(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012728
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20240124BHJP
B22F 3/14 20060101ALI20240124BHJP
C22C 19/05 20060101ALI20240124BHJP
C22C 19/07 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B05C5/02
B22F3/14 D
C22C19/05 Z
C22C19/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208122
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】511213410
【氏名又は名称】MMCリョウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208568
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 孔一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓也
【テーマコード(参考)】
4F041
4K018
【Fターム(参考)】
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA17
4F041CA03
4K018BA04
4K018BA17
4K018KA38
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン電池の負極活物質を塗布液とするに当たり、白濁と減肉を抑制し、長期間にわたって安定して均一の厚さの塗布膜を得ることができ、しかも、製造上の手間の少ない材料を用いたエッジ部を有するスロットダイを提供する。
【解決手段】それぞれ対峙するエッジ部材を有する1または2以上の塗布ヘッドを有し、前記エッジ部材の間隔を調整することにより塗布液の塗布量を調整する塗布装置であって、前記エッジ部材は、HRCが45~52のCo-Cr-W系合金またはNi-Cr-Fe系合金であることを特徴とする塗布装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ対峙するエッジ部材を有する1または2以上の塗布ヘッドを有し、前記エッジ部材の間隔を調整することにより塗布液の塗布量を調整する塗布装置であって、
前記エッジ部材は、HRCが45~52のCo-Cr-W系合金またはNi-Cr-Fe系合金であることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記Co-Cr-W系合金またはNi-Cr-Fe系合金の熱膨張係数は、前記塗布装置の本体部分に使用される材料の熱膨張係数との差が0.50×10-5/K以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液を塗布する塗布装置であるスロットダイ(以下、塗布装置とスロットダイを区別せずに使用する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対向するエッジを有する1または2以上の塗布ヘッドを有し、前記エッジ間隔を調整することにより塗布液の塗布量が調整できる塗布装置としてスロットダイが知られている。このスロットダイは、可撓性を有するフィルムなどに絶縁材、導電材、接着剤、粘結剤、写真感光剤、磁性物質等の各種塗布液の塗布に広く使用されている。
そして、このスロットダイの用途を広げ、塗布性能や耐久性の向上を目的として、種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マニフォールドの先端部から流通部、塗布先端部においてNi-Cr-Si-B系の合金粉末、または、Co-Cr-Si-B系の合金粉末をHIP処理により直接拡散接合されたHIPライニング層を形成したスロットダイが記載され、該スロットダイは、リチウムイオン電池の負極活物質ペーストを塗布液として集電体上に塗布成形するために用いることができ、該塗布液による傷や摩耗が発生しにくいとされている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、塗布先端部が超硬合金からなり、該超硬合金はコバルトを主成分とする結合相を2~16質量%有するWC基超硬合金であって、その硬さ(X)がロックウエル硬度Aスケールで90.0~94.0(HRA)、該超硬合金の保磁力(Yエルステッド)は、60X-5100≧Y≧50X-4320を満足するスロットダイが記載され、該スロットダイは耐食性、耐腐食摩耗性、耐アブレーション摩耗および耐微小損傷性に優れて耐久性を有するとされている。
【0005】
さらに、例えば、特許文献3には、塗布先端部が超硬合金からなり、該超硬合金はWCを主成分とする硬質相とNiおよびCr2C3を主成分とする結合相を有する実質的に非磁性のスロットダイが記載され、該スロットダイは耐食性が向上しているとされている。
【0006】
加えて、例えば、特許文献4には、塗布ヘッドの金属エッジ(塗布先端部)がCr:14~23質量%、Mo:14~20質量%、W:0.2~5質量%、Fe:0.2~7質量%、Co:0.2~2.5質量%、残部Niおよび不可避的不純物からなる組成を有するNi合金(以下、Ni-Cr-Mo系合金という)を溶体化処理後に圧延加工し、熱処理したスロットダイが記載され、該スロットダイは耐食性と耐摩耗性に優れているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-122283号公報
【特許文献2】特許第3048145号公報
【特許文献3】特開2002-346456号公報
【特許文献4】特開平6-134379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、SUS630等の析出硬化型ステンレス鋼やSUS420等のマルテンサイト系ステンレス鋼により製造されたスロットダイにおいて、塗布液としてリチウムイオン電池の負極活物質(ペースト)を使用したとき、塗布先端部(エッジ部)に白濁や減肉が生じる問題があることを発見した。
【0009】
そこで、この白濁や減肉を防止すべく、前記各特許文献に記載されたスロットダイの塗布先端部の材料を試用した。その結果、本発明者は、これら材料を使用しても、この白濁や減肉を抑制できないことを認識した。
【0010】
一方、本発明者は、特許文献4に記載された組成の合金を含むNi-Cr-Mo合金をエッジ部の材料として用いると、白濁や減肉を抑制できるものの、スロットダイのエッジ部に用いるために、溶体化処理後に高圧下率の圧延加工し、時効熱処理を行う必要があるため、製造上の手間が無視できないという問題があることを認識した。
【0011】
本発明は、これら問題を解決するためになされたものであって、リチウムイオン電池の負極活物質を塗布液とするに当たり、Ni-Cr-Mo合金と同等以上の白濁と減肉を抑制し、長期間にわたって安定して均一の厚さの塗布膜を得ることができ、しかも、製造上の手間の少ない材料を用いたエッジ部を有するスロットダイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態に係る塗布装置は、
それぞれ対峙するエッジ部材を有する1または2以上の塗布ヘッドを有し、前記エッジ部材の間隔を調整することにより塗布液の塗布量を調整する塗布装置であって、
前記エッジ部材は、HRCが45~52のCo-Cr-W系合金またはNi-Cr-Fe系合金である。
【0013】
また、前記Co-Cr-W系合金またはNi-Cr-Fe系合金の熱膨張係数は、前記塗布装置の本体部分に使用される材料の熱膨張係数との差が0.50×10-5/K以下であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
前記によれば、リチウムイオン電池の負極活物質の塗布に当たって、製造上の手間の少ない材料により、エッジ部の白濁と減肉を抑制し、長期間にわたって安定して均一の厚さの塗布膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図1の塗布装置の第1金型の斜視模式図である。
【
図4】
図1の塗布装置の第2金型の斜視模式図である。
【
図5】
図1の塗布装置に使用する(第1金型と第2金型との間に介挿する)スペーサーの斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る塗布装置について詳述する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「M~N」(M、Nは共に数値)で表現するときは、その範囲は上限値(N)および下限値(M)を含んでおり、上限値(N)と下限値(M)の単位は同じである。
【0017】
リチウムイオン電池の負極活物質は、黒鉛、結着剤、水を混練したものであって、腐食性を有する化学物質ではないため腐食は生じないと一応考えられる。しかし、本発明者は、作用機序は定かではないが、塗布装置のエッジ部では、この負極活物質の流動に起因する潰食(cavitation errosion)や負極活物質中の固形成分による摩耗が生じ、白濁と減肉が生じているのではないかと考えるに至った。
【0018】
さらに、塗布装置本体の材料であるSUS630等の析出硬化型ステンレス鋼やSUS420等のマルテンサイト系ステンレス鋼は、耐食性に優れるが、塗布液に接する内壁面の面粗さを小さくすべく研磨加工が必要であり、その結果エッジ部分にバリが生じてしまい、バリ取りのためにエッジ加工を行う必要があり、このエッジの加工精度が低下して均一な塗布量を得ることが困難であり、一方、WC基超硬合金は、バリ取りを行う必要はなく耐摩耗性は有するものの、耐食性が十分ではないため白濁と減肉を生じるものはないかと推察した。
【0019】
そこで、この推察に立って、前記各材料や白濁と減肉を抑制することができるNi-Cr-Mo系合金について、その物性を解析した結果、耐摩耗性の指標となる硬度が特定の範囲にあり、所定の耐食性を有していることが判明した。その結果、白濁と減肉を抑制するために必要な硬度と耐食性について、以下の知見を得た。
以下、順に説明する。
【0020】
耐摩耗性
耐摩耗性は硬度と相関関係があり、硬度の高い材料は耐摩耗性が高くなるが、硬度が高くなれば研削と研磨の加工性が低下してしまう。そこで、前述の特許文献4に記載された合金の組成を含むNi-Cr-Mo系合金の物性の解析結果をもとにして、塗布装置のエッジ部に使用する材料として必要な耐摩耗性と研削と研磨の加工の容易性とのバランスを検討した結果、HRC硬度(ロックウエル硬さCスケール)が45~52の材料が適切である知見を得た。
【0021】
すなわち、HRC硬度が45未満であると、白濁と減肉を抑制するための硬さが十分ではなく、すなわち、耐摩耗性が十分でなく、一方、HRC硬度が52を超えると、例えば、WC基超硬合金のようにスロットダイを製作するための研磨、研削の加工性が劣ってしまうのである。
【0022】
耐食性
本発明者の調査によれば、Ni-Cr-Mo系合金と同等以上の耐食性を有する材料として、市販されているCo-Cr-W系合金およびNi-Cr-Fe系合金を挙げることができる。
そこで、このCo-Cr-W系合金、Ni-Cr-Fe系合金について、以下に詳述する。
【0023】
Co-Cr-W系合金
Co-Cr-W系合金は、Ni-Cr-Mo系合金、SUS630析出硬化型ステンレス鋼と同等以上の耐食性を有し、しかも、簡易な熱処理を行うか、または、特段の熱処理を行うことなく、HRC硬度が45~52となるため、塗布装置のエッジ部の白濁と減肉を抑制することでき、かつ、該エッジ部とするための加工の手間が少なく、好ましい材料である。
【0024】
ここで、Co-Cr-W系合金の具体的な組成として、例えば、
Cr:28~32質量%、MoまたはW:7~9質量%、C:1.2~1.6質量%、Ni:3質量%未満、Fe:3質量%未満、Si:2質量%未満、残部:Coと不可避的不純物
を挙げることができ、
Cr:30質量%、W:8質量%、C:1.55質量%、Ni:3質量%未満、Fe:3質量%未満、Si:2質量%未満、残部:Coと不可避的不純物
および
Cr:31質量%、Mo:8質量%、C:1.55質量%、Ni:3質量%未満、Fe:3質量%未満、Si:2質量%未満、残部:Coと不可避的不純物
のものが好ましい。この好ましい組成のCo-Cr-W系合金は、特段の熱処理を行わなくてもHRC硬度が45~52である。
【0025】
Ni-Cr-Fe系合金
Ni-Cr-Fe系合金は、Ni-Cr-Mo系合金、SUS630析出硬化型ステンレス鋼と同等以上の耐食性を有している。そして、900~1000℃の溶体化処理後、600~700℃で時効処理を行えば、微細なNi-Nb、Al、Tiの各化合物を析出させることができ、45~52のHRC硬度を簡単に得ることができる。
そのため、塗布装置のエッジ部の白濁と減肉を抑制することでき、かつ、該エッジ部とするための加工の手間が少なく、好ましい材料である。
【0026】
ここで、Ni-Cr-Fe系合金の具体的な組成として、例えば、
Cr:15~23質量%、Mo:2~4質量%、Nb+Ta:4~8質量%、AlとTiがそれぞれ0.2質量%以上でAl+Tiが2質量%以下、C:0.1質量%以下、Si:0.5質量%以下、B:0.001~0.02質量%、Fe:30質量%以下、Mn:1質量%以下、残部:Niおよび不可避的不純物、
Cr:10~25質量%、Al:0.2~1.5質量%、Ti:1.5~3質量%、C:0.1質量%以下、Nb:0.1~3質量%、Zr:0.2質量%、Fe:20質量%以下、Si:0.05~0.8質量%、Al+Ti+Si:2~4.5質量%、残部:Niおよび不可避的不純物
を挙げることができる。
【0027】
塗布装置本体に使用される材料との熱膨張係数差
塗布装置のエッジ部に用いられる材料は、塗布装置本体(エッジ部以外)に使用される材料との熱膨張係数差が小さいものが好ましい。その理由は、熱膨張係数差が大きくなれば、エッジ部の変形や気密性が維持できなくなるためである。
塗布装置本体に使用される材料が、SUS630析出硬化型ステンレス鋼、SUS420J2マルテンサイト系ステンレス鋼であれば、その熱膨張係数は、それぞれ、1.08×10-5/K、1.03×10-5/Kである。また、工具鋼であれば、概ね1.00~1.40×10-5/Kである。
これに対して、前述のCo-Cr-W系合金の熱膨張係数は、おおよそ1.46×10-5/Kであり、Ni-Cr-Fe系合金の熱膨張係数は、おおよそ1.30×10-5/Kである。
【0028】
塗布装置本体に用いられる材料とエッジ部に用いられる材料との熱膨張係数の差により、バイメタル変形が生じるが、両者の熱膨張係数差が小さいほどその変形量は小さくなる。本発明者の検討によれば、塗布装置本体に使用されるSUS630析出硬化型ステンレス鋼、SUS420J2マルテンサイト系ステンレス鋼、工具鋼との熱膨張係数の差が0.50×10-5/K以下であると、十分にエッジ部の変形を防止し、気密性を維持することができることが判明した。
よって、エッジ部に超硬合金材料が用いられた場合に比して、これらCo-Cr-W系合金、Ni-Cr-Fe系合金を用いれば、十分にエッジ部の変形を防止し、気密性を維持することができる。
【実施例0029】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0030】
まず、本実施例で使用した塗布装置(スロットダイ)について説明する。
図1に該装置の斜視模式図を、
図2に
図1のA-A断面模式図、
図3に第1金型の斜視模式図、
図4に第2金型の斜視模式図をそれぞれ示す。
【0031】
第1のヘッド部材(台金部)2、第2のヘッド部材(台金部)3は、共に、SUS630析出硬化型ステンレス鋼(熱膨張係数:1.08×10-5/K)で製作されており、エッジ部材6を取り付ける凹部を有するエッジ部材取付け部4と台金部材5から構成されている。エッジ部材取付け部4の凹部の角部は、エッジ部材6の角部と干渉しないように溝8が設けられている。
【0032】
エッジ取付け部4のエッジ部材6には、ろう付けで雌ネジが切られた駒部品9が固定されている。この駒部品9に、台金部材7の斜面にあけられた穴を介してエッジ部材固定ボルト7が螺合して台金部材4とエッジ部材6が固定される。なお、前記穴は樹脂により塞がれている。
【0033】
図1に示すように、塗布装置1は、第1のヘッド部材2と第2のヘッド部材3から構成されており、両ヘッド部材は、シム15を介してヘッド部材固定ボルト10により固着されている。対向するエッジ部材6により塗布液流出口が形成されている。
【0034】
ここで、塗布液流出口の間隔は、この塗布液流出口の中心線と垂直な線に対して10度傾いている第1のヘッド部材2および第2ヘッド部材3に設けられた各エッジ部材6の裏面の駒部品9を介して押圧するエッジ部材固定7により調整される。
【0035】
なお、この実施例で使用した装置ではエッジ部材固定ボルトボルト7は10度傾いているが、この傾きの角度は0~10度の範囲で適宜選択されればよい。
【0036】
そして、塗布液注入口12へ外部から図示しない配管を介して塗布液が供給される。塗布装置1に供給された塗布液は、
図2に示されるように、流通部13を経て液留部14に貯留され、スペーサー14の働きによりスリット部11を経て、対向するエッジ部材6に至り塗布液排出口から排出される。
【0037】
次に、エッジ部の材質を表1に示す組成の材質とした実施例1~3、比較例1~7、参とした各塗布装置に対して、次の耐食試験1および2を行い、白濁や減肉の発生について比較を比較検討した。
【0038】
【0039】
腐食試験1
それぞれ、実施例1~2の材質のエッジ部材6、比較例1、2、4、を装着した塗布装置に対して、貯留槽から送液ポンプを介して塗布液を塗布液供給口から塗布液装置に導入し、塗布液流出口から流出させ、流出した塗布液は回収して再び貯留槽に戻して、塗布液が循環されるようにした。
【0040】
ここで、実施例1~2の材質のエッジ部材、および比較例1~3の材質のエッジ部材は、組成は次のとおりである。なお、比較例1以外は市販品である。
【0041】
実施例1(Ni-Cr-Fe系合金(1))
Cr:17~21質量%、Mo:2.8~3.3質量%、Nb+Ta:4.8~5.6質量%、Al:0.2~0.8質量%、Ti:0.65~1.15質量%、Al+Tiが1.95質量%以下、C:0.08質量%以下、Si:0.35質量%以下、B:0.006質量%、Fe:11~24質量%、Mn:0.35質量%以下、残部:Niおよび不可避的不純物
【0042】
実施例2(Ni-Cr-Fe系合金(2))
Cr:14~17質量%、Al:0.4~1質量%、Ti:2.25~2.75質量%、C:0.08質量%以下、Nb:0.7~1.2質量%、Fe:5~9質量%、Si:0.5質量%以下、Al+Ti+Si:2.65~4.25質量%、残部:Niおよび不可避的不純物
【0043】
比較例1(Co結合相のWC基超硬合金)
Cr:0.65質量%、Co:10質量%、残部WCおよび不可避的不純物
比較例2(Ni結合相のWC基超硬合金(1))
Ni:14質量%、Cr:1.1質量%、残部WCおよび不可避的不純物
比較例3(Ni結合相のWC基超硬合金(2))
Ni:20質量%、Cr:0.57質量%、残部WCおよび不可避的不純物
【0044】
塗布液は、活物質の黒鉛、溶媒として水、その他カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック、スチレンブタジエンゴムを含むごく普通の負極用電極材スラリー液であった。
【0045】
390時間の塗布液の循環を行い、エッジ部を目視観察した。その結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
表2から明らかなように、実施例1~2では、白濁も減肉も確認できなかったが、比較例1~3では、塗布液の触れていた表面部に腐食による白濁が目視で確認でき、表面粗さ測定機にて白濁部の粗さを測定した結果、0.2~0.3μmの材料の減肉が確認された。
また、実施例1~2は、塗布装置本体材料との熱膨張係数差がいずれも0.50×10-5/K以下であるため、十分にエッジ部の変形を防止し、気密性を維持することができたが、この熱膨張係数を満足しない比較例1~2は、試験時間末期にエッジ部の変形が起こった。
【0048】
腐食試験2
それぞれ、実施例1、3の材質のエッジ部材、および比較例1の材質のエッジ部材を装着した腐食試験1と同じ塗布装置と塗布液を使用した。
【0049】
ここで、実施例1および比較例1のエッジ部材の組成は前述のとおりであり、実施例3の材質のエッジ部材は、市販材であり、組成は次のとおりである。
実施例3(Co-Cr-W系合金)
Cr:28-32質量%、W:8質量%、C:1.4~1.8質量%、Ni:3質量%以下、Fe:2.5質量%以下、Si:2質量%以下、残部:Coと不可避的不純物
【0050】
1040時間の塗布液の循環を行い、エッジ部を目視観察した。その結果を表3に示す。
【0051】
【0052】
実施例1、3では、白濁も減肉も確認できなかったが、比較例1では、塗布液の触れていた表面部に腐食による白濁が目視で確認でき、表面粗さ測定機にて白濁部の粗さを測定した結果、0.5~1.5μmの材料の減肉が確認された。 また、実施例1、3は、塗布装置本体材料との熱膨張係数差がいずれも0.50×10-5/K以下であるため、十分にエッジ部の変形を防止し、気密性を維持することができたが、この熱膨張係数を満足しない比較例1は、試験時間末期にエッジ部の変形が起こった。