(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127288
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
F01D 5/30 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
F01D5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036337
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】武居 宗太朗
(72)【発明者】
【氏名】梅原 隆一
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202FA03
3G202FB02
(57)【要約】
【課題】汎用性が高く、かつさらに振動減衰性能が向上した構成を有する回転機械を提供する。
【解決手段】回転機械は、軸線回りに回転するとともに、軸線方向に配列された複数のディスクを有する回転軸と、回転軸の外周側で周方向に配列され、ディスクの外周面に形成された翼溝に挿入された動翼であって、翼溝に嵌合する翼根部、翼根部の径方向外側に設けられたプラットフォーム、及びプラットフォームから径方向外側に延びる翼本体を有する動翼と、を備え、翼根部は、翼溝の内面との間で生じる面圧が相対的に高い高面圧部と、前記面圧が相対的に低い低面圧部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転するとともに、前記軸線方向に配列された複数のディスクを有する回転軸と、
前記回転軸の外周側で周方向に配列され、前記ディスクの外周面に形成された翼溝に挿入された動翼であって、前記翼溝に嵌合する翼根部、該翼根部の径方向外側に設けられたプラットフォーム、及び該プラットフォームから径方向外側に延びる翼本体を有する動翼と、
を備え、
前記翼根部は、前記翼溝の内面との間で生じる面圧が相対的に高い高面圧部と、前記面圧が相対的に低い低面圧部と、を有する回転機械。
【請求項2】
前記翼根部の前記軸線方向一方側の端面から他方側に向かって凹む凹部が形成されていることで、前記凹部に対応する領域における前記翼溝の内面と当接する部分が前記低面圧部を形成している請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記翼根部は、前記軸線方向、及び前記径方向に広がる基準面を基準として面対称の断面形状を有し、前記凹部は、前記軸線方向一方側の端面から他方側に向かって凹むとともに前記基準面の一方側に位置する第一凹部と、前記軸線方向他方側の端面から一方側に向かって凹むとともに前記基準面の他方側に位置する第二凹部と、を有する請求項2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記凹部内に設けられ、前記翼根部を形成する母材よりも剛性の低い材料で形成された充填部をさらに有する請求項2又は3に記載の回転機械。
【請求項5】
前記翼根部における前記翼溝の内面と当接する部分の一部が、他の部分よりも凹んでいることで、前記低面圧部を形成している請求項1に記載の回転機械。
【請求項6】
前記低面圧部は、前記軸線方向における前記翼根部の表面の一部のみに形成されている請求項5に記載の回転機械。
【請求項7】
前記低面圧部は、前記径方向における前記翼根部の表面の一部のみに形成されている請求項5又は6に記載の回転機械。
【請求項8】
前記翼本体の径方向外側に設けられ、周方向に広がるシュラウドをさらに備え、
前記シュラウドは、周方向に隣接する他の前記シュラウドと当接する当接面を有し、
前記当接面は、互いに当接する他の前記当接面との間の面圧が相対的に低いシュラウド低面圧部と、前記面圧が相対的に高いシュラウド高面圧部と、を含む請求項1に記載の回転機械。
【請求項9】
前記シュラウドの径方向外側を向く面から径方向内側に凹む径方向凹部を有することで、前記径方向凹部に対応する領域における前記当接面の一部が前記シュラウド低面圧部を形成している請求項8に記載の回転機械。
【請求項10】
前記シュラウドの周方向を向く端面から周方向に凹む周方向凹部を有することで、前記周方向凹部に対応する領域における前記当接面の一部が前記シュラウド低面圧部を形成している請求項8に記載の回転機械。
【請求項11】
軸線回りに回転するとともに、前記軸線方向に配列された複数のディスクを有する回転軸と、
前記回転軸の外周側で周方向に配列され、前記ディスクの外周面に形成された翼溝に挿入された動翼であって、前記翼溝に嵌合する翼根部、該翼根部の径方向外側に設けられたプラットフォーム、該プラットフォームから径方向外側に延びる翼本体、及び該翼本体の径方向外側に設けられ、周方向に広がるシュラウドを有する動翼と、
を備え、
前記シュラウドは、周方向に隣接する他の前記シュラウドと当接する当接面を有し、
前記当接面は、互いに当接する他の前記当接面との間の面圧が相対的に低いシュラウド低面圧部と、前記面圧が相対的に高いシュラウド高面圧部と、を含む回転機械。
【請求項12】
軸線回りに回転するとともに、前記軸線方向に配列された複数のディスクを有する回転軸と、
前記回転軸の外周側で周方向に配列され、前記ディスクの外周面に形成された翼溝に挿入された動翼であって、前記翼溝に嵌合する翼根部、該翼根部の径方向外側に設けられたプラットフォーム、及び該プラットフォームから径方向外側に延びる翼本体を有する動翼と、
を備え、
前記翼溝、及び前記翼溝の内面に当接する前記翼根部の外面の少なくとも一方に設けられ、前記ディスク、及び前記翼根部を形成する材料よりも摩擦係数の低い材料で形成された低摩擦層を有する回転機械。
【請求項13】
前記低摩擦層は、前記翼溝、及び前記翼根部の少なくとも一方に対して着脱可能なシートである請求項12に記載の回転機械。
【請求項14】
前記翼根部は、径方向外側から内側に向かうに従って周方向の寸法が次第に小さくなるとともに、周方向の両面に前記翼溝に嵌合する複数の凸部が形成され、前記低摩擦層は、前記凸部の表面、及び前記凸部と当接する前記翼溝の内面の少なくとも一方に形成されている請求項12又は13に記載の回転機械。
【請求項15】
互いに隣接する一対の前記動翼同士の間で、前記低摩擦層が形成されている前記凸部の位置が異なっている請求項14に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンやジェットエンジン等の回転機械では、隣り合うタービン動翼の間のそれぞれにダンパを設けた構成が実用化されている。ダンパは、回転機械の回転時にタービン動翼に接触する。そして、タービン動翼に励振力が作用して振動が生じた際には、該ダンパとタービン動翼との接触箇所での摩擦力によって当該振動を減衰させる。
例えば特許文献1には、隣り合うタービン動翼のプラットフォームの双方に接触するダンパピンを備えた回転機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のダンパピンを用いた減衰機構は、当該ダンパピンを収容するためのスペースを動翼に形成できる場合にしか適用できない。このため、より汎用性の高い減衰機構を備える回転機械に対する要請が高まっていた。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、汎用性が高く、かつさらに振動減衰性能が向上した構成を有する回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る回転機械は、軸線回りに回転するとともに、前記軸線方向に配列された複数のディスクを有する回転軸と、前記回転軸の外周側で周方向に配列され、前記ディスクの外周面に形成された翼溝に挿入された動翼であって、前記翼溝に嵌合する翼根部、該翼根部の径方向外側に設けられたプラットフォーム、及び該プラットフォームから径方向外側に延びる翼本体を有する動翼と、を備え、前記翼根部は、前記翼溝の内面との間で生じる面圧が相対的に高い高面圧部と、前記面圧が相対的に低い低面圧部と、を有する。
【0007】
本開示に係る回転機械は、軸線回りに回転するとともに、前記軸線方向に配列された複数のディスクを有する回転軸と、前記回転軸の外周側で周方向に配列され、前記ディスクの外周面に形成された翼溝に挿入された動翼であって、前記翼溝に嵌合する翼根部、該翼根部の径方向外側に設けられたプラットフォーム、該プラットフォームから径方向外側に延びる翼本体、及び該翼本体の径方向外側に設けられ、周方向に広がるシュラウドを有する動翼と、を備え、前記シュラウドは、周方向に隣接する他の前記シュラウドと当接する当接面を有し、前記当接面は、互いに当接する他の前記当接面との間の面圧が相対的に低いシュラウド低面圧部と、前記面圧が相対的に高いシュラウド高面圧部と、を含む。
【0008】
本開示に係る回転機械は、軸線回りに回転するとともに、前記軸線方向に配列された複数のディスクを有する回転軸と、前記回転軸の外周側で周方向に配列され、前記ディスクの外周面に形成された翼溝に挿入された動翼であって、前記翼溝に嵌合する翼根部、該翼根部の径方向外側に設けられたプラットフォーム、及び該プラットフォームから径方向外側に延びる翼本体を有する動翼と、を備え、前記翼溝、及び前記翼溝の内面に当接する前記翼根部の外面の少なくとも一方に設けられ、前記ディスク、及び前記翼根部を形成する材料よりも摩擦係数の低い材料で形成された低摩擦層を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、汎用性が高く、かつさらに振動減衰性能が向上した構成を有する回転機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る回転機械の構成を示す断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るディスクと動翼を軸線方向から見た図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係る翼根部を軸線方向から拡大図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る翼根部を周方向から見た拡大図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係る翼根部を径方向から見た拡大図である。
【
図6】本開示の第二実施形態に係る翼根部を軸線方向から見た拡大図である。
【
図7】本開示の第二実施形態に係る翼根部を周方向から見た拡大図である。
【
図8】本開示の第三実施形態に係るシュラウドの構成を示す斜視図である。
【
図9】本開示の第三実施形態に係るシュラウドの変形例を示す斜視図である。
【
図10】本開示の第四実施形態に係る翼溝と翼根部を軸線方向から見た拡大図である。
【
図11】本開示の第四実施形態に係る翼溝と翼根部の変形例を軸線方向から見た拡大図である。
【
図12】本開示の第五実施形態に係る翼根部を軸線方向から見た拡大図である。
【
図13】本開示の第五実施形態に係る翼根部の変形例を軸線方向から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る回転機械としてのガスタービン1について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0012】
(ガスタービン1の構成)
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン4と、を備える。圧縮機2は外部の空気を圧縮して高圧空気を生成する。燃焼器3は、この高圧空気に燃料を混合して燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する。タービン4は、燃焼ガスによって回転駆動される。タービン4からの排気は、例えば航空用エンジンの場合、機体の推進力として利用される。
【0013】
圧縮機2は、圧縮機ロータ21と、圧縮機動翼列22と、圧縮機ケーシング23と、圧縮機静翼列24と、を有する。圧縮機ロータ21は、軸線X回りに回転可能である。圧縮機ロータ21の外周面には軸線X方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼列22が設けられている。それぞれの圧縮機動翼列22は、周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼25を有する。圧縮機動翼25は、圧縮機ロータ21の外周面から径方向に延びている。圧縮機ケーシング23は、圧縮機動翼列22を外周側から覆う筒状をなしている。圧縮機ケーシング23の内周面には、軸線X方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼列24が設けられている。圧縮機静翼列24と圧縮機動翼列22とは、軸線X方向に交互になるように配列されている。それぞれの圧縮機静翼列24は、周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼26を有する。圧縮機静翼26は、圧縮機ケーシング23の内周面から径方向内側に向かって延びている。
【0014】
燃焼器3は、圧縮機ケーシング23に連結された中間ケーシング31の内部に設けられている。燃焼器3は、軸線Xに対する周方向に間隔をあけて複数設けられている。燃焼器3には、上記の圧縮機2で生成された高圧空気と、燃料とが供給される。
【0015】
タービン4は、タービンロータ41と、タービン動翼列42と、タービンケーシング43と、タービン静翼列44と、を有する。タービンロータ41は、軸線X回りに回転可能である。タービンロータ41の外周面には軸線X方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼列42が設けられている。それぞれのタービン動翼列42は、周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼45を有する。タービン動翼45は、タービンロータ41の外周面から径方向に延びている。タービンケーシング43は、タービン動翼列42を外周側から覆う筒状をなしている。タービンケーシング43の内周面には、軸線X方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼列44が設けられている。タービン静翼列44とタービン動翼列42とは、軸線X方向に交互になるように配列されている。それぞれのタービン静翼列44は、周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼46を有する。タービン静翼46は、圧縮機ケーシング23の内周面から径方向内側に向かって延びている。
【0016】
圧縮機ロータ21とタービンロータ41とは、軸線X方向に一体に連結されることで、ガスタービンロータ51を形成する。圧縮機ケーシング23と中間ケーシング31とタービンケーシング43とは、軸線X方向に一体に連結されることで、ガスタービンケーシング52を形成する。つまり、ガスタービンロータ51は、ガスタービンケーシング52の内部で、軸線X回りに一体となって回転可能である。
【0017】
以上で説明した圧縮機動翼25、及びタービン動翼45を総称して、以下では「動翼6」と呼ぶ。また、圧縮機ロータ21、及びタービンロータ41を総称して、以下では「回転軸7」と呼ぶ。つまり、以下で説明する構成は、圧縮機動翼25、及びタービン動翼45のいずれにも適用可能である。
【0018】
(動翼6の構成)
図2に示すように、動翼6は、回転軸7の外周面上で周方向に間隔をあけて配列されている。回転軸7は、軸線Xを中心とする円盤状のディスク71を有する。ディスク71は、軸線X方向に複数重ねられることで、回転軸7を形成する。ディスク71の外周面には、径方向内側に向かって凹む翼溝72が形成されている。翼溝72は、径方向外側から内側に向かうに従って周方向の寸法が次第に大きくなっている。この翼溝72に動翼6が軸線X方向から挿入される。
【0019】
動翼6は、翼根部61と、プラットフォーム62と、翼本体63と、を有する。翼根部61は、上記の翼溝72の形状に対応した断面形状を有し、軸線X方向から見ると、径方向外側から内側に向かうに従って周方向の寸法が次第に大きくなる台形状をなしている。翼根部61の径方向内側の端部が翼溝72に嵌合することで、径方向外側に向かう遠心力に抗することが可能とされている。
【0020】
翼溝72の径方向外側には、プラットフォーム62が一体に設けられている。プラットフォーム62は、周方向、及び径方向に張り出す板状をなしている。プラットフォーム62の外周面は、作動流体としての燃焼ガスや高圧空気に曝されるガスパス面とされている。プラットフォーム62のさらに径方向外側には、翼本体63が一体に設けられている。翼本体63は、径方向に延びるとともに、当該径方向から見て翼型の断面形状を有する。
【0021】
図3に示すように、本実施形態に係る動翼6では、翼根部61に凹部81が形成されている。ここで、同図中の破線で示すように、翼根部61は、径方向と軸線X方向とによって規定される仮想面(基準面S)を基準として面対称の断面形状を有する。この基準面Sよりも一方側には第一凹部82が形成され、他方側には第二凹部83が形成されている。
図4と
図5に示すように、第一凹部82は、軸線X方向一方側の端面から他方側に向かって凹んでいる。つまり、第一凹部82は、軸線X方向一方側にのみ向かって開口している。第二凹部83は、軸線X方向他方側の端面から一方側に向かって凹んでいる。つまり、第二凹部83は、軸線X方向他方側にのみ向かって開口している。径方向から見た場合、第一凹部82と第二凹部83とは軸線X方向において一部で互いに重複している。また、第一凹部82、及び第二凹部83の深さ(軸線X方向の寸法)は、翼根部61の軸線X方向の寸法の1/10以上1/4以下であることが望ましい。より望ましくは、第一凹部82、及び第二凹部83の深さは、翼根部61の軸線X方向の寸法の1/8以上1/6以下であり、最も望ましくは1/7である。さらに、第一凹部82、及び第二凹部83は、互いが干渉しない限りにおいて、周方向では基準面Sの位置まで広がっていてもよい。
【0022】
これら第一凹部82、及び第二凹部83に対応する領域の翼根部61の表面は、低面圧部84とされている。即ち、第一凹部82、及び第二凹部83が形成されていることによって、当該領域の剛性が相対的に低くなっている。したがって、翼溝72の内面と当接した場合、当該低面圧部84では低剛性であることに起因してわずかな変形が生じる。このため、低面圧部84と翼溝72の内面との間で生じる面圧が相対的に小さくなっている。この低面圧部84を除く領域、つまり、第一凹部82、及び第二凹部83に対応していない翼根部61の表面の領域は、高面圧部85とされている。言い換えると、これら低面圧部84と高面圧部85とによって、翼根部61の外面が構成されている。
【0023】
(作用効果)
上記のガスタービン1の動作について説明する。ガスタービン1を運転するに当たっては、まず電動機等の動力源によってガスタービンロータ51に回転力を与える。この状態で燃焼器3に燃料を供給し、点火することで、燃焼器3内で高温高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスがタービン4を回転駆動する。すると、ガスタービンロータ51を通じて圧縮機2も自律的に運転されることとなる。圧縮機2は高圧空気を生成し、燃焼器3に供給する。このサイクルが連続して発生することでガスタービン1が運転される。
【0024】
ところで、ガスタービン1の運転中には、燃焼振動や外力等の種々の要因によって、動翼6に振動を生じることがある。このような振動が大きくなると、ガスタービン1の安定的な運転に影響が及んでしまう。このため、例えば従来は、隣り合う動翼6のプラットフォーム62の双方に接触するダンパピンを設ける構成が提唱されていた。しかしながら、ダンパピンを用いた減衰機構は、当該ダンパピンを収容するためのスペースを動翼6に形成できる場合にしか適用できない。このため、より汎用性の高い減衰機構を備えるガスタービン1に対する要請が高まっていた。そこで、本実施形態に係る動翼6は、上述の各構成を採用している。
【0025】
上記構成によれば、翼根部61の表面に低面圧部84と高面圧部85が形成されている。ここで、摩擦力の大きさは、摩擦係数と垂直抗力(つまり、面圧)の積で定まる。このため、低面圧部84では、垂直抗力が小さくなることによって摩擦力が高面圧部85に比して相対的に小さくなる。具体的には、低面圧部84における面圧は、翼根部61表面の平均面圧よりも小さくなる。すると、当該低面圧部84では、微小な振幅を伴った滑り(マイクロスリップ)が局所的に生じる。微小な滑りが連続して複数回生じることで、振動のエネルギーが摩擦による熱エネルギー等として発散され、当該振動が徐々に減衰されることとなる。これにより、動翼6の振動の周波数帯が低い段階で、マイクロスリップによる振動減衰効果を得ることができる。つまり、振動減衰効果が得られる周波数帯が広くなる。その結果、動翼6全体に生じる振動を、幅広い運転回転数域で効率的に減衰させることが可能となる。また、従来のダンパピンのような別部材を設けることなく動翼6の減衰性能を向上させることができるため、動翼6の汎用性を高めることもできる。
【0026】
さらに、上記構成によれば、翼根部61に凹部81を形成することによって、当該凹部81に対応する領域では、他の領域に比べて剛性が相対的に小さくなる。このため、当該領域では翼溝72の内面との当接によってわずかに変形しやすくなり、垂直抗力が低下した状態となる。つまり、凹部81に対応する領域の外面における面圧が低くなる。これにより、当該領域で生じる摩擦力が相対的に低下し、上述したマイクロスリップによる振動減衰効果を容易に得ることが可能となる。また、翼根部61に凹部81を形成することのみによって容易かつ低廉に低面圧部84を形成することができる。これにより、ガスタービン1の製造コストやメンテナンスコストを削減することが可能となる。
【0027】
また、上記構成によれば、互いに向きと周方向位置が異なる第一凹部82と第二凹部83とが形成されていることによって、翼根部61全体の剛性を過度に低下させることなく、局所的なマイクロスリップを発生させることができる。これにより、動翼6の耐久性や寿命を損なうことなく、当該動翼6の振動を効果的に減衰させることが可能となる。反対に、第一凹部82と第二凹部83とが基準面Sを基準とした一方側にのみ形成されている場合には、翼根部61の強度や剛性の分布に偏りが生じてしまう。その結果、さらなる振動が生じる可能性がある。上記構成によれば、このような可能性を低減することができる。したがって、ガスタービン1をさらに安定的に運転することが可能となる。
【0028】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0029】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、
図6と
図7を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0030】
図6と
図7に示すように、本実施形態では、第一実施形態で説明した凹部81に代えて、翼根部61の表面の一部に凹み181を形成することで低面圧部84が構成されている。つまり、低面圧部84では、高面圧部85に比べて肉厚が薄くなっている。例えば、当該低面圧部84の周囲の高面圧部85が平面状である場合、低面圧部84では平面よりもわずかに内側に向かって凹んでいる。このような低面圧部84を形成するに当たっては、翼根部61の表面に切削加工や放電加工によって肉を除去することが好適である。この低面圧部84は、翼根部61の摩耗によって生じる凹み181や減肉とは異なり、意図的に形成されたものである。また、低面圧部84も高面圧部85と同様に、翼溝72の内面に当接する。
【0031】
また、
図7に示すように、低面圧部84は、軸線X方向における一部のみに形成されていることが望ましい。つまり、低面圧部84は、翼根部61の軸線X方向一方側の端縁から他方側にかけての中途位置まで延在している。なお、低面圧部84が翼根部61の軸線X方向における中央部のみに形成されていてもよい。また、詳しくは図示しないが、この低面圧部84は、翼根部61の周方向における両側の面にそれぞれ1つずつ形成されている。例えば、一方側の低面圧部84は翼根部61の軸線X方向一方側の端縁から他方側の中途位置まで延び、他方側の低面圧部84は翼根部61の軸線X方向他方側の端縁から一方側の中途位置まで延びていることが望ましい。つまり、動翼6の中心軸である径方向を基準として点対称に低面圧部84が形成されていることが望ましい。さらに、低面圧部84は、径方向における一部のみに形成されていることが望ましい。上述したマイクロスリップの発生領域を小さく限定するためである。
【0032】
(作用効果)
上記構成によれば、例えば切削加工等によって翼根部61の表面の一部を凹ませることによって、容易かつ廉価に低面圧部84を形成することができる。つまり、表面の一部の肉厚が薄いことによって、翼溝72の内面との間に生じる垂直抗力が当該領域で相対的に小さくなる。これにより、マイクロスリップが生じやすくなるため、高い振動減衰効果を得ることができる。また、低面圧部84を形成するに当たって、切削加工等を施すだけでよいことから、大掛かりな設計変更を伴わずに、既製の動翼6に対して事後的に低面圧部84を形成することも可能となる。これにより、メンテナンスコストを上げることなく、既存のガスタービン1の性能向上を図ることが可能となる。また、従来のダンパピンのような別部材を設けることなく動翼6の減衰性能を向上させることができるため、動翼6の汎用性を高めることもできる。
【0033】
また、上記構成によれば、低面圧部84が軸線X方向における翼根部61の表面の一部のみに形成されていることから、当該軸線X方向における面圧の分布に偏りを持たせることができる。これにより、当該低面圧部84における垂直抗力が低下し、結果として翼溝72の内面との間で生じる摩擦力を局所的に低下させることができる。したがって、マイクロスリップが生じやすくなり、高い振動減衰効果を得ることが可能となる。
【0034】
さらに、上記構成によれば、低面圧部84が径方向における翼根部61の表面の一部のみに形成されていることから、当該径方向における面圧の分布に偏りを持たせることができる。これにより、当該低面圧部84における垂直抗力が低下し、結果として翼溝72の内面との間で生じる摩擦力を局所的に低下させることができる。したがって、マイクロスリップが生じやすくなり、さらに高い振動減衰効果を得ることが可能となる。
【0035】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0036】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、
図8を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0037】
図8に示すように、本実施形態に係る動翼106は、翼根部61、プラットフォーム62、及び翼本体63に加えて、シュラウド64をさらに備えている。シュラウド64は、翼本体63の径方向外側の端部に一体に設けられている。シュラウド64は、軸線X方向、及び周方向に広がる板状をなしている。シュラウド64の周方向両側の端面には、それぞれ切り欠き部65が形成されている。周方向一方側の切り欠き部65は、軸線X方向一方側の端縁から他方側の中途位置まで後退している。周方向他方側の切り欠き部65は、軸線X方向他方側の端縁から一方側の中途位置まで後退している。互いに隣接する一対の動翼6同士の間では、一方側の切り欠き部65に他方側のシュラウド64が係合している。この時、切り欠き部65の軸線X方向を向く面同士は、互いに当接することで、当接面66をそれぞれ形成する。
【0038】
さらに、この当接面66は、シュラウド低面圧部67と、シュラウド高面圧部68と、を有する。シュラウド低面圧部67は、当接面66のうち、径方向外側の端縁から内側の中途位置にかけての領域である。この領域の内側には、径方向凹部69が形成されている。径方向凹部69は、シュラウド64の径方向外側の端面から径方向内側に向かって凹んでいる。径方向凹部69は、軸線X方向において、当接面66側に偏った位置に形成されている。つまり、径方向凹部69と当接面66との間の部分は薄肉状となっている。径方向凹部69の深さは、シュラウド64の厚さの1/10以上1/4以下であることが望ましい。より望ましくは、径方向凹部69の深さは、シュラウド64の厚さの1/8以上1/6以下である。最も望ましくは、径方向凹部69の深さは、シュラウド64の厚さの1/7である。この径方向凹部69が形成されていることによって、当接面66の径方向における一部の領域で剛性が低下する。つまり、当該領域における面圧が小さくなり、シュラウド低面圧部67が形成される。このシュラウド低面圧部67を除く領域は、シュラウド高面圧部68とされている。
【0039】
(作用効果)
上記構成によれば、シュラウド64の当接面66にシュラウド低面圧部67とシュラウド高面圧部68が形成されている。ここで、摩擦力の大きさは、摩擦係数と垂直抗力(つまり、面圧)の積で定まる。剛性が相対的に低いシュラウド低面圧部67では、隣接する他のシュラウド64の当接面66と当接した際の垂直抗力が小さくなる。これにより、シュラウド低面圧部67では摩擦力が相対的に小さくなる。具体的には、シュラウド低面圧部67における面圧は、当接面66全体の平均面圧よりも小さくなる。すると、当該シュラウド低面圧部67では、微小な振幅を伴った滑り(マイクロスリップ)が局所的に生じる。これにより、動翼106の振動の周波数帯が低い段階で、マイクロスリップによる振動減衰効果を得ることができる。つまり、振動減衰効果が得られる周波数帯が広くなる。その結果、広い運転回転数域で動翼106全体に生じる振動を効率的に減衰させることが可能となる。また、従来のダンパピンのような別部材を設けることなく動翼6の減衰性能を向上させることができるため、動翼106の汎用性を高めることもできる。
【0040】
また、上記構成によれば、シュラウド64に径方向凹部69を形成することによって、当該径方向凹部69に対応する領域では、他の領域に比べて剛性が相対的に小さくなる。このため、当該領域では隣接するシュラウド64の当接面66との当接によってわずかに変形しやすくなり、垂直抗力が低下した状態となる。つまり、径方向凹部69に対応する領域の外面における面圧が低くなる。これにより、当該領域で生じる摩擦力が相対的に低下し、上述したマイクロスリップによる振動減衰効果を容易に得ることが可能となる。
【0041】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0042】
例えば、第三実施形態の変形例として
図9に示すように、径方向凹部69に代えて、周方向凹部169を形成することによってシュラウド低面圧部67を形成することが可能である。周方向凹部169は、シュラウド64の周方向一方側を向く周方向端面64aから当接面66の延びる方向に沿って凹んでいる。周方向凹部169は、当接面66の周方向における中途位置まで凹んでいる。したがって、シュラウド低面圧部67は当該周方向端面64a側の領域に形成され、シュラウド高面圧部68は周方向端面64aから離間する側の領域に形成されることとなる。
【0043】
上記構成によれば、シュラウド64に周方向凹部169を形成することによって、当該周方向凹部169に対応する領域では、他の領域に比べて剛性が相対的に小さくなる。このため、当該領域では隣接するシュラウド64の当接面66との当接によってわずかに変形しやすくなり、垂直抗力が低下した状態となる。つまり、周方向凹部169に対応する領域の外面における面圧が低くなる。これにより、当該領域で生じる摩擦力が相対的に低下し、上述したマイクロスリップによる振動減衰効果を容易に得ることが可能となる。また、シュラウド64の外周側からのアクセスと加工によって周方向凹部169を形成することができるため、ディスク71に組み込み済みの動翼6に対しても事後的に同様の振動減衰効果を持たせることができる。
【0044】
<第四実施形態>
次に、本開示の第四実施形態について、
図10を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0045】
図10に示すように、本実施形態では、翼根部61と翼溝72の内面との間に、低摩擦層90が設けられている。低摩擦層90は、翼根部61、及びディスク71を形成する材料よりも摩擦係数の小さい材料で形成された薄膜状のシートである。このシートが、翼溝72の内面、及び翼根部61の表面に着脱可能に挿入されている。低摩擦層90を構成する材料としては、タングステンカーバイドや、ダイヤモンドライクカーボンが好適に用いられる。
【0046】
(作用効果)
ここで、摩擦力の大きさは、互いに当接する面同士の間の面圧(垂直抗力)と摩擦係数の積で定まる。上記構成によれば、翼溝72、及び翼根部61の少なくとも一方に、摩擦係数の低い低摩擦層90が設けられていることから、当該翼溝72の内面と翼根部61の外面との当接による摩擦力を局所的に小さく抑えることができる。すると、当該摩擦力の小さな領域では、微小な振幅を伴った滑り(マイクロスリップ)が局所的に生じる。これにより、動翼6の振動の周波数帯が低い段階で、マイクロスリップによる振動減衰効果を得ることができる。つまり、振動減衰効果が得られる周波数帯が広くなる。その結果、動翼6全体に生じる振動を効率的に減衰させることが可能となる。また、従来のダンパピンのような別部材を設けることなく動翼6の減衰性能を向上させることができるため、動翼6の汎用性を高めることもできる。
【0047】
さらに、上記構成によれば、低摩擦層90が着脱可能なシートによって形成されていることから、翼溝72、翼根部61に対して、より容易に当該低摩擦層90を設けることができる。また、シートを事後的に翼根部61と翼溝72との間に挿入することも可能である。これにより、既製の動翼6に対しても振動減衰効果を持たせることができる。
【0048】
以上、本開示の第四実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0049】
例えば、第四実施形態の変形例として
図11に示すように、低摩擦層90が、翼溝72の内面、及び翼根部61の外面の一方のみに設けられている構成を採ることも可能である。この構成によっても上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
<第五実施形態>
続いて、本開示の第五実施形態について、
図12を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0051】
図12に示すように、本実施形態に係る動翼206は、翼根部261の形状が上記の各実施形態とは異なっている。翼根部261は、軸線X方向から見て、径方向外側から内側に向かうに従って、周方向の寸法が次第に小さくなる先細り形状をなしている。翼根部261の周方向両面には、径方向に間隔をあけて配列された複数の凸部262が設けられている。凸部262は周方向に曲面状に突出している。ディスク71の外周面には、この凸部262に対応する形状の翼溝272が形成されている。つまり、この翼根部261は、いわゆるクリスマスツリー型である。
【0052】
それぞれの凸部262の表面には、低摩擦層90が設けられている。低摩擦層90は、上記第四実施形態で説明したタングステンカーバイドやダイヤモンドライクカーボンによって形成された薄膜状の部材である。低摩擦層90は、翼溝272の内面、及び翼根部261の外面の少なくとも一方に着脱可能に設けられている。つまり、翼溝272の内面、及び翼根部261の外面の両方に低摩擦層90が設けられていてもよい。また、
図12の例では、凸部262の径方向両面のうち、径方向外側の面のみに低摩擦層90が設けられている。これは、遠心力によって翼根部261が径方向外側への荷重を受けるため、径方向外側の面の方が摩擦力低減に対する効果が大きく見込めるためである。
【0053】
上記構成によれば、翼根部261に形成された凸部262の表面、及び当該凸部262と当接する翼溝272の内面の少なくとも一方に低摩擦層90を形成することで、第四実施形態で説明した形状のみならず、翼根部261の形状を選ばずに動翼6の振動減衰効果を発揮させることができる。これにより、様々な形式のガスタービン1の振動減衰性能をさらに向上させることが可能となる。また、従来のダンパピンのような別部材を設けることなく動翼206の減衰性能を向上させることができるため、動翼6の汎用性を高めることもできる。
【0054】
以上、本開示の第五実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0055】
例えば、
図13に第五実施形態の変形例として示すように、互いに隣接する一対の動翼206同士の間で、低摩擦層90が設けられる凸部262の位置を違えることも可能である。この構成によれば、隣接する一対の動翼6同士の間で、低摩擦層90が設けられる凸部262の位置が異なっていることから、これら動翼6同士の間では固有振動数が互いに異なった状態となる。つまり、これら動翼6はミスチューンの状態となる。これにより、同一の周波数の振動によって共振が生じてしまう可能性を低減することができる。即ち、複数の動翼206全体の振動が共振して発散してしまう可能性を低減することが可能となる。
【0056】
<その他の実施形態>
以上、本開示の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0057】
例えば、第一実施形態で説明した第一凹部82、及び第二凹部83は、必ずしも軸線X方向において重複していなくてもよい。これら第一凹部82、及び第二凹部83の態様は、翼根部61の強度設計や仕様に基づいて適宜決定されることが可能である。
【0058】
また、第一実施形態で説明した凹部81の内部には、充填部として他の部材が充填されていてもよい。充填部としては、翼根部61やディスク71を形成する母材よりも剛性の低い材料が好適に用いられる。この構成によれば、母材よりも剛性の低い材料で形成された充填部が設けられていることによって、凹部81を空洞にした場合に比べてわずかに剛性を高めつつも、マイクロスリップによる振動減衰効果を効果的に得ることができる。
【0059】
さらに、第三実施形態で説明したシュラウド64の形状は一例であって、設計や仕様に応じて適宜選択された形状を採用することが可能である。いずれの形状であっても上述した当接面66は形成されることから、上記構成を好適に適用することが可能である。したがって、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
また、第三実施形態で説明したシュラウド64の周方向凹部169は、シュラウド64の周方向両側に1つずつ形成されていてもよい。この構成によっても上述したものと同様の作用効果を得ることができる。なお、径方向凹部69については、上記第三実施形態で示したように、シュラウド64ごとに1つのみ設けられていることが望ましい。
【0061】
さらに、第五実施形態で説明した凸部262の形状や数は設計や仕様に応じて適宜変更することが可能である。いずれの態様であっても上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0062】
加えて、上記の各実施形態では、回転機械としてガスタービン1を用いた例について説明した。しかしながら、回転機械としては、航空用ジェットエンジンや、産業用ガスタービンを用いることが可能である。いずれの対象であっても上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
<付記>
各実施形態に記載の回転機械は、例えば以下のように把握される。
【0064】
(1)第1の態様に係る回転機械は、軸線X回りに回転するとともに、前記軸線X方向に配列された複数のディスク71を有する回転軸7と、前記回転軸7の外周側で周方向に配列され、前記ディスク71の外周面に形成された翼溝72に挿入された動翼6であって、前記翼溝72に嵌合する翼根部61、該翼根部61の径方向外側に設けられたプラットフォーム62、及び該プラットフォーム62から径方向外側に延びる翼本体63を有する動翼6と、を備え、前記翼根部61は、前記翼溝72の内面との間で生じる面圧が相対的に高い高面圧部85と、前記面圧が相対的に低い低面圧部84と、を有する。
【0065】
上記構成によれば、翼根部61の表面に低面圧部84と高面圧部85が形成されている。ここで、摩擦力の大きさは、摩擦係数と垂直抗力(つまり、面圧)の積で定まる。このため、低面圧部84では摩擦力が相対的に小さくなる。したがって、低面圧部84における面圧は、翼根部61表面の平均面圧よりも小さくなる。すると、当該低面圧部84では、微小な振幅を伴った滑り(マイクロスリップ)が局所的に生じる。これにより、動翼6の振動の周波数帯が低い段階で、マイクロスリップによる振動減衰効果を得ることができる。つまり、振動減衰効果が得られる周波数帯が広くなる。その結果、動翼6全体に生じる振動を効率的に減衰させることが可能となる。
【0066】
(2)第2の態様に係る回転機械は、(1)の回転機械であって、前記翼根部61の前記軸線X方向一方側の端面から他方側に向かって凹む凹部81が形成されていることで、前記凹部81に対応する領域における前記翼溝72の内面と当接する部分が前記低面圧部84を形成している。
【0067】
上記構成によれば、翼根部61に凹部81を形成することによって、当該凹部81に対応する領域では、他の領域に比べて剛性が相対的に小さくなる。このため、当該領域では翼溝72の内面との当接によってわずかに変形しやすくなり、垂直抗力が低下した状態となる。つまり、凹部81に対応する領域の外面における面圧が低くなる。これにより、当該領域で生じる摩擦力が相対的に低下し、上述したマイクロスリップによる振動減衰効果を容易に得ることが可能となる。
【0068】
(3)第3の態様に係る回転機械は、(2)の回転機械であって、前記翼根部61は、前記軸線X方向、及び前記径方向に広がる基準面Sを基準として面対称の断面形状を有し、前記凹部81は、前記軸線X方向一方側の端面から他方側に向かって凹むとともに前記基準面Sの一方側に位置する第一凹部82と、前記軸線X方向他方側の端面から一方側に向かって凹むとともに前記基準面Sの他方側に位置する第二凹部83と、を有する。
【0069】
上記構成によれば、互いに向きと周方向位置が異なる第一凹部82と第二凹部83とが形成されていることによって、翼根部61全体の剛性を過度に低下させることなく、局所的なマイクロスリップを発生させることができる。これにより、動翼6の振動を効果的に減衰させることが可能となる。反対に、第一凹部82と第二凹部83とが基準面Sを基準とした一方側にのみ形成されている場合には、翼根部61の強度や剛性の分布に偏りが生じてしまう。その結果、さらなる振動が生じる可能性がある。上記構成によれば、このような可能性を低減することができる。
【0070】
(4)第4の態様に係る回転機械は、(2)又は(3)の回転機械であって、前記凹部81内に設けられ、前記翼根部61を形成する母材よりも剛性の低い材料で形成された充填部をさらに有する。
【0071】
上記構成によれば、母材よりも剛性の低い材料で形成された充填部が設けられていることによって、凹部81を空洞にした場合に比べてわずかに剛性を高めつつも、マイクロスリップによる振動減衰効果を効果的に得ることができる。
【0072】
(5)第5の態様に係る回転機械は、(1)の回転機械であって、前記翼根部61における前記翼溝72の内面と当接する部分の一部が、他の部分よりも凹んでいることで、前記低面圧部84を形成している。
【0073】
上記構成によれば、例えば切削加工等によって翼根部61の表面の一部を凹ませることによって、容易かつ廉価に低面圧部84を形成することができる。つまり、表面の一部の肉厚が薄いことによって、翼溝72の内面との間に生じる垂直抗力が当該領域で相対的に小さくなる。これにより、マイクロスリップが生じやすくなるため、高い振動減衰効果を得ることができる。また、低面圧部84を形成するに当たって、切削加工等を施すだけでよいことから、大掛かりな設計変更を伴わずに、既製の動翼6に対して事後的に低面圧部84を形成することも可能となる。
【0074】
(6)第6の態様に係る回転機械は、(5)の回転機械であって、前記低面圧部84は、前記軸線X方向における前記翼根部61の表面の一部のみに形成されている。
【0075】
上記構成によれば、低面圧部84が軸線X方向における翼根部61の表面の一部のみに形成されていることから、当該軸線X方向における面圧の分布に偏りを持たせることができる。これにより、当該低面圧部84における垂直抗力が低下し、結果として翼溝72の内面との間で生じる摩擦力を局所的に低下させることができる。したがって、マイクロスリップが生じやすくなり、高い振動減衰効果を得ることが可能となる。
【0076】
(7)第7の態様に係る回転機械は、(5)又は(6)の回転機械であって、前記低面圧部84は、前記径方向における前記翼根部61の表面の一部のみに形成されている。
【0077】
上記構成によれば、低面圧部84が径方向における翼根部61の表面の一部のみに形成されていることから、当該径方向における面圧の分布に偏りを持たせることができる。これにより、当該低面圧部84における垂直抗力が低下し、結果として翼溝72の内面との間で生じる摩擦力を局所的に低下させることができる。したがって、マイクロスリップが生じやすくなり、高い振動減衰効果を得ることが可能となる。
【0078】
(8)第8の態様に係る回転機械は、(1)から(7)のいずれか一態様に係る回転機械であって、前記翼本体63の径方向外側に設けられ、周方向に広がるシュラウド64をさらに備え、前記シュラウド64は、周方向に隣接する他の前記シュラウド64と当接する当接面66を有し、前記当接面66は、互いに当接する他の前記当接面66との間の面圧が相対的に低いシュラウド低面圧部67と、前記面圧が相対的に高いシュラウド高面圧部68と、を含む。
【0079】
上記構成によれば、シュラウド64の当接面66にシュラウド低面圧部67とシュラウド高面圧部68が形成されている。ここで、摩擦力の大きさは、摩擦係数と垂直抗力(つまり、面圧)の積で定まる。このため、シュラウド低面圧部67では摩擦力が相対的に小さくなる。したがって、シュラウド低面圧部67における面圧は、当接面66全体の平均面圧よりも小さくなる。すると、当該シュラウド低面圧部67では、微小な振幅を伴った滑り(マイクロスリップ)が局所的に生じる。これにより、動翼6の振動の周波数帯が低い段階で、マイクロスリップによる振動減衰効果を得ることができる。つまり、振動減衰効果が得られる周波数帯が広くなる。その結果、動翼6全体に生じる振動を効率的に減衰させることが可能となる。
【0080】
(9)第9の態様に係る回転機械は、(8)の回転機械であって、前記シュラウド64の径方向外側を向く面から径方向内側に凹む径方向凹部69を有することで、前記径方向凹部69に対応する領域における前記当接面66の一部が前記シュラウド低面圧部67を形成している。
【0081】
上記構成によれば、シュラウド64に径方向凹部69を形成することによって、当該径方向凹部69に対応する領域では、他の領域に比べて剛性が相対的に小さくなる。このため、当該領域では隣接するシュラウド64の当接面66との当接によってわずかに変形しやすくなり、垂直抗力が低下した状態となる。つまり、径方向凹部69に対応する領域の外面における面圧が低くなる。これにより、当該領域で生じる摩擦力が相対的に低下し、上述したマイクロスリップによる振動減衰効果を容易に得ることが可能となる。
【0082】
(10)第10の態様に係る回転機械は、(8)の回転機械であって、前記シュラウド64の周方向を向く端面から周方向に凹む周方向凹部169を有することで、前記周方向凹部169に対応する領域における前記当接面66の一部が前記シュラウド低面圧部67を形成している。
【0083】
上記構成によれば、シュラウド64に周方向凹部169を形成することによって、当該周方向凹部169に対応する領域では、他の領域に比べて剛性が相対的に小さくなる。このため、当該領域では隣接するシュラウド64の当接面66との当接によってわずかに変形しやすくなり、垂直抗力が低下した状態となる。つまり、周方向凹部169に対応する領域の外面における面圧が低くなる。これにより、当該領域で生じる摩擦力が相対的に低下し、上述したマイクロスリップによる振動減衰効果を容易に得ることが可能となる。また、シュラウド64の外周側からのアクセスと加工によって周方向凹部169を形成することができるため、ディスク71に組み込み済みの動翼6に対しても事後的に同様の振動減衰効果を持たせることができる。
【0084】
(11)第11の態様に係る回転機械は、軸線X回りに回転するとともに、前記軸線X方向に配列された複数のディスク71を有する回転軸7と、前記回転軸7の外周側で周方向に配列され、前記ディスク71の外周面に形成された翼溝72に挿入された動翼6であって、前記翼溝72に嵌合する翼根部61、該翼根部61の径方向外側に設けられたプラットフォーム62、該プラットフォーム62から径方向外側に延びる翼本体63、及び該翼本体63の径方向外側に設けられ、周方向に広がるシュラウド64を有する動翼6と、を備え、前記シュラウド64は、周方向に隣接する他の前記シュラウド64と当接する当接面66を有し、前記当接面66は、互いに当接する他の前記当接面66との間の面圧が相対的に低いシュラウド低面圧部67と、前記面圧が相対的に高いシュラウド高面圧部68と、を含む。
【0085】
上記構成によれば、シュラウド64の当接面66にシュラウド低面圧部67とシュラウド高面圧部68が形成されている。ここで、摩擦力の大きさは、摩擦係数と垂直抗力(つまり、面圧)の積で定まる。このため、シュラウド低面圧部67では摩擦力が相対的に小さくなる。したがって、シュラウド低面圧部67における面圧は、当接面66全体の平均面圧よりも小さくなる。すると、当該シュラウド低面圧部67では、微小な振幅を伴った滑り(マイクロスリップ)が局所的に生じる。これにより、動翼6の振動の周波数帯が低い段階で、マイクロスリップによる振動減衰効果を得ることができる。つまり、振動減衰効果が得られる周波数帯が広くなる。その結果、動翼6全体に生じる振動を効率的に減衰させることが可能となる。
【0086】
(12)第12の態様に係る回転機械は、軸線X回りに回転するとともに、前記軸線X方向に配列された複数のディスク71を有する回転軸7と、前記回転軸7の外周側で周方向に配列され、前記ディスク71の外周面に形成された翼溝72に挿入された動翼6であって、前記翼溝72に嵌合する翼根部61、該翼根部61の径方向外側に設けられたプラットフォーム62、及び該プラットフォーム62から径方向外側に延びる翼本体63を有する動翼6と、を備え、前記翼溝72、及び前記翼溝72の内面に当接する前記翼根部61の外面の少なくとも一方に設けられ、前記ディスク71、及び前記翼根部61を形成する材料よりも摩擦係数の低い材料で形成された低摩擦層90を有する。
【0087】
ここで、摩擦力の大きさは、互いに当接する面同士の間の面圧(垂直抗力)と摩擦係数の積で定まる。上記構成によれば、翼溝72、及び翼根部61の少なくとも一方に、摩擦係数の低い低摩擦層90が設けられていることから、当該翼溝72の内面と翼根部61の外面との当接による摩擦力を局所的に小さく抑えることができる。すると、当該摩擦力の小さな領域では、微小な振幅を伴った滑り(マイクロスリップ)が局所的に生じる。これにより、動翼6の振動の周波数帯が低い段階で、マイクロスリップによる振動減衰効果を得ることができる。つまり、振動減衰効果が得られる周波数帯が広くなる。その結果、動翼6全体に生じる振動を効率的に減衰させることが可能となる。
【0088】
(13)第13の態様に係る回転機械は、(12)の回転機械であって、前記低摩擦層90は、前記翼溝72、及び前記翼根部61の少なくとも一方に対して着脱可能なシートである。
【0089】
上記構成によれば、低摩擦層90が着脱可能なシートによって形成されていることから、翼溝72、翼根部61に対して、より容易に当該低摩擦層90を設けることができる。また、シートを事後的に翼根部61と翼溝72との間に挿入することも可能である。これにより、既製の動翼6に対しても振動減衰効果を持たせることができる。
【0090】
(14)第14の態様に係る回転機械は、(12)又は(13)の回転機械であって、前記翼根部61は、径方向外側から内側に向かうに従って周方向の寸法が次第に小さくなるとともに、周方向の両面に前記翼溝72に嵌合する複数の凸部262が形成され、前記低摩擦層90は、前記凸部262の表面、及び前記凸部262と当接する前記翼溝72の内面の少なくとも一方に形成されている。
【0091】
上記構成によれば、翼根部61に形成された凸部262の表面、及び当該凸部262と当接する翼溝72の内面の少なくとも一方に低摩擦層90を形成することで、翼根部61の形状を選ばずに動翼6の振動減衰効果を発揮させることができる。
【0092】
(15)第15の態様に係る回転機械は、(14)の回転機械であって、互いに隣接する一対の前記動翼6同士の間で、前記低摩擦層90が形成されている前記凸部262の位置が異なっている。
【0093】
上記構成によれば、隣接する一対の動翼6同士の間で、低摩擦層90が設けられる凸部262の位置が異なっていることから、これら動翼6同士の間では固有振動数が互いに異なった状態となる。つまり、これら動翼6はミスチューンの状態となる。これにより、同一の周波数の振動によって共振が生じてしまう可能性を低減することができる。即ち、複数の動翼6全体の振動が発散してしまう可能性を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0094】
1…ガスタービン 2…圧縮機 3…燃焼器 4…タービン 6…動翼 7…回転軸 21…圧縮機ロータ 22…圧縮機動翼列 23…圧縮機ケーシング 24…圧縮機静翼列 25…圧縮機動翼 26…圧縮機静翼 31…中間ケーシング 41…タービンロータ 42…タービン動翼列 43…タービンケーシング 44…タービン静翼列 45…タービン動翼 46…タービン静翼 51…ガスタービンロータ 52…ガスタービンケーシング 61…翼根部 62…プラットフォーム 63…翼本体 64…シュラウド 64a…周方向端面 65…切り欠き部 66…当接面 67…シュラウド低面圧部 68…シュラウド高面圧部 69…径方向凹部 71…ディスク 72…翼溝 81…凹部 82…第一凹部 83…第二凹部 84…低面圧部 85…高面圧部 90…低摩擦層 106…動翼 169…周方向凹部 181…凹み 206…動翼 261…翼根部 262…凸部 272…翼溝 S…基準面 X…軸線