(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127267
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
B60J 10/76 20160101AFI20240912BHJP
B60J 10/27 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
B60J10/76
B60J10/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036298
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 康広
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌利
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA06
3D201AA21
3D201CA19
3D201DA03
3D201DA31
3D201DA34
3D201DA36
3D201EA02Z
3D201EA03A
3D201FA05
(57)【要約】
【課題】 ドアガラスの振動エネルギーを効率的に流して散逸させることが可能なガラスランを提供する。
【課題を解決するための手段】
底壁20と、車外側側壁30と、車内側側壁40を基本骨格とし、基本骨格がドアフレーム3に取付けられ、ドアガラス4の昇降をガイドするガラスラン10であって、底壁20には、底壁20のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップ23と、底壁20とドアガラス側リップ23との間に介在するドアガラス側膨出部24が形成され、ドアガラス側リップ23とドアガラス側膨出部24の少なくとも一方は、底壁20より硬度が高い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、前記基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、前記ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、
前記底壁には、前記底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップが形成され、
前記ドアガラス側リップの硬度は、前記底壁より高いことを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、前記基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、前記ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、
前記底壁には、前記底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップと、
前記底壁と前記ドアガラス側リップとの間に介在するドアガラス側膨出部が形成され、
前記ドアガラス側リップと前記ドアガラス側膨出部の少なくとも一方は、前記底壁より硬度が高いことを特徴とするガラスラン。
【請求項3】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、前記基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、前記ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、
前記底壁には、前記底壁の前記ドアガラス側面から突出するドアガラス側リップが形成され、
前記底壁には、前記ドアガラス側リップと当接する部分に、前記ドアガラス側リップと当接する部分以外の前記底壁より硬度の高い硬質部が形成されていることを特徴とするガラスラン。
【請求項4】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記基本骨格がドアフレームに取付けられ、前記基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、前記ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、
前記底壁には、前記底壁のドアフレーム側面から突出するドアフレーム側リップが形成され、
前記底壁の前記ドアフレーム側面から前記ドアフレーム側に膨らむドアフレーム側膨出部が形成され、
前記ドアフレーム側膨出部の硬度は、前記底壁より高いことを特徴とするガラスラン。
【請求項5】
前記ドアフレーム側膨出部は、前記底壁と前記ドアフレーム側リップの間に介在する請求項4に記載のガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両のドアに形成されたドアフレームに取付けられるガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両の静粛性向上は、乗員の快適性が高められるので、商品力向上のアピール度が高い。又、今後急速に普及が進むことが予想される電気自動車においては、従来搭載されているエンジンが無くなるので、そのエンジン音が無くなることによって残存する主な騒音は、ロードノイズと風切音が顕在化する。したがって、それらの低減技術の必要性が従来以上に高まっている。
【0003】
風切音は、走行時の風が車両に当たって車室外で発生する音が車体を透過して車室内に届く音である。その透過経路では、車室内の乗員の耳の位置に近いドアガラスの寄与が最も大きいことが分かっており、ドアガラスの板厚増加やアコースティックガラスの設定等の対策が行われているが、重量増とコストアップが障害になっている。
【0004】
ところで、ドアガラス以外にも、ドアガラスとドアフレームとの間のシール材であるガラスランにおいて、特に1kHz以上の高周波数域の騒音の低減が可能であり、この低減効果の増大化検討が行われている。
【0005】
ガラスランによる騒音低減技術として、例えば、以下の特許文献1に記載の技術が知られている。
図10に示すように、ガラスラン100は、底壁200、車外側側壁300と車内側側壁400を基本骨格としてチャンネル状(断面コ字形状)に形成されている。車外側側壁300の先端にはドアガラス600に当接するカバーリップ340が形成され、車外側側壁300のカバーリップ340より底壁200側の車内側には、底壁200側に突出し、ドアガラス600に摺接する車外側シールリップ310が形成されている。
【0006】
一方、車内側側壁400の先端には、ドアガラス600に摺接する車内側第1シールリップ410と、車内側第1シールリップ410より底壁200側に形成され、ドアガラス600に摺接する車内側第2シールリップ420が共に底壁200側に向けて形成され、車内側第1シールリップ410と車内側第2シールリップ420は、ドアガラス600との摺接時に、互いに当接しない。車内側シールリップを車内側第1シールリップ410と車内側第2シールリップ420の複数形成することにより、矢印Aで示すガラスラン透過ルートにおける透過音の遮蔽効果が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、風切音による騒音を低減する技術には、ドアガラスの振動エネルギーをドアガラスに当接する部品に効率的に流して散逸させる、いわゆるインピーダンスマッチングを利用して振動を低減することも可能であるが、現時点ではその検討は十分行われていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、インピーダンスマッチングに着目し、ドアガラスの振動エネルギーを効率的に流して散逸させ、風切音による騒音を低減することを可能とするガラスランを提供するものである。
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、底壁には、底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップが形成され、ドアガラス側リップの硬度は、底壁より高いことを特徴とするガラスランである。
【0011】
請求項1の本発明では、ガラスランの底壁には、底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップが形成され、ドアガラス側リップの硬度は、底壁より高いので、底壁を含むガラスランの剛性が増大し、ドアガラスとの当接時にドアガラスの振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0012】
ここで、「ガラスランの剛性」は、ドアガラスでガラスランを押圧した時の押圧部位の変位量に対するガラスランからの反力の増加量で表される。したがって、「ガラスランの剛性が増大する」とは、変位と反力との関係において、その傾き(勾配)が大きくなることをいう。
【0013】
ドアガラスとガラスランとの間のインピーダンスマッチングにおいては、ドアガラスのインピーダンスはドアガラスの質量が、ガラスランのインピーダンスはガラスランの剛性が支配的であると考えられる。ガラスランによる騒音低減が期待される2kHz以上の高周波数域においては、ドアガラスのインピーダンスは、ガラスランのインピーダンスより大きい。したがって、ガラスランの剛性を増大させることによりガラスランのインピーダンスをガラスのインピーダンスに近づける若しくは等しくすることができれば、インピーダンスマッチングによりドアガラスの振動エネルギーを効率的にガラスランに流して散逸させることができるので、風切音による騒音を低減することができると考える。
【0014】
請求項2に記載の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、底壁には、底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップと、底壁とドアガラス側リップとの間に介在するドアガラス側膨出部が形成され、ドアガラス側リップとドアガラス側膨出部の少なくとも一方は、底壁より硬度が高いことを特徴とするガラスランである。
【0015】
請求項2に記載の本発明では、ガラスランの底壁には、底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップと、底壁とドアガラス側リップとの間に介在するドアガラス側膨出部が形成され、ドアガラス側リップとドアガラス側膨出部の少なくとも一方は、底壁より硬度が高いので、底壁を含むガラスランの剛性が増大し、さらに、底壁とドアガラス側リップとの接触面積が増大し、ドアガラスとの当接時にドアガラスの振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0016】
請求項3の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、底壁には、底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップが形成され、底壁には、ドアガラス側リップと当接する部分に、ドアガラス側リップと当接する部分以外の底壁より硬度の高い硬質部が形成されていることを特徴とするガラスランである。
【0017】
請求項3の本発明では、ガラスランの底壁には、底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップが形成され、底壁には、ドアガラス側リップと当接する部分に、ドアガラス側リップと当接する部分以外の底壁より硬度の高い硬質部が形成されているので、底壁を含むガラスランの剛性が増大し、ドアガラスとの当接時にドアガラスの振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0018】
請求項4の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに取付けられ、基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、底壁には、底壁のドアフレーム側面から突出するドアフレーム側リップが形成され、底壁のドアフレーム側面からドアフレーム側に膨らむドアフレーム側膨出部が形成され、ドアフレーム側膨出部の硬度は、底壁より高いことを特徴とするガラスランである。
【0019】
請求項4の本発明では、ガラスランの底壁には、底壁のドアフレーム側面から突出するドアフレーム側リップが形成されているので、ドアフレーム側リップにより、ドアフレームと底壁との間をシールすることができる。又、底壁のドアフレーム側面からドアフレーム側に膨らむドアフレーム側膨出部が形成され、ドアフレーム側膨出部の硬度は、底壁より高いので、底壁を含むガラスランの剛性が増大し、上記背景技術における底壁の場合に比較してドアガラスとの当接時にドアガラスの振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、シール性を確保しつつ、風切音による騒音を低減することができる。
【0020】
請求項5の本発明は、請求項4の発明において、ドアフレーム側膨出部は、底壁とドアフレーム側リップの間に介在するガラスランである。
【0021】
請求項5の本発明では、ドアフレーム側膨出部は、底壁とドアフレーム側リップの間に介在するので、底壁を含むガラスランの剛性が増大し、さらに、底壁とドアガラス側リップとの接触面積が増大し、ドアガラスとの当接時にドアガラスの振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、シール性を確保しつつ、風切音による騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、基本骨格がドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、基本骨格の開口にドアガラスを受け入れると共に、ドアガラスの車内外側をシールするシール部材を備えるガラスランであって、底壁には、底壁のドアガラス側面から突出するドアガラス側リップが形成され、ドアガラス側リップの硬度は、底壁より高いので、底壁を含むガラスランの剛性が増大し、ドアガラスとの当接時にドアガラスの振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図1のドアフレームに用いるガラスランを示す正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態のガラスランであり、
図2のX-X断面図である。
【
図4】比較形態のガラスランであり、
図2のX-X断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態のガラスランであり、
図2のX-X断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態のガラスランであり、
図2のX-X断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態のガラスランであり、
図2のX-X断面図である。
【
図9】本発明の第5の実施形態のガラスランであり、
図2のX-X断面図である。
【
図10】従来のガラスランの取付構造を示す断面図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態について
図1から
図5に基づいて説明する。
図1は自動車の左側のフロントドア1を車外側からみた正面図を示す。このフロントドア1を構成するドア本体2の上部には、ドアフレーム3が装着されている。このドアフレーム3とドア本体2の上端縁とにより窓開口が形成されている。ドアフレーム3とドア本体2の内部にはガラスラン10が取付られ、ドアガラス4の昇降動作を案内するようになっている。なお、本発明は、左側のフロントドア1のみならず、右側のフロントドア、左右のリヤドアにも適用可能である。又、ドアガラスの昇降するスライドドアにも適用可能である。
【0025】
図2はガラスラン10のみを簡略化して車外側からみた正面図である。このガラスラン10はドアフレーム3の横枠部に対応する第1の押出成形部11と、フロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13とにより構成されている。第1の押出成形部11の前端部は第2の押出成形部12の上端部に対し第1の型成形部14により接続されている。又、第1の押出成形部11の後端部は第3の押出成形部13の上端部に対し第2の型成形部15により接続されている。
【0026】
図3は、
図2のX-X断面図であり、ドアガラス4を閉めた時の断面図である。又、
図3は、ガラスラン10を、後述する効果を測定するための治具60に取付けた断面図である。なお、治具60の内面の形状は、ガラスラン10を車両に取付けるドアフレーム3の形状をトレースしたものである。ガラスラン10は、底壁20、車外側側壁30と車内側側壁40を基本骨格とし、チャンネル状(断面が略コ字形)に形成されている。底壁20と車外側側壁30、車内側側壁40の連結部は、車外側及び車内側の溝部21、21により自由状態で展開可能に連結されている。
【0027】
底壁20は、略板状に形成されている。又、底壁20の治具内面(ドアフレーム)側には、ドアフレーム側リップ22が形成され、治具内面(ドアフレーム)と底壁20の間をシールしている。一方、底壁20のドアガラス側面には、ドアガラス4方向に突出するドアガラス側リップ23が形成されている。ドアガラス側リップ23は、ドアガラス4側に凸状に湾曲して形成され、ドアガラス側リップ23のドアガラス側とドアガラス4が当接する。本第1の実施形態では、ドアガラス側リップ23の硬度は、底壁20の硬度より高い。
【0028】
車外側側壁30の車内側には、車外側側壁30の先端部分から車内側、且つ底壁20側方向に突出してドアガラス4に摺接する車外側シールリップ31が形成されている。又、車外側側壁30の車外側には、第1係止部32と第2係止部33が形成され、屈曲している治具60の内面を挟むように保持している。
【0029】
車内側側壁40の車外側には、車内側側壁40の先端部分から車外側、底壁20側に突出してドアガラス4に摺接する車内側シールリップ41が形成されている。又、車内側側壁40の車内側には、第1保持リップ42、第2保持リップ43と当接リブ44が形成され、屈曲して形成されている治具60の内面を保持している。
したがって、ドアガラス4の車内外側をシールするシール部材は、車内側シールリップ41と車外側シールリップ31である。
【0030】
本第1の実施形態において、ドアガラス側リップ23を除くガラスラン10は、IRHD(国際ゴム硬さ)が80±5のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を使用し、ドアガラス側リップ23は、IRHDが100±5のTPOを使用し、押出成形によって作製した。
【0031】
ドアガラス4を閉じた時、
図3に示すように、ドアガラス4の車外側面には、車外側シールリップ31が、ドアガラス4の車内側面には、車内側シールリップ41が弾接し、ドアガラス4の先端部分には、ドアガラス側リップ23が弾接している。又、ドアガラス側リップ23の先端部分は、底壁20に当接している。なお、ドアガラス側リップ23の先端部分は、底壁20に当接しなくてもよい。
【0032】
図4は、比較形態であり、
図3と同一形状であり、ドアガラス側リップ23も
図3の他の部位と同じ材料で形成したガラスラン10である。
【0033】
図5は、騒音測定を説明する図である。車両の室内における人間の耳の位置(
図5の破線の円)に音源70を設置する。ドアガラス4の車外側に、ドアガラス4の振動を受信する加速度ピックアップ71(振動レベル計)を20箇所貼り付けた。加速度ピックアップ71は、振動レベル計のセンサ部分であり、振動加速度に比例した電気信号を出力する。
図5に示すように、ドアガラス4の車両上方の横枠部の位置に、
図2の第1の押出成形部11であり、断面が
図3と
図4のガラスラン10を装着し、騒音測定を実施した。
【0034】
人間の耳に感じる周波数特性が等比的であるため、分析はオクターブ分析を使用した。騒音に対して可聴周波数の周波数範囲において、1/3 オクターブの規格に定められたバンドパスフィルタを通して各々の帯域毎の音圧レベルを測定する。なお、バンドパスフィルタの特性などはJIS C 1513:2002を参照されたい。
【0035】
騒音測定の結果、本第1の実施形態では、
図4のガラスラン10の測定結果と比較して、2kHzから5kHzの領域において、騒音低減効果が確認された。
【0036】
上記の効果は、ガラスラン10において、ドアガラス側リップ23の硬度を高くすることにより、ドアガラス4との剛性差が小さくなり、インピーダンスマッチングによりドアガラス4の振動エネルギーをドアガラス側リップ23に、すなわち、ガラスラン10に効率的に流して(伝達して)散逸させることができたことに基づく結果と考える。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0037】
又、本発明は、ガラスラン10の基本骨格の材料を変更する必要もなく、ガラスラン10の他の性能(例えば、ドアフレーム3への装着性、雨滴やチリ等他の侵入防止に関するドアガラス4との間のシール性能)に影響を与えることもない。
【0038】
図6は、本発明の第2の実施形態であり、
図2のX-X断面図である。又、
図6は、上記の第1の実施形態と同様に、ガラスラン10を、効果を測定するための治具60に取付けた断面図である。本第2の実施形態と上記の第1の実施形態との相違点は、第1に、底壁20とドアガラス側リップ23との間に介在するドアガラス側膨出部24が形成され、ドアガラス側膨出部24の硬度が底壁20より硬度が高いこと、第2に、ドアガラス側リップ23の硬度が底壁20と同じである点にある。なお、車外側側壁30等、他の部位は
図3と同じである。ドアガラス側膨出部24の硬度は、第1の実施形態のドアガラス側リップ23(
図3)の硬度と同じである。
【0039】
ドアガラス側膨出部24は、底壁20のドアガラス側面に形成され、ガラスラン10を治具60(車両搭載時には、ドアフレーム3)に装着した時には、ドアガラス側リップ23には当接していない。なお、ドアガラス側膨出部24は、ガラスラン10を治具60(車両搭載時には、ドアフレーム3)に装着した時に、ドアガラス側リップ23の付根部分と当接していてもよい。
【0040】
ここで、ドアガラス側膨出部24とドアガラス側リップ23の硬度については、ドアガラス側膨出部24とドアガラス側リップ23の少なくとも一方の硬度が底壁20の硬度より高ければよい。したがって、上記の他に、ドアガラス側膨出部24の硬度が底壁20と同じであり、ドアガラス側リップ23の硬度が底壁20より高い場合、ドアガラス側膨出部24とドアガラス側リップ23の硬度が共に底壁20より高い場合を含んでいる。
【0041】
ドアガラス4を閉じた時、
図6に示すように、ドアガラス4の先端部分には、ガラスラン10のドアガラス側リップ23が弾接し、ドアガラス側リップ23は、ドアガラス側膨出部24に面で当接している。
【0042】
騒音測定の結果、本第2の実施形態では、
図4のガラスラン10の測定結果と比較して、2kHzから5kHzの領域において、騒音低減効果が確認された。又、2kHzにおいて、0.3dBの低減効果が確認された。したがって、底壁20とドアガラス側リップ23の間に、底壁20より硬度が高いドアガラス側膨出部24を介在させることにより、底壁20とドアガラス側リップ23との接触面積が増大し、ドアガラス4との当接時にドアガラス4の振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0043】
図7は、本発明の第3の実施形態であり、
図2のX-X断面図である。又、
図7は、上記の第1の実施形態と同様に、ガラスラン10を、効果を測定するための治具60に取付けた断面図である。本第3の実施形態と上記の第1の実施形態との相違点は、第1に、ドアガラス側リップ23の硬度が底壁20と同じであること、第2に、底壁20において、ドアガラス側リップ23と当接する部分には、ドアガラス側リップ23と当接する部分以外の底壁20より硬度の高い硬度の高い硬質部25が形成されている点にある。なお、
図7において、硬質部25は、底壁20をドアガラス4側から治具60側(ドアフレーム側)に貫通して形成されているが、貫通せず、ドアガラス側リップ23側に形成してもよい。さらに、硬質部25を、底壁20のドアガラス側リップ23側と治具60側(ドアフレーム側)に分けて形成してもよい。
【0044】
騒音測定の結果、本第3の実施形態では、
図4のガラスラン10の測定結果と比較して、2kHzから5kHzの領域において、騒音低減効果が確認された。したがって、ドアガラス4との当接時にドアガラス4の振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0045】
図8は、本発明の第4の実施形態であり、
図2のX-X断面図である。又、
図8は、上記の第1の実施形態と同様に、ガラスラン10を、効果を測定するための治具60に取付けた断面図である。本第4の実施形態と上記の第1の実施形態との相違点は、第1に、ドアガラス側リップ23の硬度が底壁20と同じであること、第2に、底壁20において、底壁20の治具60側(ドアフレーム側)面から治具60側(ドアフレーム側)に突出する、底壁20より硬度が高いドアフレーム側膨出部26が形成されている点にある。又、ドアフレーム側膨出部26は、治具60(車両搭載時には、ドアフレーム3)に装着した時には、治具60(ドアフレーム3)に当接している。
【0046】
騒音測定の結果、本第4の実施形態では、
図4のガラスラン10の測定結果と比較して、2kHzから5kHzの領域において、騒音低減効果が確認された。したがって、ドアフレーム側膨出部26を形成することにより、ドアガラス4の振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0047】
図9は、本発明の第5の実施形態であり、
図2のX-X断面図である。又、
図8は、上記の第1の実施形態と同様に、ガラスラン10を、効果を測定するための治具60に取付けた断面図である。本第5の実施形態と上記の第4の実施形態との相違点は、硬質のドアフレーム側膨出部26が、底壁20とドアフレーム側リップ22の間に介在する点である。
【0048】
ドアフレーム側膨出部26は、底壁20の治具60側面に形成され、
図9において、ドアフレーム側膨出部26は、ドアフレーム側リップ22に面で当接している。ガラスラン10を治具60(車両搭載時には、ドアフレーム3)に装着した時に、ドアフレーム側膨出部26は、ドアフレーム側リップ22に面で当接していてもよく、一部が当接、又は、当接していなくてもよい。
【0049】
騒音測定の結果、本第5の実施形態では、
図4のガラスラン10の測定結果と比較して、2kHzから5kHzの領域において、騒音低減効果が確認された。したがって、ドアフレーム側膨出部26を底壁20とドアフレーム側リップ22の間に介在させることにより、ドアガラス4の振動エネルギーを効率的に流して散逸させることができる。その結果、風切音による騒音を低減することができる。
【0050】
本発明の実施形態において、ガラスラン10を構成する材料としては、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成することができる。ゴムの場合は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
【0051】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、上記の第3から第5の実施形態では、ドアガラス側リップ23の硬度を底壁20と同じにしたが、第1の実施形態と同様に、ドアガラス側リップ23の硬度を底壁20より高くしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 フロントドア
2 ドア本体
3 ドアフレーム
10 ガラスラン
20 底壁
22 ドアフレーム側リップ
23 ドアガラス側リップ
24 ドアガラス側膨出部
25 硬質部
26 ドアフレーム側膨出部
30 車外側側壁
31 車外側シールリップ
40 車内側側壁
41 車内側シールリップ