(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127273
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】回路基板用電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/91 20110101AFI20240912BHJP
H01R 13/533 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R13/533 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036307
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】濱田 翔太
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF02
5E087FF27
5E087GG06
5E087MM02
5E087RR04
5E087RR06
5E087RR15
5E223AB06
5E223AB17
5E223AB20
5E223AC05
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223DA13
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB13
5E223EA03
5E223EA12
(57)【要約】
【課題】上下方向での端子の大型化を回避しつつ、端子の弾性変形が繰り返されても該端子が損傷しにくい回路基板用電気コネクタを提供する。
【解決手段】特定の端子50の中間部55において、弾性部55A,55Bは、一端部で被保持部に連結される第一腕部55A-1,55B-1と、一端部で連結部55Cに連結される第二腕部55A-2,55B-2と、第一腕部55A-1,55B-1および第二腕部55A-2,55B-2の他端部同士を連結する移行部55A-3,55B-3とを有しており、2つの弾性部55A,55Bのうち一方の弾性部55Aは、端子配列方向に見て移行部55A-3が曲線状に湾曲しており、弾性部55Aの少なくとも一部が被保持部52よりもコネクタ幅方向で連結部55Cとは反対側へ突出している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の実装面に配置される回路基板用電気コネクタであって、
前記実装面に対して平行な一方向を端子配列方向として配列された複数の端子と、前記端子を介して前記回路基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な可動ハウジングとを有し、前記端子が前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとに架け渡されて設けられている回路基板用電気コネクタにおいて、
前記複数の端子のうちの少なくとも一部の端子として設けられた特定の端子は、前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングにそれぞれ保持される被保持部と、これら2つの被保持部同士を連結し前記可動ハウジングの相対移動を許容する中間部とを有しており、
前記中間部は、該中間部のそれぞれの端部に設けられ弾性変形可能な弾性部と、これら2つの弾性部を連結する連結部とを有し、
前記弾性部は、一端部で前記被保持部に連結される第一腕部と、一端部で前記連結部に連結される第二腕部と、前記第一腕部および前記第二腕部の他端部同士を連結する移行部とを有しており、
前記2つの弾性部のうち少なくとも一方の前記弾性部は、端子配列方向に見て前記移行部が曲線状に湾曲しており、前記弾性部の少なくとも一部が前記被保持部よりもコネクタ幅方向で前記連結部とは反対側へ突出していることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
【請求項2】
前記少なくとも一方の前記弾性部は、前記第一腕部および前記第二腕部が前記一端部へ向かうにつれて互いに近づくように延びていることとする請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項3】
前記特定の端子の前記被保持部は、端子配列方向で前記第一腕部よりも大きく形成されているとともに、前記第一腕部が連結されている側の端部に切欠部が形成されており、
前記切欠部は、端子配列方向における前記第一腕部を挟んだ両側の位置で、前記第一腕部が延びている方向に沿ってスリット状に切り欠かれていることとする請求項1または請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板上に配置される回路基板用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板用電気コネクタとして、例えば、特許文献1の電気コネクタが知られている。この特許文献1の電気コネクタでは、回路基板の実装面に対して平行な一方向を端子配列方向として配列された複数の端子が、互いに別体をなす固定ハウジングと可動ハウジングに架け渡されて設けられている。固定ハウジングは、端子を介して回路基板に固定されている。また、可動ハウジングは、端子の弾性変形により固定ハウジングに対して相対移動可能となっている。このような構成の電気コネクタによれば、振動が繰り返し生じる環境で使用されるとき、端子の弾性変形により電気コネクタへの振動の影響が低減される。
【0003】
端子としては、互いに形状の異なる2種の端子である信号端子および電源端子が設けられている。各種の端子は、固定ハウジングに保持される固定側被保持部と可動ハウジングに保持される可動側被保持部との間に弾性変形可能な中間部を有している。また、電源端子において、中間部は、固定側被保持部の上端から延びる略逆U字状の上側湾曲部と、可動側被保持部の下端から延びる略U字状の下側湾曲部と、上側湾曲部および下側湾曲部を連結する連結部とを有している。
【0004】
電源端子の中間部は、コネクタ幅方向(回路基板の実装面に対して平行、かつ端子配列方向に対して直角な方向)で固定側被保持部と可動側被保持部との間の範囲内に位置している。また、上側湾曲部および下側湾曲部のそれぞれは、コネクタ幅方向で直状に延びる直状部と、該直状部の両端部でほぼ直角に屈曲されて上下方向に延びる2つの腕部とを有している。上側湾曲部および下側湾曲部は、2つの腕部同士がコネクタ幅方向で互いの間隔を増減させるようにして変位することで弾性変形可能となっている。電源端子は、上側湾曲部および下側湾曲部の弾性変形により可動ハウジングのコネクタ幅方向での相対移動を許容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、端子の中間部における弾性変形により可動ハウジングの相対移動が許容される場合、該中間部が柔らかく弾性変形しやすくなっているほど、弾性変形状態において生じる応力が分散されやすくなり、端子の損傷(例えば破断等)が生じにくくなる。具体的には、中間部が長いほど、換言すると中間部のばね長が長いほど、該中間部が柔らかくなり、その結果、弾性変形しやすくなる。しかし、中間部のばね長を長くしようとすると、上下方向で端子が大型化してしまう。一般に、回路基板の実装面に配置される電気コネクタにおいては低背化の要求が非常に高いが、上下方向で端子が大型化すると、この要求を満足することが困難となる。
【0007】
また、特許文献1では、端子の中間部の上側湾曲部および下側湾曲部のそれぞれにおいては、2つの屈曲部、すなわち直状部の両端部と腕部との連結部分となる屈曲部が形成されている。これらの屈曲部は、上述したように屈曲角度がほぼ直角となるようにして急激に屈曲している。したがって、上側湾曲部および下側湾曲部が弾性変形したとき、これらの屈曲部近傍に大きい応力が集中的に生じやすく、その結果、その部分で端子の損傷が生じやすくなっている。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、上下方向での端子の大型化を回避しつつ、端子の弾性変形が繰り返されても該端子が損傷しにくい回路基板用電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板の実装面に配置される回路基板用電気コネクタであって、前記実装面に対して平行な一方向を端子配列方向として配列された複数の端子と、前記端子を介して前記回路基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な可動ハウジングとを有し、前記端子が前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとに架け渡されて設けられている。
【0010】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、前記複数の端子のうちの少なくとも一部の端子として設けられた特定の端子は、前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングにそれぞれ保持される被保持部と、これら2つの被保持部同士を連結し前記可動ハウジングの相対移動を許容する中間部とを有しており、前記中間部は、該中間部のそれぞれの端部に設けられ弾性変形可能な弾性部と、これら2つの弾性部を連結する連結部とを有し、前記弾性部は、一端部で前記被保持部に連結される第一腕部と、一端部で前記連結部に連結される第二腕部と、前記第一腕部および前記第二腕部の他端部同士を連結する移行部とを有しており、前記2つの弾性部のうち少なくとも一方の前記弾性部は、端子配列方向に見て前記移行部が曲線状に湾曲しており、前記弾性部の少なくとも一部が前記被保持部よりもコネクタ幅方向で前記連結部とは反対側へ突出していることを特徴としている。
【0011】
本発明では、端子における2つの弾性部のうち少なくとも一方の弾性部において、少なくとも一部が被保持部よりもコネクタ幅方向で前記連結部とは反対側へ突出している。したがって、その突出している分だけ、弾性部ひいては中間部において、ばね長が長くなり、弾性変形状態にて生じる応力を分散させることができる。このとき、弾性部における突出方向はコネクタ幅方向であるので、弾性部ひいては端子がコネクタ高さ方向(回路基板の実装面に対して直角な方向)で大きくなることはない。
【0012】
また、本発明では、端子における2つの弾性部のうち少なくとも一方の弾性部では、端子配列方向に見て移行部が曲線状に湾曲している。つまり、移行部は、1つの緩やかな曲線状をなすように形成されている。したがって、従来のような急激に屈曲された2つの屈曲部が湾曲部に形成されていた場合と比較して、弾性変形状態にて応力が局所的に集中して生じることを回避できる。
【0013】
(2) (1)の発明において、前記少なくとも一方の前記弾性部は、前記第一腕部および前記第二腕部が前記一端部へ向かうにつれて互いに近づくように延びていてもよい。このようにすることにより、第一腕部および第二腕部が平行に延びている場合と比較して、コネクタ高さ方向に対する連結部の傾斜角度を小さくすることができる。したがって、弾性部の少なくとも一部を上述のようにコネクタ幅方向で突出させても、コネクタ幅方向での端子の大型化を最小限に留めることができる。
【0014】
(3) (1)または(2)の発明において、前記特定の端子の前記被保持部は、端子配列方向で前記第一腕部よりも大きく形成されているとともに、前記第一腕部が連結されている側の端部に切欠部が形成されており、前記切欠部は、端子配列方向における前記第一腕部を挟んだ両側の位置で、前記第一腕部が延びている方向に沿ってスリット状に切り欠かれていてもよい。
【0015】
このように被保持部の端部に切欠部を形成することにより、該被保持部において2つの切欠部に挟まれた部分、すなわち第一腕部に連続する部分が、該第一腕部とともに弾性変形可能となる。その結果、端子において弾性変形可能な部分の長さ、すなわちばね長を長くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、上下方向での端子の大型化を回避しつつ、端子の弾性変形が繰り返されても該端子が損傷しにくい回路基板用電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るプラグコネクタとこれに嵌合接続されるレセプタクルコネクタとを有するコネクタ組立体の外観斜視図であり、(A)は嵌合接続前、そして(B)は嵌合接続後の状態を示している。
【
図2】
図1(A)に示されるプラグコネクタの電源端子の位置における断面図である。
【
図3】
図1(A)に示されるプラグコネクタから一対のプラグ端子を抽出して示す斜視図であり、(A)は信号端子、(B)は電源端子を示している。
【
図4】プラグコネクタの電源端子の位置における一部を拡大して示した断面斜視図であり、電源端子の被保持部の近傍を示している。
【
図5】
図1のプラグコネクタの電源端子の位置における断面図であり、可動ハウジングがフローティングした状態を示している。
【
図6】本発明の実施形態の変形例に係るプラグコネクタの電源端子の位置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1(A),(B)は、本発明の実施形態に係るプラグコネクタとこれに嵌合接続されるレセプタクルコネクタとを有するコネクタ組立体の外観斜視図であり、
図1(A)は嵌合接続前の状態を示し、
図1(B)は嵌合接続後の状態を示している。
図2は、プラグコネクタの端子配列方向での電源端子の位置における断面図であり、嵌合接続前の状態を端子配列方向に対して直角な断面で示している。
【0020】
本実施形態では、プラグコネクタ1と該プラグコネクタ1に嵌合接続される相手コネクタ(相手接続体)としてのレセプタクルコネクタ2とでコネクタ組立体が構成されている。プラグコネクタ1およびレセプタクルコネクタ2は、それぞれ異なる回路基板へ実装される回路基板用電気コネクタである。
【0021】
図1に見られるように、プラグコネクタ1は、上下方向(Z軸方向)に直角な実装面をもつ回路基板P1上の該実装面に配置され、レセプタクルコネクタ2は、コネクタ幅方向(X軸方向)に直角な実装面をもつ回路基板P2上の該実装面に配置される。両コネクタは、
図1(A),(B)に見られるように、回路基板P1と他の回路基板P2の実装面同士が互いに直角をなす姿勢のもとで、上下方向(Z軸方向)を接続方向として嵌合接続される。具体的には、
図1(A),(B)に見られるように、プラグコネクタ1の上方からレセプタクルコネクタ2が嵌合接続されるようになっている。
【0022】
プラグコネクタ1は、上下方向(Z軸方向)をコネクタ高さ方向としており、回路基板P1の実装面に対して平行な一方向(Y軸方向)を長手方向として延びるプラグハウジング10と、該長手方向を端子配列方向としてプラグハウジング10に配列保持されるプラグ信号端子40およびプラグ電源端子50(以下、両者を区別する必要がないときは単に「プラグ端子40,50」という)とを有している。プラグ信号端子40は、端子配列方向(Y軸方向)でのプラグハウジング10の中間範囲に複数配列されており、プラグ電源端子50は、端子配列方向でのプラグ信号端子40の配列範囲の両側に1対ずつ設けられている。
【0023】
プラグハウジング10は、プラグ端子40,50を介して回路基板P1に固定される固定ハウジング20と、固定ハウジング20とは別部材として形成され固定ハウジング20に対して相対移動可能な可動ハウジング30とを有している。固定ハウジング20および可動ハウジング30は、樹脂等の電気絶縁材料で作られている。
【0024】
固定ハウジング20は、上下方向にて可動ハウジング30の下半部と重複する範囲をもって位置し、上下方向に見て可動ハウジング30の後述の嵌合部31を囲むように設けられており、端子配列方向(Y軸方向)を長手方向として延びる略直方体外形をなしている。固定ハウジング20は、
図1(A)に見られるように、端子配列方向で可動ハウジング30を含む範囲にわたって延びる2つの固定側側壁21と、回路基板P1の実装面に平行な方向をなし端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向(X軸方向)に延び固定側側壁21の端部同士を連結する2つの固定側端壁22とを有している。
【0025】
固定側側壁21は、
図1(A)に見られるように、端子配列方向での両端部(プラグ電源端子50を含む範囲に位置する部分)が中間部(プラグ信号端子40の配列範囲を含んで位置する部分)よりも、コネクタ幅方向で外側に突出している。固定側側壁21には、プラグ信号端子40を圧入保持する固定側信号用保持部(図示せず)およびプラグ電源端子50を圧入保持する固定側電源用保持部21C(
図2および
図5参照)が形成されている。
【0026】
固定側信号用保持部は、固定側側壁21の内壁面側にから没するとともに上下方向に延びる溝部として形成されている。一方、固定側電源用保持部21Cは、固定側信号用保持部とは異なる形状をなしている。ここで、
図2および
図4を参照しながら、固定側電源用保持部21Cの形状を詳細に説明する。
【0027】
図4は、プラグコネクタ1のプラグ電源端子50の位置における一部を拡大して示した断面斜視図であり、後述の固定側被保持部52の近傍を示している。まず、
図2および
図4に見られるように、固定側側壁21には、プラグ電源端子50と対応する位置に、固定側側壁21の内壁面から没するとともに上下方向に延びる内溝部21Aと、該内溝部21Aの溝底面(コネクタ幅方向に対して直角な内壁面)から没するとともに上下方向に延びる外溝部21Bとが形成されている。外溝部21Bはコネクタ幅方向(X軸方向)で内溝部21Aよりも外側に位置している。また、
図4に見られるように、外溝部21Bは、端子配列方向における内溝部21Aの中央域にて、内溝部21Aよりも小さい溝幅(端子配列方向での寸法)で形成されている。
【0028】
そして、固定側電源用保持部21Cは、
図4に見られるように、内溝部21Aにおいてコネクタ幅方向で外溝部21Bに寄った位置にて、内溝部21Aの両側の内壁面(端子配列方向に対して直角な面)から没するとともに上下方向に延びる溝部として形成されている。
図2に見られるように、内溝部21A、外溝部21Bおよび固定側電源用保持部21Cは、上下方向で固定側側壁21の全域にわたって延びている。
【0029】
また、
図2および
図4に見られるように、固定側側壁21には、内溝部21Aにおいてコネクタ幅方向(X軸方向)で固定側電源用保持部21Cよりも内側の位置で、内溝部21Aの両側の内壁面から端子配列方向(Y軸方向)で互いに近づくように突出する2つの被係止部21Dが形成されている。被係止部21Dは、端子配列方向に見て段状をなしており、その上面で、プラグ電源端子50の後述する係止部52Bに対して下方から係止可能となっている。
【0030】
固定側端壁22は、
図1(A)に示されるように、コネクタ幅方向(X軸方向)中央域でその下半部が切り欠かれており、その壁厚方向(Y軸方向)に貫通するとともに下方へ開口した切欠部22Aが形成されている。固定側端壁22は、切欠部22Aの上方位置でコネクタ幅方向に延びる部分が、固定側側壁21の端部同士を連結する規制部22Bを形成している。規制部22Bは、可動ハウジング30の後述する被規制部36の上方に位置しており、被規制部36の上方への所定量以上の移動を規制可能となっている。
【0031】
可動ハウジング30は、レセプタクルコネクタ2との嵌合のための嵌合部31と、固定ハウジング20から移動の規制を受ける被規制部36とを有している。嵌合部31は、端子配列方向に延びる2つの可動側側壁32と、コネクタ幅方向に延び可動側側壁32の端部同士を連結する2つの可動側端壁33とを有している。また、可動側側壁32および可動側端壁33によって囲まれ上方へ開口する空間は、レセプタクルコネクタ2の後述の突壁(図示せず)を受け入れるためのプラグ側受入部34として形成されている。
【0032】
可動側側壁32は、端子配列方向におけるプラグ信号端子40の配列範囲では、プラグコネクタ1の上半部に対応する範囲で上下方向に延びており、端子配列方向での両端部(上記配列範囲よりも外側の部分)では、上下方向におけるプラグコネクタ1のほぼ全域にわたる範囲で上下方向に延びている。
【0033】
可動側側壁32には、プラグ信号端子40の後述の信号用接触部43を収容し圧入保持するための可動側信号用保持部(図示せず)が可動側側壁32の内壁面に沿って形成されているとともに(
図3参照)、プラグ電源端子50の後述の電源用接触部53を収容し圧入保持するための可動側電源用保持部32B(
図2参照)が可動側側壁32の外壁面に沿って形成されている。可動側信号用保持部は、可動側側壁32の内壁面から没するとともに上下方向に延びる直状の溝部として形成されている。一方、可動側電源用保持部32Bは、端子配列方向での可動側側壁32の両端部に位置しており、可動側側壁32の外壁面から没するとともに上下方向に延びる直状の溝部として形成されている。
【0034】
被規制部36は、可動側端壁33の下部における端子配列方向での端面(端子配列方向に対して直角な面)から端子配列方向で外方へ向けて突出している。被規制部36は、端子配列方向に延びる角柱状をなしており、固定ハウジング20の固定側端壁22の切欠部22A内に端子配列方向で内方から突入している。したがって、被規制部36は、固定側端壁22の規制部22Bの直下に位置している。被規制部36は、上下方向で規制部22Bに対して間隔をもって位置しているが、可動ハウジング30が上方へ移動した際には、規制部22Bに下方から当接(接面)することにより、上方へ向けた所定量以上の移動を規制されるようになっている。
【0035】
プラグ端子40,50は、2列をなして配列されており、各列において、複数のプラグ信号端子40が等間隔に配されているとともに、プラグ信号端子40の配列範囲の両側にプラグ電源端子50が配されている。
図3(A),(B)は、
図1(A)に示されるプラグコネクタから1対のプラグ端子40,50を抽出して示す斜視図であり、
図3(A)はプラグ信号端子40、
図3(B)はプラグ電源端子50を示している。
【0036】
プラグ信号端子40は、
図3(A)に見られるように、金属帯状片をその板厚方向に屈曲して作られており、その端子幅方向(プラグ信号端子40の板厚方向に対して直角な方向)が端子配列方向(Y軸方向)と一致するように配されている。プラグ信号端子40は、下方に位置する一端部に形成された信号用接続部41と、信号用接続部41から上方へ向けて延びる固定側被保持部42と、信号用接続部41よりも上方かつコネクタ幅方向内方に位置する他端部に形成された信号用接触部43と、信号用接触部43から下方へ向けて延びる可動側被保持部44と、固定側被保持部42と可動側被保持部44とを連結する信号用中間部45とを有している。プラグ信号端子40は、コネクタ幅方向(X軸方向)で対称な対をなして設けられていて、この対が端子配列方向(Y軸方向)に複数配列されている。
【0037】
信号用接続部41は、
図2に見られるように、固定ハウジング20の底面より下方位置で、回路基板P1(
図1(A),(B)参照)の実装面(上面)に位置するようにコネクタ幅方向外方に延びており、該実装面の対応回路部に半田接続されるようになっている。固定側被保持部42は、信号用接続部41のコネクタ幅方向での内側の端部で屈曲され上方へ向けて延びている。固定側被保持部42は、両側縁部(上下方向に延びる縁部)に形成された複数の圧入突起42Aにより、固定ハウジング20の固定側信号用保持部で圧入保持される。
【0038】
信号用接触部43は、上下方向で直状に延びており、可動ハウジング30の可動側側壁32の可動側信号用保持部内に収容される。信号用接触部43は、プラグ側受入部34へ向けて露呈する板面(板厚面に対して直角な面)で後述のレセプタクル信号端子70との接触可能となっている。可動側被保持部44は、両側縁部(上下方向に延びる縁部)に形成された複数の圧入突起44Aにより、可動ハウジング30の可動側信号用保持部で圧入保持される。
【0039】
信号用中間部45は、
図3(A)に見られるように、信号用中間部45の上端部で略逆U字状をなして湾曲する上側弾性部45Aと、信号用中間部45の下端部で略U字状をなして湾曲する下側弾性部45Bと、直状をなし上側弾性部45Aと下側弾性部45Bとを連結する連結部45Cとを有している。上側弾性部45Aと下側弾性部45Bは、2つの腕部の互いの間隔を増減させるようにしてコネクタ幅方向(X軸方向)で弾性変形可能となっている。また、上側弾性部45Aおよび下側弾性部45Bは、端子配列方向および上下方向にも弾性変形可能である。本実施形態では、上側弾性部45Aおよび下側弾性部45Bの弾性変形により、可動ハウジング30のフローティングが許容されている。
【0040】
上側弾性部45Aには、その端子幅方向での中央域にて板厚方向に貫通する上側スリット部45A-1が形成されている。また、下側弾性部45Bにも、上述の上側弾性部45Aと同様の下側スリット部45B-1が形成されている。したがって、上側弾性部45Aおよび下側弾性部45Bは、スリット部(上側スリット部45A-1または下側スリット部45B-1)を挟んで形成された2つの幅狭な帯条片によって十分に大きい弾性が確保されている。
【0041】
連結部45Cは、上側弾性部45Aの下端と下側弾性部45Bの上端とを連結して、下方へ向かうにつれてコネクタ幅方向内方に傾斜するように延びている。
【0042】
プラグ電源端子50は、
図3(B)に見られるように、金属帯状片をその板厚方向に屈曲して作られており、その端子幅方向(プラグ信号端子40の板厚方向に対して直角な方向)が端子配列方向(Y軸方向)と一致するように配されている。プラグ電源端子50は、プラグ信号端子40よりも端子幅方向での寸法が大きく形成されている。
【0043】
プラグ電源端子50は、
図2および
図3(B)に見られるように、下方に位置する一端部に形成された電源用接続部51と、電源用接続部51から上方へ向けて延びる固定側被保持部52と、電源用接続部51よりも上方かつコネクタ幅方向内方に位置する他端部に形成された電源用接触部53と、電源用接触部53から下方へ向けて延びる可動側被保持部54と、固定側被保持部52と可動側被保持部54とを連結する電源用中間部55とを有している。プラグ電源端子50は、コネクタ幅方向(X軸方向)で対称をなすように対をなして設けられていて、この対が端子配列方向(Y軸方向)でのプラグコネクタ1の両端部で保持されている。
【0044】
電源用接続部51は、固定ハウジング20の底面より下方位置で、上下方向で直状に延びている。電源用接続部51は、プラグコネクタ1が回路基板P1(
図1(A),(B)参照)の実装面に配された状態で、回路基板P1に形成されたスルーホールH(
図1(A)参照)を上方から貫通して位置し、スルーホールHに半田接続されるようになっている。電源用接続部51は、
図2に見られるように、プラグ信号端子40の信号用接続部41よりも、コネクタ幅方向での内側に位置している。本実施形態では、電源用接続部51がこのように位置しているので、プラグコネクタ1がコネクタ幅方向で大型化することを回避できる。
【0045】
固定側被保持部52は、電源用接続部51に連続して上方へ向けて延びており、固定ハウジング20の固定側電源用保持部21C内で圧入保持されている(
図2参照)。具体的には、
図3(B)に見られるように、固定側被保持部52は、両側縁部(上下方向に延びる縁部)に複数の圧入突起52Aを有しており、該圧入突起52Aにより固定側電源用保持部21Cに圧入保持されている。
【0046】
本実施形態では、固定側被保持部52は、その板厚方向が固定ハウジング20の固定側側壁21の壁厚方向(X軸方向)と一致するように保持されているので、固定側側壁21の壁厚方向での固定側被保持部52の寸法は固定側被保持部52の板厚寸法であり小さい。したがって、固定側側壁21の壁厚を大きくすることなく該壁厚の範囲内に固定側被保持部52を位置させることができるので、プラグコネクタ1が上記壁厚方向で大型化することがない。
【0047】
また、固定側被保持部52は、端子幅方向での2位置にて、固定ハウジング20の被係止部21Dに対して上方から係止可能な係止部52Bが設けられている。
図3(B)および
図4に見られるように、係止部52Bは、固定側被保持部52の板面からコネクタ幅方向内方へ切り起こされた弾性片として形成されている。つまり、係止部52Bは、下方へ向かうにつれてコネクタ幅方向内方へ向けて若干傾斜して延び、下端を自由端とする片持ち梁状をなしている。
図2および
図4に見られるように、係止部52Bの下端面は、被係止部21Dの上面に対して直上に位置することで、被係止部21Dに対して係止可能となっている。
【0048】
後述するように、コネクタ抜出時にて固定ハウジング20に上方(コネクタ抜出方向)へ向けた外力が作用したとき、上方へもち上がった固定ハウジング20の被係止部21Dに対して係止部52Bが上方から係止する。この結果、固定ハウジング20の上方へ向けた所定量以上の移動が規制されて、回路基板P1からプラグコネクタ1が外れることが良好に防止される。
【0049】
本実施形態では、既述したように、係止部52Bは固定側被保持部52の板面から切り起こされた弾性片として形成されている。つまり、係止部52Bは、端子幅方向(Y軸方向)で固定側被保持部52の範囲内に位置しているので、端子幅方向で固定側被保持部52を大きくすることなく、係止部52Bにて十分な係止面積を確保できる。また、係止部52Bは端子幅方向での固定側被保持部52の範囲内に2つ形成されているので、係止部52Bを1つだけ形成する場合と比べて、上記係止面積を大きくすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、固定側被保持部52は、
図3(B)に見られるように、電源用中間部55の後述の上側弾性部55Aよりも幅広に形成されている。固定側被保持部52の上端部、すなわち上側弾性部55Aが連結されている側の端部には、2つの切欠部52Cが形成されている。切欠部52Cは、
図3(B)に見られるように、端子配列方向における上側弾性部55Aの後述する上側第一腕部55A-1を挟んだ両側の位置で、上下方向、すなわち上側第一腕部55A-1が延びている方向に沿ってスリット状に切り欠かれており、上方に開口している。
【0051】
図3(B)に見られるように、固定側被保持部52において、切欠部52Cに対して端子配列方向(Y軸方向)換言すると端子幅方向での外側には、当接部52Dが形成されている。仮に、振動が生じやすい環境下でコネクタ1が使用された場合、プラグ電源端子50が端子配列方向の成分を含む振動を受けたときには、固定側被保持部52は、その側縁部(上下方向に延びる縁部)で固定側電源用保持部21Cの内壁面(端子配列方向に対して直角な面)に当接することで、端子配列方向での位置を維持する。このとき、上記側縁部には当接部52Dが含まれているので、当接部52Dが設けられていない場合と比べて、当接部52Dの分だけ上記側縁部の上下方向寸法が大きくなる。その結果、上記側縁部において、上記内壁面と当接可能な部分の面積が大きくなるので、固定側電源用保持部21Cの位置を維持しやすくなる。
【0052】
電源用接触部53は、上下方向で直状に延びており、
図2に見られるように、可動ハウジング30の可動側側壁32の可動側電源用保持部32B内に収容されている(
図2参照)。電源用接触部53は、コネクタ幅方向での外方へ向けて露呈した板面(板厚面に対して直角な面)で、後述のレセプタクル電源端子80と接触可能となっている。
【0053】
可動側被保持部54は、電源用接触部53から連続して下方へ向けて延びており、可動ハウジング30の可動側電源用保持部32B内で圧入保持されている(
図2参照)。具体的には、
図3(B)に見られるように、可動側被保持部54は、両側縁部(上下方向に延びる縁部)に複数の圧入突起54Aを有しており、該圧入突起54Aにより可動側電源用保持部32Bで圧入保持されている。
【0054】
電源用中間部55は、
図2および
図3(B)に見られるように、電源用中間部55の上端部で略逆U字状をなして湾曲する上側弾性部55Aと、電源用中間部55の下端部で略U字状をなして湾曲する下側弾性部55Bと、直状をなし上側弾性部55Aと下側弾性部55Bとを連結する連結部55Cとを有している。
図3(B)に見られるように、上側弾性部55Aは幅狭に形成されているとともに、下側弾性部55Bおよび連結部55Cは幅広に形成されている。本実施形態では、上側弾性部55Aおよび下側弾性部55Bの弾性変形により、可動ハウジング30のフローティングが許容されている。
【0055】
上側弾性部55Aは、上下方向に対してコネクタ幅方向で外側へ傾斜し、コネクタ幅方向で斜め内側に開口する略逆U字状をなしている。上側弾性部55Aは、下端部(一端部)で固定側被保持部52の上端部に連結される上側第一腕部55A-1と、下端部(一端部)で連結部55Cの上端部に連結される上側第二腕部55A-2と、上側第一腕部55A-1および上側第二腕部55A-2の上端部(他端部)同士を連結する上側移行部55A-3とを有している。
【0056】
上側第一腕部55A-1および上側第二腕部55A-2は、下端部に向かうにつれてコネクタ幅方向で内側へ傾斜している。本実施形態では、
図2に見られるように、上側第一腕部55A-1の方が上側第二腕部55A-2よりも上下方向に対して大きい傾斜角度で傾斜している。したがって、上側第一腕部55A-1および上側第二腕部55A-2は、下端部へ向かうにつれて互いに近づくように延びている。上側移行部55A-3は、端子配列方向に見て曲線状に湾曲しており、コネクタ幅方向で外側へ向けて斜め上方に凸湾曲する1つの湾曲部分を形成している。上側弾性部55Aは、上側第一腕部55A-1と上側第二腕部55A-2との間隔を増減させるようにしてコネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。また、上側弾性部55Aは、端子配列方向および上下方向にも弾性変形可能である。
【0057】
本実施形態では、
図2に見られるように、上述のような形状の上側弾性部55Aにおいて、上側移行部55A-3の一部(コネクタ幅方向での外側部分)および上側第一腕部55A-1全体が固定側被保持部52よりもコネクタ幅方向で外側、すなわち連結部55Cとは反対側へ突出している。したがって、本実施形態では、その突出している分だけ、上側弾性部55Aひいては電源用中間部55において、ばね長が長くなり、弾性変形状態にて生じる応力を分散させることができる。したがって、プラグ電源端子50の弾性変形が繰り返されても該プラグ電源端子50が損傷しにくくなる。また、上側弾性部55Aにおける突出方向はコネクタ幅方向であるので、上側弾性部55Aひいてはプラグ電源端子50が上下方向(Z軸方向)で大きくなることはない。したがって、上下方向でのプラグ電源端子50の大型化を回避できる。本実施形態では、上側弾性部55Aの一部のみがコネクタ幅方向に突出することとしたが、これに替えて、上側弾性部55A全体が突出するようにしてもよい。
【0058】
本実施形態では、固定側側壁21においてコネクタ幅方向での固定側被保持部52よりも外側には外溝部21Bが形成されており、上側弾性部55Aの突出部分、すなわち上側移行部55A-3の一部および上側第一腕部55A-1全体が外溝部21Bに収容されている。このように、上記突出部分が外溝部21Bに収容可能となっていることにより、該突出部分と固定側側壁21との干渉が回避されている。
【0059】
また、
図2に見られるように、上側弾性部55Aが自由状態にあるとき、上記突出部分と外溝部21Bの溝底面(コネクタ幅方向に対して直角な内壁面)との間には、コネクタ幅方向で隙間が形成された状態となっている。上側弾性部55Aが弾性変形状態となったときには、つまり、可動ハウジング30のフローティング時には、コネクタ幅方向で外側に向けた上側弾性部55Aの変位が上記隙間によって許容される(
図5参照)。
【0060】
また、本実施形態では、既述したように、固定側被保持部52の上端部に2つの切欠部52Cが形成されているので、固定側被保持部52において2つの切欠部52Cに挟まれた部分、すなわち上側第一腕部55A-1に連続する部分が、該上側第一腕部55A-1とともに弾性変形可能となっている。その結果、プラグ電源端子50において弾性変形可能な部分の長さ、すなわちばね長を長くすることができる。
【0061】
下側弾性部55Bは、上方へ向けて開口する略U字状をなしている。下側弾性部55Bは、上端部(一端部)で可動側被保持部54の下端部に連結される下側第一腕部55B-1と、上端部(一端部)で連結部55Cの下端部に連結される下側第二腕部55B-2と、下側第一腕部55B-1および下側第二腕部55B-2の下端部(他端部)同士を連結する下側移行部55B-3とを有している。
【0062】
下側第一腕部55B-1は、傾斜することなく上下方向に延びている。一方、下側第二腕部55B-2は、上端部に向かうにつれてコネクタ幅方向で外側へ傾斜している。したがって、下側第一腕部55B-1および下側第二腕部55B-2は、上端部へ向かうにつれて互いに離れるように延びている。下側移行部55B-3は、コネクタ幅方向で直状に延びている。下側弾性部55Bは、下側第一腕部55B-1と下側第二腕部55B-2との間隔を増減させるようにしてコネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。また、下側弾性部55Bは、端子配列方向および上下方向にも弾性変形可能である。
【0063】
連結部55Cは、上方に向かうにつれてコネクタ幅方向で外側に傾斜しており、上側弾性部55Aの上側第二腕部55A-2の下端部と下側弾性部55Bの下側第二腕部55B-2の上端部とを連結している。
【0064】
本実施形態に見られるように、
図3(B)に見られるように、上側弾性部55Aのほぼ全体および固定側被保持部52の上端部(上下方向で切欠部52Cに対応する範囲の部分)には、電源用中間部55の長手方向に延びるスリット部55Dが形成されている。スリット部55Dは電源用中間部55の端子幅方向(Y軸方向)での中央域にて板厚方向に貫通している。つまり、上側弾性部55Aおよび固定側被保持部52の上端部は2つの細条片を有している。なお、
図3(B)に見られるように、これらの2つの細条片は、その長手方向での一部にて互いに連結されている。
【0065】
また、下側弾性部55Bの一部(下側第二腕部55B-2および下側移行部55B-3)および連結部55Cのほぼ全体には、電源用中間部55の長手方向に延びる2つのスリット部55Eが形成されている。スリット部55Eは電源用中間部55の端子幅方向(Y軸方向)での中間域における2位置で板厚方向に貫通している。つまり、下側弾性部55Bおよび連結部55Cは、3つの細条片を有している。また、下側第一腕部55B-1の上部および可動側被保持部54の下部には、電源用中間部55の長手方向に延びる1つのスリット部55Fが形成されている。スリット部55Fは電源用中間部55の端子幅方向(Y軸方向)での中央域にて板厚方向に貫通している。つまり、下側第一腕部55B-1の上部および可動側被保持部54の下部は2つの細条片を有している。
【0066】
このように、電源用中間部55には、2つの細条片および3つの細条片が形成されているので、これらの細条片によって十分に大きい弾性が確保されている。
【0067】
このような構成のプラグコネクタ1は、次の要領で製造される。まず、可動ハウジング30の可動側信号用保持部および可動側電源用保持部32Bに、プラグ信号端子40の可動側被保持部44およびプラグ電源端子50の可動側被保持部54を上方へ向けて、すなわち可動ハウジング30の下側から圧入して、プラグ端子40,50を可動ハウジング30に保持させる。この結果、プラグ信号端子40の信号用接触部43およびプラグ電源端子50の電源用接触部53は、可動ハウジング30の可動側信号用保持部および可動側電源用保持部32Bに収容される。
【0068】
次に、固定ハウジング20の固定側信号用保持部および固定側電源用保持部21Cに、プラグ信号端子40の固定側被保持部42およびプラグ電源端子50の固定側被保持部52を上方へ向けて、すなわち固定ハウジング20の下側から圧入して、プラグ端子40,50を固定ハウジング20に保持させる。このように、プラグ端子40,50を固定ハウジング20および可動ハウジング30のそれぞれに取り付けることにより、プラグコネクタ1が完成する。
【0069】
次に、相手コネクタとしてのレセプタクルコネクタ2の構成を説明する。レセプタクルコネクタ2は、回路基板P2(
図1(A),(B)参照)の実装面に対して平行な一方向(Y軸方向)を長手方向として延びる略直方体外形をなすレセプタクルハウジング60と、該長手方向を端子配列方向としてレセプタクルハウジング60に配列保持されるレセプタクル信号端子70およびレセプタクル電源端子80(以下、両者を区別する必要がないときは単に「レセプタクル端子70,80」という)とを有している。
【0070】
レセプタクルハウジング60は、下方に向けて開口したレセプタクル側受入部(図示せず)を有しており、該レセプタクル側受入部でプラグコネクタ1の嵌合部31を受け入れることにより、嵌合部31に対して上方から嵌合可能となっている。また、レセプタクル側受入部内には、下方へ向けて突出するとともに端子配列方向に延びる突壁(図示せず)が設けられている。
【0071】
レセプタクル信号端子70は、端子配列方向でのレセプタクルハウジング60の中間範囲に複数配列されている。レセプタクル信号端子70は、2列をなして配列されており、プラグコネクタ1に設けられたプラグ信号端子40に接続可能となっている。レセプタクル信号端子70は、金属板部材を屈曲することで形成されており、端子配列方向に見て全体形状が略逆L字状をなしている。本実施形態では、一方の列のレセプタクル信号端子70と他方の列のレセプタクル信号端子70とは互いに異なる長さで形成されている。レセプタクル信号端子70の一端部には、プラグ信号端子40の信号用接触部43に接触可能な信号用接触部が、レセプタクルハウジング60のレセプタクル側受入部に臨む位置で弾性変形可能に設けられている。レセプタクル信号端子70の他端部には、回路基板P2に半田接続可能な信号用接続部がレセプタクルハウジング60外に延出して設けられている。
【0072】
レセプタクル電源端子80は、端子配列方向でのレセプタクル信号端子70の配列範囲の両側に1対ずつ設けられており、プラグコネクタ1に設けられたプラグ電源端子50に接続可能となっている。レセプタクル電源端子80は、金属板部材を屈曲することで形成されており、端子配列方向に見て全体形状が略逆L字状をなしている。本実施形態では、対をなす2つのレセプタクル電源端子80は互いに異なる長さで形成されている。レセプタクル電源端子80の一端部には、プラグ電源端子50の電源用接触部53に接触可能な電源用接触部が、レセプタクルハウジング60のレセプタクル側受入部に臨む位置で弾性変形可能に設けられている。レセプタクル電源端子80の他端部には、回路基板P2に半田接続可能な電源用接続部がレセプタクルハウジング60外に延出して設けられている。
【0073】
レセプタクル信号端子70およびレセプタクル電源端子80は、端子長手方向の中間部に形成された被保持部でレセプタクルハウジング60に圧入保持されている。
【0074】
次に、プラグコネクタ1とレセプタクルコネクタ2との嵌合接続動作について説明する。まず、プラグコネクタ1を回路基板P1の実装面に半田接続して実装するとともに、レセプタクルコネクタ2を回路基板P2の実装面に半田接続して実装する。次に、
図1(A)に見られるように、プラグコネクタ1の嵌合部31が上方へ向いた姿勢で配置し、レセプタクルコネクタ2をレセプタクル側受入部が下方に開口した姿勢にして、プラグコネクタ1の上方にもたらす。そして、レセプタクルコネクタ2を下方へ移動させることによりプラグコネクタ1と嵌合接続させる。
【0075】
嵌合接続動作が完了すると、プラグコネクタ1の嵌合部31がレセプタクルコネクタ2のレセプタクル側受入部に下方から進入するとともに、レセプタクルコネクタ2の突壁がプラグコネクタ1のプラグ側受入部34に上方から進入し、コネクタ同士が嵌合接続状態となる。この嵌合接続状態において、レセプタクル信号端子70の信号用接触部は弾性変形してプラグ信号端子40の信号用接触部43に接圧をもって接触し、また、レセプタクル電源端子80の電源用接触部は弾性変形してプラグ電源端子50の電源用接触部53に接圧をもって接触する。この結果、プラグ端子40,50とレセプタクル端子70,80とが電気的に導通する。
【0076】
コネクタ嵌合直前やコネクタ嵌合接続状態において、プラグコネクタ1とレセプタクルコネクタ2との相対的な嵌合位置が必ずしも端子配列方向、コネクタ幅方向および上下方向で正規位置となるとは限らず、これらの方向でずれることがある。本実施形態では、プラグ端子40,50の中間部45,55の弾性変形のもとで可動ハウジング30がずれの方向へ向けて移動する、いわゆるフローティングにより、コネクタ1,2同士のずれが吸収される。また、コネクタ1,2同士の嵌合接続後において、振動が生じやすい環境下でコネクタ1,2が使用された場合には、その振動の影響はフローティングにより吸収される。
【0077】
図5は、プラグコネクタ1のプラグ電源端子50の位置における断面図であり、可動ハウジング30がフローティングした状態を示している。この
図5では、可動ハウジング30は、コネクタ幅方向(X軸方向)でX1方向に変位するようにフローティングしている。このとき、X1側に位置するプラグ電源端子50では、上側弾性部55Aが上側第一腕部55A-1と上側第二腕部55A-2との間隔を小さくするように弾性変形し、下側弾性部55Bが下側第一腕部55B-1と下側第二腕部55B-2との間隔を小さくするように弾性変形している。一方、X2側に位置するプラグ電源端子50では、上側弾性部55Aが上側第一腕部55A-1と上側第二腕部55A-2との間隔を大きくするように弾性変形し、下側弾性部55Bが下側第一腕部55B-1と下側第二腕部55B-2との間隔を大きくするように弾性変形している。
【0078】
既述の実施形態では、プラグ電源端子50の2つの弾性部、すなわち上側弾性部55Aおよび下側弾性部55Bのうちの上側弾性部55Aにおいて、その一部がコネクタ幅方向で固定側被保持部52よりも外側に突出するとともに、上側移行部55A-3が曲線状に湾曲している。既述の実施形態の変形例として、下側弾性部55Bもこれと同様の形状で形成されていてもよい。
【0079】
図6は、本発明の実施形態の変形例に係るプラグコネクタの電源端子の位置における断面図である。
図6では、既述の実施形態に係る各部に対応する部分は、既述の実施形態の符号に「100」を加えた符号で示されている。この変形例では、上側弾性部155Aのみならず、下側弾性部155Bも既述の実施形態の上側弾性部55Aと同様の形状で形成されており、この点で既述の実施形態と異なっている。
【0080】
この変形例では、下側弾性部155Bの一部、具体的には、下側第一腕部155B-1全体および下側移行部155B-3の一部(コネクタ幅方向での内側部分)が、コネクタ幅方向で可動側被保持部154よりも内側に突出している。また、下側移行部155B-3が、端子配列方向に見て曲線状に湾曲しており、コネクタ幅方向で内側へ向けて斜め下方に凸湾曲する1つの湾曲部分を形成している。このような形状の下側弾性部155Bは、下側第一腕部155B-1と下側第二腕部155B-2との間隔を増減させるようにしてコネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。
【0081】
この変形例によれば、下側弾性部155Bの一部が突出している分だけ、既述の実施形態と比べて、電源用中間部155におけるばね長がさらに長くなり、弾性変形状態にて生じる応力をさらに良好に分散させることができる。このとき、下側弾性部155Bにおける突出方向はコネクタ幅方向であるので、下側弾性部155Bひいてはプラグ電源端子150が上下方向(Z軸方向)で大きくなることはない。
【0082】
また、
図6に見られるように、下側弾性部155Bの突出部分は、可動ハウジング130の嵌合部131の下方に形成された空間に位置しており、したがって、該突出部分と嵌合部131との干渉が回避されている。
【0083】
図6に示される変形例では、上側弾性部155Aおよび下側弾性部155Bの両方において、その一部がコネクタ幅方向で被保持部よりも外側に突出するとともに、移行部が曲線状に湾曲していることとしたが、他の変形例として、下側弾性部のみにおいて突出するようにしてもよい。
【0084】
また、
図6に示される変形例では、下側弾性部155Bの下側第一腕部155B-1と下側第二腕部155B-2とが、互いにほぼ平行をなして延びているが、これに対する他の変形例として、下側弾性部において、下側第一腕部と下側第二腕部が上端部に向かうにつれて互いに近づくように延びる形状としてもよい。このようにすることにより、下側第一腕部および下側第二腕部が平行に延びている場合と比較して、上下方向(コネクタ高さ方向)に対する連結部の傾斜角度を小さくすることができる。したがって、下側弾性部の少なくとも一部をコネクタ幅方向で突出させても、コネクタ幅方向でのプラグ電源端子の大型化を最小限に留めることができる。
【0085】
また、さらに他の変形例として、可動側被保持部の下端部、すなわち下側弾性部の下側第一腕部が連結されている側の端部に、既述の実施形態における切欠部52Cと同様の2つの切欠部を形成してもよい。その結果、可動側被保持部において2つの切欠部に挟まれた部分、すなわち下側第一腕部に連続する部分が、該下側第一腕部とともに弾性変形可能となり、プラグ電源端子において弾性変形可能な部分の長さ、すなわちばね長を長くすることができる。
【0086】
既述の実施形態および各変形例では、本発明を電源端子に適用する例を説明したが、適用可能な端子は電源端子に限られず、例えば、信号端子に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
1,101 プラグコネクタ
20,120 固定ハウジング
30,130 可動ハウジング
50,150 プラグ電源端子
52,152 固定側被保持部
54,154 可動側被保持部
55,155 電源用中間部
55A,155A 上側弾性部
55A-1,155A-1上側第一腕部
55A-2,155A-2 上側第二腕部
55A-3,155A-3 上側移行部
55B,155B 下側弾性部
55B-1,155B-1 下側第一腕部
55B-2,155B-2 下側第二腕部
55B-3,155B-3 下側移行部
55C,155C 連結部