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特開2024-127305印刷システム、印刷データ生成装置、プログラム、及び印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127305
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】印刷システム、印刷データ生成装置、プログラム、及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240912BHJP
   B41J 2/52 20060101ALI20240912BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B41J2/01 101
B41J2/52
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036366
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高井 大輔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EB06
2C056EB27
2C056EB30
2C056EB38
2C056EB47
2C056EB58
2C056EC06
2C056EC13
2C056EC29
2C056EC36
2C056ED01
2C056ED05
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA10
2C056FB02
2C056FD02
2C056FD13
2C056HA41
(57)【要約】
【課題】ホットメルト樹脂粉末を用いて行う画像の転写をより適切に行う。
【解決手段】印刷システム10であって、印刷データを生成する印刷データ生成部12と、印刷データに基づいて印刷を実行する印刷部14と、ホットメルト樹脂粉末を転写媒体50に付着させた状態で、転写媒体50から被転写媒体へ画像を転写する熱転写部18とを備え、印刷データ生成部12は、画像取得処理、吐出位置指定画像生成処理、補填位置指定データ生成処理、及びデータ生成処理を行い、画像取得処理において、転写画像を示す印刷対象画像を取得し、吐出位置指定画像生成処理において、量子化処理を印刷対象画像に対して行うことで、吐出位置指定画像を生成し、補填位置指定データ生成処理において、印刷対象画像及び吐出位置指定画像に基づき、補填用吐出位置を決定し、データ生成処理において、印刷データを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写媒体に印刷した画像である転写画像を被転写媒体へ転写することで前記被転写媒体に画像を描く印刷システムであって、
前記転写画像を示す印刷データを生成する印刷データ生成部と、
インクジェット方式で前記転写媒体へ印刷を行う印刷部と、
前記転写媒体から前記被転写媒体へ画像を転写する転写部と
を備え、
前記印刷部は、前記印刷データ生成部で生成した前記印刷データに基づいて印刷を実行することで、前記転写媒体へ前記転写画像を印刷し、
前記転写部は、加熱によって軟化する樹脂を含む粉末であるホットメルト樹脂粉末を前記転写画像が印刷されている前記転写媒体に付着させた状態で、前記転写媒体を加熱し、前記ホットメルト樹脂粉末が加熱によって軟化することで形成される樹脂部であるホットメルト樹脂部を前記被転写媒体に付着させることで、前記転写媒体から前記被転写媒体へ前記画像を転写し、
前記印刷データ生成部は、
前記印刷データの生成に用いる画像である印刷対象画像を取得する画像取得処理と、
前記転写画像を描くために前記印刷部によってインクを吐出する吐出位置である画像用吐出位置を指定する画像である吐出位置指定画像を前記印刷対象画像に基づいて生成する吐出位置指定画像生成処理と、
前記画像用吐出位置の近辺における前記画像用吐出位置と異なる吐出位置である補填用吐出位置を指定するデータである補填位置指定データを生成する補填位置指定データ生成処理と、
前記吐出位置指定画像及び前記補填位置指定データに基づいて前記印刷データを生成するデータ生成処理と
を行い、
前記画像取得処理において、前記印刷対象画像として、前記転写画像に対応する画像を所定の階調数で示すビットマップ画像を取得し、
前記吐出位置指定画像生成処理において、階調数を小さくする量子化処理を前記印刷対象画像に対して行うことで、前記吐出位置指定画像を生成し、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記印刷対象画像及び前記吐出位置指定画像に基づき、前記補填用吐出位置を決定することを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記印刷データ生成部は、前記被転写媒体において前記転写画像が転写される領域の色である転写位置色を取得する媒体色取得処理を更に行い、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記媒体色取得処理で取得される前記転写位置色に合わせた色のインクが前記補填用吐出位置に吐出されるように、前記補填位置指定データを生成することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記補填位置指定データ生成処理において、前記印刷データ生成部は、
前記印刷対象画像の中で前記転写画像に対応する画素である画像対応画素を識別し、
前記補填位置指定データとして、前記画像対応画素に対応する吐出位置のうち、前記吐出位置指定画像において前記画像用吐出位置として指定されていない吐出位置の少なくとも一部を前記補填用吐出位置として指定するデータを生成することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記印刷データ生成部は、前記画像対応画素に対して所定のフラグを設定するフラグ設定処理を更に行い、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記吐出位置指定画像の画素のうち、前記フラグが設定されており、かつ、前記画像用吐出位置にならない画素を選択して、当該画素に対応する吐出位置を前記補填用吐出位置として指定する前記補填位置指定データを生成することを特徴とする請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記印刷データ生成部は、前記画像対応画素に対応する画素に所定の画素値が設定されている画像である所定画素値画像を生成する画像生成処理を更に行い、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記吐出位置指定画像の画素のうち、前記所定画素値画像において前記所定の画素値が設定されている画素に対応し、かつ、前記画像用吐出位置にならない画素を選択して、当該画素に対応する吐出位置を前記補填用吐出位置として指定する前記補填位置指定データを生成することを特徴とする請求項3に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記印刷データ生成部は、前記補填位置指定データ生成処理において、無色で透光性のインクであるクリアインクが前記補填用吐出位置に吐出されるように、前記補填位置指定データを生成することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記印刷データ生成部は、
光反射性のインクを吐出する吐出位置である光反射性インク吐出位置を決定する光反射性インク吐出位置決定処理を更に行い、
前記光反射性インク吐出位置決定処理において、少なくとも前記画像用吐出位置について、前記光反射性インク吐出位置に決定し、
前記印刷部は、
前記転写画像の上に前記光反射性のインクの層が形成されるように、前記転写媒体へインクを吐出することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項8】
転写媒体に印刷する画像である転写画像を示す印刷データを生成する印刷データ生成装置であって、
前記転写画像は、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置により、前記転写媒体へ印刷され、転写装置により、前記転写媒体から被転写媒体へ転写される画像であり、
前記印刷装置は、前記印刷データ生成装置で生成した前記印刷データに基づいて印刷を実行することで、前記転写媒体へ前記転写画像を印刷し、
前記転写装置は、加熱によって軟化する樹脂を含む粉末であるホットメルト樹脂粉末を前記転写画像が印刷されている前記転写媒体に付着させた状態で、前記転写媒体を加熱し、前記ホットメルト樹脂粉末が加熱によって軟化することで形成される樹脂部であるホットメルト樹脂部を前記被転写媒体に付着させることで、前記転写媒体から前記被転写媒体へ前記画像を転写し、
前記印刷データ生成装置は、
前記印刷データの生成に用いる画像である印刷対象画像を取得する画像取得処理と、
前記転写画像を描くために前記印刷装置によってインクを吐出する吐出位置である画像用吐出位置を指定する画像である吐出位置指定画像を前記印刷対象画像に基づいて生成する吐出位置指定画像生成処理と、
前記画像用吐出位置の近辺における前記画像用吐出位置と異なる吐出位置である補填用吐出位置を指定するデータである補填位置指定データを生成する補填位置指定データ生成処理と、
前記吐出位置指定画像及び前記補填位置指定データに基づいて前記印刷データを生成するデータ生成処理と
を行い、
前記画像取得処理において、前記印刷対象画像として、前記転写画像に対応する画像を所定の階調数で示すビットマップ画像を取得し、
前記吐出位置指定画像生成処理において、階調数を小さくする量子化処理を前記印刷対象画像に対して行うことで、前記吐出位置指定画像を生成し、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記印刷対象画像及び前記吐出位置指定画像に基づき、前記補填用吐出位置を決定することを特徴とする印刷データ生成装置。
【請求項9】
前記被転写媒体において前記転写画像が転写される領域の色である転写位置色を取得する媒体色取得処理を更に行い、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記媒体色取得処理で取得される前記転写位置色に合わせた色のインクが前記補填用吐出位置に吐出されるように、前記補填位置指定データを生成することを特徴とする請求項8に記載の印刷データ生成装置。
【請求項10】
前記補填位置指定データ生成処理において、
前記印刷対象画像の中で前記転写画像に対応する画素である画像対応画素を識別し、
前記補填位置指定データとして、前記画像対応画素に対応する吐出位置のうち、前記吐出位置指定画像において前記画像用吐出位置として指定されていない吐出位置の少なくとも一部を前記補填用吐出位置として指定するデータを生成することを特徴とする請求項8に記載の印刷データ生成装置。
【請求項11】
転写媒体に印刷する画像である転写画像を示す印刷データを生成する印刷データ生成装置の動作を制御するプログラムであって、
前記転写画像は、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置により、前記転写媒体へ印刷され、転写装置により、前記転写媒体から被転写媒体へ転写される画像であり、
前記印刷装置は、前記印刷データ生成装置で生成した前記印刷データに基づいて印刷を実行することで、前記転写媒体へ前記転写画像を印刷し、
前記転写装置は、加熱によって軟化する樹脂を含む粉末であるホットメルト樹脂粉末を前記転写画像が印刷されている前記転写媒体に付着させた状態で、前記転写媒体を加熱し、前記ホットメルト樹脂粉末が加熱によって軟化することで形成される樹脂部であるホットメルト樹脂部を前記被転写媒体に付着させることで、前記転写媒体から前記被転写媒体へ前記画像を転写し、
前記印刷データ生成装置に、
前記印刷データの生成に用いる画像である印刷対象画像を取得する画像取得処理と、
前記転写画像を描くために前記印刷装置によってインクを吐出する吐出位置である画像用吐出位置を指定する画像である吐出位置指定画像を前記印刷対象画像に基づいて生成する吐出位置指定画像生成処理と、
前記画像用吐出位置の近辺における前記画像用吐出位置と異なる吐出位置である補填用吐出位置を指定するデータである補填位置指定データを生成する補填位置指定データ生成処理と、
前記吐出位置指定画像及び前記補填位置指定データに基づいて前記印刷データを生成するデータ生成処理と
を行わせ、
前記画像取得処理において、前記印刷対象画像として、前記転写画像に対応する画像を所定の階調数で示すビットマップ画像を取得させ、
前記吐出位置指定画像生成処理において、階調数を小さくする量子化処理を前記印刷対象画像に対して行わせることで、前記吐出位置指定画像を生成させ、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記印刷対象画像及び前記吐出位置指定画像に基づき、前記補填用吐出位置を決定させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
前記印刷データ生成装置に、前記被転写媒体において前記転写画像が転写される領域の色である転写位置色を取得する媒体色取得処理を更に行わせ、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記媒体色取得処理で取得される前記転写位置色に合わせた色のインクが前記補填用吐出位置に吐出されるように、前記補填位置指定データを生成させることを特徴とする請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記補填位置指定データ生成処理において、前記印刷データ生成装置に、
前記印刷対象画像の中で前記転写画像に対応する画素である画像対応画素を識別させ、
前記補填位置指定データとして、前記画像対応画素に対応する吐出位置のうち、前記吐出位置指定画像において前記画像用吐出位置として指定されていない吐出位置の少なくとも一部を前記補填用吐出位置として指定するデータを生成させることを特徴とする請求項11に記載のプログラム。
【請求項14】
転写媒体に印刷した画像である転写画像を被転写媒体へ転写することで前記被転写媒体に画像を描く印刷方法であって、
前記転写画像を示す印刷データを生成する印刷データ生成段階と、
前記印刷データ生成段階で生成した前記印刷データに基づいて印刷を実行する段階であり、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置によって前記転写媒体へ前記転写画像を印刷する印刷段階と、
加熱によって軟化する樹脂を含む粉末であるホットメルト樹脂粉末を前記転写画像が印刷されている前記転写媒体に付着させるホットメルト樹脂付着段階と、
前記ホットメルト樹脂粉末が付着している前記転写媒体を加熱し、前記ホットメルト樹脂粉末が加熱によって軟化することで形成される樹脂部であるホットメルト樹脂部を前記被転写媒体に付着させることで、前記転写媒体から前記被転写媒体へ前記転写画像を転写する転写段階と
を備え、
前記印刷データ生成段階において、
前記印刷データの生成に用いる画像である印刷対象画像を取得する画像取得処理と、
前記転写画像を描くために前記印刷装置によってインクを吐出する吐出位置である画像用吐出位置を指定する画像である吐出位置指定画像を前記印刷対象画像に基づいて生成する吐出位置指定画像生成処理と、
前記画像用吐出位置の近辺における前記画像用吐出位置と異なる吐出位置である補填用吐出位置を指定するデータである補填位置指定データを生成する補填位置指定データ生成処理と、
前記吐出位置指定画像及び前記補填位置指定データに基づいて前記印刷データを生成するデータ生成処理と
を行い、
前記画像取得処理において、前記印刷対象画像として、前記転写画像に対応する画像を所定の階調数で示すビットマップ画像を取得し、
前記吐出位置指定画像生成処理において、階調数を小さくする量子化処理を前記印刷対象画像に対して行うことで、前記吐出位置指定画像を生成し、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記印刷対象画像及び前記吐出位置指定画像に基づき、前記補填用吐出位置を決定することを特徴とする印刷方法。
【請求項15】
前記印刷データ生成段階において、前記被転写媒体において前記転写画像が転写される領域の色である転写位置色を取得する媒体色取得処理を更に行い、
前記補填位置指定データ生成処理において、前記媒体色取得処理で取得される前記転写位置色に合わせた色のインクが前記補填用吐出位置に吐出されるように、前記補填位置指定データを生成することを特徴とする請求項14に記載の印刷方法。
【請求項16】
前記補填位置指定データ生成処理において、
前記印刷対象画像の中で前記転写画像に対応する画素である画像対応画素を識別し、
前記補填位置指定データとして、前記画像対応画素に対応する吐出位置のうち、前記吐出位置指定画像において前記画像用吐出位置として指定されていない吐出位置の少なくとも一部を前記補填用吐出位置として指定するデータを生成することを特徴とする請求項14に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、印刷データ生成装置、プログラム、及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂の粉体で形成したホットメルト層を用いて転写印刷を行う方法が知られている。この方法では、例えば、表面に剥離層が形成された転写媒体(転写シート等)に画像を印刷し、更に転写媒体の全面にホットメルト層を形成した状態で、転写媒体と被転写媒体とを重ねて加熱及び加圧を行うことで、転写媒体から被転写媒体へ画像の転写を行う。この場合、例えば、受理層が形成されたフィルム等を転写媒体として用い、転写媒体に対してカラーインクを用いて画像を印刷し、その画像の上に、白色のインク(白インク)を用いて白インクの層を形成する。そして、転写媒体における白インクの層の上にホットメルト樹脂の粉末(粉体)を付着させ、ヒートプレス機で圧着を行うことで、画像の転写を実行する。また、従来、転写媒体の全面にホットメルト層を形成することなく、画像に一致させてホットメルト層を形成する方法等も知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-171840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カラーインクで印刷した画像の上に白インクの層を形成する場合、被転写媒体の地の色が濃い色であったとしても、被転写媒体で適切に画像を表現することができる。しかし、この場合、画像を表現するためにカラーインクを着弾させる部分以外に、例えば淡色領域においてカラーインクで形成されるインクのドットの隙間部分を埋めるように白インクが着弾することで、画像の全体又は一部の領域の色が白っぽくなり、印刷の品質(画質)が低下する場合がある。そのため、より高い品質で印刷を行うためには、例えば、カラーインクのドットの隙間部分に白インクを着弾させることが好ましくない場合もある。
【0005】
しかし、カラーインクのドットの隙間部分に白インクを着弾させない場合、転写する画像が印刷される領域のうち、例えば淡い色を表現する部分である淡色領域において、例えば単位面積あたりのインクの量が少なくなることで、ホットメルト層の材料となる樹脂の粉体が適切に付着しなくなる場合がある。また、その結果、例えば適切に転写を行うことができなくなり、所望の印刷結果を得られなくなる場合がある。より具体的に、ホットメルト層を用いて転写印刷を行う場合、適切に転写を行うためには、通常、転写媒体上のインクに対し、十分な量の樹脂の粉体を付着させる必要がある。そして、この場合、例えば、画像領域の面積やインクが含む液体量(例えば、水分量)が不十分であると、十分な量の樹脂の粉体を付着させることができなくなる。そのため、例えば淡色領域では、上記のように、樹脂の粉体が適切に付着しなくなるおそれがある。また、その結果、例えば上記のような白インクの層を形成しない場合に、転写不良等により、所望の印刷結果を得られなくなるおそれがある。
【0006】
尚、特許文献1に開示されている方法では、転写媒体として、非撥水性でありながら、画像を形成して粉体を振り掛けるまでの間は粉体の付着性を保持するだけのインクの非浸透性を維持する転写シートを用いる。また、粉体としても、粒径の小さな所定のグレードの樹脂粉末を用いている。しかし、この場合、使用可能な転写媒体や粉末の条件が限られることで、印刷のコストが大きく上昇することや、印刷条件の自由度が大きく低下することが考えられる。
【0007】
そのため、従来、より適切な方法で画像の転写を行うことが望まれている。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷システム、印刷データ生成装置、プログラム、及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置(インクジェットプリンタ)で印刷を行う場合、インクを吐出する吐出位置について、例えば、ハーフトーン処理として量子化処理(例えば二値化処理)を行うことで決定する。そして、この場合、例えば画像における淡色領域では、インクの吐出位置が離散的になることで、カラーインクのドットの隙間部分が形成されることになる。また、その結果、例えば画像の全体を覆うように白インクの層を形成すると、隙間部分に白インクが着弾することで、上記のような画質の低下が生じることになる。また、この場合、カラーインクと重なる位置のみに白インクを着弾させると、カラーインクのドットの隙間部分において樹脂の粉体が付着しにくくなることで、上記のような転写不良が生じやすくなる。
【0009】
これに対し、本願の発明者は、鋭意研究により、上記のような隙間部分に対し、例えばユーザによって指定される色のインクや、所定の条件に基づいて決定される色のインクを用いて、更にインクを吐出して、補填を行うことを考えた。この場合、例えば、画像の全体を覆うように白インクの層を形成したとしても、転写後において、補填用のインクによって白インクの層が隠れることで、画像の全体又は一部の領域の色が過度に白っぽくなることを適切に防止することができる。また、カラーインクと重なる位置のみに白インクを着弾させる場合にも、隙間部分が補填用のインクで補填されていることで、樹脂の粉体をより適切に付着させることができる。また、本願の発明者は、実際に実験等を行うことで、このような方法でより適切に転写印刷を行えることを確認した。
【0010】
そして、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、転写媒体に印刷した画像である転写画像を被転写媒体へ転写することで前記被転写媒体に画像を描く印刷システムであって、前記転写画像を示す印刷データを生成する印刷データ生成部と、インクジェット方式で前記転写媒体へ印刷を行う印刷部と、前記転写媒体から前記被転写媒体へ画像を転写する転写部とを備え、前記印刷部は、前記印刷データ生成部で生成した前記印刷データに基づいて印刷を実行することで、前記転写媒体へ前記転写画像を印刷し、前記転写部は、加熱によって軟化する樹脂を含む粉末であるホットメルト樹脂粉末を前記転写画像が印刷されている前記転写媒体に付着させた状態で、前記転写媒体を加熱し、前記ホットメルト樹脂粉末が加熱によって軟化することで形成される樹脂部であるホットメルト樹脂部を前記被転写媒体に付着させることで、前記転写媒体から前記被転写媒体へ前記画像を転写し、前記印刷データ生成部は、前記印刷データの生成に用いる画像である印刷対象画像を取得する画像取得処理と、前記転写画像を描くために前記印刷部によってインクを吐出する吐出位置である画像用吐出位置を指定する画像である吐出位置指定画像を前記印刷対象画像に基づいて生成する吐出位置指定画像生成処理と、前記画像用吐出位置の近辺における前記画像用吐出位置と異なる吐出位置である補填用吐出位置を指定するデータである補填位置指定データを生成する補填位置指定データ生成処理と、前記吐出位置指定画像及び前記補填位置指定データに基づいて前記印刷データを生成するデータ生成処理とを行い、前記画像取得処理において、前記印刷対象画像として、前記転写画像に対応する画像を所定の階調数で示すビットマップ画像を取得し、前記吐出位置指定画像生成処理において、階調数を小さくする量子化処理を前記印刷対象画像に対して行うことで、前記吐出位置指定画像を生成し、前記補填位置指定データ生成処理において、前記印刷対象画像及び前記吐出位置指定画像に基づき、前記補填用吐出位置を決定することを特徴とする。
【0011】
このように構成した場合、例えば、転写画像を描くためにインクを吐出する画像用吐出位置に加えて、画像用吐出位置の近辺に、補填用吐出位置を適切に指定(決定)することができる。また、この場合、印刷部は、例えば、印刷データに基づき、画像用吐出位置及び補填用吐出位置へインクを吐出する。そのため、このように構成すれば、例えば、印刷部によって、転写画像における淡色領域等に対してインクを補填しつつ、適切に印刷を行うことができる。また、これにより、例えば、転写部での転写後の画像の全体又は一部の領域の色が過度に白っぽくなることや、ホットメルト樹脂粉末の付着不良が生じること等を適切に防止して、より適切に画像の転写を行うことができる。
【0012】
この構成において、印刷部としては、例えば、インクジェットプリンタ等の印刷装置を用いることが考えられる。印刷対象画像及び吐出位置指定画像等の画像については、例えば、解像度に応じて設定される画素の位置に対応付けて値(画素値)が設定されているデータ等と考えることができる。この場合、解像度については、例えば、印刷の条件に応じて設定される解像度等と考えることができる。また、画素の位置については、例えば、印刷部がインクを吐出する吐出位置に対応する位置等と考えることができる。
【0013】
また、この構成において、ホットメルト樹脂粉末を転写媒体に付着させることについては、例えば、ホットメルト樹脂粉末を用いて行う公知の転写印刷と同一又は同様にして転写媒体にホットメルト樹脂粉末を付着させること等と考えることができる。より具体的に、この場合、ホットメルト樹脂粉末を転写媒体に付着させることについては、例えば、転写媒体においてインクが付着している部分にホットメルト樹脂粉末を付着させること等と考えることができる。また、転写媒体においてインクが付着している部分にホットメルト樹脂粉末を付着させることは、例えば、転写媒体において単位面積あたりに十分な量のインクが付着している部分にホットメルト樹脂粉末を付着させることであってよい。また、転写部は、例えば、転写媒体に付着しているインクに含まれる色材の少なくとも一部をホットメルト樹脂部の少なくとも一部と共に被転写媒体へ移動させることで、転写媒体から被転写媒体へ画像を転写する。
【0014】
また、補填用吐出位置等に関し、補填については、例えば、画像用吐出位置以外の吐出位置へインクを吐出すること等と考えることができる。補填位置指定データ生成処理では、補填用吐出位置として、例えば、画像用吐出位置になっていない吐出位置を指定する。補填用吐出位置へ吐出する補填用のインクとしては、例えば、白色以外の色のインクを用いることが考えられる。より具体的に、補填用のインクとしては、例えば、いずれかの色のカラーインクを用いることが考えられる。この場合、例えば、複数色のカラーインクを補填用吐出位置へ吐出してもよい。このように構成すれば、例えば、補填用吐出位置において、様々な色を適切に表現することができる。また、補填用吐出位置で表現すべき色によっては、補填用インクとして、白色のインクを用いることも考えられる。例えば、クリーム色やパステルトーンの色のような薄めの色を補填用吐出位置で表現する場合、カラーインクに加えて、白色のインクを補填用インクとして用いることも考えられる。また、この場合、補填用インクとして、有色のカラーインクと白色のインクとを組み合わせて用いることで、例えば、補填用吐出位置においてより多様な色を表現できる。
【0015】
また、補填用インクとしてカラーインクを用いる場合、例えば、被転写媒体の色に合わせた色のインクを補填用吐出位置へ吐出することが考えられる。この場合、印刷データ生成部は、例えば、被転写媒体において転写画像が転写される領域の色である転写位置色を取得する媒体色取得処理を更に行う。そして、印刷データ生成部は、補填位置指定データ生成処理において、例えば、媒体色取得処理で取得される転写位置色に合わせた色のインクが補填用吐出位置に吐出されるように、補填位置指定データを生成する。このように構成すれば、例えば、補填用吐出位置へ吐出したインクの色が被転写媒体で過度に目立つことを適切に防止することができる。また、この場合、補填用吐出位置へ吐出する補填用インクについて、例えば、インクの色及び液滴の容量を組み合わせて、転写位置色の近似色を表現するように指定を行うことが考えられる。また、媒体色取得処理において、印刷データ生成部は、例えば、ユーザによる手動の選択の結果に応じて、補填用インクとして吐出するインクの色を決定する。また、媒体色取得処理において、印刷データ生成部は、例えば、色の測定(測色)の結果に応じて、自動的に色の選択を行ってもよい。
【0016】
また、この構成において、補填用吐出位置としては、例えば、転写画像が印刷される画像領域内に生じる隙間部分にある吐出位置を指定することが考えられる。この場合、画像領域内に生じる隙間部分にある吐出位置については、例えば、淡色領域等において量子化処理を行うことでインクを吐出しない位置になった吐出位置等と考えることができる。また、このような吐出位置については、例えば、量子化処理を行う前の画像において色が設定されている画素に対応し、かつ、量子化処理後の画像において色が設定されない画素に対応する吐出位置等と考えることもできる。また、この場合、量子化処理を行う前の画像でも色が設定されていない画素に対応する吐出位置については、補填用吐出位置として選択しないことが好ましい。このような吐出位置については、例えば、もともと色を表現していない画素に対応する吐出位置等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、画像領域内の隙間部分のみに対し、補填用吐出位置を適切に設定することができる。
【0017】
また、より具体的に、この場合、補填位置指定データ生成処理において、印刷データ生成部は、例えば、印刷対象画像の中で転写画像に対応する画素である画像対応画素を識別する。そして、印刷データ生成部は、例えば、補填位置指定データとして、画像対応画素に対応する吐出位置のうち、吐出位置指定画像において画像用吐出位置として指定されていない吐出位置の少なくとも一部を補填用吐出位置として指定するデータを生成する。この場合、画像対応画素については、例えば、量子化を行う前の画像である印刷対象画像において転写画像に対応している画素等と考えることができる。また、吐出位置指定画像については、例えば、吐出位置指定画像生成処理で量子化処理を行った後の画像等と考えることができる。画像対応画素に対応する吐出位置のうち、吐出位置指定画像において画像用吐出位置として指定されていない吐出位置については、例えば、画像対応画素に対応する吐出位置のうち、量子化処理を行うことでインクを吐出しない位置になった吐出位置等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、画像領域内において適切に補填用吐出位置を指定することができる。
【0018】
また、このようにして補填用吐出位置を指定する処理では、例えば、フラグを用いて、画像対応画素を識別することが考えられる。より具体的に、この場合、印刷データ生成部は、例えば、画像対応画素に対して所定のフラグを設定するフラグ設定処理を更に行う。この場合、画像対応画素に対してフラグを設定することについては、例えば、印刷対象画像において転写画像に対応する画素を識別するフラグを設定すること等と考えることができる。また、印刷データ生成部は、例えば、画像対応画素に対応する画素の画素値として所定の値が設定されるデータを生成することで、画像対応画素に対してフラグを設定する。このように構成すれば、例えば、画素対応画素の識別を適切に行うことができる。また、この場合、補填位置指定データ生成処理において、印刷データ生成部は、例えば、吐出位置指定画像の画素のうち、フラグが設定されており、かつ、画像用吐出位置にならない画素を選択して、当該画素に対応する吐出位置を補填用吐出位置として指定する補填位置指定データを生成する。この場合、吐出位置指定画像の画素のうち、フラグが設定されている画素については、例えば、フラグ設定処理でフラグを設定した画素に対応する画素等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、補填用吐出位置を指定する処理をより適切に行うことができる。
【0019】
また、画像対応画素に対応する画素の画素値として所定の値が設定されるデータについては、例えば、画像対応画素に対応する画素に所定の画素値が設定されている画像等と考えることもできる。この場合、印刷データ生成部は、例えば、画像対応画素に対応する画素に所定の画素値が設定されている画像である所定画素値画像を生成する画像生成処理を更に行う。そして、補填位置指定データ生成処理において、印刷データ生成部は、例えば、吐出位置指定画像の画素のうち、所定画素値画像において所定の画素値が設定されている画素に対応し、かつ、画像用吐出位置にならない画素を選択して、当該画素に対応する吐出位置を補填用吐出位置として指定する補填位置指定データを生成する。このように構成した場合も、例えば、補填用吐出位置を指定する処理を適切に行うことができる。
【0020】
また、補填用吐出位置へ吐出するインクとしては、例えば、無色で透光性のインクであるクリアインクを用いてもよい。この場合、補填位置指定データ生成処理において、印刷データ生成部は、例えば、クリアインクが補填用吐出位置に吐出されるように、補填位置指定データを生成する。このように構成した場合、補填用のインクとしてクリアインクを用いることで、例えば、転写画像の見え方への影響をより適切に抑えることができる。また、補填用インクとしてクリアインクを用いる場合、吐出用補填位置以外の吐出位置へ補填用のインクを吐出したとしても、印刷の品質への影響は、生じにくい。そのため、この場合、例えば、画像用吐出位置として指定されている吐出位置の少なくとも一部に対し、更に補填用インクを吐出すること等も考えられる。
【0021】
また、この構成において、印刷部は、例えば、白色のインク等の光反射性のインクを用いて、転写画像の背景となるインクの層を形成する。この場合、転写画像の背景となるインクの層については、例えば、被転写媒体への転写画像の転写後に転写画像と被転写媒体との間の位置にくるインクの層と考えることができる。また、この場合、印刷部は、例えば、転写媒体上に印刷された転写画像の上に、光反射性のインクの層を形成する。また、光反射性のインクの層の形成時において、印刷部は、例えば、少なくとも、画像用吐出位置に対応する吐出位置に対し、光反射性のインクを吐出する。また、より具体的に、この場合、印刷データ生成部は、例えば、光反射性のインクを吐出する吐出位置である光反射性インク吐出位置を決定する光反射性インク吐出位置決定処理を更に行う。また、光反射性インク吐出位置決定処理において、印刷データ生成部は、例えば、少なくとも画像用吐出位置について、光反射性インク吐出位置に決定する。そして、印刷部は、例えば、転写画像の上に光反射性のインクの層が形成されるように、転写媒体へインクを吐出する。このように構成すれば、例えば、転写画像と重なる光反射性のインクの層を適切に形成することができる。
【0022】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する印刷データ生成装置、プログラム、及び印刷方法を用いること等も考えられる。これらの場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、例えば、ホットメルト樹脂粉末を用いて行う画像の転写をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システム10について説明をする図である。図1(a)は、印刷システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷システム10における印刷部14の構成の一例を示す。
図2】本例において印刷システム10で実行する動作の一例を示すフローチャートである。
図3】従来の方法で生成した印刷データを用いて転写方式での印刷を行う場合に生じる問題の例について説明をする図である。図3(a)は、従来の方法で生成した印刷データを用いて印刷がされた転写媒体50に対してパウダ302を付着させた状態の例を示す。図3(b)、(c)は、従来の方法で生じる問題の例を示す。
図4】本例における転写媒体50への印刷の仕方について説明をする図である。4(a)~(c)は、転写媒体50の印刷の仕方の例を示す。
図5】印刷データの生成時に隙間部204を識別する方法の一例示す図である。図5(a)は、印刷データの生成時に行うハーフトーン処理を簡略化して示す。図5(b)は、隙間部204を識別するために用いるフラグ画像406の一例を示す。
図6】印刷データ生成部12において印刷データを生成する動作の一例を示すフローチャートである。
図7】ステップS210での具体的な動作の一例を示すフローチャートである。
図8】補填版を生成する場合に印刷データ生成部12がステップS214で行う動作について更に詳しく説明をする図である。図8(a)は、印刷データ生成部12がステップS214で行う動作の一例を示すフローチャートである。図8(b)、(c)は、転写媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。
図9】補填版を生成しない場合に印刷データ生成部12がステップS214で行う動作について更に詳しく説明をする図である。図9(a)は、印刷データ生成部12がステップS214で行う動作の一例を示すフローチャートである。図9(b)、(c)は、転写媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システム10について説明をする図である。図1(a)は、印刷システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷システム10における印刷部14の構成の一例を示す。以下に説明をする点を除き、印刷システム10は、公知の印刷システムと同一又は同様の特徴を有してよい。
【0026】
印刷システム10は、転写媒体50に印刷した画像を被転写媒体(被転写対象)へ転写することで被転写媒体に画像を描くシステムであり、加熱によって軟化する樹脂を含む粉末であるホットメルト樹脂粉末(ホットメルトパウダー)を用いて、転写媒体50から被転写媒体へ画像を転写する。ホットメルト樹脂粉末については、例えば、粉体の熱溶融パウダ等と考えることもできる。また、本例において、被転写媒体としては、布帛等の布の媒体(例えば、様々な生地等)を用いる。被転写媒体としては、例えばTシャツ等のような、所定の製品に加工された布の媒体等を用いてもよい。また、転写媒体50としては、例えば、布の被転写媒体への転写に用いる公知の転写媒体を好適に用いることができる。より具体的に、転写媒体50としては、例えば、DTF法(Direct to Film法)での転写用の転写フィルムを好適に用いることができる。また、このような転写フィルムとしては、例えば、PETフィルム等を用いることが考えられる。また、転写媒体50としては、フィルム以外の媒体(例えば、紙の媒体等)を用いてもよい。
【0027】
また、ホットメルト樹脂粉末としては、転写用の公知の樹脂粉末を好適に用いることができる。より具体的に、ホットメルト樹脂粉末としては、例えば、布の被転写媒体への転写に用いる公知のホットメルト樹脂粉末を好適に用いることができる。また、このようなホットメルト樹脂粉末としては、例えば、ウレタン、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、又はこれらの混合物を含む粉末等を好適に用いることができる。ホットメルト樹脂粉末については、例えば、熱可塑性の樹脂粉末等と考えることもできる。また、ホットメルト樹脂粉末について、例えば、転写印刷用のホットメルト接着剤粉末等と考えることもできる。ホットメルト接着剤粉末については、例えば、熱可塑性ポリマーを主成分とする、常温で固体の接着剤の粉末等と考えることができる。また、ホットメルト接着剤粉末については、例えば、水や有機溶剤を含まない固体の接着剤の粉末等と考えることもできる。このようなホットメルト接着剤粉末としては、例えば、多成分系接着剤の粉末等を用いることができる。
【0028】
また、上記のような被転写媒体、転写媒体50、及びホットメルト樹脂粉末を用いて転写を行うために、本例において、印刷システム10は、印刷データ生成部12、印刷部14、粉末付与部16、及び熱転写部18を備える。印刷データ生成部12は、印刷部14の動作を制御するための印刷データを準備する構成であり、印刷部14において転写媒体50へ印刷する画像を示す画像データに基づき、印刷部14へ供給する印刷データを生成する。印刷データ生成部12としては、例えば、所定のプログラムに従って印刷部14の動作を制御するコンピュータを用いることが考えられる。また、本例において、印刷データ生成部12は、印刷データ生成装置の一例であり、印刷部14の構成に合わせて画像データに対するハーフトーン処理等を行うことで、印刷データを生成する。そして、印刷データ生成部12は、印刷部14へ印刷データを供給することで、印刷部14の動作を制御して、印刷部14に印刷の動作を実行させる。印刷データ生成部12において印刷データを生成する動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0029】
印刷部14は、印刷システム10における印刷装置に対応する構成であり、印刷データ生成部12から供給される印刷データに基づき、転写媒体50に対して、インクジェット方式での印刷の動作を実行する。また、本例において、印刷部14は、シリアル型のインクジェットプリンタであり、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ印刷の対象物に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作をインクジェットヘッドに行わせることで印刷の動作を実行する。また、印刷部14は、例えば図1(b)に示すように、ヘッド部102、プラテン104、Yバー部106、主走査駆動部108、副走査駆動部110、及び制御部120を有する。
【0030】
ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッドを有する部分であり、複数のインクジェットヘッドから、転写媒体50へ向けてインクを吐出する。また、本例において、ヘッド部102は、互いに異なる色のカラーインクを吐出するカラーインク用の複数のインクジェットヘッドと、白色のインクである白インクを吐出する白インク用のインクジェットヘッドとを有する。この場合、各色のカラーインクは、有色の色を示す色材を含むインクである有色インクの一例である。カラーインク用の複数のインクジェットヘッドのそれぞれは、有色インク用ヘッドの一例である。また、本例において、ヘッド部102は、カラーインク用の複数のインクジェットヘッドとして、イエロー色(Y色)、マゼンタ色(M色)、シアン色(C色)、及びブラック色(K色)用のインクジェットヘッドを有する。この場合、YMCKの各色は、プロセスカラーの各色の一例である。プロセスカラーについては、例えば、色表現の基本色等と考えることができる。本例において、カラーインクとしては、例えば、公知のカラーインク(例えば、公知の捺染用のインク等)を好適に用いることできる。公知のカラーインクとしては、例えば、色材として顔料を含むインク(例えば、水性顔料インク等)を好適に用いることができる。また、白インクは、光反射性のインクの一例である。白インク用のインクジェットヘッドは、光反射性インク用ヘッドの一例である。白インクとしては、公知の白インクを好適に用いることができる。
【0031】
プラテン104は、ヘッド部102と対向させて転写媒体50を支持する台状部材である。Yバー部106は、転写媒体50を挟んでプラテン104と対向する位置において主走査方向へ延伸する部材であり、主走査方向へ移動可能な状態で転写媒体50と対向する面にヘッド部102を保持することで、主走査動作時における主走査方向へのヘッド部102の移動をガイドする。主走査駆動部108は、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドに主走査動作を行わせる駆動部である。本例において、主走査駆動部108は、制御部120の制御に応じて、Yバー部106に沿ってヘッド部102を移動させつつ、ヘッド部102におけるそれぞれのインクジェットヘッドにインクを吐出させる。副走査駆動部110は、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドに副走査動作を行わせる駆動部である。副走査動作については、例えば、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ転写媒体50に対して相対的に移動する動作等と考えることができる。本例において、副走査駆動部110は、主走査動作の合間に転写媒体50に対して相対的に副走査方向へヘッド部102を移動させることで、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドに副走査動作を行わせる。制御部120は、例えば印刷部14のCPU等を含む部分であり、印刷データ生成部12から供給される印刷データに基づいて印刷部14の各部の動作を制御することで、転写媒体50に対する印刷の動作を制御する。また、これにより、印刷部14は、転写媒体50に対して、画像データが示す画像を印刷する。
【0032】
また、本例の印刷システム10では、印刷部14において画像が印刷された転写媒体50に対し、粉末付与部16において、ホットメルト樹脂粉末を付与する。粉末付与部16については、例えば、画像が印刷されている転写媒体50にホットメルト樹脂粉末を付着させるための構成等と考えることができる。また、本例において、粉末付与部16は、ホットメルト樹脂粉末が付着した転写媒体50に対し、転写前に所定の温度への加熱を行うプレヒートを実行する。この場合、ホットメルト樹脂粉末を転写媒体50に付着させることについては、例えば、ホットメルト樹脂粉末を用いて行う公知の転写印刷と同一又は同様にして転写媒体50にホットメルト樹脂粉末を付着させること等と考えることができる。より具体的に、ホットメルト樹脂粉末を転写媒体50に付着させることについては、例えば、転写媒体50においてインクが付着している部分にホットメルト樹脂粉末を付着させること等と考えることができる。この場合、転写媒体50においてインクが付着している部分にホットメルト樹脂粉末を付着させることについては、例えば、転写媒体50において単位面積あたりに十分な量のインクが付着している部分にホットメルト樹脂粉末を付着させること等と考えることができる。
【0033】
また、転写媒体50にホットメルト粉末樹脂を付着させた後には、熱転写部18において、転写媒体50から被転写媒体へ、画像を転写する。本例において、熱転写部18は、転写部及び転写装置の一例である。熱転写部18については、例えば、転写媒体50と被転写媒体とを重ねた状態で加熱及び加圧を行うことで転写媒体50から被転写媒体へ画像を転写する装置等と考えることができる。転写媒体50と被転写媒体とを重ねた状態で加熱及び加圧を行う動作については、例えば、被転写媒体に転写媒体50を載せて圧着する動作等と考えることもできる。また、熱転写部18としては、例えば、公知のヒートプレス機等を好適に用いることができる。本例によれば、例えば、転写媒体50に印刷した画像を被転写媒体へ適切に転写することができる。印刷システム10において実行する画像の転写の動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0034】
尚、印刷システム10において、印刷データ生成部12、印刷部14、粉末付与部16、及び熱転写部18のそれぞれは、印刷システム10における機能的な構成等と考えることができる。この場合、例えば、印刷部14の機能を実現する構成を含む装置について、印刷装置の一例と考えることができる。また、装置としての印刷システム10の構成を考えた場合、複数の機能的な構成について、一つの装置で実現してもよい。例えば、印刷データ生成部12及び印刷部14について、一つの装置によって実現してもよい。このように構成した場合、例えば、画像データから印刷データを生成する動作と、印刷を実行する動作とを、一つの装置で実行することができる。また、印刷部14及び粉末付与部16について、一つの装置によって実現してもよい。このように構成した場合、例えば、印刷の動作からプレヒートの動作までを、一つの装置で実行することができる。また、印刷システム10の全体について、一つの装置で構成すること等も考えられる。更に、印刷システム10の構成によっては、例えば、図1(a)に示す機能的な構成のいずれかについて、複数の装置で構成すること等も考えられる。例えば、粉末付与部16について、転写媒体50にホットメルト樹脂粉末を付着させるための装置と、プレヒートを行う装置とで構成すること等も考えられる。また、いずれの構成においても、印刷部14において転写媒体50に対して印刷を行う動作、粉末付与部16において転写媒体50にホットメルト樹脂粉末を付着させる動作、及び粉末付与部16において行うプレヒートの動作について、一連の装置で実行することが好ましい。この場合、一連の装置で複数の動作を実行することについては、例えば、ユーザによって転写媒体50を持ち運ぶ動作を行うことなく、複数の動作を連続して実行すること等と考えることができる。
【0035】
続いて、印刷システム10において実行する画像の転写の動作等について、更に詳しく説明をする。図2は、本例において印刷システム10で実行する動作の一例を示すフローチャートである。上記においても説明をしたように、本例の印刷システム10では、印刷部14において転写媒体に対して印刷した画像を被転写媒体へ転写する。また、この場合、先ず、印刷データ生成部12において、転写媒体へ印刷する画像を示す画像データに基づき、印刷部14へ供給する印刷データを生成する(S102)。また、これにより、印刷データ生成部12は、印刷部14へ供給する印刷データを準備する。本例において、ステップS102の動作は、印刷データ生成段階の動作の一例である。印刷データ生成部12において印刷データを生成する動作については、後に更に詳しく説明をする。また、この場合、印刷部14では、印刷データ生成部12から供給される印刷データに基づき、転写媒体へ画像を印刷する(S104)。本例において、ステップS104の動作は、印刷段階の動作の一例である。ステップS104において、印刷部14は、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドから、転写媒体の少なくとも一部へインクを吐出する。印刷部14において行う印刷の動作についても、後に更に詳しく説明する。
【0036】
また、印刷部14によって転写媒体への印刷を行った後には、粉末付与部16において、画像が印刷されている転写媒体に対し、ホットメルト樹脂粉末を付着させる(S106)。本例において、ステップS106の動作は、ホットメルト樹脂付着段階の動作の一例である。ステップS106において、粉末付与部16での転写媒体へのホットメルト樹脂粉末の付与については、例えば、ホットメルト樹脂粉末を用いて行う公知の転写の動作でのホットメルト樹脂粉末の付与と同一又は同様に行うことができる。より具体的に、転写媒体へのホットメルト樹脂粉末の付与については、例えば、装置によって自動的に行うことが考えられる。この場合、粉末付与部16は、例えば、転写媒体へ向けてホットメルト樹脂粉末を噴出する粉末噴出部を有する。また、転写媒体へのホットメルト樹脂粉末の付与については、ユーザ(オペレータ)の手作業で行ってもよい。この場合、粉末付与部16は、例えば、画像が印刷された転写媒体を所定の状態で保持することで、転写媒体へホットメルト樹脂粉末を付与する作業をユーザに行わせる。
【0037】
尚、本例において、転写媒体へ付与されたホットメルト樹脂粉末は、転写媒体上のインクに付着することで、転写媒体に付着する。そのため、転写媒体においては、ステップS104で印刷部14によってインクが吐出されている位置に対してのみ、ホットメルト樹脂粉末が付着することになる。また、この場合、転写媒体においてインクが吐出されていない位置にあるホットメルト樹脂粉末については、例えば次の工程でプレヒートを実行する前に、公知の方法と同一又は同様にして、転写媒体上から除去する。ホットメルト樹脂粉末の除去についても、装置によって自動的に行ってもよく、ユーザによる手作業で行ってもよい。
【0038】
また、粉末付与部16において、転写媒体にホットメルト樹脂粉末を付着させ、不要なホットメルト樹脂粉末を除去した後には、転写媒体に対し、プレヒートを実行する(S108)。この場合、ホットメルト樹脂粉末が溶融する温度になるまで、転写媒体を加熱することが考えられる。このように構成すれば、例えば、転写媒体に対してホットメルト樹脂粉末を適切に定着させることができる。転写媒体に対してホットメルト樹脂粉末が定着することについては、例えば、後に被転写媒体への転写が可能な状態で転写媒体に対してホットメルト樹脂粉末が定着すること等と考えることができる。また、プレヒートについては、例えば、転写媒体を所定の温度で加熱して、ホットメルト樹脂粉末を粘着状態にする動作等と考えることもできる。ステップS108において実行するプレヒートについても、例えば、公知の方法と同一又は同様に行うことができる。より具体的に、ステップS108では、例えば、ホットメルト樹脂粉末の温度が130℃程度(例えば、120~150℃程度)になるように転写媒体を加熱し、その状態について、5分間程度(例えば、1~10分間程度)維持することが考えられる。
【0039】
また、プレヒートを実行した後には、熱転写部18において、転写媒体から被転写媒体への転写(熱転写)を実行する(S110)。本例において、ステップS110の動作は、転写段階の動作の一例である。ステップS110において、熱転写部18は、転写媒体と被転写媒体とを重ねた状態で加熱及び加圧を行うことで、ホットメルト樹脂粉末が加熱によって軟化することで形成される樹脂部であるホットメルト樹脂部を被転写媒体に付着させる。ホットメルト樹脂部については、例えば、加熱によって粘着性になったホットメルト樹脂粉末で構成される樹脂部分等と考えることができる。ホットメルト樹脂部は、例えば、軟化したホットメルト樹脂粉末が一体化することで形成される樹脂等であってもよい。また、本例において、ステップS110では、転写媒体に印刷された画像において色を表現している色材について、ホットメルト樹脂部の少なくとも一部と共に被転写媒体に付着させて、転写媒体から被転写媒体へ画像を転写する。このような動作については、例えば、転写媒体に付着している色材の少なくとも一部をホットメルト樹脂部の少なくとも一部と共に被転写媒体へ移動させることで、転写媒体から被転写媒体へ画像を転写する動作等と考えることができる。ステップS110において実行する転写についても、例えば、公知の方法と同一又は同様に行うことができる。より具体的に、ステップS110では、例えば、ステップS108でのプレヒートの温度よりも高い温度での加熱を行いつつ、加圧を行うことで、ホットメルト樹脂部を被転写媒体に付着させる。この場合、例えば、ホットメルト樹脂部の温度が140℃程度(例えば、100~180℃程度)になるように転写媒体及び被転写媒体を加熱することが考えられる。また、ステップS110での加熱及び加圧の時間は、ステップS108でのプレヒートにおける加熱の時間よりも短くすることが考えられる。例えば、ステップS110での加熱及び加圧の時間について、5秒程度(例えば、1~30秒程度)にすることが考えられる。
【0040】
ステップS110で転写媒体から被転写媒体へ画像を転写した後には、例えば、被転写媒体から転写媒体を剥離する(S112)。この場合、例えば、画像が転写された被転写媒体について、印刷システム10での印刷の成果物(印刷物)と考えることができる。ステップS112での転写媒体の剥離についても、例えば、公知の方法と同一又は同様に行うことができる。また、本例においては、例えば、表面に剥離層が形成されている転写媒体を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、ステップS112での転写媒体の剥離を容易かつ適切に行うことができる。また、以上の動作により、印刷システム10において、印刷の成果物を適切に作成することができる。
【0041】
続いて、印刷データ生成部12において印刷データを生成する動作や、印刷部14において行う印刷の動作等について、更に詳しく説明する。また、説明の便宜上、本例における具体的な特徴を説明する前に、従来の方法で印刷を行う場合に生じる問題の例について、説明をする。図3は、従来の方法で生成した印刷データを用いて転写方式での印刷を行う場合に生じる問題の例について説明をする図である。図3(a)は、従来の方法で生成した印刷データを用いて印刷がされた転写媒体50に対してパウダ302を付着させた状態の例を示す。この場合、パウダ302とは、上記において説明をしたホットメルト樹脂粉末のことである。また、図3(a)に示す転写媒体50の状態は、例えば、図2におけるステップS106の動作を行った後の状態に対応すると考えることができる。図3(b)、(c)は、従来の方法で生じる問題の例を示す。
【0042】
従来の方法で転写を行う場合、転写媒体50としては、例えば、基材部52及び受理層54を有する構成のフィルム等を用いる。この場合、基材部52については、例えば、転写媒体50の基材となる部分と考えることができる。受理層54については、例えば、インクの滲みを防止するために転写媒体50の被印刷面に形成される層と考えることができる。また、上記においても説明をしたように、転写媒体50としては、表面に剥離層が形成された構成を用いることが好ましい。この場合、例えば、受理層54の少なくとも一部を剥離層として機能させることが考えられる。また、転写媒体50において、剥離層は、受理層54とは別に形成されていてもよい。
【0043】
また、転写方式での印刷を行う場合、印刷部14は、転写媒体50に対し、例えば、図3(a)に示すように、カラーインクの層を形成し、その上に、白インクの層を形成する。また、これにより、印刷部14は、転写媒体50上に印刷された転写画像の上に、白インクの層を形成する。この場合、転写画像について、例えば、転写媒体50に印刷した画像等と考えることができる。また、転写画像について、例えば、転写する画像等と考えることができる。カラーインクの層については、例えば、転写画像を表現するためのインクの層と考えることができる。また、この場合、カラーインクで転写画像が描かれる範囲について、例えば、画像領域と考えることができる。白インクの層については、例えば、転写画像の背景になるインクの層と考えることができる。転写画像の背景となるインクの層については、例えば、被転写媒体への転写画像の転写後に転写画像と被転写媒体との間の位置にくるインクの層と考えることができる。白インクの層については、例えば、転写後にカラーインクと被転写媒体との間において隠蔽層として機能する層と考えることもできる。また、白インクの層における白インクについては、例えば、カラーインクに加えて転写媒体50へ吐出されることでパウダ302の付着性を高める役割も担うと考えることができる。
【0044】
また、上記においても説明をしたように、ホットメルト樹脂粉末であるパウダ302を用いて転写画像の転写を行う場合、パウダ302について、例えば、転写媒体50上のインクに付着することで、転写媒体50に付着すると考えることができる。そして、この場合、転写媒体50において、画像領域の全ての位置に対して十分な量のインクが付着していれば、通常、転写画像の転写を適切に行うことができる。しかし、転写媒体50における画像領域の中に、例えばカラーインクが付着していない部分があると、転写時に問題が生じる場合がある。
【0045】
より具体的に、例えば、インクジェット方式で印刷を行う場合、通常、インクジェットヘッドから吐出するインクで形成されるインクのドットによって、様々な色を表現する。そして、カラーインクを吐出する吐出位置について、例えば、ハーフトーン処理を行って決定する。この場合、インクの吐出位置については、例えば、印刷の解像度に応じて設定されるインクの着弾位置に対応する位置等と考えることができる。また、この場合、例えば画像領域のうち、淡い色を表現する淡色領域等では、単位面積あたりに吐出するインクの量が濃色領域と比べて少なくなることで、カラーインクのドットの合間に隙間が生じやすくなる。また、この場合、例えば、図3(b)に示すように、淡色領域について、画像用インク着弾部202及び隙間部204を含む構成になることが考えられる。この場合、画像用インク着弾部202については、例えば、転写画像を描くためのカラーインクが着弾する部分等と考えることができる。また、画像用インク着弾部202について、例えば、転写画像を描くためのカラーインクのドットが連続して並ぶ部分等と考えることもできる。この場合、インクのドットが連続して並ぶことについては、例えば、印刷の解像度に応じた間隔でインクのドットが連続して並ぶこと等と考えることができる。また、隙間部204については、例えば、画像領域において画像用インク着弾部202の間の隙間になる部分等と考えることができる。隙間部204については、例えば、転写画像が印刷される画像領域内に生じる隙間部分等と考えることもできる。また、隙間部204については、例えば、画像領域における画像用インク着弾部202以外の部分等と考えることもできる。また、図3(b)に示した例の場合、少なくとも一部の隙間部204について、例えば、パウダ302が直接転写媒体50に接触する大きさの隙間になっている例と考えることができる。
【0046】
そして、この場合、隙間部204が存在する影響により、例えば、転写媒体50の単位面積あたりに付着するパウダ302の量が少なくなることが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、隙間部204に入るパウダ302について、しっかりと転写媒体50に付着しない状態になることが考えられる。また、一部が隙間部204にはみ出して画像用インク着弾部202に乗るパウダ302についても、転写媒体50に対する付着性が不十分になることが考えられる。また、その結果、例えば、熱転写部18での転写の実行時において、淡色領域でのパウダ302の量が不足して、転写不良が生じやすくなることが考えられる。この場合、例えば、転写媒体50上において、画像領域においてカラーインクのドットが形成される面積、又は画像領域のインクが含む液体量(例えば、水分量)について、パウダ302を十分に付着させるには不十分になっていると考えることができる。また、その結果、綺麗な転写ができずに、転写において不具合が生じると考えることができる。
【0047】
また、この点に関し、例えば図3(c)に示すように、隙間部204に対して、白インクのドットを形成すれば、淡色領域に対しても、パウダ302の付着量を多くすることができる。この場合、隙間部204について、例えば、カラーインクを吐出しないで、白インクのみを吐出する部分になると考えることができる。しかし、この場合、被転写媒体への転写後の転写画像において、隙間部204に対応する部分が白くなることで、例えば所望の状態での印刷を行うことが難しくなり、印刷の品質(画質)が低下することが考えられる。これに対し、本例においては、例えば図4に示すように、隙間部204に対し、カラーインク等での補填を行うことで、転写媒体50に対し、より適切に印刷を行う。
【0048】
図4は、本例における転写媒体50への印刷の仕方について説明をする図である。図4(a)~(c)は、転写媒体50の印刷の仕方の例を示す。上記においても説明をしたように、本例において、転写媒体50としては、公知の転写媒体を好適に用いることができる。また、より具体的に、公知の転写媒体50としては、例えば。図3を用いて説明をした場合と同一又は同様の転写媒体50を用いる。また、印刷システム10において、印刷部14は、カラーインクを用いて転写媒体50上に転写画像を描き、転写画像に対応するカラーインクの層の上に、白インクの層を形成する。また、この場合も、転写画像に対応する画像領域のうち、淡色領域は、画像用インク着弾部202及び隙間部204を含む構成になる。この場合、画像用インク着弾部202は、例えば図3を用いて上記において説明をした場合と同様に、カラーインクのドットの上に白インクのドットが重なる構成になる。これに対し、本例において、隙間部204は、図3を用いて説明をした構成と、異なる構成になる。例えば、図4(a)、(b)に示す例において、印刷部14は、印刷データに基づき、隙間部204に対し、カラーインクを吐出する。この場合、隙間部204へのインクの吐出については、例えば、転写画像を描くためのインクの吐出とは別の目的での吐出等と考えることができる。また、この場合、印刷部14は、例えば、印刷データ生成部12での印刷データの生成時に指定された色で隙間部204を着色するように、画像用インク着弾部202へカラーインクを吐出する。
【0049】
より具体的に、本例において、印刷データ生成部12は、例えば、転写画像の転写先として用いる被転写画像の色に合わせて隙間部204を着色するように、印刷データを生成する。この場合、被転写画像の色に合わせて隙間部204を着色することについては、例えば、被転写媒体の色、又はその近似色で着色すること等と考えることができる。また、この場合、被転写媒体の色又はその近似色については、例えば、各色のカラーインクの使用比率(インクデューティー)を調整することで表現することができる。このように構成すれば、例えば、隙間部204において、様々な色を適切に表現することができる。また、隙間部204へカラーインクを吐出する動作については、例えば、被転写媒体の色、又はその近似色のインクで隙間部204へインクを補填する動作等と考えることができる。また、この場合、隙間部204へ吐出するカラーインクの色数については、例えば、被転写媒体の色に応じて、1色、又は複数色(例えば、2色)にすることが考えられる。例えば、図4(a)においては、被転写媒体の色が黒色の場合のような、被転写媒体の色又は近似色が1色のカラーインクで表現可能な場合について、隙間部204へ1色のカラーインクを吐出する例を示している。また、図4(b)においては、被転写媒体の色が赤色の場合のような、被転写媒体の色又は近似色が2色のカラーインクで表現可能な場合について、隙間部204へ2色のカラーインクを吐出する例を示している。より具体的に、隙間部204に対し、赤色での着色を行う場合、印刷部14は、隙間部204に対し、例えば、マゼンタ色のインクと、イエロー色のインクとを吐出する。
【0050】
ここで、隙間部204に対してカラーインクでの補填を行う場合、隙間部204へ吐出するインクの量が多くなりすぎると、例えば画像用インク着弾部202におけるカラーインクとの間に意図しない混じりが生じること等により、印刷の品質がかえって低下すること等も考えられる。そのため、隙間部204へ吐出するカラーインクの量については、例えば、隙間部204の面積や、単位面積あたりに吐出するインクの量(打ち込み量)等を考慮して、設定することが好ましい。また、図4(a)、(b)に示す例の場合、印刷部14は、隙間部204に対して、カラーインクのみを吐出している。これに対し、印刷部14の動作の変形例では、隙間部204における補填用のカラーインクの上に、白インクを更に吐出してもよい。この場合も、転写画像の転写後において、隙間部204の白インクは、補填用のカラーインクの下に隠れることになる。そのため、このように構成した場合も、転写後の転写画像において、隙間部204に対応する部分が白くなることを適切に防止することができる。
【0051】
また、隙間部204に対するインクの補填は、カラーインク以外のインクで行うこと等も考えられる。この場合、隙間部204へ吐出する補填用インクとしては、例えば、白色以外の色のインクを用いることが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、図4(c)に示すように、隙間部204に対し、無色で透光性のインクであるクリアインクで補填を行うことが考えられる。クリアインクが無色であることについては、例えば、意図的に所定の色をつけていないこと等と考えることができる。意図的に所定の色をつけていないことについては、例えば、意図的に色材を添加していないこと等と考えることができる。また、クリアインクについて、無色で透光性であることについては、例えば、可視光領域で特定の色の光を実質的に吸収しない透明な状態であること等と考えることができる。特定の色の光を実質的に吸収しないことについては、例えば、印刷に求められる品質に応じた許容範囲内で実質的に可視光領域の特定の色の光を吸収しないこと等と考えることができる。このように構成した場合も、隙間部204に対してインクの補填を行うことで、例えば、淡色領域等において転写不良が生じることを適切に防止することができる。また、クリアインクでの補填を行うことで、例えば、転写後の転写画像において、隙間部204に対応する部分が白くなることを適切に防止することができる。更に、補填用インクとしてクリアインクを用いることで、例えば、転写画像の見え方への影響をより適切に抑えることもできる。また、隙間部204へのインクの補填をクリアインクで行う場合、隙間部204へ更に白インクを吐出すると、転写後の転写画像において、隙間部204に対応する部分が白くなることが考えられる。そのため、補填用インクとしてクリアインクを用いる場合、隙間部204に対して、白インクを吐出しないで、クリアインクのみを吐出することが好ましい。また、クリアインクでの補填を行う場合、例えば、隙間部204の外にクリアインクがはみ出したとしても、印刷の品質への影響は、生じにくい。そのため、この場合、隙間部204以外に、例えば、画像用インク着弾部202の少なくとも一部に対し、補填用のクリアインクを吐出してもよい。また、画像用インク着弾部202及び隙間部204の全体に対し、クリアインクの層を形成すること等も考えられる。
【0052】
また、上記のように、補填用インクとしてカラーインクやクリアインクを用いる場合、補填用インクについて、白色以外のインクを用いていると考えることができる。これに対し、隙間部204において補填用インクによって表現すべき色によっては、補填用インクとして白インクを用いることも考えられる。例えば、クリーム色やパステルトーンの色のような薄めの色を隙間部204で表現する場合、カラーインクに加えて、白インクを補填用インクとして用いることも考えられる。また、この場合、補填用インクとして、有色のカラーインクと白インクとを組み合わせて用いることで、例えば、隙間部204においてより多様な色を表現できる。
【0053】
また、上記のように、本例において、印刷部14は、印刷データに基づき、隙間部204へ、カラーインク等の補填用インクを吐出する。そして、この場合、印刷データ生成部12において、例えば、隙間部204を適切に識別することが、必要になる。また、そのためには、印刷データ生成部12において、例えば、淡色領域等の中にある隙間部分に対応する隙間部204と、もともと画像がない領域とを適切に区別(区分)することが必要になる。より具体的に、上記のように、隙間部204については、例えば、転写画像を描くためのカラーインクが着弾しない部分等と考えることができる。しかし、転写画像は、通常、転写媒体50における一部に対して描かれる。そして、この場合、転写媒体50上において、転写画像が描かれる画像領域の範囲外になる領域も、転写画像を描くためのカラーインクが着弾しない部分になる。そのため、隙間部204へのインクの補填をより適切に行うためには、例えば、画像領域の範囲内の領域と、範囲外の領域とを適切に区別することが求められる。これに対し、本例において、印刷データ生成部12は、例えば図5に示す動作によって、隙間部204を識別して、印刷データを生成する。
【0054】
図5は、印刷データの生成時に隙間部204を識別する方法の一例示す。図5(a)は、印刷データの生成時に行うハーフトーン処理を簡略化して示す。図5(b)は、隙間部204を識別するために用いるフラグ画像406の一例を示す。本例において、印刷データ生成部12は、印刷画像に対応する元画像402を入力として、印刷データの生成時に行う公知のハーフトーン処理と同一又は同様に、ハーフトーン処理を行う。この場合、元画像402は、印刷データの生成に用いる画像である印刷対象画像の一例である。また、本例において、印刷データ生成部12は、ハーフトーン処理として、元画像402に対する二値化の処理を行って、元画像402に対応する二値化画像404を生成する。この場合、二値化画像404について、例えば、このような二値化の処理を行った後の画像等と考えることができる。また、本例において、二値化画像404については、例えば、画素に対応する吐出位置へインクを吐出するか否かを指定する画素値が設定される画像等と考えることができる。画素値については、例えば、画素に対応付けられる値等と考えることができる。また、二値化の処理は、画像の階調数を小さくする量子化処理の一例である。印刷データ生成部12は、元画像402に対し、例えば誤差拡散法やディザ法等での二値化を行って、二値化画像404を生成する。また、印刷データ生成部12は、二値化画像404について、例えば、インクの色毎に生成する。この場合、色毎の二値化画像404について、例えば、その色のインクの吐出位置を指定していると考えることができる。
【0055】
また、本例において、元画像402及び二値化画像404等の画像については、例えば、解像度に応じて設定される画素の位置に対応付けて画素値が設定されているデータ等と考えることができる。この場合、解像度については、例えば、印刷の条件に応じて設定される解像度等と考えることができる。また、画素の位置については、例えば、印刷部14がインクを吐出する吐出位置に対応する位置等と考えることができる。また、本例において、元画像402は、各画素の色を多階調で示すビットマップ画像である。この場合、各画素の色を多階調で示すことについては、例えば、一つの画素の色について、プロセスカラーの色毎に2ビット以上の階調数で示すこと等と考えることができる。また、より具体的に、元画像402としては、例えば、8ビット程度の多階調のカラー画像を好適に用いることができる。8ビットのカラー画像については、例えば、一つの画素の色について、プロセスカラーの色毎に8ビット(例えば、0~255の整数値)の値が設定される画像等と考えることができる。また、この場合、元画像402において、転写画像の画像領域に対応する部分の画素値には、いずれかの色に対応する値が設定される。より具体的に、例えば図5(a)の左側部分に示す例の場合、網掛け模様で示した部分に含まれる各画素に対し、いずれかの色に対応する画素値が設定される。そして、画像領域の外にある画素に対しては、色がないことを示す画素値(例えば、値0)が設定される。
【0056】
また、二値化画像404は、このような元画像402に対して二値化を行うことで生成されるビットマップ画像である。そして、この場合、二値化画像404では、例えば、画像領域に含まれる一部の画素に対しても、色がないことを示す画素値が設定されることになる。また、この場合、例えば、画像領域の中で色がないことを示す画素値が設定される画素について、隙間部204における画素になると考えることができる。そのため、隙間部204を適切に識別するためには、例えば、二値化画像404において色がないことを示す画素値が設定されている画素のうち、淡色領域の隙間部分の画素のような、画像領域の中にある画素のみを選択することが必要になる。
【0057】
これに対し、本例において、印刷データ生成部12は、例えば図5(b)に示すようなフラグ画像406を生成することで、二値化画像404において色がないことを示す画素値が設定されている画素のうち、画像領域の中にある画素を選択する。より具体的に、この場合、印刷データ生成部12は、例えば、元画像402における画像領域に含まれる画素に所定のフラグを設定することで、画像領域の内外の画素を区分する。そして、印刷データ生成部12は、このフラグが設定されている画素(元画像402における画素)に対応する画素(二値化画像404における画素)に対してフラグに対応する画素値が設定される画像を生成することで、画像領域の内外を識別するためのデータとなるフラグ画像406を生成する。このように構成すれば、例えば、画像領域内にある隙間部204を適切に識別することができる。また、この場合、フラグ画像406においてフラグに対応する画素値が設定されている画素については、例えば、画像あり領域の画素等と考えることができる。フラグ画像406においてフラグに対応する画素値が設定されていない画素については、例えば、画像なし領域の画素等と考えることができる。
【0058】
また、このようにして隙間部204を識別する動作については、例えば、元画像402では色が存在する画像領域だった部分のうち、二値化によってインクが着弾しない吐出位置に対応する画素に変化した部分を識別する動作等と考えることもできる。また、元画像402及び二値化画像404では、例えば、いずれの色も設定されない画素の画素値として、0を設定することが考えられる。そして、この場合、上記のように隙間部204を識別する動作については、例えば、元画像402においていずれかのプロセスカラーに対して0以外の値が設定されており、かつ、二値化画像404では全てのプロセスカラーに対して0が設定されている画素の対応する部分を識別する動作等と考えることもできる。
【0059】
尚、印刷部14におけるインクジェットヘッドとしては、例えば、ノズルから吐出するインクの容量を複数段階で変更可能な構成を用いること等も考えられる。そして、この場合、ハーフトーン処理として、2ビット以上の画素値への量子化を行うこと等も考えられる。このような場合も、例えば上記と同じ考え方で、フラグ画像406を用いることで、画像領域内にある隙間部204を適切に識別することができる。
【0060】
また、本例において、印刷データ生成部12は、二値化画像404及びフラグ画像406に基づき、隙間部204に対して補填用インクの吐出位置を示すデータである補填版を生成する。この場合、印刷データ生成部12は、例えば図6に示す動作により、補填版を生成する。そして、印刷データ生成部12は、補填版を利用して、転写画像を示す印刷データを生成する。
【0061】
図6は、印刷データ生成部12において印刷データを生成する動作の一例を示すフローチャートである。本例において、図6に示す動作は、図2に示したフローチャートのステップS102で行う動作の一例である。印刷データ生成部12は、例えば、印刷データを生成する処理を制御するプログラムに従って、以下の動作を行う。より具体的に、印刷データを生成する動作において、印刷データ生成部12は、先ず、例えば、転写用印刷の準備を行う(S202)。また、本例のステップS202において、印刷データ生成部12は、例えば、印刷部14において実行する印刷の条件の設定等を行う。また、ステップS202において、印刷データ生成部12は、例えば、印刷すべき転写画像を示す元画像402を取得してもよい。また、印刷データ生成部12は、ステップS202の後に行う動作において、元画像402が必要になるタイミングで元画像402を取得してもよい。
【0062】
また、ステップS202の動作に続いて、印刷データ生成部12は、補填版を生成(作成)するか否かの判断を行う(S204)。この場合、印刷データ生成部12は、例えば、ユーザの選択に応じて、補填版を生成するか否かを決定する。また、印刷データ生成部12は、例えば、元画像402に基づき、補填版を生成するか否かを決定してもよい。より具体的に、この場合、印刷データ生成部12は、例えば、ステップS102において元画像402を取得し、ステップS204において、淡色領域と判断される部分が元画像402の全体に対して所定の割合よりも多い場合に、自動的に、補填版を生成することを決定する。また、淡色領域と判断される部分が元画像402の全体に対して所定の割合よりも多い場合、印刷データ生成部12は、補填版を生成することの決定までは行わず、その旨をユーザに通知してもよい。この場合、印刷データ生成部12において、その旨を示すアラームをユーザに示すことが考えられる。
【0063】
そして、ステップS204において、補填版を生成しない判断した場合(S204、No)、印刷データ生成部12は、補填版を生成するために行うステップS206~S212の動作を行わずに、ステップS214の動作へ進む。また、ステップS204において、補填版を生成すると判断した場合(S204、Yes)、印刷データ生成部12は、ステップS206の動作へ進む。このように構成すれば、例えば、補填版を生成するか否かにかかわらず、以降の動作により、印刷データを適切に生成できる。
【0064】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、例えば、画像領域中の隙間部204へ吐出する補填用インクとしてカラーインクを用いて、被転写画像の色に合わせて隙間部を着色する。そのため、補填版を生成する場合(S204、Yes)、印刷データ生成部12は、ステップS206及びS208の動作により、画像領域における隙間部204へ吐出するインクの色を決定する。この場合、隙間部204へ吐出するインクの色については、例えば、1色又は複数色のプロセスカラーのインクによって表現する色等と考えることができる。隙間部204へ吐出するインクの色について、例えば、補填用インクの色等と考えることもできる。また、本例において、ステップS206及びS208の動作は、媒体色取得処理の動作の一例である。媒体色取得処理については、例えば、被転写媒体において転写画像が転写される領域の色である転写位置色を取得する処理等と考えることができる。
【0065】
また、より具体的に、隙間部204へ吐出するインクの色を決定する動作において、印刷データ生成部12は、印刷部14で表現できる色の少なくとも一部を示すパッチを印刷部14に印刷させる(S206)。この場合、印刷データ生成部12は、例えば、被転写画像の印刷時に用いる印刷条件における解像度と同じ解像度で、転写媒体に対し、印刷部14に、パッチを印刷させる。パッチについては、例えば、印刷データ生成部12で実際に印刷される色を確認するための構成等と考えることができる。また、この場合、印刷データ生成部12は、印刷部14に、例えば、様々な色のパッチを含むチャートを印刷させる。より具体的に、本例において、印刷データ生成部12は、印刷部14で表現できる256色分のパッチを印刷部14に印刷させる。また、印刷部14において、例えば、ノズルから吐出するインクの容量を複数段階で変更可能なインクジェットヘッドを用いる場合、このパッチとして、例えば、インクの容量に対応するインクのドットサイズを様々に組み合わせて調色したパッチを印刷部14に印刷させることが好ましい。より具体的に、例えば、インクの容量を3段階で変更できるインクジェットヘッドを用いる場合、大(L)、中(M)、小(S)のサイズのドットを組み合わせて調色したパッチを用いることが考えられる。また、本例において、ステップS206で印刷部14に印刷させるパッチを含むチャートについては、例えば、被転写媒体の色の近似色を確認するための近似色チャート等と考えることもできる。また、パッチの色数については、例えば、補填用インクとして使用するインクの色数や、求められる印刷の品質等に応じて、256色以外にしてもよい。例えば、補填用インクとして白インクを更に用いてより多様な色を表現する場合、パッチの色数について、より多くすることが考えられる。
【0066】
ステップS206の動作に続いて、印刷データ生成部12は、印刷されたパッチで表現されている色と、被転写媒体の色とに基づき、被転写媒体の色の認定を行う(S208)。この場合、被転写媒体の色の認定を行うことについては、例えば、被転写媒体の色の近似色の認定を行うこと等と考えることができる。また、この場合、いずれかの色のパッチをユーザに選択させ、印刷データ生成部12においてその選択の結果を受け付けることで、ユーザによる手動の選択の結果に基づき、被転写媒体の色の認定を行う。また、被転写媒体の色の認定については、例えば、ユーザに手動で選択を行わせることなく、印刷データ生成部12において、例えば色の測定(測色)の結果に基づき、自動的に行ってもよい。この場合、例えば、全ての色のパッチを同一照明下でカメラ等によって撮影し、その結果を印刷データ生成部12に読み込ませることが考えられる。また、この場合、印刷データ生成部12は、例えば、撮影結果に基づき、自動的に、被転写媒体の色に近い色のパッチを選択する。また、本例において、印刷データ生成部12は、被転写媒体の色に近い色のパッチの選択結果に基づき、画像領域中の隙間部へ吐出する補填用インクの色を決定する。この場合、補填用インクについて、例えば、インクの色及び液滴の容量を組み合わせて、転写位置色の近似色を表現するように指定を行うと考えることができる。
【0067】
また、被転写媒体の色の認定を行った後、印刷データ生成部12は、認定結果に基づき、補填版を生成する。また、この動作において、印刷データ生成部12は、先ず、例えば図5を用いて上記において説明をした動作によって、淡色領域の判定を行う(S210)。この場合、淡色領域の判定を行うことについては、例えば、画像領域における淡色領域等の中にある隙間部204と、もともと画像がない領域とを区別(区分)すること等と考えることができる。また、本例において、印刷データ生成部12は、例えば図5を用いて上記において説明をした動作によって、淡色領域の判定を行う。より具体的に、ステップS210において、印刷データ生成部12は、例えば、印刷データの生成に用いる画像として、転写画像を示す元画像402を取得し、元画像402に対してハーフトーン処理等を行うことで、元画像402に対応する二値化画像404を生成する。また、上記のように、印刷データ生成部12は、ステップS102において、元画像402を取得してもよい。この場合、ステップS210において、印刷データ生成部12は、ステップS202で取得した元画像402に基づき、ハーフトーン処理等を行う。本例において、ステップS202又はステップS210において元画像402を取得する動作は、画像取得処理の動作の一例である。印刷データ生成部12が元画像402を取得することについては、例えば、元画像402を示す画像データを印刷データ生成部12が取得すること等と考えることができる。また、本例において、印刷データ生成部12は、元画像402として、転写画像に対応する画像を所定の階調数で示すビットマップ画像を取得する。また、二値化画像404については、例えば、元画像402に対して量子化処理(二値化処理)を行うことで生成した画像等と考えることができる。二値化画像404については、例えば、転写画像を描くためのインクの吐出位置を指定する画像等と考えることもできる。本例において、二値化画像404は、吐出位置指定画像の一例である。また、ステップS210において二値化画像404を生成する動作は、吐出位置指定画像を生成する吐出位置指定画像生成処理の動作の一例である。吐出位置指定画像については、例えば、転写画像を描くために印刷部14によってインクを吐出する吐出位置である画像用吐出位置を指定する画像等と考えることができる。また、吐出位置指定画像生成処理については、例えば、吐出位置指定画像を印刷対象画像に基づいて生成する処理等と考えることができる。
【0068】
また、本例のステップS210において、印刷データ生成部12は、更に、元画像402に基づき、上記において説明をしたフラグ画像406を生成する。この場合、フラグ画像406を生成する動作は、画像生成処理及びフラグ設定処理の動作の一例である。画像生成処理については、例えば、画像対応画素に対応する画素に所定の画素値が設定されている画像である所定画素値画像を生成する処理等と考えることができる。画像対応画素については、例えば、元画像402において転写画像に対応する画素等と考えることができる。本例において、フラグ画像406は、所定画素値画像の一例である。また、フラグ設定処理については、例えば、画像対応画素に対して所定のフラグを設定する処理等と考えることができる。画像対応画素に対してフラグを設定することについては、例えば、元画像402において転写画像に対応する画素を識別するフラグを設定すること等と考えることができる。
【0069】
また、本例のステップS210において、印刷データ生成部12は、画像対応画素に対応する画素の画素値として所定の値が設定されるデータを生成することで、フラグ画像406を生成する。この場合、フラグ画像406について、例えば、画像対応画素に対してフラグが設定されたデータの一例等と考えることもできる。また、この場合、図5を用いて上記において説明をしたように、例えば、転写画像に対応する画素の識別を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、淡色領域の判定を適切に行うことができる。淡色領域の判定を行う動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0070】
また、淡色領域の判定を行った後、印刷データ生成部12は、二値化画像404及びフラグ画像406に基づき、補填版を生成する(S212)。本例において、ステップS212の動作は、補填位置指定データ生成処理の動作の一例である。また、ステップS212で生成する補填版は、補填位置指定データの一例である。補填位置指定データについては、例えば、補填用吐出位置を指定するデータ等と考えることができる。補填用吐出位置については、例えば、画像用吐出位置の近辺における画像用吐出位置と異なる吐出位置等と考えることができる。画像用吐出位置については、上記においても説明をしたように、例えば、転写画像を描くために印刷部14によってインクを吐出する吐出位置等と考えることができる。また、補填用吐出位置に関し、補填については、例えば、画像用吐出位置以外の吐出位置へインクを吐出すること等と考えることができる。また、本例において、補填用吐出位置については、例えば、画像領域における隙間部204に含まれる吐出位置等と考えることができる。
【0071】
また、本例のステップS212において、印刷データ生成部12は、二値化画像404及びフラグ画像406に基づくことで、画像領域に含まれ、かつ、画像用吐出位置になっていない吐出位置を識別する。また、これにより、印刷データ生成部12は、このような吐出位置の少なくとも一部を補填用吐出位置として指定する補填版を生成する。また、このような動作については、例えば、二値化画像404の画素のうち、フラグ画像406において所定の画素値が設定されている画素に対応し、かつ、画像用吐出位置にならない画素を選択して、当該画素に対応する吐出位置を補填用吐出位置として指定する補填版を生成する動作等と考えることもできる。このように構成すれば、例えば、補填用吐出位置を指定する処理を適切に行うことができる。また、本例において、補填版については、例えば、画像領域における吐出位置のうち、画像用吐出位置になっていない吐出位置を指定すると考えることができる。このような補填版を生成することで、例えば、二値化画像404及びフラグ画像406に基づき、補填用吐出位置を適切に決定することができる。補填版において、画像領域における吐出位置としては、例えば、画像用吐出位置になっていない全ての吐出位置を指定する版を生成することが考えられる。
【0072】
また、ステップS212における印刷データ生成部12の動作については、例えば、上記において説明をしたフラグを用いて、画像対応画素を識別していると考えることもできる。この場合、補填版について、例えば、画像対応画素に対応する吐出位置のうち、二値化画像404において画像用吐出位置として指定されていない吐出位置の少なくとも一部を補填用吐出位置として指定するデータ等と考えることもできる。また、この場合、ステップS212での印刷データ生成部12の動作について、例えば、二値化画像404の画素のうち、フラグが設定されており、かつ、画像用吐出位置にならない画素を選択して、当該画素に対応する吐出位置を補填用吐出位置として指定する補填版を生成する動作等と考えることができる。二値化画像404の画素のうち、フラグが設定されている画素については、例えば、フラグ画像406においてフラグに対応する所定の画素値が設定された画素に対応する二値化画像404の画素等と考えることができる。また、上記においても説明をしたように、本例において、隙間部204へ吐出するインクとしては、例えば、被転写媒体の色、又はその近似色のインクを用いる。そのため、本例のステップS212において、印刷データ生成部12は、ステップS208で認定された被転写媒体の色に基づき、被転写媒体の色、又はその近似色のインクが補填用吐出位置に吐出されるように、補填版を生成する。この場合、被転写媒体の色、又はその近似色のインクは、媒体色取得処理で取得される転写位置色に合わせた色のインクの一例である。補填用インクとしてこのようなインクを用いることで、例えば、補填用吐出位置へ吐出したインクの色が被転写媒体で過度に目立つことを適切に防止することができる。
【0073】
また、印刷データ生成部12は、補填版として、例えば、印刷の解像度に合わせたビットマップ画像を生成する。この場合、このようなビットマップ画像としては、例えば、二値化画像404と同じ形式の二値のビットマップ画像を生成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、補填用インクが補填用吐出位置に吐出されるように、適切に補填版を生成することができる。また、ノズルから吐出するインクの容量を複数段階で変更可能なインクジェットヘッドを用いる場合、例えば、補填用インクの吐出位置と、吐出位置へ吐出するインクの容量とを示す画像を生成することが考えられる。この場合、印刷データ生成部12は、補填版として、例えば、インクの容量毎に、その容量のインクを吐出する吐出位置を示す二値のビットマップ画像を生成する。また、印刷データ生成部12は、補填版として、例えば、プロセスカラー以外の色である特色用の版として扱う画像を生成する。この場合、例えば、補填用インクの色を補填版と対応付けることで、所望の色の補填用インクが補填用吐出位置に吐出されるように、補填版を生成することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、所望の色の補填用インクを適切に吐出することができる。また、補填用インクとしてカラーインクを用いる場合、印刷データ生成部12は、例えば、プロセスカラーの色毎に、補填版を生成してもよい。
【0074】
また、本例において、補填版を生成した後、印刷データ生成部12は、白インクを吐出する吐出位置を指定する版であるホワイト版を更に生成する(S214)。本例において、ステップS214の動作は、光反射性インク吐出位置決定処理の動作の一例である。光反射性インク吐出位置決定処理については、例えば、白インク等の光反射性のインクを吐出する吐出位置である光反射性インク吐出位置を決定する処理等と考えることができる。また、本例のステップS214において、印刷データ生成部12は、ホワイト版として、白インクを吐出する吐出位置を示すビットマップ画像を生成する。このようなビットマップ画像としては、例えば、二値化画像404と同じ形式の二値のビットマップ画像を生成することが考えられる。また、この場合、印刷データ生成部12は、例えば、二値化画像404において指定されているカラーインクの吐出位置に更に白インクを吐出することを示すホワイト版を生成する。この場合、印刷データ生成部12の動作について、例えば、少なくとも画像用吐出位置を光反射性インク吐出位置に決定する動作の一例と考えることができる。また、本例において、白インクで形成される白インクの層については、上記においても説明をしたように、転写画像の背景や、被転写媒体の色を隠蔽するために形成すると考えることができる。そして、この場合、白インクについて、例えば、転写画像と重なる領域に対し、基本的には、100%の濃度で吐出することが考えられる。100%の濃度については、例えば、領域内の全ての吐出位置へインクを吐出する場合の濃度等と考えることができる。そして、この場合、二値のビットマップ画像のホワイト版について、例えば、二値の画素値により、白いインクを吐出する領域を指定していると考えることができる。また、本例において、補填版を生成しない場合(S204、No)、印刷データ生成部12は、例えば、ステップS214において、元画像402に基づき、二値化画像404を生成する。ステップS214でホワイト版を生成する動作についても、後に更に詳しく説明をする。
【0075】
また、ホワイト版を生成した後、印刷データ生成部12は、二値化画像404、補填版、及びホワイト版に基づき、印刷データを生成する(S216)。この場合、印刷データ生成部12は、印刷データとして、例えば、二値化画像404で指定される吐出位置に対して転写画像を描くためのカラーインクを吐出し、補填版で指定される吐出位置へ補填用インクを吐出し、ホワイト版で指定される吐出位置へ白インクを吐出することを示すデータを生成する。このように構成すれば、例えば、印刷データを適切に生成することができる。このようにして印刷データを生成することで、例えば、転写画像を描くためにカラーインクを吐出する吐出位置に加えて、補填用インクを吐出する吐出位置や、白インクを吐出する吐出位置について、適切に決定することができる。また、印刷データ生成部12は、印刷データを用いて行う印刷結果について、例えばユーザの指示等に応じて、プレビューを表示してもよい(S218)。
【0076】
また、本例において、印刷データ生成部12は、生成した印刷データを印刷部14に供給することで、印刷データに基づく印刷の動作を印刷部14に実行させる(S104)。この場合、ステップS104での印刷部14の動作について、例えば、元画像402に基づいて転写媒体50へ転写画像を描く動作等と考えることができる。また、この場合、印刷部14は、補填版に基づき、画像領域の淡色領域等における隙間部204へ、補填用インクを吐出する。更に、印刷部14は、ホワイト版に基づき、転写画像の上に重なる白インクの層を形成する。本例によれば、印刷部14によって、例えば、転写画像における淡色領域等に対してインクを補填しつつ、転写媒体50に対し、適切に印刷を行うことができる。また、これにより、例えば、転写媒体50に対してホットメルト樹脂粉末の付着不良が生じることや、熱転写部18での転写後の画像の全体又は一部の領域の色が過度に白っぽくなること等を適切に防止して、より適切に画像の転写を行うことができる。
【0077】
続いて、ステップS210で淡色領域の判定を行う動作について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、印刷データ生成部12は、画像領域の内外を識別するためのデータとなるフラグ画像406を用いることで、画像領域内にある隙間部204を識別する。また、これにより、印刷データ生成部12は、画像領域内にある隙間部204に含まれる吐出位置を補填用吐出位置として指定する補填版を生成する。このように構成すれば、例えば、画像領域内において、画像用吐出位置の近辺に、補填用吐出位置を適切に指定(決定)することができる。また、この場合、補填用吐出位置として指定する吐出位置については、例えば、画像対応画素に対応する吐出位置のうち、二値化画像404において画像用吐出位置として指定されていない吐出位置等と考えることができる。このような吐出位置については、例えば、画像対応画素に対応する吐出位置のうち、量子化処理を行うことでインクを吐出しない位置になった吐出位置等と考えることもできる。また、画像領域内に生じる隙間部204に含まれる吐出位置については、例えば、淡色領域等において量子化処理を行うことでインクを吐出しない位置になった吐出位置等と考えることができる。また、このような吐出位置については、例えば、量子化処理を行う前の画像において色が設定されている画素に対応し、かつ、量子化処理後の画像において色が設定されない画素に対応する吐出位置等と考えることもできる。
【0078】
また、本例においては、フラグ画像406を用いることで、例えば、量子化処理を行う前の画像でも色が設定されていない画素に対応する吐出位置について、補填用吐出位置として選択しないことになる。この場合、このような吐出位置については、例えば、もともと色を表現していない画素に対応する吐出位置等と考えることができる。本例によれば、例えば、画像領域内の隙間部204のみに対し、補填用吐出位置を適切に設定することができる。また、この場合、隙間部204のみに対して補填用吐出位置を設定することで、例えば、転写画像を描くためのカラーインクで形成されるインクのドットと、補填用インクで形成されるインクのドットとが同じ吐出位置で重なることを適切に防止できる。また、これにより、例えば、画像用インク着弾部202においてカラーインクで表現される色に意図しない変化が生じること等を適切に防止することができる。また、本例のステップS210の動作については、より具体的に、例えば図7に示すように行うことが考えられる。
【0079】
図7は、ステップS210での具体的な動作の一例を示すフローチャートである。上記においても説明をしたように、本例のステップS210において、印刷データ生成部12は、元画像402を取得する(S302)。この場合、印刷データ生成部12は、元画像402として、例えば、印刷の解像度に合わせた解像度のビットマップ画像を取得する。ステップS302において、印刷データ生成部12は、例えば、ビットマップ画像以外の形式の画像を取得し、この画像に基づき、ビットマップ画像の元画像402を生成してもよい。この場合、元画像402を生成する動作について、例えば、元画像402を取得する動作に対応すると考えることができる。
【0080】
また、本例において、印刷データ生成部12は、元画像402に対し、有効画素を抽出し、抽出した画素に所定のフラグを付与(設定)することで、フラグ画像406を生成する(S304)。この場合、元画像402の有効画素については、例えば、元画像402の画素のうち、色が存在している画素等と考えることができる。また、印刷データ生成部12は、例えば、元画像402と同じ解像度の画像を生成し、この画像において元画像402の有効画素に対応する画素の画素値を所定の値に設定することで、フラグ画像406を生成する。この場合、フラグ画像406を生成する動作について、例えば、二値化する前の元画像402における色のついた領域(色有り領域)にフラグに対応する印をつける動作等と考えることができる。また、本例において、印刷データ生成部12は、更に、元画像402に対して二値化の処理を行うことで、元画像402に対応する二値化画像404を生成する(S306)。
【0081】
そして、印刷データ生成部12は、元画像402と二値化画像404とを比較し(S308)、比較結果に基づき、補填領域となる淡色領域等を抽出する(S310)。また、より具体的に、本例のステップS308において、印刷データ生成部12は、元画像402から生成したフラグ画像406を利用し、フラグ画像406においてフラグに対応する所定の値が設定されている画素に対応する元画像402の画素を選択し、選択した画素の中から、更に、二値化画像404においてインクを吐出しないことに対応する画素値が設定されている画素に対応する画素を選択する。このように構成すれば、例えば、画像領域の中にある隙間部204に対応する画素を適切に選択することができる。また、本例において、印刷データ生成部12は、このように選択した画素に対応する領域について、補填用のインクでの補填を行う補填領域として、抽出する(S310)。このように構成すれば、ステップS210において、淡色領域の判定を適切に行うことができる。
【0082】
尚、上記において説明をした動作において、印刷データ生成部12は、直接的に淡色領域の抽出を行うのではなく、淡色領域等において生じる隙間部204に対応する画素等を選択している。そのため、淡色領域の判定については、例えば、厳密に淡色領域を判定することではなく、淡色領域等に含まれる隙間部204に対応する画素又は吐出位置等を判定すること等と考えることができる。また、淡色領域の判定の動作については、例えば、元画像402において色有り領域としてフラグに対応する印がつけられた画素に対応する吐出位置のうち、二値化等の量子化を行うことでインクの吐出がない位置になった吐出位置を判定する動作等と考えることもできる。
【0083】
続いて、ステップS214でホワイト版を生成する動作について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、印刷データ生成部12は、例えば、ユーザの選択に応じて、補填版を生成するか否かを決定する。そして、この場合、印刷データ生成部12は、ステップS214でホワイト版を生成する動作について、補填版を生成するか否かに応じて異ならせる。また、補填版を生成する場合、印刷データ生成部12は、例えば、図8に示す動作により、ホワイト版を生成する。図8は、補填版を生成する場合に印刷データ生成部12がステップS214で行う動作について更に詳しく説明をする図である。図8(a)は、この場合に印刷データ生成部12がステップS214で行う動作の一例を示すフローチャートである。図8(b)、(c)は、転写媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。
【0084】
本例において、補填版を生成する場合、ステップS212で補填版を生成した後、印刷データ生成部12は、白インクを吐出する吐出位置について、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置のみに合わせるか否かを決定する(S402)。この場合、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置のみに白インクの吐出位置を合わせることについては、例えば、画像用インク着弾部202における吐出位置のみに白インクを吐出し、隙間部204における吐出位置には白インクを吐出しないこと等と考えることができる。また、ステップ402で決定する事項については、例えば、補填用インクを吐出した吐出位置に白インクを重ねるか否かの判断等と考えることもできる。この場合、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置のみに白インクの吐出位置を合わせることについて、例えば、補填用インクを吐出した吐出位置に白インクを重ねないことに対応すると考えることができる。また、ステップS402において、印刷データ生成部12は、例えば、ユーザの選択に応じて、上記の決定を行う。印刷データ生成部12は、例えば転写画像の内容に応じて、ユーザの選択を受けることなく、自動的に、上記の決定を行ってもよい。また、ステップS402の動作については、例えば、ホワイト版に基づいて形成される白インクの層の仕方を選択する動作等と考えることもできる。この場合、例えば、印刷物に求められる仕上がり状態や品質等に応じて、白インクの層の形成の仕方を選択することが考えられる。
【0085】
また、ステップS402において、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置のみに白インクの吐出位置を合わせるとの決定を行った場合(S402、Yes)、印刷データ生成部12は、転写画像に対応する二値化データである二値化画像404を読み込み(S404)、二値化画像404において指定されているインクを吐出位置を白インクの吐出位置として指定するホワイト版を生成する(S406)。これに対し、ステップS402において、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置のみに白インクの吐出位置を合わせるのではないとの決定を行った場合(S402、No)、印刷データ生成部12は、例えば、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置に加えて、補填用インクと吐出する吐出位置にも白インクを吐出するように、ホワイト版を生成する(S408)。この場合、ホワイト版について、例えば、元画像402の範囲に一致させたデータになると考えることができる。より具体的に、この場合、印刷データ生成部12は、例えば、元画像402に基づいて転写画像の画像領域を識別し、画像領域の全体に重なる白インクの層を形成するように、ホワイト版を生成する。このようなホワイト版については、例えば、画像領域内の全ての吐出位置を白インクの吐出位置として選択する版と考えることができる。また、転写画像の画像領域については、例えば、フラグ画像406に基づいて識別すること等も考えられる。そのため、ステップS408において、印刷データ生成部12は、フラグ画像406に基づき、ホワイト版を生成してもよい。
【0086】
ステップS406又はS408でホワイト版を生成した後、印刷データ生成部12は、ステップS216へ進み、印刷データを生成する。また、印刷部14は、この印刷データに基づき、例えば図8(b)、(c)に示すように、転写媒体50上に、インクの層を形成する。より具体的に、図8(b)は、ステップS406でホワイト版を生成する場合に転写媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。この場合、例えば、転写画像の画像領域のうち、補填用インクでの補填を行っていない濃色領域では、図中に示すように、ある程度の範囲に広がって形成されるカラーインクの層の全体と重なるように、白インクの層が形成される。これに対し、補填用インクでの補填を行う淡色領域では、例えば図中に示すように、補填インクでの補填を行う部分(隙間部204に対応する部分)には白インクの層が重ならず、転写画像を描くためのカラーインクで形成される部分(画像用インク着弾部202に対応する部分)のみに白インクが重なる。この場合、淡色領域における白インクの部分について、例えば、吐出位置に形成されるインクのドット単位で形成されると考えることもできる。また、図8(c)は、ステップS408でホワイト版を生成する場合に転写媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。この場合、例えば図中に示すように、画像領域において、転写画像を描くためのカラーインクで形成される部分と、補填インクでの補填を行う部分の両方に重なるように、白インクの層が形成される。本例によれば、例えば、転写画像と重なる白インクの層について、ユーザの選択等に応じた構成で適切に形成することができる。また、この場合、いずれの構成で白インクの層を形成する場合でも、印刷部14において、少なくとも、画像用吐出位置に対応する吐出位置に対し、白インクを吐出すると考えることができる。
【0087】
尚、白インクの層の形成の仕方については、例えば、使用するインクやパウダ302等の特性に応じて選択すること等も考えられる。より具体的に、例えば、補填インクでの補填を行う部分に対して更に白インクを吐出する場合、転写媒体50上でのインクの量について、パウダ302を適切に付着させるために必要な量よりも多くなること等も考えられる。また、例えば被転写媒体の色に合わせた補填用インクで隙間部204へインクを吐出する場合、補填用インクに対し、白インクでの隠蔽を行う必要性が低いと考えることもできる。更に、例えばインクやパウダ302の特性によっては、補填用インクの吐出位置等でインクの液体量(例えば、水分量)が過剰になると、不具合が生じるおそれもある。そして、このような場合、補填用インクの吐出位置等において、白インクを吐出しなくても、パウダ302を適切に付着させるためのインク量を確保できる場合等には、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置のみに白インクの吐出位置を合わせることが好ましい。また、印刷で表現しようとする意匠等によっては、補填インクでの補填を行う部分に対して更に白インクを吐出することが好ましい場合もある。そのため、このような場合には、補填インクでの補填を行う部分に対しても白インクを吐出することが好ましい。
【0088】
また、本例において、補填版を生成しない場合、印刷データ生成部12は、例えば、図9に示す動作により、ホワイト版を生成する。図9は、補填版を生成しない場合に印刷データ生成部12がステップS214で行う動作について更に詳しく説明をする図である。図9(a)は、この場合に印刷データ生成部12がステップS214で行う動作の一例を示すフローチャートである。図9(b)、(c)は、転写媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。
【0089】
本例において、補填版を生成しない場合、ステップS204での動作に続いて、印刷データ生成部12は、白インクを吐出する吐出位置について、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置に合わせるか否かを決定する(S412)。この場合、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置に白インクの吐出位置を合わせることについては、例えば、カラーインクを吐出する吐出位置のみに白インクを吐出すること等と考えることができる。ステップS412において、印刷データ生成部12は、例えば、ユーザの選択に応じて、上記の決定を行う。印刷データ生成部12は、例えば転写画像の内容に応じて、ユーザの選択を受けることなく、自動的に、上記の決定を行ってもよい。また、ステップS412の動作については、例えば、ホワイト版に基づいて形成される白インクの層の仕方を選択する動作等と考えることもできる。この場合、例えば、印刷物に求められる仕上がり状態や品質等に応じて、白インクの層の形成の仕方を選択することが考えられる。
【0090】
また、本例において、補填版を生成しない場合、印刷データ生成部12は、元画像402に対応する二値化画像404の生成を行っていない状態で、ステップS412の動作を行う。そのため、印刷データ生成部12は、以降の動作において、二値化画像404を生成する。より具体的に、ステップS412において、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置に白インクの吐出位置を合わせるとの決定を行った場合(S412、Yes)、印刷データ生成部12は、淡色領域の判定時の動作として上記において説明をした動作と同一又は同様にして、元画像402に対する二値化の処理等を行って、元画像402に対応する二値化画像404を生成する(S414)。そして、二値化画像404に基づき、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置を白インクの吐出位置として指定するホワイト版を生成する(S416)。この場合、ホワイト版について、例えば、カラーインク用の二値化データである二値化画像404と指定する吐出位置が一致すると考えることもできる。また、上記においても説明をしたように、二値化画像404については、例えば、インクの色毎に生成することが考えられる。そのため、ホワイト版について、二値化画像404と指定する吐出位置が一致することについては、例えば、いずれかの色に対応する二値化画像404で指定されているインクの吐出位置がホワイト版でもインクの吐出位置として指定されること等と考えることができる。
【0091】
また、ステップS412において、転写画像を描くためのカラーインクの吐出位置に白インクの吐出位置を合わせないとの決定を行った場合(S412、No)、印刷データ生成部12は、実際にカラーインクが吐出される吐出位置を考慮しないで、ホワイト版を生成する(S418)。この場合、ホワイト版について、例えば、元画像402の範囲に一致させたデータになると考えることができる。より具体的に、この場合、印刷データ生成部12は、例えば、図8におけるステップS408での動作と同一又は同様の動作により、元画像402に基づいて転写画像の画像領域を識別し、画像領域の全体に重なる白インクの層を形成するように、ホワイト版を生成する。また、この場合も、印刷データ生成部12は、ステップS414での動作と同一又は動作により、元画像402に対応する二値化画像404を生成する(S420)。印刷データ生成部12は、ステップS420の動作について、ステップS418の動作と同時に行ってもよい。また、ステップS420の動作について、ステップS418の動作よりも先に行ってもよい。
【0092】
また、これらの動作を行った後、印刷データ生成部12は、ステップS216へ進み、印刷データを生成する。また、印刷部14は、この印刷データに基づき、例えば図9(b)、(c)に示すように、転写媒体50上に、インクの層を形成する。より具体的に、図9(b)は、ステップS416でホワイト版を生成する場合に転写媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。図9(c)は、ステップS418でホワイト版を生成する場合に転写媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。
【0093】
これらの構成に関し、上記の説明等から理解できるように、ホワイト版については、例えば、白インクの吐出位置を指定する二値データ等と考えることができる。また、この場合、ホワイト版について、例えば、元画像402に対応する二値データである二値化画像404とは別の二値データ等と考えることができる。そして、この場合、二値化画像404とホワイト版とを個別に生成すると、二値化画像404で指定されるカラーインクの吐出位置に対応するインクの着弾位置と、ホワイト版で指定される白インクの吐出位置に対応するインクの着弾位置とにずれが生じ、印刷結果において白インクの色が過度に目立つおそれがある。これに対し、ステップS414の動作でホワイト版を生成する場合、例えば図9(b)に示すように、濃色領域及び淡色領域のいずれでも、カラーインクの吐出位置と白インクの吐出位置とが同じになる。また、これにより、例えば、印刷結果において白インクの色が過度に目立つことを適切に防止することができる。また、例えば被転写媒体の色によっては、カラーインクの吐出位置と白インクの吐出位置とがずれていても、白インクが目立ちにくくなる場合もある。また、印刷物に求められる仕上がり状態や品質等によっては、白インクがある程度目立っても問題にならない場合もある。そのため、このような場合には、例えば、ステップS418の動作でホワイト版を生成することが考えられる。このように構成した場合も、ホワイト版を適切に生成することができる。また、この場合、例えば図9(c)に示すように、淡色領域に生じる隙間の部分も含めて、画像領域の全体に白インクの層が形成されることになる。
【0094】
続いて、上記において説明をした構成に関する補足説明を行う。上記においても説明をしたように、本例において、印刷部14は、印刷データに基づき、転写画像の画像領域における隙間部204へ補填用インクを吐出する。そして、この場合、例えば、パウダ302の付着性を高めること以外の効果を更に考えることもできる。より具体的に、例えば、補填用インクでの補填を行わない場合、画像領域における淡色領域では、カラーインクのドットが離散的に形成されることになる。そして、この場合、より広い面積にわたってインクのドットがつながっている場合等と比べて、被転写媒体への転写後に、インクの剥がれ等が生じやすくなるおそれがある。これに対し、補填インクでの補填を行う場合、転写画像を構成するカラーインクのドットが離散的に形成されている場合にも、それらの間について、補填用インクで適切につなげることができる。そのため、本例によれば、例えば、被転写媒体への転写後のインクを剥がれにくくすることができる。また、この場合、補填インクでの補填を行うことで、例えば、印刷面に生じる凹凸を少なくすることもできる。そのため、本例によれば、例えば、この点でも、被転写媒体への転写後のインクの剥がれを生じにくくすることができる。
【0095】
また、上記においては、元画像402に基づいて二値化画像404を生成する動作について、例えば、図6に示した動作のステップS210で淡色領域の判定を行う動作の中で行う例を説明した。これに対し、印刷データ生成部12の動作の変形例では、二値化画像404を生成する処理(二値化の処理等)について、ステップS210以外のタイミングで行ってもよい。この場合、例えば、ステップS202において、元画像402を取得し、更に、元画像402に基づいて二値化画像404を生成すること等が考えられる。
【0096】
また、上記においては、補填インクについて、カラーインクを用いる例や、クリアインクを用いる例について、説明をした。この点に関し、布の被転写媒体を用いる場合に転写媒体50に対して印刷を行う公知の印刷装置(インクジェットプリンタ)としては、クリアインク用のインクジェットヘッドを有さない構成の印刷装置が広く用いられている。そのため、補填インクとしてカラーインクを用いる場合、印刷部14としても、クリアインク用のインクジェットヘッドを有さない構成を用いることが考えられる。また、補填用インクとしてクリアインクを用いる場合には、クリアインク用のインクジェットヘッドを有する印刷部14を用いることが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、例えば印刷システムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0098】
10・・・印刷システム、102・・・ヘッド部、104・・・プラテン、106・・・Yバー部、108・・・主走査駆動部、110・・・副走査駆動部、12・・・印刷データ生成部、120・・・制御部、14・・・印刷部、16・・・粉末付与部、18・・・熱転写部、202・・・画像用インク着弾部、204・・・隙間部、302・・・パウダ、402・・・元画像、404・・・二値化画像、406・・・フラグ画像、50・・・転写媒体、52・・・基材部、54・・・受理層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9