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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127316
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240912BHJP
   E02F 3/36 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036397
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 紗帆
【テーマコード(参考)】
2D003
2D012
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB07
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB08
2D012DA00
(57)【要約】
【課題】フックを用いない作業を行う場合に、フックを所定の保持位置に保持する。
【解決手段】油圧ショベル1の作業装置8は、ブーム9と、ブーム9の先端に取付けられた中間アーム13と、中間アーム13の先端に取付けられた先端アーム14と、ワイヤロープ23に支持されたフック24と、ワイヤロープ23が巻回されるウインチ22と、ワイヤロープ23を支持する中間シーブ25および先端シーブ26と、ウインチ22にワイヤロープ23の巻取り動作または繰出し動作を行わせるウインチ用方向制御弁44とを備える。そして、中間アーム13の回動動作および先端アーム14の回動動作に応じて、ウインチ22によるワイヤロープ23の巻取り量または繰出し量の適正値を演算する演算装置46を備え、演算装置46は、演算結果に応じてウインチ用方向制御弁44に駆動信号を出力する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、
前記作業装置は、基端が前記車体に回動可能に取付けられたブームと、前記ブームの先端に回動可能に取付けられた中間アームと、前記中間アームの先端に回動可能に取付けられた先端アームと、前記先端アームから下方に延びるロープに支持されたフックと、前記ロープが巻回されるウインチと、前記中間アームの動作に連動しつつ前記ロープを支持する中間シーブと、前記先端アームの動作に連動しつつ前記ロープを支持する先端シーブと、前記ウインチに前記ロープの巻取り動作または繰出し動作を行わせるウインチ制御装置と、を備えてなる建設機械において、
前記ブームに対する前記中間アームの回動動作および前記中間アームに対する前記先端アームの回動動作に応じて、前記ウインチによる前記ロープの巻取り量または繰出し量の適正値を演算する演算装置を備え、
前記演算装置は、演算結果に応じて前記ウインチ制御装置に駆動信号を出力することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ブームに対する前記中間アームの角度を検出する中間アーム角度検出器と、前記中間アームに対する前記先端アームの角度を検出する先端アーム角度検出器と、を備え、
前記演算装置は、前記中間アーム角度検出器によって検出された前記中間アームの角度と前記先端アーム角度検出器によって検出された前記先端アームの角度とに基づいて前記中間シーブと前記先端シーブとの間のシーブ間距離を演算すると共に前記シーブ間距離に応じて前記ウインチの目標回転量を演算し、前記目標回転量に応じた駆動信号を前記ウインチ制御装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ロープの張力を検出する張力検出器を備え、
前記演算装置は、前記張力検出器により検出された前記ロープの張力に応じて前記ウインチの目標回転量を演算し、前記目標回転量に応じた駆動信号を前記ウインチ制御装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ウインチによる前記ロープの巻取り動作または繰出し動作を行わせるときに操作されるウインチ操作装置を備え、
前記演算装置は、前記ウインチ操作装置が操作されていないときに、前記中間アームの回動動作および前記先端アームの回動動作に応じて前記ウインチによる前記ロープの巻取り量または繰出し量の適正値を演算することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フックを支持するロープの巻取り動作、繰出し動作を行うウインチを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
土木作業に用いられる建設機械は、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体に設けられた作業装置とを備えている。作業装置は、上部旋回体に回動可能に取り付けられたブームと、ブームの先端に回動可能に取り付けられたアームと、アームの先端に回動可能に取り付けられた作業具(アタッチメント)とを含んで構成され、作業内容に応じて作業具を交換することができる。例えば土砂等の掘削作業を行うときには、アームの先端にバケットが取付けられ、杭打ち用の立坑等の掘削作業を行うときには、アームの先端にアースオーガが取付けられる。
【0003】
一方、バケット等の作業具とは別にクレーン作業用のフックを備えた油圧ショベルが知られている。フックを備えた油圧ショベルは、アームの先端から下方に延びるワイヤロープに支持されたフックと、ワイヤロープの巻取り動作、繰出し動作を行うウインチと、ワイヤロープを支持するシーブとを備えている(特許文献1)。フックを備えた油圧ショベルがバケットを用いて掘削作業を行う場合には、走行時、上部旋回体の旋回時等においてフックが揺動し、油圧ショベルあるいは油圧ショベルの周囲に配置された資材等に衝突するのを防止する必要がある。
【0004】
特許文献1の油圧ショベルは、ブームとアームとの連結部に中間シーブが取付けられると共にアームとバケットとの連結部に先端シーブが取付けられ、フックが取付けられたワイヤロープは、ウインチから中間シーブ、先端シーブを介してアームの先端へと案内される。そして、特許文献1の油圧ショベルは、アームの先端に設けられた二又部の内側にバー材を固定し、このバー材にフックを掛け止めすることにより、フックを用いたクレーン作業等を行わないときには、掘削作業の邪魔にならないようにフックをアームに対して固定する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭56-40185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、例えば作業具としてアースオーガが取付けられる作業装置においては、ブームの先端に、複数のアーム部材が互いに回動可能に連結された多関節式のアームが取付けられることがある。しかし、多関節式のアームを有する作業装置にクレーン作業用のフックを設けた場合には、特許文献1のように、アームに対してフックを固定しておくことが困難である。
【0007】
即ち、ブームに連結されるアーム部材に中間シーブを取付け、アースオーガに連結されるアーム部材に先端シーブを取付けた場合には、複数のアーム部材が回動変位することにより、中間シーブと先端シーブとの間隔が変化することになる。このため、特許文献1のようにアームに対してフックを固定した場合には、中間シーブと先端シーブとの間隔が短くなったときには、ウインチとフックとの間でワイヤロープが弛みを生じてしまい、中間シーブと先端シーブとの間隔が長くなったときには、ワイヤロープの張力が過大となってウインチから無理にワイヤロープが繰出されるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、フックを用いない作業を行う場合に、フックを所定の位置に保持することができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、前記作業装置は、基端が前記車体に回動可能に取付けられたブームと、前記ブームの先端に回動可能に取付けられた中間アームと、前記中間アームの先端に回動可能に取付けられた先端アームと、前記先端アームから下方に延びるロープに支持されたフックと、前記ロープが巻回されるウインチと、前記中間アームの動作に連動しつつ前記ロープを支持する中間シーブと、前記先端アームの動作に連動しつつ前記ロープを支持する先端シーブと、前記ウインチに前記ロープの巻取り動作および繰出し動作を行わせるウインチ制御装置と、を備えてなる建設機械において、前記ブームに対する前記中間アームの回動動作および前記中間アームに対する前記先端アームの回動動作に応じて、前記ウインチ制御装置による前記ロープの巻取り量および繰出し量の適正値を演算する演算装置を備え、前記演算装置は、演算結果に応じて前記ウインチ制御装置に駆動信号を出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中間アームに対する先端アームの回動動作に応じて、ウインチ制御装置によるロープの巻取り量および繰出し量を調整することができる。これにより、作業装置を用いてクレーン作業以外の作業を行う場合でも、中間アームおよび先端アームの動作に関わらず、フックを所定の位置に保持しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態が適用された立坑掘削用の油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】先端アームの回動により先端シーブと中間シーブとのシーブ間距離が長くなった状態を示す左側面図である。
図3】先端アームの回動により先端シーブと中間シーブとのシーブ間距離が短くなった状態を示す左側面図である。
図4】作業装置に設けられた油圧アクチュエータ、演算装置等を含む油圧回路図である。
図5】中間シーブと先端シーブとのシーブ間距離を演算するための模式図である。
図6図5とは異なる位置に中間シーブと先端シーブが設けられた状態で、中間シーブと先端シーブとのシーブ間距離を演算するための模式図である。
図7】演算装置、および演算装置に接続される器機類を示すブロック図である。
図8】演算装置の状態判定部が実行する制御処理を示す流れ図である。
図9】本発明の第2の実施形態が適用された油圧ショベルを示す左側面図である。
図10】演算装置によるウインチの制御処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態を、アースオーガを備えた立坑掘削用の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0013】
図1ないし図8は本発明の第1の実施形態を示している。立坑掘削用の油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられた作業装置8とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、後述するアースオーガ17を用いて地中深く杭打ち用の立坑を掘削する作業に好適に用いられる。
【0014】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム4と、旋回フレーム4の後端側に設けられたカウンタウエイト5と、旋回フレーム4の前部左側に配置されたキャブ6と、カウンタウエイト5の前側に配置された外装カバー7とを含んで構成されている。キャブ6は、オペレータが油圧ショベル1を操縦するための運転室を形成し、キャブ6内には下部走行体2の走行動作を制御する走行レバー・ペダル装置、上部旋回体3の旋回動作、作業装置8の動作を制御する操作レバー装置が設けられている。外装カバー7の内部には、エンジン、油圧ポンプ、熱交換器等の搭載機器が収容されている。
【0015】
旋回フレーム4の前端側には、底板から上方に立ち上がる支持ブラケット(図示せず)が設けられている。この支持ブラケットは、後述するロアブーム10の基端側を回動可能に支持すると共に、ロアブームシリンダ18の基端側を回動可能に支持している。
【0016】
作業装置8は、上部旋回体3を構成する旋回フレーム4の前端側に取付けられている。作業装置8は、多関節式のブーム9と、多関節式のアーム12と、作業具としてのアースオーガ17とを含んで構成されている。ブーム9は、ロアブーム10とアッパブーム11とを含んで構成されている。ロアブーム10の基端は、旋回フレーム4の前端側(前記支持ブラケット)に回動可能に取付けられ、ロアブーム10の先端には、アッパブーム11の基端がピン11Aを介して回動可能に取り付けられている。アッパブーム11の腹面には腹面側シリンダブラケット11Bが設けられ、アッパブーム11の背面には背面側シリンダブラケット11Cが設けられている。
【0017】
アーム12は、中間アーム13と先端アーム14とを含んで構成されている。中間アーム13の基端側は、アッパブーム11の先端にピン13Aを介して回動可能に取付けられている。中間アーム13の先端には、先端アーム14の基端側がピン14Aを介して回動可能に取り付けられている。中間アーム13の基端には基端側シリンダブラケット13Bが設けられ、中間アーム13の背面には背面側シリンダブラケット13Cが設けられている。
【0018】
中間アーム13と先端アーム14との間には、第1リンク15および第2リンク16が設けられている。第1リンク15の基端は、中間アーム13の先端側でピン14Aに隣接した位置に、ピン15Aを介して回動可能に取り付けられている。第2リンク16の基端は、ピン16Aを介して第1リンク15の先端に回動可能に取り付けられている。第2リンク16の先端は、先端アーム14の基端側でピン14Aに隣接した位置に、ピン16Bを介して回動可能に取り付けられている。
【0019】
作業具(アタッチメント)としてのアースオーガ17は、先端アーム14の先端にピン17Aを介して回動可能に取り付けられている。アースオーガ17は、油圧モータ等からなる駆動源17Bと、駆動源17Bによって回転駆動されるスクリュー17Cとを含んで構成され、スクリュー17Cによって地中深く立坑を掘削する。
【0020】
旋回フレーム4とロアブーム10との間には、左右一対のロアブームシリンダ18が設けられている(左側のみ図示)。ロアブームシリンダ18のボトム側は、旋回フレーム4の前記支持ブラケットに回動可能にピン結合され、ロアブームシリンダ18のロッド側は、ロアブーム10の左側面および右側面に回動可能にピン結合されている。ロアブーム10は、ロアブームシリンダ18の伸縮動作により旋回フレーム4とのピン結合部を中心とした回動動作を行う。ロアブーム10とアッパブーム11との間には、アッパブームシリンダ19が設けられている。アッパブームシリンダ19のボトム側は、ロアブーム10の腹面側に回動可能にピン結合され、ジブシリンダ15のロッド側は、アッパブーム11の腹面側シリンダブラケット11Bに回動可能にピン結合されている。アッパブーム11は、アッパブームシリンダ19の伸縮動作によりピン11Aを中心とした回動動作を行う。
【0021】
アッパブーム11と中間アーム13との間には、中間アームシリンダ20が設けられている。中間アームシリンダ20のボトム側は、アッパブーム11の背面側シリンダブラケット11Cに回動可能にピン結合され、アッパブームシリンダ11のロッド側は、中間アーム13の基端側シリンダブラケット13Bに回動可能にピン結合されている。中間アーム13は、中間アームシリンダ20の伸縮動作によりピン13Aを中心とした回動動作を行う。
【0022】
中間アーム13と先端アーム14との間には、先端アームシリンダ21が設けられている。先端アームシリンダ21のボトム側は、中間アーム13の背面側シリンダブラケット13Cに回動可能にピン結合され、先端アームシリンダ21のロッド側は、第1リンク15と第2リンク16との間を連結するピン16Aに回動可能に取り付けられている。先端アーム14は、第1リンク15および第2リンク16を介して先端アームシリンダ21の伸縮動作が伝わることにより、ピン14Aを中心とした回動動作を行う。図2および図3に示すように、先端アーム14が回動動作を行うことにより、ピン13Aに取り付けられた後述の中間シーブ25と、ピン17Aに取り付けられた後述の先端シーブ26との間の距離X(シーブ間距離X)は変化する。
【0023】
ウインチ22は、アッパブーム11に設けられている。ウインチ22は、アッパブーム11の腹面側に取り付けられた支持部材22Aと、支持部材22Aに支持された状態で油圧モータによって回転駆動されるドラム22Bとを有し、ドラム22Bにはワイヤロープ23が巻回されている。ワイヤロープ23の先端にはクレーン作業用のフック24が取付けられ、フック24は、先端シーブ26を介して先端アーム14から下方に延びるワイヤロープ23に支持されている。
【0024】
中間シーブ25は、アッパブーム11と中間アーム13との間を回動可能に連結するピン13Aに回転可能に支持されている。中間シーブ25は、中間アーム13の動作に連動しつつワイヤロープ23を支持している。先端シーブ26は、先端アーム14とアースオーガ17との間を回動可能に連結するピン17Aに回転可能に支持されている。先端シーブ26は、先端アーム14の動作に連動しつつワイヤロープ23を支持している。
【0025】
フック24は、ウインチ22(ドラム22B)にワイヤロープ23を巻取ることにより上昇し、ウインチ22からワイヤロープ23を繰出すことにより下降する。油圧ショベル1が立坑の掘削作業を行うときには、ワイヤロープ23をウインチ22に巻取ることにより、フック24は、掘削作業の邪魔にならない位置、例えば図1に示す先端シーブ26の下側に隣接した所定の保持位置に保持される。一方、例えばアースオーガ17によって掘削された立坑に杭(図示せず)を差し込むときには、ワイヤロープ23をウインチ22に対して巻取り、または繰出すことにより、フック24によって杭を吊り上げることができる。
【0026】
中間アーム角度検出器27は、例えばアッパブーム11の先端側に設けられている。中間アーム角度検出器27は、アッパブーム11に対する中間アーム13の回動角度を検出し、検出した回動角度に応じた検出信号を後述の演算装置46に出力する。先端アーム角度検出器28は、例えば中間アーム13の先端側に設けられている。先端アーム角度検出器28は、中間アーム13に対する先端アーム14の回動角度を検出し、検出した回動角度に応じた検出信号を演算装置46に出力する。
【0027】
油圧ポンプ29およびタンク30からなる油圧源とロアブームシリンダ18との間は、油圧管路31A,31Bを介して接続され、油圧管路31A,31Bの途中にはロアブーム用方向制御弁32が設けられている。ロアブーム用方向制御弁32は、電磁パイロット部32A,32Bを有する4ポート3位置の電磁弁により構成されている。キャブ6内にはロアブーム操作装置33が設けられ、ロアブーム操作装置33の操作に応じて演算装置46から電磁パイロット部32Aまたは32Bに駆動信号が供給されることにより、ロアブーム用方向制御弁32は中立位置から切換位置(a)または(b)に切換えられる。これにより、油圧源からの圧油が、油圧管路31Aまたは31Bを通じてロアブームシリンダ18に供給され、ロアブームシリンダ18が伸縮動作を行う。
【0028】
油圧源とアッパブームシリンダ19との間は、油圧管路34A,34Bを介して接続され、油圧管路34A,34Bの途中にはアッパブーム用方向制御弁35が設けられている。アッパブーム用方向制御弁35は、電磁パイロット部35A,35Bを有する4ポート3位置の電磁弁により構成されている。キャブ6内にはアッパブーム操作装置36が設けられ、アッパブーム操作装置36の操作に応じて演算装置46から電磁パイロット部35Aまたは35Bに駆動信号が供給されることにより、アッパブーム用方向制御弁35は中立位置から切換位置(c)または(d)に切換えられる。これにより、油圧源からの圧油が、油圧管路34Aまたは34Bを通じてアッパブームシリンダ19に供給され、アッパブームシリンダ19が伸縮動作を行う。
【0029】
油圧源と中間アームシリンダ20との間は、油圧管路37A,37Bを介して接続され、油圧管路37A,37Bの途中には中間アーム用方向制御弁38が設けられている。中間アーム用方向制御弁38は、電磁パイロット部38A,38Bを有する4ポート3位置の電磁弁により構成されている。キャブ6内には中間アーム操作装置39が設けられ、中間アーム操作装置39の操作に応じて演算装置46から電磁パイロット部38Aまたは38Bに駆動信号が供給されることにより、中間アーム用方向制御弁38は中立位置から切換位置(e)または(f)に切換えられる。これにより、油圧源からの圧油が、油圧管路37Aまたは37Bを通じて中間アームシリンダ20に供給され、中間アームシリンダ20が伸縮動作を行う。
【0030】
油圧源と先端アームシリンダ21との間は、油圧管路40A,40Bを介して接続され、油圧管路40A,40Bの途中には先端アーム用方向制御弁41が設けられている。先端アーム用方向制御弁41は、電磁パイロット部41A,41Bを有する4ポート3位置の電磁弁により構成されている。キャブ6内には先端アーム操作装置42が設けられ、先端アーム操作装置42の操作に応じて演算装置46から電磁パイロット部41Aまたは41Bに駆動信号が供給されることにより、先端アーム用方向制御弁41は中立位置から切換位置(g)または(h)に切換えられる。これにより、油圧源からの圧油が、油圧管路40Aまたは40Bを通じて先端アームシリンダ21に供給され、先端アームシリンダ21が伸縮動作を行う。
【0031】
油圧源とウインチ22(ドラム22B)を回転駆動する油圧モータとの間は、油圧管路43A,43Bを介して接続され、油圧管路43A,43Bの途中には、ウインチ制御装置としてのウインチ用方向制御弁44が設けられている。ウインチ用方向制御弁44は、電磁パイロット部44A,44Bを有する4ポート3位置の電磁弁により構成されている。キャブ6内にはウインチ操作装置45が設けられ、ウインチ操作装置45の操作に応じて演算装置46から電磁パイロット部44Aまたは44Bに駆動信号が供給されることにより、ウインチ用方向制御弁44は中立位置から切換位置(j)または(k)に切換えられる。これにより、油圧源からの圧油が、油圧管路44Aまたは44Bを通じてウインチ22の油圧モータに供給され、ウインチ22のドラム22Bは、ワイヤロープ23を巻取る方向、またはワイヤロープ23を繰出す方向に回転する。
【0032】
なお、図示は省略するが、下部走行体2を走行させる走行モータと油圧源との間を接続する油圧管路、および下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回させる旋回モータと油圧源との間を接続する油圧管路にも、それぞれ電磁パイロット部を有する方向制御弁が設けられている。そして、キャブ6内に設けられた走行操作装置の操作に応じて、下部走行体2(走行モータ)の走行動作が制御されると共に、キャブ6内に設けられた旋回操作装置に対する操作に応じて、上部旋回体3(旋回モータ)の旋回動作が制御される構成となっている。
【0033】
次に、本実施形態に用いられる演算装置46について説明する。演算装置46は、アッパブーム11に対する中間アーム13の回動動作および中間アーム13に対する先端アーム14の回動動作に応じて、ウインチ22によるワイヤロープ23の巻取り量または繰出し量の適正値を演算し、その演算結果に応じてウインチ用方向制御弁44(電磁パイロット部44A,44B)に駆動信号を出力する。
【0034】
図7に示すように、演算装置46は、データ記憶部47と、状態判定部48と、演算部49と、出力部50とを含んで構成されている。データ記憶部47には、データ入力装置51が接続されている。状態判定部48には、後述するフック保持モード選択器52、中間アーム操作装置39、先端アーム操作装置42、ウインチ操作装置45が接続されている。演算部49には、中間アーム角度検出器27、先端アーム角度検出器28、データ記憶部47、状態判定部48が接続されている。出力部50には、演算部49、ウインチ用方向制御弁44の電磁パイロット部44A,44Bが接続されている。
【0035】
データ入力装置51は、例えばキャブ6内に配置され、オペレータ等が操作することにより、後述する中間アーム長さAと、先端アーム長さBと、中間シーブ距離Lと、中間シーブ角度θL1と、先端シーブ距離Lと、先端シーブ角度θL2と、ウインチ22の送出し速度Vとを含む各種のデータを、データ記憶部47に入力する。データ記憶部47は、新たなデータが入力されるまでの間は、データ入力装置51から入力されたデータを記憶する。
【0036】
状態判定部48には、フック保持モード選択器52、中間アーム操作装置39、先端アーム操作装置42、ウインチ操作装置45が接続されている。フック保持モード選択器52は、油圧ショベル1(作業装置8)の作業に応じてオペレータによってON操作またはOFF操作され、ON/OFF操作に応じた検出信号を状態判定部48に出力する。例えばアースオーガ17を用いた立坑の掘削作業を行うため、フック24を図1に示す所定の保持位置に保持するときには、フック保持モード選択器52はON操作(フック保持モード)される。一方、例えばフック24を用いたクレーン作業、あるいはワイヤロープ23のメンテナンス作業を行うため、ウインチ22を作動させてワイヤロープ23の巻取り、繰出しを行うときには、フック保持モード選択器52はOFF操作(フック可動モード)される。
【0037】
中間アーム操作装置39および先端アーム操作装置42は、オペレータによる操作が行われたか否かに応じて状態判定部48に検出信号を出力する。ウインチ操作装置45は、オペレータによる操作が行われたか否かに応じて検出信号を状態判定部48に出力する。状態判定部48は、フック保持モード選択器52、中間アーム操作装置39、先端アーム操作装置42、ウインチ操作装置45から入力された検出信号に基づいて、フック24を保持位置に保持すべきか否かを判定し、フック24を保持位置に保持すべきと判定した場合には、演算部49に判定信号を出力する。
【0038】
状態判定部48が、フック24を保持位置に保持すべきと判定していない場合には、演算装置46は、ロアブーム操作装置33、アッパブーム操作装置36、中間アーム操作装置39、先端アーム操作装置42、ウインチ操作装置45に対する操作に応じて、ロアブーム用方向制御弁32、アッパブーム用方向制御弁35、中間アーム用方向制御弁38、先端アーム用方向制御弁41、ウインチ用方向制御弁44に駆動信号を出力する。これにより、オペレータの操作に応じてロアブーム10、アッパブーム11、中間アーム13、先端アーム14を適宜に回動させつつ、ウインチ22によるワイヤロープ23の巻取り、繰出しを行うことにより、フック24を用いたクレーン作業等を行うことができる。
【0039】
一方、状態判定部48は、フック24を保持位置に保持すべきと判定した場合には、演算部49に判定信号を出力する。演算部49は、状態判定部48から判定信号が入力された場合には、中間アーム角度検出器27、先端アーム角度検出器28から入力された検出信号、データ記憶部47から入力された各種データに基づいて、中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xを演算すると共に、フック24を保持位置に保持するために必要なワイヤロープ23の巻取り量あるいは繰出し量の適正値となるウインチ22の目標回転量を演算する。そして、演算部49は、演算したウインチ22の目標回転量に対応する信号を出力部50に出力する。出力部50は、演算部49から入力された信号に基づいて駆動信号を生成し、この駆動信号をウインチ用方向制御弁44の電磁パイロット部44Aまたは44Bに出力する。
【0040】
従って、状態判定部48が、フック24を保持位置に保持すべきと判定した場合には、中間アーム13および先端アーム14の回動動作に伴う中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xの変化に応じて、自動的に(ウインチ操作装置45を操作することなく)ウインチ22が巻取り方向または繰出し方向に回転する。これにより、フック24を安定して保持位置に保持することができる。
【0041】
ここで、演算部49が、中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xを演算するときの演算式、およびシーブ間距離Xに応じてウインチ22の目標回転量を演算するときの演算式の一例について、図5および図6を参照して説明する。
【0042】
まず、図5に示すように、中間シーブ25の中心が、ピン13Aから距離Lだけ離れた位置に取り付けられ、先端シーブ26の中心が、ピン17Aから距離Lだけ離れた位置に取り付けられている場合を考える。
【0043】
この場合には、ピン14Aの中心とピン13Aの中心との間の距離を中間アーム長さAとし、ピン17Aの中心とピン14Aの中心との間の距離を先端アーム長さBとする。また、中間シーブ25の中心とピン13Aとの間隔を中間シーブ距離Lとし、先端シーブ26の中心とピン17Aとの間隔を先端シーブ距離Lとする。また、ピン11Aの中心とピン13Aの中心とを通る直線を基準線P1とし、ピン13Aの中心とピン14Aの中心とを通る直線を基準線P2とし、ピン14Aの中心とピン17Aの中心とを通る直線を基準線P3としたときに、中間シーブ25の中心とピン13Aの中心とを通る直線P4と基準線P1とがなす角度を中間シーブ角度θL1とし、先端シーブ26の中心とピン17Aの中心とを通る直線P5と基準線P3とがなす角度を先端シーブ角度θL2とする。また、ワイヤロープ23の巻取り、繰出しを行うときのウインチ22の回転速度を送出し速度Vとする。これら中間アーム長さA、先端アーム長さB、中間シーブ距離L、先端シーブ距離L、中間シーブ角度θL1、先端シーブ角度θL2、送出し速度Vは、予めデータ入力装置51によって演算装置46(データ記憶部47)に入力されている。
【0044】
一方、図5において、ピン14Aと中間シーブ25の中心との間隔を距離Kとし、ピン14Aと先端シーブ26の中心との間隔を距離Jとする。また、基準線P1と基準線P2とがなす角度を中間アーム角度θとし、基準線P2と基準線P3とがなす角度を先端アーム角度θとする。また、中間シーブ25の中心とピン14Aとを通る直線P6と基準線P2とがなす角度を角度θ′L1とし、先端シーブ26の中心とピン14Aとを通る直線P7と基準線P3とがなす角度を角度θ′L2とする。演算部49は、上述した各数値に基づき、中間シーブ25と先端シーブ26との間のシーブ間距離Xを、下記数1によって算出する。
【0045】
【数1】
【0046】
数1中のJは、下記数2により算出され、Kは、下記数3により算出される。
【0047】
【数2】
【0048】
【数3】
【0049】
また、数1中のθ′L1は、下記数4により算出され、θ′L2は、下記数5により算出される。
【0050】
【数4】
【0051】
【数5】
【0052】
ここで、本実施形態では、図6に示すように、中間シーブ25がピン13Aに回転可能に支持され、先端シーブ26がピン17Aに回転可能に支持されている。従って、中間シーブ距離L、先端シーブ距離L、中間シーブ角度θL1、先端シーブ角度θL2は、いずれも零(0)となる。また、距離Kは中間アーム長さAと等しくなり(K=A)、距離Jは先端アーム長さBと等しくなる(J=B)。これにより、本実施形態による中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xは、下記数6によって算出される。
【0053】
【数6】
【0054】
中間アーム13の回動動作によって中間アーム角度θが変化し、先端アーム13の回動動作によって先端アーム角度θが変化することにより、シーブ間距離Xが変化するときの変化量(シーブ間距離変化量)X′は、下記数7によって算出される。そして、シーブ間距離変化量X′に関わらずフック24を保持位置に保持するためのウインチ22の目標回転量Wは、下記数8によって算出される。
【0055】
【数7】
【0056】
【数8】
【0057】
このようにして、演算部49は、中間アーム13および先端アーム14の回動動作が行われている間、常にシーブ間距離変化量X′に対応するウインチ22の目標回転量Wを演算し、演算結果に応じた信号を出力部50に出力する。出力部50は、演算部49から入力された信号に基づいて駆動信号を生成し、この駆動信号をウインチ用方向制御弁44の電磁パイロット部44A,44Bに出力する。これにより、オペレータがウインチ操作装置45を操作することなくウインチ22が自動的に回転駆動され、ワイヤロープ23は、シーブ間距離変化量X′に応じてウインチ22に巻取られ、またはウインチ22から繰出される。この結果、フック24は、中間アーム13および先端アーム14の回動動作に関わらず、図1に示す所定の保持位置を保持することができる。
【0058】
本実施形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、以下、アースオーガ17を用いて地中に立坑を掘削する掘削作業について説明する。
【0059】
油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場まで自走した後、例えば図1に示すようにブーム9を立ち上げることにより、アースオーガ17のスクリュー17Cを地面に対して垂直に配置する。ここで、立坑の掘削作業時にはフック24は不要であるため、フック24は、先端シーブ26の下側に隣接した所定の保持位置に保持されている。次に、駆動源17Bによってスクリュー17Cを回転駆動しつつ、例えば中間アームシリンダ20を伸縮させて中間アーム13をピン13Aを中心に適宜に回動させると共に、先端アームシリンダ21を伸縮させて先端アーム14をピン14Aを中心に適宜に回動させる。これにより、アースオーガ17のスクリュー17Cは、地面に対して垂直な姿勢を保持した状態で回転し、立坑を掘削することができる。
【0060】
ここで、立坑の掘削作業時に先端アーム14が回動動作を行った場合には、図2および図3に示すように、中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xが変化する。本実施形態による油圧ショベル1は、中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xが変化した場合でも、演算装置46が、シーブ間距離Xの変化に応じてウインチ22の動作を制御することにより、フック24を所定の保持位置に保持することができるようになっており、以下、演算装置46によるウインチ22の制御について説明する。
【0061】
立坑の掘削作業時に先端アーム操作装置42が操作されると、先端アームシリンダ21が伸縮動作を行うことにより、先端アーム14がピン14Aを中心として回動動作を行い、中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xが変化する。このとき、先端アーム操作装置42から演算装置46の状態判定部48に、先端アーム14に対する操作(アーム操作)が行われたことを示す検出信号が出力される。また、立坑の掘削作業時には、ウインチ22を操作する必要がないため、ウインチ操作装置45に対する操作は行われない。これにより、ウインチ操作装置45から状態判定部48に対し、ウインチ22に対する操作(ウインチ操作)が行われていないことを示す検出信号が出力される。さらに、フック24を保持位置に保持しておく必要があるため、オペレータは、フック保持モード選択器52をON操作する。これにより、フック保持モード選択器52から状態判定部48に対し、フック24を保持位置に保持するモード(フック保持モード)が選択されていることを示す検出信号が出力される。
【0062】
状態判定部48は、先端アーム操作装置42、ウインチ操作装置45、フック保持モード選択器52から入力された検出信号に基づき、フック24を図1に示す保持位置に保持すべきであると判定し、この判定結果を演算部49に出力する。ここで、状態判定部48が、フック24を保持位置に保持すべきと判定するときの制御処理について、図8を参照して説明する。
【0063】
この制御処理は、例えば油圧ショベル1が作動することによりスタートし、S1(ステップ1)で先端アーム操作装置42の操作が行われるとS2(ステップ2)に進む。S2では、ウインチ操作装置45が操作されたか否かを判定し、YES(操作された)と判定している間はS2の判定を繰り返し、NO(操作されていない)と判定した場合にはS3(ステップ3)に進む。S3では、フック保持モード選択器52によりフック24を保持位置に保持するモード(フック保持モード)が選択されたか否かを判定し、NOと判定している間はS2に戻り、YESと判定した場合にはS4(ステップ4)に進む。S4では、フック24をフック24を保持位置に保持すべきであると判定し、この判定結果を演算部49に出力した後、例えばS1に戻って上述の処理を繰り返す。
【0064】
このようにして、状態判定部48から演算部49に対し、フック24を保持位置に保持すべきとの判定結果が出力されると、演算部49は、上記数6、数7、数8の演算式に基づいて、フック24を保持位置に保持するためのウインチ22の目標回転量Wを算出する。出力部50は、演算部49によって算出されたウインチ22の目標回転量Wに応じた駆動信号を生成し、この駆動信号をウインチ用方向制御弁44の電磁パイロット部44A,44Bに出力する。
【0065】
これにより、ウインチ用方向制御弁44が中立位置から切換位置(j)または(k)に切換えられ、ウインチ22(ドラム22B)が巻取り方向または繰出し方向に回転する。例えば中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xが短くなった場合には、ウインチ22が巻取り方向に回転してワイヤロープ23が巻取られる。これにより、ワイヤロープ23の弛みによってフック24が下方に移動するのを抑え、フック24を保持位置に保持することができる。一方、シーブ間距離Xが長くなった場合には、ウインチ22が繰出し方向に回転してワイヤロープ23が繰出される。これにより、フック24がウインチ22側に引っ張られて先端シーブ26に衝突するのを抑え、フック24を保持位置に保持することができる。この結果、フック24を図1の保持位置に保持した状態で立坑の掘削作業を行うことができ、フック24が揺動して油圧ショベル1、あるいは油圧ショベル1の周囲に配置された資材等に衝突するのを防止することができる。
【0066】
そして、アースオーガ17を用いて立坑を掘削した後には、例えばオペレータがフック保持モード選択器52をOFF操作し、フック24を可動モードに切換える。この状態でウインチ操作装置45等を操作することにより、フック24を用いたクレーン作業を行うことができ、例えばフック24を用いて吊り上げた杭、矢板等を立坑に差し込むことができる。
【0067】
かくして、実施形態では、下部走行体2と上部旋回体3とを有する自走可能な車体と、上部旋回体3に設けられた作業装置8とからなり、作業装置8は、基端が上部旋回体3に回動可能に取付けられたブーム9と、ブーム9の先端に回動可能に取付けられた中間アーム13と、中間アーム13の先端に回動可能に取付けられた先端アーム14と、先端アーム14から下方に繰出される延びるワイヤロープ23に支持されたフック24と、ワイヤロープ23が巻回されるウインチ22と、中間アーム13の動作に連動しつつワイヤロープ23を支持する中間シーブ25と、先端アーム14の動作に連動しつつワイヤロープ23を支持する先端シーブ26と、ウインチ22にワイヤロープ23の巻取り動作または繰出し動作を行わせるウインチ用方向制御弁44と、を備えてなる建設機械において、ブーム9に対する中間アーム13の回動動作および中間アーム13に対する先端アーム14の回動動作に応じて、ウインチ22によるワイヤロープ23の巻取り量または繰出し量の適正値を演算する演算装置46を備え、演算装置46は、演算結果に応じてウインチ用方向制御弁44に駆動信号を出力することを特徴とする。
【0068】
この構成によれば、中間アーム13に対する先端アーム14の回動動作に応じて、ウインチ用方向制御弁44によるワイヤロープ23の巻取り量および繰出し量を調整することができる。これにより、ウインチ22およびフック24を用いたクレーン作業以外の作業、例えばアースオーガ17を用いた立坑の掘削作業を行う場合でも、中間アーム13および先端アーム14の動作に関わらず、フック24を所定の保持位置に保持しておくことができる。
【0069】
実施形態では、ブーム9に対する中間アーム13の角度を検出する中間アーム角度検出器27と、中間アーム13に対する先端アーム14の角度を検出する先端アーム角度検出器28と、を備え、演算装置46は、中間アーム角度検出器27によって検出された中間アーム13の角度と先端アーム角度検出器28によって検出された先端アーム14の角度とに基づいて中間シーブ25と先端シーブ26との間のシーブ間距離Xを演算すると共に、シーブ間距離Xに応じてウインチ22の目標回転量Wを演算し、目標回転量Wに応じた駆動信号をウインチ用方向制御弁44に出力する。この構成によれば、シーブ間距離Xの変化に応じてウインチ22の目標回転量Wが演算され、この目標回転量Wに応じてウインチ22に対するワイヤロープ23の巻取り量あるいは繰出し量が調整されることにより、フック24を所定の保持位置に保持しておくことができる。
【0070】
実施形態では、ウインチ22によるワイヤロープ23の巻取り動作または繰出し動作を行わせるときに操作されるウインチ操作装置45を備え、演算装置46は、ウインチ操作装置46が操作されていないときに、中間アーム13の回動動作および先端アーム14の回動動作に応じてウインチ用方向制御弁44によるワイヤロープ23の巻取り量または繰出し量の適正値を演算する。この構成によれば、例えばアースオーガ17を用いた立坑の掘削作業を行うときには、オペレータがウインチ操作装置46を操作することなく、中間アーム13の回動動作および先端アーム14の回動動作に応じて、ウインチ22に対してワイヤロープ23を適正に巻取り、繰出すことができる。
【0071】
次に、図9および図10は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、ワイヤロープ23の張力を検出する張力検出器53を備え、演算装置46は、張力検出器53により検出されたワイヤロープ23の張力に応じてウインチ22の目標回転量Wを演算することにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図9において、張力検出器53は、ワイヤロープ23の先端とフック24との間に設けられている。張力検出器53は、例えば立坑の掘削作業時にフック24が保持位置に保持されている状態において、ワイヤロープ23に作用する張力を検出し、張力に応じた検出信号を演算装置46に出力する。この場合、中間シーブ25と先端シーブ26とが一定のシーブ間距離Xを保った状態でフック24が保持位置に保持されているときに、ワイヤロープ23に作用する張力が適正であるとすると、シーブ間距離Xが短くなるときにはワイヤロープ23の張力が低下し、シーブ間距離Xが長くなるときにはワイヤロープ23の張力が増大する。
【0073】
これに対し、演算装置46は、ワイヤロープ23の張力が適正であると判定したときには、ウインチ22の動作を停止させる。一方、演算装置46は、ワイヤロープ23の張力が低下したと判定したときには、ウインチ22を巻取り方向に回転させてワイヤロープ23を巻取り、ワイヤロープ23の張力が増大したと判定したときには、ウインチ22を繰出し方向に回転させてワイヤロープ23を繰出す。
【0074】
ここで、演算装置46が、張力検出器53により検出されたワイヤロープ23の張力に応じてウインチ22の動作を制御するときの制御処理について、図10を参照して説明する。
【0075】
この制御処理は、例えば油圧ショベル1が作動することによりスタートし、S11(ステップ11)において張力検出器53により検出されたワイヤロープ23の張力を読み込み、S12(ステップ12)に進む。S12では、ワイヤロープ23の張力が適正であるか、張力が低下しているか、張力が増大しているかを判定する。S12においてワイヤロープ23の張力が適正であると判定した場合には、中間シーブ25と先端シーブ26とが一定のシーブ間距離Xを保っているので、S13(ステップ13)においてウインチ用方向制御弁44に対する駆動信号の出力を停止する。これにより、ウインチ22は停止した状態を保持し、フック24は保持位置を保持することができる。
【0076】
S12においてワイヤロープ23の張力が低下していると判定した場合には、中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xが短くなり、ワイヤロープ23が弛み気味と考えられる。このため、演算装置46は、S14(ステップ14)においてウインチ22がワイヤロープ22を巻取るための目標回転量(巻取り目標回転量)を演算し、続くS15(ステップ15)において演算結果に応じた駆動信号(ウインチ巻取り信号)をウインチ用方向制御弁44に出力する。これにより、ウインチ22が巻取り方向に回転してワイヤロープ23が巻取られるので、シーブ間距離Xが短くなったとしてもフック24は保持位置を保持することができる。
【0077】
一方、S12においてワイヤロープ23の張力が増大していると判定した場合には、中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xが長くなり、ワイヤロープ23が引っ張れ気味と考えられる。このため、演算装置46は、S16(ステップ16)においてウインチ22がワイヤロープ22を繰出すための目標回転量(繰出し目標回転量)を演算し、続くS17(ステップ17)において演算結果に応じた駆動信号(ウインチ巻取り信号)をウインチ用方向制御弁44に出力する。これにより、ウインチ22が繰出し方向に回転してワイヤロープ23が繰出されるので、シーブ間距離Xが長くなったとしてもフック24は保持位置を保持することができる。
【0078】
このように、演算装置46は、張力検出器53からの検出信号に応じて、S12においてワイヤロープ23の張力が適正であるか、低下しているか、増大しているかを判定する。そして、ワイヤロープ23の張力が適正であるときにはS13においてウインチ停止信号を出力し、ワイヤロープ23の張力が低下しているときにはS15においてウインチ巻取り信号を出力し、ワイヤロープ23の張力が増大しているときにはS17においてウインチ巻取り信号を出力する。そして、演算装置46は、S13、S15、S17を実行した後には、例えばS11に戻り、上述した制御処理を繰り返す。これにより、本実施形態においても、立坑の掘削作業時に中間シーブ25と先端シーブ26とのシーブ間距離Xが変化した場合でも、フック24を保持位置に保持しておくことができる。
【0079】
なお、実施形態では、ウインチ22をアッパブーム11に取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばロアブーム10、上部旋回体3の旋回フレーム4等に取付ける構成としてもよい。
【0080】
また、実施形態では、ブーム9がロアブーム10とアッパブーム11とを有し、アッパブーム11の先端に中間アーム13が取付けられた作業装置8を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば単一のブームを備えた作業装置にも適用することができる。
【0081】
また、実施形態では、先端アーム14の先端にアースオーガ17が取付けられた作業装置8を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばバケット、グラップル等の他の作業具が先端アームに取り付けられた作業装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
8 作業装置
9 ブーム
13 中間アーム
14 先端アーム
22 ウインチ
23 ワイヤロープ(ロープ)
24 フック
25 中間シーブ
26 先端シーブ
27 中間アーム角度検出器
28 先端アーム角度検出器
44 ウインチ用方向制御弁(ウインチ制御装置)
45 ウインチ操作装置
46 演算装置
53 張力検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10