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特開2024-127274起立補助椅子および起立補助椅子による起立補助方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127274
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】起立補助椅子および起立補助椅子による起立補助方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20240912BHJP
   A47C 9/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61G5/14
A47C9/00 Z
A61G5/12 701
A61G5/12 704
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036310
(22)【出願日】2023-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】599121746
【氏名又は名称】株式会社 富士ワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 友一
【テーマコード(参考)】
3B095
【Fターム(参考)】
3B095CA03
3B095CA10
(57)【要約】
【課題】着座者の起立する際の動作を的確に補助可能であり、起立補助時に肘掛部が着座者の起立に適した位置に移動可能な起立補助椅子を提供する。
【解決手段】本発明は、着座者の前後方向Xへの起立を補助する起立補助椅子1であって、脚部2と、座面部3と、肘掛部4と、を備え、脚部2、座面部3および肘掛部4が左右方向Yに沿って延びる第1回動軸A1回りに一体的に回動する第1作動が可能であり、座面部3が左右方向Yに沿って延びる第2回動軸A2回りに、脚部2および肘掛部4から独立して回動する第2作動が可能であり、肘掛部4が左右方向Yに沿って延びる第3回動軸A3回りに、脚部2および座面部4から独立して回動する第3作動が可能であることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の設置面に設置して着座者の前後方向への起立を補助する起立補助椅子であって、
脚部と、座面部と、肘掛部と、を備え、
前記脚部、座面部および肘掛部が左右方向に沿って延びる第1回動軸回りに一体的に回動する第1作動が可能であり、
前記座面部が前記左右方向に沿って延びる第2回動軸回りに、前記脚部および肘掛部から独立して回動する第2作動が可能であり、
前記肘掛部が前記左右方向に沿って延びる第3回動軸回りに、前記脚部および座面部から独立して回動する第3作動が可能である起立補助椅子。
【請求項2】
前記第1作動によって前記肘掛部が前記第1回動軸回りに回動する回動角度と、前記第3作動によって前記肘掛部が前記第3回動軸回りに回動する回動角度と、が対応する請求項1に記載の起立補助椅子。
【請求項3】
前記第1作動の前後において、前記設置面に対する前記肘掛部の角度を特定の角度範囲に維持する請求項2に記載の起立補助椅子。
【請求項4】
前記特定の角度範囲が、0°~5°である請求項3に記載の起立補助椅子。
【請求項5】
前記第1作動を行わせる第1駆動部と、前記第2作動を行わせる第2駆動部と、前記第3作動を行わせる第3駆動部と、を備える請求項3に記載の起立補助椅子。
【請求項6】
前記第1駆動部、前記第2駆動部および前記第3駆動部のそれぞれの駆動を制御する制御部を備える請求項5に記載の起立補助椅子。
【請求項7】
前記制御部による前記第1駆動部および前記第3駆動部のそれぞれの駆動の制御により、前記第1作動と、前記第3作動と、を同時に開始可能である請求項6に記載の起立補助椅子。
【請求項8】
前記制御部による前記第1駆動部および前記第2駆動部のそれぞれの駆動の制御により、前記第1作動の開始後に前記第2作動を開始可能な請求項6に記載の起立補助椅子。
【請求項9】
前記第1作動によって前記脚部、座面部および肘掛部の上面が前方方向に向かって回動し、
前記第2作動によって前記座面部の上面が、前記前方方向に向かって回動し、
前記第3作動によって、前記肘掛部の上面が後方方向に向かって回動する請求項1~8のいずれか1項に記載の起立補助椅子。
【請求項10】
前記第1作動における前記脚部、前記座面部および前記肘掛部の前記第1回動軸回りの回動角度が10°~20°である請求項1~8のいずれか1項に記載の起立補助椅子。
【請求項11】
前記第2作動における前記座面部の前記第2回動軸回りの回動角度が6°~10°である請求項1~8のいずれか1項に記載の起立補助椅子。
【請求項12】
着座者の前後方向への起立を補助する起立補助椅子による起立補助方法であって、
前記起立補助椅子が、脚部と、座面部と、肘掛部と、を有し、
前記脚部、座面部および肘掛部が左右方向に沿って延びる第1回動軸回りに一体的に回動させる第1傾斜ステップと、
前記座面部が前記左右方向に沿って延びる第2回動軸回りに、前記脚部および肘掛部から独立して回動させる第2傾斜ステップと
前記肘掛部が前記左右方向に沿って延びる第3回動軸回りに、前記脚部および座面部から独立して回動させる肘掛部回動ステップと、を備え、
前記第2傾斜ステップを前記第1傾斜ステップの開始後に行う、起立補助椅子による起立補助方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者の起立を補助する起立補助椅子および起立補助椅子による起立補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自力で椅子から起立することが困難な着座者に対して、起立を補助する機能を備える起立補助椅子が多く提案されている。
【0003】
特許文献1では、座面部材と、背凭れ部材を具備して椅子型姿勢に構成するとともに、リクライニング姿勢、或いは、起立補助姿勢に姿勢変換自在に構成したリクライニング可能な起立補助椅子であって、上記座面部材の下側に揺動レバーを枢着し、上記座面部材に対して下方に有する基台に、伸縮手段における一方の端部側を枢着するとともに、上記伸縮手段における他方の端部側を、上記揺動レバーが揺動可能に該揺動レバーに対して枢着し、上記揺動レバーと上記背凭れ部材との間に、上記伸縮手段を収縮させると上記背凭れ部材が後傾するよう背凭れ連動手段を介して構成し、上記揺動レバーと上記座面部材との間に、上記伸縮手段を伸長させると上記座面部材が前傾するよう座面連動手段を介して構成したリクライニング可能な起立補助椅子が提案されている。
【0004】
特許文献2では、脚部に昇降または前後傾動若しくは昇降および前後傾動するように取り付けられた座と、前記座を付勢して人の起立動および着座動をサポートするばね手段と、人が着座状態から起立状態に移行する起立動サポート時と人が起立状態から着座状態に移行する着座動サポート時とで座に対するばね手段の付勢力を自動的に変える反力切り替え手段とを備えている、起立補助椅子が提案されている。
【0005】
特許文献3では、前端部に設けた水平な傾動軸の周りに回動自在な座本体と、座本体を傾動軸に平行な駆動軸によって枢支する昇降部と、これらを収容する架台とから成り、座本体を上昇させつつ前傾させる椅子において、駆動軸を座本体下面側の中心寄りに位置させるとともに、傾動軸と座本体の後部直下の架台とをリンクで連結したことを特徴とする起立補助椅子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-14459号公報
【特許文献2】特開2016-202677号公報
【特許文献3】特開2019-13718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
着座者が椅子から起立をする際には、通常、まず上半身を前傾させて体の重心を前方に移動させ、その後に両脚に力を入れて座面部から体を離し、起立状態へと移行するという2つの段階を経ている。そのため、椅子からの起立を補助する際には、この2つの段階の動作に合わせて順次補助することにより、着座者を椅子からスムーズに起立をさせることができる。しかしながら、特許文献1~3で提案されている起立補助椅子は、上記の2つの段階の動作を的確に補助する機構ではなく、着座者のスムーズな起立が難しい。
【0008】
また、着座している椅子が肘掛部を備えている場合には、座面部から体が離れる際に肘掛部に手をついて、腕の力も利用して起立行う。特に自身の脚部の力のみでの起立が難しい着座者にあっては、腕の力の利用が重要であり、肘掛部の位置も椅子からの起立に関して重要な要素となる。しかしながら、特許文献1~3で提案されている起立補助椅子は、着座者の起立を補助するために座面が傾斜する構成ではあるが、肘掛部が起立に適した位置に動く構成ではない。起立に適した位置に肘掛部がない場合は、腕の力を十分に活用することができず、起立が難しい。
【0009】
そこで、本発明は、着座者の起立する際の動作を的確に補助可能であり、起立補助時に肘掛部が起立に適した位置に移動可能な起立補助椅子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特定の設置面に設置して着座者の前後方向への起立を補助する起立補助椅子であって、脚部と、座面部と、肘掛部と、を備え、前記脚部、座面部および肘掛部が左右方向に沿って延びる第1回動軸回りに一体的に回動する第1作動が可能であり、前記座面部が前記左右方向に沿って延びる第2回動軸回りに、前記脚部および肘掛部から独立して回動する第2作動が可能であり、前記肘掛部が前記左右方向に沿って延びる第3回動軸回りに、前記脚部および座面部から独立して回動する第3作動が可能であることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、前記第1作動により、着座者が上半身を前傾させて着座者の重心を前方に移動させる動作を補助し、続いて前記第2作動により、着座者の両脚に力を入れて座面部から体を離し、起立状態へと移行する動作を補助する。これにより、着座者の起立する際の動作を的確に補助することができる。さらに、前記第3作動により、前記肘掛部を起立に適した位置に移動可能であるため、起立時に腕の力を前記肘掛部に対してかけやすい。
【0012】
本発明は、前記第1作動によって前記肘掛部が前記第1回動軸回りに回動する回動角度と、前記第3作動によって前記肘掛部が前記第3回動軸回りに回動する回動角度と、が対応することが好ましい。「対応する」とは、2つの回動角度の値が同一であることに加え、一方の回動角度の値に応じて、他方の回動角度の値が決定されることも含まれる。
【0013】
この構成によれば、前記第1作動による前記肘掛部の回動の程度に合わせて前記第3作動による前記肘掛部の回動を行うため、前記肘掛部を着座者の起立により適した位置に移動することができる。
【0014】
本発明は、前記第1作動の前後において、設置面に対する前記肘掛部の角度を特定の角度範囲に維持することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、前記第1作動の前後において、設置面に対する前記肘掛部の角度が特定の角度範囲に保たれることにより、着座者に与える不安感を抑制しつつ、着座者が安定して上半身を前傾させて着座者の重心を前方に移動させる動作をすることができる。
【0016】
本発明は、前記特定の角度範囲が、0°~5°であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、着座者がより安定して上半身を前傾させて着座者の重心を前方に移動させる動作をすることができる。
【0018】
本発明は、前記第1作動を行わせる第1駆動部と、前記第2作動を行わせる第2駆動部と、前記第3作動を行わせる第3駆動部と、を備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第1作動、第2作動、および第3作動を容易に行うことができる。
【0020】
本発明は、前記第1駆動部、前記第2駆動部および前記第3駆動部のそれぞれの駆動を制御する制御部を備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、前記制御部が前記第1駆動部、前記第2駆動部、および前記第3駆動部の駆動を制御するため、着座者に合わせて第1作動、第2作動、第3作動のそれぞれを的確に行うことができる。
【0022】
本発明は、前記制御部による前記第1駆動部および前記第3駆動部のそれぞれの駆動の制御により、前記第1作動と前記第3作動とを同時に開始可能であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、着座者の起立に要する時間を短縮することができる。さらに、着座者が傾斜した前記座面部に着座している時間を短くできるため、起立補助時に着座者に与える不安感が抑制される。
【0024】
本発明は、前記制御部による前記第1駆動部および前記第2駆動部のそれぞれの駆動の制御により、前記第1作動の開始後に前記第2作動を開始可能であることが好ましい。「前記第1作動の開始後に前記第2作動を開始する」とは、第1作動が終了した後に前記第2作動を開始することに限定されず、前記第1作動が開始したときから終了するまでの間に前記第2作動を開始することも含まれる。
【0025】
この構成によれば、着座者の起立動作を的確に補助可能である。
【0026】
C9
本発明は、前記第1作動によって前記脚部、座面部および肘掛部の上面が前方方向に向かって回動し、前記第2作動によって前記座面部の上面が、前記前方方向に向かって回動し、前記第3作動によって、前記肘掛部の上面が後方方向に向かって回動することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、着座者の起立動作の補助、および腕の力かけやすい位置への前記肘掛部の移動をより的確に行うことができる。
【0028】
本発明は、前記第1作動における前記脚部、前記座面部および前記肘掛部の前記第1回動軸回りの回動角度がそれぞれ10°~20°であることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、着座者が着座位置からスムーズに起立することができる。
【0030】
本発明は、前記第2作動における前記座面部の前記第2回動軸回りの回動角度が6°~10°であることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、着座者が着座位置からスムーズに起立することができる。
【0032】
本発明は、着座者の前後方向への起立を補助する起立補助椅子による起立補助方法であって、前記起立補助椅子が、脚部と、座面部と、肘掛部と、を有し、前記脚部、座面部および肘掛部が左右方向に沿って延びる第1回動軸回りに一体的に回動させる第1傾斜ステップと、前記座面部が前記左右方向に沿って延びる第2回動軸回りに、前記脚部および肘掛部から独立して回動させる第2傾斜ステップと、前記肘掛部が前記左右方向に沿って延びる第3回動軸回りに、前記脚部および座面部から独立して回動させる肘掛部回動ステップと、を備え、前記第2傾斜ステップを前記第1傾斜ステップの開始後に行うことを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、前記第1傾斜ステップにより、上半身を前傾させて着座者の重心を前方に移動させる動作を補助し、続いて前記第2傾斜ステップにより、両脚に力を入れて座面部から体を離し、起立状態へと移行する動作を補助する。これにより、着座者の起立する際の起立動作を的確に補助することができる。さらに、前記肘掛部回動ステップにより、前記肘掛部を着座者の起立に適した位置に移動可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、上記構成を備えるため、着座者の起立する際の起立動作を的確に補助し、起立補助時に肘掛部が着座者の起立に適した位置に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本願発明実施形態の起立補助椅子の初期状態を示す斜視図である。
図2】同、初期状態を示す右側面図である。
図3】同、第1作動および第3作動後の状態を示す右側面図である。
図4】同、図3の状態からさらに第2作動後の状態を示す右側面図である。
図5】本実施形態の制御部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態の起立補助椅子1を図1~5を参照して説明する。起立補助椅子1は、脚部2と、座面部3と、一対の肘掛部4と、背もたれ部5と、脚部2と接続し、全体を支える支持フレーム6と、第1駆動部11と、第2駆動部12と、第3駆動部13と、制御部20と、を備えている(図1および図2参照)。起立補助椅子1は、支持フレーム6を土台として特定の設置面G上に設置され、起立補助椅子1の着座者(図示せず)の前後方向Xへの起立を補助するものである。なお、特定の設置面Gとしては、例えば建物の水平な床面などが適用される。座面部3および一対の肘掛部4は、設置面Gと平行あるいは略平行状態となるように設定されているが、平行の概念については、椅子などの家具仕様によって差異があるため、平行に限らない。
【0037】
脚部2は、起立補助椅子1の前側の先端近傍において左右方向Y(図1参照)に沿って延びる第1回動軸A1回りに回動可能に支持フレーム6と直接接続し、かつ第1駆動部11を介して支持フレーム6と接続している。脚部2には、肘掛部4と接続するための接続部材2aが備えられている。
【0038】
座面部3は、脚部2の上側に位置し、起立補助椅子1の前側の先端近傍において左右方向Yに沿って延びる第2回動軸A2回りに回動可能に脚部2と直接接続し、かつ第2駆動部12を介して支持フレーム6と接続している。したがって、座面部3が第2回動軸A2回りに回動する場合は、座面部3が脚部2および肘掛部4から独立して回動し、脚部2が第1回動軸A1回りに回動する場合には、座面部3が脚部2と一体的に回動する。
【0039】
肘掛部4は、起立補助椅子1の後側近傍において左右方向Y(図1参照)に沿って延びる第3回動軸A3回りに回動可能に接続部材2aと直接接続し、かつ第3駆動部13を介して接続部材2aと接続している。したがって、肘掛部4が第3回動軸A3回りに回動する場合は、肘掛部4が脚部2および座面部3から独立して回動し、脚部2が第1回動軸A1回りに回動する場合には、肘掛部4が脚部2と一体的に回動する。
【0040】
背もたれ部5は、起立補助椅子1の後側近傍において脚部2の上側と接続している。背もたれ部5により着座者の後方への転落を防止する。
【0041】
支持フレーム6は、起立補助椅子1の土台となる部分である。本実施形態では、複数のキャスター6aを有しており、起立補助椅子1の移動が容易である。
【0042】
第1駆動部11は、その一端および他端が、それぞれ脚部2および支持フレーム6と接続しており、その駆動により、脚部2を第1回動軸A1回りに脚部2の上面2bが前方方向に向かうように回動させるものである。上記の通り、脚部2には、座面部3および肘掛部4が接続されているため、第1駆動部11が駆動することにより、脚部2、座面部3および肘掛部4が、それぞれの上面2b、3a、4aが前方方向に向かう方向に一体的に回動する第1作動を行わせることができる(図3参照)。第1作動における脚部2、座面部3および肘掛部4の第1回動軸A1回りの回動角度θ1は、着座者の体格等によって適宜設定可能であり、10°~20°が好ましく、12°~18°がより好ましく、13°~16°がさらに好ましい。これらの回動角度範囲であれば、着座者の起立を適切に補助することができる。
【0043】
第2駆動部12は、その一端および他端が、それぞれ座面部3および脚部2と接続しており、その駆動により、座面部3が脚部2および肘掛部4から独立して、第2回動軸A2回りに座面部3の上面3aが前方方向に向かうように回動する第2作動を行わせることができる(図4参照)。したがって、第2駆動部12の駆動によっては、脚部2および肘掛部4は回動しない。第2作動における座面部3の第2回動軸A2回りの回動角度θ2は、着座者の体格等によって適宜設定可能であり、5°~11°が好ましく、6°~10°がより好ましく、7°~9°がさらに好ましい。これらの回動角度範囲であれば、着座者の起立を適切に補助することができる。
【0044】
第3駆動部13は、その一端および他端が、それぞれ肘掛部4および脚部2の接続部材2aと接続しており、その駆動により、肘掛部4が脚部2および座面部3から独立して、第3回動軸A3回りに肘掛部4の上面4aが後方方向に向かうように回動する第3作動を行わせることができる。したがって、第3駆動部13の駆動によっては、脚部2および座面部3は回動しない。第3作動における肘掛部4の第3回動軸A3回りの回動角度θ3は、着座者の体格等によって適宜設定可能であるが、第1作動による第1回動軸A1回りの肘掛部4の回動角度θ1と、第3作動による第3回動軸A3回りの肘掛部4の回動角度θ3と、が対応することが好ましく、第1作動の前後において、設置面Gに対する肘掛部4の角度αを特定の角度範囲に維持することができる範囲であることがより好ましい。特定の角度範囲とは、着座者が起立時に腕の力を肘掛部4に対してかけやすい位置に肘掛部4が配置される角度幅であり、例えば0°~5°である。
【0045】
第1駆動部11、第2駆動部12および第3駆動部13は、それぞれ独立しているため、それぞれの駆動は、一つずつ行うことも同時に行うことも可能であるが、第1作動と第3作動とを同時に行うことが好ましい。第1作動と第3作動と同時に行うことで着座者の起立に要する時間を短縮することができる。さらに、着座者が傾斜した座面部3に着座している時間を短くできるため、起立補助時に着座者に与える不安感が抑制される。
【0046】
本実施形態において、第1駆動部11、第2駆動部12、および第3駆動部13は、前進変位および後退変位がともに可能なピストンロッドを有するアクチュエータであるが、これに限定されず、例えば油圧式や水圧式のシリンダー、または空気圧式のエアシリンダーであってもよい。
【0047】
制御部20は、第1駆動部11、第2駆動部12、第3駆動部13、および操作部30と接続されており、操作部30から発せられる信号に基づいて、各駆動部の駆動を制御する。制御部20の一例について図5を参照して説明する。制御部20は、CPU21、RAM22、ROM23、入出力インタフェース24を有しており、バス25により相互に接続したものである(図5参照)。CPU21が初期設定、或いは入力信号を受けて所定の演算等を行い、それらに対して、制御部20と接続された各要素に制御信号が送信されるようになっている。
【0048】
CPU21は、各部に出力する制御信号を生成し、プログラム制御によって、制御信号を出力することで、制御を実行する。プログラム制御に代えて、LSIロジック等のハードウェア制御によっても実施が可能である。RAM22は、データを一時的に読み書きするものである。ROM23にプログラムが読み出し専用で格納されている。操作部30を介して起立補助椅子1に第1作動、第2作動および第3作動を行わせることにより、起立補助椅子1が着座者の起立動作を補助する。
【0049】
本実施形態の起立補助椅子1によれば、第1作動により着座者が上半身を前傾させて着座者の重心を前方に移動させる動作を補助することができ、前記第2作動により、着座者の両脚に力を入れて座面部3から体を離し、起立状態へと移行する動作を補助ことができる。これにより、着座者の起立する際の動作を的確に補助することができる。また、第3作動により、起立補助時に肘掛部4が起立に適した位置に移動するため、起立する際に着座者の腕の力を肘掛部4に対して利用しやすい。
【0050】
起立補助椅子1による着座者の起立補助方法について説明する。着座者が起立補助椅子1に着座している状態である初期状態では、起立補助椅子1は設置面Gに置かれた状態であり、脚部2、座面部3および肘掛部4のいずれもが傾斜していない状態である(図2参照)。
【0051】
操作部30を操作して、起立補助椅子1による起立補助を開始させる。起立補助を開始すると、第1駆動部11および第3駆動部13が同時に駆動する。これにより、脚部2、座面部3および肘掛部4が左右方向Yに沿って延びる第1回動軸A1回りに一体的に回動する、第1傾斜ステップと、肘掛部4が第3回動軸A3回りに脚部2および座面部3から独立して回動する、肘掛部回動ステップと、が同時に行われる。このとき、制御部20が第1駆動部11および第3駆動部13の駆動を制御するため、第1傾斜ステップと肘掛部回動ステップとを同時に行うことにより、設置面Gに対する肘掛部4の角度αを特定の角度範囲に維持することができる。第1傾斜ステップおよび肘掛部回動ステップ終了時には、脚部2および座面部3は、第1回動軸A1周りに回動して設置面Gに対して傾斜した状態であり、肘掛部4は、第1回動軸A1周りに回動し、さらに第3回動軸A3周りに回動した状態であるため、設置面Gに対して角度αを成している(図3参照)。このとき、着座者は上半身が前傾した状態となるため、起立する直前の状態となる。
【0052】
第1傾斜ステップおよび肘掛部回動ステップが終了後に、第2駆動部12が駆動して、座面部3が第2回動軸A2回りに脚部2および肘掛部4から独立して回動する、第2傾斜ステップが行われる。これにより、座面部3はさらに第2回動軸A2回りに独立して回動して傾斜した状態となり(図4参照)、着座者を座面部3から押し出して起立状態へと移行させる。このとき、肘掛部4は第2傾斜ステップによって回動しないため、設置面Gに対しする肘掛部4の角度αは維持されている。これにより、着座者が起立する際に腕の力を肘掛部4にかけることが容易となる。
【0053】
着座者が起立した後は、第1駆動部11、第2駆動部12、第3駆動部13が駆動して、起立補助椅子1が初期状態へと復帰するが、この初期状態への復帰は操作部30を介しての操作によって実行されるか、或いは起立補助終了後であって特定の時間が経過した後に自動的に実行されるかについては、使用状況などに応じて適宜設定することができる。
【0054】
本実施形態の起立補助椅子1による起立補助方法によれば、第1傾斜ステップにより着座者が上半身を前傾させて体の重心を前方に移動させる動作を補助することができ、前記第2傾斜ステップにより、着座者の両脚に力を入れて座面部3から体を離し、起立状態へと移行する動作を補助ことができる。これにより、着座者の起立する際の起立動作を的確に補助することができる。また、肘掛部回動ステップにより、起立補助時に肘掛部4が起立に適した位置に移動するため、起立する際に着座者の腕の力を肘掛部4対して利用しやすい。
【0055】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、本実施形態の起立補助椅子1は、背もたれ部5、キャスター6aを備えているが、これらを備えない構成であってもよい。第1傾斜ステップと肘掛部回動ステップとが同時に行われるが、第1傾斜ステップの途中または終了後に肘掛部回動ステップを行ってもよい。第1傾斜ステップの終了後に第2傾斜ステップが行われるが、これに限らず、例えば、制御部20に設けた遅延回路(図示せず)に通電することで、第1傾斜ステップの作動途中に第2傾斜ステップが開始するように行われてもよい。これは制御部20を利用して、第2作動を第1作動の開始後に行うことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る起立補助椅子は、着座者の起立する際の起立動作を的確に補助し、着座者自身によるスムーズな起立を可能とするものであり、自身の力で椅子からの起立が難しい者はもちろんのこと、健常者も利用可能なものであるため、産業用の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・起立補助椅子
2・・・脚部
2a・・・接続部材
2b・・・上面
3・・・座面部
3a・・・上面
4・・・肘掛部
4a・・・上面
5・・・背もたれ部
6・・・支持フレーム
6a・・・キャスター
11・・・第1駆動部
12・・・第2駆動部
13・・・第3駆動部
20・・・制御部
21・・・CPU
22・・・RAM
23・・・ROM
24・・・入出力インタフェース
25・・・バス
30・・・操作部
A1・・・第1回動軸
A2・・・第2回動軸
A3・・・第3回動軸
X・・・前後方向
Y・・・左右方向
α・・・角度
θ1・・・回動角度
θ2・・・回動角度
θ3・・・回動角度
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
座面部3は、脚部2の上側に位置し、起立補助椅子1の前側の先端近傍において左右方向Yに沿って延びる第2回動軸A2回りに回動可能に脚部2と直接接続し、かつ第2駆動部12を介して脚部2と接続している。したがって、座面部3が第2回動軸A2回りに回動する場合は、座面部3が脚部2および肘掛部4から独立して回動し、脚部2が第1回動軸A1回りに回動する場合には、座面部3が脚部2と一体的に回動する。