(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127256
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】センサモジュール、制御装置、制御方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/18 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G01N27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036285
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊輔
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA04
2G060AB02
2G060AB03
2G060AB04
2G060AB05
2G060AB09
2G060AE19
2G060AF07
2G060BA05
2G060BB02
2G060HB06
2G060HC10
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】混合気体が存在する雰囲気中において測定対象の気体の濃度を精度高く測定する技術を提供する。
【解決手段】センサモジュール1,1A,1Bは、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータ10と、マイクロヒータ10と通信可能に構成された制御装置100,100A,100Bとを備える。制御装置100,100A,100Bは、第1電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第1温度に対応する第1検出値を検出し、第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第2温度に対応する第2検出値を検出し、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データ130とに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定するセンサモジュールであって、
供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータと、
前記マイクロヒータと通信可能に構成された制御装置とを備え、
前記制御装置は、
第1電力が供給されたときの前記マイクロヒータの第1温度に対応する第1検出値を検出し、
前記第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときの前記マイクロヒータの第2温度に対応する第2検出値を検出し、
前記第1検出値および前記第2検出値と、前記混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データとに基づき、前記混合気体に含まれる前記少なくとも1種類の気体の濃度を算出する、センサモジュール。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記熱伝導率データに基づき前記マイクロヒータに前記第1電力が供給されたときの前記複数種類の気体の各々の温度を取得し、取得した当該複数種類の気体の各々の温度と前記第1検出値に対応する前記第1温度とに基づき、前記少なくとも1種類の気体の濃度を算出するための第1式を生成し、
前記熱伝導率データに基づき前記マイクロヒータに前記第2電力が供給されたときの前記複数種類の気体の各々の温度を取得し、取得した当該複数種類の気体の各々の温度と前記第2検出値に対応する前記第2温度とに基づき、前記少なくとも1種類の気体の濃度を算出するための第2式を生成し、
前記第1式と前記第2式とに基づき、前記少なくとも1種類の気体の濃度を算出する、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1検出値に対応する前記第1温度から前記マイクロヒータが配置された雰囲気中の温度を減算して第1温度差を算出し、
前記マイクロヒータに前記第1電力が供給されたときの前記複数種類の気体の各々の温度と前記第1温度差とに基づき、前記第1式を生成し、
前記第2検出値に対応する前記第2温度から前記雰囲気中の温度を減算して第2温度差を算出し、
前記マイクロヒータに前記第2電力が供給されたときの前記複数種類の気体の各々の温度と前記第2温度差とに基づき、前記第2式を生成する、請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記第1温度差および前記第2温度差の少なくとも1つは、400℃以上である、請求項3に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記少なくとも1種類の気体は、水素を含む、請求項1または請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記マイクロヒータが配置された雰囲気中の湿度を検出する湿度センサをさらに備え、
前記少なくとも1種類の気体は、二酸化炭素と、水蒸気とを含み、
前記制御装置は、前記少なくとも1種類の気体の濃度から前記マイクロヒータが配置された雰囲気中の湿度を減算して、前記二酸化炭素の濃度を算出する、請求項1または請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記マイクロヒータは、絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた金属酸化物と、前記金属酸化物上に設けられた白金とを含む、請求項1または請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
前記金属酸化物は、酸化チタン、酸化クロム、五酸化タンタル、および酸素欠損した金属酸化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載のセンサモジュール。
【請求項9】
混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定する制御装置であって、
供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータの温度に対応する検出値を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記検出値に基づき、前記混合気体に含まれる前記少なくとも1種類の気体の濃度を算出する算出部とを備え、
前記算出部は、
前記検出部によって検出された第1電力が供給されたときの前記マイクロヒータの第1温度に対応する第1検出値を取得し、
前記検出部によって検出された前記第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときの前記マイクロヒータの第2温度に対応する第2検出値を取得し、
前記第1検出値および前記第2検出値と、前記混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データとに基づき、前記混合気体に含まれる前記少なくとも1種類の気体の濃度を算出する、制御装置。
【請求項10】
混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定する制御装置を制御するための制御方法であって、
供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータに第1電力が供給されたときの前記マイクロヒータの第1温度に対応する第1検出値を検出するステップと、
前記マイクロヒータに前記第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときの前記マイクロヒータの第2温度に対応する第2検出値を検出するステップと、
前記第1検出値および前記第2検出値と、前記混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データとに基づき、前記混合気体に含まれる前記少なくとも1種類の気体の濃度を算出するステップとを含む、制御方法。
【請求項11】
混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定するための制御プログラムであって、
制御装置に、
供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータに第1電力が供給されたときの前記マイクロヒータの第1温度に対応する第1検出値を検出するステップと、
前記マイクロヒータに前記第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときの前記マイクロヒータの第2温度に対応する第2検出値を検出するステップと、
前記第1検出値および前記第2検出値と、前記混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データとに基づき、前記混合気体に含まれる前記少なくとも1種類の気体の濃度を算出するステップとを実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定するセンサモジュール、制御装置、制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定するセンサが公知である。たとえば、特開2017-173126号公報(特許文献1)には、気体の熱伝導率を利用して気体の濃度を測定する熱伝導式のガスセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2017-173126号公報に開示されたガスセンサによれば、雰囲気中に存在する測定対象の気体の熱伝導率に応じてガス検出部の温度が変化し、ガス検出部の温度を検出することで、気体の濃度を測定することができる。しかしながら、雰囲気中においては、測定対象の気体に限らず他の気体をも含む混合気体が存在し得る。混合気体に含まれる複数種類の気体の熱伝導率が互いに異なる場合、ガス検出部の温度は、測定対象の気体の熱伝導率に加えて混合気体に含まれる他の気体の熱伝導率からも影響を受ける。このため、特開2017-173126号公報に開示されたガスセンサは、混合気体が存在する雰囲気中において、測定対象の気体の濃度を精度高く測定することができないおそれがある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、混合気体が存在する雰囲気中において測定対象の気体の濃度を精度高く測定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のセンサモジュールは、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定するセンサモジュールである。センサモジュールは、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータと、マイクロヒータと通信可能に構成された制御装置とを備える。制御装置は、第1電力が供給されたときのマイクロヒータの第1温度に対応する第1検出値を検出し、第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータの第2温度に対応する第2検出値を検出し、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データとに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出する。
【0007】
本開示の制御装置は、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定する制御装置である。制御装置は、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータの温度に対応する検出値を検出する検出部と、検出部によって検出された検出値に基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出する算出部とを備える。算出部は、検出部によって検出された第1電力が供給されたときのマイクロヒータの第1温度に対応する第1検出値を取得し、検出部によって検出された第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータの第2温度に対応する第2検出値を取得し、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データとに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出する。
【0008】
本開示の制御方法は、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定する制御装置を制御するための制御方法である。制御方法は、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータに第1電力が供給されたときのマイクロヒータの第1温度に対応する第1検出値を検出するステップと、マイクロヒータに第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータの第2温度に対応する第2検出値を検出するステップと、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データとに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出するステップとを含む。
【0009】
本開示の制御プログラムは、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を測定するための制御プログラムである。制御プログラムは、制御装置に、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータに第1電力が供給されたときのマイクロヒータの第1温度に対応する第1検出値を検出するステップと、マイクロヒータに第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータの第2温度に対応する第2検出値を検出するステップと、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データとに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、混合気体が存在する雰囲気中において測定対象の気体の濃度を精度高く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るセンサモジュールの構成を説明するための図である。
【
図2】実施の形態1に係るマイクロヒータの構成を説明するための図である。
【
図3】複数種類の気体の各々の熱伝導率の一例を示す図である。
【
図4】複数種類の気体の各々における温度に対する熱伝導率の一例を示す図である。
【
図5】混合気体に含まれる気体の種類に応じたヒータ電力に対するヒータ温度を示す図である。
【
図6】混合気体に含まれる気体の種類に応じたヒータ電力に対するヒータ温度を示す図である。
【
図7】混合気体に含まれる気体の種類に応じたヒータ電力に対するヒータ温度を示す図である。
【
図8】比較例に係る制御装置によって測定された露点に対する水素濃度を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る制御装置が濃度測定処理を実行するときに用いる連立方程式の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係る制御装置が実行する濃度測定処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態2に係るセンサモジュールおよび制御装置の構成を説明するための図である。
【
図12】実施の形態2に係る制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態3に係るセンサモジュールおよび制御装置の構成を説明するための図である。
【
図14】実施の形態3に係る制御装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
本開示の実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[センサモジュールの構成]
図1~
図4を参照しながら、実施の形態1に係るセンサモジュール1の構成を説明する。
図1は、実施の形態1に係るセンサモジュール1の構成を説明するための図である。
図1に示すように、実施の形態1に係るセンサモジュール1は、マイクロヒータ10と、制御装置100とを備える。
【0014】
マイクロヒータ10は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して水素などの測定対象のガスを測定するチップ型のガスセンサである。
図2は、実施の形態1に係るマイクロヒータ10の構成を説明するための図である。
図2に示すように、マイクロヒータ10は、シリコン基板11と、薄膜層12と、少なくとも1つのセンサ部13とを備える。
【0015】
薄膜層12は、シリコン基板11上に設けられ、たとえば、約2.4μmの厚さを有する。薄膜層12は、絶縁層121と、絶縁層121上に設けられた二酸化ケイ素からなる中間層122と、中間層122内に設けられた金属酸化物からなる少なくとも1つのヒータ部123と、中間層122上に設けられた絶縁層124とを含む。
【0016】
センサ部13は、薄膜層12の絶縁層124上に設けられ、金属酸化物と、金属酸化物上に設けられた白金とを含む。金属酸化物は、絶縁層124と白金との間のバリア膜として機能し、酸化チタン(TiO2)、酸化クロム(Cr203)、五酸化タンタル(Ta205)、および酸素欠損した金属酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
上述のように構成された熱伝導式のマイクロヒータ10においては、制御装置100から供給された電力(以下、「ヒータ電力」とも称する。)に応じて薄膜層12が発熱する。薄膜層12の温度は、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中に存在する気体の熱伝導率に応じて変化する。
【0018】
ここで、
図3および
図4を参照しながら、複数種類の気体の各々の熱伝導率について説明する。水素、酸素、空気、窒素、水蒸気、および二酸化炭素は、熱伝導率が互いに異なる。
図3は、複数種類の気体の各々の熱伝導率の一例を示す図である。
図3に示すように、各気体が存在する雰囲気中の温度が0℃の場合、水素の熱伝導率が最も大きく、続いて、熱伝導率が高い順に、酸素、空気、および窒素が挙げられ、水蒸気および二酸化炭素の熱伝導率が最も小さい。なお、水蒸気および二酸化炭素の熱伝導率は同一または略同一である。空気は標準空気であり、たとえば、マイクロヒータ10の出荷時における空気である。
【0019】
さらに、水素、酸素、空気、窒素、水蒸気、および二酸化炭素の各気体は、各気体が存在する雰囲気中の温度変化に応じて各気体の熱伝導率が変化する。
図4は、複数種類の気体の各々における温度に対する熱伝導率の一例を示す図である。なお、
図4に示すグラフにおいて、水素の熱伝導率は1/10に換算されている。
【0020】
図4に示すように、雰囲気中の温度が200K~800Kの間で変化することに応じて、各気体の熱伝導率も変化する。具体的には、雰囲気中の温度が高くなるほど各気体の熱伝導率が高くなる。さらに、雰囲気中の温度が約673K(400℃)未満である場合、空気の熱伝導率と、水蒸気および二酸化炭素の各々の熱伝導率との差が所定値(たとえば、0.001W/mk)以上である一方、雰囲気中の温度が約673K(400℃)以上である場合、空気の熱伝導率と、水蒸気および二酸化炭素の各々の熱伝導率との差が所定値(たとえば、0.001W/mk)未満になり、空気の熱伝導率と、水蒸気および二酸化炭素の各々の熱伝導率とが同一または略同一になる。
【0021】
このように、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中に存在する気体の種類に応じて熱伝導率が異なるため、雰囲気中に存在する気体の種類(熱伝導率)に応じて、薄膜層12の発熱量が異なる。たとえば、水素の熱伝導率は、空気、水蒸気、および二酸化炭素の各々の熱伝導率よりも大きい。このため、雰囲気中に存在する気体が水素の場合は、雰囲気中に存在する気体が空気、水蒸気、または二酸化炭素の場合よりも、薄膜層12の熱が雰囲気中に逃げ易くなり、マイクロヒータ10(薄膜層12)の温度(以下、「ヒータ温度」とも称する。)が小さくなる。また、水蒸気および二酸化炭素の各々の熱伝導率は、水素および空気の各々の熱伝導率よりも小さい。このため、雰囲気中に存在する気体が水蒸気または二酸化炭素の場合は、雰囲気中に存在する気体が水素または空気の場合よりも、薄膜層12の熱が雰囲気中に逃げ難くなり、ヒータ温度が大きくなる。
【0022】
すなわち、ヒータ温度は、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中に存在する気体の種類(熱伝導率)に応じて変化し、ヒータ温度に応じてセンサ部13の白金の抵抗値が変化する。このような現象を利用して、制御装置100は、検出値としてセンサ部13の白金の抵抗値を取得し、取得した検出値に基づき、雰囲気中に存在する気体の濃度を測定することができる。なお、制御装置100は、検出値として薄膜層12のヒータ温度を直接的に検出してもよい。
【0023】
図1に戻り、制御装置100は、マイクロヒータ10から取得した検出値(センサ部13の白金の抵抗値)に基づき雰囲気中に存在する気体の濃度を測定するように構成されている。具体的には、制御装置100は、少なくとも、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中に存在する水素の濃度を測定する。制御装置100は、たとえば、ノート型またはデスクトップ型のPC、スマートフォン、タブレット端末、車載ECU(Engine Control Unit)、または生産設備のPLC(Programmable Logic Controller)などの情報処理装置である。
【0024】
制御装置100は、主な構成として、演算装置101と、メモリ102と、記憶装置103と、通信装置104と、ディスプレイインターフェース105と、周辺機器インターフェース106と、記憶媒体インターフェース107と、マイクロヒータインターフェース108とを備える。
【0025】
演算装置101は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)であり、「算出部」の一例である。演算装置101は、たとえば、CPU(central processing unit)またはMPU(Micro-processing unit)などのプロセッサで構成されている。なお、演算装置101の一例であるプロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、演算装置101の一例である「プロセッサ」は、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。なお、演算装置101は、1チップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、演算装置101の一部の機能は、図示しないサーバ装置(たとえば、クラウド型のサーバ装置)に設けられてもよい。
【0026】
メモリ102は、演算装置101が各種のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する揮発性の記憶領域(たとえば、ワーキングエリア)を含む。メモリ102の一例としては、DRAM(dynamic random access memory)およびSRAM(static random access memory)などの揮発性メモリ、または、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリが挙げられる。
【0027】
記憶装置103は、演算装置101が実行する各種のプログラムまたは各種のデータなどを記憶する。記憶装置103は、1または複数の非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)であってもよいし、1または複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(computer readable storage medium)であってもよい。記憶装置103の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などが挙げられる。実施の形態に係る制御装置100において、記憶装置103は、制御プログラム120と、熱伝導率データ130とを記憶する。
【0028】
制御プログラム120は、演算装置101がマイクロヒータ10から取得した検出値に基づき、少なくとも、雰囲気中に存在する水素の濃度を測定するための処理(以下、「濃度測定処理」とも称する。)が規定されている。熱伝導率データ130は、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関するデータであり、
図4に示すような各気体における温度に対する熱伝導率を示すデータと、後述する
図9に示すような各気体におけるヒータ電力に対するヒータ温度を示すデータとを含む。
【0029】
通信装置104は、有線通信または無線通信を介して、図示しない外部装置との間でデータを送受信する。
【0030】
ディスプレイインターフェース105は、ディスプレイ51を接続するためのインターフェースである。ディスプレイインターフェース105は、制御装置100とディスプレイ51との間のデータの入出力を実現する。たとえば、ディスプレイインターフェース105は、演算装置101の制御に従って、各種の画像データをディスプレイ51に出力する。ディスプレイ51は、ディスプレイインターフェース105から取得した画像データを表示する。
【0031】
周辺機器インターフェース106は、キーボードまたはマウスなどの周辺機器60を接続するためのインターフェースである。周辺機器インターフェース106は、制御装置100と周辺機器60との間のデータの入出力を実現する。たとえば、周辺機器インターフェース106は、周辺機器60を用いてユーザが入力した制御プログラム120または熱伝導率データ130などの各種のデータを取得する。
【0032】
記憶媒体インターフェース107は、リムーバブルディスクまたはUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの記憶媒体70を接続するためのインターフェースである。記憶媒体インターフェース107は、記憶媒体70に格納されたプログラムまたはデータなどの各種のデータを読み出したり、各種のデータを記憶媒体70に書き出したりする。たとえば、記憶媒体インターフェース107は、記憶媒体70に格納された制御プログラム120または熱伝導率データ130などの各種のデータを記憶媒体70から読み出したり、記憶装置103に格納された制御プログラム120または熱伝導率データ130などの各種のデータを記憶媒体70に書き出したりする。
【0033】
マイクロヒータインターフェース108は、マイクロヒータ10を接続するためのインターフェースであり、「検出部」の一例である。マイクロヒータインターフェース108は、ヒータ温度に対応する検出値を検出して当該検出値を取得する。また、マイクロヒータインターフェース108は、演算装置101の制御に従って、マイクロヒータ10にヒータ電力を供給する。なお、マイクロヒータインターフェース108は、マイクロヒータ10から検出値を取得するためのインターフェースと、マイクロヒータ10にヒータ電力を供給するためのインターフェースとで互いに異なる構成として分けられてもよい。
【0034】
[雰囲気中に混合気体が存在する場合のヒータ温度]
図5~
図8を参照しながら、雰囲気中に混合気体が存在する場合のヒータ温度について説明する。上述したように、実施の形態1に係る制御装置100は、マイクロヒータ10から取得した検出値(ヒータ温度に対応するセンサ部13の白金の抵抗値)に基づき、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中に存在する水素の濃度を測定するように構成されている。
【0035】
ところで、雰囲気中においては、水素のような1種類の気体に限らず、空気、水蒸気、および二酸化炭素などの複数種類の気体を含む混合気体が存在する。さらに、
図3および
図4で示したように、雰囲気中に存在する各気体の温度に対する熱伝導率は、互いに異なる。このため、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中に混合気体が存在する場合、マイクロヒータ10のヒータ温度は、測定対象の水素の熱伝導率に加えて、混合気体に含まれる空気、水蒸気、および二酸化炭素などの他の気体の熱伝導率からも影響を受ける。したがって、制御装置100がマイクロヒータ10から取得する検出値も、測定対象の水素の熱伝導率に加えて、混合気体に含まれる空気、水蒸気、および二酸化炭素などの他の気体の熱伝導率からも影響を受ける。
【0036】
図5~
図7を参照しながら、混合気体に含まれる気体の種類に応じてヒータ電力に対するヒータ温度が異なることについて説明する。
図5~
図7は、混合気体に含まれる気体の種類に応じたヒータ電力に対するヒータ温度を示す図である。
【0037】
図5に示すように、混合気体に含まれる気体が空気および水素の場合、混合気体に含まれる気体が空気のみの場合よりも、水素の熱伝導率の影響により薄膜層12の熱が雰囲気中に逃げ易くなり、ヒータ電力に対するヒータ温度が小さくなる。さらに、
図6に示すように、混合気体に含まれる水素の濃度が大きくなるほど、ヒータ電力に対するヒータ温度がより小さくなる。
【0038】
図5に戻り、混合気体に含まれる気体が空気、水素、水蒸気、および二酸化炭素の場合も、混合気体に含まれる気体が空気のみの場合よりも、水素の熱伝導率の影響により薄膜層12の熱が雰囲気中に逃げ易くなり、ヒータ電力に対するヒータ温度が小さくなる。
【0039】
一方、混合気体に含まれる気体が空気、水蒸気、および二酸化炭素の場合(すなわち、水素を含まない場合)、混合気体に含まれる気体が空気のみの場合よりも、水蒸気および二酸化炭素の熱伝導率の影響により薄膜層12の熱が雰囲気中に逃げ難くなり、ヒータ電力に対するヒータ温度が大きくなる。さらに、
図7に示すように、混合気体に含まれる水蒸気および二酸化炭素の濃度が大きくなるほど、ヒータ電力に対するヒータ温度がより大きくなる。
【0040】
ここで、たとえば、比較例に係る制御装置が混合気体に含まれる各気体の濃度を考慮することなくヒータ温度に基づき水素濃度を算出した場合、混合気体が存在する雰囲気中において、水素濃度を精度高く測定することができないおそれがある。
【0041】
図8は、比較例に係る制御装置によって測定された露点に対する水素濃度を示す図である。
図8に示すように、雰囲気中に存在する混合気体に含まれる水蒸気の濃度が大きくなると、雰囲気中の露点が大きくなる。混合気体に含まれる水素の濃度が0.5%で一定であるにも関わらず、雰囲気中に存在する混合気体に含まれる水蒸気の濃度が大きくなると、混合気体中の水蒸気の割合が増加することに影響されて、比較例に係る制御装置によって測定された水素濃度が減少する。しかしながら、実際には、混合気体に含まれる水素の濃度は、0.5%で一定である。このように、比較例に係る制御装置は、混合気体に含まれる水素以外の気体(この例では水蒸気)の濃度を考慮することなくヒータ温度に基づき水素濃度を算出するため、水素濃度を精度高く測定することができないおそれがある。
【0042】
そこで、実施の形態1に係る制御装置100は、測定対象の水素に加えて、空気、水蒸気、および二酸化炭素などの他の気体を含む混合気体が存在する雰囲気中であっても、マイクロヒータ10からの検出値に基づき、水素濃度を精度高く測定するように構成されている。
【0043】
[制御装置による濃度測定処理]
図9および
図10を参照しながら、制御装置100が実行する濃度測定処理について説明する。
図9は、実施の形態1に係る制御装置100が濃度測定処理を実行するときに用いる連立方程式の一例を示す図である。
図9に示す例においては、マイクロヒータ10が配置された測定対象の雰囲気中に、空気、水素、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する場合を想定する。
【0044】
制御装置100は、測定対象の雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10に対して、ヒータ電力を可変しながら供給し、各ヒータ電力に対する検出値をマイクロヒータ10から取得することで、
図9の実線で示すようなヒータ電力に対するヒータ温度を示すデータを算出する。制御装置100は、当該データに基づき、ヒータ電力P1のときのヒータ温度としてヒータ温度T1’を検出し、ヒータ電力P2のときのヒータ温度としてヒータ温度T2’を検出し、ヒータ電力P3のときのヒータ温度としてヒータ温度T3’を検出することができる。
【0045】
さらに、制御装置100は、空気のみが存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10に対してヒータ電力を可変しながら供給した場合のヒータ温度を示すデータを、熱伝導率データ130として記憶装置103に予め記憶している。また、制御装置100は、空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10に対してヒータ電力を可変しながら供給した場合のヒータ温度を示すデータを、熱伝導率データ130として記憶装置103に予め記憶している。また、制御装置100は、空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10に対してヒータ電力を可変しながら供給した場合のヒータ温度を示すデータを、熱伝導率データ130として記憶装置103に予め記憶している。
【0046】
このため、制御装置100は、熱伝導率データ130に基づき、空気のみが存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10について、ヒータ電力P1のときのヒータ温度としてヒータ温度T1を取得し、ヒータ電力P2のときのヒータ温度としてヒータ温度T2を取得し、ヒータ電力P3のときのヒータ温度としてヒータ温度T3を取得することができる。また、制御装置100は、熱伝導率データ130に基づき、空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10について、ヒータ電力P1のときのヒータ温度としてヒータ温度T1Hを取得し、ヒータ電力P2のときのヒータ温度としてヒータ温度T2Hを取得し、ヒータ電力P3のときのヒータ温度としてヒータ温度T3Hを取得することができる。さらに、制御装置100は、熱伝導率データ130に基づき、空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10について、ヒータ電力P1のときのヒータ温度としてヒータ温度T1Cを取得し、ヒータ電力P2のときのヒータ温度としてヒータ温度T2Cを取得し、ヒータ電力P3のときのヒータ温度としてヒータ温度T3Cを取得することができる。
【0047】
制御装置100は、空気、水素、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10によって実際に測定されたヒータ電力(P1,P2,P3)に対するヒータ温度(T1’,T2’,T3’)と、予め記憶していた空気および水素の混合気体におけるヒータ電力(P1,P2,P3)に対するヒータ温度(T1H,T2H,T3H)と、予め記憶していた空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体におけるヒータ電力(P1,P2,P3)に対するヒータ温度(T1C,T2C,T3C)とを用いて、以下に示すような式(1)~(3)からなる連立方程式を生成する。
【0048】
【数1】
・・・(1)
【数2】
・・・(2)
【数3】
・・・(3)
【0049】
連立方程式(1)~(3)において、T1’は、測定対象の雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P1を供給したときのヒータ温度、T2’は、測定対象の雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P2を供給したときのヒータ温度、T3’は、測定対象の雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P3を供給したときのヒータ温度である。T1は、空気のみが存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P1を供給したときのヒータ温度、T2は、空気のみが存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P2を供給したときのヒータ温度、T3は、空気のみが存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P3を供給したときのヒータ温度である。T1Hは、空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P1を供給したときのヒータ温度、T2Hは、空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P2を供給したときのヒータ温度、T3Hは、空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P3を供給したときのヒータ温度である。T1Cは、空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P1を供給したときのヒータ温度、T2Cは、空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P2を供給したときのヒータ温度、T3Cは、空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中に配置されたマイクロヒータ10にヒータ電力P3を供給したときのヒータ温度である。
【0050】
さらに、制御装置100は、測定対象の雰囲気中に存在する混合気体の中に、空気、水素、水蒸気、および二酸化炭素の各々がどのような濃度で含まれるか分からないため、各気体の濃度をXおよびYなどの文字を用いて表す。たとえば、連立方程式(1)~(3)において、Xは、水素の濃度である。Yは、水蒸気の濃度および二酸化炭素の濃度の合算値である。1-X-Yは、空気の濃度である。
【0051】
制御装置100は、連立方程式(1)~(3)を解くことによって、XおよびYを算出することができる。これにより、制御装置100は、測定対象の雰囲気中に存在する混合気体に含まれる水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを、算出することができる。なお、水素濃度(X)と水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)は、少なくとも2つの式を用いれば算出することができるため、制御装置100は、式(1)~(3)のうち、少なくとも2つを用いて連立方程式を解けばよい。
【0052】
制御装置100は、上述のように算出した水素濃度を、センサモジュール1が適用されるアプリケーションに応じて出力する。たとえば、制御装置100は、ディスプレイインターフェース105を介して水素濃度を示す画像をディスプレイ51に表示させたり、通信装置104を用いて水素濃度を示すデータを図示しない外部装置に送信したり、または、記憶媒体インターフェース107を介して水素濃度を示すデータを記憶媒体70に記憶させたりしてもよい。さらに、制御装置100は、算出した水素濃度に応じて図示しないアクチュエータを制御して動作させてもよい。
【0053】
図10は、実施の形態1に係る制御装置100が実行する濃度測定処理を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、制御装置100の演算装置101が制御プログラム120に従って実行する濃度測定処理のステップを規定する。なお、
図10において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0054】
図10に示すように、制御装置100は、マイクロヒータ10にヒータ電力P1を供給したときのヒータ温度T1’を検出する(S1)。制御装置100は、熱伝導率データ130に基づき、ヒータ電力P1のときのヒータ温度T1(空気のみが存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ電力P1のときのヒータ温度T1H(空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ電力P1のときのヒータ温度T1C(空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)を取得する(S2)。
【0055】
制御装置100は、マイクロヒータ10にヒータ電力P2を供給したときのヒータ温度T2’を検出する(S3)。制御装置100は、熱伝導率データ130に基づき、ヒータ電力P2のときのヒータ温度T2(空気のみが存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ電力P2のときのヒータ温度T2H(空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ電力P2のときのヒータ温度T2C(空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)を取得する(S4)。
【0056】
制御装置100は、マイクロヒータ10にヒータ電力P3を供給したときのヒータ温度T3’を検出する(S5)。制御装置100は、熱伝導率データ130に基づき、ヒータ電力P3のときのヒータ温度T3(空気のみが存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ電力P3のときのヒータ温度T3H(空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ電力P3のときのヒータ温度T3C(空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)を取得する(S6)。
【0057】
このような処理を繰り返して、制御装置100は、マイクロヒータ10にヒータ電力Pnを供給したときのヒータ温度Tn’を検出する(S7)。制御装置100は、熱伝導率データ130に基づき、ヒータ電力Pnのときのヒータ温度Tn(空気のみが存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ電力Pnのときのヒータ温度TnH(空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ電力Pnのときのヒータ温度TnC(空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)を取得する(S8)。
【0058】
制御装置100は、
図9に示した式(1)~(3)のように、ヒータ温度Tk’、ヒータ温度Tk、ヒータ温度TkH、およびヒータ温度TkCを用いて、式k(k=1~n)を生成する(S9)。すなわち、制御装置100は、
図9に示した式(1)~(3)のように、少なくとも2つ以上の式を生成することで、水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出するための連立方程式を生成する。ヒータ温度Tk’、ヒータ温度Tk、ヒータ温度TkH、およびヒータ温度TkCを用いた場合の式(4)は以下のようになる。なお、式(4)において、kは1~nの自然数である。たとえば、k=1の場合、式(4)は式(1)で表され、k=2の場合、式(4)は式(2)で表される。
【0059】
【0060】
制御装置100は、連立方程式を解いて、水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出する(S10)。その後、制御装置100は、本処理を終了する。
【0061】
このように、実施の形態1に係るセンサモジュール1において、制御装置100は、ヒータ電力Pkが供給されたときのヒータ温度Tk’を検出し、ヒータ電力Pkよりも大きいヒータ電力Pk+1が供給されたときのヒータ温度Tk+1’を検出し、ヒータ温度Tk’およびヒータ温度Tk+1’と、熱伝導率データ130とに基づき、混合気体に含まれる水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出する。
【0062】
たとえば、制御装置100は、熱伝導率データ130に基づきヒータ電力P1が供給されたときのヒータ温度T1(空気のみが存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ温度T1H(空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ温度T1C(空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)を取得し、ヒータ温度T1、ヒータ温度T1H、およびヒータ温度T1Cと、ヒータ温度T1’とに基づき、
図9に示す式(1)を生成する。また、制御装置100は、熱伝導率データ130に基づきヒータ電力P2が供給されたときのヒータ温度T2(空気のみが存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ温度T2H(空気および水素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)、ヒータ温度T2C(空気、水蒸気、および二酸化炭素の混合気体が存在する雰囲気中のヒータ温度)を取得し、ヒータ温度T2、ヒータ温度T2H、およびヒータ温度T2Cと、ヒータ温度T2’とに基づき、
図9に示す式(2)を生成する。制御装置100は、式(1)と式(2)とからなる連立方程式を解くことで、混合気体に含まれる水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出する。
【0063】
これにより、制御装置100は、測定対象の水素に加えて、空気、水蒸気、および二酸化炭素などの他の気体を含む混合気体が存在する雰囲気中であっても、マイクロヒータ10からの検出値に基づき、水素濃度(X)を精度高く測定することができる。
【0064】
なお、制御装置100は、式(4)においてk=1~nの自然数を適用した式のうちから、2つ以上の式を用いて連立方程式を生成すればよい。また、制御装置100は、複数の式におけるヒータ温度Tk’、ヒータ温度Tk、ヒータ温度TkH、およびヒータ温度TkCの各々を平均化した値を用いて1つの式を生成してもよい。たとえば、制御装置100は、ヒータ温度T1’とヒータ温度T2’との平均値、ヒータ温度T1とヒータ温度T2との平均値、ヒータ温度T1Hとヒータ温度T2Hとの平均値、およびヒータ温度T1Cとヒータ温度T2Cとの平均値を、式(4)に適用することで、1つの式を生成してもよい。
【0065】
<実施の形態2>
以上、実施の形態1に係るセンサモジュール1および制御装置100について説明したが、センサモジュール1および制御装置100は、他の構成および機能を備えてもよい。
図11および
図12を参照しながら、実施の形態2に係るセンサモジュール1Aおよび制御装置100Aについて説明する。なお、実施の形態2に係るセンサモジュール1Aおよび制御装置100Aのそれぞれについては、実施の形態1に係るセンサモジュール1および制御装置100と異なる構成および機能のみを説明する。
【0066】
図11は、実施の形態2に係るセンサモジュール1Aおよび制御装置100Aの構成を説明するための図である。センサモジュール1Aは、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中の雰囲気温度(たとえば、室内温度)を測定する温度センサ20をさらに備える。制御装置100Aは、温度センサ20が測定した雰囲気温度を取得する温度センサインターフェース109をさらに備える。
【0067】
図12は、実施の形態2に係る制御装置100Aの処理を示すフローチャートである。
図12に示すフローチャートは、制御装置100Aの演算装置101が制御プログラム120に従って実行する濃度測定処理のステップを規定する。なお、
図12において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0068】
図12に示すように、制御装置100Aは、S1においてマイクロヒータ10にヒータ電力P1を供給したときのヒータ温度T1’を検出した後、検出したヒータ温度T1’から温度センサ20によって測定された雰囲気温度を減算して温度差dT1’を算出する(S1A)。制御装置100Aは、S3においてマイクロヒータ10にヒータ電力P2を供給したときのヒータ温度T2’を検出した後、検出したヒータ温度T2’から温度センサ20によって測定された雰囲気温度を減算して温度差dT2’を算出する(S2A)。制御装置100Aは、S5においてマイクロヒータ10にヒータ電力P3を供給したときのヒータ温度T3’を検出した後、検出したヒータ温度T3’から温度センサ20によって測定された雰囲気温度を減算して温度差dT3’を算出する(S3A)。
【0069】
このような処理を繰り返して、制御装置100Aは、マイクロヒータ10にヒータ電力Pnを供給したときのヒータ温度Tn’を検出した後、検出したヒータ温度Tn’から温度センサ20によって測定された雰囲気温度を減算して温度差dTn’を算出する(S4A)。
【0070】
制御装置100Aは、式(4)において、ヒータ温度Tk’の代わりに温度差dTk’を用いて、式k(k=1~n)を生成する(S9)。すなわち、制御装置100Aは、ヒータ温度Tk’の代わりに温度差dTk’を用いて、少なくとも2つ以上の式を生成することで、水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出するための連立方程式を生成する。なお、ヒータ温度Tk’の代わりに温度差dTk’を用いた場合の式(5)は以下のようになる。なお、式(5)において、kは1~nの自然数である。たとえば、k=1の場合、式(5)は式(6)で表され、k=2の場合、式(5)は式(7)で表される。
【0071】
【数5】
・・・(5)
【数6】
・・・(6)
【数7】
・・・(7)
【0072】
制御装置100Aは、連立方程式を解いて、水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出する(S10)。その後、制御装置100Aは、本処理を終了する。
【0073】
このように、実施の形態2に係るセンサモジュール1Aにおいて、制御装置100Aは、ヒータ電力Pkが供給されたときのヒータ温度Tk’からマイクロヒータ10が配置された雰囲気中の雰囲気温度を減算して温度差dTk’を算出し、ヒータ温度Tk、ヒータ温度TkH、およびヒータ温度TkCと、ヒータ温度dTk’とに基づき、混合気体に含まれる水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出する。
【0074】
たとえば、制御装置100Aは、ヒータ電力P1が供給されたときのヒータ温度T1’からマイクロヒータ10が配置された雰囲気中の雰囲気温度を減算して温度差dT1’を算出し、ヒータ温度T1、ヒータ温度T1H、およびヒータ温度T1Cと、ヒータ温度dT1’とに基づき、式(6)を生成する。また、制御装置100Aは、ヒータ電力P2が供給されたときのヒータ温度T2’からマイクロヒータ10が配置された雰囲気中の雰囲気温度を減算して温度差dT2’を算出し、ヒータ温度T2、ヒータ温度T2H、およびヒータ温度T2Cと、ヒータ温度dT2’とに基づき、式(7)を生成する。制御装置100Aは、式(6)と式(7)とからなる連立方程式を解くことで、混合気体に含まれる水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出する。
【0075】
これにより、制御装置100Aは、ヒータ電力P1およびヒータ電力P2といったようにヒータ電力Pkを可変させながら検出したヒータ温度Tkに対して、ヒータ温度Tkの検出時に温度センサ20で測定した雰囲気温度を減算することで温度差dTk’を算出し、算出した温度差dTk’を用いて連立方程式を生成することで、水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出するための連立方程式において、雰囲気温度の影響を排除することができる。これにより、制御装置100Aは、マイクロヒータ10からの検出値に基づき、水素濃度(X)をより精度高く測定することができる。
【0076】
なお、制御装置100Aは、式(5)においてk=1~nの自然数を適用した式のうちから、2つ以上の式を用いて連立方程式を生成すればよい。また、制御装置100Aは、複数の式における温度差dTk’、ヒータ温度Tk、ヒータ温度TkH、およびヒータ温度TkCの各々を平均化した値を用いて1つの式を生成してもよい。たとえば、制御装置100Aは、温度差dT1’と温度差dT2’との平均値、ヒータ温度T1とヒータ温度T2との平均値、ヒータ温度T1Hとヒータ温度T2Hとの平均値、およびヒータ温度T1Cとヒータ温度T2Cとの平均値を、式(5)に適用することで、1つの式を生成してもよい。
【0077】
また、
図4で示したように、雰囲気中の温度が約673K(400℃)以上である場合、空気の熱伝導率と、水蒸気および二酸化炭素の各々の熱伝導率とが同一または略同一になる。このため、式(5)を用いて生成される連立方程式における温度差dTk’のうち、少なくとも1つの温度差dTk’は、約673K(400℃)以上であることが好ましい。たとえば、式(6)で用いられる温度差dT1’と式(7)で用いられる温度差dT2’とのうち、少なくとも1つは、約673K(400℃)以上であることが好ましい。このようにすれば、式(6)および式(7)のうちの少なくとも1つにおいて、空気の濃度(1-X-Y)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを同じ値として扱うことができるため、連立方程式をより簡単にすることができ、濃度測定処理を効率よく実行することができる。
【0078】
<実施の形態3>
図13および
図14を参照しながら、実施の形態3に係るセンサモジュール1Bおよび制御装置100Bについて説明する。なお、実施の形態3に係るセンサモジュール1Bおよび制御装置100Bのそれぞれについては、実施の形態2に係るセンサモジュール1Aおよび制御装置100Aと異なる構成および機能のみを説明する。
【0079】
図13は、実施の形態3に係るセンサモジュール1Bおよび制御装置100Bの構成を説明するための図である。センサモジュール1Bは、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中の雰囲気湿度(たとえば、室内湿度)を測定する湿度センサ30をさらに備える。制御装置100Bは、湿度センサ30が測定した雰囲気湿度を取得する湿度センサインターフェース110をさらに備える。
【0080】
図14は、実施の形態3に係る制御装置100Bの処理を示すフローチャートである。
図14に示すフローチャートは、制御装置100Bの演算装置101が制御プログラム120に従って実行する濃度測定処理のステップを規定する。なお、
図14において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0081】
図14に示すように、制御装置100Bは、S10において連立方程式を解いて、水素濃度(X)と、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)とを算出した後、算出した水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)から湿度センサ30によって測定された雰囲気湿度を減算して二酸化炭素濃度を算出する(S1B)。
【0082】
このように、実施の形態3に係るセンサモジュール1Bにおいて、制御装置100Bは、湿度センサ30を用いて直接的に水蒸気濃度を測定し、測定した水蒸気濃度を、水蒸気濃度および二酸化炭素濃度の合算値(Y)から減算することで、二酸化炭素濃度を算出することができる。これにより、制御装置100Bは、水素濃度、水蒸気濃度、および二酸化炭素濃度の各々を個別に測定することができる。
【0083】
なお、実施の形態3に係る制御装置100Bが実行するS1Bの処理は、実施の形態1に係る制御装置100によってS10の後に実行されてもよい。
【0084】
<付記>
(第1項) センサモジュール1,1A,1Bは、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータ10と、マイクロヒータ10と通信可能に構成された制御装置100,100A,100Bとを備える。制御装置100,100A,100Bは、第1電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第1温度に対応する第1検出値を検出し、第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第2温度に対応する第2検出値を検出し、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データ130とに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出する。
【0085】
このような構成によれば、制御装置100,100A,100Bは、混合気体が存在する雰囲気中であっても、マイクロヒータ10からの検出値に基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を精度高く測定することができる。
【0086】
(第2項) 第1項に記載のセンサモジュール1,1A,1Bにおいて、制御装置100,100A,100Bは、熱伝導率データ130に基づきマイクロヒータ10に第1電力が供給されたときの複数種類の気体の各々の温度を取得し、取得した当該複数種類の気体の各々の温度と第1検出値に対応する第1温度とに基づき、少なくとも1種類の気体の濃度を算出するための第1式を生成し、熱伝導率データ130に基づきマイクロヒータ10に第2電力が供給されたときの複数種類の気体の各々の温度を取得し、取得した当該複数種類の気体の各々の温度と第2検出値に対応する第2温度とに基づき、少なくとも1種類の気体の濃度を算出するための第2式を生成し、第1式と第2式とに基づき、少なくとも1種類の気体の濃度を算出する。
【0087】
このような構成によれば、制御装置100,100A,100Bは、第1式と第2式とからなる連立方程式を用いて、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を精度高く測定することができる。
【0088】
(第3項) 第1項または第2項に記載のセンサモジュール1A,1Bにおいて、制御装置100A,100Bは、第1検出値に対応する第1温度からマイクロヒータ10が配置された雰囲気中の温度を減算して第1温度差を算出し、マイクロヒータ10に第1電力が供給されたときの複数種類の気体の各々の温度と第1温度差とに基づき、第1式を生成し、第2検出値に対応する第2温度から雰囲気中の温度を減算して第2温度差を算出し、マイクロヒータ10に第2電力が供給されたときの複数種類の気体の各々の温度と第2温度差とに基づき、第2式を生成する。
【0089】
このような構成によれば、制御装置100A,100Bは、第1式と第2式とからなる連立方程式において、雰囲気中の温度の影響を排除することができるため、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度をより精度高く測定することができる。
【0090】
(第4項) 第3項に記載のセンサモジュール1A,1Bにおいて、第1温度差および第2温度差の少なくとも1つは、400℃以上である。
【0091】
このような構成によれば、制御装置100A,100Bは、連立方程式をより簡単にすることができ、少なくとも1種類の気体の濃度を測定するための処理を効率よく実行することができる。
【0092】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項に記載のセンサモジュール1,1A,1Bにおいて、少なくとも1種類の気体は、水素を含む。
【0093】
このような構成によれば、制御装置100,100A,100Bは、混合気体に含まれる水素の濃度を精度高く測定することができる。
【0094】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか1項に記載のセンサモジュール1Bは、マイクロヒータ10が配置された雰囲気中の湿度を検出する湿度センサ30をさらに備える。少なくとも1種類の気体は、二酸化炭素と、水蒸気とを含む。制御装置100Bは、少なくとも1種類の気体の濃度からマイクロヒータ10が配置された雰囲気中の湿度を減算して、二酸化炭素の濃度を算出する。
【0095】
このような構成によれば、制御装置100Bは、混合気体に含まれる水蒸気および二酸化炭素の各々の濃度を個別に測定することができる。
【0096】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか1項に記載のセンサモジュール1,1A,1Bにおいて、マイクロヒータ10は、絶縁層と、絶縁層上に設けられた金属酸化物と、金属酸化物上に設けられた白金とを含む。
【0097】
このような構成によれば、制御装置100,100A,100Bは、雰囲気中の温度が約673K(400℃)以上であっても、マイクロヒータ10からの検出値を取得することができる。
【0098】
(第8項) 第7項に記載のセンサモジュール1,1A,1Bにおいて、金属酸化物は、酸化チタン、酸化クロム、五酸化タンタル、および酸素欠損した金属酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0099】
このような構成によれば、マイクロヒータ10は、雰囲気中に含まれる混合気体の熱伝導率に応じて適切に発熱することができる。
【0100】
(第9項) 制御装置100,100A,100Bは、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータ10の温度に対応する検出値を検出する検出部(マイクロヒータインターフェース108)と、検出部によって検出された検出値に基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出する算出部(演算装置101)とを備える。算出部は、検出部によって検出された第1電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第1温度に対応する第1検出値を取得し、検出部によって検出された第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第2温度に対応する第2検出値を取得し、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データ130とに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出する。
【0101】
このような構成によれば、制御装置100,100A,100Bは、混合気体が存在する雰囲気中であっても、マイクロヒータ10からの検出値に基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を精度高く測定することができる。
【0102】
(第10項) 制御装置100,100A,100Bを制御するための制御方法は、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータ10に第1電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第1温度に対応する第1検出値を検出するステップ(S1)と、マイクロヒータ10に第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第2温度に対応する第2検出値を検出するステップ(S3)と、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データ130とに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出するステップ(S8~S10)とを含む。
【0103】
このような構成によれば、制御装置100,100A,100Bは、混合気体が存在する雰囲気中であっても、マイクロヒータ10からの検出値に基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を精度高く測定することができる。
【0104】
(第11項) 制御プログラム120は、制御装置100に、供給された電力に応じて発熱する熱伝導式のマイクロヒータ10に第1電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第1温度に対応する第1検出値を検出するステップ(S1)と、マイクロヒータ10に第1電力よりも大きい第2電力が供給されたときのマイクロヒータ10の第2温度に対応する第2検出値を検出するステップ(S3)と、第1検出値および第2検出値と、混合気体に含まれる複数種類の気体の各々の熱伝導率に関する熱伝導率データ130とに基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を算出するステップ(S8~S10)とを実行させる。
【0105】
このような構成によれば、制御装置100,100A,100Bは、混合気体が存在する雰囲気中であっても、マイクロヒータ10からの検出値に基づき、混合気体に含まれる少なくとも1種類の気体の濃度を精度高く測定することができる。
【0106】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1,1A,1B センサモジュール、10 マイクロヒータ、11 シリコン基板、12 薄膜層、13 センサ部、20 温度センサ、30 湿度センサ、51 ディスプレイ、60 周辺機器、70 記憶媒体、100,100A,100B 制御装置、101 演算装置、102 メモリ、103 記憶装置、104 通信装置、105 ディスプレイインターフェース、106 周辺機器インターフェース、107 記憶媒体インターフェース、108 マイクロヒータインターフェース、109 温度センサインターフェース、110 湿度センサインターフェース、120 制御プログラム、121,124 絶縁層、122 中間層、123 ヒータ部、130 熱伝導率データ。