(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127322
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】水浄化設備
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A01K63/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036410
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】522012019
【氏名又は名称】株式会社ワイズグロウ
(74)【代理人】
【識別番号】100149836
【弁理士】
【氏名又は名称】森定 勇二
(72)【発明者】
【氏名】丸野 美光
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA07
2B104AA08
2B104AA17
2B104AA26
2B104CA01
2B104CB23
2B104CB30
2B104ED06
2B104ED12
2B104ED15
(57)【要約】
【課題】水棲動物の養殖又は飼育用の水槽に良質な水を供給・循環するとともに保守性にも優れる水浄化設備を提供すること。
【解決手段】水浄化設備1は、一定量の水を貯留する水槽10と、水槽10の内部に配設する所定の水浄化機構20と、水槽10の下流側壁面に穿孔する浄化水供給路30と、を備える。水浄化機構20は、2種類の所定の遮蔽板21、22と、隣接する遮蔽板21、22の間に配設するろ過フィルタ体23と、を備える。水槽10内の清掃を容易にするため水槽10の上流側の底部をテーパ形状としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定量の水を貯留するための水槽(10)と、
前記水槽の水を浄化するために前記水槽の内部に配設する水浄化機構(20)と、
前記水槽の下流側に設ける浄化水供給路(30)と、を少なくとも備える水浄化設備。
【請求項2】
前記水浄化機構(20)を、前記水槽の最も上流側に位置する壁面及び最も下流側に位置する壁面との間に配設する、
液体を透過しない複数枚の遮蔽板と、
液体を透過し前記隣接する2枚の遮蔽板の間に配設するろ過フィルタ体(23)と、で構成し、
前記複数枚の遮蔽板を、
その上端が、前記水槽に水を貯留する際に最も高くなる水面位置を想定した仮想水面線(L)よりも高い位置かつその下端が、前記水槽の底面から一定距離を離間した位置で固着する水面側遮蔽板(21)と、
その上端が、前記水面側遮蔽板の上端よりも低い位置かつその下端が、前記水槽の底面と同一位置で固着する底面側遮蔽板(22)と、の上端の位置、下端の位置がそれぞれ異なる2種類の遮蔽板で構成した請求項1の水浄化設備。
【請求項3】
前記水槽の最も上流側に配設する遮蔽板を前記水面側遮蔽板(21)とした請求項2の水浄化設備。
【請求項4】
前記底面側遮蔽板と前記水面側遮蔽板とを同一形状とした請求項2及び請求項3の水浄化設備。
【請求項5】
前記水槽(10)の上流側の底部をテーパ形状とした請求項1から請求項3いずれかに記載した水浄化設備。
【請求項6】
前記水槽(10)の上流側の底部をテーパ形状とした請求項4に記載した水浄化設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、えび・うなぎ・鯛・牡蠣などの水棲動物の養殖又は熱帯魚・金魚などの水棲動物の飼育に適した水浄化設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚介類飼育用水槽で魚介類の飼育に用いた飼育用水をポンプなどにより再び飼育用水槽に供給し用いる循環設備を備えた養殖装置は存在する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の魚介類の循環濾過養殖装置は、飼育水槽から排出される魚介類(例えば、ヒラメ。)の糞、残餌は沈殿槽で、浮遊懸濁物はフィルター装置で効率的に捕集した後、再び前記飼育水槽へ供給する循環濾過養殖装置であるが、製造あるいは保守コスト、水槽内の水の品質、清掃の容易さ(保守性)などにおいて、さらなる改良の余地があるものと考える。
【0005】
そこで、上記の様な事項について改良を施した水浄化設備を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、上述の課題を解決するために、一定量の水を貯留するための水槽と、前記水槽の水を浄化するために前記水槽の内部に配設する水浄化機構と、前記水槽の下流側に設ける浄化水供給路と、を少なくとも備える水浄化設備を提供する。
【0007】
また、本願発明は、上述の課題を解決するために、前記水浄化機構を、前記水槽の最も上流側に位置する壁面及び最も下流側に位置する壁面との間に配設する、液体を透過しない複数枚の遮蔽板と、液体を透過し前記隣接する2枚の遮蔽板の間に配設するろ過フィルタ体と、で構成し、前記複数枚の遮蔽板を、その上端が、前記水槽に水を貯留する際に最も高くなる水面位置を想定した仮想水面線よりも高い位置かつその下端が、前記水槽の底面から一定距離を離間した位置で固着する水面側遮蔽板と、その上端が、前記水面側遮蔽板の上端よりも低い位置かつその下端が、前記水槽の底面と同一位置で固着する底面側遮蔽板と、の上端の位置、下端の位置がそれぞれ異なる2種類の遮蔽板で構成した水浄化設備を提供する。
【0008】
また、本願発明は、上述の課題を解決するために、前記水槽の最も上流側に配設する遮蔽板を前記水面側遮蔽板とした水浄化設備を提供する。
【0009】
また、本願発明は、上述の課題を解決するために、前記底面側遮蔽板と前記水面側遮蔽板とを同一形状とした水浄化設備を提供する。
【0010】
また、本願発明は、上述の課題を解決するために、前記水槽の上流側の底部をテーパ形状とした水浄化設備を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の水浄化設備は、一定量の水を貯留するための水槽と、前記水槽の水を浄化するために前記水槽の内部に配設する水浄化機構と、前記水槽の下流側に設ける浄化水供給路と、を少なくとも備えるため、浄化された良質な水が浄化水供給路を介して水棲動物が生息する水槽に供給することができる。また、前記水棲動物が生息する水槽から糞や餌の食べ残しを包含する汚水を当該水浄化設備の上流側に排出することにより、循環することもできる。
【0012】
本願発明の水浄化設備は、前記水浄化機構を、前記水槽の最も上流側に位置する壁面及び最も下流側に位置する壁面との間に配設する、液体を透過しない複数枚の遮蔽板と、液体を透過し前記隣接する2枚の遮蔽板の間に配設するろ過フィルタ体と、で構成し、前記複数枚の遮蔽板を、その上端が、前記水槽に水を貯留する際に最も高くなる水面位置を想定した仮想水面線よりも高い位置かつその下端が、前記水槽の底面から一定距離を離間した位置で固着する水面側遮蔽板と、その上端が、前記水面側遮蔽板の上端よりも低い位置かつその下端が、前記水槽の底面と同一位置で固着する底面側遮蔽板と、の上端の位置、下端の位置がそれぞれ異なる2種類の遮蔽板で構成したため、水面側遮蔽板、底面側遮蔽板及びろ過フィルタ体を通過することによって浄化されたより良質な水が浄化水供給路を介して水棲動物が生息する水槽に供給することができる。また、前記水棲動物が生息する水槽から糞や餌の食べ残しを包含する汚水を当該水浄化設備の上流側に排出することにより、循環することもできる。
【0013】
本願発明の水浄化設備は、前記水槽の最も上流側に配設する遮蔽板を前記水面側遮蔽板としたため、水棲動物が生息する水槽から糞や餌の食べ残しを包含する汚水のうち水面に浮遊する物質を当該箇所でせき止め水槽の下流側に流出することを防止できる。
【0014】
本願発明の水浄化設備は、前記底面側遮蔽板と前記水面側遮蔽板とを同一形状としたため、同一部品で製造すること又は交換することができ、製造コストや保守コストを抑制することができる。
【0015】
本願発明の水浄化設備は、前記水槽の上流側の底部をテーパ形状としたため、水棲動物が生息する水槽から糞や餌の食べ残しを包含する汚水のうち沈殿する物質の回収が容易となる(水槽の清掃が容易となる、保守性が向上する)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は水浄化設備をその上方側から見た全体構造図である。
【
図3】
図3は水槽の下流側壁面に穿孔する浄化水供給路を示す構成図である。
【
図4】
図4は水浄化設備とえび養殖用の水槽とを接続した状態を示す使用状態図である。
【
図5】
図5は水浄化設備の上流側へえび養殖用の水槽からの汚水を排出した様子を示す使用状態図である。
【
図6】
図6は水槽の内部(上流側)での水の流れを示す使用状態図である。
【
図7】
図7は水槽の内部(下流側)での水の流れを示す使用状態図である。
【
図8】
図8は実施例2の水浄化設備の切断断面図(全体構造図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
えび養殖用の水槽との間で海水が循環する水浄化設備として使用する。
【実施例0018】
まずは、水浄化設備の構成について、
図1から
図3に従い説明する。
【0019】
水浄化設備(1)は、一定量の水を貯留するための略直方体形状の水槽(10)と、
前記水槽の内部に設けた所定の水浄化機構(20)と、前記水槽の下流側(
図1及び
図2で示す左側。)の壁面に穿孔した浄化水供給路(30)と、で構成する(
図1から
図3)。
【0020】
なお、前記水槽(10)の大きさは、幅555ミリメートル(
図1で示す縦方向の距離。)、長さ(
図1で示す横方向の距離。)1360ミリメートル、深さ(高さ)500ミリメートル、である。
【0021】
前記水槽(10)の底面について、上流側(
図1及び
図2で示す右側。)のみテーパ形状の凹みを設けるとともに、当該凹みの最も深い部分から沈殿物質を除去可能な構造としている(
図2及び
図1)。
【0022】
前記水浄化機構(20)は、前記水槽(10)の最も上流側に位置する壁面及び最も下流側に位置する壁面との間の空間に配設され各壁面に対して平行に設置する11枚の液体を透過しない材質で成形した所定の遮蔽板(21、22)と、隣接する前記遮蔽板相互間に配設するろ過フィルタ体(23)とで構成する(
図1及び
図2)。
【0023】
なお、前記遮蔽板(21、22)を設ける枚数について、本実施例では前記水槽(10)の下流側から等間隔で10枚、さらに最も上流側に少し間隔をあけて1枚の合計11枚を設けているが、水を供給する設備(えび養殖用の水槽など。)側から要求される条件(水質、水槽のサイズ、水量、コストなど。)に応じて増減することも考えられる。
【0024】
前記遮蔽板(21、22)の種類及び配置について、前記水槽(10)の底面に固着した5枚の底面側遮蔽板(22)と、前記底面遮蔽板の隣接位置かつ前記水槽の底面から一定距離を離間した位置に配設する6枚の水面側遮蔽体(21)と、で構成する(
図2)。
【0025】
前記水面側遮蔽板(21)及び前記底面側遮蔽板(22)の幅(
図1で示す縦方向の距離。)について、前記水槽(10)内の水が当該箇所から上流側から下流側に漏出しない様に前記水槽の幅方向の内寸と略同一幅としている(
図1)。
【0026】
前記水面側遮蔽板(21)及び前記底面側遮蔽板(22)の形状及び大きさについて、製造コストや保守コストを考慮すると同一とする方が好ましく、本実施例では同一としている(
図2)。
【0027】
前記各水面側遮蔽板(21)の上端は、前記水槽(10)の上端から30ミリメートル下がった位置で固着している(
図2)。
【0028】
前述した各水面側遮蔽板(21)の上端位置は、前記水槽(10)に水を貯留する際に最も高くなる水面位置を想定した仮想水面線(L)よりも少し高い位置となる(
図2)。
【0029】
また、前記各水面側遮蔽板(21)の下端は、前記水槽(10)の底面から一定距離を離間した位置となる(
図2)。
【0030】
なお、前述した各水面側遮蔽板(21)の下端位置は、前記各底面側遮蔽体(22)の下端よりも少し上方位置となり、かつ、その上端よりもかなり下方位置となる(
図2)。
【0031】
前記各水面側遮蔽板(21)及び前記各底面側遮蔽板(22)に関して、上述の様に配設することで水の通路(流路)としては、前記水槽(10)の底面側から水面方向へ、あるいは水面側から前記水槽の底面方向へ、迷路の様な構造に形成される(
図2)。
【0032】
前記ろ過フィルタ体(23)について、液体を透過することを要するが、透過する水などの液体をろ過、浄化又はきれいにする機能を備えていれば良いものとする。
【0033】
よって、様々なろ過フィルタ体を使用することも可能であるが、前記水槽(10)の上流側で相当程度の物理ろ過がなされた状態の水をろ過、浄化又はきれいにすることになるので、前記ろ過フィルタ体(23)には、バクテリアが付着し当該付着したバクテリアで水を化学的にろ過、浄化又はきれいにできるものが好ましい。
【0034】
前記浄化水供給路(30)を穿孔する位置に関して、前記水槽(10)の内部からえび養殖用の水槽などの外部の設備へ、前記水浄化機構で浄化した水を供給可能であればいずれの位置でも許容し得るが、配管設置のしやすさ、穿孔のしやすさ、意匠性(デザイン性)、穿孔後の強度、浄化水の品質状態などを考慮すると、前記水槽の最も下流側に位置する壁面の幅方向中央位置とすることが好ましい(
図3)。
【0035】
次に、実施例1の水浄化設備とえび養殖用の水槽とを接続した際の作動について、
図4から
図7に従い説明する。
【0036】
まずは、浄化水供給路(30)とえび養殖用の水槽(41)とを接続し、水浄化設備を構成する水槽(10)の上流側から水(海水)を供給する(
図4)。
【0037】
前記水の供給を継続し前記水槽槽(10)内の水面位置が、前記水槽の上端から30ミリメートル下がった位置すなわち水面側遮蔽板(21)よりも少し低い仮想水面線(L)に到達したら、前記浄化水供給路(30)から前記えび養殖用の水槽(41)へ浄化された水(W1)を供給開始する(
図4)
【0038】
次に、前記えび養殖用の水槽(41)の底部から餌の食べ残しやえびの排泄物などを含んだ汚水(W2)を、前記水槽(10)の上流側に排出する(
図5の矢印)。
【0039】
その後、前記水槽(10)の上流側に排出された前記汚水(W2)に含まれる物質のうち水に沈まない固形物質は、前記水槽の最も上流側に配置された前記水面側遮蔽板(21)にせき止められ当該水面側遮蔽板付近で浮遊し、水に沈む固形物質は直ちに又は一定の時間をかけて水中に沈み、最終的には前記水槽のテーパ形状底面に沈殿する(
図5)。
【0040】
また、前記汚水(W2)のうち前述の固形物質を除く汚水は、前記水槽(10)の最も上流側に配設した前記水面側遮蔽板(21)にせき止められ、下端方向に進行しその下端と前記水槽の底面との間を通過して前記水槽の上流側から下流側へ進行する(
図6で示す右側に描いた曲線矢印)。
【0041】
その後、隣接する底面側遮蔽板(22)に到達した水はせき止められ当該底面側遮蔽板の上端方向に進行しその上端と水面との間を通過し、さらに下流側の隣接する水面側遮蔽板(21)にせき止められ、下端方向に進行しその下端と前記水槽の底面との間を通過して前記水槽の上流側から下流側へ進行する(
図6で示す左側に描いた曲線矢印など)。
【0042】
この際に、ろ過フィルタ体(23)を透過するため当該汚水が一定程度ろ過、浄化又はきれいになる(
図6)。
【0043】
その後、汚水(W2)は、前述の様な作動を繰り返し、前記水槽の上流側から下流側へ向かって進行し、最終的に前記水槽の最も下流側に配設された水面側遮蔽板(21)の下端と前記水槽の底面との間を通過して浄化された水(W1)となって前記浄化水供給路(30)へ到達する(
図7で示す最も左側に描いた曲線矢印など)。
【0044】
なお、前記浄化された水(W1)は、再びえび養殖用の水槽(41)に供給される(
図7)。
前記微小気泡包含液体生成機構(51)とは、微小な気泡を包含する液体を生成し前記水槽内に放出する機構のことをいう。また、ここでいう、微小な気泡あるいは微小気泡とは、気泡のサイズが1マイクロメートル以下であるもの(いわゆるマイクロバブルと呼ばれる気泡。)を指し、数十ナノメートルから1マイクロメートルのもの(いわゆるウルトラファインバブルと呼ばれる気泡。)であることが好ましい。
なお、前記水質改質剤の収容スペースに投入する水質改質剤として、少なくともシリカと黒土を包含し、かつ、当該水中に存在する微生物の活動を活発化させるものが好ましい。
また、本願の水浄化設備は、水槽の内部又は外部に様々な設備を付設可能であり、水槽内に貯留する水(水溶液)の種類・内容を容易に変更可能であるため、前述した水棲動物の養殖又は飼育環境だけでなく、様々な外部設備に対する水供給にも利用可能と考える。例えば、植物の水耕栽培などにも利用できるものと考える。