及びε)をした各変化情報、変化リスク及びリスク度を重畳した血管造影画像I113を示す。
【0103】
血管造影画像I113には、各変化情報として、「治療位置とは離れた予想外の変化(血管の消失、血流量の減少)」、「血流が逆方向に変化」、「治療位置手前での変化(血流量増加)」が示されている。変化リスクとして、「治療位置から前方方向は改善傾向の可能性あり」、「再灌流障害のリスクあり」が示されている。リスク度は、血管造影画像I113内に表されている数字が示されている。
【0104】
図13は、リスク度を色付けし、リスク度に対応する血流情報を重畳した治療後の血管造影画像である。
図13に示す血管造影画像は、血管造影画像内の血流変化の可視化において、リスク度の高さによって、血流の変化があった血管造影画像に対して、血流情報やリスク部分をリスク種別やリスク度によってハイライト表示等を行った血管造影画像である。
【0105】
ハイライト表示は、例えば、リスク度の高さに応じて、色を設定し、血管造影画像に対して、血管造影画像に対応するリスク度を血流情報として表示する。また、例えば、再塞栓のようなエンドポイント判断に影響するリスクと、それ以外のリスク等、リスク種別に応じて表示を切り替えたり、別画面に表示したりすることで、緊急度に合わせた情報提示も可能である。
【0106】
例えば、医用画像処理装置30は、
図12に示す血管造影画像I113及び
図13に示す血管造影画像I121のように、治療前後の血管造影画像に基づいて、治療位置、各変化情報、変化リスク及びリスク度を評価することで、医師に対して、血管拡張術時の再灌流障害や再塞栓、もしくは塞栓術(一例として、コイリング等)による塞栓漏れの可能性がある血流の情報を提供することができる。
【0107】
表示制御機能346は、第2の時相に対応する第3の画像とリスクに関する情報とから生成された第4の画像をディスプレイ32に表示させる。表示制御機能346は、表示制御部の一例である。具体的には、表示制御機能346は、生成機能343が生成した治療後の血管造影画像(第3の画像)に対して、リスク評価機能345が評価した変化リスクを重畳し、重畳した重畳血管造影画像(第4の画像)(治療後の血管造影画像と変化リスク)をディスプレイ32に表示させる。
【0108】
また、表示制御機能346は、生成機能343が生成した治療後の血管造影画像に対して、リスク評価機能345が評価したリスク度を重畳し、重畳した血管造影画像(治療後の血管造影画像とリスク度)をディスプレイ32に表示させる。また、メモリ33は、表示制御機能346が表示する、リスク度を重畳した血管造影画像を記憶する。あるいは、表示制御機能346は、リスク度を重畳した血管造影画像を画像保管装置20に出力してもよい。
【0109】
なお、これまで、造影剤が二酸化炭素である場合について説明したが、造影剤は、酸素、窒素、空気等の二酸化炭素以外の気体造影剤であってもよいし、ヨードや硫酸バリウム等を主成分とする造影剤であってもよい。例えば、生成機能343は、造影剤がヨードを主成分とする造影剤(以下、単にヨードと記載する)である場合、設定されたフレーム数のX線画像データ毎に、最小値画像を生成する。また、例えば、生成機能343は、造影剤が気体造影剤である場合、設定されたフレーム数のX線画像データ毎に、最大値画像を生成する。
【0110】
次に、
図14を用いて、背景画像を生成する手順の一例を説明する。
図14は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【0111】
まず、処理回路34の取得機能341は、X線画像データを取得する(ステップS1)。続いて、処理回路34の生成機能343は、取得機能341が取得した複数のX線画像データのうち、造影剤が注入されていない状態の被検体Pが描出されたX線画像データから、造影剤注入前の背景画像を生成する(ステップS2)。ステップS2が終了すると、本処理は終了する。
【0112】
次に、
図15を用いて、血管造影画像を生成する手順の一例について説明する。
図15は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【0113】
まず、処理回路34の取得機能341は、時系列の複数のX線画像データを取得する(ステップS11)。続いて、処理回路34の設定機能342は、画像処理の単位となるフレーム数(短期間血管造影画像の期間)を設定する(ステップS12)。続いて、処理回路34の生成機能343は、最大値短期間血管造影画像を生成する(ステップS13)。
【0114】
続いて、処理回路34の生成機能343は、生成した最大値短期間血管造影画像を時系列に繋げ、造影中における最大値血管造影画像I57を生成する(ステップS14)。続いて、処理回路34の生成機能343は、最大値血管造影画像と、背景画像との差分から、血管造影画像を生成する(ステップS15)。ステップS15の処理が終了すると、処理回路34は、本処理を終了する。なお、処理回路34の生成機能343は、取得機能341が、時系列の複数のX線画像データを取得すると、順次、ステップS13からステップS15の処理を行う。
【0115】
次に、
図16を用いて、血流情報を生成する手順の一例について説明する。
図16は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【0116】
まず、処理回路34の生成機能343は、生成した短期間血管造影画像を時系列に繋げる(ステップS31)。続いて、処理回路34の生成機能343は、基準とする短期間血管造影画像と、1つ前の短期間血管造影画像の画素値の差分から、有効画素値(及び座標)を抽出する(ステップS32)。続いて、生成機能343は、有効画素値がある座標のうち、広がりが大きい領域から、期間内での血管像の長さを特定する(ステップS33)。
【0117】
続いて、処理回路34の生成機能343は、有効画素値がある座標のうち、広がりが大きい領域に対して、直交する直交方向の領域から、期間内での血管像の太さを特定する(ステップS34)。続いて、処理回路34の生成機能は、有効画素値のうち、一定ピクセル毎の画素値の平均から、期間内での血管像の奥行きを特定する(ステップS35)。
【0118】
続いて、処理回路34の生成機能343は、短期間血管造影画像の開始座標(Node start)及び終了座標(Node end)を特定する(ステップS36)。続いて、処理回路34の生成機能343は、開始座標と終了座標に基づいて、前後のノード情報を修正する(ステップS37)。ステップS37が終了すると、処理回路34は、本処理を終了する。
【0119】
次に、
図17を用いて、変化リスクを表示する手順の一例について説明する。
図17は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【0120】
まず、処理回路34のリスク評価機能345は、治療前と治療後の血管造影画像に基づいて、術後の変化リスクを評価する(ステップS41)。続いて、処理回路34のリスク評価機能345は、術後の変化リスクについて、血管造影画像の血流情報からリスク度を算出し評価する(ステップS42)。表示制御機能346は、生成機能343が生成した治療後の血管造影画像に対して、リスク評価機能345が評価したリスク度を重畳した血管造影画像(治療後の血管造影画像とリスク度)をディスプレイ32に表示させる(ステップS43)。ステップS43が終了すると、処理回路34は、本処理を終了する。
【0121】
上述したように、第1の実施形態によれば、医用画像処理装置30は、第1の時相において時系列に収集された第1の血管造影画像群と、第1の時相より後の第2の時相において時系列に収集された第2の血管造影画像群と、を含む血管造影画像群を取得し、第1の血管造影画像群を用いて第1の特徴量を生成し、第2の血管造影画像群を用いて第2の特徴量を生成する。また、医用画像処理装置30は、第1の特徴量と第2の特徴量との差分に基づいて、異なる時相間の血流変化に起因するリスクを評価し、第2の時相に対応する第3の画像とリスクに関する情報とから生成された第4の画像をディスプレイ32に表示させる。
【0122】
これにより、例えば、医用画像処理装置30は、血管拡張術時の再灌流障害や再塞栓、もしくは塞栓術(コイリング等)による塞栓漏れの可能性がある血流情報に対応する変化リスクが医師等に提供可能となり、実施中の治療の延長(エンドポイント)判断や予後治療方針(数日後に再治療、薬の選択等)の選択が治療中にリアルタイムで可能となり、合併のリスク低減に役立つ情報を提供することができる。
【0123】
その結果、医師は、例えば、治療後に発生しうる合併の可能性を事前に判断したり、発生しうる合併予防に適切な薬を判断したりすること等が可能となるため、合併による再治療の回数を低減することや予防のための不要な投薬を減らすことができる。
【0124】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、リスク度について、それぞれの変化量について絶対値で算出する形態について説明した。これに対し、第2の実施形態では、リスク度の算出方法について、異なる形態について説明する。
【0125】
例えば、リスク度の算出について、それぞれの変化量を絶対値を用いることで、変化の有無について算出することができるが、例えば、血管の増加、減少に関する情報が把握できない場合がある。医師は、再灌流の治療によって、例えば、特に灌流に関する情報を得たい場合、塞栓術によって血流の遮断を把握したい場合等、医師が把握したい情報に合わせてリスク度の算出方法を変更する。
【0126】
例えば、医師が血流の増加情報を把握したい場合は、リスク度は、リスク度=(長さ(治療後)―長さ(治療前))×α+(太さ(治療後)―太さ(治療前))×β+(奥行き(治療後)―奥行き(治療前))×γ+(治療前のノード情報と治療後のノード情報との関連)×δ×|治療後の中心座標―治療位置の中心座標|×εで、リスク評価機能345により算出される。
【0127】
また、例えば、医師が血流の遮断情報を把握したい場合は、リスク度は、リスク度=(長さ(治療前)―長さ(治療後))×α+(太さ(治療前)―太さ(治療後))×β+(奥行き(治療前)―奥行(治療後))×γ+(治療前のノード情報と治療後のノード情報との関連)×δ×|治療後の中心座標―治療位置の中心座標|×εで、リスク評価機能345により算出される。これにより、リスク度は、血管の増加、減少に関する情報が把握できる。
【0128】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、撮影位置及び撮影条件を加味する形態について説明する。例えば、治療前と治療直後、又は治療直後と数か月後の経過観察(Follow Up)時の血管造影画像を比較する場合、撮影位置や撮影条件が異なる可能性があり、画像全体の画素レベルが異なることで血流の変化を正しく検出できない可能性がある。
【0129】
撮影位置については、例えば、既存技術の撮影位置を記憶し再現する技術によって同条件を実現可能であるため、本技術とともに使用する。また、例えば、撮影条件については、処理回路34の生成機能343は、治療前と治療後の画素レベルを同一にする係数を算出し、各短期間血管造影画像の有効画素値に対して同じ係数をかける。
【0130】
具体的には、まず、処理回路34の生成機能343は、血管造影画像全体の画素の平均値を用いて、比較対象の画像の画素レベルを同一にする係数を算出する。そして、処理回路34の生成機能343は、比較対象の画像それぞれの治療位置の有効画素値を用いて、画素レベルを同一にする係数を算出する。これにより、治療前と治療直後、又は治療直後と数か月後の経過観察(Follow Up)時の血管造影画像において、変化の抽出精度を上げることができる。
【0131】
なお、上述の各実施形態に係る医用画像処理装置30において、処理回路34の一部又は全ての機能は、医用画像処理装置30の外部の装置で実現されても構わない。一例として、処理回路34の機能である、取得機能341、設定機能342、生成機能343、付与機能344、リスク評価機能345及び表示制御機能346は、X線診断装置10で実現されても良い。
【0132】
また、各実施形態に係る医用画像処理装置30は、X線診断装置10の他の医用画像診断装置に搭載されて実現されても構わない。この場合、各医用画像診断装置に搭載されたプロセッサは、ROM等から読み出してRAMにロードしたプログラムを実行することにより、各実施形態に係る機能を実現することができる。各実施形態に係る各種の機能を実現することができる。他の医用画像診断装置としては、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置等の医用画像診断装置があり得る。例えば、磁気共鳴イメージング装置の場合、取得機能341は、異なる時相間で収集された時系列の複数のMRI画像データを取得する。そして、取得機能341は、生成機能343により生成された血管造影画像群(MRI画像)を取得する。
【0133】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、X線診断装置で表示する血管(造影)画像に対して、合併のリスクを評価し、治療の継続や投薬を即時判断するための情報を提供することができる。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0135】
10 X線診断装置
30 医用画像処理装置
34 処理回路
341 取得機能
342 設定機能
343 生成機能
344 付与機能
345 リスク評価機能
346 表示制御機能