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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127310
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】歪計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G01L1/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036380
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】笹原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】海野 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 正典
(72)【発明者】
【氏名】波多 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】ルシ ウエドラオゴ
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049AA12
(57)【要約】
【課題】歪による抵抗変化を効果的に検出可能であり、消費電力も抑えられる歪測定システム
【解決手段】歪を生じる被測定物に設けられる抵抗体および圧電素子と、前記抵抗体の抵抗値の変化を検出する抵抗検出部と、前記圧電素子の圧電効果を検出する圧電検出部と、前記圧電検出部の検出結果から前記被測定物に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミングを検出し、前記歪変化タイミングにおいて前記抵抗体で生じた前記抵抗値の変化を算出し、前記抵抗値の変化の算出結果を用いて前記被測定物に生じる歪の大きさを算出する歪演算部と、を有する歪計測システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪を生じる被測定物に設けられる抵抗体および圧電素子と、
前記抵抗体の抵抗値の変化を検出する抵抗検出部と、
前記圧電素子の圧電効果を検出する圧電検出部と、
前記圧電検出部の検出結果から前記被測定物に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミングを検出し、前記歪変化タイミングにおいて前記抵抗体で生じた前記抵抗値の変化を算出し、前記抵抗値の変化の算出結果を用いて前記被測定物に生じる歪の大きさを算出する歪演算部と、を有する歪計測システム。
【請求項2】
前記圧電検出部の検出結果から前記被測定物に歪の変化が生じていないタイミングである歪非変化タイミングを検出し、前記歪非変化タイミングにおいて前記抵抗体で生じた前記抵抗値の変化を算出し、前記抵抗体の温度変化を算出する温度変化算出部をさらに有する請求項1に記載の歪計測システム。
【請求項3】
前記抵抗体、前記圧電素子および前記被測定物のそれぞれの少なくとも一部が、所定の方向に沿って重なっている請求項1に記載の歪計測システム。
【請求項4】
前記抵抗体を含むブリッジ回路を有し、
前記抵抗検出部は、前記ブリッジ回路の出力を測定することで、前記抵抗体の抵抗値の変化を検出する請求項1に記載の歪計測システム。
【請求項5】
前記抵抗体を含むブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の出力を増幅する差動アンプと、を有し、
前記抵抗検出部は、前記差動アンプで増幅された前記ブリッジ回路の出力を測定することで、前記抵抗体の抵抗値の変化を検出する請求項1に記載の歪計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物に生じる歪を計測する歪計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の歪を測定する歪ゲージとしては、抵抗体の変形に伴う抵抗値の変化を用いて歪を検出するいわゆる電気抵抗式ものが広く使用されている。しかしながら、抵抗体の抵抗値は、歪だけでなく温度によっても変化するため、このような歪ゲージにおいて正確に歪を検出するためには、全体的な抵抗値の変化から、歪による抵抗変化成分を取り出す必要がある。
【0003】
たとえば、従来の電気抵抗式の歪検出センサでは、歪検出用の抵抗体に加えて、被測定物の歪の影響を受けない温度変化検出用の抵抗体を追加し、歪検出用の抵抗体による出力値から、温度検出用の抵抗体の出力値から算出された温度変化の影響を除去し、被測定物の歪を検出する手法が提案されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-111368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の歪検出センサでは、抵抗体の自己発熱や抵抗値の経年変化など、被検出物の歪および環境温度の変化以外の要因で抵抗値が変化して誤差を生じる場合があり、問題となっている。また、従来の歪検出センサは、歪検出用の抵抗体と温度検出用の抵抗体の両方の抵抗値の検出のために、消費電力が大きくなる問題がある。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、歪による抵抗変化を効果的に検出可能であり、消費電力も抑えられる歪測定システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係る歪測定システムは、
歪を生じる被測定物に設けられる抵抗体および圧電素子と、
前記抵抗体の抵抗値の変化を検出する抵抗検出部と、
前記圧電素子の圧電効果を検出する圧電検出部と、
前記圧電検出部の検出結果から前記被測定物に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミングを検出し、前記歪変化タイミングにおいて前記抵抗体で生じた前記抵抗値の変化を算出し、前記抵抗値の変化の算出結果を用いて前記被測定物に生じる歪の大きさを算出する歪演算部と、を有する。
【0008】
本開示に係る歪測定システムでは、圧電素子の圧電効果を検出して歪変化タイミングを検出し、歪変化タイミングにおいて抵抗体で生じた抵抗値の変化を算出するため、想定される歪速度が非常に遅い場合などを除き、抵抗体の歪による抵抗変化を効果的に検出可能である。また、圧電素子の圧電効果を検出するための消費電力は、抵抗体の抵抗値を検出するための消費電力より小さくて済むため、このような歪測定システムは、消費電力を抑えられる。
【0009】
また、たとえば、本開示に係る歪測定システムは、前記圧電検出部の検出結果から前記被測定物に歪の変化が生じていないタイミングである歪非変化タイミングを検出し、前記歪非変化タイミングにおいて前記抵抗体で生じた前記抵抗値の変化を算出し、前記抵抗体の温度変化を算出する温度変化算出部をさらに有してもよい。
【0010】
このような歪測定システムでは、環境温度の変化を検出することができる。また、算出した温度変化の検出値を用いて、抵抗値の変化と歪の間の感度補正なども正確に行うことが可能であり、より広い温度範囲で精度よく歪を計測できる。また、圧電検出部の検出結果から歪非変化タイミングを検出するため、このような歪測定システムは、抵抗値の変化から温度を検出するものに比べて消費電力を抑えられる。
【0011】
また、たとえば、前記抵抗体、前記圧電素子および前記被測定物のそれぞれの少なくとも一部が、所定の方向に沿って重なっていてもよい。
【0012】
このような歪測定システムでは、抵抗体と圧電素子とを近づけて配置できるため、圧電素子による歪変化タイミングの検出結果と、実際に抵抗体に歪の変化が生じるタイミングとの間にズレが生じる問題を効果的に防止できる。また、このような歪測定システムは、小型化の観点でも有利である。
【0013】
また、たとえば、本開示に係る歪測定システムは、前記抵抗体を含むブリッジ回路を有してもよく、
前記抵抗検出部は、前記ブリッジ回路の出力を測定することで、前記抵抗体の抵抗値の変化を検出してもよい。
【0014】
このような歪測定システムは、高感度および高精度な歪の検出を実現する。
【0015】
また、たとえば、本開示に係る歪測定システムは、前記抵抗体を含むブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の出力を増幅する差動アンプと、を有し、
前記抵抗検出部は、前記差動アンプで増幅された前記ブリッジ回路の出力を測定することで、前記抵抗体の抵抗値の変化を検出してもよい。
【0016】
このような歪測定システムは、高感度および高精度な歪の検出を実現する。また、歪演算部は、歪変化タイミングにおいて抵抗体で生じた抵抗値の変化を用いて被測定物に生じる歪の大きさを算出するため、差動アンプのドリフトの影響を受けにくく、高精度な歪計測が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態に係る歪計測システムの概略構成を示す概念図である。
図2図2は、図1に示す歪計測システムの回路および信号処理の概略を示す概念図である。
図3図3は、図1および図2に示す歪計測システムでの信号処理の第1の例を説明する概念図である。
図4図4は、被測定物の変形状態を示す概念図である。
図5図5は、図1および図2に示す歪計測システムでの信号処理の第2の例を説明する概念図である。
図6図6は、第2実施形態に係る歪計測システムの概略構成を示す概念図である。
図7図7は、図6に示す歪計測システムでの信号処理の第3の例を説明する概念図である。
図8図8は、第3実施形態に係る歪計測システムの概略構成を示す概念図である。
図9図9は、図8に示す歪計測システムでの信号処理の第4の例を説明する概念図である。
図10図10は、第4実施形態に係る歪計測システムのの回路および信号処理の概略を示す概念図である。
図11図11は、図10に示す歪計測システムでの信号処理の第5の例を説明する概念図である。
図12図12は、第5実施形態に係る歪計測システムの概略構成を示す概念図である。
図13図13は、第6実施形態に係る歪計測システムの概略構成を示す概念図である。
図14図14は、第7実施形態に係る歪計測システムの概略構成を示す概念図である。
図15図15は、図14に示す歪計測システムの回路および信号処理の概略を示す概念図である。
図16図16は、図14および図15に示す歪計測システムでの信号処理の第6の例を説明する概念図である。
図17図17は、第8実施形態に係る歪計測システムの概略構成を示す概念図である。
図18図18は、図17に示す歪計測システムの回路および信号処理の概略を示す概念図である。
図19図19は、変形例に係る歪計測システムの概略構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る歪計測システム10の概略構成を示す概念図である。図1に示すように、歪計測システム10は、歪を生じる被測定物90に設けられる抵抗体22および圧電素子32と、検出演算部40とを有する。被測定物90は、歪計測システム10による歪の測定対象物であり、たとえばロボットのアームの関節角度に応じた歪を生じる板材や、圧力に応じた歪を生じる受圧板などのが挙げられる。ただし、被測定物90としては、歪を生じるものであれば形状や材質は特に限定されない。他の実施形態についても同様である。
【0020】
抵抗体22は、被測定物90の表面に直接または接着等により固定されており、被測定物90の変形に従って自らも変形する。抵抗体22は、歪の大きさに応じて抵抗値(電気抵抗値)が変化する合金材料等で構成され、いわゆる歪ゲージとして機能する。抵抗体22の材質としては、Ni-Cr系の合金や、Cr-Al系の合金、Cu-Ni系の合金などが挙げられる。
【0021】
抵抗体22は、たとえば上述した金属による導電性の薄膜を所定形状にパターニングすることにより作製される。抵抗体22は、Ni、Cr、CuおよびAl以外の元素を含んでいてもよく、たとえば、抵抗体22は、ОやNを含んでいてもよい。また、抵抗体22は、Ni、Cr、CuおよびAl以外の金属元素や卑金属元素を含んでいてもよい。
【0022】
抵抗体22は、配線76や図示しない電極等を介して、検出演算部40に対して電気的に接続されている。また、抵抗体22は、被測定物90の変形に従って変形する態様で固定されていればよく、抵抗体22と被測定物90との間に、基板などの他の部材や、接着層などが介在していてもかまわない。他の実施形態についても同様である。
【0023】
圧電素子32は、抵抗体22と同様に、被測定物90の表面に直接または接着等により固定されており、被測定物90の変形に従って自らも変形する。圧電素子32は、圧電体と、圧電体を挟む電極を有する。圧電素子32(圧電体)の変形に伴って生じる圧電効果による電気的変化(表面電荷による電圧の変化)は、圧電素子32の電極に接続する配線76等を介して、検出演算部40に伝えられる。
【0024】
圧電素子32の圧電体を構成する材料としては、圧電効果を示す材料であれば特に限定されないが、たとえばペロブスカイト構造をするチタン酸バリウムBaTiО3、チタン酸ジルコン酸鉛Pb[Zrx-1Ti1-x]O3や、石英SiО2や、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。
【0025】
圧電素子32についても、抵抗体22と同様に、被測定物90の変形に従って変形する態様で固定されていればよく、圧電素子32と被測定物90との間に、基板などの他の部材や、接着層などが介在していてもかまわない。他の実施形態についても同様である。
【0026】
図1に示すように、検出演算部40は、抵抗検出部42、圧電検出部44および歪演算部52を有する。検出演算部40は、たとえばマイクロプロセッサなどで構成され、抵抗体22や圧電素子32からの出力を用いて、演算等を行う。検出演算部40は、抵抗体22や圧電素子32とは別体であり、被測定物90には直接固定されていない。ただし、検出演算部40は、抵抗検出部42や圧電検出部44と一体であってもよく、被測定物90に設けられていてもよい。また、検出演算部40は、アナログ回路等で構成されていてもよい。他の実施形態についても同様である。
【0027】
抵抗検出部42は、抵抗体22の抵抗値43(図3参照)の変化を検出する。後述するように、抵抗体22の抵抗値43は、抵抗体22に生じる歪の大きさによっても変化する他、抵抗体22の温度によっても変化する。抵抗検出部42で検出した抵抗体22の抵抗値の検出結果は、歪演算部52に伝えられる。抵抗検出部42としては、抵抗値を直接検出するものには限定されず、回路の電圧値などによって、抵抗体22の抵抗値の変化を検出するものであってもよい。
【0028】
圧電検出部44は、圧電素子32の圧電効果を検出する。たとえば、図3に示すように、圧電検出部44は、圧電素子32の電極間で発生する電位差の変化45により、圧電素子32で生じる圧電効果を検出する。圧電検出部44で検出した圧電効果の検出結果は、抵抗検出部42で検出した抵抗体22の抵抗値43の変化と同様に、歪演算部52に伝えられる。
【0029】
図2は、図1に示す歪計測システム10の回路および信号処理の概略を示す概念図である。図2に示すように、圧電検出部44と圧電素子32との間には、負荷抵抗62が、圧電素子32と並列に接続される。負荷抵抗62の抵抗値を変化させることにより、圧電素子32への印加電圧および圧電検出部44、負荷抵抗62および圧電素子32を含む圧電効果の検出回路での消費電力を調整することが可能である。
【0030】
圧電効果の検出回路の消費電力は、特に限定されないが、負荷抵抗62の抵抗値を大きくすること等により、圧電効果の検出回路の消費電力を抑制することも好ましい。たとえば、圧電効果の検出回路の消費電力は、抵抗検出部42および抵抗体22を含む抵抗値43の検出回路の消費電力より少ないことが好ましく、抵抗値43の検出回路の消費電力の10分の1以下であることがさらに好ましい。
【0031】
図1および図2に示す歪演算部52は、圧電検出部44の検出結果から、被測定物90に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミング46を検出する。さらに、歪演算部52は、歪変化タイミング46において抵抗体22で生じた抵抗値43の変化(R2-R1(図3参照))を算出する。さらに、歪演算部52、抵抗値43の変化(R2-R1)の算出結果を用いて、被測定物90に生じる歪の大きさを算出する。また、歪計測システム10は、歪演算部52の演算結果である被測定物90に生じる歪の大きさに関する情報を、外部に出力することができる。
【0032】
図3は、図1および図2に示す歪計測システム10での信号処理の第1の例を説明する概念図である。図3に示すグラフは、上から順に、被測定物90の歪変化、抵抗検出部42で検出される検出結果である抵抗値43、被測定物90の温度変化、圧電検出部44で検出される圧電素子32の電位差の変化45、歪演算部52が算出する歪抵抗変化53を表している。なお、被検出物90の歪変化および被測定物90の温度変化は、制御値または理論値であるのに対して、抵抗値43、圧電素子32の電位差の変化45、および歪抵抗変化53は、歪計測システム10での検出値または算出値である。他の実施形態でも同様である。
【0033】
図3における歪変化、抵抗検出部42で検出される抵抗値43の変化および温度変化の比較から理解できるように、抵抗値43の変化は、被測定物90の歪変化(時間t3~t4で発生)だけでなく、被測定物90の温度変化(時間t1~t2で発生)によっても発生する。また、抵抗検出部42で検出される抵抗値43は、自己発熱や経年変化など、被測定物90の物理量以外の要因によっても変化する(時間T5付近で発生)。
【0034】
歪計測システム10において、被測定物90に生じる歪の大きさを正確に算出するには、抵抗検出部42で検出される抵抗値43の変化のうち、被測定物90の歪に起因する抵抗値43の変化でないものを、除外する必要がある。そこで、歪計測システム10の歪演算部52では、圧電検出部44の検出結果から被測定物90に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミング46を検出する。図3に示す例では、歪演算部52は、圧電素子32の電位が変化し始める時間t3から、圧電素子32の電位の変化が止まる時間t4までの間を、歪変化タイミング46であると検出する。
【0035】
次に、歪演算部52は、歪変化タイミング46において抵抗体22で生じた抵抗値43の変化を、抵抗検出部42の出力値より算出する。図3に示す例では、歪演算部52は、歪変化タイミング46の終了時である時間t4における抵抗値43(R2)と、歪変化タイミング46の開始時である時間t3における抵抗値43(R1)との差であるR2-R1を、歪変化タイミング46において抵抗体22で生じた抵抗値43の変化として算出する。
【0036】
このようにして、歪計測システム10の歪演算部52は、抵抗検出部42で検出される抵抗値43の変化のうち、被測定物90で生じる歪に起因する抵抗値43の変化でないものを除外し、被測定物90に生じる歪の大きさを正確に算出できる。すなわち、図3に示すように、歪計測システム10では、圧電効果の検出による歪変化タイミング46以外で生じた抵抗値の変化(時間t1~t2および時間t5における抵抗値の変化)については、被測定物90の歪の大きさの算出からは除外される。
【0037】
図3では、単純な変化を例に挙げて歪計測システム10による歪の検出について説明を行ったが、歪計測システム10では、より複雑で長時間にわたる歪の検出も可能である。図5は、図1および図2に示す歪計測システム10での信号処理の第2の例を説明する概念図である。
【0038】
図5では、図3と同様に、上から順に、被測定物90の歪変化、抵抗検出部42で検出される検出結果である抵抗値43、被測定物90の温度変化、圧電検出部44で検出される圧電素子32の電位差の変化45、歪演算部52が算出する歪抵抗変化53を表している。
【0039】
図5に示す例では、図4に示すような二段階の変形が被測定物90に生じた場合を想定したものである。すなわち、図5における時間t6~t7(歪変化タイミング46a)において1回目の変形が発生し(図4(b))、図5における時間t8~t9において2回目の変形(歪変化タイミング46b)が発生する(図4(c))。また、図5において温度変化のグラフが示すように、被測定物90が徐々に低下する状況を想定している。
【0040】
図5に示すような歪変化および温度変化が被測定物90に生じる場合も、図1および図2に示す歪計測システム10は、被測定物90に生じる歪の大きさを正確に算出することが可能である。すなわち、図5に示すように、歪計測システム10の歪演算部52は、圧電検出部44の検出結果から被測定物90に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミング46a、46bを検出する。
【0041】
次に、歪演算部52は、歪変化タイミング46a、46bにおいて抵抗体22で生じた抵抗値43の変化を、抵抗検出部42の出力値より算出する。図5に示す例では、歪演算部52は、歪変化タイミング46aの終了時である時間t7における抵抗値43(R2)と、歪変化タイミング46aの開始時である時間t6における抵抗値43(R1)との差であるR2-R1を、歪変化タイミング46aにおいて抵抗体22で生じた抵抗値43の変化として算出する。また、同様に、歪演算部52は、歪変化タイミング46bの前後の抵抗値43(R3、R4)の差であるR4-R3を、歪変化タイミング46bにおいて抵抗体22で生じた抵抗値43の変化として算出する。
【0042】
さらに、歪演算部52は、歪変化タイミング46a、46bにおいて抵抗体22で生じた抵抗値43の変化の算出値であるR2-R1、R4-R3を用いて、被測定物90に生じる歪の大きさを算出する。たとえば、歪演算部52は、抵抗値43の初期値R0に、歪変化タイミング46aでの抵抗値43の変化の算出値であるR2-R1を加算した値を、図4(b)に示す被測定物90の歪の大きさに対応する抵抗値変化である歪抵抗変化53(R’)であると考えて、歪抵抗変化53に所定の比例係数を乗じた値を、図4(b)に示す被測定物90に生じる歪の大きさとすることができる。同様に、歪演算部52は、図4(c)に示す被測定物90の歪の大きさに対応する歪抵抗変化53(R”)を算出し、図4(c)に示す被測定物90に生じる歪の大きさを算出することができる。
【0043】
なお、図5に示す例では、歪変化タイミング46a、46bが短時間で発生すること、言い換えると被測定物90の歪速度が1×10-2(s-1)以上であることも、歪の測定精度を高めるために好ましい。このように、第1実施形態に係る歪計測システム10は、抵抗体22の歪による抵抗変化を効果的に検出し、温度変化や抵抗体22の自己発熱などが想定される状況においても、被測定物90の歪を正確に計測することができる。
【0044】
また、歪計測システム10で採用する圧電素子32の圧電効果を検出するための回路での消費電力は、従来技術で採用されるような、温度補正のための抵抗検出回路での消費電力より、小さくすることができる。さらに、従来の温度検出用の抵抗体等で検出される温度は、歪検出用の抵抗体22の温度との間の誤差が問題になるが、歪計測システム10では、そのような問題を回避することができる。
【0045】
第2実施形態
図6は、第2実施形態に係る歪計測システム110の概略構成を示す概念図である。歪計測システム110は、圧電素子32と圧電検出部44の間に整流回路164を追加したことを除き、図1および図2に示す歪計測システム10と同様である。歪計測システム110に関しては、図1および図2に示す歪計測システム10との相違点を中心に説明を行い、歪計測システム10との共通点については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
整流回路164は、圧電素子32から出力される正負が含まれる電気信号を、正のみ(または負のみ)の信号に変換して、圧電検出部44に出力する。整流回路164は、たとえば、ダイオードを含む回路などで構成されるが、整流回路164の具体的構成は特に限定されない。
【0047】
図7は、図6に示す歪計測システム110で行われる信号処理の一例(第3の例)を説明する概念図である。図7では、上から順に、被測定物90の歪変化、抵抗検出部42で検出される検出結果である抵抗値43、被測定物90の温度変化、圧電素子32の電極に生じる電位差の変化145a、圧電検出部44で検出される電位差の変化145b、歪演算部52が検出する歪抵抗変化53を表している。
【0048】
図7に示す第3の例では、図5に示す第2の例と同様に、二段階の変形が被測定物90に生じた場合を想定したものであるが、図5に示す第2の例とは異なり、1回目の変形と2回目の変形とで、引張歪か圧縮歪かを表す歪の符号が逆である。すなわち、図7における時間t11~t12(歪変化タイミング146a)において1回目の変形が発生し(歪変化タイミング146a、引張歪)、図7における時間t13~t14において2回目の変形(歪変化タイミング146b、圧縮歪)が発生する。なお、温度変化については、図5に示す例と同様である。
【0049】
図7における上から4段目のグラフから理解できるように、圧電素子32の電極で検出される電位差の変化145aは、引張歪か圧縮歪かによって符号が逆方向になる。しかし、圧電検出部44では、被測定物90で変形が生じる歪変化タイミング146a、146bの開始時および終了時の情報を得られれば足りる。そこで、図6に示す歪計測システム110では、整流回路164により圧電素子32の信号を整流して圧電検出部44に伝える(圧電検出部44で検出される電位差の変化145b)。これにより、圧電検出部44は、測定物90に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミング146a、146bを算出するために必要な信号情報を、よりシンプルな形で受け取ることができる。
【0050】
歪計測システム110の歪演算部52で行なわれる歪の大きさの算出方法は、歪計測システム10の歪演算部52と同様である。たとえば、図7に示す例では、抵抗値143の初期値R0に、歪変化タイミング146aでの抵抗値143の変化の算出値であるR1-R2を加算した値を、1回目の変形後における被測定物90の歪の大きさに対応する抵抗変化である歪抵抗変化53(R’)であると考えて、1回目の変形後において被測定物90に生じる歪の大きさを算出することができる。同様に、歪演算部52は、抵抗値53の初期値R0に、歪変化タイミング146aでの抵抗値143の変化の算出値であるR1-R2と、歪変化タイミング146bでの抵抗値143の変化の算出値であるR4-R3とを加算した値を、2回目の変形後における被測定物90の歪の大きさに対応する抵抗値変化である歪抵抗変化53(R”)であると考えて、2回目の変形後において被測定物90に生じる歪の大きさを算出することができる。
【0051】
このような歪計測システム110では、圧電検出部44に対して、整流回路164によって整流された信号が入力するため、検出演算部40における圧電検出部44および歪演算部52の回路構成や信号処理を、よりシンプルにすることができる。また、歪計測システム110は、歪計測システム10との共通点については、歪計測システム10と同様の効果を奏する。
【0052】
第3実施形態
図8は、第3実施形態に係る歪計測システム210の概略構成を示す概念図である。歪計測システム210は、圧電素子32と圧電検出部44の間に増幅アンプ266を追加したことを除き、図1および図2に示す歪計測システム10と同様である。歪計測システム210に関しては、図1および図2に示す歪計測システム10との相違点を中心に説明を行い、歪計測システム10との共通点については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0053】
増幅アンプ266は、圧電素子32から出力される電気信号を増幅し、圧電検出部44に出力する。増幅アンプ266は、たとえばオペアンプ等を含む電圧増幅回路で構成されるが、増幅アンプ266の具体的構成は特に限定されない。
【0054】
図9は、図8に示す歪計測システム210で行われる信号処理の一例(第4の例)を説明する概念図である。図9では、上から順に、被測定物90の歪変化、抵抗検出部42で検出される検出結果である抵抗値43、被測定物90の温度変化、圧電素子32の電極に生じる電位差の変化245a、圧電検出部44で検出される電位差の変化245b、歪演算部52が検出する歪抵抗変化53を表している。
【0055】
図9に示す例では、図5に示す例と同様に、被測定物90が温度変化しながら、二段階の変形を生じた場合を想定したものである。
【0056】
図9における上から4番目のグラフから理解できるように、圧電素子32の電極で生じる電位差の変化245aは、被測定物90の歪の大きさおよび圧電素子32の大きさなどの影響を受ける。たとえば、被測定物90の歪の大きさが小さい場合は、圧電素子32の電極で生じる電位差の変化245aも小さいため、圧電検出部44における歪変化タイミングの検出精度が低下するおそれがある。
【0057】
そこで、図8に示す歪計測システム210では、増幅アンプ266が、圧電素子32の電極で生じる電位差の変化245aを増幅し、圧電検出部44に出力する。これにより、図9における上から5番目のグラフに示すように、圧電検出部44で検出される電位差の変化245bは、立ち上がり/立ち下がりが急伸な波形となり、圧電検出部44における歪変化タイミング46a、46bの検出精度を高めることができる。
【0058】
図9に示すように、圧電検出部44に入力される歪変化タイミング46a、46bを示す信号の立ち上がり/立ち下がり形状は、圧電素子32の電極で生じる電位差の変化245aの信号のそれに比べて、方形波形状に近づけることも好ましい。このような歪計測システム210では、歪変化タイミング46a、46bの検出精度を高めることができ、被測定物90に生じる歪をより精度よく計測することができる。
【0059】
第4実施形態
図10は、第4実施形態に係る歪計測システム310のの回路および信号処理の概略を示す概念図である。歪計測システム310は、検出演算部340が温度変化算出部372を有する点と、歪演算部352が感度補正部355を有する点で図1および図2に示す歪計測システム10と異なるが、その他の点については、歪計測システム10と同様である。歪計測システム310に関しては、図1および図2に示す歪計測システム10との相違点を中心に説明を行い、歪計測システム10との共通点については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
図10に示す温度変化算出部372は、圧電検出部の検出結果から被測定物90に歪の変化が生じていないタイミングである歪非変化タイミングを検出し、歪非変化タイミングにおいて抵抗体22で生じた抵抗値の変化を算出し、抵抗体22の温度変化を算出する。
【0061】
図11は、図10に示す歪計測システム310で行われる信号処理の第5の例を説明する概念図である。図10では、図3と同様に、上から順に、被測定物90の歪変化、抵抗検出部42で検出される検出結果である抵抗値343、被測定物90の温度変化、圧電検出部44で検出される圧電素子32の電位差の変化45、歪演算部352が算出する歪抵抗変化353および温度変化算出部372が算出する非歪抵抗変化356を表している。
【0062】
歪計測システム310の歪演算部352は、図2に示す歪演算部52と同様に、圧電検出部44の検出結果から被測定物90に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミング46を検出する。さらに、歪演算部352は、図2に示す歪演算部52と同様に、歪変化タイミング46において抵抗体22で生じた抵抗値343の変化の累積値である歪抵抗変化353(図11において上から5番目のグラフ)を、抵抗検出部42の出力値(抵抗値343)より算出する。図11に示す例では、歪演算部352は、歪変化タイミング46の終了時における抵抗値343(R2)と、歪変化タイミング46の開始時における抵抗値343(R1)との差であるR2-R1を、歪変化タイミング46において抵抗体22で生じた抵抗値343の変化として算出し、これを抵抗検出部42が検出する抵抗値343の初期値であるR0に加算する。このようにして、歪演算部352は、歪変化タイミング46において抵抗体22で生じた抵抗値343の変化(の累積値)である歪抵抗変化353を算出する。
【0063】
これに対して、歪計測システム310の温度変化算出部372は、圧電検出部44の検出結果から被測定物90に歪の変化が生じていないタイミングである歪非変化タイミング347a、347bを検出する。たとえば、温度変化算出部372は、図11の上から4番目のグラフに示されるように、圧電検出部44で検出する圧電素子32の電極の電位の変化が無い状態を、歪非変化タイミング347a、347bとして検出する。また、温度変化算出部372は、歪変化タイミング46を除く他の時間を、歪非変化タイミング347a、347bとして検出してもよい。
【0064】
さらに、温度変化算出部372は、歪非変化タイミング347a、347bにおいて抵抗体22で生じた抵抗値343の変化を、抵抗検出部42の出力値より算出する。図11に示す例では、温度変化算出部372は、歪非変化タイミング347aの終了時における抵抗値343(R1)と、歪非変化タイミング347aの開始時における抵抗値343(R0)との差であるR1-R0を、歪非変化タイミング347aにおいて抵抗体22で生じた抵抗値343の変化として算出する。同様に、温度変化算出部372は、歪非変化タイミング347bの終了時における抵抗値343(R3)と、歪非変化タイミング347bの開始時における抵抗値343(R2)との差であるR3-R2を、歪非変化タイミング347bにおいて抵抗体22で生じた抵抗値343の変化として算出する。また、さらに、温度変化算出部372は、歪非変化タイミング347a、347bにおいて抵抗体22で生じた抵抗値343の変化の累積値である非歪抵抗変化356を算出する。
【0065】
また、温度変化算出部372は、歪非変化タイミング347a、347bにおいて抵抗体22で生じた抵抗値343の変化の累積値の算出結果である非歪抵抗変化356から、抵抗体22や抵抗体22が固定された被測定物90の温度を検出する。たとえば、温度変化算出部372は、非歪抵抗変化356に所定の比例係数を乗じた値を、抵抗体22の温度として算出し、算出結果を外部へ出力することができる。
【0066】
また、図10に示すように、温度変化算出部372は、算出結果である抵抗体22の温度情報を、歪演算部352に出力してもよい。たとえば、歪演算部352は、感度補正部355を有しており、感度補正部355は、入力された抵抗体22の温度情報に基づき、歪の算出に用いる比例係数を補正することができる。たとえば、歪計測システム310の歪演算部352は、図11において上から5番目のグラフに示すように算出される歪抵抗変化353に対して、温度変化算出部372で算出された抵抗体22の温度情報に基づき感度補正部355で温度補正された比例係数を乗じた値を、被測定物90に生じる歪の大きさとすることができる。
【0067】
図10および図11に示す歪計測システム310は、圧電素子32および抵抗体22の検出結果から抵抗体22および被測定物90の温度を検出する温度変化算出部372を有する。このような歪計測システム310は、歪を検出する抵抗体22とは別途用意された抵抗体を用いて温度測定を行う従来の計測方法に比べて、小さい消費電力で歪と温度の両方を検出できる。また、抵抗体22および抵抗検出部42によって検出される抵抗値343の変化から、歪と温度の両方を検出するため、別々の抵抗体によって歪と温度を検出する従来技術のような抵抗体の場所による温度測定値の誤差が生じない。したがって、歪計測システム310の歪演算部352は、被測定物90の歪を算出する際に、より正確な温度補正を行うことができる。
【0068】
その他、歪計測システム310は、歪計測システム10との共通点については、歪計測システム10と同様の効果を奏する。
【0069】
第5実施形態
図12は、第5実施形態に係る歪計測システム410の概略構成を示す概念図である。歪計測システム410は、被測定物490に対する抵抗体422および圧電素子432の配置が異なることを除き、図1に示す歪計測システム10と同様である。歪計測システム410に関しては、図1および図2に示す歪計測システム10との相違点を中心に説明を行い、歪計測システム10との共通点については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0070】
図12(a)は、歪計測システム410の平面図であり、図12(b)は、歪計測システム410の断面図である。図1に示すように、歪計測システム10では、歪を生じる被測定物90の一方の面490aに、抵抗体22と圧電素子32とが並べて配置されている。図1に示すような抵抗体22および圧電素子32の配置でも、被測定物90に略均一な歪が生じる場合などは問題ないが、抵抗体22が配置されている位置と圧電素子32が配置されている位置とで、被測定物90の歪の発生の仕方に違いがある場合は、歪を算出値に含まれる誤差が拡大する懸念がある。
【0071】
これに対して、図12(a)および図12(b)に示す歪計測システム410では、抵抗体422、圧電素子432および被測定物490のそれぞれの少なくとも一部が、所定の方向である第1の方向D1に沿って重なっている。すなわち、図12(b)に示すように、歪計測システム410では、被測定物490の一方の面490aに圧電素子432が固定されており、圧電素子432に重ねて抵抗体422が固定されており、第1の方向D1に沿って、抵抗体422、圧電素子432および被測定物490が重なっている。
【0072】
図12(B)に示すように、圧電素子432は被測定物490の一方の面490aに固定される下部電極436と、下部電極436の上に積層する圧電体434と、圧電体434の上に積層する上部電極438とを有する。圧電体434は、下部電極436と上部電極438との間に挟まれる。
【0073】
抵抗体422は、抵抗体ベース部424を介して圧電素子432の上に固定されている。抵抗体ベース部424は、絶縁性の薄膜層などで構成される。抵抗体422、抵抗体ベース部424、圧電素子432および被測定物490の固定方法は特に限定されず、たとえば、接着や、物理吸着または化学吸着や、溶着などの方法が挙げられる。
【0074】
図12に示すように、歪計測システム410は、抵抗体422、圧電素子432および被測定物490が、厚み方向であるD1に積層する構造を有するため、抵抗体422と圧電素子432とが、平面方向に関して被測定物490における略同一の場所に配置されている。したがって、歪計測システム410では、図3に示すような所定の歪変化により抵抗体422の抵抗値43に変化が生じるタイミングを、圧電素子432を用いて歪変化タイミング46として高精度に検出し、精度の高い歪の計測を実現する。
【0075】
また、歪計測システム410は、被測定物490における狭い面積に抵抗体422と圧電素子432とを配置することが可能であり、小型化の観点で有利であり、小さい被測定物490の歪の計測にも適している。その他、歪計測システム410は、歪計測システム10との共通点については、歪計測システム10と同様の効果を奏する。
【0076】
第6実施形態
図13は、第6実施形態に係る歪計測システム510の概略構成を示す概念図である。歪計測システム510は、被測定物490に対する抵抗体422および圧電素子432の配置が異なることを除き、図12に示す歪計測システム410と同様である。歪計測システム510に関しては、図13に示す歪計測システム410との相違点を中心に説明を行い、歪計測システム410との共通点については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0077】
図13(a)は、歪計測システム510の平面図であり、図13(b)は、歪計測システム510の断面図である。図13(b)に示すように、歪計測システム510では、被測定物490の一方の面490aに抵抗体ベース部424を介して抵抗体422を固定し、被測定物490の一方の面490aの裏面である他方の面490bに、圧電素子432を固定している。これにより、歪計測システム510では、歪計測システム410と同様に、抵抗体422、圧電素子432および被測定物490が、厚み方向であるD1に積層する構造を有するため、抵抗体422と圧電素子432とが、被測定物490における平面方向に関して略同一の場所に配置されている。
【0078】
したがって、歪計測システム510では、歪計測システム410と同様に、所定の歪変化により抵抗体422の抵抗値43に変化が生じるタイミングを、圧電素子432を用いて歪変化タイミング46として高精度に検出し、精度の高い歪の計測を実現する。また、歪計測システム510では、抵抗体422と被測定物490との間に圧電素子432が配置されず、また、圧電素子432と被測定物490との間に抵抗体422が配置されない。そのため、圧電素子490および抵抗体422には、被測定物490の歪による変形応力および被測定物490の熱が、より直接的に伝わる。したがって、歪計測システム510では、被測定物90の歪を、より精度よく検出することができる。
【0079】
その他、歪計測システム510は、歪計測システム10との共通点については、歪計測システム10と同様の効果を奏する。
【0080】
第7実施形態
図14は、第7実施形態に係る歪計測システム610の概略構成を示す概念図である。図14に示すように、歪計測システム610は、抵抗体622を含むブリッジ回路620を有し、抵抗検出部642が、ブリッジ回路620の出力(電圧値643、図16参照)を測定することで、抵抗体622の抵抗値の変化を検出する点で、図1に示す歪計測システム10とは異なる。しかし、図14に示す歪計測システム610は、ブリッジ回路620および抵抗検出部642の構成が異なることを除き、図1に示す歪計測システム10と同様である。歪計測システム610に関しては、図1に示す歪計測システム10との相違点を中心に説明を行い、歪計測システム10との共通点については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0081】
図15は、図14に示す歪計測システム610の回路および信号処理の概略を示す概念図である。図15に示すように、ブリッジ回路620は、被測定物90に設けられる抵抗体622の他に、ブリッジ回路620を構成する他の抵抗であるブリッジ抵抗621a、621b、621cを有し、抵抗体622およびブリッジ抵抗621a、621b、621cにより、ホイートストンブリッジ回路を構成する。抵抗体622は、図2に示す抵抗体22と同様に、被測定物90の変形に従って自らも変形し、変形に応じた抵抗値の変化を生ずる。抵抗体22の材質および製法等は、図2に示す抵抗体22と同様である。
【0082】
図15に示すブリッジ抵抗621a、621b、621cは、抵抗体622とは異なり、被測定物90の変形によっては抵抗値の変化を生じない。ブリッジ回路620には、電源電圧Vddが図示しない電力供給部から印可される。ブリッジ回路620の出力は、検出演算部640の抵抗検出部642に対して伝えられる。抵抗検出部642は、ブリッジ回路620の出力である電圧値643(図16参照)を測定することで、抵抗体622の抵抗値の変化を検出する。なお、図15に示すブリッジ回路620は、ブリッジ回路620を構成する抵抗のうちの1つである抵抗体622のみが、被測定物90の変形に伴う抵抗値の変化を生ずるが、ブリッジ回路620としてはこれに限定されず、被測定物90の変形に伴う抵抗値の変化を生ずる複数の抵抗体を有していてもよい。
【0083】
図16は、図14および図15に示す歪計測システム610での信号処理の第6の例を説明する概念図である。図16では、上から順に、被測定物90の歪変化、抵抗検出部642で検出されるブリッジ回路620の出力値である電圧値643、被測定物90の温度変化、圧電検出部44で検出される圧電素子32の電極の電位差の変化45、歪演算部52が算出する歪抵抗変化653を表している。なお、被測定物90の歪変化および被測定物90の温度変化は、制御値または理論値であるのに対して、ブリッジ回路の電圧値643、圧電素子32の電位差の変化45、および歪抵抗変化653は、歪計測システム610での検出値または算出値である。
【0084】
図16に示すように、歪計測システム610の歪演算部52では、圧電検出部44の検出結果から被測定物90に歪の変化が生じるタイミングである歪変化タイミング46を検出する。次に、歪演算部52は、歪変化タイミング46においてブリッジ回路620の出力値となって現れる抵抗体622の抵抗値の変化を、抵抗検出部642の検出結果より算出する。図16に示す例では、歪演算部52は、歪変化タイミング46の終了時である時間t4における抵抗検出部642による検出値と、歪変化タイミング46の開始時である時間t3における抵抗検出部642の検出値との差であるV2-V1を、歪変化タイミング46において抵抗体22で生じた抵抗値の変化(歪抵抗変化653)に対応する情報として算出する。
【0085】
さらに、歪演算部52は、抵抗体22で生じた抵抗値の変化に対応するブリッジ回路620の出力値の変化V2-V1を用いて、被測定物90に生じる歪の大きさを算出する。たとえば、歪演算部52は、ブリッジ回路620の初期出力値V0に、歪変化タイミング46での出力値643の変化の算出値であるV2-V1を加算した値を、時間t4における被測定物90の歪の大きさに対応する情報であると考えて、歪抵抗変化653に所定の比例係数を乗じた値を、時間t4における被測定物90の歪の大きさとすることができる。
【0086】
このような歪計測システム610は、抵抗体622に生じる抵抗値の変化を、ブリッジ回路620を用いて検出し、これを圧電素子32を用いる歪変化タイミング46の検出結果と組み合わせることにより、高感度および高精度な歪の検出を実現する。その他、歪計測システム610は、歪計測システム10との共通点については、歪計測システム10と同様の効果を奏する。
【0087】
第8実施形態
図17は、第8実施形態に係る歪計測システム710の概略構成を示す概念図である。図17に示すように、歪計測システム710は、抵抗体622を含むブリッジ回路620と抵抗検出部642の間に差動アンプ774を配置していることを除き、図14に示す歪計測システム610と同様である。歪計測システム710に関しては、図14および図15に示す歪計測システム610との相違点を中心に説明を行い、歪計測システム610との共通点については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0088】
図18は、図17に示す歪計測システム710の回路および信号処理の概略を示す概念図である。図18に示すように、歪計測システム710は、ブリッジ回路620の出力を増幅する差動アンプ774を有する。抵抗検出部642は、差動アンプ774で増幅されたブリッジ回路620の出力を測定することで、抵抗体622の抵抗値の変化を検出する。歪計測システム710が有するブリッジ回路620、抵抗検出部642および歪演算部52等については、図14および図15に示す歪計測システム610が有するブリッジ回路620、抵抗検出部642および歪演算部52等と同様である。
【0089】
差動アンプ774は、抵抗体622の抵抗値の変化を検出するブリッジ回路620の出力値を増幅し、抵抗検出部642に伝えるため、高感度および高精度な歪の検出を実現する。また、ブリッジ回路620の出力を差動アンプ774で増幅する従来の回路では、歪演算部52による歪の演算において、差動アンプ77のドリフトによる誤差が生じることが懸念される。しかしながら、歪計測システム710は、圧電素子32を用いる歪変化タイミング46の検出結果と組み合わせて、ブリッジ回路620および差動アンプ774を用いることで、歪変化タイミング46以外で起きる差動アンプ774のドリフトの影響を除外することが可能である。
【0090】
その他、歪計測システム710は、歪計測システム610との共通点については、歪計測システム610と同様の効果を奏する。
【0091】
以上、実施形態を挙げて本開示に係る歪計測システムを説明してきたが、本開示に係る歪計測システムの技術的範囲は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、他の多くの実施形態や変形例を含むことは言うまでもない。たとえば、被測定物90に対する抵抗体22および圧電素子32の配置は、実施形態で説明した配置のみには限定されず、図19に示す変形例に係る歪計測システム810のように、抵抗体22と圧電素子32の配列方向を、抵抗体22および圧電素子32の長手方向に一致させてもよい。
【0092】
また、歪計測システムを実現するための回路や制御ブロックの構成についても、図2図10図15図18等に示すものは例示にすぎず、例示した回路構成に対して様々な変更、追加、省略などを行うことが可能であり、そのような回路によって実現される歪計測システムも、本開示に係る歪計測システムの技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
10、110、210、310、410、510、610、710、810…歪計測システム
22、422、622…抵抗体
32、432…圧電素子
40、640…検出演算部
42、642…抵抗検出部
43…抵抗値
44…圧電検出部
45、145、145a、145b、245a、245b…電位差の変化
46、46a、46b、146a、146b…歪変化タイミング
347a、347b…歪非変化タイミング
52、352…歪演算部
53、353…歪抵抗変化
355…感度補正部
356…非歪抵抗変化
62…負荷抵抗
164…整流回路
266…増幅アンプ
372…温度変化算出部
76…配線
90、490…被測定物
424…抵抗体ベース部
434…圧電体
436…下部電極
438…上部電極
490a…一方の面
490b…他方の面
620…ブリッジ回路
621a、621b、621c…ブリッジ抵抗
774…差動アンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19