(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127339
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ケーブル終端接続部用の絶縁栓およびケーブル終端接続部
(51)【国際特許分類】
H02G 15/06 20060101AFI20240912BHJP
H02G 15/08 20060101ALI20240912BHJP
G01K 11/3206 20210101ALI20240912BHJP
G01R 31/66 20200101ALN20240912BHJP
【FI】
H02G15/06
H02G15/08
G01K11/3206
G01R31/66
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036440
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】住本 勉
(72)【発明者】
【氏名】今西 晋
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄裕
【テーマコード(参考)】
2F056
2G014
5G375
【Fターム(参考)】
2F056VF02
2G014AA34
2G014AB33
2G014AB60
5G375AA02
5G375CA02
5G375CB05
5G375DA32
5G375DA36
5G375DB04
5G375EA15
(57)【要約】
【課題】ケーブル終端接続部の内部の温度を測定可能とするための手段を提供すること。
【解決手段】電力用機器に電力ケーブルを接続するための接続部および課電部を少なくとも含むケーブル終端接続部において、課電部へと挿入可能な絶縁栓に温度センサを設ける。温度センサとして光ファイバを用いたセンサ(FBG(Fiber Bragg Grating)センサなど)を用いることができる。また、絶縁栓の取り付け後に発生する外力による光ファイバの破損を防止すべく、光ファイバの余長の確保、およびまたは光ファイバを本体部内で螺旋状に配置することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用機器に電力ケーブルを接続するためのケーブル接続部および課電部を少なくとも含む、ケーブル終端接続部において、前記課電部へと挿入可能な絶縁栓であって、
前記絶縁栓に、前記ケーブル終端接続部の内部の温度を計測可能な温度センサを設けたことを特徴とする、
ケーブル終端接続部用の絶縁栓。
【請求項2】
前記温度センサが、光ファイバを用いたセンサであることを特徴とする、
請求項1に記載のケーブル終端接続部用の絶縁栓。
【請求項3】
前記光ファイバを、前記絶縁栓の内部で余長を確保するように配置してあることを特徴とする、
請求項2に記載のケーブル終端接続部用の絶縁栓。
【請求項4】
前記光ファイバを、前記絶縁栓の内部で螺旋状に配置してあることを特徴とする、
請求項3に記載のケーブル終端接続部用の絶縁栓。
【請求項5】
前記光ファイバを、前記絶縁栓と、前記絶縁栓の後端部にスプリングを介して設けられた裏蓋との間で、余長を確保するように配置してあることを特徴とする、
請求項2に記載のケーブル終端接続部用の絶縁栓。
【請求項6】
前記光ファイバを、前記絶縁栓の内部、および、前記絶縁栓と、前記絶縁栓の後端部にスプリングを介して設けられた裏蓋との間で、余長を確保するように配置してあることを特徴とする、
請求項2に記載のケーブル終端接続部用の絶縁栓。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の絶縁栓を有する、ケーブル終端接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル終端接続部用の絶縁栓およびケーブル終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用機器に電力ケーブルを接続するためのケーブル終端接続部には、種々の形状・構造を呈するものがあるが、中でも課電口を有するケーブル終端接続部において、いわゆるインナーコーンタイプとして、エポキシ樹脂製のブッシングを主絶縁としてゴム製のストレスコーンを挿入して形成されるT形終端接続部(特許文献1)、T形終端接続部の課電口が斜めに形成されたケーブル終端接続部(特許文献2)、あるいは、いわゆるアウターコーンタイプとして、ゴム製のT形絶縁筒を主絶縁として機器に接続された凸状のエポキシブッシングに被せる構造の機器直結型(形)ケーブル接続部(T形コネクタとも呼ばれる)(特許文献3)などがある。
これらのケーブル終端接続部は、機器接続部と、電力ケーブルを接続するためのケーブル接続部と、通常使用時(課電時)には絶縁栓を取り付けて閉塞した状態にしてある課電部を有している。
機器接続部は、開閉装置などの電力用機器と接続するために使用され、ケーブル接続部(線路口とも呼ばれる)は、電力ケーブルを接続するために使用され、課電部(課電口とも呼ばれる)は、耐圧試験時に課電用ケーブルを接続する用途や前記ケーブル接続部の代替として電力ケーブルを接続して仮送電を行うための用途などで使用される。
【0003】
また、ケーブル終端接続部に係る発明として、内部の電圧を測定可能なセンサを設けたもの(特許文献4)や、課電部に取り付ける絶縁栓に検電用端子を設けたもの(特許文献5)などもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3259036号公報
【特許文献2】特許第3175556号公報
【特許文献3】特開平9-191547号公報
【特許文献4】特表2020-535435号公報
【特許文献5】実公平3-54322号公報
【特許文献6】特許第3036645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来技術に係る発明には、ケーブル終端接続部の内部の温度を測定する着想について、何らの開示も示唆もされていない。
【0006】
よって、本発明は、ケーブル終端接続部の内部の温度を測定可能とするための手段を提供することを目的の1つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、電力用機器に電力ケーブルを接続するためのケーブル接続部および課電部を少なくとも含む、ケーブル終端接続部において、前記課電部へと挿入可能な絶縁栓であって、前記絶縁栓に、前記ケーブル終端接続部の内部の温度を計測可能な温度センサを設けるよう構成した。
また、本願発明は、前記温度センサとして光ファイバを用いたセンサを使用することができる。
また、本願発明は、前記光ファイバを前記絶縁栓の内部で余長を有するように配置することができる。
また、本願発明は、前記光ファイバを前記絶縁栓の内部で螺旋状に配置した構成とすることができる。
また、本願発明は、前記光ファイバを、前記絶縁栓と、前記絶縁栓の後端部にスプリングを介して設けられた裏蓋との間で、余長を確保するように配置した構成とすることができる。
また、本願発明は、前記光ファイバを、前記絶縁栓の内部、および、前記絶縁栓と、前記絶縁栓の後端部にスプリングを介して設けられた裏蓋との間で、余長を確保するように配置した構成とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)絶縁栓に設けた温度センサによって、ケーブル終端接続部の内部の温度を直接測定することができ、温度をより精度良く求めることができる。その結果、当該測定値に基づく許容電流値の設定や、異常監視の検知精度の向上にも繋がる。
(2)温度センサのメンテナンスを要する場合、線路を停止して、絶縁栓を外すだけの作業で足り、ケーブル終端接続部一式を取り外すなどの作業が不要となる。
(3)光ファイバを用いた温度センサを用いることで、絶縁栓の内部に光ファイバを埋設する形での配置が可能となる。
(4)絶縁栓に設ける光ファイバについて螺旋状に配置するなど余長を設けるように配置することで、光ファイバに引張力や圧縮力が発生した場合の光ファイバの破損を防止することができる。
(5)温度センサに、ケーブル終端接続部の内部の任意箇所に設けた被連結部と連結可能な連結部を設けることで、常に同一の測定箇所での温度測定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るケーブル終端接続部の構成例を示す概略図。
【
図3】温度センサによる測定箇所の配置例を示す概略図。
【
図4】絶縁栓内での温度センサの配置例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
以下の説明において、機器接続部A1および課電部A3においては、図面中、左側を「先端側」、右側を「後端側」と称し、ケーブル接続部A2においては、図面中、上方を「先端側」、下方を「後端側」と称する。すなわち、部材を取り付ける方向を「先端側」、その反対側を「後端側」と称する。また、先端側の端面を「先端面」、後端側の端面を「後端面」と称することがある。
また、各図において、図面の視認性の確保の観点から、各部の断面を示すハッチングを省略する場合がある。
【実施例0011】
[1]ケーブル終端接続部(
図1)
本発明に係るケーブル終端接続部Aは、電力用機器に電力ケーブルを接続するための部位である。
本発明において、ケーブル終端接続部Aや、ケーブル終端接続部Aを構成する各部の形状・構造等は特段限定するものではなく、前述した背景技術の欄に記載した例を代表とする公知の形状・構造から任意の態様を選択することができる。
【0012】
<1>全体構成(
図1)
本発明に係るケーブル終端接続部Aの一例として、
図1に、T形終端接続部の内部構造を示す。
T形終端接続部は、主に開閉装置や変圧器等の電力用機器との接続に使用され、補助接続部としての課電口(後述する課電部A3)を有するケーブル終端接続部として使用される部材である。
【0013】
<1.1>エリア毎の構成(
図1)
図1に示すケーブル終端接続部Aを、エリア毎に区分けした場合、ケーブル終端接続部Aは、機器接続部A1、ケーブル接続部A2および課電部A3に区分けすることができる。
具体的には、
図1に示すケーブル終端接続部Aは、一方(
図1における左側)の端部(端部側の図示略)に電力用機器が接続される機器接続部A1、他方(
図1における右側)の端部に耐圧試験時は課電用ケーブル(図示略)が接続され通常時は絶縁栓30が装着される課電部A3、機器接続部A1および課電部A3に直交して分岐しケーブル端末部が装着されるケーブル接続部A2を有する。
【0014】
<1.2>部材毎の構成(
図1)
図1に示すケーブル終端接続部Aを、部材毎に区分けした場合、ケーブル終端接続部Aは、ブッシング10、ブッシング10の内部に装着する接続導体20、機器接続部A1側に設けた機器側固定フランジ30、ケーブル接続部A2に装着されるケーブル端末部(図示略)、課電部A3に装着される絶縁栓40を少なくとも有する。
【0015】
以下、部材毎およびエリア毎に区分けした各部の詳細について説明する。
【0016】
<2>ブッシング(
図1)
ブッシング10は、ケーブル終端接続部Aの本体材料の主要部分を構成する部材である。
本実施例では、ブッシング10は、絶縁筒11、機器側電極12、ケーブル側電極13、および遮へい層14を少なくとも有する。
ブッシング10を構成する絶縁筒11、機器側電極12およびケーブル側電極13は、例えば、モールド成形によって一体形成することもできる。
【0017】
<2.1>絶縁筒(
図1)
絶縁筒11は、ブッシング10の内部に設けた内部導体(本実施例では機器側電極12およびケーブル側電極13)を絶縁するための部材である。
絶縁筒11は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)など)で形成することができる。
【0018】
<2.2>機器側電極・ケーブル側電極(
図1)
本実施例では、ブッシング10の内部に設ける内部導体を、機器側電極12と、ケーブル側電極13の2つの電極で構成する。
通常時は機器側電極12とケーブル側電極13とを、後述する接続導体20によって電気的に接続している。
機器側電極12は、電力用機器が接続される機器接続部A1に配置される部位である。機器側電極12の先端面は、機器接続部A1において絶縁筒11から露出される(図示略)。
また、機器側電極12の後端側は、後述する接続導体20の先端部が挿入可能な開口部が設けられている。
ケーブル側電極13は、電力ケーブルが接続されるケーブル接続部A2側に配置される部位である。ケーブル側電極13は、課電部A3の受容口に連通する第1導体接続部131と、ケーブル接続部A2に挿入された電力ケーブルのケーブル導体(図示略)と接続する第2導体接続部132を有する。
第1導体接続部131は略円筒状に形成され、内部に空洞部133を有する。また、第1導体接続部131は、略円筒状に形成される第2導体接続部132と直交して連設されている。
空洞部133は、機器側電極12とケーブル側電極13との間に形成されるブッシング10の内面、機器側電極12の後端側の開口部、および、後述するブッシング10の課電部A3内面の接続孔A31と連通している。
課電部A3に絶縁栓40が取り付けられた状態においては、第1導体接続部131に絶縁栓40の先端側の導体が電気的に接続されている。
機器側電極12およびケーブル側電極13は、例えば銅、アルミニウム、銅合金またはアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成することができる。
機器側電極12およびケーブル側電極13は、同じ導電性材料にて形成してもよいし、それぞれ異なる導電性材料で形成してもよい。
【0019】
<2.3>遮へい層(
図1)
遮へい層14は、外部への漏電を防止する遮へい部としての機能と、ブッシング10内の電界を緩和する電界緩和部としての機能を発揮するための部材である。
遮へい層14は、絶縁筒11の外周面に塗布する導電性塗料によって形成することができる。
図1に示すケーブル終端接続部Aでは、遮へい層14を、機器接続部A1側から課電部A3側にわたっては、絶縁筒11の外周面全体に形成しつつ、機器接続部側A1からケーブル接続部A2側にわたっては、絶縁筒11の外周面に部分的に形成している。
ケーブル接続部A2側の遮へい層14が形成されていない部分は、機器側の接地構造と、電力ケーブルの接地構造とを絶縁する縁切り部を構成している。
当該構造により、遮へい層14は、機器側固定フランジ30と、後述する裏蓋70との間を電気的に接続するとともに、機器側固定フランジ30を介して電力用機器の機器ケースBと電気的に接続され、接地される。
【0020】
<3>接続導体(
図1)
接続導体20は、ブッシング10の内部に配置して、機器側電極12とケーブル側電極13との間を通電可能とするための部材である。
接続導体20は、例えば銅、アルミニウム、銅合金またはアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成することができる。
本実施例では、接続導体20が、機器側電極12との対向側を載頭部とする載頭円錐形状を呈しており、課電部A3側からブッシング10の内部へと装着自在に構成している。具体的には、接続導体20は、ブッシング10の課電部A3側から接続孔A31を通過して挿入され、先端側を機器側電極12の後端側の開口部内面に装着することで、後端側は空洞部133の機器側寄り(
図1の左側寄り)に装着される。
すなわち、接続導体20をブッシング10に装着した状態においては、接続導体20は、機器側電極12の後端側の開口部、機器側電極12とケーブル側電極13との間に形成されるブッシング10の内部の空間、および、空洞部133の機器側寄りに跨って配置される。
接続導体20は、先端側の外周、後端側の外周にそれぞれ導体接触子(図示略)が設けられ、接続導体20をブッシング10の内部へ装着することにより、接続導体20の先端側の導体接触子が機器側電極12の後端側の開口部内面に接触し、接続導体20の後端側の導体接触子がケーブル側電極13の開口部内面に接触する。これにより、接続導体20を介して、機器側電極12とケーブル側電極13とを電気的に接続することができる。
【0021】
<3.1>接続導体の有無
なお、本発明に係るケーブル終端接続部Aは、接続導体20の有無を必須構造とするものではない。
例えば、ケーブル終端接続部Aの内部において、接続導体20を介さずに機器側電極12とケーブル側電極13との間を通電可能とした構造を呈するものであってもよい。具体的には、機器側電極12とケーブル側電極13が一体に形成された内部導体であってもよい(特許文献6の接続導体参照)。
<4>絶縁栓(
図1)
絶縁栓40は、ケーブル終端接続部Aに設けた課電部A3を閉塞するための部材である。本発明に係る絶縁栓40の詳細は後述する。
【0022】
<5>機器接続部(
図1)
機器接続部A1は、電力用機器との接続部となる部位である。
機器接続部A1には機器側電極12が位置しており、ブッシング10の内部に配置した接続導体20を介して、ケーブル接続部A2側や課電部A3側との通電を可能としている。
【0023】
<6>ケーブル接続部(
図1)
ケーブル接続部A2は、電力ケーブルの接続部となる部位である。
ケーブル接続部A2にはケーブル側電極13が位置しており、ブッシング10の内部に配置した接続導体20を介して、機器接続部A1側との通電を可能としている。
また、ケーブル側電極13は、第1導体接続部131と第2導体接続部132を有する分岐構造であり、ケーブル接続部A2側である第2導体接続部132は、課電部A3側である第1導体接続部131と連設しているため、ケーブル接続部A2は、ケーブル側電極13を通じて課電部A3側とも通電が可能である。
【0024】
<7>課電部(
図1)
課電部A3は、耐圧試験時に課電用ケーブル(図示略)を接続する用途や、ケーブル接続部A2の代替として電力ケーブル(図示略)を接続して仮送電を行うための用途として使用される部位である。
課電部A3は、ケーブル接続部A2に設けたケーブル側電極12と通電可能な構造を呈しており、本発明に係るケーブル終端接続部Aの通常使用時には、絶縁栓40を取り付けて閉塞した状態を維持する。
【0025】
[2]絶縁栓(
図1~
図4)
次に、課電部A3を閉塞する絶縁栓40の詳細について説明する。
【0026】
<1>基本構成(
図1,
図2)
絶縁栓40は、ケーブル終端接続部Aに設けた課電部A3を閉塞するための部材である。
本発明では、絶縁栓40は、課電部A3に設けてある接続孔A31へと挿入して嵌合可能な形状・構造を呈すればよい。接続孔A31は、課電部A3に設けてあるブッシング10の内部空間である。
本発明に係る絶縁栓の一例について
図2を参照しながら説明する。
本実施例に係る絶縁栓40は、本体部41、高圧側電極42、および遮へい側電極43、を有している。
なお、本体部41、高圧側電極42、および遮へい側電極43は、例えばモールド成形によって一体的に形成してもよい。
絶縁栓40の後端側には、遮へい側電極43との間でスプリング60を介在させた態様で、ブッシング10へと固定可能な裏蓋70を別途設けておく。当該構造により、課電部A3の接続孔A31に嵌合した絶縁栓40は、裏蓋70との間で圧縮するスプリング60の弾性力によって挿入方向へと押しつけられるように作用する。
【0027】
<2>本体部(
図2)
本体部41は、課電部A3を絶縁するための主部材である。
本体部41は、ゴムなどの弾性の絶縁材料で構成し、接続孔A31の内壁面に密着するような形状を呈する。本体部41に用いるゴムは、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)やシリコーンゴムなど、高電圧課電時の絶縁性に優れた絶縁材料を用いることが好ましい。
本体部41の後端側には、接続孔A31からの取り外しを用意とするために、工具などで把持可能な部材を別途設けておいてもよい(図示略)。
【0028】
<3>高圧側電極(
図2,
図1)
高圧側電極42は、本体部41の先端側に設ける部材である。
本実施例では、高圧側電極42の形状を、先端側を平面状、後端側をドーム状としている。
当該構造により、絶縁栓40を接続孔A31に取り付けた状態では、高圧側電極42の先端側が内部導体であるケーブル側電極12と接触した状態となる(
図1)。また、高圧側電極42の後端側がドーム状で形成されることにより、ケーブル終端接続部Aの課電時に、絶縁栓40にかかる電界が緩和される。
また、高圧側電極42には、後述する温度センサ50を構成する光ファイバを挿通可能な穴を設けておく。
【0029】
<4>遮へい側電極(
図2,
図1)
遮へい側電極43は、本体部41の後端側に設ける部材である。
図2に示すように、本実施例では、遮へい側電極43の形状を、先端側をドーム状、後端側を平面状としている。
また、遮へい側電極43の後端側には、円周上に凹部431を複数配置しており、この凹部431にそれぞれスプリング60の一端を収納し、スプリング60の他端がブッシング10に固定する裏蓋70に接触するよう構成する。
なお、実施の形態では複数のスプリング60を用いて、各スプリング60の一端を複数の凹部431にそれぞれ収納しているが、本発明において、スプリング60の数は限定されない。例えば、絶縁栓40をブッシング10に押し付ける弾性力が確保できる場合は、1個の外径が大きいスプリングの一端を、1個の円周状に設けてなる溝形状の凹部に収容する形で形成してもよい。
【0030】
当該構造により、絶縁栓40を接続孔A31に取り付けた状態では、裏蓋70と遮へい側電極43の間で圧縮されたスプリング60の弾性力によって、絶縁栓40が挿入方向へと押しつけられた状態となる(
図1)。
また、遮へい側電極43の先端側がドーム状で形成されることにより、ケーブル終端接続部Aの課電時に、絶縁栓40にかかる電界が緩和される。
これにより、ケーブル終端接続部Aの課電時に、絶縁筒11と、絶縁栓40の本体部41との界面の絶縁性能を維持することができる。
【0031】
遮へい側電極43にも、後述する温度センサを構成する光ファイバを挿通可能な穴を設けておく。遮へい側電極43の後端側には、接続孔A31からの取り外しを容易とするために、工具などで把持可能な部材を別途設けておいてもよい(図示略)。
【0032】
<5>温度センサの配置(
図1,
図2)
本発明では、絶縁栓40に温度センサ50を設けるものとし、絶縁栓40を課電部A3に取り付けた状態で、温度センサ50の測定部がケーブル終端接続部Aの内部に配置されるよう構成する。
【0033】
<5.1>温度センサ(
図1)
温度センサ50は、ケーブル終端接続部Aの内部の温度を測定するためのセンサである。
本発明において、温度センサ50の種類は特段限定せず、種々のセンサを用いることができる。
本実施例では、温度センサ50として、FBG(Fiber Bragg Grating:ファイバ・ブラッグ・グレーティング)センサと呼ばれる、FBG部511を有する光ファイバ51と、光源や受光部を備えた測定装置52(インテロゲータ)との組合せからなるセンサを用いている。
以下、FBGセンサを構成する各部の詳細について説明する。
【0034】
<5.2>FBG部(
図2)
FBG部511は、温度の測定部として機能する部位である。
本発明では、光ファイバ51のコアに屈折率の異なる回折格子を形成することで、FBG部511を形成している。
このFBG部511を絶縁栓40の先端から露出させて、ケーブル終端接続部Aの内部の任意箇所に配置し、FBG部511での温度変化に伴う反射光の波長変化を検出することによって、FBG部511の周辺の温度を測定することができる。
【0035】
<5.3>測定装置(
図1)
測定装置52(インテロゲータ)は、光ファイバ51への投光と、光ファイバ51からの反射光を受光するための装置である。
本発明において、測定装置52の取付態様は特段限定しない。
図1では、絶縁栓40の後端から露出した光ファイバ51を接続した状態の測定装置52を、裏蓋70に固定している。
測定装置52で記録した温度の測定値は、無線通信による転送や、記録媒体を介して回収するなどの種々の方法で取得可能に構成すればよい。
【0036】
<6>温度センサの配置態様(
図1,
図3)
本発明において、絶縁栓40に対する温度センサ50の配置態様は特段限定しない。
例えば、温度センサ50を構成する光ファイバ51の一部を、絶縁栓40を構成する本体部41の内部に埋設した構成とする場合、以下の構成が考えられる。
【0037】
<6.1>配置例1(
図1)
例えば、光ファイバ51を、絶縁栓40の前後方向に直線状に配置して埋設した構成とすることができる。
図1の実施形態では、絶縁栓40は、光ファイバ51が絶縁栓40の長手方向に貫通した構成としている。
本構成によれば、使用する光ファイバ51の長さをできる限り短くすることで、製造コストを抑えることができる。
【0038】
<6.2>配置例2(
図3(a))
例えば、絶縁栓40と裏蓋70との間に位置する光ファイバ51に余長を設けた構成(余長部512の確保)とすることができる。余長部512は、
図3(a)のように、光ファイバ51を弛ませて形成してもよいし、螺旋状に形成してもよく、形成の仕方は、特段限定されない。
本構成によれば、絶縁栓40を課電部A3に取り付けた際に、スプリング60によって挿入方向へと絶縁栓40が押されて、スプリング60の復元力によって裏蓋70が絶縁栓40から離隔するように作用する場合に、光ファイバ51のうち、本体部41に埋設された部分と、裏蓋70に設けた測定装置52(インテロゲータ)と接続する部分との間に発生する引張力によって、光ファイバ51が破損してしまう恐れを軽減することができる。
【0039】
<6.3>配置例3(
図3(b))
例えば、絶縁栓40を構成する本体部41の内部で、光ファイバ51に余長を設けた構成(余長部512の確保)とすることができる。
図3(b)では、余長部512を確保する一例として、光ファイバ51を螺旋状(コイル状)に配置している。
本構成によれば、絶縁栓40を課電部A3に取り付けたのち、スプリング60によって挿入方向へと絶縁栓40が押されて、本体部41が圧縮状態となった際や本体部41が温度変化により膨張・収縮した際にも、単に光ファイバ51の螺旋間隔が変化するように作用し、本体部41内部に位置する光ファイバ51の破損に繋がりうる外力が負荷されなくなるため、光ファイバ51の破損の恐れを軽減することができる。螺旋状(コイル状)の構成については、
図3(b)のように、1周巻いた状態で形成してもよいし、複数周巻いた状態で形成してもよく、螺旋状(コイル状)の巻いた部分の径、巻き数、螺旋部分のピッチなど、特段限定されない。
【0040】
<6.4>その他(図示略)
本発明では、上記した各構成を、構造に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて使用することもできる。
また、本発明において余長部512の態様は特段限定せず、例えば、光ファイバ51を円形に周回する軌跡や、光ファイバ51を複数の直線状に折り返しまたは周回する軌跡や、折り返し長や、周回径の長短を相違させた軌跡なども含まれる。また、光ファイバ51の巻数や折り返し数も特段限定するものではない。
【0041】
<7>温度の測定態様(
図1,
図4)
本発明において、温度センサ50による温度の測定箇所は、ケーブル終端接続部Aの内部の任意箇所とすることができる。
温度センサ50を測定箇所に位置決めする方法は、種々の方法を採用することができる。
例えば、測定箇所に温度センサ50を位置決め可能な爪や孔などを設けて係止する方法や、測定箇所に温度センサ50を接着する方法、測定箇所と温度センサ50との間で連結構造(連結部および被連結部)を設ける方法などを採用できる。
次に、測定箇所の一例について説明する。
【0042】
<7.1>測定例1(
図1)
例えば、温度の測定箇所を、ブッシング10の内部の空洞部133とすることができる。
図1に示すように、絶縁栓40の先端から露出したFBG部511をそのまま空洞部133内に留めておくことで、空洞部133内の温度を測定することができる。
【0043】
<7.2>測定例2(
図4(a))
例えば、温度の測定箇所を、接続導体20の表面や内部とすることができる。
図4(a)に示すように、絶縁栓40の先端から露出したFBG部511を。接続導体20に設けた孔に挿入しておくことで、接続導体20の内部温度を測定することができる。
この場合、接続導体20の後端側と絶縁栓40の先端側との間においては、光ファイバ51に余長を設けておくことが好ましい。この場合の余長の長さは、接続導体20を取り付けた後の接続導体20の後端部から課電部A3の後端部までの距離以上を確保することが好ましい。これにより、FBG部51が挿入された接続導体20を先にブッシング10に装着し、その後、光ファイバ51を設けた絶縁栓40をブッシング10に装着することができる。
【0044】
図4(a)の構成によれば、接続導体20の内部温度を測定することができ、それぞれ熱伝導率の高い金属製で形成された接続導体20、内部導体(ケーブル側電極13)、ケーブル導体に取り付けられた導体接続端子(図示略)を介して接続導体20に導通する電力ケーブルのケーブル導体の温度に近い温度を測定することができる。よって、当該測定に基づいて、許容電流値の設定や、ケーブル導体の温度に変化や異常があった場合に検知することが容易となる。
【0045】
<7.3>測定例3(
図4(b))
例えば、温度の測定箇所を、ケーブル側電極13とすることができる。
図4(b)に示すように、ケーブル側電極13の表面に温度センサ50を構成するFBG部511を位置決めすることで、ケーブル側電極13の表面温度を測定することができる。
この場合、絶縁栓40の先端側(接続孔A31への挿入側)から露出する光ファイバ51には余長を設けておくことが好ましい。この場合の余長の長さは、FBG部511を取り付けるケーブル側電極13(内部導体)の位置から課電部A3の後端部までの距離以上を確保することが好ましい。
これにより、光ファイバ51の先端に設けたFBG部511を、ケーブル側電極13(内部導体)に取り付け、その後、光ファイバ51が設けられた絶縁栓40をブッシング10に装着することができる。
【0046】
図4(b)の構成によれば、ケーブル側電極13(内部導体)の表面温度を測定することができ、それぞれ熱伝導率の高い金属製で形成された内部導体(ケーブル側電極13)やケーブル導体に取り付けられた導体接続端子(図示略)を介して内部導体(ケーブル側電極13)に導通する電力ケーブルのケーブル導体の温度に近い温度を測定することができる。よって、当該測定に基づいて、許容電流値の設定や、ケーブル導体の温度に変化や異常があった場合に検知することが容易となる。
【0047】
<7.4>測定例4(
図4(c))
例えば、温度の測定箇所を、高圧側電極42とすることができる。
高圧側電極42の表面、具体的には高圧側電極42の先端面421に、温度センサ50を構成するFBG部511を位置決めすることで、高圧側電極42の表面温度を測定することができる。
この構成により、高圧側電極42の表面温度を測定することができ、それぞれ熱伝導率の高い金属製で形成された高圧側電極42、内部導体(ケーブル側電極13)、ケーブル導体に取り付けられた導体接続端子(図示略)を介して導通する、電力ケーブルのケーブル導体の温度に近い温度を測定することができる。よって、当該測定に基づいて、許容電流値の設定や、ケーブル導体の温度に変化や異常があった場合に検知することが容易となる。
【0048】
以上のように、絶縁栓40に、ケーブル終端接続部Aの内部の温度を計測可能な温度センサ50を設けた上記の実施形態から、電力ケーブルのケーブル導体の温度に近い温度を測定することができ、当該測定に基づいて、ケーブル導体の温度に変化や異常があった場合に検知することが容易となる。
これにより、ケーブル導体の温度に異常があった場合に、電力ケーブルやケーブル終端接続部が破壊する前に予兆を検知し、寿命が来る前に物品を交換することなどが期待できる。
したがって、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」に貢献することが可能となる。
【0049】
以上、実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、実施の形態では、課電部A3を有するケーブル終端接続部Aにおいて、いわゆるインナーコーンタイプとして、エポキシ樹脂製のブッシングを主絶縁としてゴム製のストレスコーンを挿入して形成されるT形終端接続部の場合について説明したが、特許文献2のように課電部が斜めに形成されたケーブル終端接続部に適用してもよい。
【0050】
また、実施の形態では、インナーコーンタイプについて説明したが、いわゆるアウターコーンタイプとして、特許文献3のような、ゴム製のT形の絶縁筒を主絶縁として機器に接続された凸状のエポキシブッシングに被せる構造の機器直結型(形)ケーブル接続部(T形コネクタとも呼ばれる)に適用してもよい。ゴム製のT形の絶縁筒の場合は、装着される絶縁栓の本体部(絶縁栓の主絶縁部)は、実施の形態のようなゴム製ではなく、エポキシ樹脂などの硬質の絶縁体で形成することが好ましい。