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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127357
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】接続構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20240912BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/01 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036469
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】貞弘 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 慎二
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA22
(57)【要約】
【課題】石場建て工法のような意匠性を保ちつつ建築基準法に適合する木質材の接続構造を提供する。
【解決手段】接続構造10は、基盤11と、基盤11の上の意匠材12と、意匠材12の上の木質材13と、基盤11と木質材13とを接続する接続機構20と、を有する。接続機構20は、接続芯材25と充填材26とを有する。接続芯材25は、基盤11に定着する定着部25Aと意匠材12に形成された貫通孔21を貫通する貫通部25Bと木質材13に形成された貫入孔22に貫入する貫入部25Cとを有する。充填材26は、貫通孔21と貫入孔22とに充填されて接続芯材25を木質材13に接着する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤と、前記基盤の上の意匠材と、前記意匠材の上の木質材と、前記基盤と前記木質材とを接続する接続機構と、を有し、
前記接続機構は、
前記基盤に定着する定着部と、前記意匠材に形成された貫通孔を貫通する貫通部と、前記木質材に形成された貫入孔に貫入する貫入部と、を有する接続芯材と、
前記貫通孔と前記貫入孔とに充填されて、前記接続芯材を接着する充填材と、を有する
接続構造。
【請求項2】
前記接続機構は、前記充填材を充填する充填孔と、前記充填材を排出する排出孔と、を有する
請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記充填孔は、前記木質材の下端部に形成され、
前記排出孔は、前記木質材における前記充填孔の上方に形成されている
請求項2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記接続機構は、前記接続芯材の軸方向と交差して、前記接続芯材の前記軸方向の移動を拘束する拘束材を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基盤と木質材とを接続する接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な木柱の設置工法として石場建て工法が知られている。石場建て工法においては、地盤に載置した束石を基礎として木柱が設置される。こうした石場建て工法は、束石が意匠材として機能することで木柱の下端部、ひいては建築物全体の意匠性を高めることができる。また、こうした石場建て工法として、特許文献1には、束石に対して木柱を釘打ちにて接続する工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-232272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建築基準法においては、柱が地盤に定着していることが求められる。しかしながら、石場建て工法は、地盤に載置した束石を基礎として木柱が設置されていることで建築基準法に適合しないという問題があった。そのため、石場建て工法のような意匠性を保ちつつ建築基準法に適合する木柱の接続構造が求められている。なお、こうした要望は、木柱に限らず、定着が必要とされる木質材にも共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する接続構造は、基盤と、前記基盤の上の意匠材と、前記意匠材の上の木質材と、前記基盤と前記木質材とを接続する接続機構と、を有する。前記接続機構は、前記基盤に定着する定着部と、前記意匠材に形成された貫通孔を貫通する貫通部と、前記木質材に形成された貫入孔に貫入する貫入部と、を有する接続芯材と、前記貫通孔と前記貫入孔とに充填されて、前記接続芯材を接着する充填材と、を有する。これにより、木質材が充填材と接続芯材とを介して基盤に定着するため、石場建て工法のような意匠性を保ちつつ、建築基準法に適合させることができる。
【0006】
上記構成において、前記接続機構は、前記充填材を充填する充填孔と、前記充填材を排出する排出孔と、を有することが好ましい。
これにより、充填材を充填する際に排出孔を通じて内部のエアを排出することができる。その結果、接続芯材の周囲に確実に充填材を形成することができる。
【0007】
上記構成において、前記充填孔は、前記木質材の下端部に形成され、前記排出孔は、前記木質材における前記充填孔の上方に形成されていることが好ましい。
これにより、充填材の充填時に排出孔を通じたエアの排出を円滑に行うことができる。また、充填孔および排出孔が木質材に形成されていることで、それら充填孔および排出孔を容易に形成することができる。
【0008】
上記構成において、前記接続機構は、前記接続芯材の軸方向と交差して、前記接続芯材の前記軸方向の移動を拘束する拘束材を有することが好ましい。これにより、木質材と接続芯材とをより強固に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】接続構造の一実施形態の概略構成を示す断面図である。
図2】木質材の構造を模式的に示す斜視図である。
図3】連通孔付近における木質材の断面図である。
図4】貫入孔に接続芯材が貫入され、連通孔に拘束材が圧入された状態を示す断面図である。
図5】(a)接続芯材が所定位置に配設された状態で基盤が形成された状態を模式的に示す図であり、(b)意匠材が配設された状態を模式的に示す図であり、(c)木質材を配設したのちに充填材料が充填される様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図5を参照して、接続構造の一実施形態について説明する。
図1に示すように、接続構造10は、基盤11、意匠材12、木質材13、および、基盤11と木質材13とを接続する接続機構20を有する。
【0011】
基盤11は、地盤に支持されている。基盤11は、例えばコンクリートなどのセメント系材料で形成される。意匠材12は、基盤11と木質材13との間に配設されている。意匠材12は、木質材13の下端面13bを支持する支持面12aを有する。支持面12aは、意匠材12に対する機械加工などにより、木質材13の下端面13bと面接触するように形成されている。意匠材12は、例えば束石など、木質材13の下端部の意匠性を向上させる部材である。木質材13は、接続機構20を介して基盤11に接続されることで基盤11に定着する木柱として機能する。
【0012】
(接続機構)
接続機構20は、意匠材12に形成された貫通孔21を有する。貫通孔21は、意匠材12を上下方向に貫通している。
【0013】
接続機構20は、木質材13に形成された貫入孔22を有する。貫入孔22は、下端面13bに開口を有して軸方向に沿って上方へ延びる非貫通孔である。
接続機構20は、接続芯材25と充填材26とを有する。
【0014】
接続芯材25は、その軸方向が上下方向に沿うように配設されている。接続芯材25は、基盤11に定着する定着部25Aと、意匠材12の貫通孔21を貫通する貫通部25Bと、木質材13の貫入孔22に貫入する貫入部25Cと、を有する。接続芯材25は、例えば、異形鉄筋、全ねじボルト、グラスファイバー筋など、木質材13よりも強度の高い部材で構成することができる。
【0015】
充填材26は、貫通孔21と貫入孔22とに充填されている。充填材26は、接続芯材25を意匠材12と木質材13とに接着する。充填材26は、流動性を有する充填材料が硬化したものである。充填材料は、例えば無収縮モルタルなどのセメント系材料である。
【0016】
接続機構20は、木質材13に形成された充填孔27および排出孔28を有する。
図2に示すように、充填孔27は、木質材13の下端部に形成されている。充填孔27は、木質材13の側面13sに開口を有している。充填孔27は、側面13sから木質材13を見たときに、貫入孔22に対して全ての領域が重なるように形成される。充填孔27は、その最深部において貫入孔22に連通している。充填孔27は、充填材料を充填する際に利用される孔である。
【0017】
排出孔28は、充填孔27よりも上方に形成されている。排出孔28は、木質材13の側面13sに開口を有している。排出孔28は、側面13sから木質材13を見たときに、貫入孔22に対して全ての領域が重なるように形成される。排出孔28は、その最深部において貫入孔22の上端部に連通している。排出孔28は、充填材26を形成する充填材料を貫入孔22に充填する際にエア抜きとして、また、貫入孔22に対する充填材料の充填度合いを確認する際に利用される孔である。
【0018】
接続機構20は、木質材13に形成された連通孔30と該連通孔30に圧入された拘束材31とを有する。
連通孔30は、木質材13の側面13sに開口を有している。連通孔30は、接続芯材25の軸方向に交差する方向に延びる円形孔である。連通孔30は、軸方向に対する貫入孔22の両側に軸方向に沿って配列されている。
【0019】
図3に示すように、連通孔30は、貫入孔22に連通するように、側面13sから木質材13を見たときに貫入孔22に対して一部の領域が重なるように形成される。連通孔30は、木質材13を貫通する孔であってもよいし、最深部において貫入孔22に連通する非貫通孔であってもよい。
【0020】
図4に示すように、拘束材31は、木質材13よりも強度が高い材料で形成されている。拘束材31は、例えば丸鋼である。拘束材31は、接続芯材25の側方を通るように、その一部が貫入孔22内に配設されている。拘束材31は、充填材26によって接続芯材25と一体化されることで接続芯材25の軸方向の移動を拘束する。
【0021】
(接続構造の施工方法)
接続構造10の施工方法の一例について説明する。
まず、図5(a)に示すように、接続芯材25を所定位置に配設した状態でコンクリートを打設することにより基盤11を形成する。これにより、接続芯材25は、定着部25Aにおいて基盤11に定着する。
【0022】
次に、図5(b)に示すように、基盤11からの接続芯材25の突出部分が貫通孔21を貫通するように意匠材12を配設する。意匠材12には、予め支持面12aが形成されていてもよいし、配設後の加工により支持面12aが形成されてもよい。
【0023】
その後、図5(c)に示すように、連通孔30に拘束材31が圧入されている木質材13を配設する。具体的には、意匠材12の支持面12aに木質材13の下端面13bが支持されるように、また、意匠材12からの接続芯材25の突出部分が貫入孔22に貫入するように木質材13を配設する。なお、拘束材31は、木質材13の配設後に連通孔30に圧入されてもよい。
【0024】
次に、木質材13の充填孔27から充填材料を充填する。充填材料は、意匠材12の貫通孔21において接続芯材25の周囲に充填されたのち、木質材13の貫入孔22において接続芯材25の周囲に充填される。充填材料は、木質材13の排出孔28から一部が排出されるまで充填される。そして、充填材料が硬化すると充填材26が形成される。
【0025】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)接続構造10においては、充填材26と接続芯材25とを介して木質材13を基盤11に定着させることができる。これにより、石場建て工法のような意匠性を保ちつつ、建築基準法に適合させることができる。
【0026】
(2)また、石場建て工法のような意匠性を保つ工法として、意匠材12を貫通するように木質材13を設置する工法がある。しかしながら、こうした工法においては、意匠材12と木質材13との間の隙間に雨水などが溜まりやすい。この点、接続構造10においては、意匠材12の支持面12aと木質材13の下端面13bとが面接触している。これにより、意匠材12と木質材13との間や木質材13の下端部の周囲に雨水などが溜まることが抑えられる。その結果、木質材13の腐朽が抑えられる。
【0027】
(3)接続構造10においては、木質材13に作用した力が充填材26および接続芯材25を介して基盤11へと伝達される。これにより、意匠材12に要求される強度を小さくすることができる。その結果、意匠材12の形状や素材についての自由度を高めることができる。
【0028】
(4)接続機構20は、充填孔27と排出孔28とを有する。これにより、充填材料の充填時に排出孔28を通じて貫通孔21および貫入孔22内のエアを排出することができる。その結果、意匠材12と接続芯材25との間の隙間、および、木質材13と接続芯材25との間の隙間に確実に充填材料を充填することができる。
【0029】
(5)充填孔27が木質材13の下端部に形成され、排出孔28が充填孔27よりも上方に形成されている。また、排出孔28は、貫入孔22の上端部に連通するように形成されている。これにより、充填材料の充填時に排出孔28を通じたエアの排出を円滑に行うことができる。また、充填孔27および排出孔28が木質材13に形成されていることで、それら充填孔27および排出孔28を容易に形成することができる。
【0030】
(6)接続機構20は、接続芯材25の軸方向と交差する方向に延びて、軸方向における接続芯材25の移動を拘束する拘束材31を有している。これにより、木質材13と接続芯材25とをより強固に接続することができる。すなわち、基盤11に対して木質材13をより強固に定着させることができる。
【0031】
(7)接続芯材25が異形鉄筋であることにより、基盤11に対する接続芯材25の定着力、ひいては、充填材26および接続芯材25を介して基盤11に対する木質材13の定着力を高めることができる。
【0032】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・木質材13には、拘束材31が設けられていなくともよい。これにより、連通孔30の穿設加工、および、拘束材31が不要となるから、コストを低減することができる。
【0033】
・木質材13において、充填孔27および排出孔28は、同じ高さ位置に形成されていてもよい。
・充填孔27および排出孔28の形成位置は、木質材13の設置状況に応じて適宜変更可能である。例えば、木質材13の上端部がコンクリート製の部材に接続される場合などには、充填孔27および排出孔28が意匠材12に形成されてもよい。また例えば、充填孔27が木質材13に形成され、かつ、排出孔28が意匠材12に形成されてもよい。
【0034】
・上記実施形態においては、木質材13を木柱とした。これに限らず、木質材13は、例えば、コンクリート製の仕口などを基盤として接続される木梁であってもよい。
・意匠材12には、接続芯材25を貫通させることのできる貫通孔21が形成されていればよい。すなわち、貫通孔21は、意匠材12の内部に充填材26が積極的に形成されないような孔であってもよい。これにより、木質材13から意匠材12への力の伝達を抑えることができる。
【0035】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記1)
前記接続芯材が異形鉄筋である。
【0036】
これにより、基盤に対する接続芯材の定着力、ひいては、充填材および接続芯材を介して基盤に対する木質材の定着力を高めることができる。
【符号の説明】
【0037】
10…接続構造、11…基盤、12…意匠材、12a…支持面、13…木質材、13b…下端面、13s…側面、20…接続機構、21…貫通孔、22…貫入孔、25…接続芯材、25A…定着部、25B…貫通部、25C…貫入部、26…充填材、27…充填孔、28…排出孔、30…連通孔、31…拘束材。
図1
図2
図3
図4
図5