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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127280
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】防汚塗料組成物及び防汚塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/00 20060101AFI20240912BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C09D183/00
C09D5/16
C09D4/02
C09D5/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036322
(22)【出願日】2023-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】597091890
【氏名又は名称】日本ペイントマリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 智也
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 靖久
(72)【発明者】
【氏名】島田 守
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DL001
4J038JC38
4J038MA14
4J038NA05
4J038PA07
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】良好な防汚性能及び良好な耐衝撃性を有する防汚塗膜を形成することができる防汚塗料組成物を提供する。
【解決手段】シリコン原子含有樹脂を含む防汚塗料組成物であって、該シリコン原子含有樹脂は、式(I)で表される基、式(II)で表される基、式(III)で表される基及び式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位(A)と、(メタ)アクリロイル基を2以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルである単量体(b)から誘導される構成単位(B)とを含む防汚塗料組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン原子含有樹脂を含む防汚塗料組成物であって、
前記シリコン原子含有樹脂は、
下記式(I)で表される基、下記式(II)で表される基、下記式(III)で表される基及び下記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位(A)と、
(メタ)アクリロイルオキシ基を2以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルである単量体(b)から誘導される構成単位(B)と、
を含む、防汚塗料組成物。
【化1】

[式(I)中、a及びbは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、mは0~50のいずれかの整数を表し、nは3~270のいずれかの整数を表す。R~Rは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。]
【化2】

[式(II)中、c及びdは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、pは0~50のいずれかの整数を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、R又はRを表す。
は、
【化3】

(式中、xは0~200のいずれかの整数を表す。R23~R27は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)であり、
は、
【化4】

(式中、yは1~200のいずれかの整数を表す。R28及びR29は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)である。]
【化5】

[式(III)中、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、q及びsは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、rは3~270のいずれかの整数を表す。R~R12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。]
【化6】

[式(IV)中、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、t及びuは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、v及びwは、それぞれ独立して、0~70のいずれかの整数を表す。R13~R22は、同一又は異なって、アルキル基を表す。]
【請求項2】
前記シリコン原子含有樹脂は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体(c)から誘導される構成単位(C)をさらに有する、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記シリコン原子含有樹脂は、下記式(d)で表される単官能(メタ)アクリル酸エステルである単量体(d)から誘導される構成単位(D)をさらに有する、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
CH=C(R)(COOR) (d)
[式(d)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水酸基、カルボキシ基及びオキシアルキレン鎖からなる群より選択される1種以上を含む1価の基を表す。]
【請求項4】
前記式(d)におけるRは、オキシアルキレン鎖を含む1価の基を表す、請求項3に記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
前記構成単位(A)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、20質量%以上である、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
前記構成単位(B)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、15質量%以下である、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記シリコン原子含有樹脂は、下記式(V)で表される基及び下記式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する単量体(e)から誘導される構成単位(E)をさらに有する、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
【化7】

[式(V)中、Mは2価の金属原子を表し、R30は有機酸残基又はアルコール残基を表す。]
【化8】

[式(VI)中、Mは2価の金属原子を表す。]
【請求項8】
防汚剤を含まない、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
防汚剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
前記防汚剤は、亜酸化銅、ピリチオン金属塩、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル、及びメデトミジンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の防汚塗料組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の防汚塗料組成物によって形成される防汚塗膜。
【請求項12】
防錆塗料組成物によって形成される下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜上に積層される請求項1に記載の防汚塗料組成物によって形成される防汚塗膜とを有する複合塗膜。
【請求項13】
請求項11に記載の防汚塗膜又は請求項12に記載の複合塗膜を有する、船舶。
【請求項14】
請求項11に記載の防汚塗膜又は請求項12に記載の複合塗膜を有する、水中構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン原子含有樹脂を含む防汚塗料組成物に関する。また本発明は、該防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜及び該防汚塗膜を有する複合塗膜、並びに、該防汚塗膜又は該複合塗膜を備える船舶及び水中構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、その海水に接する部分に、フジツボ、イガイ、藻類等の生物が付着することによって効率のよい運行が妨げられ、燃料の浪費を招く等の問題が生じる。従来、生物の付着を防止するために、船舶の表面に防汚塗料組成物を塗布することが行われている。例えば国際公開第2011/046086号(特許文献1)には、ビヒクルとしてのシリコン原子含有樹脂と、熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤とを含む防汚塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/046086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜には、水(海水)中に浸漬したときに長期間、良好な防汚性能を発揮することが求められる。また、防汚塗膜には、塗膜劣化を生じにくい強靱性が求められる。
【0005】
本発明の目的は、良好な防汚性能及び良好な耐衝撃性を有する防汚塗膜を形成することができる防汚塗料組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、該防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜及び該防汚塗膜を有する複合塗膜、並びに、該防汚塗膜又は該複合塗膜を有する船舶及び水中構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の防汚塗料組成物、防汚塗膜、複合塗膜、船舶及び水中構造物を提供する。
〔1〕 シリコン原子含有樹脂を含む防汚塗料組成物であって、
前記シリコン原子含有樹脂は、
下記式(I)で表される基、下記式(II)で表される基、下記式(III)で表される基及び下記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位(A)と、
(メタ)アクリロイルオキシ基を2以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルである単量体(b)から誘導される構成単位(B)と、
を含む、防汚塗料組成物。
【化1】

[式(I)中、a及びbは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、mは0~50のいずれかの整数を表し、nは3~270のいずれかの整数を表す。R~Rは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。]
【化2】

[式(II)中、c及びdは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、pは0~50のいずれかの整数を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、R又はRを表す。
は、
【化3】

(式中、xは0~200のいずれかの整数を表す。R23~R27は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)であり、
は、
【化4】

(式中、yは1~200のいずれかの整数を表す。R28及びR29は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)である。]
【化5】

[式(III)中、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、q及びsは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、rは3~270のいずれかの整数を表す。R~R12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。]
【化6】

[式(IV)中、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、t及びuは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、v及びwは、それぞれ独立して、0~70のいずれかの整数を表す。R13~R22は、同一又は異なって、アルキル基を表す。]
〔2〕 前記シリコン原子含有樹脂は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体(c)から誘導される構成単位(C)をさらに有する、〔1〕に記載の防汚塗料組成物。
〔3〕 前記シリコン原子含有樹脂は、下記式(d)で表される単官能(メタ)アクリル酸エステルである単量体(d)から誘導される構成単位(D)をさらに有する、〔1〕又は〔2〕に記載の防汚塗料組成物。
CH=C(R)(COOR) (d)
[式(d)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水酸基、カルボキシ基及びオキシアルキレン鎖からなる群より選択される1種以上を含む1価の基を表す。]
〔4〕 前記式(d)におけるRは、オキシアルキレン鎖を含む1価の基を表す、〔3〕に記載の防汚塗料組成物。
〔5〕 前記構成単位(A)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、20質量%以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
〔6〕 前記構成単位(B)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、15質量%以下である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
〔7〕 前記シリコン原子含有樹脂は、下記式(V)で表される基及び下記式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する単量体(e)から誘導される構成単位(E)をさらに有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【化7】

[式(V)中、Mは2価の金属原子を表し、R30は有機酸残基又はアルコール残基を表す。]
【化8】

[式(VI)中、Mは2価の金属原子を表す。]
〔8〕 防汚剤を含まない、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
〔9〕 防汚剤をさらに含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
〔10〕 前記防汚剤は、亜酸化銅、ピリチオン金属塩、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル、及びメデトミジンからなる群より選択される少なくとも1種である、〔9〕に記載の防汚塗料組成物。
〔11〕 〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物によって形成される防汚塗膜。
〔12〕 防錆塗料組成物によって形成される下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜上に積層される〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物によって形成される防汚塗膜とを有する複合塗膜。
〔13〕 〔11〕に記載の防汚塗膜又は〔12〕に記載の複合塗膜を有する、船舶。
〔14〕 〔11〕に記載の防汚塗膜又は〔12〕に記載の複合塗膜を有する、水中構造物。
【発明の効果】
【0007】
良好な防汚性能及び良好な耐衝撃性を有する防汚塗膜を形成することができる防汚塗料組成物を提供することができる。また、該防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜及び該防汚塗膜を有する複合塗膜、並びに、該防汚塗膜又は該複合塗膜を有する船舶及び水中構造物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<防汚塗料組成物>
本発明に係る防汚塗料組成物(以下、単に「塗料組成物」ともいう。)は、後述する特定のシリコン原子含有樹脂を含む。本発明に係る塗料組成物によれば、水(海水)中に浸漬したときに良好な防汚性能を長期間発揮できる防汚塗膜(以下、単に「塗膜」ともいう。)を形成することが可能である。また、本発明に係る塗料組成物によれば、良好な耐衝撃性を有し、劣化を生じにくい塗膜を形成することが可能である。本発明に係る塗料組成物は、船舶等の水中移動体、又は水中構造物に適用される防汚塗料組成物として好適に用いることができる。
以下、塗料組成物に含まれる又は含まれ得る成分について詳細に説明する。
【0009】
(1)シリコン原子含有樹脂
塗料組成物に含まれるシリコン原子含有樹脂は、構成単位(A)と構成単位(B)とを含む。構成単位(A)は、式(I)で表される基、式(II)で表される基、式(III)で表される基及び式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位である。構成単位(B)は、(メタ)アクリロイル基を2以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルである単量体(b)から誘導される構成単位である。シリコン原子含有樹脂の好ましい一例は、上記シリコン原子含有基を有する(メタ)アクリル系樹脂である。
【0010】
シリコン原子含有樹脂は、単量体(a)及び単量体(b)以外の他の単量体から誘導される構成単位を含んでいてもよい。該構成単位の例は、
トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体(c)から誘導される構成単位(C)、
式(d)で表される単官能(メタ)アクリル酸エステルである単量体(d)から誘導される構成単位(D)、並びに
式(V)で表される基及び式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する単量体(e)から誘導される構成単位(E)
等である。
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とはメタクリロイル及びアクリロイルの少なくともいずれか一方を表し、「(メタ)アクリル」とはメタクリル及びアクリルの少なくともいずれか一方を表し、「(メタ)アクリレート」とはメタクリレート及びアクリレートの少なくともいずれか一方を表す。
【0012】
(1-1)シリコン原子含有基
単量体(a)が有するシリコン原子含有基は、式(I)で表される基、式(II)で表される基、式(III)で表される基及び式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0013】
式(I)中、a及びbは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、mは0~50のいずれかの整数を表し、nは3~270のいずれかの整数を表す。R~Rは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。
【0014】
式(II)中、c及びdは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、pは0~50のいずれかの整数を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、R又はRを表す。
において、xは0~200のいずれかの整数を表す。R23~R27は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
において、yは1~200のいずれかの整数を表す。R28及びR29は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
【0015】
式(III)中、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、q及びsは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、rは3~270のいずれかの整数を表す。R~R12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。
【0016】
式(IV)中、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、t及びuは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、v及びwは、それぞれ独立して、0~70のいずれかの整数を表す。R13~R22は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
【0017】
シリコン原子含有樹脂は、式(I)で表される基、式(II)で表される基、式(III)で表される基及び式(IV)で表される基からなる群より選択される2種以上のシリコン原子含有基を有していてもよい。この場合、式(I)で表される基を2種以上、式(II)で表される基を2種以上、式(III)で表される基を2種以上、及び/又は、式(IV)で表される基を2種以上有していてもよい。
【0018】
(1-2)単量体(a)
単量体(a)は、式(I’)で表される単量体(a1)、式(II’)で表される単量体(a2)、式(III’)で表される単量体(a3)及び式(IV’)で表される単量体(a4)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。式(I’)で表される単量体(a1)、式(II’)で表される単量体(a2)、式(III’)で表される単量体(a3)及び式(IV’)で表される単量体(a4)は、それぞれ、式(I)で表される基、式(II)で表される基、式(III)で表される基及び式(IV)で表される基を有するシリコン原子含有重合性単量体である。
【0019】
【化9】

[式(I’)中、R31は水素原子又はメチル基を表し、a、b、m、n及びR~Rは前記と同じ意味を表す。]
【化10】

[式(II’)中、R32は水素原子又はメチル基を表し、c、d、p及びR~Rは前記と同じ意味を表す。]
【化11】

[式(III’)中、R33及びR34は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、e、f、g、h、q、r、s及びR~R12は前記と同じ意味を表す。]
【化12】

[式(IV’)中、R35及びR36は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、i、j、k、l、t、u、v、w及びR13~R22は前記と同じ意味を表す。]
【0020】
上記のような単量体(a)を含む単量体組成物の重合により、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)及び単量体(a4)からなる群より選択される単量体(a)から誘導される構成単位(A)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、式(I)で表される基、式(II)で表される基、式(III)で表される基及び式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(a)から誘導される構成単位(A)を2種以上含んでいてもよい。
【0021】
単量体(a)は、単量体(a)に属する2種以上の単量体の組み合わせであってもよい。該2種以上の単量体は、互いに異なる分子量を有していてもよい。
【0022】
単量体(a1)は、式(I’)で表される。単量体(a)として単量体(a1)を用いることにより、式(I)で表されるシリコン原子含有基を側鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a1)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0023】
式(I’)〔式(I)についても同様。〕中のaは、好ましくは2又は3である。
bは、好ましくは2又は3である。
mは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、好ましくは0以上25以下、より好ましくは0以上20以下である。mは、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
nは、塗膜の防汚性能及び一般的な有機溶剤への溶解性の観点から、通常は3以上270以下、好ましくは35以上245以下、より好ましくは45以上205以下、さらに好ましくは45以上160以下である。
~Rにおける置換フェニル基及び置換フェノキシ基が有する置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子である。
~Rは、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0024】
単量体(a1)として市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、
JNC社製の「FM-0711」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:1,000)、「FM-0721」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:5,000)、「FM-0725」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:10,000)、
信越化学工業社製の「X-22-2404」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:420)、「X-22-174ASX」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:900)、「X-22-174BX」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:2,300)、「KF-2012」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:4,600)、「X-22-2426」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:12,000)
等が挙げられる。
【0025】
単量体(a2)は、式(II’)で表される。単量体(a)として単量体(a2)を用いることにより、式(II)で表されるシリコン原子含有基を側鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a2)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0026】
式(II’)〔式(II)についても同様。〕中のcは、好ましくは2又は3である。
dは、好ましくは2又は3である。
pは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、好ましくは0以上25以下、より好ましくは0以上20以下である。pは、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
【0027】
xは、一般的な有機溶剤への溶解性の観点から、通常は0以上200以下、好ましくは10以上150以下、より好ましくは20以上125以下である。
yは、一般的な有機溶剤への溶解性の観点から、通常は1以上200以下、好ましくは10以上150以下、より好ましくは20以上125以下である。
~R及びR23~R29におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
~Rは、いずれもアルキル基であることが好ましい。
【0028】
単量体(a2)として市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、JNC社製の「TM-0701T」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:423)等が挙げられる。
【0029】
単量体(a3)は、式(III’)で表される。単量体(a)として単量体(a3)を用いることにより、式(III)で表されるシリコン原子含有基(このシリコン原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)を有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a3)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0030】
式(III’)〔式(III)についても同様。〕中のe及びhは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
f及びgは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
q及びsは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、それぞれ、好ましくは0以上30以下、より好ましくは0以上25以下、さらに好ましくは0以上20以下である。q及びsは、それぞれ、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
rは、塗膜の防汚性能、一般的な有機溶剤への溶解性等の観点から、通常は3以上270以下であり、好ましくは35以上245以下、より好ましくは45以上205以下、さらに好ましくは45以上160以下である。
~R12における置換フェニル基及び置換フェノキシ基が有する置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子である。
~R12は、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0031】
単量体(a3)として市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、
JNC社製の「FM-7711」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:1,000)、「FM-7721」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:5,000)、「FM-7725」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:10,000)、
信越化学工業社製の「X-22-164」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:380)、「X-22-164AS」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:900)、「X-22-164A」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:1,720)、「X-22-164B」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:3,200)、「X-22-2445」(両末端アクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:3,200)、「X-22-164C」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:4,800)、「X-22-164E」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:7,800)
等が挙げられる。
【0032】
単量体(a4)は、式(IV’)で表される。単量体(a)として単量体(a4)を用いることにより、式(IV)で表されるシリコン原子含有基(このシリコン原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)を有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。単量体(a4)として市販品を用いてもよい。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a4)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0033】
式(IV’)〔式(IV)についても同様。〕中のi及びlは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
j及びkは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
t及びuは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、それぞれ、好ましくは0以上30以下、より好ましくは0以上25以下、さらに好ましくは0以上20以下である。q及びsは、それぞれ、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
v及びwは、塗膜の防汚性能、一般的な有機溶剤への溶解性等の観点から、それぞれ、通常は0以上70以下、好ましくは5以上60以下、より好ましくは10以上50以下である。
13~R22におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
【0034】
単量体(a)は、防汚性能を高める観点及び市販品の入手容易性の観点から、好ましくは、単量体(a1)及び単量体(a3)からなる群より選択される少なくとも1種である。単量体(a)として、単量体(a1)と単量体(a3)との組み合わせを用いることも好ましい。
【0035】
単量体(a)の分子量は、得られる塗膜の防汚性能を高める観点から、好ましくは400以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上、なおさらに好ましくは2,000以上、特に好ましくは2,500以上、なお特に好ましくは3,000以上、最も好ましくは4,000以上又は5,000以上であり、10,000以上であってもよい。単量体(a)の分子量は、通常20,000以下であり、好ましくは18,000以下、より好ましくは15,000以下、さらに好ましくは12,000以下である。単量体(a)の分子量が大きすぎると、シリコン原子含有樹脂の調製に用いる単量体の混合物である単量体組成物における単量体同士の不相溶や単量体組成物の重合によって生成する高分子同士の不相溶によって、塗料組成物から形成される塗膜がその成分において不均一になりやすい。
【0036】
単量体(a)の分子量は、数平均分子量であってもよい。単量体(a)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0037】
単量体(a)から誘導される構成単位(A)の含有量は、塗膜の防汚性能を高める観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、35質量%以上、40質量%以上又は50質量%以上であってもよい。構成単位(A)の含有量が20質量%以上であることにより、防汚剤を別途に含有させない場合においても十分な防汚性能を示す塗料組成物となり得る。また、塗膜物性や上述の塗膜の均一性の観点から、構成単位(A)の含有量は、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0038】
(1-3)単量体(b)
単量体(b)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を2以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルである単量体である。シリコン原子含有樹脂が単量体(a)から誘導される構成単位(A)と、単量体(b)から誘導される構成単位(B)とを含有することにより、良好な防汚性能と良好な耐衝撃性とを両立させることができる。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(b)から誘導される構成単位(B)を2種以上含んでいてもよい。
【0039】
単量体(b)としては、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレート、及び、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば式(b-1)で表される化合物(b-1)が挙げられる。
【化13】

[式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基が有する少なくとも1つの-CH-は、-O-又は-C(=O)-に置き換わっていてもよい。]
【0041】
は、好ましくはメチル基である。
としては、特に制限されないが、例えばアルキレン基、ポリ(オキシアルキレン)基等が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、例えば、1以上20以下、2以上12以下、又は3以上10以下であってよい。アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってよい。
【0042】
ポリ(オキシアルキレン)基は、-(オキシアルキレン基)-で表すことができる。xはオキシアルキレン基の繰り返し数を表し、例えば、1以上50以下、1以上23以下、2以上23以下、2以上20以下、2以上12以下、又は2以上10以下であってよい。オキシアルキレン基中のアルキレン基の炭素数は、例えば、2以上6以下、2以上4以下、又は2以上3以下であってよい。
【0043】
2官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(オキシアルキレン基の繰り返し数は例えば4以上23以下)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(オキシアルキレン基の繰り返し数は例えば4以上23以下)が挙げられる。
【0044】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコール変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコール変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートマレイン酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートマレイン酸モノエステル等が挙げられる。
【0045】
3官能以上の(メタ)アクリレートは、好ましくは3~6官能であり、より好ましくは3又は4官能である。
【0046】
単量体(b)から誘導される構成単位(B)の含有量は、良好な防汚性能と良好な耐衝撃性とを両立させる観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってもよい。構成単位(B)の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、なおさらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。構成単位(B)の含有量が大きすぎると、シリコン原子含有樹脂の調製時に、該樹脂がゲル化しやすい傾向にある。
【0047】
構成単位(A)の含有量に対する構成単位(B)の含有量の比は、構成単位(A)の含有量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上50質量部以下、より好ましくは1質量部以上40質量部以下、さらに好ましくは2質量部以上30質量部以下である。
【0048】
(1-4)単量体(c)
シリコン原子含有樹脂は、単量体(c)から誘導される構成単位(C)をさらに含有することができる。単量体(c)は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体である。シリコン原子含有樹脂が単量体(c)から誘導される構成単位(C)をさらに含有することにより、塗膜の防汚性能をさらに向上させることができる。
【0049】
トリオルガノシリルオキシカルボニル基としては、式(VII)で表される基が挙げられる。
【化14】

[式(VII)中、R40、R41及びR42は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素残基を表す。]
【0050】
単量体(c)は、好ましくは、式(VII’)で表される単量体(c1)である。
【化15】

[式(VII’)中、R43は水素原子又はメチル基を表し、R40、R41及びR42は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。]
【0051】
単量体(c1)を含む単量体組成物の重合により、単量体(c1)から誘導される構成単位(C)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基として-C(=O)-O-SiR404142を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(c)から誘導される構成単位(C)を2種以上含んでいてもよい。例えば、シリコン原子含有樹脂は、異なるトリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する構成単位(C)を2種以上含んでいてもよい。
【0052】
式(VII’)〔式(VII)についても同様。〕中のR40、R41及びR42は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素残基(1価の炭化水素基)を表す。炭素数1~20の炭化水素残基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等の炭素数が20以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基等の置換基を有していてもよい環状アルキル基;アリール基、置換アリール基等の置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
【0053】
置換基を有する環状アルキル基としては、ハロゲン、炭素数18程度までのアルキル基、アシル基、ニトロ基又はアミノ基等で置換された環状アルキル基が挙げられる。置換基を有するアリール基としては、ハロゲン、炭素数18程度までのアルキル基、アシル基、ニトロ基又はアミノ基等で置換されたアリール基が挙げられる。
【0054】
中でも、塗膜の防汚性能を長期間安定して維持できる傾向にあることから、R40、R41及びR42の1以上がiso-プロピル基であることが好ましく、R40、R41及びR42のすべてがiso-プロピル基であることがより好ましい。
【0055】
シリコン原子含有樹脂が単量体(c)から誘導される構成単位(C)を含む場合、構成単位(C)の含有量は、塗膜の防汚性能の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは3質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上35質量%以下、なおさらに好ましくは5質量%以上25質量%以下である。
【0056】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(C)を含む場合、構成単位(A)の含有量に対する構成単位(C)の含有量の比は、構成単位(A)の含有量100質量部に対して、好ましくは2質量部以上100質量部以下、より好ましくは5質量部以上90質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上80質量部以下であり、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、又は40質量部以下であってもよい。
【0057】
(1-5)単量体(d)
シリコン原子含有樹脂は、単量体(d)から誘導される構成単位(D)をさらに含有することができる。単量体(d)は、式(d)で表される単官能(メタ)アクリル酸エステルである。シリコン原子含有樹脂が単量体(d)から誘導される構成単位(D)をさらに含有することにより、塗膜の防汚性能をさらに向上させることができる。さらに、単量体(d)から誘導される構成単位(D)を含有させることにより、塗膜消耗速度を適度に高めることができる。
CH=C(R)(COOR) (d)
【0058】
式(d)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水酸基、カルボキシ基及びオキシアルキレン鎖からなる群より選択される1種以上を含む1価の基を表す。シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(d)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。また、単量体(d)は、水酸基、カルボキシ基及びオキシアルキレン鎖からなる群より選択される2種以上の基を有する単量体であってもよい。
【0059】
塗膜の防汚性能を高める観点から、単量体(d)が有するRは、少なくともオキシアルキレン鎖を含むことが好ましい。オキシアルキレン鎖に含まれるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし分岐鎖状であってもよく、該アルキレン基の炭素数は、例えば1以上24以下、好ましくは1以上13以下、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは2又は3である。該アルキレン基としては、例えば、-CH-、-(CH-、-(CH-、-CH(CH)CH-、-CHCH(CH)-等が挙げられる。
【0060】
単量体(d)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエステル部の炭素数が1以上20以下の水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エステル部の炭素数が1以上20以下であるカルボキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;メトキシエチル(メタ)アクリレート等のエステル部の炭素数が1以上20以下である(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート〔-OC-の繰り返し数は例えば1~50、好ましくは1~24、より好ましくは2~14、さらに好ましくは2~9〕、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート〔-OC-の繰り返し数は例えば1~50、好ましくは1~24、より好ましくは2~14、さらに好ましくは2~9〕等のエステル部がポリアルキレングリコール鎖を含む(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸等のエステル部がポリアルキレングリコール鎖及びカルボキシ基を含む(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0061】
上記の中でも、単量体(d)は、エステル部の炭素数が1以上20以下である(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、エステル部がポリアルキレングリコール鎖を含む(メタ)アクリル酸エステル、及び/又は、エステル部がポリアルキレングリコール鎖及びカルボキシ基を含む(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0062】
シリコン原子含有樹脂が単量体(d)から誘導される構成単位(D)を含む場合、構成単位(D)の含有量は、塗膜の防汚性能の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってもよい。
【0063】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(D)を含む場合、構成単位(A)の含有量に対する構成単位(D)の含有量の比は、構成単位(A)の含有量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上80質量部以下、より好ましくは1質量部以上70質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上60質量部以下、なおさらに好ましくは2質量部以上50質量部以下であり、45質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、又は20質量部以下であってもよい。
【0064】
(1-6)単量体(e)
シリコン原子含有樹脂は、式(V)で表される基及び式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する単量体(e)から誘導される構成単位(E)をさらに有していてもよい。シリコン原子含有樹脂が構成単位(E)をさらに有することにより、塗膜の防汚性能をさらに向上させることができる。
シリコン原子含有樹脂は、式(V)で表される基及び式(VI)で表される基の双方を有していてもよい。
【0065】
単量体(e)は、式(V’)で表される単量体(e1)及び式(VI’)で表される単量体(e2)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化16】

[式(V’)中、R37は水素原子又はメチル基を表し、M及びR30は前記と同じ意味を表す。]
【化17】

[式(VI’)中、R38及びR39は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Mは前記と同じ意味を表す。]
【0066】
上記のような単量体(e)を含む単量体組成物の重合により、単量体(e1)及び単量体(e2)からなる群より選択される単量体(e)から誘導される構成単位(E)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、式(V)で表される基及び式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(e)から誘導される構成単位(E)を2種以上含んでいてもよい。
【0067】
式(V’)〔式(V)についても同様。〕及び式(VI’)〔式(VI)についても同様。〕中の2価の金属原子Mとしては、Mg、Zn、Cu等を挙げることができ、好ましくはZn又はCuである。
式(V’)〔式(V)についても同様。〕中のR30は、好ましくは有機酸残基である。
【0068】
単量体(e1)は、式(V’)で表される。単量体(e)として単量体(e1)を用いることにより、式(V)で表される金属原子含有基をさらに有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
【0069】
30において、有機酸残基を形成する有機酸としては、例えば、酢酸、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキシル酸、カプリン酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、α-ナフトエ酸、β-ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸等の一塩基有機酸が挙げられる。
【0070】
中でも、有機酸残基が脂肪酸残基であると、長期にわたってクラックや剥離のない塗膜を維持することができる傾向にあり好ましい。特に、単量体(e1)として、可塑性の高いオレイン酸亜鉛(メタ)アクリレート又はバーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0071】
また、他の好ましい有機酸として、芳香族有機酸以外の一塩基環状有機酸が挙げられる。一塩基環状有機酸としては、例えば、ナフテン酸等のシクロアルキル基を有する有機酸、三環式樹脂酸等の樹脂酸、及びこれらの塩が挙げられる。
【0072】
三環式樹脂酸としては、例えば、ジテルペン系炭化水素骨格を有する一塩基酸が挙げられる。ジテルペン系炭化水素骨格を有する一塩基酸としては、例えば、アビエタン、ピマラン、イソピマラン、ラブダン骨格を有する化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸、及びこれらの塩等が挙げられる。中でも、塗膜の防汚性能等の観点から、アビエチン酸、水添アビエチン酸、及びこれらの塩が好ましい。
【0073】
一塩基環状有機酸として、例えば、松脂、松の樹脂酸等を使用することもできる。このようなものとしては、例えば、ロジン類、水添ロジン類、不均化ロジン類、ナフテン酸等が挙げられる。ロジン類とは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等である。ロジン類、水添ロジン類及び不均化ロジン類は、廉価で入手しやすく、取り扱い性に優れ、防汚性能を向上させやすい点で好ましい。
【0074】
一塩基環状有機酸の酸価は、好ましくは100mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であり、より好ましくは120mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは140mgKOH/g以上185mgKOH/g以下である。
30を形成する一塩基環状有機酸として、上記範囲内の酸価を有するものを使用すると、塗膜の良好な防汚性能をより長期間維持できる傾向にある。
単量体(e1)が有する有機酸残基は、1種の有機酸から形成されていてもよく、2種以上の有機酸から形成されていてもよい。
【0075】
30として有機酸残基を有する単量体(e1)の製造方法としては、例えば、無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、非重合性有機酸(上記の有機酸残基を構成する有機酸)とを、アルコール系化合物を含有する有機溶剤中で反応させる方法が挙げられる。
単量体(e1)から誘導される構成単位(E)は、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体を含む単量体組成物を重合させることにより得られる樹脂と、金属化合物と、非重合性有機酸(上記の有機酸残基を構成する有機酸)とを反応させる方法によっても形成することができる。
【0076】
単量体(e2)は、式(VI’)で表される。単量体(e)として単量体(e2)を用いることにより、式(VI)で表される金属原子含有基(この金属原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)をさらに有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
【0077】
単量体(e2)としては、例えば、アクリル酸マグネシウム[(CH=CHCOO)Mg]、メタクリル酸マグネシウム[(CH=C(CH)COO)Mg]、アクリル酸亜鉛[(CH=CHCOO)Zn]、メタクリル酸亜鉛[(CH=C(CH)COO)Zn]、アクリル酸銅[(CH=CHCOO)Cu]、メタクリル酸銅[(CH=C(CH)COO)Cu]等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して用いることができる。
【0078】
単量体(e2)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸のような重合性不飽和有機酸と、金属化合物とをアルコール系化合物を含有する有機溶剤中で水とともに反応させる方法が挙げられる。この場合、反応物中の水の含有量を0.01質量%以上30質量%以下に調整することが好ましい。
【0079】
シリコン原子含有樹脂は、単量体(e1)から誘導される構成単位及び単量体(e2)から誘導される構成単位の双方を含んでいてもよい。
【0080】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(E)を含む場合、構成単位(E)の含有量は、塗膜の防汚性能等の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは2質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは4質量%以上20質量%以下である。
【0081】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(E)を含む場合、構成単位(A)の含有量に対する構成単位(E)の含有量の比は、構成単位(A)の含有量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上50質量部以下、より好ましくは1質量部以上40質量部以下、さらに好ましくは2質量部以上35質量部以下、なおさらに好ましくは5質量部以上30質量部以下であり、25質量部以下、20質量部以下、又は15質量部以下であってもよい。
【0082】
(1-7)他の単量体
シリコン原子含有樹脂は、上記以外の他の単量体(f)から誘導される構成単位(F)を含んでいてもよい。シリコン原子含有樹脂は、構成単位(F)を2種以上含んでいてもよい。
【0083】
他の単量体(f)としては、単量体(a)~(e)と共重合可能な不飽和単量体である限り特に限定されず、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、m-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、m-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の、単量体(b)及び(d)に属さない(メタ)アクリル酸エステル単量体;
ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級又は第二級アミノ基含有ビニル単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル単量体;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環族系塩基性単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のその他のビニル系単量体
等が挙げられる。
シリコン原子含有樹脂は、好ましくは、メタクリル酸メチルを含む。
【0084】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(F)を含む場合、構成単位(F)の含有量は、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、通常0.1質量%以上85質量%以下であり、好ましくは1質量%以上80質量%以下、より好ましくは5質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上70質量%以下、なおさらに好ましくは20質量%以上70質量%以下である。構成単位(F)の含有量が0.1質量%以上であることにより、得られる塗料組成物及び塗膜の諸特性のバランスを整えることが可能となる。構成単位(F)の含有量が85質量%以下であることにより、防汚剤を別途に含有させない場合においても十分な防汚性能を示す塗膜を形成し得る。
【0085】
(1-8)シリコン原子含有樹脂のガラス転移温度及び分子量
シリコン原子含有樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば0℃以上80℃以下である。塗膜の耐衝撃性を高める観点から、シリコン原子含有樹脂のTgは、好ましくは10℃以上70℃以下、より好ましくは20℃以上60℃以下である。また、塗膜のタック性を抑制する観点から、シリコン原子含有樹脂のTgは、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上である。
【0086】
本明細書において、ガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される温度である。
【0087】
シリコン原子含有樹脂の数平均分子量は、通常2,000以上100,000以下であり、好ましくは3,000以上50,000以下であり、より好ましくは5,000以上30,000である。シリコン原子含有樹脂の数平均分子量が2,000以上であると、塗料組成物から形成される塗膜が防汚性能を発現できる傾向にある。シリコン原子含有樹脂の数平均分子量が100,000以下であると、シリコン原子含有樹脂が塗料組成物に均一に分散しやすい傾向にある。シリコン原子含有樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0088】
(1-9)シリコン原子含有樹脂の製造方法
シリコン原子含有樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記した単量体を混合した単量体組成物をラジカル開始剤の存在下に60~180℃の反応温度で5~14時間反応させることによって製造することができる。重合反応の条件は適宜調整してよい。
【0089】
ラジカル開始剤としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、tert-ブチルパーオキ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0090】
重合方法としては、有機溶剤中で行う溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。シリコン原子含有樹脂の製造効率等の観点から、好ましくは溶液重合法である。有機溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸n-ブチル等の一般の有機溶剤が挙げられる。
【0091】
(1-10)シリコン原子含有樹脂の含有量
塗料組成物におけるシリコン原子含有樹脂の含有量は、塗料組成物に含有される固形分中、好ましくは25質量%以上99質量%以下、より好ましくは30質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以上97質量%以下であり、90質量%以下、80質量%以下又は70質量%以下であってもよい。シリコン原子含有樹脂の含有量が25質量%未満であると、防汚性及び下地に対する塗膜の密着性が低下する傾向にある。塗料組成物に含有される固形分とは、塗料組成物に含まれる溶剤以外の成分の合計をいう。
【0092】
(2)塗料組成物が含有し得る他の成分
塗料組成物は、シリコン原子含有樹脂以外の他の成分を1種又は2種以上含むことができる。他の成分としては、例えば、消泡剤、ダレ止め剤、可塑剤、防汚剤、水結合剤、色分かれ防止剤、沈降防止剤、塗膜消耗調整剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、粘度調整剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤、顔料及び溶剤等が挙げられる。これらの添加剤、顔料及び溶剤は、それぞれ、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
消泡剤とは、形成されようとする泡の表面を不均一にし、泡の形成を抑える作用を有する剤、又は、形成された泡の表面を局部的に薄くし、泡を破る作用を有する剤である。消泡剤としては、シリコン系消泡剤、非シリコン系消泡剤が挙げられる。シリコン系消泡剤は、界面活性を有するポリシロキサン又はその変性物を含む消泡剤であり、非シリコン系消泡剤は、シリコン系消泡剤以外の消泡剤(ポリシロキサン又はその変性物を含まない消泡剤)である。シリコン系消泡剤は、フッ素変性シリコン系消泡剤であってもよい。フッ素変性シリコン系消泡剤とは、フッ素変性されたポリシロキサンを含む消泡剤である。
【0094】
非シリコン系消泡剤としては、高級アルコール系、高級アルコール誘導体系、脂肪酸系、脂肪酸誘導体系、パラフィン系、(メタ)アクリル重合体系、ミネラルオイル系等が挙げられる。シリコン系消泡剤としては、オイル型、コンパウンド型、自己乳化型、エマルジョン型等のタイプが挙げられる。
【0095】
消泡剤として、市販品が用いられてもよい。非シリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、BYK社製の「BYK-030」等のミネラルオイル系消泡剤;楠本化成社製の「ディスパロンOX68」、BYK社製の「BYK-1790」等のポリマー系消泡剤等が挙げられる。フッ素変性シリコン系消泡剤以外のシリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KF-96」、BYK社製の「BYK-081」等のシリコーンオイル系消泡剤等が挙げられる。フッ素変性シリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、BYK社製の「BYK-063」、「BYK-065」、「BYK-066N」、信越化学工業社製の「FA-630」等のフロロシリコーンオイル系消泡剤等が挙げられる。
【0096】
消泡剤の含有量は、消泡性向上の観点から、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、0.002質量部以上0.60質量部以下、より好ましくは0.004質量部以上0.55質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以上0.40質量部以下、なおさらに好ましくは0.01質量部以上0.20質量部以下である。
【0097】
ダレ止め剤とは、塗料組成物を被塗物に塗布してから塗膜の乾燥が完了するまでの間に生じ得る塗料組成物のタレの発生を抑制する作用を有する剤である。ダレ止め剤としては、例えば、アマイド系ダレ止め剤;ベントナイト系ダレ止め剤;酸化ポリエチレンワックス等のポリエチレンワックス;水添ヒマシ油ワックス;長鎖脂肪酸エステル系重合体;ポリカルボン酸;シリカ微粒子系ダレ止め剤;及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0098】
アマイド系ダレ止め剤としては、脂肪酸アマイドワックス、ポリアマイドワックス等のアマイドワックス系のダレ止め剤等が挙げられる。脂肪酸アマイドワックスとしては、例えば、ステアリン酸アマイドワックスやオレイン酸アマイドワックス等が挙げられる。
【0099】
ダレ止め剤として、市販品が用いられてもよい。アマイドワックス系ダレ止め剤の市販品としては、例えば、共栄社化学社製の「ターレン7200-20」、楠本化成社製の「ディスパロン6900-20X」及び「ディスパロンRE-8000」、HS CHEM社製「モノラル3300」等が挙げられる。その他のダレ止め剤の市販品としては、例えば、エレメンティスジャパン社製の「ベントン38」、BYK社製の「TIXOGEL」等の有機ベントナイト系ダレ止め剤等が挙げられる。
【0100】
ダレ止め剤の含有量は、ダレ止め性向上の観点から、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上6.0質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上5.0質量部以下、さらに好ましくは0.25質量部以上4.0質量部以下である。
【0101】
塗料組成物は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤を含有させることにより、塗膜の耐クラック性を向上させることができる。また、塗膜のポリッシングレート(研磨速度)を適度な速度に制御することが可能になるため、防汚性能の点においても有利となり得る。
【0102】
可塑剤としては、例えば、塩素化パラフィン;塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン;ポリビニルエーテル;ポリプロピレンセバケート;部分水添ターフェニル;ポリ酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、(メタ)アクリル酸エチル系共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル系共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル系共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエーテルポリオール;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル-イソブチルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-イソプロピルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-エチルビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;シリコーンオイル;油脂及びその精製物(ワックス、ひまし油等);ワセリン;流動パラフィン;ロジン、水添ロジン、ナフテン酸、脂肪酸及びこれらの2価金属塩;ジオクチルフタレート(DOP)、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル;トリクレジルリン酸(トリクレジルホスフェート)、トリアリールリン酸(トリアリールホスフェート)、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ化合物;ジオクチルスズラウリレート、ジブチルスズラウリレート等の有機スズ化合物;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等が挙げられる。
【0103】
上記の中でも、シリコン原子含有樹脂との相溶性や塗膜の耐クラック性の観点から、塩素化パラフィン、ポリビニルエーテル、ポリエーテルポリオール、ロジン、塩化ビニル-イソブチルビニルエーテル共重合体、フタル酸エステル、リン酸エステルが好ましい。
【0104】
塗料組成物における可塑剤の含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部以上100質量部以下、より好ましくは5質量部以上50質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上40質量部以下である。可塑剤の含有量が前記範囲内にあることで、得られる塗膜の防汚性及び耐クラック性が向上するという利点がある。
【0105】
本発明の塗料組成物から形成される塗膜は、シリコン原子含有樹脂に基づく防汚効果により、良好な防汚性能を発揮し得るため、必ずしもシリコン原子含有樹脂とは別途に防汚剤を含有する必要はない。ただし、防汚性能をさらに高めるために、あるいは、防汚性能の長期持続性をより高めるために、必要に応じて、塗料組成物に防汚剤を含有させてもよい。防汚剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、無機化合物、金属を含む有機化合物、及び金属を含まない有機化合物等が挙げられる。
【0106】
防汚剤としては、例えば、酸化亜鉛;亜酸化銅;マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート;ジンクジメチルジチオカーバメート;2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン;2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル;N,N-ジメチルジクロロフェニル尿素;ジンクエチレンビスジチオカーバーメート;ロダン銅(チオシアン酸第一銅);4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(4,5,-ジクロロ-2-n-オクチル-3(2H)イソチアゾロン);N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド;N,N’-ジメチル-N’-フェニル-(N-フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド;2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩(ジンクピリチオン)又は銅塩(銅ピリチオン)等のピリチオン金属塩;テトラメチルチウラムジサルファイド;2,4,6-トリクロロフェニルマレイミド;2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン;3-ヨード-2-プロピルブチルカーバーメート;ジヨードメチルパラトリスルホン;フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド;2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾール;トリフェニルボロンピリジン塩;ステアリルアミン-トリフェニルボロン;ラウリルアミン-トリフェニルボロン;ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート;1,1-ジクロロ-N-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-1-フルオロ-N-フェニルメタンスルフェンアミド;1,1-ジクロロ-N-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-1-フルオロ-N-(4-メチルフェニル)メタンスルフェンアミド;N’-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N’-ジメチル尿素;N’-t-ブチル-N-シクロプロピル-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン;4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル;4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(一般名:メデトミジン)が挙げられる。
【0107】
中でも、防汚剤は、亜酸化銅、ピリチオン金属塩、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル、及びメデトミジンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0108】
塗料組成物が防汚剤を含む場合、塗料組成物における防汚剤の含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部であり、0.5質量部以上、1質量部以上、又は5質量部以上であってもよい。塗料組成物における防汚剤の含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下であり、80質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、又は10質量部以下であってもよい。防汚剤の含有量が前記範囲内にあることで、得られる塗膜の諸性能に悪影響を及ぼすことなく、防汚性能をさらに高め、かつ防汚性能の長期持続性をより高めることができる。
【0109】
顔料としては、例えば、沈降性バリウム、タルク、クレー、白亜、シリカホワイト、アルミナホワイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム等の体質顔料;酸化チタン、酸化ジルコン、塩基性硫酸鉛、酸化スズ、カーボンブラック、白鉛、黒鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化クロム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄(弁柄)、黒色酸化鉄、アゾ系赤・黄色顔料、クロムイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、キナクリドン等の着色顔料等が挙げられる。
【0110】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロペンタン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ホワイトスピリット等の炭化水素類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;n-ブタノール、プロピルアルコール等のアルコール等が挙げられる。
【0111】
(3)塗料組成物の調製
塗料組成物は、例えば、シリコン原子含有樹脂又はこれを含有する樹脂組成物(例えば、シリコン原子含有樹脂を含む溶液又は分散液)に、必要に応じてその他の成分を添加し、ボールミル、ペブルミル、ロールミル、サンドグラインドミル、高速ディスパー等の混合機を用いて混合することにより、調製することができる。
【0112】
<防汚塗膜及び複合塗膜>
本発明に係る防汚塗膜(以下、単に「塗膜」ともいう。)は、本発明に係る上記防汚塗料組成物から形成される塗膜である。塗膜は、防汚性能を有する防汚塗膜である。該塗膜は、本発明に係る防汚塗料組成物から形成されるため、良好な防汚性能と良好な耐衝撃性とを示すことができる。
【0113】
塗膜は、上記塗料組成物を、常法に従って被塗物の表面に塗布した後、必要に応じて常温下又は加熱下で溶剤を揮散除去することによって形成することができる。塗料組成物の塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り、ローラー、静電塗装、電着塗装等の従来公知の方法が挙げられる。塗膜の厚みは、例えば50μm以上500μm以下であり、好ましくは100μm以上400μm以下である。
【0114】
被塗物としては、例えば、船舶、水中構造物が挙げられる。水中構造物としては、養殖用魚網等の各種漁網及びその他の漁具;港湾施設;オイルフェンス;発電所等の取水設備;冷却用導水管等の配管;橋梁;浮標;工業用水系施設;海底基地等が挙げられる。被塗物は、好ましくは水中移動体であり、水中移動体としては、例えば、船舶、漁網、漁具等が挙げられる。
【0115】
上記被塗物の塗装表面は、必要に応じて前処理されたものであってもよく、また、被塗物上に形成された防錆塗料組成物(防食塗料組成物)等の他の塗料組成物によって形成される下塗り塗膜上に、本発明の塗料組成物によって形成される塗膜を形成して複合塗膜としてもよい。
【0116】
本発明の塗料組成物によれば、ビヒクルであるシリコン原子含有樹脂自体が良好な防汚性能を示し得るため、別途に配合される防汚剤をなくすか又はその配合量を低減することが可能である。したがって、本発明の塗料組成物によれば、クリヤーな(透明性の高い)防汚塗膜を形成することが可能である。
【0117】
例えば、防錆塗料組成物等によって形成される下塗り塗膜と、該下塗り塗膜上に形成された本発明の塗膜とを有する複合塗膜において、本発明の塗膜をクリヤーな防汚塗膜とし、防錆塗料組成物として各種色相のものを用いることにより、防汚性能を有しつつ、複合塗膜形成表面が従来にない色相を有する船舶等の被塗物を提供することができる。また、防錆塗料組成物等によって形成される下塗り塗膜とクリヤーな防汚塗膜との間に、各種色相を有する塗料によって形成される中塗り塗膜を形成することによっても、従来にない色相を有する被塗物を提供することができる。
【0118】
中塗り塗膜を形成する塗料組成物としては、例えば、防汚塗料組成物、エポキシ樹脂系塗料組成物、ウレタン樹脂系塗料組成物、(メタ)アクリル樹脂系塗料組成物、塩化ゴム系塗料組成物、アルキッド樹脂系塗料組成物、シリコン樹脂系塗料組成物、フッ素樹脂系塗料組成物等の各種塗料組成物を用いることができる。中塗り塗膜を形成する防汚塗料組成物は、本発明に係る塗料組成物であってもよいし、比較的多量の防汚剤を含む従来の防汚塗料組成物等の他の防汚塗料組成物であってもよい。
【0119】
中塗り塗膜は、下塗り塗膜の表面全体に形成されてもよいし、表面の一部に形成されてもよい。中塗り塗膜及び下塗り塗膜は、使用に供された旧い塗膜であってもよい。この場合、本発明の塗料組成物及びそれから形成される塗膜は、旧塗膜の補修用として用いられてもよい。
【実施例0120】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0121】
<樹脂製造例S1:シリコン原子含有樹脂(S1)の製造>
温度計、冷却管、かくはん機、滴下ロート、窒素導入管、温度制御機を備えた4つ口フラスコに、溶剤としてキシレン 80.0質量部を加え、95℃に保った。そこに、単量体(a)としてKF-2012 40.0質量部、単量体(b)としてNPG 1.0質量部、単量体(f)としてt-BMA 15.0質量部、n-BMA 30.0質量部並びにMMA 14.0質量部、溶剤としてキシレン 10.0質量部及びラジカル重合開始剤としてのtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 1.1質量部を予め混合した混合液を滴下ロートに入れ、これを3時間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後60分間保温した。その後、キシレン 10.0質量部及びtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 0.2質量部からなる混合液を、30分間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後1.5時間保温することにより、シリコン原子含有樹脂(S1)を含む樹脂組成物(溶液)を得た。
【0122】
<樹脂製造例S2~S13:シリコン原子含有樹脂(S2)~(S13)の製造>
モノマー種及び量を表1又は表2のとおり変更したこと以外は、製造例S1と同様にして、シリコン原子含有樹脂(S2)~(S13)を含む樹脂組成物(溶液)を得た。
【0123】
<樹脂製造例T1~T12:シリコン原子含有樹脂(T1)~(T12)の製造>
モノマー種及び量を表3又は表4のとおり変更したこと以外は、製造例S1と同様にして、樹脂(T1)~(T12)を含む樹脂組成物(溶液)を得た。
【0124】
以下、樹脂製造例S1~S13で得られた樹脂をそれぞれ「樹脂S1~S13」ともいい、樹脂製造例S1~S13で得られた樹脂組成物(溶液)をそれぞれ「樹脂組成物S1~S13」ともいう。樹脂製造例T1~T12で得られた樹脂をそれぞれ「樹脂T1~T12」ともいい、樹脂製造例T1~T12で得られた樹脂組成物(溶液)をそれぞれ「樹脂組成物T1~T12」ともいう。
【0125】
樹脂製造例S1~S13及びT1~T12において用いた単量体及びその使用量(質量部)を表1~表4に示す。
【0126】
得られた樹脂S1~S13及びT1~T12のガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、並びに、樹脂組成物S1~S13及びT1~T12の固形分濃度を測定した。結果を表1~表4に併せて示す。測定方法は次のとおりとした。
【0127】
〔i〕ガラス転移温度(Tg)
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。測定条件は次のとおりとした。
装置:日立ハイテクサイエンス社製「示唆走査熱量計SII X-DSC7000」
試料量:5.00mg
リファレンス:Al(酸化アルミニウム)
試料容器:アルミパン
測定温度範囲:-50~150℃
昇温温度:10℃/min
【0128】
〔ii〕数平均分子量(Mn)
単量体(a)及び樹脂の数平均分子量(Mn)は、GPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。測定条件は次のとおりとした。
装置:東ソー社製「HLC-8220GPC」
カラム:TSKgel SuperHZM-M ×2本
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:35℃
検出器:RI
【0129】
〔iii〕固形分濃度
下記式に従って、樹脂組成物の固形分を算出した。
固形分濃度(質量%)=100×(溶剤を除く樹脂組成物の調製に使用した原料の合計質量)/(得られた樹脂組成物の質量)
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
<樹脂製造例S14:シリコン原子含有樹脂(S14)の製造>
温度計、冷却管、かくはん機、滴下ロート、窒素導入管、温度制御機を備えた4つ口フラスコに、溶剤としてのキシレン 55.0質量部を加え、100℃に保った。そこに、単量体(a)としてKF-2012 40.0質量部、FM-0711 8.0質量部、単量体(b)としてNPG 1.0質量部、3G 1.0質量部、単量体(d)としてCB-1 1.0質量部、単量体(f)としてt-BMA 20.0質量部、n-BMA 20.0質量部、MMA 4.0質量部並びにAA 5.0質量部、溶剤としてのキシレン 20.0質量部及びラジカル重合開始剤としてのtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 1.0質量部からなる混合液を滴下ロートに加え、これを3時間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後90分間保温した。その後、キシレン 25.0質量部及びtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 0.3質量部からなる混合液を30分間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後1時間保温することにより、カルボキシル基を有する樹脂を含む樹脂組成物(溶液)(固形分濃度:50質量%)を得た。
【0135】
次いで、同様の反応容器に、上記樹脂組成物 100質量部、酢酸銅(II) 6.5質量部、化合物K1〔水素添加ロジン(ハイペールCH、酸価160mgKOH/g、荒川化学工業社製)〕 12.5質量部及びキシレン60.0質量部を加えてリフラックス温度まで昇温し、留出する酢酸、水及び溶剤の混合液を除去しつつ、同量のキシレンを補充しながら、反応を18時間継続した。反応の終点は、留出した溶剤中の酢酸量を定量することにより決定した。反応液を冷却後、n-ブタノール及びキシレンを加えて、樹脂を含む樹脂組成物(溶液)(固形分濃度:50質量%)を得た。この樹脂組成物に含まれる樹脂は、上記カルボキシル基を有する樹脂のカルボキシル基が-COOCu2+OOC-Y)に変換されたものである。Yは、化合物K1のカルボキシル基以外の構造部分である。
【0136】
<樹脂製造例S15:シリコン原子含有樹脂(S15)の製造>
モノマー種及び量を表5のとおりに変更したこと以外は、製造例S14と同様にして、カルボキシル基を有する樹脂を含む樹脂組成物(溶液)(固形分濃度:50質量%)を得た。
【0137】
次いで、同様の反応容器に、上記樹脂組成物 100質量部、酢酸亜鉛(II) 7.8質量部、化合物K2〔ナフテン酸(NA-200、酸価200mgKOH/g、大和油脂工業社製)〕 12.1質量部及びキシレン60.0質量部を加えてリフラックス温度まで昇温し、留出する酢酸、水及び溶剤の混合液を除去しつつ、同量のキシレンを補充しながら、反応を18時間継続した。反応の終点は、留出した溶剤中の酢酸量を定量することにより決定した。反応液を冷却後、n-ブタノール及びキシレンを加えて、樹脂を含む樹脂組成物(溶液)(固形分濃度:50質量%)を得た。この樹脂組成物に含まれる樹脂は、上記カルボキシル基を有する樹脂のカルボキシル基が-COO-Zn2+OOC-Y)に変換されたものである。Yは、化合物K2のカルボキシル基以外の構造部分である。
【0138】
以下、樹脂製造例S14及びS15で得られた樹脂をそれぞれ「樹脂S14、S15」ともいい、樹脂製造例S14及びS15で得られた樹脂組成物(溶液)をそれぞれ「樹脂組成物S14、S15」ともいう。
【0139】
樹脂製造例S14及びS15において用いた単量体及びその使用量(質量部)を表5に示す。表5には、カルボキシル基を有する樹脂の製造に用いた単量体を示している。
【0140】
得られた樹脂S14及びS15のガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、並びに、樹脂組成物S14及びS15の固形分濃度を上記測定方法に従って測定した。結果を表5に併せて示す。数平均分子量Mnは、カルボキシル基を有する樹脂(カルボキシル基を-COOMe2+OOC-Y)に変換する反応を実施する前の樹脂)について測定した。MeはCu又はZnである。
【0141】
【表5】
【0142】
表1~表5に示される各種単量体の略称の詳細は次のとおりである。
[単量体(a)]
・FM-0721:JNC社製、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(I’)において、m=0、b=3、n=65、R~R及びR31がメチル基、Rがn-ブチル基である単量体、分子量:5,000
・FM-0725:JNC社製、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(I’)において、m=0、b=3、n=132、R~R及びR31がメチル基、Rがn-ブチル基である単量体、分子量:10,000
・KF-2012:信越化学工業社製、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(I’)において、m=0、R~R及びR31がメチル基である単量体、分子量:4,600
・X-22-2426:信越化学工業社製、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(I’)において、m=0、R~R及びR31がメチル基である単量体、分子量:12,000
・FM-7721:JNC社製、両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(III’)において、q及びs=0、f及びg=3、r=64、R~R12、R33及びR34がメチル基である単量体、分子量:5,000
・FM-7725:JNC社製、両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(III’)において、q及びs=0、f及びg=3、r=131、R~R12、R33及びR34がメチル基である単量体、分子量:10,000
・X-22-164B:信越化学工業社製、両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(III’)において、q及びs=0、R~R12、R33及びR34がメチル基である単量体、分子量:3,200
・X-22-164E:信越化学工業社製、両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(III’)において、q及びs=0、R~R12、R33及びR34がメチル基である単量体、分子量:7,800
・FM-0711:JNC社製、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(I’)において、m=0、b=3、n=10、R~R及びR31がメチル基、Rがn-ブチル基である単量体、分子量:1,000
・X-22-174ASX:信越化学工業社製、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(I’)において、m=0、R~R及びR31がメチル基である単量体、分子量:900
・X-22-174BX:信越化学工業社製、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、式(I’)において、m=0、R~R及びR31がメチル基である単量体、分子量:2,300
【0143】
[単量体(b)]
・NPG:新中村化学工業社製、ネオペンチルグリコールジメタクリレート
・HD-N:新中村化学工業社製、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート
・DOD-N:新中村化学工業社製、1,10-デカンジオールジメタクリレート
・3G:新中村化学工業社製、トリエチレングリコールジメタクリレート
・9G:新中村化学工業社製、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート
・701:新中村化学工業社製、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン
・3PG:新中村化学工業社製、トリプロピレングリコールジメタクリレート
・9PG:新中村化学工業社製、ポリプロピレングリコールジメタクリレート
・DCP:新中村化学工業社製、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート
・BPE-100:新中村化学工業社製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート
・TMPT:新中村化学工業社製、トリメチロールプロパントリメタクリレート
【0144】
[単量体(c)]
・TIPSA:トリiso-プロピルシリルアクリレート、信越化学工業社製
・TIPSMA:トリiso-プロピルシリルメタクリレート、信越化学工業社製
【0145】
[単量体(d)]
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、三菱ケミカル社製
・MEMA:2-メトキシエチルメタクリレート、三菱ケミカル社製
・MEA:2-メトキシエチルアクリレート、日本触媒社製
・M-40G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(オキシエチレン鎖の繰り返し数=4)、新中村化学工業社製
・M-90G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(オキシエチレン鎖の繰り返し数=9)、新中村化学工業社製
・M-230G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(オキシエチレン鎖の繰り返し数=23)、新中村化学工業社製
・SA:メタクリロイルオキシエチルコハク酸、新中村化学工業社製
・CB-1:メタクリロイルオキシエチルフタル酸、新中村化学工業社製
【0146】
[単量体(f)]
・t-BMA:t-ブチルメタクリレート、三菱ケミカル社製
・n-BMA:n-ブチルメタクリレート、三菱ガス化学社製
・EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート、三菱ケミカル社製
・n-BA:n-ブチルアクリレート、東亜合成社製
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート、三菱ガス化学社製
・MMA:メチルメタクリレート、三菱ガス化学社製
・EA:エチルアクリレート、東亜合成社製
・AA:アクリル酸、大阪有機化学工業社製
【0147】
<実施例1>
(1)防汚塗料組成物1の調製
前記で得られたシリコン原子含有樹脂(S1)88.72質量部、消泡剤としてBYK-066N 2.00質量部、顔料1としてTI-PURE R-900 0.28質量部、顔料2としてBayferox 130 3.00質量部及びダレ止め剤としてMONORAL3300 6.00質量部を、ディスパー(2,000rpm)を用いて混合・分散させることにより、防汚塗料組成物1を調製した。防汚塗料組成物1の配合を表6に示す。なお、配合量は、溶剤等の揮発分も含めた有り姿の量(質量部)を意味する。
【0148】
(2)塗膜の作製
防汚塗料組成物1を、予め防錆塗料組成物が塗布されたSPCC鋼板に、乾燥膜厚が300μmとなるようにスプレー塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。
【0149】
<実施例2~21、比較例1~12>
各配合成分の種類及び量を、表6~表10に記載のように変更したこと以外は、実施例1の防汚塗料組成物1の調製方法と同様にして、防汚塗料組成物2~21、比較防汚塗料組成物1~12をそれぞれ調製した。また、防汚塗料組成物2~21、比較防汚塗料組成物1~12をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、防汚塗膜を有する試験板を得た。
【0150】
表6~表10に示される各配合成分の詳細は以下のとおりである。
・消泡剤:シリコーン系消泡剤、BYK社製「BYK-066N」、不揮発分濃度:0.7質量%
・顔料1:酸化チタン、デュポン社製「TI-PURE R-900」
・顔料2:酸化鉄、ランクセス社製「Bayferox 130」
・ダレ止め剤:ポリアマイド系粘性調整剤、HS CHEM社製「MONORAL3300」、不揮発分濃度:20質量%
・可塑剤:ポリビニルエチルエーテル、BASF社製「ルトナールA25」、不揮発分濃度:95質量%
・防汚剤1:亜酸化銅、古河ケミカルズ社製
・防汚剤2:カッパーピリチオン、アーチケミカル社製「カッパーオマジン」
・防汚剤3:ジンクピリチオン、アーチケミカル社製「ジンクオマジン」
・防汚剤4:メデトミジン、I-TECH AB社製「Selektope」
・防汚剤5:シーナイン211、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(4,5-ジクロロ-2-nオクチル-3(2H)イソチアゾロン)、Rohm and Haas社製「シーナイン211」
・防汚剤6:イルガロール、N’-tert-ブチル-N-シクロプロピル-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガロール 1051」
・防汚剤7:エコネア、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル、ヤンセンPMP社製「エコネア」
【0151】
(防汚塗料組成物の評価)
[a]塗膜状態
実施例及び比較例で得られた防汚塗料組成物を、ガラス板(TP技研社製)に、乾燥膜厚が100μmとなるように、ドクターブレードを用いて塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させた。指触により、塗膜状態を評価した。評価基準は下記のとおりである。評点3以上を合格とした。
3:塗膜にはタックも無く、クラックも無い。
2:塗膜にクラックが発生する。
1:塗膜にタックがある。
【0152】
[b]塗膜の耐衝撃性
実施例及び比較例で得られた試験板について、JIS K 5600-5-3(耐おもり落下性試験)に準じて、塗膜の耐衝撃性を評価した。
すなわち、デュポン式衝撃試験器(撃ち方:半径6.35mm、COTEC社製)を使用し、試験板を、撃ち型と受け台の間に、塗膜面を上向きにして挟み、そこに1kgの錘を一定の高さから落下させ、目視により、塗膜面の割れ及び/又ははがれ(損傷)の発生した高さ(cm)を測定した。高さ30cmで塗膜面に損傷が発生しないものを合格とした。
なお、試験は温度23±2℃、相対湿度50±5%で行った。
【0153】
[c]塗膜の防汚性(筏静置防汚性試験)
実施例及び比較例で得られた試験板を、兵庫県赤穂市相生湾の筏に浸漬し、生物付着試験を48ヶ月間行った。試験開始から6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月及び48ヶ月経過時点での海中生物の付着面積を目視で評価した。評価基準は下記のとおりである。評点3以上を合格とした。
5:海中生物の付着面積が0%以上5%未満である。
4:海中生物の付着面積が5%以上10%未満である。
3:海中生物の付着面積が10%以上15%未満である。
2:海中生物の付着面積が15%以上30%未満である。
1:海中生物の付着面積が30%以上である。
【0154】
実施例1~21は、本発明の実施例であり、得られた塗膜は、塗膜状態が良好で、かつ耐衝撃性及び防汚性が良好であった。
【0155】
比較例1~4は、樹脂が構成単位(A)を含まない例であり、塗膜状態、耐衝撃性及び防汚性の全てを満足する塗膜は得られなかった。
比較例5~10は、樹脂が構成単位(B)を含まない例であり、塗膜状態、耐衝撃性及び防汚性の全てを満足する塗膜は得られなかった。
比較例11及び12は、樹脂が構成単位(A)及び(B)を含まない例であり、得られた塗膜は、塗膜状態が悪く、耐衝撃性及び防汚性も十分に満足できるものではなかった。
【0156】
【表6】
【0157】
【表7】
【0158】
【表8】
【0159】
【表9】
【0160】
【表10】
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明に係る防汚塗料組成物によれば、水(海水)中に浸漬したときに良好な防汚性能を長期間発揮でき、かつ、良好な耐衝撃性を有し、劣化を生じにくい塗膜を形成することができる。本発明に係る防汚塗料組成物は、船舶等の水中移動体、又は水中構造物に適用される防汚塗料組成物として好適に用いることができる。