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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127302
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】モルタル組成物及びモルタル
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240912BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240912BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240912BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20240912BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240912BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20240912BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B22/14 C
C04B20/00 B
C04B22/06 Z
C04B24/06 Z
C04B22/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036360
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】赤江 信哉
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB00
4G112MB06
4G112MB26
4G112PA28
4G112PB03
4G112PB05
4G112PB08
4G112PB11
4G112PB17
(57)【要約】
【課題】良好な流動性及び施工性を有し、且つ初期から長期にわたる強度発現性が優れるモルタル組成物を提供する。
【解決手段】セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類、シリカフューム、及び細骨材を含むモルタル組成物であって、石膏類及びシリカフュームの合計の含有量が、セメント100質量部に対し、10~95質量部であり、石膏類の含有量に対するシリカフュームの含有量の質量比([シリカフュームの含有量(質量部)]/[石膏類の含有量(質量部)])が0.1~6であり、細骨材の粒度は、細骨材全量に対し、粒径が0.3mm未満である粒子の質量割合が5~45質量%である、モルタル組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類、シリカフューム、及び細骨材を含み、
前記石膏類及び前記シリカフュームの合計の含有量が、前記セメント100質量部に対し、10~95質量部であり、
前記石膏類の含有量に対する前記シリカフュームの含有量の質量比([シリカフュームの含有量(質量部)]/[石膏類の含有量(質量部)])が0.1~6であり、
前記細骨材の粒度は、前記細骨材全量に対し、粒径が0.3mm未満である粒子の質量割合が5~45質量%である、モルタル組成物。
【請求項2】
硬化時において、JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて20℃環境下で測定する材齢1日の圧縮強度が45N/mm以上である、請求項1に記載のモルタル組成物。
【請求項3】
膨張材を更に含む、請求項1又は2に記載のモルタル組成物。
【請求項4】
凝結調整剤を更に含む、請求項1又は2に記載のモルタル組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のモルタル組成物及び水を含み、
前記水の含有量が、前記セメント100質量部に対し、30~70質量部である、モルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル組成物及びモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート構造物の高層化が進む中、建築物の耐久性向上を目的に使用材料として高強度のモルタル及びコンクリートの需要が高まっている。モルタルやコンクリートを高強度化するために単位セメント量又は結合材量を増量している。このような高強度材料では、セメント、ポゾラン質微粉末、骨材、高性能減水剤が主要な構成成分となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、セメントと、無機質微粉末と、水と、細骨材と、減水剤と、消泡剤と、金属微粉末とを含む高強度セメントモルタル組成物であって、前記セメントは、CSを10.0質量%~70.0質量%及びCSを10.0質量%~70.0質量%含有し、前記無機質微粉末はシリカフュームを含有することを特徴とする高強度セメントモルタル組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-104287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高強度材料では、強度発現性が優れることに加え、工期の短縮等のために早期硬化性が求められることがある。また、高強度材料を補修する際には同等の強度を有しながら、流動性やコテの仕上がり具合といった施工性が良好な材料の要求もある。
【0006】
したがって、本発明は、良好な流動性及び施工性を有し、且つ初期から長期にわたる強度発現性が優れるモルタル組成物及びモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記課題について鋭意検討した結果、石膏類及びシリカフュームの配合割合、細骨材の粒度を調整することで、流動性、施工性、初期及び長期の強度発現性が良好なモルタル組成物及びモルタルを得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]で示される。
[1]
セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類、シリカフューム、及び細骨材を含み、
前記石膏類及び前記シリカフュームの合計の含有量が、前記セメント100質量部に対し、10~95質量部であり、
前記石膏類の含有量に対する前記シリカフュームの含有量の質量比([シリカフュームの含有量(質量部)]/[石膏類の含有量(質量部)])が0.1~6であり、
前記細骨材の粒度は、前記細骨材全量に対し、粒径が0.3mm未満である粒子の質量割合が5~45質量%である、モルタル組成物。
[2]
硬化時において、JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて20℃環境下で測定する材齢1日の圧縮強度が45N/mm以上である、[1]に記載のモルタル組成物。
[3]
膨張材を更に含む、[1]又は[2]に記載のモルタル組成物。
[4]
凝結調整剤を更に含む、[1]又は[2]に記載のモルタル組成物。
[5]
[1]又は[2]に記載のモルタル組成物及び水を含み、
前記水の含有量が、前記セメント100質量部に対し、30~70質量部である、モルタル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な流動性及び施工性を有し、且つ初期から長期にわたる強度発現性が優れるモルタル組成物及びモルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態のモルタル組成物は、セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類、シリカフューム、及び細骨材を含む。
【0012】
セメントは種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、フライアッシュセメント等が挙げられる。セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントが好ましい。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0013】
カルシウムアルミネート類としては、CaOをC、AlをA、NaOをN、及びFeをFとして表したとき、CA、CA、C12、CA、又はCA等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、CAF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したC・CaFやC11・CaF等と表示されるカルシウムフルオロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート、CNAやC等と表示されるカルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、アルミナセメント、並びにC・CaSO等と表示されるカルシウムサルホアルミネートを総称するものである。このカルシウムアルミネート類は、結晶質のもの、非結晶質のもの、非晶質及び結晶質が混在したもののいずれも使用可能である。カルシウムアルミネート類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。カルシウムアルミネート類の粉末度は、初期強度発現性をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3000cm/g以上であることが好ましく、5000cm/g以上であることがより好ましい。カルシウムアルミネート類の粉末度は、ブレーン比表面積で8000cm/g以下であることが好ましい。
【0014】
カルシウムアルミネート類の含有量は、セメント100質量部に対し、10~50質量部であることが好ましく、15~45質量部であることがより好ましく、20~40質量部であることが更に好ましい。カルシウムアルミネート類の含有量が上記範囲内であれば、初期の強度発現性を更に向上させることができる。
【0015】
石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏が挙げられる。石膏類としては、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。石膏類の粉末度は、長期の強度発現性を更に高めるという観点から、ブレーン比表面積で3000cm/g以上であることが好ましく、5000cm/g以上であることがより好ましい。石膏類の粉末度は、ブレーン比表面積で15000cm/g以下であることが好ましい。
【0016】
石膏類の含有量は、セメント100質量部に対し、無水物換算で2~60質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましく、10~40質量部であることが更に好ましく、15~25質量部であることが最も好ましい。石膏類の含有量が上記範囲内であれば、長期の強度発現性を更に向上させることができる。
【0017】
シリカフュームは金属シリコン等を製造する際に得られる副産物であり、SiOを主成分とする。シリカフュームの粉末度は、長期の強度発現性を更に高めるという観点から、ブレーン比表面積で50000~200000cm/gであることが好ましく、70000~180000cm/gであることがより好ましく、100000~150000cm/gであることが更に好ましい。
【0018】
シリカフュームの含有量は、セメント100質量部に対し、1~35質量部であることが好ましく、2~30質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることが更に好ましく、7~20質量部であることが最も好ましい。シリカフュームの含有量が上記範囲内であれば、長期の強度発現性を更に向上させることができる。
【0019】
石膏類及びシリカフュームの合計の含有量は、セメント100質量部に対し、10~95質量部である。石膏類及びシリカフュームの合計の含有量が上記範囲外であると、練り混ぜが困難、流動性が低い等の施工性に難が見られ、初期及び長期の強度発現性も劣る。石膏類及びシリカフュームの合計の含有量は、良好な流動性と、優れた初期及び長期の強度発現性とを両立しやすいという観点から、セメント100質量部に対し、15~80質量部であることが好ましく、20~65質量部であることがより好ましく、25~55質量部であることが更に好ましく、27~40質量部であることが最も好ましい。
【0020】
石膏類の含有量に対するシリカフュームの含有量の質量比([シリカフュームの含有量(質量部)]/[石膏類の含有量(質量部)])は、0.1~6である。石膏類の含有量に対するシリカフュームの含有量の質量比が上記範囲外であると、練り混ぜが困難であったり、コテ仕上げ性が低下したりといった施工性が悪化する。石膏類の含有量に対するシリカフュームの含有量の質量比は、より良好な施工性が得られるという観点から、0.14~4.5であることが好ましく、0.16~3であることがより好ましく、0.18~2.5であることが更に好ましく、0.2~1.0であることが最も好ましい。
【0021】
細骨材としては、例えば、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられる。これらの中でも、珪砂、石灰石等を細骨材として用いることが好ましい。細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0022】
細骨材の含有量は、セメント100質量部に対し、160~640質量部であることが好ましく、200~550質量部であることがより好ましく、280~450質量部であることが更に好ましい。細骨材の含有量が上記範囲内であれば、良好な流動性が得られやすく、コテ性状といった施工性も一層優れる。
【0023】
細骨材の粒度は、粒径が5mm未満(5mmふるい通過分)であって、且つ細骨材全量に対し、粒径が0.3mm未満である粒子の質量割合が5~45質量%である。粒径が0.3mm未満である粒子の質量割合が上記範囲外であると、良好な流動性が得られにくく、練り混ぜが困難であったり、コテ仕上げ性が低下したりといった施工性が悪化する。粒径が0.3mm未満である粒子の質量割合は、良好な流動性が得られやすく、コテ性状といった施工性も一層優れるという観点から、細骨材全量に対し、10~43質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、20~38質量%であることが更に好ましく、20~30質量%であることが最も好ましい。
本明細書において、粒径が3mm未満である粒子の細骨材とは、細骨材をふるい分けした際に3mmふるいを通過するものを指す。
【0024】
本実施形態のモルタル組成物は、膨張材を含んでもよい。膨張材は、コンクリート用膨張材として一般に使用されているJIS適合の膨張材(JIS A 6202:2008)であれば、何れの膨張材でもかまわない。膨張材としては、例えば、遊離生石灰を主成分とする膨張材(生石灰系膨張材)、アーウィンを主成分とする膨張材(エトリンガイト系膨張材)、遊離生石灰とエトリンガイト生成物質との複合系膨張材が挙げられる。膨張材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。膨張材はブレーン比表面積が2000~6000cm/gのものを使用することが好ましい。
【0025】
膨張材の含有量は、セメント100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが更に好ましい。膨張材の含有量が上記範囲内であれば、初期及び長期の強度発現性、寸法変化率等がより一層優れたものとなる。
【0026】
本実施形態のモルタル組成物は、減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤が挙げられる。これらの中では、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0027】
減水剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で0.1~5質量部であることが好ましく、0.3~3質量部であることがより好ましく、0.5~1.5質量部であることが更に好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な流動性が得られやすい。
【0028】
本実施形態のモルタル組成物は、凝結調整剤を含んでもよい。凝結調整剤としては、凝結遅延剤及び凝結促進剤があり、求めるモルタルの性質に応じて適宜使い分けることができ、併用してもよい。凝結調整剤としては、十分な可使時間の確保と早期硬化性とを両立しやすいという観点から、凝結遅延剤と凝結促進剤とを併用することが好ましい。
【0029】
本実施形態のモルタル組成物が凝結遅延剤を含むことで、モルタルの練り上り温度が高くなる夏場等においても、可使時間を確保しやすい。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はその塩;ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等の無機塩;糖類が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、クエン酸塩、酒石酸、酒石酸塩及びアルカリ金属炭酸塩が好ましい。凝結遅延剤は、粉体であってもよく、液状体(例えば、水溶液、エマルジョン、懸濁液の形態)であってもよい。凝結遅延剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0030】
凝結遅延剤の含有量は、セメント100質量部に対し、0.1~7.5質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましく、0.5~3.5質量部であることが最も好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を更に確保しやすく、初期強度発現性が低下しにくい。
【0031】
凝結促進剤としては、アルカリ金属の炭酸塩、硫酸塩、水酸化物等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩は、アルカリ金属(水素原子を除く周期表第一族元素)の炭酸塩又は過炭酸塩であれば特に限定されるものではない。アルカリ金属炭酸塩としては、初期及び長期の強度発現性を更に促進させるという観点から、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。凝結促進剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0032】
凝結促進剤の含有量は、セメント100質量部に対し、0.1~7.5質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましく、0.5~3.5質量部であることが最も好ましい。凝結促進剤の含有量が上記範囲内であれば、凝結までの時間を早めつつ、可使時間を確保しやすい。
【0033】
本実施形態のモルタル組成物において凝結遅延剤と凝結促進剤とを併用する場合、十分な可使時間を確保しつつ、早期硬化性が優れるという観点から、セメント100質量部に対し、0.1~7.5質量部の凝結遅延剤と0.1~7.5質量部の凝結促進剤とからなる凝結調整剤を配合することが好ましい。また、凝結遅延剤と凝結促進剤とを併用する場合、その合計の含有量は、早期硬化性と可使時間の確保とを両立しやすいという観点から、セメント100質量部に対し、0.2~10質量部であることが好ましく、0.5~7質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが更に好ましい。凝結遅延剤と凝結促進剤の配合は、質量比で3:7~7:3であることが好ましく、4:6~6:4であることが好ましい。
【0034】
本実施形態のモルタル組成物は、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の種類は特に限定されず、例えば、セルロース系増粘剤、アクリル系増粘剤、グアーガム系増粘剤が挙げられる。増粘剤としてはセルロース系増粘剤が好ましい。セルロース系増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。増粘剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0035】
増粘剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で0.01~2質量部であることが好ましく、0.02~1質量部であることがより好ましく、0.03~0.5質量部であることが最も好ましい。増粘剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な流動性が得られやすく、圧縮強度も向上しやすい。
【0036】
本実施形態のモルタル組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては、例えば、発泡剤、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、繊維等が挙げられる。
【0037】
本実施形態のモルタル組成物は、通常用いられる混練器具により上記した各成分を混合することで調製でき、その器具は特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、ハンドミキサ、傾胴ミキサ、パン型ミキサ、二軸ミキサ等が挙げられる。
【0038】
本実施形態のモルタル組成物は、硬化時において、JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて20℃環境下で測定する材齢1日の圧縮強度が45N/mm以上であることが好ましく、50N/mm以上であることがより好ましく、52N/mm以上であることがより好ましい。材齢1日の圧縮強度は80N/mm以下であってもよい。
本実施形態のモルタル組成物は、硬化時において、JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて20℃環境下で測定する材齢28日の圧縮強度が85N/mm以上であることが好ましく、90N/mm以上であることがより好ましく、95N/mm以上であることがより好ましい。材齢28日の圧縮強度は140N/mm以下であってもよい。
モルタル組成物の硬化時の圧縮強度が上記範囲内であれば、初期から長期にわたる強度発現性が優れるため、工期を更に短縮でき、且つ一層頑丈なものとなる。
【0039】
本実施形態のモルタル組成物は、水と混合してモルタルとして調製することができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、セメント100質量部に対し、30~70質量部であることが好ましく、40~65質量部であることがより好ましく、45~60質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、より流動性を確保しやすく、材料分離の発生、硬化体の収縮の増加及び初期の強度発現性の低下を抑制しやすい。
【0040】
本実施形態のモルタルの調製は、通常のモルタルと同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば上述したものを用いることができる。
【0041】
本実施形態のモルタル組成物及びモルタルは、流動性に優れ、練り混ぜやコテ性状といった施工性に優れ、且つ、初期から長期にわたる強度発現性が優れるものである。そのため、本実施形態のモルタル組成物及びモルタルは、工期の短縮ができ、優れた強度発現性が求められる各種構造物や現場の補修・補強に好適に用いることができる。その施工方法は特に限定されず、コテ塗り、振動機を用いて敷き均す方法等が選択できる。
【実施例0042】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実験は全て20℃で行った。
【0043】
[材料]
・セメント(略号C):早強ポルトランドセメント(ブレーン比表面積4500cm/g)
・石膏類(略号CS):無水石膏(ブレーン比表面積7000cm/g)
・シリカフューム(略号SF):ブレーン比表面積120000cm/g
・細骨材(略号S):珪砂S1(0.3mm未満の粒子を0質量%に粒度調整済み)
珪砂S2(0.3mm未満の粒子を15質量%に粒度調整済み)
珪砂S3(0.3mm未満の粒子を25質量%に粒度調整済み)
珪砂S4(0.3mm未満の粒子を35質量%に粒度調整済み)
珪砂S5(0.3mm未満の粒子を50質量%に粒度調整済み)
・カルシウムアルミネート:ブレーン比表面積5250cm/g
・膨張材:生石灰系膨張材(ブレーン比表面積3200cm/g)
・減水剤:ポリカルボン酸系減水剤
・増粘剤:メチルセルロース系増粘剤
・凝結調整剤A:クエン酸塩
・凝結調整剤B:炭酸リチウム
【0044】
[モルタル組成物の配合設計]
セメント100質量部に対して、セメント、石膏及びシリカフュームを表1に示す割合とし、カルシウムアルミネートを30質量部、膨張材を3質量部、減水剤を0.8質量部(固形分換算)、増粘剤を0.05質量部(固形分換算)、凝結調整剤Aを1質量部、凝結調整剤Bを1質量部として配合設計した。
【0045】
[モルタルの作製]
20℃環境下において、セメント100質量部に対して、水50質量部を添加し、表1で配合設計したモルタル組成物の各材料を添加し、ハンドミキサで120秒混練しモルタルを約3L作製した。
【0046】
【表1】
【0047】
[評価方法]
以下の方法でモルタルを評価した。評価結果を表2に示す。
・フレッシュ性状(コンシステンシー)
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」12.フロー試験に準じて、20℃環境下でモルタルの引抜きフロー値を測定し、これをコンシステンシーとして評価した。
・コテ性状
型枠(30×30×2cm)にモルタルを打設し、コテ均しによる仕上げ性の評価を行った。コテにモルタルが付着していたり、仕上げたモルタル表面が美観的に良好でない場合(多少凸凹している、ペースト分が少なく骨材が目立っている)×と評価した。上記以外は○と評価した。
・圧縮強度
JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて、材齢1日及び28日における圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径50mm、高さ100mmとした。材齢28日の供試体は、打設した翌日に脱型した後、材齢日まで水中で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例のモルタルは、良好な流動性とコテ性状を示し、1日及び28日での圧縮強度も優れていた。一方、比較例のモルタルNo.4、8、13は、練り混ぜが困難であった。また、比較例のモルタルNo.5、9、10は、練り混ぜられたものの、流動性やコテ性状が劣るものであったり、1日及び28日での圧縮強度が優れないものであった。