(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127258
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ジオポリマーコンクリート
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20240912BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20240912BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20240912BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B22/06 A
C04B22/06 Z
C04B18/08 Z
C04B14/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036287
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤山 知加子
(72)【発明者】
【氏名】前川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】ガフォール ムハマド タラ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MA01
4G112PA04
4G112PA27
4G112PB03
4G112PB06
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しつつ、所望の強度及び流動性を満たすジオポリマーコンクリートを提供する。
【解決手段】ジオポリマーコンクリートは、モルタル体積に対する細骨材の体積の比率が、0.30以上であって0.42以下であり、粗骨材を単位体積中に最大限充填させた場合の体積に対する、ジオポリマーコンクリートの単位体積中の含まれる粗骨材の体積の比率が、0.40以上であって0.50以下であり、フライアッシュの体積に対する、練り混ぜ用の水の体積とアルカリ活性剤水溶液における水分の体積の合計体積の比率が、0.87以上であって1.02以下であり、ジオポリマーコンクリートの全体の体積に対する、フライアッシュ、アルカリ活性剤水溶液、練り混ぜ用の水、及び高性能減水剤の合計体積の比率が、0.39以上であって0.49以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、練り混ぜ用の水、粗骨材、細骨材、フライアッシュ、アルカリ活性剤水溶液、及び高性能減水剤が混合されて得られるジオポリマーコンクリートであって、
前記ジオポリマーコンクリートのうち前記粗骨材を除いた各材料の合計体積をモルタル体積と定義した場合において、前記モルタル体積に対する前記細骨材の体積の比率が、0.30以上であって0.42以下であり、
前記粗骨材を単位体積中に最大限充填させた場合の体積に対する、前記ジオポリマーコンクリートの単位体積中の含まれる前記粗骨材の体積の比率が、0.40以上であって0.50以下であり、
前記フライアッシュの体積に対する、前記練り混ぜ用の水の体積と前記アルカリ活性剤水溶液における水分の体積の合計体積の比率が、0.87以上であって1.02以下であり、
前記ジオポリマーコンクリートの全体の体積に対する、前記フライアッシュ、前記アルカリ活性剤水溶液、前記練り混ぜ用の水、及び前記高性能減水剤の合計体積の比率が、0.39以上であって0.49以下である、
ジオポリマーコンクリート。
【請求項2】
前記モルタル体積に対する前記細骨材の体積の比率が、0.33以上であって0.39以下である、
請求項1に記載のジオポリマーコンクリート。
【請求項3】
前記粗骨材を単位体積中に最大限充填させた場合の体積に対する、前記ジオポリマーコンクリートの単位体積中の含まれる前記粗骨材の体積の比率が、0.42以下である、
請求項1に記載のジオポリマーコンクリート。
【請求項4】
前記フライアッシュの体積に対する、前記練り混ぜ用の水の体積と前記アルカリ活性剤水溶液における水分の体積の合計体積の比率が0.98以下である、
請求項1に記載のジオポリマーコンクリート。
【請求項5】
前記フライアッシュの体積に対する、前記練り混ぜ用の水の体積と前記アルカリ活性剤水溶液における水分の体積の合計体積の比率が0.94以下である、
請求項2に記載のジオポリマーコンクリート。
【請求項6】
前記ジオポリマーコンクリートの全体の体積に対する、前記フライアッシュと、前記アルカリ活性剤水溶液及び前記練り混ぜ用の水を含む液体の合計体積の比率が、0.40以上であって、0.45以下である、
請求項5に記載のジオポリマーコンクリート。
【請求項7】
前記細骨材は珪砂である、
請求項1に記載のジオポリマーコンクリート。
【請求項8】
前記粗骨材の寸法の最大値が15mm以下である、
請求項1に記載のジオポリマーコンクリート。
【請求項9】
硬化後の圧縮強度が20Mpa以上であって40Mpa以下である、
請求項1に記載のジオポリマーコンクリート。
【請求項10】
前記フライアッシュ以外の活性フィラーを含まない、
請求項1に記載のジオポリマーコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマーコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを材料とするコンクリートが知られている。また、セメントを使用したコンクリートにおいて、打設後に締固めをしなくても骨材と混ざり合う、いわゆる自己充填性を有するコンクリートが知られている。セメントを使用する場合、二酸化炭素の排出が問題となる。そのため、近年、セメントを用いることなく、かつ打設後に締固めが不要であるジオポリマーコンクリートの開発がなされている。
【0003】
特許文献1には、高炉スラグとセメント凝結遅延剤を含むジオポリマーコンクリートが開示されている。高炉スラグを用いることにより強度を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジオポリマーコンクリートにおいて高炉スラグを用いた場合、強度を向上できる一方で、流動性が低下する。そのため、特許文献1に開示されるように、硬化を遅延させるための添加剤(遅延剤)を混入させる必要が生じる。このように高炉スラグ及び添加剤を使用するとコストが向上してしまう。
【0006】
本発明の目的は、コストを抑制しつつ、所望の強度及び流動性を満たすジオポリマーコンクリートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0008】
(1)少なくとも、練り混ぜ用の水、粗骨材、細骨材、フライアッシュ、アルカリ活性剤水溶液、及び高性能減水剤が混合されて得られるジオポリマーコンクリートであって、前記ジオポリマーコンクリートのうち前記粗骨材を除いた各材料の合計体積をモルタル体積と定義した場合において、前記モルタル体積に対する前記細骨材の体積の比率が、0.30以上であって0.42以下であり、前記粗骨材を単位体積中に最大限充填させた場合の体積に対する、前記ジオポリマーコンクリートの単位体積中の含まれる前記粗骨材の体積の比率が、0.40以上であって0.50以下であり、前記フライアッシュの体積に対する、前記練り混ぜ用の水の体積と前記アルカリ活性剤水溶液における水分の体積の合計体積の比率が、0.87以上であって1.02以下であり、前記ジオポリマーコンクリートの全体の体積に対する、前記フライアッシュ、前記アルカリ活性剤水溶液、前記練り混ぜ用の水、及び前記高性能減水剤の合計体積の比率が、0.39以上であって0.49以下である、ジオポリマーコンクリート。
【0009】
(2)(1)において、前記モルタル体積に対する前記細骨材の体積の比率が、0.33以上であって0.39以下である、ジオポリマーコンクリート。
【0010】
(3)(1)又は(2)において、前記粗骨材を単位体積中に最大限充填させた場合の体積に対する、前記ジオポリマーコンクリートの単位体積中の含まれる前記粗骨材の体積の比率が、0.42以下である、ジオポリマーコンクリート。
【0011】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、前記フライアッシュの体積に対する、前記練り混ぜ用の水の体積と前記アルカリ活性剤水溶液における水分の体積の合計体積の比率が0.98以下である、ジオポリマーコンクリート。
【0012】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記フライアッシュの体積に対する、前記練り混ぜ用の水の体積と前記アルカリ活性剤水溶液における水分の体積の合計体積の比率が0.94以下である、ジオポリマーコンクリート。
【0013】
(6)(1)~(5)のいずれかにおいて、前記ジオポリマーコンクリートの全体の体積に対する、前記フライアッシュと、前記アルカリ活性剤水溶液及び前記練り混ぜ用の水を含む液体の合計体積の比率が、0.40以上であって、0.45以下である、ジオポリマーコンクリート。
【0014】
(7)(1)~(6)のいずれかにおいて、前記細骨材は珪砂である、ジオポリマーコンクリート。
【0015】
(8)(1)~(7)のいずれかにおいて、前記粗骨材の寸法の最大値が15mm以下である、ジオポリマーコンクリート。
【0016】
(9)(1)~(8)のいずれかにおいて、硬化後の圧縮強度が20Mpa以上であって40Mpa以下である、ジオポリマーコンクリート。
【0017】
(10)(1)~(10)のいずれかにおいて、前記フライアッシュ以外の活性フィラーを含まない、ジオポリマーコンクリート。
【発明の効果】
【0018】
上記本発明の(1)~(10)の側面によれば、コストを抑制しつつ、所望の強度及び流動性を満たすジオポリマーコンクリートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】例1~16のジオポリマーコンクリートの材料配合、その材料配合により得られた性能を示す表である。
【
図2】例1~16のジオポリマーコンクリートに含まれる各材料の重量を示す表である。
【
図3】例1~16における材料配合を示すグラフである。
【
図4】例1~16における材料配合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
本実施形態のジオポリマーコンクリートは、少なくとも、練り混ぜ用の水、粗骨材である砂利、細骨材である珪砂又は自然砂、活性フィラーであるフライアッシュ、アルカリ活性剤であるアルカリ活性剤水溶液、及び高性能減水剤が混合されて成る。なお、ジオポリマーとは、活性フィラーとアルカリ活性剤との反応によって硬化される非晶質の縮重合体(ポリマー)の総称である。ジオポリマーコンクリートにおいては、セメントを使用しないことより、二酸化炭素の排出を抑制することが可能となる。
【0022】
以下、本実施形態におけるジオポリマーコンクリートに含まれる各材料について説明する。
【0023】
[水]
以下の説明において、練り混ぜ時に入れられる水を「練り混ぜ用の水」という。また、硬化前のジオポリマーコンクリートに含まれる水分を単に「水」と呼ぶ。具体的には、練り混ぜ用の水と、アルカリ活性剤水溶液中に含まれる水分を合わせて単に「水」と呼ぶ。
【0024】
[粗骨材]
粗骨材として砂利を用いるとよい。砂利は、寸法の最大値が15mm以下であるとよい。比較的寸法の小さい粗骨材を用いることで、高密度配筋部(構造物のうち鉄筋等の密度の高い部分)への充填にも対応可能となる。
【0025】
[細骨材]
細骨材として珪砂又は自然砂を用いるとよい。
【0026】
自然砂は、規格等で規定されていない一般的な砂である。そのため、自然砂の粒径等は不揃いである。
【0027】
珪砂は、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする鉱物からなる砂状物質である。珪砂は、日本工業規格において、粒径に基づき区分されている(JIS G 5901)。本実施形態においては、日本工業規格において規定される5号の珪砂を使用した。ただし、使用する珪砂の区分はこれに限られるものではない。
【0028】
細骨材として規格された珪砂を用いた場合、自然砂を用いた場合と比較して、強度を向上することができる。これは、珪砂に含まれるシリカ(ケイ素)の一部がアルカリ活性剤水溶液と反応する場合があるためである。一方で、細骨材として自然砂を用いた場合、珪砂を用いた場合と比較して、強度が劣るものの材料分離抵抗性を向上することができ、かつコストを抑制することができる。
【0029】
[活性フィラー]
活性フィラーとしてフライアッシュを用いるとよい。活性フィラーであるフライアッシュは、石炭火力発電所で微粉炭を燃焼した際に発生する石炭灰のうち、集塵機等により排ガス中から回収される微細な灰である。フライアッシュの主成分は、二酸化ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等である。フライアッシュは、日本工業規格において、粒度やフロー値に基づきI~IV種に規格されている(JIS A 6201)。ジオポリマーコンクリートの材料としては、I種やII種に分類されるフライアッシュが好ましい。なお、フロー値とは、流動性を示す値であって、特定の条件下における流体の広がり量を示す値である。本実施形態において、フロー値の単位を[mm]としており、この値が大きいほど流動性が高いといえる。
【0030】
本実施形態においては、活性フィラーとしてフライアッシュのみを使用し、高炉スラグ微粉末等、他の粉体を使用しない。これにより、ジオポリマーコンクリートの流動性が向上し、可使時間が長くなる。これは、フライアッシュが、高炉スラグ微粉末よりも球形に近い形状を有するためである。なお、高炉スラグを用いた場合、流動性を得るための添加剤を別途使用する必要が生じ、コストがかかってしまう。
【0031】
[アルカリ活性剤]
アルカリ活性剤としてアルカリ性の水溶液であるアルカリ活性剤水溶液を用いるとよい。本実施形態においては、苛性ソーダ(NaOH)と水ガラス(Na2SiO3)を用いた。ただし、これに限られず、例えば水酸化カリウム(KOH)とケイ酸カリウム(K2SiO3)等のアルカリ性の水溶液を用いてもよい。アルカリ活性剤の種類や濃度は、ジオポリマーコンクリートの機械的な特性に影響を与えるものである。アルカリ活性剤の濃度が高いと、ジオポリマーコンクリートの強度が向上する一方で流動性が低下する。アルカリ活性剤水溶液は市販のものを用いてもよい。
【0032】
[高性能減水剤]
高性能減水剤は、一般的なセメントコンクリートにおいて流動性等を確保するために用いられる市販の高性能減水剤であるとよい。本実施形態においては、ポリカルボン酸系の高性能減水剤を用いた。高性能減水剤は、減水性能を向上させる混和剤である。すなわち、高性能減水剤は、必要水量を低減しつつ流動性を確保させるための混和剤である。なお、高性能減水剤として、空気量調整機能を有する高性能AE減水剤を用いてもよい。
【0033】
[材料配合]
以下、本実施形態のジオポリマーコンクリートに含まれる材料の配合について説明する。
【0034】
ここで、従来のコンクリートにおいては、十分な充填性を得るため、締固め作業が必要であった。締固め作業とは、外部から振動等を加えることにより行われる作業である。施工の容易性という観点から、締固め作業を行わない、又は作業量が少なくても型枠内に充填可能なコンクリートが望まれる。また、ジオポリマーコンクリートにおいては、化学薬品である高濃度なアルカリ活性剤水溶液(アルカリ性の水溶液)を使用することから、安全性の観点より人力による締固め作業を行わない、又は作業量が少なくて済むことが好ましい。締固め作業を不要にするためには、ジオポリマーコンクリートの流動性を高くする必要がある。一方で、コンクリートにおいては、所望の強度を確保する必要がある。流動性と強度は各材料の配合に依存するものである。
【0035】
また、コンクリートにおいては、所望の流動性や強度を得ることに加えて、材料分離性や粘性を適切な範囲にすることも要求される。材料分離性とは、コンクリートに含まれる固形物と液体とが分離する性質である。材料分離性が低いほど、コンクリートに含まれている材料が良く混ざっており、分離しにくいといえる。材料分離性は、フレッシュコンクリートの段階と、硬化段階のそれぞれで低いと好ましい。粘性とは、流体の流れを妨げようとする性質である。粘性は、流動性や材料分離性に影響を与える性質である。例えば、細骨材が少ないと、粘性が下がり、材料分離が生じやすくなる。粘性を得るためには、例えば、粉体であるフライアッシュを多く使用するとよいが、多量のフライアッシュを使用するとコスト面でのデメリットが生じてしまう。
【0036】
また、ジオポリマー組成物用に開発された専用の高性能減水剤を用いることで流動性と強度を両立させることもできるが、コスト面でのデメリットが生じてしまう。
【0037】
本実施形態においては、コストを抑制しつつ、所望の強度及び流動性を得られるジオポリマーコンクリートを提供する。以下の説明において、強度を圧縮強度[MPa]で示し、流動性をフロー値[mm]で示す。圧縮強度とは、圧縮荷重に対し、硬化後のジオポリマーコンクリートが持ちこたえることができる最大応力である。なお、用途等にもよるが、コンクリートにおいては一般的に18MPa以上の圧縮強度が要求される。
【0038】
以下の説明において、水の体積[m3]をVwとする。また、粉体の体積[m3]をVpとする。本実施形態において、粉体はフライアッシュのみであるため、Vpはフライアッシュの体積を示す。また、ペースト体積をVpasteとする。ペースト体積とは、ジオポリマーコンクリートにおける粉体と液体の体積比率である。すなわち、ペースト体積は、ジオポリマーコンクリートの全体の体積に対する、フライアッシュ、アルカリ活性剤水溶液、練り混ぜ用の水、高性能減水剤の合計体積の比率である。
【0039】
また、ジオポリマーコンクリートの1m3(単位体積)中の含まれる粗骨材の体積[m3]をGとする。また、1m3(単位体積)中に粗骨材を最大限充填させた場合の粗骨材の体積[m3]をGlimとする。また、細骨材である珪砂又は自然砂の体積[m3]をVsとする。また、モルタル体積[m3]をVmとする。モルタル体積とは、フライアッシュ、アルカリ活性剤水溶液、練り混ぜ用の水、及び高性能減水剤、及び細骨材の合計体積である。すなわち、モルタル体積は、本実施形態のジオポリマーコンクリートに含まれる材料のうち粗骨材を除いた材料の合計体積である。また、モルタル体積は、内部又は表面に形成される微細な空洞である空気泡の体積も含むものとする。
【0040】
粗骨材の限界体積に対する実際の粗骨材の体積の比率(以下、粗骨材の体積比率ともいう)を示すG/Glimは、0.40以上であって0.50以下であるとよい。より好ましくは、G/Glimは、0.40以上であって0.42以下であるとよい。
【0041】
モルタル体積に対する細骨材の体積の比率を示すVs/Vmは、0.30以上であって、0.42以下であるとよい。より好ましくは、Vs/Vmは、0.33以上であって、0.39以下であるとよい。
【0042】
フライアッシュの体積に対する水の体積の比率を示すVw/Vpは、0.87以上であって1.02以下であるとよい。より好ましくは、Vw/Vpは、0.98以下であるとよい。より好ましくは、Vw/Vpは、0.94以下であるとよい。
【0043】
Vpasteは、0.40以上であって0.49以下であるとよい。より好ましくは、Vpasteは、0.45以下であるとよい。
【0044】
[具体例]
図1を参照して具体的な材料配合の例を説明する。
図1は、例1~16のジオポリマーコンクリートの材料配合、その材料配合により得られた性能を示す表である。
【0045】
図1の「ID」はローマ字及び数字から成る例1~16を識別するための識別子である。例えば、例1のID「G-0.5-8-4-42-S」は、「ジオポリマー P
s/P
m=0.5 NaOH溶液のモル濃度=8 高性能減水剤重量比=4% G/G
lim=0.42 細骨材が珪砂」を表している。また、例えば、例16のID「G-0.78-16-2-50-N」は、「ジオポリマー P
s/P
m=0.78 NaOH溶液のモル濃度=16 高性能減水剤重量比=2% G/G
lim=0.50 細骨材が自然砂」を表している。すなわち、例1~11は細骨材として珪砂を用いた例であり、例12~16は細骨材として自然砂を用いた例である。なお、ID中のP
s/P
mは、モルタルの重量に対する細骨材の重量の比率である。
【0046】
図1においては、各例の材料配合におり得られた性能も示している。流動性に関してはフロー値[mm]を示している。なお、
図1のT
500mは、フロー値が500mmに達するまでにかかった時間(秒)を示している。T
500mは、国内外の規格を満たしているとよく、具体的には、25秒以下であるとよく、好ましくは20秒以下であるとよい。T
500mが少なくとも25秒以下であれば短時間での充填が可能であるといえる。なお、
図1に示すように、例1~16はいずれもT
500mの規格を満たしている。
【0047】
粘性に関しては、十分な結果を示した例において「Good」とし、不十分な結果を示した例において「Less」としている。材料分離性については、フレッシュコンクリートの段階(Fresh)及び硬化段階(Hard)のそれぞれにおける性能を示しており、材料分離が生じた例において「Yes」とし、材料分離が生じなかった例において「No」としている。また、強度に関しては、圧縮強度[MPa]を示している。これら各性能は既存の評価試験により得られる結果であればよい。
【0048】
例1~5においては、Vw/Vpを1.0以上とし、Vpasteを0.38とした。例1~4においては、フライアッシュに対する水分の比率が比較的高いことより、高い流動性を得られたが、強度が不足する結果となった。
【0049】
例6~8においては、Vw/Vpを1.0未満とし、Vpasteを0.48以上とした。具体的には、例6においては、Vw/Vpを0.93、Vpastを0.49、G/Glimを0.43、Vs/Vmを0.31とした。例7においては、Vw/Vpを0.98、Vpastを0.49、G/Glimを0.42、Vs/Vmを0.30とした。例8においては、Vw/Vpを0.90、Vpasteを0.48、G/Glimを0.43、Vs/Vmを0.31とした。例6~8においては、21[MPa]以上の強度が得られた。一方で、ペースト比率が高いことより、細骨材の比率が小さく、粘性が不足する結果となった。
【0050】
例9においては、Vw/Vpを0.87、Vpastを0.44、G/Glimを0.41、Vs/Vmを0.37とした。例9においては、37[MPa]の強度が得られた。また、流動性や粘性も良好であった。一方で、硬化段階において材料分離が生じた。
【0051】
例10においては、Vw/Vpを0.89とし、Vpaste、G/Glim、及びVs/Vmを例9と同じとした。例10においては、37[MPa]の強度が得られた。また、流動性や粘性も良好であった。一方で、硬化段階において材料分離が生じた。
【0052】
例11においては、Vw/Vpを0.91とし、Vpaste、G/Glim、及びVs/Vmを例9と同じとした。例11においては、29[MPa]の強度が得られた。また、水分の比率が比較的高いことより、例9と例10と比較して、高い流動性が得られた。一方で、例9と例10と同様に、硬化段階において材料分離が生じた。
【0053】
例12においては、Vw/Vpを0.87、Vpastを0.45、G/Glimを0.42、Vs/Vmを0.35とした。例12は、細骨材として自然砂を用いた点で異なるが、材料配合が例9と近い例である。例12においては、珪砂を用いた例9~11には劣るものの、27[MPa]の強度が得られた。また、流動性や粘性も良好であり、材料分離はいずれの段階でも生じなかった。
【0054】
例13においては、Vw/Vpを0.91とし、Vpaste、G/Glim、及びVs/Vmを例12と同じとした。例13においては、水分が多いことより例12には劣るものの、21[MPa]の強度が得られた。また、流動性や粘性も良好であり、材料分離はいずれの段階でも生じなかった。
【0055】
例14においては、Vw/Vpを0.87、Vpasteを0.43、G/Glimを0.40、Vs/Vmを0.39とした。例14においては、27[MPa]の強度が得られた。例14においては、流動性がやや低かったものの、自己充填可能な程度であった。また、材料分離はいずれの段階でも生じなかった。
【0056】
例15においては、Vw/Vpを0.94、Vpasteを0.40、G/Glimを0.50、Vs/Vmを0.39とした。例15においては、27[MPa]の強度が得られた。また、流動性や粘性も良好であり、材料分離はいずれの段階でも生じなかった。
【0057】
例16においては、Vw/Vpを0.94、Vpasteを0.44、G/Glimを0.50、Vs/Vmを0.33とした。例16においては、26[MPa]の強度が得られた。また、流動性や粘性も良好であり、材料分離はいずれの段階でも生じなかった。
【0058】
図2は、例1~16のジオポリマーコンクリートに含まれる各材料の重量を示す表である。
図2には、例1~16における、フライアッシュ、細骨材(珪砂又は自然砂)、粗骨材、練り混ぜ用の水、及び高性能減水剤の重量[kg/m
3]を示している。また、アルカリ活性剤水溶液中に含まれるNaOHのモル濃度及び重量[kg/m
3]と、Na
2SiO
3の重量[kg/m
3]を示している。ただし、これらモル濃度や重量は一例であって、材料配合が
図1に示す比率を満たすものであればよい。
【0059】
図3及び
図4は、例1~16における材料配合を示すグラフである。
図3の横軸は、粗骨材の限界体積に対する実際の粗骨材の体積の比率G/G
limであり、
図3の縦軸は、モルタル体積に対する細骨材の体積の比率V
s/V
mである。
図4の横軸は、ペースト体積V
pasteであり、
図4の縦軸は、フライアッシュの体積に対する水の体積の比率V
w/V
pである。
【0060】
ジオポリマーコンクリートの材料配合においては、
図3、
図4に示す例1~例5を外した範囲に各パラメータを設定するとよい。好ましくは、V
s/V
m及びG/G
limが
図3中の実線枠内にあるとよい。さらに好ましくは、V
s/V
m及びG/G
limが
図3中の点線枠内にあるとよい。また、好ましくは、V
paste及びV
w/V
pが
図4中の実線枠内にあるとよい。さらに好ましくは、V
paste及びV
w/V
pが
図4中の点線枠内にあるとよい。以上の範囲に各パラメータを設定することで、少なくとも強度及び流動性に関して、実用的に十分な性能のジオポリマーコンクリートを提供可能となる。
【0061】
[ジオポリマーコンクリートの製造方法]
次に、本実施形態のジオポリマーコンクリートの製造方法の一例を説明する。
【0062】
まず、フライアッシュに対するアルカリ活性剤水溶液の重量比率、アルカリ活性剤水溶液における苛性ソーダ(NaOH)に対する水ガラス(Na2SiO3)の重量比率を設定する。次に、強度を優先させるか、流動性を優先させるかを決定する。強度を優先させる場合、細骨材として珪砂を用いるとよい。流動性を優先させる場合、細骨材として自然砂を用いるとよい。
【0063】
さらに、フライアッシュに対する高性能減水剤の重量比率、フライアッシュに対する練り混ぜ用の水の重量比率、フライアッシュに対する水の体積比率、アルカリ活性剤水溶液の濃度を決定する。さらに、粗骨材の限界体積に対する実際の粗骨材の体積の比率G/Glim、モルタル体積に対する細骨材の体積の比率Vs/Vm、ペースト体積Vpasteをそれぞれ設定する。
【0064】
以上設定された材料配合に基づいて材料を混ぜ合わせて、混ぜ合わせてから所定期間経過後の強度を測定する。測定された強度が目標以下の場合、水分を少なくするか、フライアッシュを多くして、再度材料配合の設定を行うとよい。
【0065】
なお、本実施形態においては、締固めが不要である自己充填性が高いジオポリマーコンクリートを例に挙げて説明したが、締固めを行うことを必ずしも除外するものではない。
【0066】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これら実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。