(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012730
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240124BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209099
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】迫田 晃司
(72)【発明者】
【氏名】大熊 秀海
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP24
5H615SS08
5H615SS18
5H615TT05
5H622CA02
5H622CA07
5H622PP03
5H622PP10
5H622PP19
5H622QA10
(57)【要約】
【課題】製造されるロータの精度を向上させる。
【解決手段】接合工程S1では、磁石1Aの底面2に第1軸体11Aの底面12が接合され、磁石1Aの底面3に第2軸体21Aの底面22が接合される。第1加工工程S2では、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が同一の円柱の側面をなすように、互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が加工される。嵌合工程S3では、それぞれの側面6,16,26を加工された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aにアーマリング51が嵌合させられる。第2加工工程S4では、アーマリング51の外周面53を基準として、アーマリング51を嵌合させられた磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのアーマリング51から露出した第1軸体11A及び第2軸体21Aの側面16,26が加工される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の磁石の一方の底面に円柱状の第1軸体の一方の底面を接合し、前記磁石の他方の底面に円柱状の第2軸体の一方の底面を接合することにより、前記磁石、前記第1軸体及び前記第2軸体を互いに接合する接合工程と、
前記磁石、前記第1軸体及び前記第2軸体のそれぞれの側面が同一の円柱の側面をなすように、前記接合工程で互いに接合された前記磁石、前記第1軸体及び前記第2軸体のそれぞれの側面を加工する第1加工工程と、
前記磁石の側面、前記第1軸体の側面の前記磁石の側及び前記第2軸体の側面の前記磁石の側が円環状のアーマリングの内周面に接しつつ前記アーマリングに被覆され、前記第1軸体の側面の前記磁石の側とは反対側及び前記第2軸体の側面の前記磁石の側とは反対側が前記アーマリングから露出するように、前記第1加工工程でそれぞれの側面を加工された前記磁石、前記第1軸体及び前記第2軸体に前記アーマリングを嵌合させる嵌合工程と、
前記アーマリングの外周面を基準として、前記嵌合工程で前記アーマリングを嵌合させられた前記磁石、前記第1軸体及び前記第2軸体の前記アーマリングから露出した前記第1軸体及び前記第2軸体の側面を加工する第2加工工程と、
を備えたロータの製造方法。
【請求項2】
前記第1加工工程では、前記磁石、前記第1軸体及び前記第2軸体のいずれかの側面を支持しつつ、前記第1軸体の他方の底面及び前記第2軸体の他方の底面を支持することなく、前記磁石、前記第1軸体及び前記第2軸体のそれぞれの側面を加工する、請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項3】
前記接合工程では、
前記磁石及び前記第1軸体の中心軸に交差する方向への互いの移動を制限するように前記磁石の一方の底面及び前記第1軸体の一方の底面のそれぞれに設けられた凹凸部を互いに嵌合させつつ前記磁石の一方の底面に前記第1軸体の一方の底面を接合し、
前記磁石及び前記第2軸体の中心軸に交差する方向への互いの移動を制限するように前記磁石の他方の底面及び前記第2軸体の一方の底面のそれぞれに設けられた凹凸部を互いに嵌合させつつ前記磁石の他方の底面に前記第2軸体の一方の底面を接合する、請求項1又は2に記載のロータの製造方法。
【請求項4】
前記接合工程では、
接着剤を用いて前記磁石の一方の底面に前記第1軸体の一方の底面を接合し、
接着剤を用いて前記磁石の他方の底面に前記第2軸体の一方の底面を接合する、請求項1~3のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機のロータを製造する技術が提案されている。例えば、特許文献1に開示されているロータの製造方法では、円柱状の磁石の両方の底面に予め形状が仕上げられた軸体がそれぞれ接合される。互いに接合された磁石及び2つの軸体のそれぞれの側面が円環状のアーマリングの内周面に接しつつアーマリングに被覆されるように、焼嵌めにより互いに接合された磁石及び2つの軸体にアーマリングが嵌合させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の製造方法では、磁石及び磁石の両端の2つの軸体のそれぞれの中心軸を合わせるように接合することが困難である。上記の製造方法では、磁石及び2つの軸体のそれぞれの中心軸が一致している精度は、磁石及び2つの軸体の形状の精度と、軸合わせ用の治具の精度とに依存する。また、上記の製造方法では、互いに接合された磁石及び2つの軸体の側面が一致している精度も低い。したがって、磁石及び2つの軸体に嵌合させられたアーマリングが十分な締め代を有していない可能性がある。以上のように、上記の製造方法では、製造されるロータの精度が低い。
【0005】
そこで本発明は、製造されるロータの精度を向上できるロータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、円柱状の磁石の一方の底面に円柱状の第1軸体の一方の底面を接合し、磁石の他方の底面に円柱状の第2軸体の一方の底面を接合することにより、磁石、第1軸体及び第2軸体を互いに接合する接合工程と、磁石、第1軸体及び第2軸体のそれぞれの側面が同一の円柱の側面をなすように、接合工程で互いに接合された磁石、第1軸体及び第2軸体のそれぞれの側面を加工する第1加工工程と、磁石の側面、第1軸体の側面の磁石の側及び第2軸体の側面の磁石の側が円環状のアーマリングの内周面に接しつつアーマリングに被覆され、第1軸体の側面の磁石の側とは反対側及び第2軸体の側面の磁石の側とは反対側がアーマリングから露出するように、第1加工工程でそれぞれの側面を加工された磁石、第1軸体及び第2軸体にアーマリングを嵌合させる嵌合工程と、アーマリングの外周面を基準として、嵌合工程でアーマリングを嵌合させられた磁石、第1軸体及び第2軸体のアーマリングから露出した第1軸体及び第2軸体の側面を加工する第2加工工程とを備えたロータの製造方法である。
【0007】
この構成によれば、第1加工工程では、磁石、第1軸体及び第2軸体のそれぞれの側面が同一の円柱の側面をなすように、既に接合工程で互いに接合された磁石、第1軸体及び第2軸体のそれぞれの側面が加工される。そのため、第1加工工程後に磁石、第1軸体及び第2軸体の側面が一致している精度は、接合工程以前の工程の精度に依存しない。したがって、互いに接合された磁石、第1軸体及び第2軸体の側面が一致している精度を向上でき、その後の嵌合工程で嵌合させられるアーマリングの締め代の精度も向上できる。
【0008】
また、第2加工工程では、既に接合工程で互いに接合された磁石、第1軸体及び第2軸体の中の第1軸体及び第2軸体の側面がアーマリングの外周面を基準として加工される。そのため、第2加工後に磁石、第1軸体及び第2軸体の中心軸が一致している精度は、接合工程以前の工程の精度に依存しない。したがって、磁石、第1軸体及び第2軸体の中心軸が一致している精度を向上できる。以上のように、この構成によれば、製造されるロータの精度を向上できる。
【0009】
この場合、第1加工工程では、磁石、第1軸体及び第2軸体のいずれかの側面を支持しつつ、第1軸体の他方の底面及び第2軸体の他方の底面を支持することなく、磁石、第1軸体及び第2軸体のそれぞれの側面を加工してもよい。
【0010】
この構成によれば、第1加工工程では、磁石、第1軸体及び第2軸体のいずれかの側面が支持されるが、第1軸体の他方の底面及び第2軸体の他方の底面は支持されることなく、磁石、第1軸体及び第2軸体のそれぞれの側面が加工される。そのため、磁石と第1軸体との接合箇所及び磁石と第2軸体との接合箇所には、加工に必要な支持のための力が加わらない。したがって、第1加工工程における接合箇所の破損を低減し、ロータの製造の歩留まりを向上できる。
【0011】
また、接合工程では、磁石及び第1軸体の中心軸に交差する方向への互いの移動を制限するように磁石の一方の底面及び第1軸体の一方の底面のそれぞれに設けられた凹凸部を互いに嵌合させつつ磁石の一方の底面に第1軸体の一方の底面を接合し、磁石及び第2軸体の中心軸に交差する方向への互いの移動を制限するように磁石の他方の底面及び第2軸体の一方の底面のそれぞれに設けられた凹凸部を互いに嵌合させつつ磁石の他方の底面に第2軸体の一方の底面を接合してもよい。
【0012】
この構成によれば、接合工程では、磁石及び第1軸体の中心軸に交差する方向への互いの移動を制限するように磁石の一方の底面及び第1軸体の一方の底面のそれぞれに設けられた凹凸部が互いに嵌合させられて磁石の一方の底面に第1軸体の一方の底面が接合され、磁石及び第2軸体の中心軸に交差する方向への互いの移動を制限するように磁石の他方の底面及び第2軸体の一方の底面のそれぞれに設けられた凹凸部が互いに嵌合させられて磁石の他方の底面に第2軸体の一方の底面が接合される。これにより、接合工程後に、磁石、第1軸体及び第2軸体のそれぞれが中心軸に交差する方向にずれにくくなる。
【0013】
また、接合工程では、接着剤を用いて磁石の一方の底面に第1軸体の一方の底面を接合し、接着剤を用いて磁石の他方の底面に第2軸体の一方の底面を接合してもよい。
【0014】
この構成によれば、接合工程では、接着剤を用いて磁石の一方の底面に第1軸体の一方の底面が接合され、接着剤を用いて磁石の他方の底面に第2軸体の一方の底面が接合される。そのため、簡易な方法で接合工程を実行できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面のロータの製造方法によれば、製造されるロータの精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るロータの製造方法における磁石、第1軸体及び第2軸体を示す縦断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るロータの製造方法における接合工程を示す縦断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るロータの製造方法における第1加工工程を示す縦断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るロータの製造方法における嵌合工程を示す縦断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るロータの製造方法における第2加工工程を示す縦断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るロータの製造方法における接合工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示されるように、本実施形態のロータの製造方法では、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aが用意される。磁石1Aは、円柱状の永久磁石である。磁石1Aは、一方の底面2と他方の底面3とを有する。磁石1Aは、一方の底面2に凹凸部4を含み、他方の底面3に凹凸部5を含む。磁石1Aは、底面2と底面3との間に側面6を有する。
【0018】
第1軸体11Aは、磁石1Aと略同一の直径を有する円柱状の金属部材である。第1軸体11Aは、一方の底面12と他方の底面13とを有する。第1軸体11Aは、一方の底面12に凹凸部14を含む。第1軸体11Aは、底面12と底面13との間に側面16を有する。第2軸体21Aは、磁石1Aと略同一の直径を有する円柱状の金属部材であり、第1軸体11Aと同様の形状を有する。第2軸体21Aは、一方の底面22と他方の底面23とを有する。第2軸体21Aは、一方の底面22に凹凸部24を含む。第2軸体21Aは、底面22と底面23との間に側面26を有する。
【0019】
磁石1Aの一方の底面2の凹凸部4と、第1軸体11Aの一方の底面12の凹凸部14とは互いに対応した形状を有し、互いに嵌合することにより、磁石1A及び第1軸体11Aの中心軸Aに交差する方向への互いの移動を制限する。磁石1Aの他方の底面3の凹凸部5と、第2軸体21Aの一方の底面22の凹凸部24とは互いに対応した形状を有し、互いに嵌合することにより、磁石1A及び第2軸体21Aの中心軸Aに交差する方向への互いの移動を制限する。
【0020】
凹凸部4,5,14,24の形状は、互いに嵌合することにより磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aの中心軸Aに交差する方向への互いの移動を制限するものであれば、どのような形状でもよい。例えば、
図1の例では、磁石1Aの凹凸部4,5は、底面2,3のそれぞれの中央部で中心軸Aに平行な方向に突出し、底面2,3のそれぞれの周縁部で中心軸Aに平行な方向に窪んだ形状を有する。反対に、第1軸体11Aの底面12の凹凸部14及び第2軸体21Aの底面22の凹凸部24は、底面12,22のそれぞれの中央部で中心軸Aに平行な方向に窪み、底面12,22のそれぞれの周縁部で中心軸Aに平行な方向に突出した形状を有する。また、凹凸部4,5,14,24の形状は、互いに嵌合することにより磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aの中心軸Aの周りに回転する方向への互いの移動を制限するものであってもよい。
【0021】
図2に示されるように、上記の磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aについて、接合工程S1が実行される。接合工程S1では、円柱状の磁石1Aの一方の底面2に円柱状の第1軸体11Aの一方の底面12が接合され、磁石1Aの他方の底面3に円柱状の第2軸体21Aの一方の底面22が接合されることにより、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aが互いに接合される。
【0022】
接合工程S1では、磁石1A及び第1軸体11Aの中心軸Aに交差する方向への互いの移動を制限するように磁石1Aの一方の底面2及び第1軸体11Aの一方の底面12のそれぞれに設けられた凹凸部4,14が互いに嵌合させられつつ磁石1Aの一方の底面2に第1軸体11Aの一方の底面12が接合される。また、接合工程S1では、磁石1A及び第2軸体21Aの中心軸Aに交差する方向への互いの移動を制限するように磁石1Aの他方の底面3及び第2軸体21Aの一方の底面22のそれぞれに設けられた凹凸部5,24が互いに嵌合させられつつ磁石1Aの他方の底面3に第2軸体21Aの一方の底面22が接合される。
【0023】
また、接合工程S1では、接着剤30を用いて磁石1Aの一方の底面2に第1軸体11Aの一方の底面12が接合され、接着剤30を用いて磁石1Aの他方の底面3に第2軸体21Aの一方の底面22が接合される。接着剤30には、例えば、熱硬化性のエポキシ系接着剤を適用できる。
【0024】
図3に示されるように、接合工程S1で互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aについて、第1加工工程S2が実行される。第1加工工程S2では、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が同一の円柱の側面をなすように、接合工程S1で互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が加工される。したがって、第1加工工程S2後に、接合工程S1で互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aは、底面13,23及び互いに一致する側面6,16,26を有する1つの円柱を形成する。
【0025】
第1加工工程S2では、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのいずれかの側面6,16,26が支持されつつ、第1軸体11Aの他方の底面13及び第2軸体21Aの他方の底面23が支持されることなく、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が加工される。つまり、第1加工工程S2は、センタレス研磨により実行される。センタレス研磨では、互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aは、調整車42及び研削砥石車43の間で下方から支持刃41により支持される。調整車42及び研削砥石車43が回転することにより、互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aの回転が調整され、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が加工される。
【0026】
図4に示されるように、第1加工工程S2でそれぞれの側面6,16,26を加工された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aについて、嵌合工程S3が実行される。嵌合工程S3では、磁石1Aの側面6、第1軸体11Aの側面16の磁石1Aの側及び第2軸体21Aの側面26の磁石1Aの側が円環状のアーマリング51の内周面52に接しつつアーマリング51に被覆され、第1軸体11Aの側面16の磁石1Aの側とは反対側及び第2軸体21Aの側面26の磁石1Aの側とは反対側がアーマリング51から露出するように、第1加工工程S2でそれぞれの側面6,16,26を加工された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aにアーマリング51が嵌合させられる。
【0027】
アーマリング51は、内周面52及び外周面53を有する円環状の金属部材である。嵌合工程S3は、例えば、加熱膨張させられたアーマリング51が磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aに嵌合させられ、嵌合後に冷却収縮させられる焼嵌めにより実行される。
【0028】
図5に示されるように、嵌合工程S3でアーマリング51を嵌合させられた磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aについて、第2加工工程S4が実行される。第2加工工程S4では、アーマリング51の外周面53を基準(基準面、データム(datum))として、嵌合工程S3でアーマリング51を嵌合させられた磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのアーマリング51から露出した第1軸体11A及び第2軸体21Aの側面16,26が加工される。
【0029】
第2加工工程S4では、基準器60等によりアーマリング51の外周面53を基準にして、アーマリング51から露出した第1軸体11A及び第2軸体21Aの側面16,26が外周面53から一定の距離を隔てるように、側面16,26が加工される。第2加工工程S4後に、アーマリング51から露出した第1軸体11Aの側面16及び第2軸体21Aの側面26のそれぞれは、互いに共通の中心軸Aを有する円柱の側面をなす。以上のようにして、電動機のロータ100が製造される。
【0030】
本実施形態では、第1加工工程S2では、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が同一の円柱の側面をなすように、既に接合工程S1で互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が加工される。そのため、第1加工工程S2後に磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aの側面6,16,26が一致している精度は、接合工程S1以前の工程の精度に依存しない。したがって、互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aの側面6,16,26が一致している精度を向上でき、その後の嵌合工程S3で嵌合させられるアーマリング51の締め代の精度も向上できる。つまり、本実施形態では、締め代の制御が容易となる。
【0031】
また、第2加工工程S4では、既に接合工程S1で互いに接合された磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aの中の第1軸体11A及び第2軸体21Aの側面16,26がアーマリング51の外周面53を基準として加工される。そのため、第2加工後に磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aの中心軸Aが一致している精度は、接合工程S1以前の工程の精度に依存しない。したがって、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aの中心軸Aが一致している精度を向上できる。以上のように、本実施形態によれば、製造されるロータ100の精度を向上できる。また、本実施形態によれば、ロータ100の製造の歩留まりも向上できる。
【0032】
また、本実施形態によれば、第1加工工程S2では、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのいずれかの側面6,16,26が支持されるが、第1軸体11Aの他方の底面13及び第2軸体21Aの他方の底面23は支持されることなく、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれの側面6,16,26が加工される。そのため、磁石1Aと第1軸体11Aとの接合箇所(底面2,12)及び磁石1Aと第2軸体21Aとの接合箇所(底面3,22)には、加工に必要な支持のための力が加わらない。したがって、第1加工工程S2における接着剤30により接合された接合箇所の破損を低減し、ロータ100の製造の歩留まりを向上できる。
【0033】
また、本実施形態によれば、接合工程S1では、磁石1A及び第1軸体11Aの中心軸Aに交差する方向への互いの移動を制限するように磁石1Aの一方の底面2及び第1軸体11Aの一方の底面12のそれぞれに設けられた凹凸部4,14が互いに嵌合させられて磁石1Aの一方の底面2に第1軸体11Aの一方の底面12が接合され、磁石1A及び第2軸体21Aの中心軸Aに交差する方向への互いの移動を制限するように磁石1Aの他方の底面3及び第2軸体21Aの一方の底面22のそれぞれに設けられた凹凸部5,24が互いに嵌合させられて磁石1Aの他方の底面3に第2軸体21Aの一方の底面22が接合される。これにより、接合工程S1後に、磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれが中心軸Aに交差する方向にずれにくくなる。
【0034】
また、本実施形態によれば、側面6,16,26からの力により磁石1A、第1軸体11A及び第2軸体21Aのそれぞれが中心軸Aに交差する方向にずれにくくなるため、第1加工工程S2でのセンタレス研磨も容易となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、接合工程S1では、接着剤30を用いて磁石1Aの一方の底面2に第1軸体11Aの一方の底面12が接合され、接着剤30を用いて磁石1Aの他方の底面3に第2軸体21Aの一方の底面22が接合される。そのため、簡易な方法で接合工程S1を実行できる。
【0036】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図6に示されるように、本実施形態では、磁石1Bは底面2,3に凹凸部4,5を有しておらず、底面2,3は一様な平面である。また、第1軸体11Bは底面12に凹凸部14を有しておらず、第2軸体21Bは底面22に凹凸部24を有しておらず、底面12,22は一様な平面である。また、接合工程S1では、接着剤30は用いられない。
【0037】
磁石1B、第1軸体11B及び第2軸体21Bのそれぞれは、中心軸Aに沿って延在するボルト孔部7,17,27を有する。接合工程S1では、ボルト孔部7,17,27のそれぞれにボルト71が挿通され、ボルト71の一端にナット72が螺合される。接合工程S1以降の第1加工工程S2、嵌合工程S3及び第2加工工程S4は、上記第1実施形態と同様に実行される。嵌合工程S3後は、ボルト孔部7,17,27からボルト71及びナット72が除去されてもよい。
【0038】
本実施形態によれば、磁石1B、第1軸体11B及び第2軸体21Bの底面2,3,12,22に凹凸部4,5,14,24が設けられず、接合工程S1で接着剤30が用いられなくとも、接合工程S1、第1加工工程S2、嵌合工程S3及び第2加工工程S4を実行できる。また、本実施形態によっても、接合工程S1後に、磁石1B、第1軸体11B及び第2軸体21Bのそれぞれが中心軸Aに交差する方向にずれにくくなる。したがって、第1加工工程S2でのセンタレス研磨も容易となる。
【0039】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、実施形態は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第1加工工程S2で、第1軸体11Aの他方の底面13及び第2軸体21Aの他方の底面23が支持されないセンタレス研磨が実行された。しかし、条件に応じて第1加工工程S2では、第1軸体11Aの他方の底面13及び第2軸体21Aの他方の底面23が支持されてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1A,1B 磁石
2,3 底面
4,5 凹凸部
6 側面
7 ボルト孔部
11A,11B 第1軸体
12,13 底面
14 凹凸部
16 側面
17 ボルト孔部
21A,21B 第2軸体
22,23 底面
24 凹凸部
26 側面
27 ボルト孔部
30 接着剤
41 支持刃
42 調整車
43 研削砥石車
51 アーマリング
52 内周面
53 外周面
60 基準器
71 ボルト
72 ナット
100 ロータ
A 中心軸
S1 接合工程
S2 第1加工工程
S3 嵌合工程
S4 第2加工工程