(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127352
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】光パルス発生装置および分析システム
(51)【国際特許分類】
H01S 3/113 20060101AFI20240912BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20240912BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20240912BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20240912BHJP
H01S 3/082 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01S3/113
G01N21/59 Z
G01N21/01 D
H01S3/067
H01S3/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036461
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599055382
【氏名又は名称】学校法人東邦大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大登 正敬
(72)【発明者】
【氏名】武田 直希
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 善晶
【テーマコード(参考)】
2G059
5F172
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA02
2G059BB01
2G059CC05
2G059CC06
2G059DD12
2G059EE01
2G059GG01
2G059GG08
2G059JJ11
2G059JJ17
2G059JJ22
2G059KK01
5F172AM04
5F172AM08
5F172DD04
5F172DD06
5F172NN14
5F172NQ53
5F172WW18
5F172ZZ04
(57)【要約】
【課題】第1共振器と第2共振器との間における光学特性差の時間的な変動を抑制する。
【解決手段】光パルス発生装置100は、第1共振器C1により第1光パルスを発生する第1光パルス発生器30と、第2共振器C2により第2光パルスを発生する第2光パルス発生器40と、第1光パルスと第2光パルスとを合波する合波部50とを具備し、第1共振器C1と第2共振器C2との光軸間の距離は6mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1共振器により第1光パルスを発生する第1光パルス発生器と、
第2共振器により第2光パルスを発生する第2光パルス発生器と、
前記第1光パルスと前記第2光パルスとを合波する合波部とを具備し、
前記第1共振器と前記第2共振器との光軸間の距離は6mm以下である
光パルス発生装置。
【請求項2】
励起光を出射する光源装置と、
前記光源装置から出射する励起光を分岐することで前記第1光パルス発生器と前記第2光パルス発生器とに供給する分岐部と
をさらに具備する請求項1の光パルス発生装置。
【請求項3】
前記第1光パルス発生器は、前記第1共振器と前記合波部との間の第1光学素子を含み、
前記第2光パルス発生器は、前記第2共振器と前記合波部との間の第2光学素子を含み、
前記第1光学素子と前記第2光学素子との光軸間の距離は6mm以下である
請求項1の光パルス発生装置。
【請求項4】
設置面に溝部が形成された第1基板をさらに具備し、
前記第1共振器および前記第2共振器は、前記溝部に収容される
請求項1の光パルス発生装置。
【請求項5】
前記設置面に対向した状態で前記第1基板に接合される第2基板
をさらに具備する請求項4の光パルス発生装置。
【請求項6】
前記第1共振器は、
第1可飽和吸収ミラーと、
第1部分反射ミラーと、
前記第1可飽和吸収ミラーと前記第1部分反射ミラーとの間に設置され、増幅媒質を含む第1増幅ファイバーとを含み、
前記第2共振器は、
第2可飽和吸収ミラーと、
第2部分反射ミラーと、
前記第2可飽和吸収ミラーと前記第2部分反射ミラーとの間に設置され、増幅媒質を含む第2増幅ファイバーとを含み、
前記第1可飽和吸収ミラーと前記第2可飽和吸収ミラーとの光軸間の距離、前記第1部分反射ミラーと前記第2部分反射ミラーとの光軸間の距離、および、前記第1増幅ファイバーと前記第2増幅ファイバーとの光軸間の距離は、6mm以下である
請求項1の光パルス発生装置。
【請求項7】
光パルスを試料に照射する光パルス発生装置と、
前記試料を通過した光パルスを検出する検出装置と、
前記検出装置による検出結果の解析により前記試料の特性を分析する情報処理装置と
を具備し、
前記光パルス発生装置は、
第1共振器により第1光パルスを発生する第1光パルス発生器と、
第2共振器により第2光パルスを発生する第2光パルス発生器と、
前記第1光パルスと前記第2光パルスとを合波する合波部とを具備し、
前記第1共振器と前記第2共振器との光軸間の距離は6mm以下である
分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光パルス発生装置および分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光の照射により試料の特性を分析する各種の技術が従来から提案されている。例えば非特許文献1には、デュアルコム分光により広い波長範囲でガスの吸収線を計測する技術が開示されている。デュアルコム分光は、僅かに異なる発振周波数を有する2個のコム光源からの出射光を合波し、干渉信号を測定することにより分光する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Sho Okubo, et. al.,"Ultra-broadband dual-comb spectroscopy across 1.0-1.9μm," Applied Physics Express 8, 082402 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1に記載された技術では、相互に独立した2個のコム光源を設置する必要があり、かつ、2個のコム光源を相互に同期させるための同期機構が不可欠である。この同期機構は複雑かつ大型であるため、実験室以外のフィールドでの計測には不向きであるという課題がある。
【0005】
近年、例えばデュアルコム分光を利用したガス分析が検討されているが、産業上の用途で使用するためには、例えば屋外および工場等の過酷な空間において使用可能であることが要求される。以上の事情を背景として、簡素な構成かつ小型であり、かつ安定性の高いデュアルコム分光装置の開発が期待されている。なお、以上の説明ではガス分析に便宜的に着目したが、ガス分析以外の用途についても同様の課題が想定される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る光パルス発生装置は、第1共振器により第1光パルスを発生する第1光パルス発生器と、第2共振器により第2光パルスを発生する第2光パルス発生器と、前記第1光パルスと前記第2光パルスとを合波する合波部とを具備し、前記第1共振器と前記第2共振器との光軸間の距離は6mm以下である。
【0007】
本開示のひとつの態様に係る分析システムは、光パルスを試料に照射する光パルス発生装置と、前記試料を通過した光パルスを検出する検出装置と、前記検出装置による検出結果の解析により前記試料の特性を分析する情報処理装置とを具備し、前記光パルス発生装置は、第1共振器により第1光パルスを発生する第1光パルス発生器と、第2共振器により第2光パルスを発生する第2光パルス発生器と、前記第1光パルスと前記第2光パルスとを合波する合波部とを具備し、前記第1共振器と前記第2共振器との光軸間の距離は6mm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態における光パルス発生装置の構成図である。
【
図2】光パルス発生装置を構成する要素の実際の配置に関する説明図である。
【
図3】第1実施形態における光パルス発生装置の動作特性である。
【
図5】第1実施形態における光パルス発生装置の構成図である。
【
図8】第2実施形態における光パルス発生装置の平面図である。
【
図9】第2基板の溝部に光パルス発生装置が収容された状態の平面図である。
【
図10】第3実施形態における光パルス発生装置の構成図である。
【
図11】第4実施形態における光パルス発生装置の構成図である。
【
図12】第5実施形態における光パルス発生装置の構成図である。
【
図13】第5実施形態における第1光学系の説明図である
【
図14】第6実施形態における分析システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図面においては、各要素の寸法および縮尺が実際の製品とは相違する場合がある。また、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
【0010】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態における光パルス発生装置100の構成図である。第1実施形態の光パルス発生装置100は、光周波数コムの光パルスを周期的に発生するレーザー装置である。光周波数コムの光パルスは、周波数軸上に等間隔に配列された複数の成分で構成される。
図1に例示される通り、光パルス発生装置100は、光源装置10と分岐部20と第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40と合波部50とコリメータ60とを具備する。
【0011】
光源装置10は、励起光を出射する励起光源である。具体的には、光源装置10は、パルス状の励起光を周期的に出射する。例えばレーザーダイオードが光源装置10として利用される。なお、光源装置10は、光パルス発生装置100に接続される外部要素として把握されてもよい。
【0012】
分岐部20は、光源装置10から出射した励起光を2系統に分岐する。分岐部20は、第1分岐ファイバー21と第2分岐ファイバー22と入射ファイバー23と分岐カプラー24とを具備する。光源装置10から出射した励起光は、入射ファイバー23を通過して分岐カプラー24に供給される。分岐カプラー24は、光源装置10から供給された励起光を2系統に分岐する光学素子である。比率50:50の等分岐ファイバーカプラーが分岐カプラー24として利用される。
【0013】
分岐カプラー24による分岐後の2系統のうち一方の系統の励起光は、第1分岐ファイバー21を通過して第1光パルス発生器30に供給される。分岐後の2系統のうち他方の系統の励起光は、第2分岐ファイバー22を通過して第2光パルス発生器40に供給される。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の分岐部20は、光源装置10から出射する励起光を分岐することで第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とに供給する。すなわち、相互に同期した励起光が第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とに供給される。
【0014】
第1光パルス発生器30は、光周波数コムの第1光パルスを周期的に発生するレーザー装置である。具体的には、第1光パルス発生器30は、分岐部20から供給される励起光により第1光パルスを発生する。同様に、第2光パルス発生器40は、光周波数コムの第2光パルスを周期的に発生するレーザー装置である。具体的には、第2光パルス発生器40は、分岐部20から供給される励起光により第2光パルスを発生する。第1光パルスの周波数スペクトルと第2光パルスの周波数スペクトルとの間では、周波数軸上において相互に隣合う各成分の間隔(繰返し周波数)が僅かに相違する。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の光パルス発生装置100は、デュアルコム分光装置である。
【0015】
第1光パルス発生器30の構造と第2光パルス発生器40の構造とは実質的に共通する。第1光パルス発生器30は、第1光ファイバー31と第1入射カプラー32と第1可飽和吸収ミラー33と第1部分反射ミラー34と第1アイソレーター35とを具備する。第1光ファイバー31は、第1入射カプラー32と第1可飽和吸収ミラー33と第1部分反射ミラー34と第1アイソレーター35とが設置される光導波路を構成する。同様に、第2光パルス発生器40は、第2光ファイバー41と第2入射カプラー42と第2可飽和吸収ミラー43と第2部分反射ミラー44と第2アイソレーター45とを具備する。第2光ファイバー41は、第2入射カプラー42と第2可飽和吸収ミラー43と第2部分反射ミラー44と第2アイソレーター45とが設置される光導波路を構成する。第1光パルス発生器30および第2光パルス発生器40を含む系全体の光ファイバーは、例えば偏波保持光ファイバーで構成される。
【0016】
第1入射カプラー32は、第1分岐ファイバー21を通過した励起光を第1光パルス発生器30に導入するための光学素子である。第2入射カプラー42は、第2分岐ファイバー22を通過した励起光を第2光パルス発生器40に導入するための光学素子である。例えばWDMカプラーが、第1入射カプラー32および第2入射カプラー42として利用される。
【0017】
第1可飽和吸収ミラー33および第2可飽和吸収ミラー43は、励起光のエネルギーが一定以上になったときにパルス光を発生させる光学素子である。例えば半導体可飽和吸収ミラー(SESAM:Semiconductor Saturable Absorber Mirror)が、第1可飽和吸収ミラー33および第2可飽和吸収ミラー43として利用される。第1部分反射ミラー34および第2部分反射ミラー44は、入射光の一部の成分を反射するとともに残余の成分を透過する光学素子である。
【0018】
第1光ファイバー31は、第1増幅ファイバー36を含む。第1増幅ファイバー36は、第1可飽和吸収ミラー33と第1部分反射ミラー34との間に設置される。同様に、第2光ファイバー41は、第2増幅ファイバー46を含む。第2増幅ファイバー46は、第2可飽和吸収ミラー43と第2部分反射ミラー44との間に設置される。
【0019】
第1増幅ファイバー36および第2増幅ファイバー46は、入射光を増幅する。例えば増幅媒質である希土類元素を含む希土類ドープファイバーである。例えばエルビウム(Er)がコアに添加されたエルビウムドープファイバー(EDF:Erbium-Doped Fiber)が、第1増幅ファイバー36および第2増幅ファイバー46として例示される。
【0020】
第1入射カプラー32と第1部分反射ミラー34とを通過した励起光は、第1可飽和吸収ミラー33と第1部分反射ミラー34との間で反復的に反射する。反復的な反射の過程において励起光は第1増幅ファイバー36により増幅され、増幅後の一部の成分が第1光パルスとして第1部分反射ミラー34を透過する。以上の説明から理解される通り、第1可飽和吸収ミラー33と第1部分反射ミラー34と第1増幅ファイバー36とは、第1光パルスを光共振により生成する第1共振器C1を構成する。第1共振器C1は、ファブリペロー型共振器である。
【0021】
第1入射カプラー32および第1アイソレーター35は、第1共振器C1と合波部50との間に設置される。第1アイソレーター35は、順方向に進行する光のみを通過する光学素子である。第1共振器C1から出射した第1光パルスは、第1入射カプラー32と第1アイソレーター35とを通過して合波部50に供給される。以上の説明の通り、第1光パルス発生器30は、第1共振器C1により第1光パルスを発生する。なお、第1入射カプラー32および第1アイソレーター35は「第1光学素子」の一例である。
【0022】
第2入射カプラー42と第2部分反射ミラー44とを通過した励起光は、第2可飽和吸収ミラー43と第2部分反射ミラー44との間で反復的に反射する。反復的な反射の過程において励起光は第2増幅ファイバー46により増幅され、増幅後の一部の成分が第2光パルスとして第2部分反射ミラー44を透過する。以上の説明から理解される通り、第2可飽和吸収ミラー43と第2部分反射ミラー44と第2増幅ファイバー46とは、第2光パルスを光共振により生成する第2共振器C2を構成する。第2共振器C2は、第1共振器C1と同様にファブリペロー型共振器である。
【0023】
第2入射カプラー42および第2アイソレーター45は、第2共振器C2と合波部50との間に設置される。第2アイソレーター45は、順方向に進行する光のみを通過する光学素子である。第2共振器C2から出射した第2光パルスは、第2入射カプラー42と第2アイソレーター45とを通過して合波部50に供給される。以上の説明の通り、第2光パルス発生器40は、第2共振器C2により第2光パルスを発生する。なお、第2入射カプラー42および第2アイソレーター45は「第2光学素子」の一例である。
【0024】
第1共振器C1における第1可飽和吸収ミラー33と第1部分反射ミラー34との距離と、第2共振器C2における第2可飽和吸収ミラー43と第2部分反射ミラー44との距離とは僅かに相違する。したがって、前述の通り、第1光パルスの周波数スペクトルと第2光パルスの周波数スペクトルとの間では、周波数軸上の各成分の間隔が相違する。
【0025】
合波部50は、第1光パルス発生器30から出射した第1光パルスと第2光パルス発生器40から出射した第2光パルスとを合波する。具体的には、合波部50は、第1出射ファイバー51と第2出射ファイバー52と合波カプラー53と出射ファイバー54とを具備する。第1光パルス発生器30から出射した第1光パルスは、第1出射ファイバー51を通過して合波カプラー53に入射する。同様に、第2光パルス発生器40から出射した第2光パルスは、第2出射ファイバー52を通過して合波カプラー53に入射する。合波カプラー53は、第1光パルスと第2光パルスとを合波する光学素子である。例えば等分岐カプラーが合波カプラー53として利用される。
【0026】
合波カプラー53から出射した光パルスは出射ファイバー54を通過する。コリメータ60は、合波部50から出射する光パルスを平行光線に変換する。光パルス発生装置100の構成は以上の通りである。
【0027】
図2は、光パルス発生装置100を構成する要素の実際の配置に関する説明図である。
図2に例示される通り、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とは相互に近接して設置される。具体的には、第1光パルス発生器30の光軸と第2光パルス発生器40の光軸との距離は、6mm以下である。例えば、第1光ファイバー31と第2光ファイバー41との光軸間の距離は6mm以下である。光軸は、第1光パルス発生器30および第2光パルス発生器40を構成する各光学素子を通過する光束を代表する仮想的な光線である。光軸は、各光学素子の回転対称軸(すなわち中心軸)とも表現される。
【0028】
具体的には、第1共振器C1の光軸と第2共振器C2の光軸との距離は6mm以下である。例えば、
図2に例示される通り、第1可飽和吸収ミラー33の光軸X1aと第2可飽和吸収ミラー43の光軸X2aとの距離Da、第1部分反射ミラー34の光軸X1bと第2部分反射ミラー44の光軸X2bとの距離Db、および、第1増幅ファイバー36の光軸X1cと第2増幅ファイバー46の光軸X2cとの距離Dcは、6mm以下である。さらに詳細には、距離Dcは3mm以下であり、より好適には1mm以下である。
【0029】
第1共振器C1の各要素と第2共振器C2の各要素とは、以上の条件を充足するように例えば接合テープにより相互に固定される。なお、第1共振器C1の各要素と第2共振器C2の各要素とは相互に接触した状態で設置されてもよい。例えば、第1可飽和吸収ミラー33と第2可飽和吸収ミラー43とが相互に接触した状態で設置され、第1部分反射ミラー34と第2部分反射ミラー44とが相互に接触した状態で設置される。また、第1増幅ファイバー36と第2増幅ファイバー46とが相互に接触した状態で設置される。
【0030】
第1共振器C1および第2共振器C2のほか、第1光パルス発生器30のうち第1共振器C1と合波部50との間の要素と、第2光パルス発生器40のうち第2共振器C2と合波部50との間の要素とについても、相互に近接して設置される。具体的には、
図2に例示される通り、第1入射カプラー32の光軸X1dと第2入射カプラー42の光軸X2dとの距離Ddは6mm以下であり、第1アイソレーター35の光軸X1eと第2アイソレーター45の光軸X2eとの距離Deは6mm以下である。なお、以上の説明においては、第1光パルス発生器30の光学素子と第2光パルス発生器40の光学素子との光軸間の距離が6mm以下である形態を例示したが、各光学素子の光軸間の距離は3mm以下でもよく、さらに詳細には1mm以下に設定される。
【0031】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、第1共振器C1と第2共振器C2との光軸間の距離(Da,Db,Dc)が6mm以下となるように第1共振器C1と第2共振器C2とが相互に近接して設置される。したがって、簡素な構成で小型の光パルス発生装置100が実現される。
【0032】
また、第1実施形態においては、第1共振器C1と第2共振器C2とが相互に近接して設置されるから、例えば環境温度の変化等の外乱の影響が第1共振器C1と第2共振器C2との間で近似する。したがって、第1共振器C1と第2共振器C2との間における光学特性差の変動を抑制できる。すなわち、光学特性差の変動が抑制された安定性の高い動作が実現され、ひいては、光パルス発生装置100を利用した試料の分析精度を向上させることが可能である。
【0033】
図3は、第1実施形態における光パルス発生装置100の動作特性である。
図4は、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40との光軸間の距離が充分に大きい形態(以下「対比例」という)における動作特性である。
図3および
図4には、周波数F1と周波数F2と周波数差ΔFとについて時間的な変化が図示されている。周波数F1は、第1光パルス発生器30が出射する第1光パルスの周波数であり、周波数F2は、第2光パルス発生器40が出射する第2光パルスの周波数である。周波数F1および周波数F2は、時間軸上において相前後する光パルスの間隔(周期)の逆数である。周波数差ΔFは、周波数F1と周波数F2との差異(ΔF=|F1-F2|)である。周波数差ΔFは、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40との間の光学特性差の一例である。
【0034】
図3および
図4においては、環境温度が経時的に変化した場合が想定されている。対比例においては、第1光パルス発生器30に対する環境温度の影響と第2光パルス発生器40に対する環境温度の影響とが顕著に相違するから、
図4から把握される通り、周波数F1の時間変化と周波数F2の時間変化とは顕著に相違する。したがって、対比例においては、周波数差ΔFが経時的に変動する。
【0035】
対比例とは対照的に、第1実施形態においては、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とが充分に近接して設置されるから、環境温度の影響は第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とで実質的に共通する。以上の状況では、
図3から把握される通り、周波数F1の時間変化と周波数F2の時間変化とは概ね一致する。したがって、第1実施形態においては、周波数差ΔFの経時的な変動が対比例と比較して充分に低減される。以上の説明から理解される通り、第1実施形態においては、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とが、周波数差ΔFの経時的な変動が充分に抑制される程度に近接して設置される。
【0036】
なお、
図3および
図4においては周波数F1および周波数F2に着目したが、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とが充分に近接して設置される構成により、第1光パルスと第2光パルスとの間における周波数スペクトルの光学特性差の経時的な変動も抑制される。例えば、第1光パルスにおける周波数軸上の各成分の間隔と、第2光パルスにおける周波数軸上の各成分の間隔との差異(光学特性差)の時間変化が抑制される。
【0037】
第1実施形態においては特に、第1可飽和吸収ミラー33と第2可飽和吸収ミラー43との光軸間の距離Da、第1部分反射ミラー34と第2部分反射ミラー44との光軸間の距離Db、および、第1増幅ファイバー36と第2増幅ファイバー46との光軸間の距離Dcが、何れも6mm以下である。したがって、第1共振器C1と第2共振器C2との間における光学特性差の変動を抑制できるという効果は格別に顕著である。
【0038】
さらに、第1実施形態においては、第1共振器C1と第2共振器C2との間の光軸間の距離(Da,Db,Dc)が6mm以下であるほか、第1共振器C1の外側の光学素子(第1入射カプラー32および第1アイソレーター35)と第2共振器C2の外側の光学素子(第2入射カプラー42および第2アイソレーター45)との光軸間の距離も6mm以下である。したがって、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40との全体にわたり光学特性差の変動を抑制できる。
【0039】
B:第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0040】
図5は、第2実施形態における光パルス発生装置100の平面図である。
図6は、
図5におけるVI-VI線の断面図である。
【0041】
図5および
図6に例示される通り、第2実施形態の光パルス発生装置100は、第1基板71と第2基板72とを具備する。第1基板71および第2基板72は、例えば金属または樹脂等の材料により形成された矩形状の板状部材である。第1基板71および第2基板72は、相互に対向した状態で接合される。例えばネジ等の複数の締結具79により第1基板71と第2基板72とが相互に接合される。
【0042】
第1基板71のうち第2基板72に対向する表面(以下「設置面73」という)には溝部74が形成される。溝部74は、設置面73に対して窪んだ凹部である。光パルス発生装置100のうち第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40と分岐部20と合波部50とは、溝部74に収容される。具体的には、溝部74の内周面と第2基板72の下面とにより包囲された空間に、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40と分岐部20と合波部50とが収容される。すなわち、第2実施形態においては、第1共振器C1および第2共振器C2が溝部74に収容される。なお、
図5に例示される通り、光源装置10およびコリメータ60は第1基板71および第2基板72の外側に設置される。ただし、光源装置10およびコリメータ60は第1基板71と第2基板72との間に設置されてもよい。
【0043】
図7は、第2基板72の設置面73の平面図である。
図7に例示される通り、溝部74は、複数の収容空間75(75a,75b,75c,75d,75e,75f)と連通空間76とを含む。各収容空間75は、光パルス発生装置100の各光学素子を収容する空間である。連通空間76は、各収容空間75を連結するように直線状または円弧状に延在する空間である。
図6に拡大される通り、各収容空間75の横幅Waは、連通空間76の横幅Wbを上回る(Wa>Wb)。例えば、収容空間75の横幅Waは4mm~6mmであり、連通空間76の横幅Wbは480μm程度である。また、各収容空間75の深さHaは、各連通空間76の深さHbを上回る(Ha>Hb)。
【0044】
図8は、第2実施形態における光パルス発生装置100の平面図である。
図8に例示される通り、第2実施形態における第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とは、円弧状に成形される。具体的には、第1入射カプラー32と第1可飽和吸収ミラー33と第1部分反射ミラー34と第1アイソレーター35とは周方向に配列される。同様に、第2入射カプラー42と第2可飽和吸収ミラー43と第2部分反射ミラー44と第2アイソレーター45とは周方向に配列される。
【0045】
図9は、第2基板72の溝部74に光パルス発生装置100が収容された状態の平面図である。
図9に例示される通り、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とは、相互に近接した状態で溝部74に収容される。例えば、第1可飽和吸収ミラー33および第2可飽和吸収ミラー43は収容空間75aに収容され、第1部分反射ミラー34および第2部分反射ミラー44は収容空間75bに収容される。同様に、第1入射カプラー32および第2入射カプラー42は収容空間75cに収容され、第1アイソレーター35および第2アイソレーター45は収容空間75dに収容される。また、第1増幅ファイバー36を含む第1光ファイバー31と、第2増幅ファイバー46を含む第2光ファイバー41とは、相互に近接した状態で連通空間76に収容される。第1光ファイバー31および第2光ファイバー41の外径は240μm程度である。
【0046】
各収容空間75内において、第1光パルス発生器30の各光学素子と第2光パルス発生器40の各光学素子との光軸間の距離Dは6mm以下である。同様に、連通空間76内において、第1光ファイバー31と第2光ファイバー41との光軸間の距離Dは6mm以下である。
【0047】
以上に説明した通り、第2実施形態においては、第1共振器C1と第2共振器C2とが相互に近接して設置されるから、第1実施形態と同様に、第1共振器C1と第2共振器C2との間における光学特性差の変動を抑制できる。また、第2実施形態においては、第1光パルス発生器30(第1共振器C1)と第2光パルス発生器40(第2共振器C2)とが第1基板71の溝部74に収容される。したがって、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とを、相互に近接した位置に容易に設置および維持できる。
【0048】
また、第2実施形態においては、第1光パルス発生器30および第2光パルス発生器40が第1基板71と第2基板72との間に保持される。すなわち、第1光パルス発生器30および第2光パルス発生器40が第1基板71および第2基板72により保護される。したがって、例えば物体の衝突による第1光パルス発生器30および第2光パルス発生器40の破損を抑制できる。
【0049】
C:第3実施形態
図10は、第3実施形態における光パルス発生装置100の構成図である。第1実施形態においては、第1入射カプラー32が第1共振器C1と第1アイソレーター35との間に位置し、第2入射カプラー42が第2共振器C2と第2アイソレーター45との間に位置する構成を例示した。第3実施形態においては、第1入射カプラー32および第2入射カプラー42の位置が第1実施形態とは相違する。
【0050】
図10に例示される通り、第1入射カプラー32は、第1部分反射ミラー34と第1増幅ファイバー36との間に位置する。すなわち、第1入射カプラー32は第1共振器C1の内部に設置される。第1分岐ファイバー21を通過した励起光は第1入射カプラー32を介して第1共振器C1内に供給される。第1可飽和吸収ミラー33と第1部分反射ミラー34との間で励起光が往復する結果、第1増幅ファイバー36により増幅された第1光パルスが第1共振器C1から出射する。第1共振器C1から出射した第1光パルスは、第1アイソレーター35を通過して合波部50に供給される。
【0051】
第2入射カプラー42は、第2部分反射ミラー44と第2増幅ファイバー46との間に位置する。すなわち、第2入射カプラー42は第2共振器C2の内部に設置される。第2分岐ファイバー22を通過した励起光は第2入射カプラー42を介して第2共振器C2内に供給される。第2可飽和吸収ミラー43と第2部分反射ミラー44との間で励起光が往復する結果、第2増幅ファイバー46により増幅された第2光パルスが第2共振器C2から出射する。第2共振器C2から出射した第2光パルスは、第2アイソレーター45を通過して合波部50に供給される。第1光パルスと第2光パルスとが合波部50により合波される構成は、第1実施形態と同様である。
【0052】
第3実施形態においても第1実施形態と同様に、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とは相互に近接して設置される。具体的には、第1光パルス発生器30の光軸と第2光パルス発生器40の光軸との距離は、6mm以下である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、第1基板71と第2基板72との間に光パルス発生装置100が収容される第2実施形態の構成は、第3実施形態にも同様に適用される。
【0053】
D:第4実施形態
図11は、第4実施形態における光パルス発生装置100の構成図である。第3実施形態においては、第1入射カプラー32が第1部分反射ミラー34と第1増幅ファイバー36との間に位置する形態を例示した。第4実施形態においては、第1入射カプラー32が第1可飽和吸収ミラー33と第1増幅ファイバー36との間に設置される。同様に、第2入射カプラー42は、第2可飽和吸収ミラー43と第2増幅ファイバー46との間に設置される。
【0054】
第1入射カプラー32および第2入射カプラー42が設置される位置以外の構成は、第3実施形態と同様である。したがって、第4実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、第1基板71と第2基板72との間に光パルス発生装置100が収容される第2実施形態の構成は、第4実施形態にも同様に適用される。
【0055】
E:第5実施形態
図12は、第5実施形態における光パルス発生装置100の構成図である。第5実施形態の光パルス発生装置100においては、第1可飽和吸収ミラー33と第1増幅ファイバー36との間に第1光学系37が設置され、第2可飽和吸収ミラー43と第2増幅ファイバー46との間に第2光学系47が設置される。第1光学系37は、相互に間隔をあけて設置された凸レンズ371と凸レンズ372とで構成される。同様に、第2光学系47は、相互に間隔をあけて設置された凸レンズ471と凸レンズ472とで構成される。
【0056】
第1分岐ファイバー21を通過した励起光は第1光学系37に供給される。同様に、第2分岐ファイバー22を通過した励起光は第2光学系47に供給される。すなわち、第5実施形態においては、第1実施形態における第1入射カプラー32および第2入射カプラー42が省略される。
【0057】
図13は、第1光学系37の説明図である。
図13に破線で例示される通り、第1分岐ファイバー21から第1光学系37に供給された励起光は、凸レンズ371により平行光線に変換され、かつ、凸レンズ372により集光されたうえで第1可飽和吸収ミラー33に供給される。他方、第1可飽和吸収ミラー33の反射光は、凸レンズ372により平行光線に変換され、かつ、凸レンズ371により集光されたうえで第1増幅ファイバー36に供給される。また、第1増幅ファイバー36から第1可飽和吸収ミラー33に向かう出射光は、凸レンズ371により平行光線に変換され、かつ、凸レンズ372により集光されたうえで第1可飽和吸収ミラー33に供給される。第2光学系47は第1光学系37と同様に作用する。
【0058】
第5実施形態においても第1実施形態と同様に、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とは相互に近接して設置される。具体的には、第1光パルス発生器30の光軸と第2光パルス発生器40の光軸との距離は、6mm以下である。したがって、第5実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、第1基板71と第2基板72との間に光パルス発生装置100が収容される第2実施形態の構成は、第5実施形態にも同様に適用される。
【0059】
F:第6実施形態
図14は、第6実施形態における分析システム200のブロック図である。分析システム200は、試料ガスGの特性を光学的に分析する光学測定器である。試料ガスGは、分析対象となる任意のガスである。例えば、窒素酸化物(NOx)または硫黄酸化物(SOx)等を含む排気ガスが、試料ガスGの一例である。試料ガスGは、例えばガスセル等の容器に収容される。なお、試料ガスGが流通する流路内に光パルス発生装置100が設置されてもよい。
【0060】
図14に例示される通り、分析システム200は、前述の各形態に例示された光パルス発生装置100に加えて、第1検出装置91と第2検出装置92と情報処理装置93とを具備する。
【0061】
光パルス発生装置100は、第1光パルスと第2光パルスとを含む光パルスを出射する。前述の通り、第1光パルスと第2光パルスとは、周波数軸上において相互に隣合う各成分の間隔が相違する。また、第1光パルスと第2光パルスとは時間軸上において相互に同期する。
【0062】
光パルス発生装置100から出射された光パルスは、観測経路P1と参照経路P2とに分岐される。観測経路P1に沿って進行する光パルスは、試料ガスGを通過してから第1検出装置91に到達する。すなわち、光パルス発生装置100は光パルスを試料ガスGに照射する。他方、参照経路P2に沿って進行する光パルスは、試料ガスGを通過せずに第2検出装置92に到達する。
【0063】
第1検出装置91および第2検出装置92は、光パルス発生装置100から出射した光パルスを検出する。第1検出装置91は、観測経路P1に沿って試料ガスGを通過した光パルスを検出する。他方、第2検出装置92は、試料ガスGを通過しない参照経路P2に沿って到達する光パルスを検出する。第1検出装置91および第2検出装置92は、例えば光パルスを集光する集光レンズと、集光レンズを通過した光パルスを受光する受光素子とを具備する。
【0064】
情報処理装置93は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、半導体メモリまたは磁気記録媒体等の記憶装置とを具備するコンピュータシステムである。記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、演算装置は各種の処理を実行する。
【0065】
具体的には、情報処理装置93は、第1検出装置91および第2検出装置92による検出結果を解析することで試料ガスGの特性を分析する。例えば、情報処理装置93は、第1検出装置91および第2検出装置92が生成する検出信号に対して離散フーリエ変換等の周波数解析を実行することで、試料ガスGの吸収スペクトルを生成する。また、情報処理装置93は、吸収スペクトルを解析することで、試料ガスGに関する濃度を算定する。例えば、試料ガスGに含まれる窒素酸化物(NOx)または硫黄酸化物(SOx)等の成分の濃度が算定される。なお、第1検出装置91および第2検出装置92による検出結果の解析には、公知の技術が任意に採用される。
【0066】
第6実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。前述の通り、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とが相互に近接して設置される構成により、光学特性差の時間変化が抑制される。したがって、第6実施形態によれば、試料ガスGの特性を高精度に分析できる。
【0067】
G:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0068】
(1)前述の各形態においては、光源装置10から出射した励起光が第1光パルス発生器30および第2光パルス発生器40に分岐される形態を例示した。以上の形態においては、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40との間で単体の光源装置10が共用される。しかし、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とに対して別個の光源装置から励起光が供給される形態も想定される。例えば、第1光源装置から出射した励起光が第1光パルス発生器30に供給され、第2光源装置から出射した励起光が第2光パルス発生器40に供給される。第1光源装置から出射する励起光と第2光源装置から出射する励起光とは相互に同期する。
【0069】
なお、前述の各形態のように第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とで光源装置10が共用される形態によれば、第1光源装置と第2光源装置とが別個に設置される形態と比較して、光パルス発生装置100の構成が簡素化されるという利点がある。第1光パルス発生器30に供給される励起光と第2光パルス発生器40に供給される励起光とを相互に同期させるための仕組みが不要であるという利点もある。
【0070】
また、第1光源装置と第2光源装置とが別個に設置される形態においては、第1光源装置と第2光源装置との光学特性の誤差に起因して、第1光パルスと第2光パルスとの特性に差異が発生する可能性がある。対照的に、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とで光源装置10が共用される形態によれば、第1光パルス発生器30と第2光パルス発生器40とに対して共通の特性の励起光が供給される。したがって、第1光パルスと第2光パルスとの間における特性の相違を有効に低減できる。
【0071】
(2)前述の各形態においては、可飽和吸収ミラー(33,43)と部分反射ミラー(34,44)との間で光が往復するファブリペロー型の共振器を例示したが、励起光が環状の光導波路を循環するリング型の共振器が、第1共振器C1および第2共振器C2として利用されてもよい。
【0072】
(3)第6実施形態においては、分析システム200による分析の対象として気体(試料ガスG)を例示したが、液体または固体の試料も同様の構成により分析可能である。
【0073】
(4)第6実施形態において、第2検出装置92および参照経路P2は省略されてよい。すなわち、情報処理装置93は、試料ガスGを通過した光パルスを第1検出装置91が検出した結果を解析することで、試料ガスGを分析してもよい。
【0074】
H:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0075】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る光パルス発生装置は、第1共振器により第1光パルスを発生する第1光パルス発生器と、第2共振器により第2光パルスを発生する第2光パルス発生器と、前記第1光パルスと前記第2光パルスとを合波する合波部とを具備し、前記第1共振器と前記第2共振器との光軸間の距離は6mm以下である。以上の態様においては、第1共振器と第2共振器との光軸間の距離が6mm以下となるように第1共振器と第2共振器とが相互に近接して設置されるから、簡素な構成で小型の光パルス発生装置が実現される。また、第1共振器と第2共振器とが相互に近接して設置されるから、例えば環境温度の変化等の外乱の影響が第1共振器と第2共振器との間で近似する。したがって、第1共振器と第2共振器との間における光学特性差の変動を抑制できる。すなわち、光学特性差の変動が抑制された安定性の高い動作が実現され、ひいては、光パルス発生装置を利用した試料の分析精度を向上させることが可能である。なお、第1共振器と第2共振器との光軸間の距離は、例えば5mm以下または3mm以下でもよく、さらには1mm以下でもよい。
【0076】
態様1の具体例(態様2)において、励起光を出射する光源装置と、前記光源装置から出射する励起光を分岐することで前記第1光パルス発生器と前記第2光パルス発生器とに供給する分岐部とをさらに具備する。以上の態様においては、光源装置から出射する励起光が第1光パルス発生器と第2光パルス発生器とに分岐される。すなわち、第1光パルス発生器と第2光パルス発生器とで光源装置が共用される。したがって、第1光パルス発生器と第2光パルス発生器とに対して別個の光源装置から励起光が供給される形態と比較すると、光パルス発生装置の構成を簡素化できる。また、光源装置の特性の相違に起因して第1光パルスと第2光パルスとの間に発生する特性の相違を低減できる。
【0077】
態様1または態様2の具体例(態様3)において、前記第1光パルス発生器は、前記第1共振器と前記合波部との間の第1光学素子を含み、前記第2光パルス発生器は、前記第2共振器と前記合波部との間の第2光学素子を含み、前記第1光学素子と前記第2光学素子との光軸間の距離は6mm以下である。以上の態様においては、第1共振器と第2共振器との間の光軸間の距離が6mm以下であるほか、第1共振器の外側の第1光学素子と第2共振器の外側の第2光学素子との間においても光軸間の距離も6mm以下である。したがって、第1光学素子と第2光学素子との光軸間の距離が6mmを上回る形態と比較して、第1光パルス発生器と第2光パルス発生器との全体にわたり光学特性差の変動を抑制できる。
【0078】
態様1から態様3の何れかの具体例(態様4)において、設置面に溝部が形成された第1基板をさらに具備し、前記第1共振器および前記第2共振器は、前記溝部に収容される。以上の態様においては、第1共振器および第2共振器が第1基板の溝部に収容される。したがって、第1共振器と第2共振器とを、相互に近接した位置に容易に設置および維持できる。
【0079】
態様4の具体例(態様5)において、前記設置面に対向した状態で前記第1基板に接合される第2基板をさらに具備する。以上の態様においては、第1共振器および第2共振器が第1基板と第2基板との間に保持される。すなわち、第1共振器および第2共振器が第1基板および第2基板により保護される。たがって、例えば物体の衝突による第1共振器および第2共振器の破損を抑制できる。
【0080】
態様1から態様5の何れかの具体例(態様6)において、前記第1共振器は、第1可飽和吸収ミラーと、第1部分反射ミラーと、前記第1可飽和吸収ミラーと前記第1部分反射ミラーとの間に設置され、増幅媒質を含む第1増幅ファイバーとを含み、前記第2共振器は、第2可飽和吸収ミラーと、第2部分反射ミラーと、前記第2可飽和吸収ミラーと前記第2部分反射ミラーとの間に設置され、増幅媒質を含む第2増幅ファイバーとを含み、前記第1可飽和吸収ミラーと前記第2可飽和吸収ミラーとの光軸間の距離、前記第1部分反射ミラーと前記第2部分反射ミラーとの光軸間の距離、および、前記第1増幅ファイバーと前記第2増幅ファイバーとの光軸間の距離は、6mm以下である。以上の態様においては、第1可飽和吸収ミラーと第2可飽和吸収ミラーとの光軸間の距離、第1部分反射ミラーと第2部分反射ミラーとの光軸間の距離、および、第1増幅ファイバーと第2増幅ファイバーとの光軸間の距離が、何れも6mm以下である。したがって、第1共振器と第2共振器との間における光学特性差の変動を抑制できるという効果は格別に顕著である。
【0081】
本開示のひとつの態様(態様7)に係る分析システムは、光パルスを試料に照射する光パルス発生装置と、前記試料を通過した光パルスを検出する検出装置と、前記検出装置による検出結果の解析により前記試料の特性を分析する情報処理装置とを具備し、前記光パルス発生装置は、第1共振器により第1光パルスを発生する第1光パルス発生器と、第2共振器により第2光パルスを発生する第2光パルス発生器と、前記第1光パルスと前記第2光パルスとを合波する合波部とを具備し、前記第1共振器と前記第2共振器との光軸間の距離は6mm以下である。
【符号の説明】
【0082】
100…光パルス発生装置、200…分析システム、10…光源装置、20…分岐部、21…第1分岐ファイバー、22…第2分岐ファイバー、23…入射ファイバー、24…分岐カプラー、30…第1光パルス発生器、31…第1光ファイバー、32…第1入射カプラー、33…第1可飽和吸収ミラー、34…第1部分反射ミラー、35…第1アイソレーター、36…第1増幅ファイバー、37…第1光学系、40…第2光パルス発生器、41…第2光ファイバー、42…第2入射カプラー、43…第2可飽和吸収ミラー、44…第2部分反射ミラー、45…第2アイソレーター、46…第2増幅ファイバー、47…第2光学系、50…合波部、51…第1出射ファイバー、52…第2出射ファイバー、53…合波カプラー、54…出射ファイバー、60…コリメータ、71…第1基板、72…第2基板、73…設置面、74…溝部、75(75a,75b,75c,75d,75e,75f)…収容空間、76…連通空間、79…締結具、91…第1検出装置、92…第2検出装置、93…情報処理装置。