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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127327
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】シートベルト用リトラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/28 20060101AFI20240912BHJP
   B60R 22/46 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60R22/28 106
B60R22/28 107
B60R22/46 142
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036424
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】角中 智
(72)【発明者】
【氏名】井尻 昂辰
(72)【発明者】
【氏名】藏内 紀子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 絵里
(72)【発明者】
【氏名】土方 大輝
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018DA07
3D018MA02
(57)【要約】
【課題】組付けの作業性を損なうことなく付勢部材の巻取ドラムからの脱落を防止することができるシートベルト用リトラクタを提供する。
【解決手段】シートベルト用リトラクタは、巻取ドラム、ロック部材61、付勢部材9A、軸部材9Bを含む。ロック部材61は巻取ドラムの第1端部に設けられている。付勢部材9Aは、巻取ドラムの第1端部に取り付けられる一端部9a、ロック部材61に取り付けられる他端部9b、および一端部9aと他端部9bと連結する連結部9cを有する。軸部材9Bは、巻取ドラムと同軸上の軸部91と、軸部91から径方向外向きに延びるアーム92を有する。アーム92は、付勢部材9Aの連結部9cに巻取ドラムと反対側から接触可能である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の側壁を含むハウジングと、
ウエビングを巻き取る、前記一対の側壁の間に前記ウエビングの巻取方向と引出方向に回転可能に収容された巻取ドラムと、
前記巻取ドラムにおける当該巻取ドラムの軸方向の一方側の第1端部に設けられ、前記ハウジングまたは前記ハウジングに取り付けられる部材に係合して前記巻取ドラムの前記引出方向への回転を阻止する係合位置と、前記巻取ドラムの前記引出方向への回転を許容する非係合位置との間で移動可能であり、車両の緊急時に前記係合位置に移動されるロック部材と、
前記巻取ドラムの第1端部に取り付けられる一端部、前記ロック部材に取り付けられる他端部、および前記一端部と前記他端部とを連結する連結部を有し、前記ロック部材を前記非係合位置に維持するように付勢する付勢部材と、
前記巻取ドラムの第1端部に取り付けられ、前記巻取ドラムと同軸上の軸部を有する軸部材と、
前記ハウジングに取り付けられ、前記軸部材の軸部を回転可能に支持するカバー部材と、を備え、
前記軸部材は、前記軸部から径方向外向きに延びるアームを有し、前記アームは、前記付勢部材の前記連結部に前記巻取ドラムと反対側から接触可能である、シートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記軸部材の軸部に回動可能に支持されて前記ロック部材を前記係合位置と前記非係合位置との間で移動させるガイド部材をさら備え、
前記ロック部材は、前記ガイド部材に操作される、前記巻取ドラムの軸方向と平行な操作軸を含み、
前記巻取ドラムの第1端部には、当該第1端部から前記巻取ドラムの軸方向の一方側に突出する取付突起が設けられており、
前記付勢部材の一端部が前記取付突起に取り付けられ、前記付勢部材の他端部が前記操作軸に取り付けられる、請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記巻取ドラムの第1端部には前記巻取ドラムの軸方向の一方側に開口する嵌合穴が設けられており、前記嵌合穴に前記軸部材の軸部が嵌合する、請求項1または2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
前記軸部材は、前記アームの先端から前記巻取ドラムの軸方向の他方側に延びるフックを有し、
前記巻取ドラムの第1端部には、前記フックが係合する係合穴が設けられている、請求項1または2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項5】
前記アームには、当該アームから前記巻取ドラムに向かって突出する、前記フックとの間に前記付勢部材の連結部が配置される中間突起が設けられている、請求項4に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項6】
前記巻取ドラムの第1端部と前記軸部材のアームとの間には、前記付勢部材の連結部の太さよりも大きな隙間がある、請求項1または2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項7】
前記軸部材のフックには、前記巻取ドラムの第1端部に巻取ドラムの軸方向で当接可能な当接部が設けられており、前記アームの中間突起と前記フックの当接部が前記巻取ドラムの第1端部に当接した際の、前記巻取ドラムの第1端部と前記軸部材のアームとの間の前記巻取ドラムの軸方向での隙間は、前記付勢部材の連結部の前記巻取ドラムの軸方向での厚みよりも大きい、請求項6に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項8】
前記ハウジングに取り付けられたプリテンショナケーシングを含み、車両の緊急時に前記巻取ドラムを前記巻取方向に回転させるプリテンショナをさらに備え、
前記ロック部材は前記プリテンショナケーシングに係合する、請求項1または2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時等の緊急時にウエビングの引き出しを防止するシートベルト用リトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の緊急時にウエビングの引き出しを防止するシートベルト用リトラクタが知られている。シートベルト用リトラクタでは、ウエビングを巻き取る巻取ドラムがハウジングの一対の側壁の間に回転可能に収容される。
【0003】
例えば、特許文献1には、巻取ドラムにおける当該巻取ドラムの軸方向の一方側の第1端部に、車両の緊急時に巻取ドラムの引出方向への回転を阻止するロック部材(特許文献1では「ロックプレート」と称呼)が設けられたシートベルト用リトラクタが開示されている。
【0004】
具体的に、特許文献1のシートベルト用リトラクタでは、巻取ドラムがドラム本体と、このドラム本体の一方の端面に取り付けられたロッキングベース(特許文献1では「ロックベース」と称呼)を含み、ロッキングベースにロック部材が揺動可能に取り付けられている。
【0005】
また、特許文献1のシートベルト用リトラクタでは、ドラム本体が中空であり、巻取ドラムがドラム本体の内部に配置されたトーションバーを含み、そのトーションバーがロッキングベースを貫通している。トーションバーにおけるロッキングベースよりも外側に張り出す先端部には、リターンスプリングが取り付けられている。リターンスプリングは、ロック部材を、巻取ドラムの引出方向への回転を許容する非係合位置に維持するように付勢する。
【0006】
ハウジングの一方の側壁には内歯が形成されている一方、ロック部材はその内歯に係合可能な複数の係合歯を有する。車両の緊急時には、ロック部材がリターンスプリングの付勢力に抗して巻取ドラムの引出方向への回転を阻止する係合位置に移動し、ロック部材の係合歯がハウジングの一方の側壁に形成された内歯に係合する。
【0007】
リターンスプリングは、上述したトーションバーの先端部に取り付けられた渦巻状のバネ部と、ロック部材に設けられたガイド突起に取り付けられた係止部と、バネ部と係止部とを連結するアーム部を含む。
【0008】
さらに、特許文献1のシートベルト用リトラクタでは、ロッキングベースに、ロック部材の脱落防止用として薄肉円形状のロックカバーが取り付けられている。このロックカバーは、ロッキングベースよりも大径であり、リターンスプリングの脱落防止の役割も果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4118667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のシートベルト用リトラクタのように大きなロックカバーによって付勢部材であるリターンスプリングの巻取ドラムからの脱落を防止する構造では、ロックカバーを取り付けた後に作業員が付勢部材を目視することができず、組付けの作業性が悪い。また、大きなロックカバーでは無駄な部分が多いという問題もある。
【0011】
そこで、本発明は、組付けの作業性を損なうことなく付勢部材の巻取ドラムからの脱落を防止することができるシートベルト用リトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、互いに対向する一対の側壁を含むハウジングと、ウエビングを巻き取る、前記一対の側壁の間に前記ウエビングの巻取方向と引出方向に回転可能に収容された巻取ドラムと、前記巻取ドラムにおける当該巻取ドラムの軸方向の一方側の第1端部に設けられ、前記ハウジングまたは前記ハウジングに取り付けられる部材に係合して前記巻取ドラムの前記引出方向への回転を阻止する係合位置と、前記巻取ドラムの前記引出方向への回転を許容する非係合位置との間で移動可能であり、車両の緊急時に前記係合位置に移動されるロック部材と、前記巻取ドラムの第1端部に取り付けられる一端部、前記ロック部材に取り付けられる他端部、および前記一端部と前記他端部とを連結する連結部を有し、前記ロック部材を前記非係合位置に維持するように付勢する付勢部材と、前記巻取ドラムの第1端部に取り付けられ、前記巻取ドラムと同軸上の軸部を有する軸部材と、前記ハウジングに取り付けられ、前記軸部材の軸部を回転可能に支持するカバー部材と、を備え、前記軸部材は、前記軸部から径方向外向きに延びるアームを有し、前記アームは、前記付勢部材の前記連結部に前記巻取ドラムと反対側から接触可能である、シートベルト用リトラクタを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組付けの作業性を損なうことなく付勢部材の巻取ドラムからの脱落を防止することができるシートベルト用リトラクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るシートベルト用リトラクタの斜視図である。
図2図1に示すシートベルト用リトラクタの分解斜視図である。
図3図1に示すシートベルト用リトラクタの断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図3のV-V線に沿った断面図である。
図6】巻取ドラムの一部の分解斜視図である。
図7】巻取ドラムの残り、付勢部材、軸部材及びガイド部材の分解斜視図である。
図8】ドラム本体の斜視図である。
図9】駆動輪の斜視図である。
図10】駆動輪およびロッキングベースの断面図である。
図11】ロッキングベースおよびロック部材の分解斜視図である。
図12】ロッキングベースおよびロック部材を反対側から見たときの分解斜視図である。
図13】軸部材を図7と反対側から見たときの斜視図である。
図14】軸部材のアームを通る位置での軸部材およびロッキングベースの断面図である。
図15】(a)はロック部材が非係合位置に位置するときの付勢部材の状態を示し、(b)はロック部材が係合位置に位置するときの付勢部材の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2に、本発明の一実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1を示す。このシートベルト用リトラクタ1は、車両衝突時などの緊急時にシートベルトであるウエビング10の引き出しを防止するものである。
【0016】
具体的に、シートベルト用リトラクタ1は、ハウジング2、巻取バネユニット1A、巻取ドラム1B、プリテンショナ1Cおよびロックユニット1Dを含む。ハウジング2は、巻取ドラム1Bの軸方向で互いに対向する第1側壁21および第2側壁22を含む。
【0017】
巻取ドラム1Bは、ウエビング10を巻き取るものであり、第1側壁21および第2側壁22の間にウエビング10の巻取方向および引出方向に回転可能に収容されている。
【0018】
ハウジング2は、第1側壁21および第2側壁22と共に板金加工により形成された、第1側壁21および第2側壁22と垂直な背板23を含む。以下、説明の便宜上、巻取ドラム1Bの軸方向を左右方向(第1側壁21側の一方側を左方、第2側壁22側の他方側を右方)というとともに、背板23の厚さ方向を前後方向(側壁21,22側を前方、その反対側を後方)という。また、図1および図2の作図通りに、左右方向および前後方向と直交する方向の一方を上方、他方を下方という。
【0019】
ハウジング2の第1側壁21および第2側壁22の前辺の下部同士および上部同士は連結バー24,25で連結されている。第1側壁21および第2側壁22には、巻取ドラム1Bが挿通される開口21a,22aがそれぞれ設けられている。また、背板23には、巻取ドラム1Bを露出させる開口23aが設けられている。
【0020】
ハウジング2の第2側壁22には巻取バネユニット1Aが取り付けられ、第1側壁21にはプリテンショナ1Cが取り付けられている。ロックユニット1Dはプリテンショナ1Cに取り付けられている。
【0021】
巻取ドラム1Bは、ドラム本体3と、ドラム本体3に対して左方に配置された、車両の緊急時にドラム本体3と相対回転可能なロッキングベース6と、ロッキングベース6に取り付けられた環状(図3参照)の駆動輪5を含む。すなわち、ロッキングベース6が巻取ドラム1Bの左端部(軸方向の一方側の第1端部)を構成する。駆動輪5は、プリテンショナ1Cの構成要素でもある。
【0022】
ドラム本体3は、図3に示すように、ハウジング2の第1側壁21側の第1端面31と、第2側壁22側の第2端面32を有する。本実施形態では、ドラム本体3が第2端面32から右方に突出する軸部33を有し、この軸部33が巻取バネユニット1Aに回転可能に支持されている。ただし、後述するトーションバー4Aがドラム本体3を貫通し、このトーションバー4Aの右端部が巻取バネユニット1Aに回転可能に支持されてもよい。なお、巻取バネユニット1Aの構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
巻取ドラム1Bは、上述したドラム本体3、ロッキングベース6および駆動輪5の他に、図6および図7に示すように、ブッシュ3A、ベアリング3B、トーションバー4A、衝撃エネルギー吸収ワイヤ4Bおよびストッパ部材4Cを含む。巻取ドラム1Bの左端部を構成するロッキングベース6には、付勢部材9Aおよび軸部材9Bが取り付けられている。
【0024】
ブッシュ3Aおよびベアリング3Bは、車両の緊急時にハウジング2に対する巻取ドラム1Bの相対位置がずれたとしても巻取ドラム1Bをスムーズに回転させるための非常手段である。図3に示すように、ブッシュ3Aは、ドラム本体3における第2側壁22の開口22a内に位置する右端部に取り付けられ、ベアリング3Bは、ドラム本体3における第1側壁21の開口21a内に位置する左端部に取り付けられる。さらに、ベアリング3Bは、ドラム本体3とロッキングベース6が相対回転する際にロッキングベース6に相対回転不能に取り付けられた駆動輪5と摺動する、ドラム本体3の左端部の内側に折り返された折り返し部3Ba(図6参照)を含む。
【0025】
ドラム本体3は、当該ドラム本体3の中心軸に沿って延びる中心穴30を有する。本実施形態では、中心穴30が有底であり、第1端面31のみに開口している。ただし、上述したようにトーションバー4Aがドラム本体3を貫通する場合は、中心穴30は第1端面31だけでなく第2端面32にも開口してもよい。
【0026】
トーションバー4Aは、ドラム本体3の中心穴30内に挿入されている。上述したロッキングベース6は、ドラム本体3の第1端面31と対向するように配置されている。トーションバー4Aのロッキングベース6と反対側の一端側がドラム本体3と相対回転不能に結合されるとともに、他端側がロッキングベース6と相対回転不能に結合されている。
【0027】
より詳しくは、トーションバー4Aの一端側および他端側にはスプライン状の結合部41,42がそれぞれ設けられている。ドラム本体3の中心穴30の底には、結合部41との結合用のスプライン状の凹みが設けられており、この凹みに結合部41が嵌合する。
【0028】
トーションバー4Aは、ロッキングベース6の引出方向への回転が阻止された状態でウエビング10の引出力が所定値を超える場合に塑性変形して、ドラム本体3とロッキングベース6との相対回転を許容しつつ衝撃エネルギーを吸収する。
【0029】
衝撃エネルギー吸収ワイヤ4Bは、ドラム本体3とロッキングベース6とが相対回転するときの初期に衝撃エネルギーを吸収するものである。本実施形態では、図8に示すように、ドラム本体3に、第1端面31に開口する2つのスロット35が設けられている。本実施形態では、各スロット35がドラム本体3の外周面から斜めに凹む溝状であるが、スロット35はドラム本体3の軸方向に延びる穴であってもよい。
【0030】
衝撃エネルギー吸収ワイヤ4Bは、一方のスロット35内に、頭部43(図6参照)がスロット35の開口36から張り出した状態で収納されている。衝撃エネルギー吸収ワイヤ4Bは、ドラム本体3とロッキングベース6との相対回転時に開口36から塑性変形しながら引き出されて衝撃エネルギーを吸収する。なお、衝撃エネルギー吸収ワイヤ4Bは省略可能である。
【0031】
ストッパ部材4Cは、トーションバー4Aの衝撃エネルギー吸収時のドラム本体3とロッキングベース6との相対回転の許容量を規定する。ストッパ部材4Cは、ドラム本体3の中心穴30内に、ドラム本体3と相対回転不能かつ左右方向に移動可能に保持される。
【0032】
図6に示すように、ストッパ部材4Cは、トーションバー4Aが挿通される筒状である。ストッパ部材4Cの内周面には雌ネジ47が形成されている。
【0033】
本実施形態では、ストッパ部材4Cが、環状部45と、環状部45から右方に突出する3つの爪部46を含む。一方、ドラム本体3の中心穴30内には、3つのガイド溝34が設けられている。3つのガイド溝34に3つの爪部46がそれぞれ嵌合することで、ストッパ部材4Cがドラム本体3に、ドラム本体3と相対回転不能かつ左右方向に移動可能に保持される。ただし、ストッパ部材4Cが爪部46を含む代わりに、ストッパ部材4Cの外形の断面形状およびドラム本体3の中心穴30の左端部の断面形状が多角形状であってもよい。
【0034】
図3および図7に示すように、ロッキングベース6には、ストッパ部材4Cの雌ネジ47が螺合する雄ネジ73が形成されている。本実施形態では、図3に示すように、ドラム本体3とロッキングベース6との相対回転時にストッパ部材4Cが駆動輪5から離間する位置から駆動輪5に当接する位置まで移動することで、ドラム本体3とロッキングベース6の相対回転が所定量で規制される。
【0035】
駆動輪5は、図7および図9に示すように、断面六角形状の嵌合穴を有する本体部51と、本体部51の外周面に形成された複数の歯52と、歯52の右方で本体部51から径方向外向きに突出する環状のフランジ53と、フランジ53から右方に突出するリング状のリブ55を含む。
【0036】
フランジ53には、複数(図例では6つ)の保持溝54が設けられている。これらの保持溝54の1つに上述した衝撃エネルギー吸収ワイヤ4Bの頭部43が取り付けられる。なお、衝撃エネルギー吸収ワイヤ4Bの頭部43は、保持溝54よりも大きな幅の抜け止め部44(図6参照)を有する。
【0037】
図3に示すように、本実施形態では、駆動輪5はドラム本体3の第1端面31にリブ55によって当接する。衝撃エネルギー吸収ワイヤ4Bは、リブ55に巻き付けられながらスロット35の開口36から引き出される。また、ドラム本体3とロッキングベース6が相対回転する際には、ロッキングベース6に相対回転不能に取り付けられた駆動輪5が、ドラム本体3の軸方向では駆動輪5のリブ55がドラム本体3の第1端面31と接触するとともに、ドラム本体3の径方向では駆動輪5のフランジ53の外周が、ドラム本体3に取り付けられたベアリング3Bの折り返し部3Baと接触しつつ、ドラム本体3と相対回転する。
【0038】
さらに、本体部51の内周面からは環状のフランジ56が突出している。このフランジ56は、ストッパ部材4Cと当接する部分である。このようにストッパ部材4Cをロッキングベース6の段差部ではなく駆動輪5のフランジ56に当接させることで、ストッパ部材4Cとの当接面積を大きく確保することができる。
【0039】
プリテンショナ1Cは、車両の緊急時に巻取ドラム1Bを巻取方向に回転させる。プリテンショナ1Cは、図2~4に示すように、ハウジング2の第1側壁21に取り付けられたプリテンショナケーシング11と、プリテンショナケーシング11から折れ曲がりながら延びるパイプ12と、パイプ12内に配置された移動部材13と、パイプ12の末端部内に配置されたガス発生器18を含む。
【0040】
本実施形態では、移動部材13が棒状であり、駆動輪5の歯52の食い込みによって塑性変形する。ただし、移動部材13は駆動輪5の歯52と同ピッチで並ぶ複数の分割体(例えば、球体)で構成されてもよい。移動部材13は、車両の緊急時に、ガス発生器18が発生するガスによってパイプ12から押し出されながら駆動輪5の歯52と係合し、駆動輪5を巻取方向に回転させる。駆動輪5の回転に伴い、ロッキングベース6、トーションバー4Aおよびドラム本体3も回転する。また、プリテンショナ1Cの作動後は、パイプ12内のガスの圧力によって移動部材13がパイプ12内に押し戻されるのが阻止されるので、駆動輪5が引出方向に回転することが阻止される。
【0041】
図2および図5に示すように、プリテンショナケーシング11にはロッキングベース6が挿通される開口11aが設けられ、開口11aの周縁には内歯11bが形成されている。一方、ロッキングベース6には、内歯11bと係合可能なロック部材61が設けられている。ロック部材61は、車両の緊急時に内歯11bに係合してロッキングベース6の引出方向への回転を阻止する。
【0042】
図10~12に示すように、ロッキングベース6は、駆動輪5が取り付けられる第1ベース部材7と、第1ベース部材7に対してドラム本体3と反対側で第1ベース部材7に相対回転不能に取り付けられる第2ベース部材8を含む。ロック部材61は、第1ベース部材7と第2ベース部材8との間に保持される。
【0043】
より詳しくは、第1ベース部材7は、円盤状の第1本体部71と、第1本体部71から右方に突出する突出部72を有する。図3に示すように、第1本体部71とドラム本体3の第1端面31との間には駆動輪5が配置され、突出部72は駆動輪5を貫通する。突出部72の根元部は断面六角形状に形成されており、この根元部が駆動輪5の本体部51における同じく断面六角形状の嵌合穴に嵌合することで、駆動輪5が第1ベース部材7に相対回転不能に取り付けられる。また、突出部72の先端側の外周面には上述した雄ネジ73が形成されている。
【0044】
さらに、第1ベース部材7には、突出部72の先端面から凹む第1凹み74と、第1凹み74と同軸上で第1本体部71における駆動輪5と反対側の表面から凹む第2凹み75が設けられている。第1凹み74はトーションバー4Aの結合部42との結合用のスプライン状の凹みであり、この第1凹み74に結合部42が嵌合する。第2凹み75は本実施形態では断面円形状である。本実施形態では、第1ベース部材7が第1凹み74と第2凹み75とを隔てる仕切り76を有する。つまり、第1凹み74および第2凹み75が有底である。
【0045】
第2ベース部材8は、第1本体部71と重なり合う板状の第2本体部81と、第2本体部81から右方に突出する嵌合突起82を有する。本実施形態では、第2本体部81には3か所の係合凹部87が設けられており、第1本体部71に設けられた3か所の係合凸部79がそれぞれ係合凹部87に係合することで、第1ベース部材7に第2ベース部材8が相対回転不能に取り付けられる。嵌合突起82の断面形状は円形状であり、嵌合突起82は第2凹み75と嵌合する。ただし、第2凹み75と嵌合突起82が断面非円形状で、嵌合突起82が第2凹み75と嵌合することにより、第1ベース部材7に第2ベース部材8が相対回転不能に取り付けられてもよい。この場合、係合凹部87および係合凸部79は省略可能である。
【0046】
さらに、本実施形態では、第2ベース部材8の第2本体部81に、右方に突出する3つのカシメ突起85が設けられる一方、第1ベース部材7の第1本体部71に、カシメ突起85が挿通される3つの貫通穴77が設けられている。第1本体部71の第2本体部81と反対側には、貫通穴77と同軸かつ貫通穴77よりも大径のカシメ凹部78が形成されている。そして、各カシメ突起85の貫通穴77から突出する部分が、カシメ凹部78内で貫通穴77よりも大径にカシメられている(図11,12では、カシメ突起85をカシメ前の形状で描いている)。
【0047】
ロック部材61は、第1ベース部材7の第1本体部71と第2ベース部材8の第2本体部81とに保持される略円弧状で板状の本体部62と、本体部62の外側面に形成された、上述した内歯11bと係合可能な複数(図例では3つ)の係合歯63と、本体部62から左方に突出する操作軸64を有する。つまり、操作軸64は巻取ドラム1Bの軸方向と平行である。操作軸64は、ガイド部材14(図2,7参照)により操作される。
【0048】
ロック部材61は、図15(a)に示す巻取ドラム1Bの引出方向への回転を許容する非係合位置と、図15(b)に示す巻取ドラム1Bの引出方向への回転を阻止する係合位置との間で移動可能である。ロック部材61はガイド部材14により非係合位置と係合位置との間で移動される。
【0049】
ロッキングベース6の第2ベース部材8の第2本体部81には、当該第2本体部81から左方に突出する取付突起84が設けられている。つまり、取付突起84は巻取ドラム1Bの左端部から左方に突出する。上述した付勢部材9Aは、その取付突起84とロック部材61の操作軸64とに掛け渡されている。
【0050】
本実施形態では、付勢部材9Aが図7に示すように略円弧状のリターンスプリングである。具体的に、付勢部材9Aは、取付突起84に取り付けられる一端部9aと、ロック部材61の操作軸64に取り付けられる他端部9bと、一端部9aと他端部9bとを連結する連結部9cを有する。付勢部材9Aは、ロック部材61を図15(a)に示す非係合位置に維持するように付勢する。
【0051】
上述した軸部材9Bは、図7および図13に示すように、巻取ドラム1Bと同軸上の軸部91と、軸部91から径方向外向きに延びるアーム92を有する。軸部91の右側(基端側)部分の断面形状は六角形である。
【0052】
一方、ロッキングベース6の第2ベース部材8には、図11に示すように、嵌合突起82と同軸上で左方に開口する嵌合穴83が設けられている。本実施形態では、図12に示すように、嵌合穴83が第2ベース部材8を貫通しており、右方にも開口する。嵌合穴83の断面形状は六角形状である。この嵌合穴83に軸部材9Bの軸部91の右側部分が嵌合する。
【0053】
軸部材9Bの軸部91の左側(先端側)部分は、図3に示すようにガイド部材14を貫通しており、ガイド部材14を回動可能に支持する。また、軸部91のガイド部材14よりも左方に位置する左端(先端)部は、ロックユニット1Dの後述するカバー部材17によって回転可能に支持されている。
【0054】
図7に示すように、軸部材9Bのアーム92は、付勢部材9Aの連結部9cに巻取ドラム1Bと反対側から接触可能である。図14に示すように、第2ベース部材8の第2本体部81とアーム92との間には、巻取ドラム1Bの軸方向で付勢部材9Aの連結部9cの太さよりも大きな隙間がある。例えば、連結部9cの断面の直径は約1.0mmであり、第2ベース部材8の第2本体部81とアーム92との間の隙間は約1.5mmである。このように巻取ドラム1Bの一部である第2ベース部材8と軸部材9Bのアーム92との間に付勢部材9Aの移動スペースが確保されるので、ロック部材61の動作が妨げられることがない。
【0055】
アーム92の先端には、右方に延びるフック93が設けられている。一方、第2ベース部材8の第2本体部81には、フック93が係合する係合穴86(図11,12参照)が設けられている。係合穴86は、アーム92の延在方向と直交する方向に延びている。フック93の先端には、図13に示すように、当該フック93の幅方向に突出する一対の係合爪95が形成されており、係合穴86の右側には、図12に示すように、当該係合穴86の長手方向の両側に一対の第1凹部88が設けられている。フック93が係合穴86に差し込まれ、一対の係合爪95がそれぞれ第1凹部88に係合することで、アーム92が左方に移動することが抑制されるとともに、フック93が係合穴86から抜けることが抑制される。
【0056】
さらに、アーム92には、図13に示すように、軸部91とフック93の間の位置でアーム92から第2ベース部材8の第2本体部81に向かって突出する中間突起94が設けられている。軸部材9Bが第2ベース部材8に取り付けられた際には、中間突起94の先端が第2ベース部材の本体部81に当接する。この中間突起94とフック93との間に、付勢部材9Aの連結部9cが配置される(図15(a)および(b)参照)ので、巻取ドラム1Bの径方向両側への付勢部材9Aの想定外の移動を防止することができる。
【0057】
また、フック93には図13に示すように、係合爪95よりもフック93の基端側に、軸部91に向かって突出する一対の先端突起96が設けられおり、係合穴86の左側には、図10および図14に示すように、嵌合穴83側に凹んだ第2凹部89が設けられている。軸部材9Bが第2ベース部材8に取り付けられた際には、先端突起96の右側と第2凹部89の底との間にはわずかな隙間(例えば、0.1~0.2mm)があるが、アーム92が撓んでフック93が右側に移動した際には先端突起96の右側が第2凹部89の底に巻取ドラム1Bの軸方向で当接可能とされている。すまわち、先端突起96はロッキングベース6への当接部として機能する。
【0058】
このように、中間突起94の先端が第2ベース部材の本体部81に当接するだけでなく、先端突起96の右側も第2凹部89の底に当接することで、第2ベース部材8の第2本体部81とアーム92との間の巻取ドラム1Bの軸方向での隙間は、付勢部材9Aの連結部9cの巻取ドラム1Bの軸方向での厚みよりも大きい状態で維持される。そして、このような構造では、アーム92に必要な強度を低減して、軸部材9Bの小型化、軽量化等が可能になる。
【0059】
ロックユニット1Dは、図2に示すように、ガイド部材14および車両センサ16を収容するカバー部材17を含む。カバー部材17は、図3に示すように上述したプリテンショナケーシング11を介してハウジング2の第1側壁21に取り付けられる。
【0060】
ガイド部材14にはウエビングセンサ15が設けられている。ウエビングセンサ15はウエビング10が急激に引き出されたときに作動し、これによりガイド部材14の引出方向への回転が阻止される。車両センサ16は車両の加速度が大きく変化したときに作動し、これによりガイド部材14の引出方向への回転が阻止される。
【0061】
ガイド部材14の引出方向への回転が阻止されると、ロッキングベース6がドラム本体3と共にガイド部材14と相対回転し、ロック部材61の操作軸64がガイド部材14のガイド穴14a(図7参照)で操作されることにより、ロック部材61が付勢部材9Aの付勢力に抗して図15(a)に示す非係合位置から図15(b)に示す係合位置に移動する。これにより、ロック部材61がプリテンショナケーシング11の内歯11bに係合し、巻取ドラム1B(本実施形態ではそのうちのロッキングベース6)の引出方向への回転が阻止される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1では、軸部材9Bを巻取ドラム1Bの左端部を構成するロッキングベース6に取り付けることで、付勢部材9Aの連結部9cに対して巻取ドラム1Bと反対側に位置するアーム92によって付勢部材9Aの巻取ドラム1Bからの脱落が防止される。しかも、付勢部材9Aの全部がアーム92によって覆われるわけではないので、組付けの作業時に作業員が付勢部材9Aを目視したり、付勢部材9Aを移動しないように指で押さえたりすることが可能である。従って、組付けの作業性を損なうことなく付勢部材9Aの巻取ドラム1Bからの脱落を防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ロッキングベース6の取付突起84およびロック部材61の操作軸64が同じ方向を向いており、付勢部材9Aの一端部9aおよび他端部9bを同じ方向から巻取ドラム1Bおよびロック部材61に取り付けることができるため、付勢部材9Aの取付作業が容易となる。
【0064】
さらに、本実施形態では、軸部材9Bの軸部91を巻取ドラム1Bの嵌合穴83に挿入することで軸部材9Bを巻取ドラム1Bに取り付けることができる。しかも、軸部材9Bの取付方向と、軸部材9Bのアーム92が付勢部材9Aの連結部9cに接触可能な方向が同じであるため、軸部材9Bの取付作業が容易となる。
【0065】
また、本実施形態では、軸部材9Bのフック93によって巻取ドラム1Bの径方向外向きへの付勢部材9Aの想定外の移動を防止することができるとともに、軸部材9Bの中間突起94によって巻取ドラム1Bの径方向内向きへの付勢部材9Aの想定外の移動を防止することができる。
【0066】
<変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0067】
例えば、トーションバー4Aが省略され、ロッキングベース6がドラム本体3と一体となってもよい。
【0068】
また、プリテンショナ1Cは省略可能である。この場合、ハウジング2の第1側壁21の開口21aの周縁に内歯11bが形成され、車両の緊急時にはその内歯11bにロック部材61が係合してもよい。
【0069】
また、付勢部材9Aは必ずしも略円弧状のスプリングである必要はなく、一端部が巻取ドラム1Bの左端部に取り付けられ、他端部がロック部材61に取り付けられた引張コイルスプリングであってもよい。この場合、連結部はコイル部であり、ロック部材61が非係合位置から係合位置に移動することでコイル部が伸ばされる。あるいは、付勢部材9Aは一端部が巻取ドラム1Bの左端部に取り付けられ、他端部がロック部材61に取り付けられた圧縮コイルスプリングであってもよい。この場合、連結部はコイル部であり、ロック部材61が非係合位置から係合位置に移動することでコイル部が圧縮される。
【0070】
また、軸部材9Bのフック93には当接部としての先端突起96が必ずしも設けられる必要はなく、フック93の先端が当接部とされて巻取ドラム1Bの軸方向で第1ベース部材7の第1本体部71に当接可能であり、これによって、第2ベース部材8の第2本体部81とアーム92との間の巻取ドラム1Bの軸方向での隙間が、付勢部材9Aの連結部9cの巻取ドラム1Bの軸方向での厚みよりも大きい状態で維持されてもよい。
【0071】
<まとめ>
第1の態様として、本開示は、互いに対向する一対の側壁を含むハウジングと、ウエビングを巻き取る、前記一対の側壁の間に前記ウエビングの巻取方向と引出方向に回転可能に収容された巻取ドラムと、前記巻取ドラムにおける当該巻取ドラムの軸方向の一方側の第1端部に設けられ、前記ハウジングまたは前記ハウジングに取り付けられる部材に係合して前記巻取ドラムの前記引出方向への回転を阻止する係合位置と、前記巻取ドラムの前記引出方向への回転を許容する非係合位置との間で移動可能であり、車両の緊急時に前記係合位置に移動されるロック部材と、前記巻取ドラムの第1端部に取り付けられる一端部、前記ロック部材に取り付けられる他端部、および前記一端部と前記他端部とを連結する連結部を有し、前記ロック部材を前記非係合位置に維持するように付勢する付勢部材と、前記巻取ドラムの第1端部に取り付けられ、前記巻取ドラムと同軸上の軸部を有する軸部材と、前記ハウジングに取り付けられ、前記軸部材の軸部を回転可能に支持するカバー部材と、を備え、前記軸部材は、前記軸部から径方向外向きに延びるアームを有し、前記アームは、前記付勢部材の前記連結部に前記巻取ドラムと反対側から接触可能である、シートベルト用リトラクタを提供する。
【0072】
上記の構成によれば、軸部材を巻取ドラムの第1端部に取り付けることで、付勢部材の連結部に対して巻取ドラムと反対側に位置するアームによって付勢部材の巻取ドラムからの脱落が防止される。しかも、付勢部材の全部がアームによって覆われるわけではないので、組付けの作業時に作業員が付勢部材を目視したり、付勢部材を移動しないように指で押さえたりすることが可能である。従って、組付けの作業性を損なうことなく付勢部材の巻取ドラムからの脱落を防止することができる。
【0073】
第2の態様として、第1の態様において、上記のシートベルト用リトラクタは、前記軸部材の軸部に回動可能に支持されて前記ロック部材を前記係合位置と前記非係合位置との間で移動させるガイド部材をさら備え、前記ロック部材は、前記ガイド部材に操作される、前記巻取ドラムの軸方向と平行な操作軸を含み、前記巻取ドラムの第1端部には、当該第1端部から前記巻取ドラムの軸方向の一方側に突出する取付突起が設けられており、前記付勢部材の一端部が前記取付突起に取り付けられ、前記付勢部材の他端部が前記操作軸に取り付けられてもよい。この構成によれば、付勢部材の一端部および他端部を同じ方向から巻取ドラムおよびロック部材に取り付けることができるため、付勢部材の取付作業が容易となる。
【0074】
第3の態様として、第1または第2の態様において、前記巻取ドラムの第1端部には前記巻取ドラムの軸方向の一方側に開口する嵌合穴が設けられており、前記嵌合穴に前記軸部材の軸部が嵌合してもよい。この構成によれば、軸部材の軸部を巻取ドラムの嵌合穴に挿入することで軸部材を巻取ドラムに取り付けることができる。しかも、軸部材の取付方向と、軸部材のアームが付勢部材の連結部に接触可能な方向が同じであるため、軸部材の取付作業が容易となる。
【0075】
第4の態様として、第1乃至第3の態様の何れかにおいて、前記軸部材は、前記アームの先端から前記巻取ドラムの軸方向の他方側に延びるフックを有し、前記巻取ドラムの第1端部には、前記フックが係合する係合穴が設けられてもよい。この構成によれば、軸部材のフックによって巻取ドラムの径方向外向きへの付勢部材の想定外の移動を防止することができる。
【0076】
第5の態様として、第4の態様において、前記アームには、当該アームから前記巻取ドラムに向かって突出する、前記フックとの間に前記付勢部材の連結部が配置される中間突起が設けられてもよい。この構成によれば、軸部材の中間突起によって巻取ドラムの径方向内向きへの付勢部材の想定外の移動を防止することができる。
【0077】
第6の態様として、第1乃至第5の態様の何れかにおいて、前記巻取ドラムの第1端部と前記軸部材のアームとの間には、前記付勢部材の連結部の太さよりも大きな隙間があってもよい。この構成によれば、巻取ドラムと軸部材のアームとの間に付勢部材の移動スペースが確保されるので、ロック部材の動作が妨げられることがない。
【0078】
また、第7の様態として、第6の様態において、前記軸部材のフックには、前記巻取ドラムの第1端部に巻取ドラムの軸方向で当接可能な当接部が設けられており、前記アームの中間突起と前記フックの当接部が前記巻取ドラムの第1端部に当接した際の、前記巻取ドラムの第1端部と前記軸部材のアームとの間の前記巻取ドラムの軸方向での隙間は、前記付勢部材の連結部の前記巻取ドラムの軸方向での厚みよりも大きくてもよい。この構成によれば、軸部材の中間突起と当接部が前記巻取ドラムの第1端部に当接することで、巻取ドラムと軸部材のアームとの間に付勢部材の移動スペースが確保されるので、アームに必要な強度を低減して、軸部材の小型化、軽量化等が可能になる。
【0079】
第8の態様として、第1乃至第7の態様の何れかにおいて、例えば、上記のシートベルト用リトラクタは、前記ハウジングに取り付けられたプリテンショナケーシングを含み、車両の緊急時に前記巻取ドラムを前記巻取方向に回転させるプリテンショナをさらに備え、前記ロック部材は前記プリテンショナケーシングに係合してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 シートベルト用リトラクタ
1B 巻取ドラム
1C プリテンショナ
14 ガイド部材
17 カバー部材
2 ハウジング
21,22 側壁
6 ロッキングベース(巻取ドラムの第1端部)
61 ロック部材
64 操作軸
83 嵌合穴
84 取付突起
86 係合穴
9A 付勢部材
9a 一端部
9b 他端部
9c 連結部
9B 軸部材
91 軸部
92 アーム
93 フック
94 中間突起
96 先端突起(当接部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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