(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012727
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】画素回路、表示装置及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20240124BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240124BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240124BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240124BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 642B
G09G3/20 622D
G09G3/20 623D
G09G3/20 621A
G09G3/20 642A
G09G3/20 623C
G09G3/20 611E
H05B33/14 A
H01L27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204327
(22)【出願日】2020-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】豊村 直史
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107EE04
3K107FF04
3K107HH02
3K107HH04
3K107HH05
5C080AA06
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD06
5C080FF11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C380AA01
5C380AB06
5C380AB21
5C380AB34
5C380AB36
5C380BA38
5C380BA39
5C380BB02
5C380BB09
5C380BB22
5C380CA12
5C380CA53
5C380CA54
5C380CB01
5C380CB18
5C380CC04
5C380CC07
5C380CC26
5C380CC33
5C380CC35
5C380CC38
5C380CC39
5C380CC64
5C380CC66
5C380CD024
5C380DA02
5C380DA06
5C380DA47
(57)【要約】
【課題】輝度の低下を抑止した画素回路、表示装置及び駆動方法を提供する。
【解決手段】本開示の画素回路は、第1端子に供給される電圧に応じて、発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタと、前記第1端子に供給する電圧を保持する第1容量と、映像信号線の信号電圧をサンプリングする第2トランジスタと、前記第2トランジスタによりサンプリングされた信号電圧を保持する第2容量と、前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する第3トランジスタと、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子に供給される電圧に応じて、発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタと、
前記第1端子に供給する電圧を保持する第1容量と、
映像信号線の信号電圧をサンプリングする第2トランジスタと、
前記第2トランジスタによりサンプリングされた信号電圧を保持する第2容量と、
前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する第3トランジスタと、
を備えた画素回路。
【請求項2】
前記第3トランジスタは、前記第1容量と前記第2容量の比率に応じた量の電荷を前記第1容量に提供する
請求項1に記載の画素回路。
【請求項3】
前記第2トランジスタは、映像信号の第1フレームのうち第1トランジスタが前記発光素子に電流を供給する第1発光期間において、第2フレーム用の信号電圧を前記映像信号線からサンプリングし、前記第2容量が、前記第2フレーム用の前記信号電圧を保持し、
前記第3トランジスタは、前記第2フレームにおいて前記第2容量及び前記第1容量間を接続して、前記第1発光期間に前記第2容量に蓄積された電荷に応じた電圧を前記第1容量に設定する
請求項1に記載の画素回路。
【請求項4】
前記映像信号線と前記第1トランジスタの制御端子との間を接続する第4トランジスタを備え、
前記第4トランジスタは、前記第2フレームにおいて前記第1トランジスタの閾値を補正するためのオフセット電圧を前記映像信号線から受け、かつ前記オフセット電圧を前記第1トランジスタの前記制御端子に供給し、
前記第3トランジスタは、前記閾値の補正処理が終わった後、前記第2容量及び前記第1容量間を接続する
請求項3に記載の画素回路。
【請求項5】
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタはシリコン基板のウェルに形成され、
前記第1端子には、複数の輝度のうち表示する輝度に応じた電圧が設定され、
前記ウェルの電位は、前記複数の輝度のうち前記第1端子に設定する必要がある最大の電圧を前記第1端子に提供するために必要な前記信号電圧の値以上に設定されている
請求項1に記載の画素回路。
【請求項6】
前記発光素子と前記第1トランジスタ間の接続ノードを基準電圧に短絡する第5トランジスタを備え、
前記第3トランジスタは、少なくとも前記第5トランジスタが前記接続ノードを前記基準電圧に短絡していない期間の少なくとも一部に、前記第2容量及び前記第1容量間を接続する
請求項1に記載の画素回路。
【請求項7】
前記第1端子は、前記第1トランジスタの制御端子である
請求項1に記載の画素回路。
【請求項8】
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタはPチャネル型のMOSトランジスタである
請求項5に記載の画素回路。
【請求項9】
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタはNチャネル型のMOSトランジスタである
請求項5に記載の画素回路。
【請求項10】
前記発光素子をさらに備えた
請求項1に記載の画素回路。
【請求項11】
発光素子と、第1端子に供給される電圧に応じて、前記発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタと、前記第1端子に供給する電圧を保持する第1容量と、映像信号線の信号電圧をサンプリングする第2トランジスタと、前記第2トランジスタによりサンプリングされた信号電圧を保持する第2容量と、前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する第3トランジスタとを含む画素回路と、
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタの動作を制御する駆動回路と
表示装置。
【請求項12】
第1容量に保持された電圧を、発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタの第1端子に供給し、
前記第1端子に供給される電圧に応じて、前記第1トランジスタを駆動し、
映像信号線の信号電圧をサンプリングし、
サンプリングされた信号電圧を第2容量に保持し、
前記第2容量に前記信号電圧が保持された後、前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する
駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画素回路、表示装置及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AR(Augmented Reality)グラスのディスプレイとして、シリコン基板上にMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタや有機EL(Electro Luminescence)ダイオード等による画素を構成したM-OLED(マイクロオーレッド)パネルが用いられている。
【0003】
ARでは現実世界とディスプレイ表示映像との重畳性が重要視されている。重畳性を高める方法の一つとして、パネルの全画素を同時に発光させる面一括発光駆動が考えられる。
【0004】
面一括発光駆動の方式の例として、各画素の有機ELダイオードを駆動する駆動トランジスタの閾値のばらつき等を補正し、各画素へ映像信号の書き込みを行い、1フレーム中のブランキング期間などを用いて一括発光を行う方法がある。しかしながら、この方法では、1フレーム中の発光期間は非常に短い時間となる。このため、輝度が低下する問題や、1フレーム中の発光時間の比率が低い(低デューティ比)ことに起因してフリッカが視認される問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、輝度の低下を抑止した画素回路、表示装置及び駆動方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の画素回路は、
第1端子に供給される電圧に応じて、発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタと、
前記第1端子に供給する電圧を保持する第1容量と、
映像信号線の信号電圧をサンプリングする第2トランジスタと、
前記第2トランジスタによりサンプリングされた信号電圧を保持する第2容量と、
前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する第3トランジスタと、
を備える。
【0008】
本開示の表示装置は、
第1端子に供給される電圧に応じて、発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタと、前記第1端子に供給する電圧を保持する第1容量と、映像信号線の信号電圧をサンプリングする第2トランジスタと、前記第2トランジスタによりサンプリングされた信号電圧を保持する第2容量と、前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する第3トランジスタと、を含む画素回路と、
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタの動作を制御する駆動回路と
を備える。
【0009】
本開示の駆動方法は、
第1容量に保持された電圧を、発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタの第1端子に供給し、
前記第1端子に供給される電圧に応じて、前記第1トランジスタを駆動し、
映像信号線の信号電圧をサンプリングし、
サンプリングされた信号電圧を第2容量に保持し、
前記第2容量に前記信号電圧が保持された後、前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係るアクティブマトリクス型表示装置の全体の概略を示す構成図。
【
図2】比較例にかかる有機EL表示装置の詳細ブロック図。
【
図3】比較例における画素の回路例と周辺回路とを示す図。
【
図4】比較例における有機EL表示装置を駆動する動作のタイミング波形図。
【
図5】
図4の駆動シーケンスにおいて、非発光期間と発光期間との長さの関係図。
【
図6】本開示の実施形態に係る有機EL表示装置の詳細ブロック図。
【
図7】
図6の有機EL表示装置における画素の回路例と周辺回路を示す図。
【
図9】
図7の有機EL表示装置を駆動する動作のタイミング波形図。
【
図10】
図9の駆動シーケンスにおいて、発光期間と非発光期間との長さの関係図。
【
図11】本開示の実施形態に係る画素の変形例1を示す図。
【
図12】本開示の実施形態に係る画素の変形例2を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。本開示において示される1以上の実施形態において、各実施形態が含む要素を互いに組み合わせることができ、かつ、当該組み合わせられた結果物も本開示が示す実施形態の一部をなす。図面において同一又は同等の機能を有する要素、又は同一名称の要素には同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する場合がある。
【0012】
図1は、本開示の実施形態に係るアクティブマトリクス型表示装置の全体の概略を示す構成図である。ここでは有機ELダイオードを、画素回路の発光部(発光素子)として用いるアクティブマトリクス型有機EL表示装置、例えばM-OLED(マイクロオーレッド)パネルの場合を例に挙げて説明する。以下では、「画素回路」を単に「画素」と記述する場合もある。
【0013】
図1の有機EL表示装置10は、有機ELダイオードを含む複数の画素が行列状に2次元配置されて成る画素アレイ部20と、画素アレイ部20の周辺に配置される駆動回路とを有する。駆動回路は、水平駆動部30と、垂直駆動部40とを備える。垂直駆動部40は、画素アレイ部20における水平方向の1つ行の画素群を垂直方向に順次選択する。水平駆動部30は、垂直駆動部40によって選択された1行の画素群に映像信号等の信号の書き込みを行う。
【0014】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明するに先立ち、比較例にかかる有機EL表示装置を説明する。比較例に有機EL表示装置の全体ブロック図は、
図1と同じである。
【0015】
図2は、比較例にかかる有機EL表示装置の詳細ブロック図である。説明のため
図1と同一名称の要素には同一の符号を付してある。
図2の有機EL表示装置は、有機ELダイオードを含む複数の単位画素が行列状に2次元配置された画素アレイ部20と、水平駆動部30と、垂直駆動部40とを備えている。垂直駆動部40は、書き込み走査部401と、駆動走査部402と、補助駆動走査部403とを備えている。単位画素は、赤色(R)を発光する画素201R、青色(B)を発光する画素201G、緑色(G)を発光する画素201Bを含む。RGBの個々の画素を特に区別しない場合は、画素201と記載する。
【0016】
ここでは、
図2の有機EL表示装置がカラー表示対応の場合の構成例を示している。カラー画像を形成する単位となる単位画素がRGBの複数の画素を含んでいる。但し、単位画素は、RGBの3原色の画素の組み合わせに限られるものではない。モノクロ表示装置の場合、1つの単位画素が単一色の1つの画素のみを含んでもよい。あるいは、3原色の画素に更に1色あるいは複数色の画素を加えて1つの単位画素を構成してもよい。例えば、輝度向上のために白色(W)光を発光する画素を単位画素に加えてもよい。
【0017】
画素アレイ部20には、2次元状の画素201の配列に対して、行方向に沿って走査線211、駆動線212、及び補助駆動線213が画素行毎に配線されている。さらに、2次元状の画素201の配列に対して、列方向に沿って信号線214が画素列毎に配線されている。より詳細には、2次元状の画素201Rの配列に対して、列方向に沿って信号線214Rが画素列毎に配線されている。2次元状の画素201Gの配列に対して、列方向に沿って信号線214Gが画素列毎に配線されている。2次元状の画素201Bの配列に対して、列方向に沿って信号線214Bが画素列毎に配線されている。RGBの個々の信号線を特に区別しない場合は、信号線214と記載する。
【0018】
走査線211は、書込み走査部401の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。駆動線212は、駆動走査部402の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。補助駆動線213は、補助駆動走査部403の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。信号線214は、水平駆動部30の対応する列の出力端にそれぞれ接続されている。
【0019】
書込み走査部401は、シフトレジスタ回路等によって構成されている。書込み走査部401は、画素アレイ部20の各画素201への映像信号の信号電圧又は後述するオフセット電圧の書込みに際して、走査線211に対して書込み走査信号WS1を順次供給することによって、画素アレイ部20の各画素201を行単位で順番に走査する。
【0020】
駆動走査部402は、書込み走査部401と同様に、シフトレジスタ回路等によって構
成されている。駆動走査部402は、書込み走査部401による走査に同期して、駆動線212に対して発光制御信号DSを供給することによって画素201の発光/非発光(消光)の制御を行う。
【0021】
補助駆動走査部403は、書込み走査部401と同様に、シフトレジスタ回路等によって構成されている。この補助駆動走査部403は、書込み走査部401による走査に同期して、補助駆動線213に対して補助駆動信号AZ1を供給することによって、非発光期間に画素201の発光を阻止する制御を行う。
【0022】
水平駆動部30は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)Vsigと、オフセット電圧Vofsとを選択的に出力する。ここで、オフセット電圧Vofsは、映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電圧に相当する電圧(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電圧)、あるいは、その近傍の電圧である。オフセット電圧Vofsは、後述する補正処理を行う際に用いられる初期化電圧である。
【0023】
水平駆動部30から択一的に出力される信号電圧Vsig/オフセット電圧Vofsは、信号線214を介して画素アレイ部20の各画素201に対して、書込み走査部401による走査によって選択された画素行の単位で書き込まれる。
【0024】
図3は、画素(画素回路)201の回路例と周辺回路(水平駆動部30、垂直駆動部40)とを示す図である。画素201の発光部は、有機ELダイオード21を含む。有機ELダイオード21は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子の一例である。
【0025】
画素201は、有機ELダイオード21と、有機ELダイオード21に電流を流すことによって有機ELダイオード21を駆動する素子駆動回路とによって構成されている。有機ELダイオード21は、全ての画素201に対して共通に配線された共通電源線35にカソード電極が接続されている。共通電源線35の電圧は電圧Vcathである。
【0026】
有機ELダイオード21を駆動する素子駆動回路は、駆動トランジスタ22、サンプリングトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、スイッチングトランジスタ25、容量Cs1、及び、補助容量Csubを含む。なお、本実施形態にあっては、画素(画素回路)201は、ガラス基板のような絶縁体上ではなく、シリコンのような半導体上に形成されている。そして、駆動トランジスタ22は、Pチャネル型のMOSトランジスタ(PMOSトランジスタ)である。
【0027】
また、本実施形態にあっては、駆動トランジスタ22と同様に、サンプリングトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25についても、Pチャネル型のMOSトランジスタである。駆動トランジスタ22、サンプリングトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25は、ソース/ゲート/ドレインの3端子ではなく、ソース/ゲート/ドレイン/バックゲートの4端子となっている。各トランジスタのバックゲートには電源電圧VCCPが印加されている。つまり各トランジスタのウェル電位はVCCPとされている。
【0028】
画素201において、サンプリングトランジスタ23は、水平駆動部30から信号線214を通して供給される信号電圧Vsigをサンプリングすることによって駆動トランジスタ22のゲートノード(ゲート電極)に映像信号を書き込む。駆動トランジスタ22はゲート電極に与えられる電圧に応じて、有機ELダイオード21の発光を制御する。駆動トランジスタ22のゲート電極は、発光素子の発行を制御する駆動トランジスタの第1端子に対応する。第1端子は制御端子、ドレイン端子又はソース端子であり、本実施形態では制御端子である。
【0029】
発光制御トランジスタ24は、電源電圧VCCPの電源ノードと駆動トランジスタ22のソース電極(ソースノード)との間に接続され、発光制御信号DSによる駆動の下に、有機ELダイオード21の発光/非発光を制御する。スイッチングトランジスタ25は、駆動トランジスタ22のドレイン電極(ドレインノード)と、全画素に共通の共通基準線36との間に接続される。スイッチングトランジスタ25は、駆動信号AZ1による駆動の下に、有機ELダイオード21の非発光期間に有機ELダイオード21が発光しないように制御する。共通基準線36は基準電圧VSSを有し、電流排出先ノードとして機能する。
【0030】
容量Cs1は、駆動トランジスタ22のゲート電極(ゲートノード)と駆動トランジスタ22のソース電極との間に接続されており、サンプリングトランジスタ23によるサンプリングによって書き込まれた信号電圧Vsigを保持する。容量Cs1の電圧はゲート電極に与えられる。駆動トランジスタ22は、容量Cs1の保持電圧に応じた駆動電流を有機ELダイオード21に流すことによって、有機ELダイオード21を駆動する。補助容量Csubは、駆動トランジスタ22のソース電極と、固定電位のノード(本例では、電源電圧VCCPの電源ノード)との間に接続されている。補助容量Csubは、信号電圧Vsigを書き込んだときに駆動トランジスタ22のソース電圧が変動するのを抑制するとともに、駆動トランジスタ22のゲート-ソース間電圧Vgsを駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthにする作用を行う。
【0031】
図4は、
図2又は
図3の有機EL表示装置を駆動する動作のタイミング波形図である。水平期間の開始の同期信号XVD、信号線214の電位Vofs/Vsig、発光制御信号DS、書込み走査信号WS1、補助駆動信号AZ1、駆動トランジスタ22のソース電圧Vs、ゲート電圧Vg、有機ELダイオードのアノード電位の変化を時間に沿って示している。
【0032】
サンプリングトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25がPチャネル型のMOSトランジスタであるため、書込み走査信号WS1、発光制御信号DS、及び、補助駆動信号AZ1が低電圧の状態がアクティブ状態となる。書込み走査信号WS1、発光制御信号DS、及び、補助駆動信号AZ1が高電圧の状態が非アクティブ状態となる。サンプリングトランジスタ23、発光制御トランジスタ24、及び、スイッチングトランジスタ25は、書込み走査信号WS1、発光制御信号DS、及び、駆動信号AZ1のアクティブ状態でオン(導通状態)となり、非アクティブ状態でオフ(非導通状態)となる。
【0033】
水平期間の開始を示す同期信号XVDが高電圧(ハイレベル)から低電圧(ローレベル)に変化することで1水平期間(1H)が開始する。同期信号XVDが、図示しない同期カウンタから入力される。
【0034】
時刻t0で、制御発光信号DSが高電圧から低電圧に遷移することで、発光制御トランジスタ24がオンになる。
【0035】
時刻t1で、書込み走査信号WS1が高電圧から低電圧に遷移することで、サンプリングトランジスタ23がオンになる。
【0036】
また、時刻t1では、発光制御信号DSが低電圧の状態にあり、発光制御トランジスタ
24がオンにあるため、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsは電源電圧VCCPになっている。水平駆動部30から信号線214に対して、信号電圧Vsigが出力されている状態にある。信号電圧Vsigがサンプリングトランジスタ23によるサンプリングによって駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれ、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgが上昇する。図の例では、VCCP(例えば黒の輝度の電圧に対応)が書き込まれ、ゲート電圧Vgが電源電圧VCCPになっている。
【0037】
また補助駆動走査部403は、時刻t1から時刻t8までの間、補助駆動信号AZ1をアクティブ状態(低電位の状態)とする。時刻t1~時刻t8の期間は、有機ELダイオード21は強制的に非発光期間とされる。補助駆動信号AZ1がアクティブ状態となることで、これに応答してスイッチングトランジスタ25がオンとなる。スイッチングトランジスタ25がオンになることで、スイッチングトランジスタ25を介して、駆動トランジスタ22のドレイン電極(有機ELダイオード21のアノード電極)と電流排出先ノードである共通電源線35との間が電気的に短絡される。スイッチングトランジスタ25のオン抵抗は、有機ELダイオード21に比べて非常に小さいため、駆動トランジスタ22に流れる電流が共通電源線35に流れ、有機ELダイオード21には流れ込まない。これにより有機ELダイオード21の非発光期間において、駆動トランジスタ22に流れる電流が有機ELダイオード21に流れ込まない。すなわち、非発光期間において、有機ELダイオード21が発光してしまうのを抑制することができる。これにより表示パネルの高コントラスト化が可能となる。
【0038】
時刻t2で、書込み走査信号WS1が低電圧から高電圧から遷移することで、サンプリングトランジスタ23がオフになる。
【0039】
時刻t3~時刻t7の間、水平駆動部30から信号線214に対して出力される電圧が、信号電圧Vsigからオフセット電圧Vofsに変更される。
【0040】
時刻t4~時刻t5の間で、書込み走査信号WS1が高電圧から低電圧に遷移することで、サンプリングトランジスタ23がオンになる。信号線214の電圧がオフセット電圧Vofsであるため、オフセット電圧Vofsがサンプリングトランジスタ23によるサンプリングによって、駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれる。駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgがオフセット電圧Vofsになる。
【0041】
このとき、駆動トランジスタ22のゲート-ソース間電圧Vgsは、Vgs=Vofs-VCCPとなる。このように駆動トランジスタ22のソース電圧Vsを電源電圧VCCPに設定し、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgをオフセット電圧Vofsに設定する動作が、閾値補正処理を行う前の準備(閾値補正準備)の動作である。電源電圧VCCPがソース電圧Vsの初期化電圧、オフセット電圧Vofsが駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgの初期化電圧に相当する。
【0042】
次に、時刻t6で、発光制御信号DSが低電圧から高電圧に遷移し、発光制御トランジスタ24がオフになると、駆動トランジスタ22のソース電極がフローティング状態となり、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgがオフセット電圧Vofsに保たれた状態で閾値補正処理が開始される。すなわち、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgから閾値電圧Vthを減じた電圧(Vg-Vth)に向けて、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが下降(低下)を開始する。
【0043】
駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgの初期化電圧Vofsを基準とし、当該初期化電圧Vofsから駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthを減じた電圧(Vg-Vth)に向けて駆動トランジスタ22のソース電圧Vsを変化させる動作が閾値補正処理となる。閾値補正処理が進むと、駆動トランジスタ22のゲート-ソース間電圧Vgsが、駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthに収束する。この閾値電圧Vthに相当する電圧は容量Cs1に保持される。
【0044】
閾値補正処理が進んだ時刻t8で、補助駆動信号AZ1をアクティブ状態(低電位の状態)とする。これに応答してスイッチングトランジスタ25がオンとなる。時刻t8は、一例として、ゲート-ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthに収束又はほぼ収束している時刻である。
【0045】
時刻t9で、書込み走査信号WS1が高電圧から低電圧に遷移し、サンプリングトランジスタ23がオンになると、閾値補正期間が終了する。時刻t9から時刻t10まで、水平駆動部30から信号線214に映像信号の信号電圧Vsig(画素201に表示させたい所望の輝度に対応する電圧)が出力され、信号電圧Vsigをサンプリングして画素201内に書き込む。このサンプリングトランジスタ23による信号電圧Vsigの書込み動作により、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vgが信号電圧Vsigになる。信号電圧Vsigは容量Cs1に保持される。
【0046】
この映像信号の信号電圧Vsigの書込みの際に、駆動トランジスタ22のソース電極と電源電圧VCCPの電源ノードとの間に接続されている補助容量Csubは、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsが変動するのを抑える作用を行う。そして、映像信号の信号電圧Vsigによる駆動トランジスタ22の駆動の際に、当該駆動トランジスタ22の閾値電圧Vthが、容量Cs1に保持された閾値電圧Vthに相当する電圧と相殺される。
【0047】
時刻t11で、発光制御信号DSが高電圧から低電圧に遷移することで、発光制御トランジスタ24がオンになる。これにより、電源電圧VCCPの電源ノードから発光制御トランジスタ24を通して駆動トランジスタ22に電流が供給される。
【0048】
サンプリングトランジスタ23がオフであることで、駆動トランジスタ22のゲート電極は信号線214から電気的に切り離されてフローティング状態にある。ここで、駆動トランジスタ22のゲート電極がフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタ22のゲート-ソース間に容量Cs1が接続されていることにより、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsの変動に連動してゲート電圧Vgも変動する。
【0049】
すなわち、駆動トランジスタ22のソース電圧Vs及びゲート電圧Vgは、容量Cs1に保持されているゲート-ソース間電圧Vgsを保持したまま上昇する。そして、駆動トランジスタ22のソース電圧Vsは、駆動トランジスタ22の飽和電流に応じた有機ELダイオード21の発光電圧Voledまで上昇する。
【0050】
容量Cs1に保持されたゲート-ソース間電圧Vgs、即ち、容量Cs1の両端間電圧を保持したまま、駆動トランジスタ22のゲート電圧Vg及びソース電圧Vsが変動する。
【0051】
そして、駆動トランジスタ22のドレイン-ソース間電流Idsが有機ELダイオード21に流れ始めることにより、電流Idsに応じて有機ELダイオード21のアノード電圧が上昇する。やがて、有機ELダイオード21のアノード電圧が有機ELダイオード21の閾値電圧Vthelを超えると、有機ELダイオード21に電流が流れ始めるため、有機ELダイオード21が発光を開始する。
【0052】
時刻t11で発光制御トランジスタ24をオンにし、有機ELダイオード21が発光を開始する動作は、一例として画素アレイ部20における全画素201で同時に行うよう駆動走査部402は制御する。これにより、パネルの全画素を同時に発光させる面一括発光駆動を行う。
【0053】
以上説明した一連の回路動作において、閾値補正準備、閾値補正、信号電圧Vsigの書込み(信号書込み)、及び、発光動作は、例えば1水平期間(1H)において実行される。
【0054】
図5は、
図4に示した駆動シーケンスにおいて、1水平期間(1フレーム)内における非発光期間P1と発光期間P2との長さの関係を示す図である。非発光期間P1は、閾値補正準備、閾値補正、信号電圧Vsigの書込み(信号書込み)等の期間を含む。
図4の駆動シーケンスでは、1水平期間に占める非発光期間P2の比率が小さい。1フレーム中の発光期間は非常に短い時間となり、輝度が低下したり、フリッカが視認されたりする問題がある。
【0055】
そこで本開示の実施形態では、以下の構成により、比較例の問題を解消する。すなわち、信号線214とサンプリングトランジスタ23のソース電極(又はドレイン電極)との間に追加のサンプリングトランジスタ(後述する
図7又は
図8の第2サンプリングトランジスタ28)を設ける。そして、サンプリングトランジスタ23と第2サンプリングトランジスタ28との間の接続ノードと、基準電圧VSSとの間に次のフレームの映像信号電圧を保持する容量(
図7又は
図8の容量Cs2)を設ける。現在のフレーム(第1フレーム)の発光期間中に第2サンプリングトランジスタ28を用いて次のフレーム(第2フレーム)の映像信号の信号電圧を容量Cs2に書き込む。これにより、あるフレームの発光期間終了後に、次のフレームの発光動作までの時間(次のフレームに対する発光動作に移行するまでの時間)を短くする。よって、1フレーム期間における発光期間の比率を高くでき、高い発光デューティで面一括発光を実現することができる。
【0056】
図6は、本開示の実施形態に係る有機EL表示装置10の詳細ブロック図である。
図6の有機EL表示装置10は、有機ELダイオードを含む複数の単位画素が行列状に2次元配置された画素アレイ部20と、水平駆動部30と、垂直駆動部40とを備えている。垂直駆動部40は、書き込み走査部501と、駆動走査部502と、補助駆動走査部503とを備えている。単位画素は、赤色(R)を発光する画素231R,青色(B)を発光する画素231G,緑色(G)を発光する画素231Bを含む。RGBの個々の画素を特に区別しない場合は、画素231と記載する。
図2の比較例と同様、単位画素は、RGBの3原色の画素の組み合わせに限られるものではない。
【0057】
書き込み走査部501、駆動走査部502、補助駆動走査部503、水平駆動部30及び画素231について、
図2で説明した書き込み走査部401、駆動走査部402、補助駆動走査部403、水平駆動部30及び画素201と同一の機能を有する部分の説明は省略する。
図2で説明した比較例から拡張又は変更された機能を中心に説明する。
【0058】
画素アレイ部20において、行方向に沿って走査線(第2走査線)251、及び補助駆動線(第2補助駆動線)253が画素行毎に追加的に配線されている。
【0059】
書込み走査部501は、画素アレイ部20の各画素231への現在のフレームの映像信号の信号電圧の書き込みのために、走査線211に対して書込み走査信号WS1を順次供給することによって、各画素231を行単位で順番に走査する。さらに、書込み走査部501は、画素アレイ部20の各画素231へ次のフレームの映像信号の信号電圧の書込みのために、第2走査線251に対して書込み走査信号WS2を順次供給することによって、画素アレイ部20の各画素231を行単位で順番に走査する。
【0060】
駆動走査部502は、
図2に示した比較例と同様、書込み走査部501による走査に同期して、駆動線212に対して発光制御信号DSを供給することによって画素231の発光/非発光(消光)の制御を行う。
【0061】
補助駆動走査部503は、
図2に示した比較例と同様、書込み走査部501による走査に同期して、補助駆動線213に対して補助駆動信号AZ1を供給することによって、非発光期間において画素231の発光を阻止する制御を行う。さらに、補助駆動走査部503は、書込み走査部501による走査に同期して、第2補助駆動線253に対して補助駆動信号AZ2を供給することによって、オフセット電圧Vofsを画素231に書き込む制御を行う。
【0062】
水平駆動部30は、
図2に示した比較例と同様、映像信号の信号電圧Vsigと、オフセット電圧Vofsとを選択的に出力する。
【0063】
図7は、画素(画素回路)231の回路例と周辺回路(水平駆動部30、垂直駆動部40)とを示す図である。
図8は、
図7から画素231を取り出して示したものである。
図7及び
図8において、
図3と同一の要素には同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。
【0064】
図3の比較例に係る画素201に対して、第2サンプリングトランジスタ28(第2トランジスタ)、第2スイッチングトランジスタ27(第4トランジスタ)、容量Cs2(第2容量)が追加されている。
【0065】
第2サンプリングトランジスタ28は、信号線214とサンプリングトランジスタ23(第3トランジスタ)のソース電極との間に接続されている。第2サンプリングトランジスタ28はPMOSトランジスタであり、ソース電極が信号線214に接続され、ドレイン電極がサンプリングトランジスタ23のソース電極に接続されている。容量Cs2は、第2サンプリングトランジスタ28とサンプリングトランジスタ23との接続ノードと、基準電圧VSSとの間に接続されている。第2サンプリングトランジスタ28は、水平駆動部30から信号線214を通して供給される次フレーム用の信号電圧Vsigをサンプリングすることによって容量Cs2に信号電圧Vsigを書き込む。容量Cs2は、第2サンプリングトランジスタ28によるサンプリングによって書き込まれた信号電圧Vsigを保持する。
【0066】
サンプリングトランジスタ23は、容量Cs2に保持された信号電圧Vsigに応じた電圧を容量Cs1(第1容量)に設定する。これにより駆動トランジスタ22(第1トランジスタ)のゲート電極に信号電圧Vsigに応じた電圧を設定する。サンプリングトランジスタ23をオンとしたときに、容量Cs2の電荷が、Cs2とCs1とCsubとの容量の大きさの比率に応じて、Cs1とCsubに転送される(電荷が再分配される)。転送される電荷量を算出する際、Cs1とCsubの合成容量を、本実施形態に係る第1容量の容量値とみなせばよい。Cs1とCsubの直列接続を、本実施形態に係る第1容量してもよい。
【0067】
駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込まれる信号電圧(Cs1に保持される電圧)は、Cs1とCsubの合成容量C3とした場合に、容量Cs2に保持された電圧値にCs2/(Cs2+Cs3)を乗じた値の電圧である。すなわちVsig=Vsig_1×Cs2/(Cs2+Cs3)である。したがって、容量Cs2に書き込む信号電圧Vsig_1は、ゲート電極に書き込むべき信号電圧Vsig(所望の輝度に対応してゲート電極に設定する電圧)に(Cs2+Cs3)/Cs2を乗じた値とする。
【0068】
第2スイッチングトランジスタ27は、信号線214と駆動トランジスタ22のゲート電極との間に接続されている。第2スイッチングトランジスタ27はPMOSトランジスタであり、ソース電極が信号線214に接続され、ドレイン電極が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。第2スイッチングトランジスタ27は、水平駆動部30から信号線214を通して供給される信号電圧Vofsをサンプリングすることによって、信号電圧Vofsを駆動トランジスタ22のゲート電極に書き込む。すなわちCs1にVofsを書き込む。
【0069】
ここで信号線214にソース電極又はドレイン電極が接続しているPMOSトランジスタ(S27,28,23)のバックゲートの電圧(ウェル電位)は、信号線214から供給する映像信号の黒電圧と同じ電位又は当該電位以上に設定されている。すなわち、ウェル電位は、黒電圧をVG0、白電圧VG255とし、輝度を256段階で表す場合のVG0に設定されている。なお、VG0が最も高く、VG255が最も低い。この理由は後述する。
【0070】
図9は、
図7の有機EL表示装置10を駆動する動作のタイミング波形図である。信号線214の電位Vofs/Vsig、書込み走査信号WS2、WS1、補助駆動信号AZ2、AZ1、及び発光制御信号DSの変化を時間に沿って示している。予め容量Cs1に現在のフレームの映像信号が書き込まれている。
【0071】
時刻t21で水平駆動部30により信号線214の電位が時刻t25までの間Vofsに設定される。補助駆動走査部503により時刻t22~t23の間、第2スイッチングトランジスタ27をオンにして、容量Cs1にオフセット電圧Vofsを書き込む。時刻t24で駆動走査部502により発光制御トランジスタ24をオフにすることで、
図2の比較例と同様に、駆動トランジスタ22の閾値の補正(Vth補正)を行う。
【0072】
時刻t27から時間T1の間、補助駆動走査部503によりスイッチングトランジスタ25をオフにし、オフの間における時刻t28でサンプリングトランジスタ23をオンにする。これにより、容量Cs2と、容量Cs1、Csubとの間で、容量Cs2に蓄積された電荷の分配(電荷の転送)が発生し、容量Cs1に保持された信号電圧に応じた電圧が、駆動トランジスタ22のゲート電極に設定(容量Cs1に保持)される。すなわち、駆動トランジスタ22のゲート電極が所望の表示輝度に対応する電圧となる。なお時刻t28でのサンプリングトランジスタ23のオンはすべての画素行で同時に行われる。
【0073】
その後、サンプリングトランジスタ23を、時刻t29でオフにし、時刻t30でスイッチングトランジスタ25をオフにする。なお時間T1が経過してスイッチングトランジスタ25がオンにされた後、時刻t30までスイッチングトランジスタ25がオフにされているため、有機ELダイオードへ電荷が流れ出るのを防止し、電荷の分配時に配分が適切に行われる。時刻t31で駆動走査部502が発光制御トランジスタ24をオンすることで、有機ELダイオード21が発光する。すなわち、発光期間に遷移する。発光制御トランジスタ24のオンは全画素231で同時に行われ、これにより面一括発光が行われる。
【0074】
発光期間中に次フレームの映像信号の書き込みが行われる。発光期間中(あるいは時刻t29から時刻t31の間に)、信号線214の電位が次のフレーム用の映像信号の信号電圧Vsigに設定される。
図9の例では次のフレーム用の映像信号の信号電圧が前のフレーム用の映像信号の信号電圧と同じ値になっているが、同じである必要はない。発光期間中の時刻t32で第2サンプリングトランジスタ28がオンにされる。これにより次のフレーム用の映像信号の信号電圧が容量Cs2に書き込まれる。時刻t33で第2サンプリングトランジスタ28がオフにされる。
【0075】
図9の駆動シーケンスでは、上述の通り、容量Cs2の電荷配分時に、時刻t27から時間T1の間、スイッチングトランジスタ25をオフにしている(補助駆動信号AZ1を高電圧にしている)。サンプリングトランジスタ23は、少なくともスイッチングトランジスタ25が、スイッチングトランジスタ25と有機ELダイオード21との接続ノードを基準電圧VSSに短絡していない期間の少なくとも一部に、容量Cs2及び容量Cs1間を接続する。これにより、横クロストークを低減し、表示コントラストを向上させることができる。但し、スイッチングトランジスタ25をオフにすることなく、オンのままにしておくことも可能である。
【0076】
図10は、
図9に示した駆動シーケンスにおいて、1水平期間(1フレーム)内における発光期間P21と非発光期間P22との長さの関係を示す図である。発光期間P21では発光以外に、容量Cs2への次フレーム用の映像信号の信号電圧の書き込みが行われる。非発光期間P22では、閾値補正準備、閾値補正、容量Cs2を用いた駆動トランジスタ22のゲート電極への電圧書き込み等が行われる。次のフレーム用の映像信号の書き込みを現在のフレームの発光期間中に行うことができるため、発光期間の長さを十分に大きくとることができる。すなわち、1水平期間に占める発光期間P21の比を十分に大きくできる。すなわち、高いデューティ比での面一括発光が実現できる。これにより、比較例において問題となっていた低輝度やフリッカの発生などの問題を解消又は改善できる。
【0077】
図7又は
図8の画素231において、信号線214とソース電極(又はドレイン電極)が接続するPMOSトランジスタのウェル(Nウェル)電位、すなわち基板の電圧は、映像信号の黒電圧と同電位としている。黒電圧をVG0、白電圧VG255とし、輝度を256段階で表す場合に、ウェル電位をVG0としている。VG0が最も高く、VG255が最も低い。この理由について説明する。
【0078】
図9を用いて説明した通り、容量Cs1にかかる駆動トランジスタ22のゲート電圧は容量Cs2と、容量Cs1及びCsubとで容量分配された値となる。このため、黒輝度を出力するためにゲートにVCCPを印加しようとすると、映像信号線214から供給する映像信号VSIGの黒電圧(=VG0)としてVCCPより高い電圧を設定する必要がある。この状態で、ソース電極(又はドレイン電極)が信号線214と接続するトランジスタのウェル(Nウェル)の電位がVCCPである場合、PN接合で信号線214の電位VG0からNウェルに電流が流れてしまい、適切な回路駆動とならなくなる可能性がある。よって、信号線214とソース電極(又はドレイン電極)が接続するPMOSトランジスタ(サンプリングトランジスタ23、第2サンプリングトランジスタ28、第2スイッチングトランジスタ27)のウェル電位は、黒電圧VG0と同電位としている。黒電圧は、複数の輝度を実現するためにゲート電極に設定可能な複数の電圧のうち最大の電圧の一例である。ウェル電位(基板の電圧)は、駆動トランジスタ22のゲート電極(第1端子又は制御端子)に当該最大の電圧を供給するために必要なVSIG電圧以上の値に設定される。なお、その他のPMOSトランジスタ(22、24,25)のウェル電位はVG0としても良いが、接合耐圧を考慮して、VCCPとすることが望ましく、
図7又は
図8の例ではVCCPとしている。
【0079】
(変形例1)
図11は、本開示の実施形態に係る画素(画素回路)の変形例1を示す。
図11の画素を
図7の画素アレイ部20の各画素として用いることができる。
図11の画素が
図7又は
図8の構成と異なる点は、画素に含まれるトランジスタがNチャネルのMOSトランジスタ(NMOSトランジスタ)であることである。
図7又は
図8と同じ機能のトランジスタには同じ符号の末尾に記号“A”を追加した符号を付している。走査線211、駆動線212、補助駆動線213、第2走査線251、第2補助駆動線253の図示は省略している。トランジスタ27A、28A、23Aのウェル電位(基板の電圧)は、上述した実施形態と同様に、VG0にされている。また、トランジスタ22A、25Aのウェル電位は基準電位VSSにされている。
【0080】
(変形例2)
図12は、本開示の実施形態に係る画素(画素回路)の変形例2を示す。
図11の画素を
図7の画素アレイ部20の各画素として用いることができる。
図12の画素が
図11の変形例1の構成と異なる点は、発光制御トランジスタ24A、スイッチングトランジスタ25Aが設けられていないことである。現在のフレームの発光期間の間に、第2サンプリングトランジスタ28Aをオンにして、信号線214から容量Cs2に次フレームの映像信号を書き込む。現在のフレームの発光期間が終了し、次のフレームの期間に入ったら、第2スイッチングトランジスタ27Aをオンにして基準信号Vofsを書き込み、閾値補正処理を行う。この後、サンプリングトランジスタ23Aをオンして、容量Cs2に保持されている電荷を容量Cs1と容量Csubに再分配する。これにより、駆動トランジスタ22Aのゲート電極(容量Cs1)に、容量Cs2に保持された信号電圧に応じた電圧が書き込まれ、有機ELダイオード21が所望の輝度で発光する。
【0081】
なお、上述の実施形態は本開示を具現化するための一例を示したものであり、その他の様々な形態で本開示を実施することが可能である。例えば、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形、置換、省略又はこれらの組み合わせが可能である。そのような変形、置換、省略等を行った形態も、本開示の範囲に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0082】
また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果があってもよい。
【0083】
なお、本開示は以下のような構成を取ることもできる。
[項目1]
第1端子に供給される電圧に応じて、発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタと、
前記第1端子に供給する電圧を保持する第1容量と、
映像信号線の信号電圧をサンプリングする第2トランジスタと、
前記第2トランジスタによりサンプリングされた信号電圧を保持する第2容量と、
前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する第3トランジスタと、
を備えた画素回路。
[項目2]
前記第3トランジスタは、前記第1容量と前記第2容量の比率に応じた量の電荷を前記第1容量に提供する
項目1に記載の画素回路。
[項目3]
前記第2トランジスタは、映像信号の第1フレームのうち第1トランジスタが前記発光素子に電流を供給する第1発光期間において、第2フレーム用の信号電圧を前記映像信号線からサンプリングし、前記第2容量が、前記第2フレーム用の前記信号電圧を保持し、
前記第3トランジスタは、前記第2フレームにおいて前記第2容量及び前記第1容量間を接続して、前記第1発光期間に前記第2容量に蓄積された電荷に応じた電圧を前記第1容量に設定する
項目1又は2に記載の画素回路。
[項目4]
前記映像信号線と前記第1トランジスタの制御端子との間を接続する第4トランジスタを備え、
前記第4トランジスタは、前記第2フレームにおいて前記第1トランジスタの閾値を補正するためのオフセット電圧を前記映像信号線から受け、かつ前記オフセット電圧を前記第1トランジスタの前記制御端子に供給し、
前記第3トランジスタは、前記閾値の補正処理が終わった後、前記第2容量及び前記第1容量間を接続する
項目3に記載の画素回路。
[項目5]
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタはシリコン基板のウェルに形成され、
前記第1端子には、複数の輝度のうち表示する輝度に応じた電圧が設定され、
前記ウェルの電位は、前記複数の輝度のうち前記第1端子に設定する必要がある最大の電圧を前記第1端子に提供するために必要な前記信号電圧の値以上に設定されている
項目1~4のいずれか一項に記載の画素回路。
[項目6]
前記発光素子と前記第1トランジスタ間の接続ノードを基準電圧に短絡する第5トランジスタを備え、
前記第3トランジスタは、少なくとも前記第5トランジスタが前記接続ノードを前記基準電圧に短絡していない期間の少なくとも一部に、前記第2容量及び前記第1容量間を接続する
項目1~5のいずれか一項に記載の画素回路。
[項目7]
前記第1端子は、前記第1トランジスタの制御端子である
項目1~6のいずれか一項に記載の画素回路。
[項目8]
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタはPチャネル型のMOSトランジスタである
項目1~7のいずれか一項に記載の画素回路。
[項目9]
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタはNチャネル型のMOSトランジスタである
項目1~7のいずれか一項に記載の画素回路。
[項目10]
前記発光素子をさらに備えた
項目1~9のいずれか一項に記載の画素回路。
[項目11]
発光素子と、第1端子に供給される電圧に応じて、前記発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタと、前記第1端子に供給する電圧を保持する第1容量と、映像信号線の信号電圧をサンプリングする第2トランジスタと、前記第2トランジスタによりサンプリングされた信号電圧を保持する第2容量と、前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する第3トランジスタとを含む画素回路と、
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタの動作を制御する駆動回路と
表示装置。
[項目12]
第1容量に保持された電圧を、発光素子に供給する電流を制御する第1トランジスタの第1端子に供給し、
前記第1端子に供給される電圧に応じて、前記第1トランジスタを駆動し、
映像信号線の信号電圧をサンプリングし、
サンプリングされた信号電圧を第2容量に保持し、
前記第2容量に前記信号電圧が保持された後、前記第2容量と前記第1容量との間を接続し、前記第2容量に蓄積された電荷を前記第1容量に転送することにより、前記信号電圧に応じた電圧を前記第1容量に設定する
駆動方法。
【符号の説明】
【0084】
Cs1、Csub:容量(第1容量)
Cs2:容量(第2容量)
10 有機EL表示装置
20 画素アレイ部
21 有機ELダイオード(有機EL素子)
22 駆動トランジスタ(第1トランジスタ)
22A 駆動トランジスタ(第1トランジスタ)
23 サンプリングトランジスタ(第3トランジスタ)
23A サンプリングトランジスタ(第3トランジスタ)
24 発光制御トランジスタ
24A 発光制御トランジスタ
25 スイッチングトランジスタ(第5トランジスタ)
25A スイッチングトランジスタ(第5トランジスタ)
27 第2スイッチングトランジスタ(第4トランジスタ)
27A 第2スイッチングトランジスタ(第4トランジスタ)
28 第2サンプリングトランジスタ(第2トランジスタ)
28A 第2サンプリングトランジスタ(第2トランジスタ)
30 水平駆動部
35 共通電源線
36 共通基準線
40 垂直駆動部
201 画素(画素回路)
201B 画素
201G 画素
201R 画素
211 走査線
212 駆動線
213 補助駆動線
214 信号線
214B 信号線
214G 信号線
214R 信号線
231 画素(画素回路)
231R 画素
231B 画素
231G 画素
251 走査線(第2走査線)
253 補助駆動線(第2補助駆動線)
401 走査部
402 駆動走査部
403 補助駆動走査部
501 走査部
502 駆動走査部
503 補助駆動走査部