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  • 特開-加煙試験器 図1
  • 特開-加煙試験器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127276
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】加煙試験器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/10 20060101AFI20240912BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G08B17/10 L
G08B17/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036313
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 徹康
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085CA12
5C085CA15
5C085FA25
5G405AB02
5G405AD07
5G405CA13
5G405CA21
5G405FA17
(57)【要約】
【課題】試験煙を過剰に放出することなく、適正な量の放出により煙感知器の加煙試験を行うことができる加煙試験器を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の加煙試験器は、試験煙を放出して煙感知器の加煙試験を行う加煙試験器であって、加煙試験の際に視認可能な発光部と、前記発光部の点灯または消灯を制御可能なスイッチと、を備え、前記加煙試験器は、試験煙を放出する際に、前記スイッチの接続状態を変更して前記発光部を点灯させ、前記試験煙の放出終了と共に消灯することを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験煙を放出して煙感知器の加煙試験を行う加煙試験器であって、
加煙試験の際に視認可能な発光部と、前記発光部の点灯または消灯を制御可能なスイッチと、を備え、
前記加煙試験器は、試験煙を放出する際に、前記スイッチの接続状態を変更して前記発光部を点灯させ、試験煙の放出終了と共に消灯する、
ことを特徴とする加煙試験器。
【請求項2】
前記スイッチは、試験煙を放出するノズルと接続し、連動するように設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載された加煙試験器。
【請求項3】
試験煙を所定量放出してから自動的に試験煙の放出を停止する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載された加煙試験器。
【請求項4】
試験煙を放出する前記スイッチの接続状態になると第1色で点灯し、前記接続状態になってから所定時間経過後に第2色で点灯し、前記接続状態が解除されると消灯する、
ことを特徴とする請求項1に記載された加煙試験器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器を加煙試験するために用いる、加煙試験器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加煙試験器は、ガスボンベに充填した試験用ガスや、発煙材を加熱して発生させた試験煙等を煙感知器の周囲に放出して煙感知器を動作させることにより、加煙試験を行う。加煙試験器は、例えば特許文献1、2のように、煙感知器を覆うフードと、試験煙を放出するノズルや発煙ユニットと、試験用ガスが放出されるフード内の空間を有している。加煙試験器は支持棒の先に取り付けられる。
【0003】
煙感知器の加煙試験を行うときには、試験作業者が支持棒を押し上げて加煙試験器のフードを検査対象の煙感知器に被せる。そして、フード内に設置されたコンタクト板を煙感知器に押し付けたり操作ワイヤーを引いたりしてガスボンベのノズルを押し下げる、発煙ユニットへ給電して発煙材を加熱させる等して、試験煙をフード内に放出する。このときフード内は火災が発生したときのように煙がある状態となるので、煙感知器が試験煙を感知して作動し、発報する。このようにして、加煙試験器により煙感知器の作動を試験することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-88877号公報
【特許文献2】特開2012-118962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試験煙の放出は、試験作業者による支持棒の押し上げや操作ワイヤーの引き下げ、発煙ユニットへの給電スイッチのオンオフ等、作業者の操作により行われる。試験煙の放出位置は煙感知器の近くであって天井の付近であるため、試験作業者からの距離が遠く、放出状況を確認しにくい。また、煙感知器は非火災報を防止するため、煙を感知した直後に火災発報せず、一定時間経過後に火災感知を発報する蓄積機能を有している。しかし、作業者は試験煙が足りないために火災発報しないものと思い、煙感知器が発報するまで試験煙を放出してしまい、試験煙原料を過剰に放出して無駄に消費してしまうことがある。
【0006】
また、油脂のミストを試験煙として用いたり、発煙材にパラフィンを用いたりする等、試験煙に油脂等が含まれる場合がある。加煙試験器によりこのような試験煙を煙感知器に過剰に与えると、油脂が煙感知器の中に残留し、煙感知器の内部に汚れが付着してしまう可能性がある。
【0007】
本発明の一実施形態は、試験煙を過剰に放出することなく、適正な量の放出により煙感知器の加煙試験を行うことができる加煙試験器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における加煙試験器は、試験煙を放出して煙感知器の加煙試験を行う加煙試験器であって、加煙試験の際に視認可能な発光部と、前記発光部の点灯または消灯を制御可能なスイッチと、を備え、前記加煙試験器は、試験煙を放出する際に、前記スイッチの接続状態を変更して前記発光部を点灯させ、前記試験煙の放出終了と共に消灯することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、試験作業者は過剰な試験煙の放出を抑制することができ、ガスボンベの試験煙を必要以上に消費することを防ぐ等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における加煙試験器等の側面図。
図2】実施形態における加煙試験器を煙感知器に使用した際の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態では、天井に設置した煙感知器を試験する際の加煙試験器の方向で上下方向を示す。
【0012】
図1に、実施形態における加煙試験器1等の側面図を示す。蛇腹フード11、カバー12、ボンベケース13は、断面を記載している。カバー12の上部には柔軟性を有する素材で形成され、煙感知器6を覆うフードとしての蛇腹フード11が取り付けられ、下部にはボンベケース13が取り付けられる。ボンベケース13には、試験煙の原料物質を封入したガスボンベ2が嵌め込まれ、その上にカバー12を被せる。
【0013】
カバー12の内側には、ノズル14が上下方向に移動可能に設けられている。ノズル14は筒状であり、上方の2箇所に側方へ向けた放出口141が設けられている。また、ノズル14には、周囲に円環状のフランジであるノズルフランジ142が設けられている。ノズル14の上端にはコンタクト板15が係止されている。ノズル14の下端はガスボンベ2のボンベノズル21に接続され、ノズル14とボンベノズル21は連動する。ノズル14が押し下げられると、ボンベノズル21が押され、ガスボンベ2内のガスが、ノズル14に放出されるように構成されている。
【0014】
また、カバー12の内面には、レバー台161が固定される。レバー台161にはレバー回動部162が固定され、レバー回動部162には操作レバー163が取り付けられている。操作レバー163は図1のように、突出部163aがノズルフランジ142の上に載置されている。本実施例では、突出部163aは下方へ突出するように曲折され、U字状をなしているが、操作レバー163の回動に連動してボンベノズル21を押圧できる形状であればよい。また、操作レバー163は、端部の2箇所でレバー回動部162に回動可能に取り付けられ、他方の位置、つまり操作レバー163のレバー回動部162から離れた部分は、開口部121からカバー12の外部へ突出しており、操作ワイヤー5が繋がっている。図1では一方の突出部163aが見えているが、ノズル14の裏側に他方の突出部163aがあり、2箇所設けられている。また、突出部163aを図1のように、操作レバー163の長さ方向における中央よりもレバー回動部162に近い位置に設けることで、少ない力でレバー操作が可能になり操作性において好ましい。
【0015】
更に、カバー12の開口部121には、表示台171が取り付けられている。表示台171はカバー12の内側に突出しており、ノズルフランジ142が押し下がったときに押される位置にスイッチ173が固定されている。また、カバー12の外側にはLEDによる発光部172が設けられ、スイッチ173の押圧に連動して点灯する。例えば、スイッチ173の高さの半分以上が押下されたときに発光部172の点灯が開始し、押下状態が半分以上解除されたときに発光部172は消灯するものとすることができる。発光部172は、加煙試験の際に試験作業者が視認可能な位置に設けられている。表示台171には電池(図示せず)が設けられ、発光部172、スイッチ173と導線(図示せず)により直列に接続している。スイッチ173は、発光部172の点灯または消灯を制御可能である。
【0016】
カバー12の外側の2箇所からは、連結金具18が突出している。連結金具18はU字状のアーム3の端部に回転可能に固定されている。また、アーム3の中心部には支持棒4が固定されている。
【0017】
次に、加煙試験を行う際の状況を説明する。図2は実施形態における加煙試験器1を煙感知器6に用いたときの側面図である。煙感知器6は煙感知器である。図2においても図1と同様に蛇腹フード11、カバー12、ボンベケース13は、断面を記載しており、天井板Cも断面を記載している。
【0018】
図2は、試験作業者が支持棒4により加煙試験器1を持ち上げて、天井板Cに設置している煙感知器6に加煙試験器1を押し当てている使用状況を示す。加煙試験器1を押し当てることにより蛇腹フード11は短くなっている。また、コンタクト板15が煙感知器6の下部に押されてノズル14の位置がカバー12に対して下がっている。これにより、ガスボンベ2のボンベノズル21がノズル14により押されて、ガスボンベ2の弁(図示せず)が開く。そして、ボンベノズル21からノズル14の中を通り、2つの放出口141から試験煙Sが蛇腹フード11内に放出される。試験煙Sは図2の状態から拡散して、煙感知器6の中に入り、煙感知器6が作動して試験を行うことができる。
【0019】
また、ガスボンベ2のボンベノズル21がノズル14により押された状態では、ノズルフランジ142の位置がカバー12に対して下がった位置となる。カバー12に固定された表示台171に設けられたスイッチ173は、ノズルフランジ142が押し下がったことにより押下され、導通する。スイッチ173が導通することにより、発光部172が発光する。試験作業者は、発光部172の発光を下方から確認することができ、試験煙Sの放出を認識することができる。試験煙Sは、少量放出されれば蛇腹フード11内で拡散され煙感知器に流入して加煙試験を行うことができるため、試験作業者は発光部172の点灯を1~2秒確認したら速やかに力を緩める。そうすると、スイッチ173の押下状態が解消されることでノズルフランジ142が定位置に戻って、試験煙Sの放出を止めることができる。これにより、加煙試験を行うに充分かつ適量の試験煙Sのみを放出できる。また、試験作業者は試験煙Sの放出停止を発光部172の消灯により確認することができる。
【0020】
図2の例では、煙感知器6の下部で加煙試験器1のコンタクト板15を押すことにより試験煙Sを放出した。しかし、高さが低い薄型の煙感知器など、煙感知器の形状によっては、煙感知器でコンタクト板15を押すことが難しい場合がある。そのような場合には、試験作業者は操作ワイヤー5を下方に引いて操作レバー163を回転させる。操作レバー163はレバー回動部162を中心に回転して、2箇所の突出部163aでノズルフランジ142を押し下げる。これにより、ノズル14が下がって、蛇腹フード11の内側に試験煙Sが放出される。さらに、ノズルフランジ142が下がることによりスイッチ173が導通し、発光部172が発光する。そして、コンタクト板15を押し下げた場合と同様に、試験作業者は試験煙Sの放出状況を確認して、速やかに試験煙Sの放出を止めることができる。発光部172は、加煙試験の際に試験作業者が視認可能な位置に設けられている。
【0021】
コンタクト板15を用いた試験煙Sの放出と、操作レバー163を用いた試験煙Sの放出は、何れもスイッチ173が、試験煙Sを放出するノズル14と接続し、連動するものである。そして、加煙試験器1は、試験煙Sを放出する際に、スイッチ173の接続状態を変更して発光部172を点灯させ、試験煙Sの放出終了と共に発光部172を消灯する。
【0022】
<変形例1>
変形例1は、実施形態の発光部172やスイッチ173を含む回路の構成が異なっており、他の構成は実施形態と同じである。実施形態では、ノズル14が一定量押し下がって試験煙Sが放出されているときに発光部172が発光するようにして、試験作業者は発光を確認したら速やかにノズル14の押し下げ状態を解除し試験煙Sの放出を止めるようにした。試験煙Sをある程度の時間にわたり放出してから止めるようにしたい場合には、試験作業者は発光時間を見計らって止めることができる。しかし、変形例1では、スイッチ173がオンになり、試験煙Sの放出が開始された一定時間後に発光部172を発光させるようにする。試験煙Sが一定量放出されたのちに発光部172が点灯するので、試験作業者は点灯を確認することで、ノズル14の押し下げ状態の解除の合図、試験煙Sの放出を停止合図として機能する。試験作業者は、発光の確認により試験煙Sを止める。
【0023】
<変形例2>
変形例2も、実施形態の発光部172やスイッチ173を含む回路の構成が異なっており、他の構成は実施形態と同じである。変形例2では、実施形態や変形例1のように、試験作業者が試験煙Sを止めるのではなく、加煙試験器が試験煙Sを所定量放出してから自動的に試験煙Sの放出を停止する。変形例2では、例えば、ノズルに所定時間だけ開放する自動弁などが使用され、ノズルが一度押し下げられると、すぐに又は所定時間後に自動弁が閉止して、元の位置に上がる。発光部は、試験煙Sの放出と停止の試験作業者への確認灯として機能する。
【0024】
<変形例3>
変形例3も、実施形態の発光部172やスイッチ173を含む回路の構成が異なっており、他の構成は実施形態と同じである。変形例3の発光部は異なる色で発光することができる。変形例3においては、試験煙Sを放出するスイッチの接続状態になると第1色で点灯し、接続状態になってから所定時間経過後に第2色で点灯し、接続状態が解除されると消灯する。変形例3は、第1色を緑色、第2色を赤色とするが、他の色でもよい。2つの色を使用する変形例3では、第1色により試験煙Sが放出状態であることを試験作業者へ知らせ、第2色により試験煙Sの停止を試験作業者へ指示する機能を有する。
【0025】
上記実施形態および変形例では、ガスボンベからスプレー状に試験煙Sを放出する加煙試験器を示した。しかし、一時的に加熱して試験煙Sを発生させるなど、他の方法で加煙する加煙試験器としてもよい。
【0026】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
C 天井板、S 試験煙、
1 加煙試験器、11 蛇腹フード、12 カバー、121 開口部、13 ボンベケース、14 ノズル、141 放出口、142 ノズルフランジ、15 コンタクト板、161 レバー台、162 レバー回動部、163 操作レバー、163a 突出部、171 表示台、172 発光部、173 スイッチ、18 連結金具、
2 ガスボンベ、21 ボンベノズル、
3 アーム、4 支持棒、5 操作ワイヤー、
6 煙感知器
図1
図2