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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127314
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】排気弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 24/04 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
F16K24/04 B
F16K24/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036390
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】神丸 直毅
【テーマコード(参考)】
3H055
【Fターム(参考)】
3H055AA02
3H055AA22
3H055BA04
3H055CC03
3H055CC15
3H055GG03
3H055GG22
3H055HH08
3H055JJ02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、初期急速排気が可能であり、かつ反復的に自動排気する際の水(移送液体)の漏洩量を抑えることができる排気弁の提供。
【解決手段】
配管系統が移送水の移送を開始すると、弁室7内の初期空気は移送圧を受け、円柱弁体2に形成された大孔路4及び小孔路5を通過して矢印95方向に沿って内部連通路3に入り、流出口24から矢印96方向に沿って排気される(急速排気)。初期空気が排気された後、弁室7には流入口23から移送水が流入し、フロート10及び円柱弁体2は浮上して閉弁状態に至る。その後、移送される移送水に空気が混入した場合、空気は弁室7の上部に滞留し、フロート10及び円柱弁体2は自重によって下降する。これによって、小孔路5のみが排気路26から下側に露出し、空気は小孔路5を通過して流出口24から排気される(自動排気)。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送液体及び排出対象気体を移送する配管手段に接続される本体であって、当該配管手段に連通する入口部、当該入口部に連通する弁室部、及び当該弁室部に連通する出口部が形成され、当該入口部の側を一次側とし当該出口部の側を二次側とする流路が形成される本体、
前記本体に形成された往復移動路であって、前記弁室部と前記出口部との間に介在し、前記弁室部と前記出口部とを連通させる往復移動路、
前記往復移動路の内部に、往復移動が可能な状態で位置し、弁室部に滞留する移送液体の滞留量に応じて往復移動する往復移動手段であって、第1連通孔、及び当該第1連通孔よりも小径の第2連通孔が形成された往復移動手段、
を備えた排気弁であって、
前記往復移動路と前記往復移動手段との位置関係が初期の開放状態にあるとき、少なくとも前記第1連通孔を通じて前記弁室部と前記出口部とが連通し、
前記往復移動手段の移動によって、前記往復移動路と前記往復移動手段との位置関係が前記開放状態から小開状態に至ったとき、前記第1連通孔は前記往復移動路によって閉じられ、かつ前記第2連通孔を通じて前記弁室部と前記出口部とが連通し、
前記往復移動手段の移動によって、前記往復移動路と前記往復移動手段との位置関係が前記小開状態から閉塞状態に至ったとき、前記第1連通孔及び前記第2連通孔の双方が前記往復移動路によって閉じられて、前記弁室部と前記出口部との連通が遮断される、
ことを特徴とする排気弁。
【請求項2】
請求項1に係る排気弁において、
前記往復移動路は、円柱形状をなしており、
前記第1連通孔及び前記第2連通孔の双方又はいずれか一方は、前記往復移動路の中心線に対して軸心が前記一次側に傾斜した斜め孔である、
ことを特徴とする排気弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る排気弁において、
前記往復移動手段又は前記本体の少なくとも一方には、前記閉塞状態に位置するとき、前記弁室部と前記出口部との連通を遮断するシール手段が設けられている、
ことを特徴とする排気弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る排気弁は、水等の液体移送配管に混入している空気等を自動的に排出する排気弁の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには水を移送するための配管が設置されていることがある。この配管内に空気が混入すると、水の移送に支障が生じるため、適宜、空気を配管系統の外部に排出する必要がある。このために、配管には排気弁が接続される。排気弁は、配管内に混入した空気を配管外に排出するために自動的に開弁し、空気の排出後は水の漏洩を防止するために自動的に閉弁する。
【0003】
ところで、配管系統が移送を開始した直後は、配管内に空気が充満している。このため、排気弁には、水の移送中に混入する空気を反復的に繰り返し排出する自動排気の機能のほか、初期空気を可能な限り急速に排出するための初期急速排気の機能が求められる。
【0004】
このような自動排気機能と初期急速排気機能とを併有した排気弁として後記特許文献1に開示されたものがある。この排気弁は、本体1に取り付けられた蓋2に、第1弁座6と第2弁座7がねじ結合によって設けられている。この第1弁座6には小弁口8が形成され、第2弁座7には大弁口9が形成されている。本体1内の弁室3内にはフロート15が自由状態で配置されており、このフロート15の外表で小弁口8を直接、開閉させる。
【0005】
また、蓋2には、弁室3に向けて設けられたピン17によってレバー16が取り付けられている。ピン17は大弁口9近傍に配置されており、ピン17を支点としてレバー16は回転可能である。そして、レバー16には、大弁口9を開閉するための弁体18が設けられている。この弁体18は、スナップリング19を介して設けられている。レバー16のピン17側の一端部分は短冊形であり、他端部分はリング形を有しフロート15が出入りして小弁口8を開閉可能である。
【0006】
送水初期は、フロート15は下降して小弁口8を開放していると共に、レバー16が図において反時計回りに回転して、弁体18は大弁口9を開放している。これによって、配管系統が移送を開始した直後、初期空気は小弁口8と大弁口9の双方から急速に排出される。
【0007】
そして、初期空気の排出後、弁室3内に水が流入すると、その水位の上昇に従ってフロート15は浮上し、レバー16を持ち上げて弁体18で大弁口9を閉弁すると共に、フロート15の外表が小弁口8を直接、閉弁する。その後は、レバー16に取り付けられた弁体18は、スナップリング19の弾性によって大弁口9の閉弁を維持する。これに対して小弁口8は、弁室に流入する空気量に従って下降又は浮上するフロート15によって、開弁又は閉弁を反復的に繰り返して自動排気を行う。
【0008】
また、後記特許文献2には、次のような排気弁が開示されている。下本体2、上本体4及び円筒体6が本体を構成し、本体は流入口1、弁室5及び排気口3を有している。上本体4には、弁室5と排気口3とを連通させる連通孔12が形成された弁座部材11が取り付けられている。そして、連通孔12内には摺動自在に筒状の排気弁体13が位置している。この排気弁体13の下方にはフロート21が一体的に固定されており、排気弁体13の上方は上本体4に形成した孔部19に摺動自在に挿入されている。
【0009】
筒状の排気弁体13の中空部分である貫通孔15を通じ、弁室5と孔部19とは連通している。そして、排気弁体13の上端部分には、排気弁体13の移動方向に沿って長く形成された排気弁孔23、24、25が形成されている。
【0010】
水の移送が開始された場合、移送圧によって弁室5内の空気は、排気弁体13に形成された孔16、17、18から貫通孔15を通過して排気弁孔23、24、25を通り、排気口3から急速排出される。そして、弁室5内に水が流入してくると、弁室5内の水位の上昇に従ってフロート21が浮上すると共に排気弁体13も上昇し、排気弁孔23、24、25は孔部19内に位置して閉止され、水の排気口3への排出が防止される。その後、弁室5内の水に空気が混入した場合、水位の低下に従ってフロート21及び排気弁体13が下降することによって、空気は排気弁孔23、24、25を経て排気口3から自動排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平2-69183号公報
【特許文献2】特開平7-4546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、前述の特許文献1に開示された排気弁は、フロート15や回動するレバー16に取り付けた弁体18等を設ける必要があり、構成が複雑化、大型化する場合がある。
【0013】
また、前述の特許文献2に開示された排気弁は、排気弁体13の移動方向に沿って長く形成された排気弁孔23、24、25を通じて排気するため、初期空気は急速排気することが可能であるものの、その後の自動排気に際して水の漏洩が生じる場合がある。すなわち、開弁して空気を自動排気した後、閉弁するまでの僅かな間に排気弁孔23、24、25から比較的、多量の水が一気に流出してしまい、反復的に自動排気を繰り返すことから、水の漏洩量が増大して水移送の損失が生じる虞がある。
【0014】
そこで本願に係る排気弁は、簡易な構成でありながら、初期急速排気が可能であり、かつ反復的に自動排気する際の水(移送液体)の漏洩量を抑えることができる排気弁の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願に係る排気弁は、
移送液体及び排出対象気体を移送する配管手段に接続される本体であって、当該配管手段に連通する入口部、当該入口部に連通する弁室部、及び当該弁室部に連通する出口部が形成され、当該入口部の側を一次側とし当該出口部の側を二次側とする流路が形成される本体、
前記本体に形成された往復移動路であって、前記弁室部と前記出口部との間に介在し、前記弁室部と前記出口部とを連通させる往復移動路、
前記往復移動路の内部に、往復移動が可能な状態で位置し、弁室部に滞留する移送液体の滞留量に応じて往復移動する往復移動手段であって、第1連通孔、及び当該第1連通孔よりも小径の第2連通孔が形成された往復移動手段、
を備えた排気弁であって、
前記往復移動路と前記往復移動手段との位置関係が初期の開放状態にあるとき、少なくとも前記第1連通孔を通じて前記弁室部と前記出口部とが連通し、
前記往復移動手段の移動によって、前記往復移動路と前記往復移動手段との位置関係が前記開放状態から小開状態に至ったとき、前記第1連通孔は前記往復移動路によって閉じられ、かつ前記第2連通孔を通じて前記弁室部と前記出口部とが連通し、
前記往復移動手段の移動によって、前記往復移動路と前記往復移動手段との位置関係が前記小開状態から閉塞状態に至ったとき、前記第1連通孔及び前記第2連通孔の双方が前記往復移動路によって閉じられて、前記弁室部と前記出口部との連通が遮断される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願に係る排気弁においては、往復移動路と往復移動手段との位置関係が初期の開放状態にあるとき、少なくとも第1連通孔を通じて弁室部と出口部とが連通する。このため、初期の空気をより大きな径を有する第1連通孔を通じて排出することができ、初期空気を急速排気することが可能である。
【0017】
また、往復移動手段の移動によって、往復移動路と往復移動手段との位置関係が開放状態から小開状態に至ったとき、第1連通孔は往復移動路によって閉じられ、かつ第2連通孔を通じて弁室部と出口部とが連通する。このため、移送液体に混入した排出対象気体を、第1連通孔よりも小径の第2連通孔を通じて排出しつつ、第1連通孔からの移送液体の漏洩を防止し、全体として移送液体の漏洩量を抑えることができる。
【0018】
さらに、往復移動手段の移動によって、往復移動路と往復移動手段との位置関係が小開状態から閉塞状態に至ったとき、第1連通孔及び第2連通孔の双方が閉じられて、弁室部と出口部との連通が遮断される。このため、移送液体の漏洩を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願に係る排気弁の第1の実施形態である排気弁装置1を示す断面図であり、初期開弁状態を示す断面図である。
図2図1に示す円柱弁体2及びフロート10等の側面図である。
図3図1に示す排気弁装置1の閉弁状態を示す断面図である。
図4図1に示す排気弁装置1の作動状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る排気弁の下記の要素に対応している。
【0021】
排気弁装置1・・・排気弁
円柱弁体2・・・往復移動手段
大孔路4・・・第1連通孔
小孔路5・・・第2連通孔
弁室7・・・弁室部
閉弁リング9・・・シール手段
下部本体21及び上部本体22・・・本体
流入口23・・・入口部
流出口24・・・出口部
排気路26・・・往復移動路
移送水・・・移送液体
空気・・・排出対象気体
初期開弁状態・・・開放状態
作動状態・・・小開状態
閉弁状態・・・閉塞状態
【0022】
[第1の実施形態]
本願に係る排気弁の第1の実施形態である排気弁装置1を図1及び図2に基づいて説明する。排気弁装置1は、水(移送水)を移送するための配管に接続され、配管系統に充満する初期空気や移送水に混入する空気を配管系統外に排出するために自動的に開弁し、排出後は移送水の漏洩を防止するために自動的に閉弁する。
【0023】
(排気弁装置1の構成の説明)
まず、排気弁装置1の構成を説明する。排気弁装置1は、円筒形状の下部本体21に上部本体22が固定されて本体を構成する。下部本体21と上部本体22とが結合することによって内部に弁室7が形成される。弁室7の下部の開口が流入口23であり、この流入口23に配管(図示せず)が接続され、ここから移送水が弁室7に流入する。
【0024】
弁室7内には中空部材で構成されるフロート10が自由状態で配置されている。このフロート10の直径は弁室7の内径よりもやや小さく、フロート10の外表と弁室7の内壁との間には隙間が形成される。そして、弁室7の下方には4本の支持突起15が設けられており、フロート10はこの支持突起15によって支持されて弁室7内に位置している。なお、支持突起15は弁室7の内壁に、周方向に等間隔で挿入されて取り付けられている。
【0025】
上部本体22の中心部には、上下方向に貫通した円柱形状の排気路26が形成されている。排気路26の上部の開口が流出口24であり、この流出口24に排気管(図示せず)が接続される。なお、円柱形状を有する排気路26及び弁室7の各々の軸線は、中心線L1に沿って同軸に配置される。
【0026】
排気路26には、円柱形状の円柱弁体2が挿入されて配置されている。円柱弁体2の直径は排気路26の内径よりもやや小さく、円柱弁体2は排気路26内で中心線L1方向に沿って矢印91、92方向に往復移動が可能なように配置されている。円柱弁体2の下面は湾曲した凹部であり、この下面の湾曲はフロート10の外表に沿う凹部として形成されている。そして、図2に示すように、円柱弁体2の下面とフロート10の外表とは溶接や接着剤等により固着されている。
【0027】
円柱弁体2の内部には、中心線L1方向に長い空間部である内部連通路3が形成されている。内部連通路3の上部は開口しているが、下部は貫通しておらず開口していない。円柱弁体2の側面には、周方向にわたって等間隔で4か所に大孔路4が形成されている。大孔路4は上下方向に長い楕円形状の貫通孔であり、円柱弁体2の外側である弁室7と、内側である内部連通路3とを連通させるように形成されている。
【0028】
また、大孔路4の下方には、周方向にわたって等間隔で4か所に小孔路5が形成されている。小孔路5は円形の貫通孔であり、その内径は大孔路4の短軸長さよりも十分小さく形成されている。小孔路5も大孔路4と同様、円柱弁体2の外側である弁室7と、内側である内部連通路3とを連通させる。なお、断面図において、大孔路4及び小孔路5の外側の楕円形状は模式的に表されている。
【0029】
こうして弁室7と内部連通路3が連通し、排気弁装置1は、流入路23、弁室7、大孔路4と小孔路5、内部連通路3、排気路26及び流出口24を通る流路を備える。なお、この流路において、流入路23側が一次側であり、流出口24が二次側である。
【0030】
また、図に示すように、大孔路4及び小孔路5は、それぞれの流路において中心線(軸心)が一次側に傾斜した斜め孔である。すなわち、中心線L1と中心線L4及び中心線L1と中心線L5とは、ぞれぞれ一次側の角度が直角よりも小さい状態で交差している。例えば、大孔路4の中心線L4及び小孔路5の中心線L5は、それぞれ円柱弁体2の中心線L1に対して所定の角度(例えば、約60度)をもって一次側に傾斜している。なお、図1においては、大孔路4及び小孔路5の内周面は、それぞれ中心線L4及び中心線L5と平行な形状としているが、各内周面が一次側から二次側に向けて広がるテーパ形状としてもよい。
【0031】
また、円柱弁体2の下端の外周には、リング形状の閉弁リング9が固定されている。この閉弁リング9の直径は円柱弁体2の外径よりも大きく、閉弁リング9の中心孔を円柱弁体2の下端が貫通した状態で固定されている。本実施形態においては、閉弁リング9は例えばステンレス材料で構成されており、上面の環状凹部にパッキン19が嵌め込まれている。パッキン19は閉弁リング9の上面から僅かに突出している(図2参照)。なお、閉弁リング9にパッキン19を設けず、閉弁リング9全体を弾性部材で構成することもできる。
【0032】
(排気弁装置1の動作の説明)
次に、排気弁装置1の動作を説明する。移送水を移送する配管系統の作動初期には、配管内や排気弁装置1の弁室7に初期空気が充満している。この初期開弁状態が図1である。図1に示すように、フロート10及び円柱弁体2は自重によって矢印92方向に下降しており、フロート10が支持突起15に接することによって、フロート10及び円柱弁体2は下降の限界に位置している。
【0033】
この状態で、配管系統が移送水の移送を開始すると、弁室7内の初期空気は移送圧を受け、矢印95方向に沿って円柱弁体2の大孔路4及び小孔路5の双方を通過して内部連通路3に入り、排気路26を経て流出口24から流路に沿って矢印96方向に排気される。また、配管内の初期空気も移送圧を受けて弁室7に流入し、弁室7の内壁とフロート10の外表との隙間を通過して同様の流路(矢印95、96方向)を経て排気される。このとき、初期空気は小孔路5を通過して排気されると同時に、小孔路5よりも大きな径を有する大孔路4を通過して排気されることから、初期空気は急速に排気されることになる(急速排気)。
【0034】
初期空気が排気された後、弁室7には流入口23から移送水が流入し、弁室7内の移送水の水位は上昇する。これ従って、フロート10は矢印91方向に徐々に浮上し、フロート10に固定された円柱弁体2も同時に上昇する。そして、フロート10及び円柱弁体2は図3に示す閉弁状態に至る。
【0035】
図3の状態について説明する。円柱弁体2が上昇したことによって、円柱弁体2に固定されている閉弁リング9のパッキン19が上部本体22の底面22aに当接する。この閉弁状態が、フロート10及び円柱弁体2の矢印91方向への上昇の限界位置になる。なお、閉弁状態において、円柱弁体2の上端が流出口24から突出しないように円柱弁体2の長さが設定されている。
【0036】
閉弁状態においては、円柱弁体2が排気路26内に完全に収納されるため、円柱弁体2に形成されている大孔路4及び小孔路5は、排気路26の内壁で閉じられる。また、閉弁リング9に設けられたパッキン19が上部本体22の底面22aに当接することによって、弁室7と排気路26との連通が確実に遮断されるため、大孔路4及び小孔路5はより確実に閉塞される。大孔路4及び小孔路5が閉塞されることによって、弁室7内の移送水が流出口24から流出することはなく、確実に閉弁して排気弁装置1からの移送水の漏洩が防止される。
【0037】
配管系統が移送水を移送する過程で、移送水には空気が混入することがある。この空気は流入口23から弁室7内に侵入し、弁室7の上部に滞留する。これによって弁室7内の移送水の水位は押し下げられ、これに従ってフロート10及び円柱弁体2は自重によって矢印92方向に徐々に下降する。
【0038】
図4の状態について説明する。フロート10及び円柱弁体2の下降によって、閉弁リング9に設けられたパッキン19と上部本体22の底面22aとの間に隙間が生じ、小孔路5の弁室7側の開口部分が排気路26から下側に露出するに至る。小孔路5が弁室7側に露出したことによって、弁室7上部に滞留している空気は、小孔路5を通過して円柱弁体2の内部連通路3に入り、排気路26を経て流出口24から矢印96方向に沿って排気される。
【0039】
このとき、大孔路4は排気路26内に位置したままの状態であり、弁室7と大孔路4との連通は遮断されている。このため、排気直後に径の大きな大孔路4から移送水が漏洩することを防止できる。
【0040】
また、前述のように、小孔路5は、円柱弁体2の中心線に対して軸心が一次側に傾斜した斜め孔である。このため、小孔路5の弁室7側の開口部分を、流出口24側の開口部分よりも円柱弁体2の下端側にオフセットさせることが可能となる。これによって、円柱弁体2が矢印92方向に僅かに下降しただけで小孔路5を弁室7に露出させることができ、効率的な自動排気を実現することができる。
【0041】
小孔路5を通じた排気によって弁室7上部の空気量は減少し、移送水の水位が上昇し、フロート10は矢印91方向に浮上する。これに従って円柱弁体2も上昇し、再び図3に示す閉弁状態に達して、移送水の漏洩が防止される。こうして排気弁装置1は、図3の閉弁状態と図4の作動状態とを反復的に繰り返し、移送水に混入する空気を適宜、排気する動作を行う(自動排気)。
【0042】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、移送液体、排出対象気体、本体、入口部、弁室部、出口部、往復移動路、往復移動手段、第1連通孔、第2連通孔、開放状態、小開状態、閉塞状態及びシール手段のそれぞれについて例を掲げたが、これらは単なる例示であり、各々について異なる構成を採用することもできる。
【0043】
すなわち、たとえば前述の実施形態においては、往復移動路として円柱形状の排気路26を例示したが、往復移動手段(円柱弁体2等)が往復移動可能な状態で内部に位置することができる限り、他の形状を採用してもよい。
【0044】
また、前述の実施形態においては、往復移動手段として円柱弁体2を例示したが、往復移動路(排気路26等)に対して往復移動するように位置関係が変化し、さらに第1連通孔(大孔路4等)及び第2連通孔(小孔路5等)が形成されているものであれば他の形状、構造を用いることができる。また、前述の実施形態においては、円柱弁体2(往復移動手段)に、大孔路4及び小孔路5がそれぞれ4つ形成されている例を示したが、3つ以下又は5つ以上形成することもできる。
【0045】
さらに、前述の実施形態においては、大孔路4及び小孔路5が、円柱弁体2(往復移動手段)の中心線L1方向において同じ個所に形成されている例を示したが、中心線L1方向の異なるずれた位置に形成することもできる。
【0046】
また、前述の実施形態においては、大孔路4の中心線L4と小孔路5の中心線L5とが平行な関係にある例を示したが、これらが平行ではなく、中心線L4と中心線L5とが交差する関係であってもよい。例えば、小孔路5の中心線L5のみを中心線L1と直交する方向に対して傾斜させ、大孔路4の中心線L4は中心線L1と直交する方向に形成してもよい。また、小孔路5の中心線L5を中心線L1と直交する方向に形成することもできる。
【0047】
前述の実施形態においては、円柱弁体2(往復移動手段)に固定されたシール手段としてパッキン19を有する閉弁リング9を例示したが、弁室部(弁室7等)と出口部(流出口24等)との連通を遮断できるものであれば他の形状、構造又は材質のシール手段を採用してもよい。
【0048】
なお、上述の各実施形態を任意に組み合わせて新たな実施形態とすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
2:円筒弁体 4:大孔路 5:小孔路 7:弁室 9:閉弁リング
21:下部本体 22:上部本体 23:流入口 24:流出口 26:排気路

図1
図2
図3
図4