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  • 特開-ブラインド制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127344
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ブラインド制御システム
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/264 20060101AFI20240912BHJP
   E06B 9/322 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E06B9/264 C
E06B9/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036448
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村江 行忠
(72)【発明者】
【氏名】竹中 優揮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優
(72)【発明者】
【氏名】大島 佳保里
【テーマコード(参考)】
2E043
【Fターム(参考)】
2E043AA01
2E043BB14
2E043BE02
2E043BE05
2E043BE13
(57)【要約】
【課題】コストを抑える。
【解決手段】ブラインド制御システム10は、複数のスラットを有し、窓を介して室内に入射する外光を遮る位置に設置されたブラインド14と、室内に設置された照度センサ11と、照度センサ11が検出した照度のみに基づいてグレア指標を算出するグレア指標算出部12と、グレア指標算出部12が算出したグレア指標に基づいてスラットの角度を制御するスラット角度制御部13とを有する。スラット角度制御部13は、グレア指標が所定の閾値より大きい場合に、スラットを所定の角度閉じ、グレア指標が所定の閾値より小さい場合に、スラットを所定の角度開いてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスラットを有し、窓を介して室内に入射する外光を遮る位置に設置されたブラインドと、
前記室内に設置された照度センサと、
前記照度センサが検出した照度のみに基づいてグレア指標を算出するグレア指標算出部と、
前記グレア指標算出部が算出したグレア指標に基づいて前記スラットの角度を制御するスラット角度制御部と
を備える、ブラインド制御システム。
【請求項2】
前記スラット角度制御部は、
前記グレア指標が所定の閾値より大きい場合に、前記スラットを所定の角度閉じ、
前記グレア指標が所定の閾値より小さい場合に、前記スラットを所定の角度開く、
請求項1のブラインド制御システム。
【請求項3】
前記スラット角度制御部は、
前記スラットの角度を変更してから所定の時間が経過するまでの間は、前記スラットの角度を変更しない、
請求項2のブラインド制御システム。
【請求項4】
前記窓は、開閉可能な換気窓を有し、
前記スラット角度制御部は、前記換気窓が開いている場合に、前記グレア指標にかかわらず、前記換気窓に対応する位置に配置されたスラットの角度を換気の邪魔にならない角度にする、
請求項1乃至3いずれかのブラインド制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラインドを制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、眩しいと感じる時間を短縮すると共に、ブラインドの無用な開閉動作を防止する遮光装置を開示している。
特許文献2は、昼光を含む室内空間において適切な明るさ感を効率的に確保する光環境制御システムを開示している。
特許文献3は、効率良く屋内の自然換気を行なうことが可能な電動ブラインド装置を開示している。
非特許文献1は、目の高さにおける鉛直面照度のみに基づいて、単純化昼光グレア確率(DGPs)を算出することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-153062号公報
【特許文献2】特開2013-168333号公報
【特許文献3】特開平11-6376号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】WIENOLD,Jan「DYNAMIC SIMULATION OF BLIND CONTROL STRATEGIES FOR VISUAL COMFORT AND ENERGY BALANCE ANALYSIS」Building Simulation 2007、中国、北京、1197~1204ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の遮光装置は、ブラインドを介して入射した光による周囲照度を検出することができる位置に配設された照度センサによって検出された周囲照度レベルを設定照度範囲のレベルと比較し、設定照度範囲の上限よりも高い場合は、スラットを閉動作させ、設定照度範囲の下限よりも低い場合は、スラットを開動作させる。
しかし、設定照度範囲をどのようにして決定するかが開示されていないので、スラットを適切に制御できない可能性がある。
特許文献2の光環境制御システムは、輝度分布測定部で測定された室内空間の所定領域における輝度分布の画像を情報処理部が処理して得た所定領域における明るさ感の指標値の分布画像に基づいて、所定領域における明るさ感の指標値の分布範囲が所定領域に応じた目標範囲内に収まるように、所定領域の明るさ感を変更する変更手段を調光制御する。
しかし、可視画像を撮像して輝度分布を解析する必要があるので、コストが高くなる。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ブラインド制御システムは、複数のスラットを有し、窓を介して室内に入射する外光を遮る位置に設置されたブラインドと、前記室内に設置された照度センサと、前記照度センサが検出した照度のみに基づいてグレア指標を算出するグレア指標算出部と、前記グレア指標算出部が算出したグレア指標に基づいて前記スラットの角度を制御するスラット角度制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
照度センサが検出した照度のみに基づいて算出したグレア指標に基づいて前記スラットの角度を制御するので、科学的根拠に基づいた適切な制御を実現しつつ、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ブラインド制御システムの一例を示すブロック図。
図2】窓の一例を示す正面図。
図3】ブラインドの一例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照して、ブラインド制御システム10について説明する。
ブラインド制御システム10は、例えば、照度センサ11と、グレア指標算出部12と、スラット角度制御部13と、ブラインド14とを有する。
ブラインド14は、例えば、室内に外光が入射する窓の内側又は外側に配置されている。ブラインド14は、例えば、複数のスラットを有する。スラットは、例えば、電動で角度を変えることができ、これにより、窓から入射する外光を室内に取り入れたり、逆に外光を遮ったりすることができる。
【0010】
照度センサ11は、窓を介して外光が入射する室内に設置され、照度を検出する。照度センサ11は、例えば、窓から一番近い席やそのうち座席が窓のほうを向いている席など眩しさを一番感じやすい席の目の高さ(例えば、床面から1200mm)の位置に、着席した際の向きで水平な方向(鉛直面の法線方向)に向けて配置することが望ましい。
そのような理想的な位置に照度センサ11を配置するのが難しい場合は、その近くの机の上、壁、天井などに配置してもよい。
その場合、運用開始前に、理想位置にも相関算出用の照度センサを配置して、二つの照度センサが検出する照度の相関関係をあらかじめ計測しておき、運用開始後は、照度センサ11が検出した照度から、理想位置で検出する照度を推定してもよい。
実際に相関関係を計測するのではなく、シミュレーションにより相関関係を推定してもよい。
照度センサ11を設置する位置のいくつかの候補について、相関関係を計測し又は推定して、相関が最も高い位置に照度センサ11を設置することとしてもよい。
また、照度センサ11を複数設けてもよい。そうすれば、いずれかの照度センサ11が故障したり物陰に隠れたりした場合でも、照度を検出できる。また、異なる位置に配置した複数の照度センサ11が検出した照度から理想位置の照度を推定すれば、推定の精度を高くすることができる。
【0011】
グレア指標算出部12は、例えばコンピュータであり、照度センサ11が検出した照度からグレア指標を算出する。
グレア指標算出部12は、例えば以下の式の値を計算することにより、グレア指標を算出する。
DGPs=6.22×10-5・E+0.184
ただし、DGPsは、グレア指標の一種である単純化昼光グレア確率を表す。Eは、目の高さにおける鉛直面照度[ルクス]を表す。
グレア指標算出部12は、この式のEに、理想位置に配置した照度センサ11で検出した照度、または、理想位置の近くに配置した照度センサ11で検出した照度から推定した理想位置において検出されるであろう照度を代入することにより、グレア指標を算出する。
【0012】
スラット角度制御部13は、例えばコンピュータであり、グレア指標算出部12が算出したグレア指標に基づいて、ブラインド14のスラットの角度を制御する。グレア指標算出部12及びスラット角度制御部13がコンピュータである場合、両者は、同一のコンピュータであってもよいし、異なるコンピュータであってもよい。
スラット角度制御部13は、例えば、グレア指標算出部12が算出したグレア指標を所定の閾値と比較して、グレア指標のほうが大きい場合は、スラットを開き、逆にグレア指標のほうが小さい場合は、スラットを閉じる。
例えば、グレア指標がDGPsである場合、DGPsは、0.35以下であれば、眩しさを感じず、0.45以上であれば、眩しさがひどすぎるものとされている。なお、閾値は、室の用途や作業内容に応じて設定する。例えば、室の用途がオフィスの場合、よい環境を実現するため、閾値を例えば0.4に設定する。
このようにしてスラットの角度を制御することにより、科学的根拠に基づいた適切な制御を実現することができる。
【0013】
スラット角度制御部13は、スラットを少しずつ開閉してもよい。例えば、グレア指標のほうが大きい場合は、スラット角度を所定の角度(例えば2°)だけ大きくし、グレア指標のほうが小さい場合は、スラット角度を所定の角度(例えば2°)だけ小さくする。グレア指標と閾値との差に比例して、スラット角度の変化量を変えてもよい。
スラットがあまり頻繁に動くと煩わしいので、スラット角度制御部13は、スラットを動かしたのち、所定の時間(例えば5分)が経過するまでの間は、スラットを動かさないこととしてもよい。グレア指標と閾値との差に反比例して、スラット角度を変える間隔を変えてもよい。
【0014】
図2を参照して、窓80について説明する。
窓80は、例えば、四つの部分に分かれている。左側には、採光窓81が配置されている。中央下部には、採光窓82が配置されている。右側には、採光窓83が配置されている。中央上部には、換気窓84(排煙窓を含む。)が配置されている。換気窓84は、開閉可能である。換気窓84は、空調システムからの指示にしたがって自動で開閉するものであってもよいし、手動で開閉するものであってもよい。換気窓84が手動で開閉するものである場合は、換気窓84の開閉状態を検知するためのセンサが設けられる。採光窓81~83は、開閉可能であってもよいし、嵌め殺しであってもよい。
【0015】
図3を参照して、ブラインド14について説明する。
ブラインド14は、例えば、三つの巻き上げ装置41~43と、多数のスラット44とを有する。巻き上げ装置41は、左側の採光窓81に対応する位置に設けられたスラット44を巻き上げたり、角度を変化させたりすることができる。巻き上げ装置42は、中央の換気窓84及び採光窓82に対応する位置に設けられたスラット44を巻き上げたり、角度を変化させたりすることができる。巻き上げ装置43は、右側の採光窓83に対応する位置に設けられたスラット44を巻き上げたり、角度を変化させたりすることができる。巻き上げ装置41~43は、それぞれのスラット44の角度を個別に又はいくつかのブロックごとに変化させることができるものであってもよい。
【0016】
スラット角度制御部13は、換気窓84の開閉状態に応じて、換気窓84に対応する位置にあるスラット44の角度を変化させてもよい。
スラット角度制御部13は、例えば、空調システムからの通知に基づいて、換気窓84の開閉状態を検知する。あるいは、換気窓84に設けたセンサによって、換気窓84の開閉状態を検知する。
【0017】
そして、換気窓84が開いていることを検知した場合、スラット角度制御部13は、換気窓84に対応する位置に配置されたスラット44の角度を換気の邪魔にならない角度(例えば水平)にする。
例えば、巻き上げ装置41及び43のスラット44は、グレア指標に基づいた角度に制御しつつ、巻き上げ装置42のスラット44だけを水平にする。それぞれのスラット44の角度を個別に変化させることができる場合は、巻き上げ装置42のスラット44のうち採光窓82に対応する位置にあるスラット44も、グレア指標に基づいた角度に制御し、換気窓84に対応する位置にあるスラット44だけを水平にする。スラット44の角度をブロックごとに変化させることができる場合は、換気窓84に対応する位置にあるスラット44を含むブロックのスラット44だけを水平にする。
【0018】
また、換気窓84が閉じたことを検知した場合、スラット角度制御部13は、換気窓84に対応する位置に配置されたスラット44の角度を、他のスラット44と同様、グレア指標に基づく角度に戻す。
なお、換気窓84を開閉したことによってそれに対応する位置にあるスラット44の角度を変えた場合、照度センサ11が検出する照度が変化し、その結果として、他のスラット44の角度も変化する場合がある。
このようにしてスラット44の角度を制御することにより、眩しさを抑えつつ、換気を促進し、空調にかかるエネルギーを節約することができる。
【0019】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0020】
近年、省エネルギーや在室者の健康、快適性といった観点から、昼光利用が推進されている。空調負荷低減や不快グレアの抑制などを目的に、自動制御ブラインドを採用する。
天候や太陽高度・方位から日射が室内に入らないようスラット角度を求めて制御をする場合と異なり、外装に庇やルーバーなどがあっても、スラット角度を適切に制御し、昼光を適切に利用することができる。
グレア指標を算出するのに、窓面やその周辺の輝度分布を検出する必要がないので、カメラや画像を処理するためのプログラムなどが必要なく、比較的安価な照度センサを用いるので、コストを抑えることができる。
また、上下分割制御が可能なブラインドによる排煙窓や換気窓の開閉に対応した制御をする。
室内に設置した照度計から窓面のグレア指標を推定する。
照度センサを壁や天井などに設置して照度を測定し、得られた照度から推定グレア指標を算出する。
推定グレア指標が閾値よりも低い場合はブラインドのスラット角を開き、高い場合は閉じる。
排煙窓や換気窓が開いたときは、開いた窓の高さにあるスラットを水平に固定し、空気流動の抵抗を低減する。その際、開いた窓の高さにないスラットは、上記の制御により窓面のグレアを防ぐ角度とする。
排煙窓や換気窓が閉じたときは、水平に固定したスラットを他のスラットと同じ角度に戻す。
従来制御より昼光を取り込むことができるため、照明消費電力の削減につながる。
屋外の眺望が従来制御より見やすくなるため、在室者の快適性向上に寄与する。
安価な照度センサを使用することで、輝度画像による制御と比較して、安価かつ簡易に制御ができる。
窓面のグレアを抑えながら、排煙窓や換気窓の開閉に対応した制御ができる。
【符号の説明】
【0021】
10 ブラインド制御システム、11 照度センサ、12 グレア指標算出部、13 スラット角度制御部、14 ブラインド、41~43 巻き上げ装置、44 スラット、80 窓、81~83 採光窓、84 換気窓。
図1
図2
図3